特許第6604070号(P6604070)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6604070
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】密封装置及びこれを備えた軸受装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/78 20060101AFI20191031BHJP
   F16C 33/66 20060101ALI20191031BHJP
   F16C 19/38 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   F16C33/78 D
   F16C33/66 Z
   F16C19/38
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-146635(P2015-146635)
(22)【出願日】2015年7月24日
(65)【公開番号】特開2017-26080(P2017-26080A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 陽平
【審査官】 中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭51−052154(JP,U)
【文献】 特開2009−293752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/00−19/56
F16C 33/30−33/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外輪と、この外輪の内周側において当該外輪と同心に配置される内輪とを有する軸受装置における前記外輪の軸方向外側両端部に設けられる密封装置であって、
前記密封装置は、前記内輪の外周面に接触する主シールリップ部と、この主シールリップ部の軸方向内側に設けられており、前記内輪の外周面に非接触の副シールリップ部とを有しており、
前記内輪の外周面と、前記主シールリップ部及び前記副シールリップ部とによって、グリースを貯留し得る環状のグリース溜りが形成されており、
前記副シールリップ部の径方向外側面に、当該面に付着したグリースを軸方向に流し得るガイド部が周方向に沿って複数形成されており、
前記ガイド部が、らせん状の凸条又は凹溝であり、
前記凸条又は凹溝は、当該凸条又は凹溝が軸方向内側に向かう方向が、前記内輪の回転方向に沿うように傾斜していることを特徴とする密封装置。
【請求項2】
外輪と、この外輪の内周側において当該外輪と同心に配置される内輪とを有する軸受装置における、前記外輪の軸方向外側両端部に設けられる密封装置であって、
前記密封装置は、前記内輪の外周面に接触する主シールリップ部と、この主シールリップ部の軸方向内側に設けられており、前記内輪の外周面に非接触の副シールリップ部とを有しており、
前記内輪の外周面と、前記主シールリップ部及び前記副シールリップ部とによって、グリースを貯留し得る環状のグリース溜りが形成されており、
前記副シールリップ部の径方向内側面に、当該面に付着したグリースを軸方向に流し得るガイド部が周方向に沿って複数形成されており、
前記ガイド部が、らせん状の凸条又は凹溝であり、
前記凸条又は凹溝は、当該凸条又は凹溝が軸方向内側に向かう方向が、前記内輪の回転方向と反対の方向に沿うように傾斜していることを特徴とする密封装置。
【請求項3】
前記凸条又は凹溝の軸方向内側の先端部は、前記副シールリップ部の先端部よりも軸方向内側に延設されており、
この延設された延設部と、前記副シールリップ部の先端部とによって、当該副シールリップ部の先端は波形に形成されている、請求項1又は請求項2に記載の密封装置。
【請求項4】
外輪と、
この外輪の内周側において当該外輪と同心に配置される内輪と、
前記外輪と前記内輪との間に配設された転動体と、
前記外輪の軸方向外側両端部に設けられる、請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の密封装置と
