(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面等を参照し、本発明の実施形態について説明する。
【0012】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態による水素ガス充填システムの概略構成図である。
【0013】
図1に示す水素ガス充填システム100は、ディスペンサ30を有する燃料ガス充填ステーションとしての水素ガス充填ステーション101と、ディスペンサ30から水素ガスが充填される充填タンク210を備えた燃料電池車両200と、を有している。
【0014】
水素ガス充填ステーション101は、コンプレッサ10と、水素ガスを貯蔵する貯蔵タンク20と、貯蔵タンク20から充填される水素ガスを車両200の充填タンク210に充填するディスペンサ30と、当該システムを統括的に制御するステーションコントローラ40と、を備える。
【0015】
コンプレッサ10は、トレーラ等により輸送されてくる輸送用タンク1内の水素ガスを加圧圧縮し、配管11を介して貯蔵タンク20に充填する。貯蔵タンク20は、例えば60MPa程度の高圧で内部に水素を貯蔵するタンクである。
【0016】
また、配管11においてコンプレッサ10の下流で貯蔵タンク20の上流には、コンプレッサ10から貯蔵タンク20への水素の充填と遮断を切り替えるタンク上流開閉弁12が設けられている。
【0017】
貯蔵タンク20とディスペンサ30の間には充填用流路としての充填用配管15が設けられている。この充填用配管15には、タンク下流開閉弁16、プレクーラ18、流量調整弁19、及び流量センサ22が上流側から順に配置されている。タンク下流開閉弁16は、貯蔵タンク20から充填用配管15を介したディスペンサ30への水素の送出・遮断を切り替える弁である。
【0018】
プレクーラ18は、急速充填時などにおいて車両200側の充填タンク210内の水素ガスの温度上昇を防止するために、貯蔵タンク20からディスペンサ30に送り出される水素ガスを予め冷却する。流量調整弁19は、貯蔵タンク20からディスペンサ30に供給される水素ガスの流量を調整する。流量センサ22は、充填用配管15を流れる水素ガスの流量を検出する流量センサ22(ステーションガス流量検出手段)が設けられている。なお、流量センサ22は、後述するディスペンサ30の近傍に設けられてもよい。
【0019】
ディスペンサ30は、貯蔵タンク20から水素ガスを車両200の充填タンク210に充填する。ディスペンサ30は、充填ホース31と、充填ホース31の先端に設けられた充填ノズル32と、水素ガスの充填状態情報等を表示する表示部33と、車両200から送信される車両側情報を受信する受信部34と、を備える。
【0020】
具体的に、ディスペンサ30は、充填配管15内の水素圧力と車両200の充填タンク210内の水素圧力との差圧を利用して、充填タンク210内に水素ガスを充填する。ディスペンサ30からの水素ガスは、充填ホース31及び充填ノズル32を通じて車両200に充填される。充填ノズル32は、車両200の充填タンク210の充填口に対して着脱可能に構成されている。
【0021】
さらに、ディスペンサ30は、充填用配管15の水素ガス圧力(ステーションガス圧力)を検出するステーションガス圧力センサ35(ステーションガス圧力検出手段)と、充填用配管15の水素ガスの温度(ステーションガス温度)を検出するステーションガス温度センサ36(ステーションガス温度検出手段)と、を有している。
【0022】
表示部33には、水素ガスの充填状況や充填終了予定時間等が表示される。なお、表示部33は、目標水素ガス充填量や充填料金等、水素ガス充填の終了に関するパラメータを任意に設定できるようにタッチパネル式ディスプレイとして構成されてもよい。
【0023】
ディスペンサ30は、同期手段としての受信部34を介して、車両200の送信部220から車両側情報を受信する。この送信部220から受信部34への通信は、例えば100ミリ秒間隔で赤外線通信を行う。なお、車両側の送信部220を充填タンク210の充填口近傍に設け、ディスペンサ側の受信部34を充填ノズル32に設け、送信部220及び受信部34は、充填ノズル32が充填タンク210の充填口に接続された時に赤外線通信等の通信を開始するように構成されてもよい。
