特許第6604078号(P6604078)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6604078
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】レーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20191031BHJP
【FI】
   B23K26/00 B
   B23K26/00 M
【請求項の数】6
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-149873(P2015-149873)
(22)【出願日】2015年7月29日
(65)【公開番号】特開2017-29992(P2017-29992A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】特許業務法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】楠本 至央
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−188587(JP,A)
【文献】 特開2008−87017(JP,A)
【文献】 特開2008−6466(JP,A)
【文献】 特開2003−103384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 − 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物を加工する為のレーザを出射するレーザ出射部と、
通信可能に接続され、且つ入力操作部を有するパーソナルコンピュータから、前記レーザによる加工内容を示す加工データを取得するデータ取得部と、
前記加工対象物上に前記加工内容を示す為の可視光レーザを出射する可視光出射部と、
前記レーザ出射部から出射されたレーザ又は前記可視光出射部から出射された可視光レーザを走査する走査部と、
前記レーザ出射部と、前記可視光出射部及び前記走査部を制御する制御部と、
ユーザによる操作を受け付ける操作部と、
前記データ取得部により取得された前記加工データであって、前記加工データの加工内容を示す第1データと、前記加工データの加工内容を、前記第1データよりも簡略化して示す第2データと、を含む前記加工データを記憶する記憶部と、を有し、
前記制御部は、
前記レーザ出射部及び前記走査部を制御することにより、前記記憶部に記憶された前記加工データに基づいて前記加工対象物を加工する加工処理を実行し、
前記操作部による所定のプレビュー表示操作を受け付けた場合に、
前記記憶部に記憶され、前記加工処理に用いられた前記加工データに含まれる前記第1データ又は前記第2データに基づいて、前記可視光出射部及び前記走査部を制御することにより、前記加工データの加工内容を、加工対象物に対して前記可視光を用いて表示する
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記操作部による前記プレビュー表示操作を受け付けた場合に、前記第1データ及び前記第2データが前記記憶部に記憶されているか否かを判断する判断部を有し、
前記制御部は、
前記判断部によって、前記第1データ及び前記第2データが前記記憶部に記憶されていると判断された場合に、前記記憶部に記憶されている前記第1データ又は前記第2データに基づいて、前記可視光出射部及び前記走査部を制御することにより、前記加工データの加工内容を、加工対象物に対して前記可視光を用いて表示する
ことを特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記操作部は、前記加工データの加工内容を、前記可視光を用いてそのまま表示する第1プレビュー表示と、前記加工データの加工内容の概略を、前記可視光を用いて表示する第2プレビュー表示との何れかに対するユーザの選択を受け付け、
前記制御部は、
前記操作部により第1プレビュー表示の選択操作を受け付けた場合に、前記記憶部に記憶された前記第1データに基づいて、前記可視光出射部及び前記走査部を制御し、前記加工データの加工内容を加工対象物に対して前記可視光を用いて表示し、
前記操作部により第2プレビュー表示の選択操作を受け付けた場合に、前記記憶部に記憶された前記第2データに基づいて、前記可視光出射部及び前記走査部を制御し、前記加工データの加工内容の概略を加工対象物に対して前記可視光を用いて表示する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記第1データは、前記データ取得部により取得され、所定の処理に用いられた前記加工データの加工内容に関し、当該加工内容を構成する複数の加工点の位置情報を含んで構成されており、
前記第2データは、前記加工データの加工内容が加工される加工領域の輪郭の位置情報によって構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記操作部は、前記記憶部に記憶された前記第1データ及び前記第2データに関し、前記加工内容を構成する加工点の位置情報を変更する位置編集に関する操作を受け付け、
前記操作部によって受け付けられた位置編集に関する操作に基づいて、前記記憶部に記憶された前記第1データ及び前記第2データに関し、前記加工内容を構成する加工点の位置情報を変更して、当該加工内容の位置に関する編集を行う位置編集部を有する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記操作部は、前記記憶部に記憶された前記第1データに従って前記加工対象物に加工を施す際の前記レーザの走査に関する情報を変更する濃度編集に関する操作を受け付け、