を備えたことを特徴とする軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は密封装置及びこれを備えた軸受装置に関する。さらに詳しくは、例えば圧延機のロールを支持するための軸受装置に用いられる密封装置、これを用いた軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼の圧延機のロールネック用軸受における密封装置は、一般的な密封装置に比べて過酷な条件下で使用されることが多い。すなわち、リップ部の周速は最大30m/s(圧延速度:2800mpm)にも達し、また、例えば60〜120℃という広い温度範囲で繰り返し周囲温度が変化する。さらに、圧延水(冷却水)に継続的に浸される。
【0003】
このような過酷な条件下においてもシールの密封性能を確保するためには、内輪と当該内輪の外周面に摺接するリップとの間の隙間の潤滑状態を流体潤滑状態に維持することが重要である。換言すれば、リップの摺接部に常に油膜を形成しておく必要がある。かかる油膜を形成するために、従来、種々の密封装置が提案されている(例えば、特許文献1〜2参照)。
【0004】
特許文献1記載の軸受装置では、図6に示されるように、内輪50と摺接するシールリップ部51の潤滑状態を維持するために、シールリップ部51とは別に副シールリップ部52を設け、内輪50の外周面50aと、シールリップ部51及び副シールリップ部52との間に形成される空間Sにグリースを充填させている。
【0005】
また、特許文献2記載の軸受装置では、図7に示されるように、内輪60の外周面60aと摺接する主シールリップ部61よりも軸方向内側の内輪外周面にグリースを貯留するグリース溜り溝62が形成されている。
【0006】
特許文献1〜2記載の軸受装置では、前記空間S(特許文献1)又はグリース溜り溝62(特許文献2)に軸受内部からグリースが供給され、このグリースがリップ先端の摺接部に油膜を形成し、当該摺接部の潤滑状態を流体潤滑状態に維持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭59−34121号公報
【特許文献2】特開2014−173686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、ロールの高速回転時等に、軸受内部側が昇温して圧力が上昇すると、前記空間S又はグリース溜り溝62にあったグリースが軸受内外の圧力差によって軸受の外側(図6〜7において右側)に吹き出てしまい、リップ先端の潤滑状態が悪化する虞がある。リップ先端の潤滑状態が悪化すると、当該リップが内輪外周面との摩擦によって昇温し、劣化してしまう。その結果、密封装置の密封性が低下して、軸受内部に水や異物が侵入して当該軸受の寿命を低下させることがある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、圧力変化等によりグリース溜りのグリース量が減少したとしても、当該グリース溜りに迅速にグリースを供給して、リップ先端の潤滑状態を維持することができる密封装置及びこれを備えた軸受装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点に係る密封装置は、
(1)外輪と、この外輪の内周側において当該外輪と同心に配置される内輪とを有する軸受装置における、前記外輪の軸方向外側両端部に設けられる密封装置であって、
前記密封装置は、前記内輪の外周面に接触する主シールリップ部と、この主シールリップ部の軸方向内側に設けられており、前記内輪の外周面に非接触の副シールリップ部とを有しており、
前記内輪の外周面と、前記主シールリップ及び前記副シールリップとによって、グリースを貯留し得る環状のグリース溜りが形成されており、
前記副シールリップ部の径方向外側面に、当該面に付着したグリースを軸方向に流し得るガイド部が周方向に沿って複数形成されており、
前記ガイド部が、らせん状の凸条又は凹溝であり、
前記凸条又は凹溝は、当該凸条又は凹溝が軸方向内側に向かう方向が、前記内輪の回転方向に沿うように傾斜している。
本発明の第2の観点に係る密封装置は、
(2)外輪と、この外輪の内周側において当該外輪と同心に配置される内輪とを有する軸受装置における、前記外輪の軸方向外側両端部に設けられる密封装置であって、