【0024】
ステーションコントローラ40は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えるマイクロコンピュータとして構成される。
【0025】
ステーションコントローラ40は、タンク上流開閉弁12、タンク下流開閉弁16、及び流量調整弁19の開度を制御する。ステーションコントローラ40には、流量センサ22、ステーションガス圧力センサ35、及びステーションガス温度センサ36等からのステーション側情報、及びディスペンサ30の受信部34で受信される車両側情報が入力される。
【0026】
さらに、本実施形態では、ステーションコントローラ40は、上記ステーション側情報及び車両側情報に基づいて充填用配管15や充填ノズル32において水素ガス漏れが生じているかどうかを判定する水素ガス漏れ判定制御を実行する燃料ガス漏洩判定手段として機能する。この燃料ガス漏れ判定制御については後に詳細に説明する。なお、本実施形態では、ディスペンサ30の受信部34、車両200の送信部220、及びステーションコントローラ40が、ステーションガス流量Qm、ステーションガス圧力P1、及びステーションガス温度T1と、車両タンク圧力P2、及び車両タンク温度T2と、を同期させる同期手段として機能する。
【0027】
なお、水素ガス充填ステーション101は、既製の水素ガスを貯蔵タンク20に貯蔵するオフサイト型システムとして構成されているが、システム内で製造した水素ガスを貯蔵タンク20に貯蔵するオンサイト型システムとして構成されてもよい。
【0028】
一方、車両200は、上述のディスペンサ30により水素ガスが充填される充填タンク210と、車両コントローラ230と、を備えている。
【0029】
充填タンク210には、該充填タンク210内の水素ガスの圧力を検出する車両タンク圧力センサ211(タンク圧力検出手段)と、充填タンク210内の水素ガスの温度を検出する車両タンク温度センサ212(ステーションガス温度検出手段)と、が設けられている。また、充填タンク210は、車両タンク圧力センサ211により検出された水素ガスの圧力検出値(車両タンク圧力)、及び車両タンク温度センサ212により検出された水素ガスの温度検出値(車両側水素温度検出値)を車両コントローラ230に送信する図示しない送信手段を有している。
【0030】
また、車両200には、上述したように、車両コントローラ230から上述の水素ガスの圧力検出値及び温度検出値等の車両側情報をディスペンサ30の受信部34へ送信する送信部220が設けられている。なお、この通信は、例えば赤外線通信等の通信方式により行われる。
【0031】
なお、車両200の送信部220からディスペンサ30の受信部34に送信される車両側情報には、赤外線通信規格を識別するためのプロトコル情報、車両コントローラ230で使用されている通信ソフトウェアのバージョン情報、充填タンク210の圧力仕様情報、及びタンク容積情報等の固定情報が含まれていても良い。また、上記車両側情報には、水素ガスを充填タンク210に充填可能な状態であるか否かを示す充填可否情報等の変動情報が含まれていても良い。
【0032】
上記の構成を有する水素ガス充填システム100における水素ガス充填は、停車している車両200の充填タンク210の充填口にディスペンサ30の充填ノズル32がセットされた後、実行される。
【0033】
具体的には、水素ガス充填を行う際には、ステーションコントローラ40の指令に基づいて、タンク下流開閉弁16及び流量調整弁19が開かれ、タンク上流開閉弁12が閉じられる。この状態で、ステーション101の貯蔵タンク20と車両200の充填タンク210との水素ガスの差圧を利用し、ステーションガス圧力センサ35による圧力検出値が所定閾値(充填停止圧力)に到達するまで、もしくは充填タンク210内における水素ガスの充填率が所定閾値に到達するまで、水素ガスが貯蔵タンク20からディスペンサ30を介して充填タンク210に充填される。本実施形態では、ステーションコントローラ40が、流量調整弁19の開度を調整することにより、水素ガス充填ステーション101側から車両に充填される水素ガスが、一定流量もしくは上記圧力検出値が所定圧力となるように制御される。すなわち、流量調整弁19は、流量センサ22により検出される水素流量に基づいてフィードバック制御される。