前記操作部によって受け付けられた濃度編集に関する操作に基づいて、前記記憶部に記憶された前記第1データに関し、前記レーザの走査に関する情報を変更することにより、前記レーザにより前記加工内容を加工する際の加工濃度に関する編集を行う濃度編集部を有する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載のレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザを照射して加工対象物の表面に加工を施すレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ加工装置は、加工対象物に対して、レーザを照射して加工を施すように構成されており、加工対象物上の任意の位置となるように、出射されたレーザを順次走査し、文字や記号等を描くような加工を施している。
【0003】
このようなレーザ加工装置に関する発明の一つとして、特許文献1記載の発明が知られている。特許文献1記載のレーザマーカは、レーザ発振器及び偏向光学系を有するヘッド部と、コントローラ部とを備えており、コントローラ部に対して接続されたPC等を用いて入力された印字文字等の情報に基づいて、レーザを走査するように構成されている。
【0004】
そして、レーザ加工装置に関する他の発明の一つとして、特許文献2記載の発明が知られている。特許文献2記載のレーザ印字加工装置は、YAGレーザ発振器と、He−Neレーザ発振器と、可動反射鏡とを有しており、YAGレーザ発振器からのレーザによる印字走査に先立って、He−Neレーザ発振器からの可視光レーザによって、印字範囲照射の走査を行うことにより、印字走査前に予め加工対象物上に印字範囲を表示するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−088965号公報
【特許文献2】特開昭59−045091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の発明のように、ヘッド部及びコントローラ部からなるレーザマーカ(本発明のレーザ加工装置に相当)に、PC等の外部装置を接続する構成の場合、レーザによる加工内容を示す加工データの作成等は、処理性能や処理負担の観点から、PC等で作成する構成となる場合が想定される。この場合、レーザ加工装置におけるメモリの容量や操作部の性能等は、コストダウン等を考慮すると、必要最低減の機能になる傾向にある。
【0007】
上述のような構成であっても、加工対象物上の所望の位置に、レーザによる加工を正確に施す為には、特許文献2記載の発明のように、レーザの走査前に予め加工対象物上に可視光によって加工内容(例えば、加工領域)を表示する機能(以下、プレビュー機能)を実装することは、非常に有用である。
【0008】
しかしながら、レーザ加工装置にPC等の外部装置を接続する構成の場合、可視光によって加工内容(例えば、加工領域)を表示する為には、当該加工内容を示す加工データを、PC等の外部装置からレーザ加工装置に入力する必要があり、プレビュー機能を利用する度に、外部装置の操作を行うことになる為、煩雑であった。そして、このような場合においては、外部装置を除いて、レーザ加工装置単体で、前記プレビュー機能を実現することは困難である。又、レーザ加工装置におけるメモリの容量や操作部の性能等が必要最低減の機能になる為、レーザ加工装置単体で、加工データを生成することも難しい。つまり、この点から鑑みても、レーザ加工装置単体で、前記プレビュー機能を実現することは困難である。
【0009】
本開示は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、レーザを照射して加工対象物の表面に加工を施すレーザ加工装置に関し、可視光を用いたプレビュー機能の利便性を高め得るレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明の一側面に係るレーザ加工装置は、加工対象物を加工する為のレーザを出射するレーザ出射部と、通信可能に接続され、且つ入力操作部を有するパーソナルコンピュータから、前記レーザによる加工内容を示す加工データを取得するデータ取得部と、前記加工対象物上に前記加工内容を示す為の可視光レーザを出射する可視光出射部と、前記レーザ出射部から出射されたレーザ又は前記可視光出射部から出射された可視光レーザを走査する走査部と、前記レーザ出射部と、前記可視光出射部及び前記走査部を制御する制御部と、ユーザによる操作を受け付ける操作部と、前記データ取得部により取得された前記加工データであって、前記加工データの加工内容を示す第1データと、前記加工データの加工内容を、前記第1データよりも簡略化して示す第2データと、を含む前記加工データを記憶する記憶部と、を有し、前記制御部は、前記レーザ出射部及び前記走査部を制御することにより、前記記憶部に記憶された前記加工データに基づいて前記加工対象物を加工する加工処理を実行し、前記操作部による所定のプレビュー表示操作を受け付けた場合に、前記記憶部に記憶され、前記加工処理に用いられた前記加工データに含まれる前記第1データ又は前記第2データに基づいて、前記可視光出射部及び前記走査部を制御することにより、前記加工データの加工内容を、加工対象物に対して前記可視光を用いて表示することを特徴とする。
【0011】