前記密封装置は、前記内輪の外周面に接触する主シールリップ部と、この主シールリップ部の軸方向内側に設けられており、前記内輪の外周面に非接触の副シールリップ部とを有しており、
前記内輪の外周面と、前記主シールリップ部及び前記副シールリップ部とによって、グリースを貯留し得る環状のグリース溜りが形成されており、
前記副シールリップ部の径方向内側面に、当該面に付着したグリースを軸方向に流し得るガイド部が周方向に沿って複数形成されており、
前記ガイド部が、らせん状の凸条又は凹溝であり、
前記凸条又は凹溝は、当該凸条又は凹溝が軸方向内側に向かう方向が、前記内輪の回転方向と反対の方向に沿うように傾斜している。
【0011】
本発明の密封装置では、内輪の外周面と非接触の副シールリップ部の径方向外側面(第1の観点)又は径方向内側面(第2の観点)に、当該面に付着したグリースを軸方向に流し得る、らせん状の凸条又は凹溝であるガイド部が周方向に沿って複数形成されている。このため、軸受内部に充填されているグリースであって、内輪と外輪の各軌道面を転動する転動体によって撹拌されたグリースを効果的にグリース溜りへと導くことができる。より詳細には、副シールリップ部の径方向外側面にガイド部を形成することで、転動する転動体から当該径方向外側面に飛散し付着したグリースを当該ガイド部で軸方向に流して副シールリップ部の先端側に移動させることができる。そして、副シールリップ部の先端側に移動してきたグリースは、軸との隙間の毛細現象により、その一部をグリース溜りへと導くことができる。また、副シールリップ部の径方向内側面にガイド部を形成することで、副シールリップ部の先端部よりグリース溜りへと入ってきたグリースを、ガイド部によって軸方向に流して主シールリップ部側に移動させることができる。その結果、圧力変化等によりグリース溜りのグリース量が減少したとしても、転動体の動きにより当該グリース溜りに迅速にグリースを供給して、内輪外周面と接触する主シールリップ部先端の潤滑状態を流体潤滑状態に維持することができる。これにより、主シールリップ部の摩耗や昇温による劣化を抑制することができ、密封装置の長寿命化を図ることができる。
また、第1の観点に係る密封装置において、前記副シールリップ部の径方向外側面に形成される凸条又は凹溝は、当該凸条又は凹溝が軸方向内側に向かう方向が、前記内輪の回転方向に沿うように傾斜しており、かかる凸条又は凹溝を形成することで、当該凸条又は凹溝により内輪の回転方向に沿うようにガイドされてきたグリースを効果的にグリース溜りへと導くことができる。
また、第2の観点に係る密封装置において、前記副シールリップ部の径方向内側面に形成される凸条又は凹溝は、当該凸条又は凹溝が軸方向内側に向かう方向が、前記内輪の回転方向と反対の方向に沿うように傾斜しており、かかる凸条又は凹溝を形成することで、副シールリップ部の先端部のグリースを当該凸条又は凹溝に沿って効果的にグリース溜りへと導くことができる。
【0015】
)上記()〜()の密封装置において、前記凸条又は凹溝の軸方向内側の先端部は、前記副シールリップ部の先端部よりも軸方向内側に延設されており、
この延設された延設部と、前記副シールリップ部の先端部とが周方向に交互に配置されることによって、当該副シールリップ部の先端は波形形状を呈していることが好ましい。この場合、凸条又は凹溝よって凸状の延設部に集められたグリースは、当該延設部における副シールリップ部と内輪外周面との間の隙間が、当該延設部と、周方向に隣接する延設部との間の凹状部(波形を構成する凹状部)における副シールリップ部と内輪外周面との間の隙間よりも小さいので、動圧効果によって前記凹状部側へと移動する。ついで、凹状部側に移動したグリースは、当該凹状部におけるグリース溜まり側と軸受内部側との差圧によってグリース溜り側へと移動する。その結果、凸条又は凹溝によって波形における凸状の延設部に集められたグリースを効果的にグリース溜りに供給することができる。
【0016】
本発明の軸受装置は、
)外輪と、
この外輪の内周側において当該外輪と同心に配置される内輪と、
前記外輪と前記内輪との間に配設された転動体と、
前記外輪の軸方向外側両端部に設けられる、上記(1)〜()の密封装置と