【0034】
以上のような構成を有する水素ガス充填システム100では、配管15や充填ホース等の充填用流路で損傷が生じた状態で充填タンク210への充填を行うと、その損傷が生じた部分から水素ガスが漏れ出す。本実施形態では、ステーションコントローラ40がこの水素ガス漏れが生じているかどうかを判定する。
【0035】
図2は、本実施形態に係る水素ガス漏洩判定の流れを説明するためのフローチャートである。特に
図2においては、特に、本実施形態では、水素ガス漏洩判定は、水素ガス充填処理の過程で実行される。
【0036】
先ず、ステップS101においては、ステーションコントローラ40は、水素ガス充填ステーション101による水素ガス充填が開始可能か否かを判定する。例えば、ステーションコントローラ40は、ディスペンサ30の受信部34で受信した車両側情報に含まれる各種データが水素ガス充填ステーション101に適合するものであるかを確認し、水素ガス充填開始の可否を決定する。
【0037】
ステップS101で水素ガス充填の開始ができないと判定された場合には、ステーションコントローラ40は水素ガス充填制御を終了する。これに対して、ステップS101で水素ガス充填の開始が可能であると判定された場合には、ステーションコントローラ40はステップS102の処理を実行する。
【0038】
ステップS102においては、ステーションコントローラ40は、ステーションガス温度T1、及びステーションガス圧力P1に基づいて、水素ガス充填を停止するための基準値となる充填停止圧力Ptを算出する。また、ステーションコントローラ40は、車両200の充填タンク210の仕様等に応じて、水素ガス充填を停止するための基準値となる充填停止充填率SOCt[%]を設定する。
【0039】
なお、水素ガス充填開始前の段階においては、ステーションガス温度センサ36により検出される水素温度T1は環境温度(外気温)となり、水素ガス充填開始前にステーションガス圧力センサ35により検出されるステーションガス圧力P1は車両200の充填タンク210内の初期圧力となる。
【0040】
また、充填停止圧力Ptは、例えば満充填となった場合における充填タンク210内の水素ガスの圧力として算出される。充填停止圧力Ptは、運転者等が要求する充填タンク210への充填水素量に応じて変化する値として算出されてもよい。
【0041】
さらに、充填停止充填率SOCtは、例えば満充填となった場合における充填タンク210内に占める水素ガスの割合である。充填停止充填率SOCtは、運転者等が要求する充填タンク210への充填水素量に応じて変化する値として設定されてもよい。
【0042】
ステップS103では、ステーションコントローラ40は、タンク下流開閉弁16及び流量調整弁19を開いて、水素ガス充填開始処理を実行する。これにより、水素ガス充填ステーション101のディスペンサ30から車両200の充填タンク210に対して水素ガスの充填が開始される。
【0043】
ステップS104において、ステーションコントローラ40は、流量センサ22により検出される充填用配管15の水素ガスの流量(ステーションガス流量Qm)を監視する。具体的には、ステーションコントローラ40は、流量センサ22により検出されているリアルタイムのステーションガス流量Qmの値を取得し監視する。
【0044】
ステップS105では、ステーションコントローラ40は、ステーションガス圧力P1及びステーションガス温度T1を含むステーション側情報と、車両タンク圧力P2及び車両タンク温度T2を含む車両側情報と、に基づいて、車両200の充填タンク210に充填されるべき水素の理論的な充填流量Qth(以下では理論充填ガス流量Qthとも記載する)を算出する。すなわち、この理論充填ガス流量Qthとは、充填ノズル32を通じて車両200の充填タンク210に充填される際の実際の流量を予測した値である。
【0045】
この理論充填ガス流量Qthは、下記の式により算出される。
【0047】
ただし、配管内流れが亜音速流れのときは式(1)を用い、チョーク流れ(音速)のときは式(2)を用いる。ここで、αSは、配管15や充填ホース31における合成有効断面積と呼ばれる定数であり、予め試験体を用いた実験等により定められている。すなわち、αSは既知の値である。気体定数Rは、熱力学的定数であり、約8.31の値をとる。κは水素の比熱比であり、検出されるステーションガス温度T1、及びステーションガス圧力P1から求められる。