当該レーザ加工装置は、レーザ出射部と、データ取得部と、可視光出射部と、走査部と、制御部とを有しており、データ取得部により取得した加工データに従って、レーザ出射部から出射されたレーザを走査することで、加工対象物に加工を施すことができる。又、当該レーザ加工装置は、前記データ取得部により取得した第1データと第2データを記憶部に記憶しており、前記操作部による所定のプレビュー表示操作を受け付けた場合に、前記記憶部に記憶されている前記第1データ又は前記第2データに基づいて、前記可視光出射部及び前記走査部を制御することにより、前記加工データの加工内容を、加工対象物に対して前記可視光を用いて表示し得る。従って、当該レーザ加工装置によれば、データ取得部によって、データを再度取得することなく、記憶部の第1データ又は第2データを用いて、加工内容を加工対象物上に表示するプレビュー機能を実現することができる。又、当該レーザ加工装置によれば、プレビュー機能によって、加工対象物を無駄に消費することなく、加工対象物上の所望の位置に、レーザによる加工を正確に施すことができる。更に、当該レーザ加工装置によれば、記憶部から第1データ又は第2データを読み出す為、データ取得部によって加工データを取得する場合に比べて、プレビュー機能を迅速に実現し得る。
【0012】
本発明の他の側面に係るレーザ加工装置は、請求項1記載のレーザ加工装置であって、前記操作部による前記プレビュー表示操作を受け付けた場合に、前記第1データ及び前記第2データが前記記憶部に記憶されているか否かを判断する判断部を有し、前記制御部は、前記判断部によって、前記第1データ及び前記第2データが前記記憶部に記憶されていると判断された場合に、前記記憶部に記憶されている前記第1データ又は前記第2データに基づいて、前記可視光出射部及び前記走査部を制御することにより、前記加工データの加工内容を、加工対象物に対して前記可視光を用いて表示することを特徴とする。
【0013】
当該レーザ加工装置によれば、前記判断部によって、前記第1データ及び前記第2データが前記記憶部に記憶されていると判断された場合に、前記記憶部に記憶されている前記第1データ及び前記第2データに基づいて、前記可視光出射部及び前記走査部を制御することにより、前記加工データの加工内容を、加工対象物に対して前記可視光を用いて表示する為、前記データ取得部によってデータを再度取得することなく、前記記憶部の第1データ又は第2データを用いて、加工内容を加工対象物上に表示するプレビュー機能を実現することができる。
【0014】
本発明の他の側面に係るレーザ加工装置は、請求項1又は請求項2記載のレーザ加工装置であって、前記操作部は、前記加工データの加工内容を、前記可視光を用いてそのまま表示する第1プレビュー表示と、前記加工データの加工内容の概略を、前記可視光を用いて表示する第2プレビュー表示との何れかに対するユーザの選択を受け付け、前記制御部は、前記操作部により第1プレビュー表示の選択操作を受け付けた場合に、前記記憶部に記憶された前記第1データに基づいて、前記可視光出射部及び前記走査部を制御し、前記加工データの加工内容を加工対象物に対して前記可視光を用いて表示し、前記操作部により第2プレビュー表示の選択操作を受け付けた場合に、前記記憶部に記憶された前記第2データに基づいて、前記可視光出射部及び前記走査部を制御し、前記加工データの加工内容の概略を加工対象物に対して前記可視光を用いて表示することを特徴とする。
【0015】
当該レーザ加工装置は、前記操作部により第1プレビュー表示の選択操作を受け付けた場合に、前記記憶部に記憶された前記第1データに基づいて、前記加工データの加工内容を加工対象物に対して前記可視光を用いて表示する為、可視光を用いて当該加工内容をより正確に表現し得る。一方、前記操作部により第2プレビュー表示の選択操作を受け付けた場合に、当該レーザ加工装置は、前記記憶部に記憶された前記第2データに基づいて、加工データの加工内容の概略を加工対象物に対して前記可視光を用いて表示する為、加工内容を簡略化した態様で表現し得る。即ち、当該レーザ加工装置によれば、操作部によって第1プレビュー表示と、第2プレビュー表示との選択を受け付けることで、ユーザの用途に応じたプレビュー機能を実現することができ、もって、プレビュー機能の利便性を高めることができる。
【0016】
本発明の他の側面に係るレーザ加工装置は、請求項1乃至請求項3の何れかに記載のレーザ加工装置であって、前記第1データは、前記データ取得部により取得され、所定の処理に用いられた前記加工データの加工内容に関し、当該加工内容を構成する複数の加工点の位置情報を含んで構成されており、前記第2データは、前記加工データの加工内容が加工される加工領域の輪郭の位置情報によって構成されていることを特徴とする。
【0017】
当該レーザ加工装置において、前記第1データは、前記データ取得部により取得され、所定の処理に用いられた前記加工データの加工内容に関し、当該加工内容を構成する複数の加工点の位置情報を含んで構成されている。従って、第1データに基づいて、可視光により加工内容を表示した場合、加工内容と完全に同一な内容が表現されることになる為、当該レーザ加工装置は、高精度なプレビュー機能を実現することができる。又、第2データは、前記加工データの加工内容が加工される加工領域の輪郭の位置情報によって構成されている。従って、第2データに基づいて、可視光により加工内容を表示した場合、加工内容が複雑な文字、図柄及び記号の組み合わせで構成されていたとしても、その加工領域の輪郭が表示されることになる。即ち、当該レーザ加工装置は、加工領域の輪郭を表示することで、加工領域の位置、大きさ、範囲を適切にユーザに伝達すると同時に、プレビュー機能に係る処理を軽減し得る。
【0018】