を備えている。
【0017】
本発明の軸受装置では、外輪の軸方向外側両端部に設けられる密封装置が前述した構成を備えているので、圧力変化等によりグリース溜りのグリース量が減少したとしても、当該グリース溜りに迅速にグリースを供給して、内輪外周面と接触する主シールリップ部先端の潤滑状態を流体潤滑状態に維持することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の密封装置及びこれを備えた軸受装置によれば、圧力変化等によりグリース溜りのグリース量が減少したとしても、当該グリース溜りに迅速にグリースを供給して、リップ先端の潤滑状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る密封装置を備えた軸受装置の断面説明図である。
図2図1に示される密封装置の拡大断面説明図である。
図3】副シールリップ部の径方向外側面の説明図である。
図4図3に示される副シールリップ部の部分拡大説明図である。
図5】副シールリップ部の他の態様の説明図である。
図6】従来の密封装置の一例の部分断面説明図である。
図7】従来の密封装置の他の例の部分断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の密封装置及びこれを備えた軸受装置の実施形態を詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る密封装置1を備えた軸受装置2の構成を示す断面説明図であり、図2は、図1に示される密封装置1の拡大断面説明図である。
軸受装置2は、圧延機用ロール両端のロールネック(図示せず)に設けられ、当該ロールを回転自在に支持する転がり軸受装置である。軸受装置2は、外輪3と、内輪4と、転動体である円すいころ5と、保持器6と、密封装置1とを備えている。
【0022】
外輪3は、圧延機に設けられたハウジング(図示せず)内に嵌入固定される。外輪3は、軸受装置2の軸方向中央に配置された円筒状の第1外輪部材3aと、第1外輪部材3aの軸方向両側に配置された一対の円筒状の第2外輪部材3bとで構成されている。外輪3は、第1外輪部材3aと一対の第2外輪部材3bとを軸方向に組み合わせて構成されている。
第1外輪部材3aの内周面には、複数の円すいころ5が転動する外輪軌道面3a1が一対形成されている。一対の第2外輪部材3bの各内周面には、複数の円すいころ5が転動する外輪軌道面3b1が形成されている。
【0023】
内輪4は、外輪3の内周側において当該外輪3と同心に配置されている。内輪4は、一対の円筒状の内輪部材4aを軸方向に組み合わせて構成されている。各内輪部材4aの外周面には、複数の円すいころ5が転動する内輪軌道面4a1が一対形成されている。
内輪4の内周には、圧延機ロールのロールネックが挿入固定される。これにより、内輪4は圧延機ロールとともに回転する。
【0024】
第1外輪部材3aに形成された一対の外輪軌道面3a1は、各内輪部材4aの軸方向内側に形成された内輪軌道面4a1と対向している。一方、第2外輪部材3bに形成された外輪軌道面3b1は、各内輪部材4aの軸方向外側に形成された内輪軌道面4a1と対向している。なお、軸方向外側とは、軸受装置2の内部を基準として外側のことであり、図2では左側である。一方、軸方向内側とは、同じく軸受装置2の内部を基準として、内部側又は内側のことであり、図2では右側のことである。
【0025】
複数の円すいころ5は、内輪軌道面4a1と外輪軌道面3a1との間、及び、内輪軌道面4a1と外輪軌道面3b1との間に転動自在に配置されている。本実施形態に係る軸受装置2は、複数の円すいころ5が四列に配置された円すいころ軸受を構成している。複数の円すいころ5は、環状の保持器6によって周方向に保持されている。
【0026】
密封装置1は、外輪3と内輪4とで形成される環状の空間の軸方向両端をシールしている。密封装置1は、外輪3を構成する第2外輪部材3bの内周面3cに固定されている。密封装置1は、主シールリップ部7と、副シールリップ部8とを有している。主シールリップ部7の先端部7aは内輪4を構成する内輪部材4aの外周面4bに接触しているが、副シールリップ部8の先端部8aは内輪部材4aの外周面4bと非接触の状態である。すなわち、副シールリップ部8の先端部8aと、内輪4の外周面4bとの間には、例えば1mm程度の隙間が形成されている。