【0048】
したがって、式(1)及び式(2)のいずれの場合も、右辺の各パラメータは、一意に定まり、結果として理論充填ガス流量Qthを求めることができる。ステーションコントローラ40は、この理論充填ガス流量Qthを図示しないメモリに格納しておく。
【0049】
ステップS106において、ステーションコントローラ40は、理論充填ガス流量Qthとステーションガス流量Qmの大小を判定する。具体的には、ステーションコントローラ40は、上述のステップS104においてリアルタイムに取得されているステーションガス流量QmとステップS105においてメモリに格納されている理論充填ガス流量Qthの差Qm−Qthを算出し、この差Qm−Qthが予め定められた閾値より大きいか否かを判定する。
【0050】
この判定の結果、差Qm−Qthが予め定められた閾値より大きいと判断された場合(すなわち、ステーションガス流量Qmが理論充填ガス流量Qthより大きいと判断された場合)には、貯蔵タンク20とディスペンサ30の間に位置する流量センサ22により検出されているリアルタイムのステーションガス流量Qmの値が、充填ノズル32を通じて車両200の充填タンク210に充填される際に仮定される理論充填ガス流量Qthの値より大きくなっていることから、流量センサ22から充填ノズル32の間において流量の損出があり水素ガス漏れが生じていると考えられる。したがって、この場合、ステーションコントローラ40は、水素ガス漏れが生じていると判断する。
【0051】
このように水素ガス漏れが生じていると判断された場合、ステップS107において、ステーションコントローラ40は、安全性の確保、水素ガス漏れの原因の特定、及び修理などを行う観点から、水素の充填を中止する処理を行う。具体的には、ステーションコントローラ40は、タンク下流開閉弁16、及び流量調整弁19を閉弁制御する。
【0052】
一方で、ステップS106における判定の結果、差Qm−Qthが予め定められた閾値より小さいと判断された場合(すなわち、ステーションガス流量Qmが理論充填ガス流量Qth以下であると判断された場合)は、貯蔵タンク20とディスペンサ30の間に配置されている流量センサ22により検出されているリアルタイムのステーションガス流量Qmの値が、充填ノズル32を通じて車両200の充填タンク210に充填される際の理論充填ガス流量Qthの値以下であることから、流量センサ22から充填ノズル32の間において流量の損出が無く水素ガス漏れが生じていないと考えられる。したがって、この場合、ステーションコントローラ40は水素ガス漏れが生じていないと判断する。そして、水素ガス漏れが生じていないと判断されるとステップS108に進む。
【0053】
ステップS108において、ステーションコントローラ40は、S105で検出したステーションガス圧力P1又は車両タンク圧力P2、及び車両タンク温度T2に基づいて、現在の充填タンク210内における水素ガスの充填率SOCsを算出する。なお、充填率は、例えば、以下の(3)式に基づいて算出される。
【0055】
(3)式において、分子のd(P,T)は、水素圧力がP、水素温度がTである時のガス密度を表わしている。分母のd(70MPa,15℃)は、予め設定された値であり、水素圧力が70MPa、水素温度が15℃である時のガス密度を表わしている。
【0056】
ステップS109において、ステーションコントローラ40は、S105で検出したステーションガス圧力P1が充填停止圧力Ptより小さく、かつS108で算出した水素ガス充填率SOCsが充填停止充填率SOCtより小さいかどうかを判定する。
【0057】
ステーションガス圧力P1が充填停止圧力Ptより小さく、かつ水素ガス充填率SOCsが充填停止充填率SOCtより小さい場合、ステーションコントローラ40は水素ガス充填を継続可能と判断する。そして、ステーションコントローラ40は、再び水素ガス漏れ判定を行いつつ水素ガス充填を行うべく、S104以降の処理を再度実行する。
【0058】
これに対して、ステーションガス圧力P1が充填停止圧力Pt以上、又は水素ガス充填率SOCsが充填停止充填率SOCt以上の場合、ステーションコントローラ40は、水素ガス充填を継続不能、すなわち満充填状態であると判断し、S110の処理を実行する。