本発明の他の側面に係るレーザ加工装置は、請求項1乃至請求項4の何れかに記載のレーザ加工装置であって、前記操作部は、前記記憶部に記憶された前記第1データ及び前記第2データに関し、前記加工内容を構成する加工点の位置情報を変更する位置編集に関する操作を受け付け、前記操作部によって受け付けられた位置編集に関する操作に基づいて、前記記憶部に記憶された前記第1データ及び前記第2データに関し、前記加工内容を構成する加工点の位置情報を変更して、当該加工内容の位置に関する編集を行う位置編集部を有することを特徴とする。
【0019】
当該レーザ加工装置によれば、前記操作部によって受け付けられた位置編集に関する操作に基づいて、位置編集部によって、前記記憶部に記憶された前記第1データ及び前記第2データに関し、前記加工内容を構成する加工点の位置情報を変更して、当該加工内容の位置に関する編集を行うことができる。即ち、当該レーザ加工装置によれば、外部装置による位置編集が行われた加工データをデータ取得部によって再度取得することなく、第1データ及び第2データに対する位置編集を行うことができ、もって、加工対象物上における加工内容の位置を微調整し得る。
【0020】
本発明の他の側面に係るレーザ加工装置は、請求項1乃至請求項5の何れかに記載のレーザ加工装置であって、前記操作部は、前記記憶部に記憶された前記第1データに従って前記加工対象物に加工を施す際の前記レーザの走査に関する情報を変更する濃度編集に関する操作を受け付け、前記操作部によって受け付けられた濃度編集に関する操作に基づいて、前記記憶部に記憶された前記第1データに関し、前記レーザの走査に関する情報を変更することにより、前記レーザにより前記加工内容を加工する際の加工濃度に関する編集を行う濃度編集部を有することを特徴とする。
【0021】
当該レーザ加工装置によれば、前記操作部によって受け付けられた濃度編集に関する操作に基づいて、濃度編集部によって、前記記憶部に記憶された前記第1データに関し、前記レーザの走査に関する情報を変更することにより、前記レーザにより前記加工内容を加工する際の加工濃度に関する編集を行うことができる。即ち、当該レーザ加工装置によれば、外部装置による濃度編集が行われた加工データをデータ取得部によって再度取得することなく、第1データに対する濃度編集を行うことができ、もって、加工対象物上に加工内容を加工する際の加工濃度を微調整し得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態に関するレーザ加工システムの概略構成を示す説明図である。
図2】レーザ加工装置におけるレーザヘッド部の構成を示す平面図である。
図3】レーザ加工システムの制御系を示すブロック図である。
図4】本実施形態に関するメイン処理プログラムのフローチャートである。
図5】本実施形態に関する加工データの一例を示す説明図である。
図6】プレビュー表示処理プログラムのフローチャートである。
図7】加工データに基づくプレビュー表示の表示例を示す説明図である。
図8】データ編集処理プログラムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に関するレーザ加工装置を、パルスレーザLを用いて加工対象物にマーキング加工を行い得るレーザ加工装置1を含むレーザ加工システム100として具体化した実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0024】
(レーザ加工システム100の概略構成)
先ず、本実施形態に関するレーザ加工システム100の概略構成について、図1を参照しつつ詳細に説明する。レーザ加工システム100は、レーザ加工装置1と、PC7を有しており、PC7によって作成された加工データDW(図5参照)に従って、レーザ加工装置1を制御することで、加工対象物(例えば、ワークW)の表面上に対して、パルスレーザLを2次元走査してマーキング加工を行うように構成されている。尚、ワークWは、加工対象物であるワークWの一例に該当する。
【0025】
(レーザ加工装置の概略構成)
次に、レーザ加工システム100を構成するレーザ加工装置1の概略構成について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1に示すように、本実施形態に関するレーザ加工装置1は、レーザ加工装置本体部2と、レーザコントローラ5と、電源ユニット6により構成されている。
【0026】
レーザ加工装置本体部2は、加工対象物(例えば、ワークW)に対して、パルスレーザLを照射し、当該パルスレーザLを2次元走査して、加工対象物のマーキング加工を行う。レーザコントローラ5は、コンピュータで構成され、PC7と双方向通信可能に接続されると共に、レーザ加工装置本体部2及び電源ユニット6と電気的に接続されている。PC7は、パーソナルコンピュータによって構成されており、加工対象物のマーキング加工を行う際の加工データDWの作成、加工条件に応じた制御パラメータの設定を行う際等に用いられる。
【0027】
そして、レーザコントローラ5は、PC7から送信された加工データDW、制御パラメータ、各種指示情報(例えば、制御コマンド)等に基づいてレーザ加工装置本体部2及び電源ユニット6を駆動制御する。当該レーザコントローラ5には、複数の操作ボタンを有するリモコン65が接続されている。当該リモコン65は、当該複数の操作ボタンに対するユーザの操作に応じて、種々の制御コマンドをレーザコントローラ5に入力可能に構成されており、後述するプレビュー表示処理(S9)やデータ編集処理(S10)等を行う際に操作される。
【0028】
尚、図1は、レーザ加工システム100及びレーザ加工装置1の概略構成を示すものであるため、レーザ加工装置本体部2を模式的に示している。従って、当該レーザ加工装置本体部2の具体的な構成については、後述する。
【0029】
(レーザ加工装置本体部2の概略構成)