【0027】
主シールリップ部7及び副シールリップ部8はゴム等の弾性体からなり、当該ゴム等を環状の芯金9に加硫接着することで形成されている。芯金9は、円筒部9aと、円筒部9aの軸方向内側端から径方向内向きに延設された環状板部9bとで構成されている。密封装置1は、芯金9の円筒部9aを第2外輪部材3bの内周面3cに圧入することにより当該第2外輪部材3bに固定されている。
【0028】
主シールリップ部7は、環状板部9bの径方向内側の端部から当該環状板部9bの内方且つ軸方向外側に向けて突出している。副シールリップ部8は、環状板部9bの径方向内側の端部から当該環状板部9bの内方且つ軸方向内側に向けて突出している。主シールリップ部7及び副シールリップ部8と、内輪4の外周面4bとによって、軸受内部からのグリースを貯留し得る環状のグリース溜り10が形成されている。
【0029】
密封装置1が第2外輪部材3bの内周面3cに固定された状態で、主シールリップ部7が内輪4の外周面4bに対して所定の押圧力で摺接される。特に、主シールリップ7の径方向外側面7bに設けたバネリング11によって当該主シールリップ部7を径方向内向きに強制的に押圧することで主シールリップ部7の先端部7aの密封性を高めている。これにより、水や異物の軸受内部への侵入が防止される。
【0030】
図3は、副シールリップ部8の径方向外側面を軸受内部側から見た説明図であり、図4図3に示される副シールリップ部8の部分拡大説明図である。なお、図3〜4における点線の表記は副シールリップ部8の径方向内側面を示している。
本実施形態では、図3〜4に示されるように、副シールリップ部8の径方向外側面8b及び径方向内側面8cにガイド部としてのらせん状の凸条12が形成されている。凸条12は、副シールリップ部8の径方向外側面8b又は径方向内側面8cに付着したグリースを軸方向に流す又は導くガイド機能を有している。凸条12は、副シールリップ部8の径方向外側面8b又は径方向内側面8cに、周方向に沿って所定間隔で複数形成されている。
【0031】
副シールリップ部8の径方向外側面8bに形成される凸条12は、当該凸条12が軸方向内側に向かう方向(すなわち、副シールリップ部8の先端部8aへ向かう方向)が、内輪4の回転方向R(図4参照)に沿うように傾斜している。一方、副シールリップ部8の径方向内側面8cに形成される凸条12は、当該凸条12が軸方向内側に向かう方向が、内輪4の回転方向Rと反対の方向に沿うように傾斜している。
【0032】
また、凸条12の軸方向内側の先端部12aは、副シールリップ部8の先端部8aよりも軸方向内側に延設されている。この延設された延設部8dと、副シールリップ部8の先端部8aとが周方向に交互に配置されることによって、副シールリップ8の先端は波形形状を呈している。副シールリップ8の先端が波形形状を呈していることで、副シールリップ部8の先端と内輪4の外周面4bとの間の隙間は、狭い箇所(凸条12が延設された凸状の延設部8dと内輪4の外周面4bとの間)と、広い箇所(周方向において隣接する延設部8d間の凹状部8eと内輪4の外周面4bとの間)とが周方向に沿って交互に形成される。
【0033】
本実施形態では、副シールリップ部8の径方向外側面8b及び径方向内側面8cに、凸条12が周方向に沿って複数形成されている。かかる凸条12を形成することで、軸受内部に充填されているグリースであって、内輪4と外輪3の各軌道面を転動する円すいころ5により撹拌されたグリースを効果的にグリース溜り10へと導くことができる。すなわち、副シールリップ部8の径方向外側面8bに凸条12を形成することで、転動する円すいころ5から当該径方向外側面8bに飛散し付着したグリースを凸条12で受けて軸方向に流して副シールリップ部8の先端の延設部8dに移動させることができる。そして、副シールリップ部8の先端の延設部8dに移動してきたグリースは、軸との隙間の毛細現象により、その一部をグリース溜り10へと導くことができる。また、副シールリップ部8の径方向内側面8cに凸条12を形成することで、副シールリップ部8の先端の延設部8dよりグリース溜り10へと入ってきたグリースを、当該凸条12によって軸方向に流して主シールリップ部7側に移動させることができる。その結果、圧力変化等によりグリース溜り10のグリース量が減少したとしても、円すいころ5の動きにより当該グリース溜り10に迅速にグリースを供給して、内輪外周面4bと接触する主シールリップ部7の先端部7aの潤滑状態を流体潤滑状態に維持することができる。これにより、主シールリップ部7の摩耗や昇温による劣化を抑制することができ、密封装置1の長寿命化を図ることができる。