【0059】
ステップS110では、ステーションコントローラ40は、水素ガス充填停止処理を実行する。具体的には、タンク下流開閉弁16、及び流量調整弁19を閉弁制御して、水素ガス充填制御を終了する。
【0060】
上記した本実施形態の水素ガス充填システム100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0061】
本実施形態の水素ガス充填システム100は、水素ガス充填ステーション101から充填タンク210を備えた車両200に燃料ガスを充填する水素ガス充填システム100である。この水素ガス充填システム100において、水素ガス充填ステーション101は、該水素ガス充填ステーション101における水素ガスの充填用配管15の流量であるステーションガス流量Qmを検出する流量センサ22と、該水素ガス充填ステーション101における水素ガスの充填用配管15の圧力であるステーションガス圧力P1を検出するステーションガス圧力センサ35と、該水素ガス充填ステーション101における燃料ガスの充填用配管15の温度であるステーションガス温度を検出するステーションガス温度センサ36と、を有する。また、車両200は、充填タンク210内の圧力である車両タンク圧力P2を検出する車両タンク圧力センサ211と、を有する。
【0062】
そして、本実施形態の水素ガス充填システム100では、ステーションガス流量Qm、ステーションガス圧力P1、ステーションガス温度T1を含むステーション側情報と、車両タンク圧力P2を含む車両側情報と、を同期させて同期情報を得るディスペンサ30の受信部34、車両200の送信部220、及びステーションコントローラ40と、受信部34、送信部220、及びステーションコントローラ40により得られた同期情報に基づいて水素ガスの漏れの有無を判定する燃料ガス漏洩判定手段であるステーションコントローラ40と、を備える。
【0063】
本実施形態に係る水素ガス充填システム100の構成によれば、ステーションコントローラ40は、車両200側において検出される車両タンク圧力P2等の水素ガス漏れ判定に係る車両側情報のみを用いるのではなく、この車両側情報と水素ガス充填ステーション側情報であるステーションガス流量Qm、ステーションガス圧力P1、及びステーションガス温度T1を同期させた同期情報である理論充填ガス流量Qthに基づき水素ガスの漏れの有無を判定する。
【0064】
このように車両側情報と燃料ガス充填ステーション側情報との同期情報である理論充填ガス流量Qthに基づいて、水素ガスの漏れの有無を判定することで、水素ガスが充填用配管15や充填ホース31を流れている水素ガス充填中であっても、水素ガスの漏れの有無を判定することが可能となる。したがって、従来のように、水素ガス漏れを検知するにあたり水素ガス充填を停止していたことによる水素ガス充填時間の増大やそれに伴う逆止弁等の設備の耐久性の低下等を防止することができる。
【0065】
本実施形態に係る水素ガス充填システム100では、さらに、ステーションコントローラ40は、水素ガス漏れと判断すると、水素ガスの充填を中止する燃料ガス充填中止手段として機能する。これにより、水素ガス漏れが生じた場合に確実に水素ガスの充填を中止して、システムの安全を図ることができる。
【0066】
さらに、本実施形態に係る水素ガス充填システム100では、同期手段であるステーションコントローラ40は、上記ステーション側情報及び上記車両側情報に基づいて、車両200の充填タンク210に充填されるべき理論的な燃料ガス充填流量である理論充填ガス流量Qthを上記同期情報として算出する。そして、燃料ガス漏洩判定手段であるステーションコントローラ40は、理論充填ガス流量Qthとステーションガス流量Qmとの差異が所定値以上となった場合に、水素ガスの漏れと判断する。
【0067】
このように、水素ガス充填ステーション101の充填用配管15のステーションガス流量Qmと、車両200の充填タンク210に充填されるべき理論的な燃料ガス充填流量である理論充填ガス流量Qthの差異が所定値以上であるかどうかを見て、水素ガス漏れを判定することで、水素ガス漏れの判定をより確実且つ高精度に実行することができる。