次に、レーザ加工装置本体部2の概略構成について、図1図2に基づいて説明する。尚、レーザ加工装置本体部2の説明において、図1の左方向、右方向、上方向、下方向が、それぞれレーザ加工装置本体部2の前方向、後方向、上方向、下方向である。従って、レーザ発振器21のパルスレーザLの出射方向が前方向であり、本体ベース11及びパルスレーザLに対して垂直な方向が上下方向である。そして、レーザ加工装置本体部2の上下方向及び前後方向に直交する方向が、レーザ加工装置本体部2の左右方向である。
【0030】
レーザ加工装置本体部2は、パルスレーザLと可視レーザ光Mをfθレンズ20から同軸上に出射するレーザヘッド部3(図2参照)と、レーザヘッド部3が上面に固定される略箱体状の加工容器(図示せず)とから構成されている。
【0031】
図2に示すように、レーザヘッド部3は、本体ベース11と、パルスレーザLを出射するレーザ発振ユニット12と、光シャッター部13と、光ダンパー14と、ハーフミラー15と、ガイド光部16と、反射ミラー17と、光センサ18と、ガルバノスキャナ19と、fθレンズ20等から構成され、略直方体形状の筐体カバー(図示せず)で覆われている。
【0032】
レーザ発振ユニット12は、レーザ発振器21と、ビームエキスパンダ22と、取付台23とから構成されている。レーザ発振器21は、ファイバコネクタと、集光レンズと、反射鏡と、レーザ媒質と、受動Qスイッチと、出力カプラーと、ウィンドウとをケーシング内に有している。ファイバコネクタには、光ファイバFが接続されており、電源ユニット6を構成する励起用半導体レーザ部40から出射された励起光が、光ファイバFを介して入射される。
【0033】
集光レンズは、ファイバコネクタから入射された励起光を集光する。反射鏡は、集光レンズによって集光された励起光を透過すると共に、レーザ媒質から出射されたレーザ光を高効率で反射する。レーザ媒質は、励起用半導体レーザ部40から出射された励起光によって励起されてレーザ光を発振する。レーザ媒質としては、例えば、レーザ活性イオンとしてネオジウム(Nd)が添加されたネオジウム添加ガドリニウムバナデイト(Nd:GdVO4)結晶や、ネオジウム添加イットリウムバナデイト(Nd:YVO4)結晶や、ネオジウム添加イットリウムアルミニウムガーネット(Nd:YAG)結晶等を用いることができる。
【0034】
受動Qスイッチは、内部に蓄えられた光エネルギーが或る一定値を超えたとき、透過率が高くなるという性質を持った結晶である。従って、受動Qスイッチは、レーザ媒質によって発振されたレーザ光をパルス状のパルスレーザLとして発振するQスイッチとして機能する。受動Qスイッチとしては、例えば、クローム添加YAG(Cr:YAG)結晶やCr:MgSiO4結晶等を用いることができる。
【0035】
出力カプラーは、反射鏡とレーザ共振器を構成する。出力カプラーは、例えば、表面に誘電体多層膜をコーティングした凹面鏡により構成された部分反射鏡で、波長1064nmでの反射率は、80%〜95%である。ウィンドウは、合成石英等から形成され、出力カプラーから出射されたレーザ光を外部へ透過させる。従って、レーザ発振器21は、受動Qスイッチを介してパルスレーザを発振し、ワークWのマーキング加工を行うためのレーザ光として、パルスレーザLを出力する。
【0036】
ビームエキスパンダ22は、パルスレーザLのビーム径を変更するものであり、レーザ発振器21と同軸に設けられている。取付台23は、レーザ発振器21からのパルスレーザLの光軸を調整可能に取り付けられ、本体ベース11の前後方向中央位置よりも後側の上面に対して、各取付ネジ25によって固定されている。
【0037】
光シャッター部13は、シャッターモータ26と、平板状のシャッター27とから構成されている。シャッターモータ26は、ステッピングモータ等で構成されている。シャッター27は、シャッターモータ26のモータ軸に取り付けられて同軸に回転する。シャッター27は、ビームエキスパンダ22から出射されたパルスレーザLの光路を遮る位置に回転した際には、パルスレーザLを光シャッター部13に対して右方向に設けられた光ダンパー14へ反射する。一方、シャッター27がビームエキスパンダ22から出射されたパルスレーザLの光路上に位置しないように回転した場合には、ビームエキスパンダ22から出射されたパルスレーザLは、光シャッター部13の前側に配置されたハーフミラー15に入射する。
【0038】
光ダンパー14は、シャッター27で反射されたパルスレーザLを吸収する。尚、光ダンパー14の発熱は、本体ベース11に熱伝導されて冷却される。ハーフミラー15は、パルスレーザLの光路に対して斜め左下方向に45度の角度を形成するように配置される。ハーフミラー15は、後側から入射されたパルスレーザLのほぼ全部を透過する。又、ハーフミラー15は、後側から入射されたパルスレーザLの一部を、45度の反射角で反射ミラー17へ反射する。反射ミラー17は、ハーフミラー15のパルスレーザLが入射される後側面の略中央位置に対して左方向に配置される。
【0039】
ガイド光部16は、可視レーザ光として、例えば、赤色レーザ光を出射する可視半導体レーザ28と、可視半導体レーザ28から出射された可視レーザ光Mを平行光に収束するレンズ群(図示せず)とから構成されている。可視レーザ光Mは、レーザ発振器21から出射されるパルスレーザLと異なる波長である。ガイド光部16は、ハーフミラー15のパルスレーザLが出射される略中央位置に対して右方向に配置されている。この結果、可視レーザ光Mは、ハーフミラー15のパルスレーザLが出射される略中央位置において、ハーフミラー15の前側面にあたる反射面に対して45度の入射角で入射され、45度の反射角でパルスレーザLの光路上に反射される。即ち、可視半導体レーザ28は、可視レーザ光MをパルスレーザLの光路上に出射する。可視レーザ光Mは、加工容器内におけるワークWの位置調整を行う際や、後述する図4のプレビュー表示処理(S9)で、加工データDWの加工内容を報知する際にも利用される。