【0034】
また、本実施形態では、らせん状の凸部12としているので、よりスムーズにグリースを副シールリップ部8の軸方向に流すことができる。
【0035】
また、本実施形態では、副シールリップ部8の径方向外側面8bに形成される凸条12が軸方向内側に向かう方向が、内輪4の回転方向Rに沿うように傾斜してので、当該凸条12より内輪4の回転方向に沿うようにガイドされてきたグリースを効果的にグリース溜り10へと導くことができる。
【0036】
また、本実施形態では、副シールリップ部8の径方向内側面8cに形成される凸条12が軸方向内側に向かう方向が、内輪4の回転方向Rと反対の方向に沿うように傾斜しているので、副シールリップ部8の先端の凹状部8eのグリースを当該凸条12に沿って効果的にグリース溜り10へと導くことができる。
【0037】
また、本実施形態では、副シールリップ部8の先端が波形形状を呈しているので、凸条12よって、波形を構成する凸状の延設部8dに集められたグリースは、当該延設部8dにおける副シールリップ部8と内輪外周面4bとの間の隙間が、当該延設部8dと、周方向に隣接する延設部8dとの間の凹状部(波形を構成する凹状部)8eにおける副シールリップ部8と内輪外周面4bとの間の隙間よりも小さいので、動圧効果によって前記凹状部8e側へと移動する。ついで、凹状部8e側に移動したグリースは、前記凹状部8eにおけるグリース溜り側と軸受内部側との差圧によって当該グリース溜り側へと移動する。その結果、凸条12によって延設部8dに集められたグリースを効果的にグリース溜り10に供給することができる。
【0038】
〔その他の変形例〕
本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内において種々の変更が可能である。
例えば、前述した実施形態では、副シールリップ部の径方向外側面及び径方向内側面の両方にガイド部としての凸条を形成しているが、図5に示されるように、一方の面に凹溝13を形成することもできる。図5に示される態様では、副シールリップ部の径方向外側面8bだけに凹溝13を形成しているが、径方向外側面及び径方向内側面の両方に凹溝を形成することもできる。凹溝を形成した場合でも、凸条の場合と同様に転動する円すいころから径方向外側面に飛散し付着したグリースを当該凹溝で軸方向に流して副シールリップ部の先端側に移動させることができる。また、副シールリップ部の先端部よりグリース溜りへと入ってきたグリースを、凹溝によって軸方向に流して主シールリップ部側に移動させることができる。
【0039】
また、前述した実施形態では、副シールリップ部の径方向外側面及び径方向内側面の両方にガイド部としての凸条を形成しているが、一方の面だけに凸条を設けても一定の効果を得ることができる。
また、前述した実施形態では、副シールリップ部の径方向外側面及び径方向内側面の両方にガイド部としての凸条を形成しているが、一方の面に凸条を形成し、他方の面に凹溝を形成することもできる。
【0040】
また、前述した実施形態では、断面が矩形の凸条を副シールリップ部の径方向外側面及び径方向内側面に形成しているが、例えば断面半円形、断面放物線状など他の断面形状の凸条を採用することもできる。
【符号の説明】
【0041】
1:密封装置 2:軸受装置 3:外輪
4:内輪 4b:内輪外周面 5:円すいころ(転動体)
6:保持器 7:主シールリップ部 7a:先端部
8:副シールリップ部 8a:先端部 8b:径方向外側面
8c:径方向内側面 8d:延設部 8e:凹状部
9:芯金 10:グリース溜り 11:バネリング
12:凸条 S:空間 R:回転方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7