【0068】
なお、上述したステーション側情報には、ステーションガス流量Qm、ステーションガス圧力P1、及びステーションガス温度T1以外にも水素ガス漏れ判定を行うために有用な他の情報を含んでいても良い。また、車両側情報についても同様に、車両タンク圧力P2以外にも、水素ガス漏れ判定を行うために有用な他の情報を含んでいても良い。
【0069】
また、上記実施形態に係る水素ガス漏れ判定に係る各処理は、ステーションコントローラ40ではなく、車両コントローラ230で実行するようにしても良いし、これら両コントローラ40、230の双方で行うようにしても良い。また、上述の同期情報である理論充填ガス流量Qthの算出方法は、上述の式(1)、(2)に基づいて求める方法に限られず、当業者が想定し得る他の任意の算出方法を用いることができる。さらに、理論充填ガス流量Qthを求めること以外にも、上記ステーション側情報及び上記車両側情報を同期させて得られる他の同期情報(水素ガス漏れ判定用のパラメータ)に基づいて水素ガス漏れを判定するようにしても良い。
【0070】
さらに、水素ガス漏洩判定に係る処理(ステップS104〜ステップS107)を実行する前に、充填タンク210に対して充填が行われているかどうかを判定する処理を行い、充填タンク210に対して充填が行われていると判定された場合に、ステップS104〜ステップS107の処理を実行するようにしても良い。
【0071】
例えば、ステーションコントローラ4は、上記ステップS103とステップS104との間において、ステップS108と同様の方法による水素ガス充填率SOCsの算出を行い、この算出された水素ガス充填率SOCsが充填停止充填率SOCt未満であるかどうかを判定し、水素ガス充填率SOCsが充填停止充填率SOCt未満であると判定するとステップS104〜ステップS107の処理を実行する処理を行う。なお、ステーションコントローラ4は、水素ガス充填率SOCsが充填停止充填率SOCt以上であると判定した場合、充填中ではないと判断し、処理を終了する。
【0072】
特に、上記水素ガス充填率SOCsの算出にあたっては、少なくとも充填タンク210内の温度である車両タンク温度T2を用いる。好ましくは、ステーションガス圧力P1又は車両タンク圧力P2、及び車両タンク温度T2に基づいて、上記式(3)から水素ガス充填率SOCsを算出する。
【0073】
すなわち、この場合、本実施形態の水素ガス充填システム100におけるステーションコントローラ4は、充填タンク210内の温度である車両タンク温度T2を検出する車両タンク温度センサ212と、少なくとも車両タンク温度T2に基づいて充填タンク210内における水素ガス充填率SOCsを算出する水素ガス充填率算出手段と、算出された水素ガス充填率SOCsが、充填停止充填率SOCt未満の場合に充填中であると判定する充填状態判定手段として機能する。そして、水素ガス漏洩判定手段としてのステーションコントローラ4は、水素ガスの充填中と判定した場合に、上記同期情報に基づく水素ガスのガス漏れの有無の判定(ステップS104〜ステップS107)を行う。
【0074】
これにより、本実施形態に係る上述の水素ガス漏洩判定に係る処理は、水素充填が行われている最中に確実に実行されることとなるので、水素充填が行われていない状態で水素ガス漏洩判定に係る処理が実行されることによる誤検出の発生を防止することができる。
【0075】
<第2実施形態>
図3は、本発明の第2実施形態に係る水素ガス漏洩判定の流れを説明するためのフローチャートである。なお、以下の実施形態では、第1実施形態と同じ機能を果たす構成等には同一の符号を用い、重複する説明を適宜省略する。
【0076】
本実施形態では、車両200の車両コントローラ230が、車両タンク圧力センサ211の車両タンク圧力P2や車両タンク圧力センサ211の車両側水素温度検出値T2に基づき、充填タンク210に何らかの異常を検知した場合に車両充填規制指令信号を発する。また、車両コントローラ230は、充填タンク210に何らかの異常を検知した場合以外でも、水素ガス充填を中止すべき種々の安全上の問題に係る事象を検知した場合に、車両充填規制指令信号を発する。
【0077】