【0040】
反射ミラー17は、パルスレーザLの光路に対して平行な前後方向に対して斜め左下方向に45度の角度を形成するように配置され、ハーフミラー15の後側面において反射されたパルスレーザLの一部が、反射面の略中央位置に対して45度の入射角で入射される。そして、反射ミラー17は、反射面に対して45度の入射角で入射されたパルスレーザLを、45度の反射角で前側方向へ反射する。
【0041】
光センサ18は、パルスレーザLの発光強度を検出するフォトダイオード等で構成され、反射ミラー17のパルスレーザLが反射される略中央位置に対して、図2中、前側方向に配置されている。この結果、光センサ18は、反射ミラー17で反射されたパルスレーザLが入射され、この入射されたパルスレーザLの出力強度を検出する。従って、光センサ18を介してレーザ発振器21から出力されるパルスレーザLの強度を検出することができる。
【0042】
ガルバノスキャナ19は、本体ベース11の前側端部に形成された貫通孔29の上側に取り付けられ、レーザ発振ユニット12から出射されたパルスレーザLと、ハーフミラー15で反射された可視レーザ光Mとを下方へ2次元走査する。ガルバノスキャナ19は、ガルバノX軸モータ31と、ガルバノY軸モータ32と、本体部33により構成されており、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32は、それぞれのモータ軸が互いに直交するように外側からそれぞれの取付孔に嵌入、保持されて本体部33に取り付けられている。従って、当該ガルバノスキャナ19においては、各モータ軸の先端部に取り付けられた走査ミラーが内側で互いに対向している。そして、ガルバノX軸モータ31、ガルバノY軸モータ32の回転をそれぞれ制御して、各走査ミラーを回転させることによって、パルスレーザLと可視レーザ光Mとを下方へ2次元走査する。この2次元走査方向は、前後方向(X方向)と左右方向(Y方向)である。
【0043】
fθレンズ20は、下方に配置された加工対象物(ワークW等)の表面に対して、ガルバノスキャナ19によって2次元走査されたパルスレーザLと可視レーザ光Mとを同軸に集光する。そして、当該fθレンズ20は、パルスレーザLや可視レーザ光M等を収束した焦点を、平面状の焦点面とすると共に、パルスレーザLや可視レーザ光Mの走査速度が一定になるように補正する。従って、ガルバノX軸モータ31、ガルバノY軸モータ32の回転を制御することによって、パルスレーザLと可視レーザ光Mが、ワークW表面上において、所望の加工パターンで前後方向(X方向)と左右方向(Y方向)に2次元走査される。
【0044】
(電源ユニットの概略構成)
次に、レーザ加工装置1における電源ユニット6の概略構成について、図1を参照しつつ説明する。図1に示すように、電源ユニット6は、励起用半導体レーザ部40と、レーザドライバ51と、電源部52と、冷却ユニット53とを、ケーシング55内に有している。電源部52は、励起用半導体レーザ部40を駆動する駆動電流を、レーザドライバ51を介して励起用半導体レーザ部40に供給する。レーザドライバ51は、レーザコントローラ5から入力される駆動情報に基づいて、励起用半導体レーザ部40を直流でオンオフ駆動する。
【0045】
励起用半導体レーザ部40は、光ファイバFによってレーザ発振器21に光学的に接続されている。励起用半導体レーザ部40は、レーザドライバ51から入力されるパルス状の駆動電流に対して、レーザ光を発生する閾値電流を超えた電流値に比例した出力の波長のレーザ光である励起光を、光ファイバF内に出射する。従って、レーザ発振器21には、励起用半導体レーザ部40からの励起光が光ファイバFを介して入射される。励起用半導体レーザ部40には、例えば、GaAsを用いたバー型半導体レーザを用いることができる。
【0046】
冷却ユニット53は、電源部52及び励起用半導体レーザ部40を、所定の温度範囲内に調整する為のユニットであり、例えば、電子冷却方式により冷却することで、励起用半導体レーザ部40の温度制御を行っており、励起用半導体レーザ部40の発振波長を微調整する。尚、冷却ユニット53は、水冷式の冷却ユニットや、空冷式の冷却ユニット等を用いるようにしてもよい。
【0047】
(レーザ加工システム100の制御系)
次に、レーザ加工システム100を構成するレーザ加工装置1の制御系構成について、図面を参照しつつ説明する。図3に示すように、レーザ加工装置1は、レーザ加工装置1の全体を制御するレーザコントローラ5と、レーザドライバ51と、ガルバノコントローラ56と、ガルバノドライバ57と、可視光レーザドライバ58等を有して構成されている。レーザコントローラ5には、レーザドライバ51と、ガルバノコントローラ56と、可視光レーザドライバ58と、リモコン65等が電気的に接続されている。
【0048】
レーザコントローラ5は、レーザ加工装置1の全体の制御を行う演算装置及び制御装置としてのCPU61、RAM62、ROM63、時間を計測するタイマ64等を備えており、上述したようにリモコン65が接続されている。又、CPU61、RAM62、ROM63、タイマ64、リモコン65は、バス線(図示せず)により相互に接続されて、相互にデータのやり取りが行われる。
【0049】