そして、車両コントローラ230は、車両充填規制指令信号を送信部220を介して、ディスペンサ30の受信部34に送信する。さらに、ステーションコントローラ40は、受信部34を介して車両充填規制指令信号を受信する。すなわち、本実施形態では、車両200側で水素ガス充填が規制されるべき事情が生じた場合に、ステーションコントローラ40が車両充填規制指令を受信することとなる。
【0078】
図3に示すように、本実施形態においても第1実施形態と同様に、ステーションコントローラ40は、先ず、ステップS101〜ステップS103を経て水素ガス充填を開始する。さらに、ステーションコントローラ40は、第1実施形態と同様に、水素ガス漏れの有無の判定のために、ステップS104において流量センサ22により検出されているリアルタイムのステーションガス流量Qmの値を取得し監視しつつ、ステップS105において充填ノズル32を通じて車両200の充填タンク210に充填される際の流量の予測値である理論充填ガス流量Qthを算出する。
【0079】
そして、ステップS201において、ステーションコントローラ40は、上述した車両充填規制指令信号を監視する。すなわち、ディスペンサ30の受信部34において車両充填規制指令信号を受信しているかどうか(車両コントローラ230の送信部220が車両充填規制指令信号を出力したかどうか)を監視する。
【0080】
ステップS202において、ステーションコントローラ40は、ステップS201において車両充填規制指令信号を受信したかどうかを判定する。車両充填規制指令を受信していないと判断されると、ステップS108以降の処理が行われる。すなわち、車両200側に異常は検出されていないと判断されているので、ステーションガス流量Qmと理論充填ガス流量Qthの比較による水素ガス漏れを行うまでもなく水素ガス充填が継続されることとなる。一方で、ステップS202において、車両充填規制指令を受信した判断されると、ステップS106に進む。
【0081】
そして、ステップS106においては、第1実施形態の場合と同様に、ステーションコントローラ40は、理論充填ガス流量Qthとステーションガス流量Qmの大小を判定する。この判定の結果、ステーションガス流量Qmが理論充填ガス流量Qth以下であると判断された場合、すなわち水素ガス漏れが生じていないと判断された場合は、第1実施形態と同様にステップS108以降の処理が行われる。このように、本実施形態では、ステップS202で車両充填規制指令が無いと判断されていても、当該判断の精度が低い場合などを考慮し、ステップS106において水素ガス漏れが生じていないと判断された場合には、水素ガス充填が継続されることとなる。
【0082】
一方で、ステップS106において、ステーションガス流量Qmが理論充填ガス流量Qthより大きいと判断された場合、すなわち水素ガス漏れが生じていると判断された場合は、ステップS107に進み、ステーションコントローラ40が水素の充填を中止する処理を行う。このように、本実施形態では、車両充填規制指令があり、且つステーションガス流量Qmと理論充填ガス流量Qthの比較に基づいて水素ガス漏れが生じていると判断された場合には水素ガス充填を中止する。
【0083】
上記した本実施形態の水素ガス充填システム100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0084】
本実施形態に係る水素ガス充填システム100では、車両200は、所定の充填停止条件が成立するとディスペンサ30の水素ガスの充填の規制を指令する水素ガス充填規制信号を燃料ガス充填ステーション101に出力する燃料ガス充填停止信号出力部としての車両コントローラ230を有する。そして、ステーションコントローラ40は、ステーションガス流量Qmと理論充填ガス流量Qthの差が所定値以上で且つ車両コントローラ230により車両充填規制指令信号が出力されている場合に、水素ガス漏れ状態と判断する(ステップS202、ステップS106、ステップS107)。
【0085】
したがって、ステーションコントローラ40によるステーションガス流量Qmと理論充填ガス流量Qthの比較による水素ガス漏れ判定及び車両コントローラ230による車両充填規制指令の双方の条件が揃って始めて水素ガス充填が中止されることとなるので、水素ガス充填を中止させるべき状態をより高精度に検出することができ、水素ガス充填の中止処理が頻発してしまうことを防止することができる。
【0086】
<第3実施形態>
図4は、本発明の第3実施形態に係る水素ガス漏洩判定の流れを説明するためのフローチャートである。なお、第1実施形態又第2実施形態と同じ機能を果たす構成等には同一の符号を用い、重複する説明を適宜省略する。
【0087】
本実施形態では、上述のステップS101〜ステップS103の処理を行った後に、ステップS201の車両充填規制指令信号の監視及びステップS202における車両充填規制指令信号の受信の有無の判定を行う。そして、車両充填規制指令を受信した判断されると、ステップS107に進み、ステーションコントローラ40が水素の充填を中止する処理を行う。
【0088】
一方で、ステップS202で車両充填規制指令を受信していないと判断されると、上述のステップS104におけるステーションガス流量Qmの監視、ステップS105における理論充填ガス流量Qthの算出、及びステップS106における理論充填ガス流量Qthとステーションガス流量Qmの大小の判定が行われる。
【0089】
そして、ステップS106において、ステーションガス流量Qmが理論充填ガス流量Qth以下であると判断された場合、すなわち水素ガス漏れが生じていないと判断された場合は、第2実施形態と同様にステップS108以降の処理が行われる。
【0090】
一方で、ステーションガス流量Qmが理論充填ガス流量Qthより大きいと判断された場合、すなわち水素ガス漏れが生じていると判断された場合は、ステップS107に進み、ステーションコントローラ40が水素の充填を中止する処理を行う。
【0091】
したがって、本実施形態では、ステーションコントローラ40が車両充填規制指令信号を受信した場合か、或いはステーションガス流量Qmが理論充填ガス流量Qthより大きいと判断されたいずれかの場合に、水素の充填が中止されることとなる。
【0092】
上記した本実施形態の水素ガス充填システム100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0093】
本実施形態に係る水素ガス充填システム100では、車両200は、所定の充填停止条件が成立するとディスペンサ30の水素ガスの充填の規制を指令する水素ガス充填規制信号を燃料ガス充填ステーション101に出力する燃料ガス充填停止信号出力部としての車両コントローラ230を有する。そして、ステーションコントローラ40は、ステーションガス流量Qmと理論充填ガス流量Qthの差が所定値以上で且つ燃料ガス充填規制信号出力手段により車両充填規制指令信号が出力されている場合に、水素ガス漏れ状態と判断する(ステップS202、ステップS106、ステップS107)。
【0094】
したがって、車両コントローラ230による車両充填規制指令が発せられている状態、又はステーションコントローラ40によりステーションガス流量Qmと理論充填ガス流量Qthの比較による水素ガス漏れと判断されている状態のいずれであっても、水素ガス充填が中止されることとなるので、システムが冗長化され、安全性がより向上される。
【0095】
具体的に、本実施形態では、ステーションコントローラ40による水素ガス漏れの判定は、車両200への水素ガス充填と並行して実行されることが想定されている、したがって、上述した車両200から発せられる車両充填規制指令信号を監視し、ステーションコントローラ40がこれを受信した場合には、仮にステーションガス流量Qmと理論充填ガス流量Qthとの比較によって水素ガス漏れではないと判断されるような場合であっても、水素ガス充填が停止されることとなる。
【0096】
一方で、本実施形態では、ステーションコントローラ40は、仮に車両充填規制指令信号を受信していなかったとしても、ステーションガス流量Qmと理論充填ガス流量Qthの比較に基づいて水素ガス漏れが生じていると判断された場合に水素ガス充填が中止される(
図4のステップS106、ステップS107参照)。したがって、車両200側において検知できなかった水素ガス漏れが生じた場合であっても、ステーションコントローラ40がこれを検知して水素ガス充填を停止することとなる。
【0097】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。また、上記第1〜第3実施形態は、任意に組み合わせが可能である。