RAM62は、CPU61により演算された各種の演算結果や加工データDWにおける各加工点DのXY座標データ等を一時的に記憶させておくためのものである。又、RAM62は、マーキング加工を実行する際や後述するプレビュー表示を行う際に、PC7から取得した加工データDWを、プレビューデータとして格納している。このプレビューデータは、第1プレビューデータと、第2プレビューデータを含んでいるが、その詳細については後述する。
【0050】
ROM63は、各種のプログラムを記憶させておくものであり、PC7から送信された加工データDWに基づいて、加工要素DCを構成する各加工点DのXY座標データを算出してRAM62に記憶する等の各種プログラムが記憶されている。ROM63には、フォントの種類別に、直線と楕円弧とで構成された各文字のフォントの始点、終点、焦点、曲率等のデータが記憶されている。従って、ROM63には、後述するメイン処理プログラム(図4参照)、プレビュー表示処理プログラム(図6参照)及びデータ編集処理プログラム(図8参照)が格納されている。
【0051】
そして、CPU61は、ROM63に記憶されている各種の制御プログラムに基づいて各種の演算及び制御を行なうものである。例えば、CPU61は、PC7から入力された加工データDWに基づいて、加工要素DCにおける各加工点DのXY座標データ、ガルバノ走査速度情報等をガルバノコントローラ56に出力する。又、CPU61は、PC7から入力された励起用半導体レーザ部40に対する駆動電流の供給制御や、励起用半導体レーザ部40からの励起光出力、励起光の出力期間等の情報を、レーザドライバ51に出力する。又、CPU61は、各加工点DのXY座標データ、ガルバノスキャナ19のON・OFFを指示する制御信号等をガルバノコントローラ56に出力する。
【0052】
レーザドライバ51は、レーザコントローラ5から入力された励起用半導体レーザ部40に関する制御パラメータ(例えば、駆動電流の電流値、励起光出力、励起光の出力期間等)に基づいて、励起用半導体レーザ部40を駆動制御する。具体的には、レーザドライバ51は、レーザコントローラ5から入力された駆動電流の電流値に関する制御パラメータに基づいて、パルス状の駆動電流を発生し、励起用半導体レーザ部40に供給する。これにより、励起用半導体レーザ部40は、駆動電流の電流値に対応する強度の励起光を、所定の供給期間の間、光ファイバF内に供給する。
【0053】
ガルバノコントローラ56は、レーザコントローラ5から入力された各加工点DのXY座標データ、ガルバノ走査速度情報等に基づいて、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32の駆動角度、回転速度等を算出して、駆動角度、回転速度を表すモータ駆動情報をガルバノドライバ57へ出力する。
【0054】
ガルバノドライバ57は、ガルバノコントローラ56から入力された駆動角度、回転速度を表すモータ駆動情報に基づいて、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32を駆動制御して、パルスレーザLを2次元走査する。
【0055】
可視光レーザドライバ58は、レーザコントローラ5から出力される制御信号に基づいて、可視半導体レーザ28を含むガイド光部16の制御を行い、例えば、制御信号に基づいて、可視半導体レーザ28から出射される可視レーザ光Mの発光タイミングや光量を制御する。
【0056】
リモコン65は、レーザコントローラ5に対して有線接続されており、複数の操作ボタンを有して構成されている。当該リモコン65は、当該複数の操作ボタンに対するユーザの操作に応じた種々の制御コマンドを、レーザコントローラ5に入力可能に構成されており、後述する図4のプレビュー表示処理(S9)やデータ編集処理(S10)等を行う際に操作される。尚、リモコン65は、レーザコントローラ5に対して制御コマンドを送信可能に接続されていればよく、有線接続に限らず無線接続されていてもよい。
【0057】
そして、レーザコントローラ5には、PC7が双方向通信可能に接続されており(図1図3参照)、PC7から送信された加工内容を示す加工データDW、レーザ加工装置本体部2の制御パラメータ、ユーザからの各種制御コマンド等を受信可能に構成されている。
【0058】
(PCの制御系)
続いて、レーザ加工システム100を構成するPC7の制御系構成について、図面を参照しつつ説明する。図3に示すように、PC7は、PC7の全体を制御する制御部70と、マウスやキーボード等から構成される入力操作部76と、液晶ディスプレイ77と、CD−ROM79に対する各種データ、プログラム等の書き込み及び読み込みを行うためのCD−R/W78等から構成されている。
【0059】
制御部70は、PC7の全体の制御を行うと共に、レーザコントローラ5を介して、レーザ加工システム100全体の制御を行う演算装置及び制御装置としてのCPU71と、RAM72と、ROM73と、時間を計測するタイマ74と、HDD75等を備えている。又、CPU71と、RAM72と、ROM73と、タイマ74は、バス線(図示せず)により相互に接続されて、相互にデータのやり取りが行われる。又、CPU71とHDD75は、入出力インターフェース(図示せず)を介して接続され、相互にデータのやり取りが行われる。
【0060】
RAM72は、CPU71により演算された各種の演算結果等を一時的に記憶させておくためのものである。ROM73は、各種の制御プログラムやデータテーブルを記憶させておくものである。
【0061】
そして、HDD75は、各種アプリケーションソフトウェアのプログラム、各種データファイルを記憶する記憶装置であり、本実施形態においては、加工データDWを作成・修正する為の制御プログラム等の各種制御プログラム及び、各種データテーブルを記憶している。
【0062】
そして、CD−R/W78は、アプリケーションプログラム、各種データテーブル等のデータ群を、CD−ROM79から読み込む、又は、CD−ROM79に対して書き込む。即ち、PC7は、CD−R/W78を介して、アプリケーションプログラムや、データテーブルをCD−ROM79から読み込み、HDD75に格納する。
【0063】
そして、PC7には、入出力インターフェース(図示せず)を介して、マウスやキーボード等から構成される入力操作部76と、液晶ディスプレイ77等が電気的に接続されている。従って、PC7は、入力操作部76や、液晶ディスプレイ77を用いて、マーキング加工の実行開始や、プレビュー表示の実行等を示す制御コマンドを、レーザコントローラ5に対して出力し得る。
【0064】
(メイン処理プログラムの処理内容)
続いて、レーザコントローラ5のCPU61において実行されるメイン処理プログラムの処理内容について、図面を参照しつつ詳細に説明する。当該メイン処理プログラムは、レーザ加工装置1に対して電源供給がなされている場合に、CPU61によって実行される。
【0065】
図4に示すように、メイン処理プログラムの実行を開始すると、CPU61は、先ず、レーザコントローラ5に対して、制御コマンドの入力があったか否かを判断する。図1図3に示すように、レーザコントローラ5には、リモコン65が接続されると同時に、入力操作部76を有するPC7も接続されている為、制御コマンドは、リモコン65又はPC7の何れかから入力される。制御コマンドの入力があった場合(S1:YES)、CPU61は、S2に処理を移行する。一方、制御コマンドの入力がない場合(S1:NO)、CPU61は、制御コマンドの入力があるまで処理を待機する。
【0066】
S2においては、CPU61は、入力された制御コマンドがデータ編集コマンドであるか否かを判断する。当該データ編集コマンドは、レーザコントローラ5単独での加工データDWに対する編集処理を指示する制御コマンドであり、リモコン65の操作ボタンに対して所定の操作(例えば、位置編集に関する操作、濃度編集に関する操作)が行われた場合に、リモコン65から入力される。制御コマンドがデータ編集コマンドである場合(S2:YES)、CPU61は、データ編集処理(S10)に処理を移行する。データ編集処理(S10)の処理内容については、後に図面を参照しつつ詳細に説明する。一方、入力された制御コマンドがデータ編集コマンドではない場合(S2:NO)、CPU61は、S3に処理を移行する。
【0067】
S3では、CPU61は、入力された制御コマンドがプレビュー表示コマンドであるか加工開始コマンドであるかを判断する。当該プレビュー表示コマンドは、可視レーザ光Mを用いて、加工データDWの加工内容を表示するプレビュー表示処理を指示する制御コマンドであり、当該加工開始コマンドは、パルスレーザLによるマーキング加工の実行開始を指示する制御コマンドである。プレビュー表示コマンド及び加工開始コマンドは、PC7の入力操作部76又はリモコン65に対して、夫々個別の所定操作が行われた場合、PC7又はリモコン65から入力される。制御コマンドがプレビュー表示コマンドである場合、CPU61は、プレビュー表示処理(S9)に処理を移行する。一方、入力された制御コマンドが加工開始コマンドである場合、CPU61は、S4に処理を移行する。
【0068】
S4に移行すると、CPU61は、マーキング加工の実行に際して、レーザ加工装置1が安全な状態にあるか否かを判断する。具体的には、CPU61は、レーザ加工装置1における各種スイッチやセンサの検出結果等に基づいて、安全な状態でマーキング加工を行い得るか否かを判断する。例えば、レーザ加工装置1における非常停止スイッチがオフであり、キースイッチ及びリセットスイッチがオンである状態で、且つ、加工容器(図示せず)の扉が閉じていることをドアセンサで検出した場合に、CPU61は、安全な状態でマーキング加工を行い得ると判断する。マーキング加工を行う上で安全な状態である場合(S4:YES)、CPU61は、S5に処理を移行する。一方、マーキング加工を行う上で安全な状態ではない場合(S4:NO)、CPU61は、S8に処理を移行する。
【0069】
S5においては、CPU61は、前記加工開始コマンドと共に、PC7から出力された加工データDWにおける或る一定量を受信したか否かを判断する。PC7からの加工データDWにおける或る一定量を、前記加工開始コマンドと共に受信した場合(S5:YES)、CPU61は、S6に処理を移行する。一方、加工データDWにおける或る一定量を、前記加工開始コマンドと共に受信していない場合(S5:NO)、CPU61は、加工データDWにおける或る一定量を、前記加工開始コマンドと共に受信するまで処理を待機する。
【0070】
(加工データDWの構成)
ここで、PC7からレーザコントローラ5に対して出力される加工データDWの構成について、図5を参照しつつ詳細に説明する。上述したように、ユーザは、PC7の入力操作部76等を操作することによって、所望の加工要素DCを適宜配置し、組み合わせることで、加工データDWにおけるマーキング加工の加工内容を設定することができる。
【0071】
そして、加工データDWは、パルスレーザLを用いたマーキング加工によって、ワークW表面に描画される加工内容及びマーキング加工の詳細が定義された詳細データと、ワークW表面に描画される加工内容の概要(例えば、加工内容が描画される加工領域DRの位置やサイズ)を示す概要データとを有して構成されている。
【0072】
図5に示すように、加工データDWにおける詳細データは、パルスレーザLを用いたマーキング加工によってワークW表面に描画される加工内容、及び、当該加工内容に従ってマーキング加工する際の加工順や、パルスレーザLの走査速度等の制御パラメータを含んで構成されている。当該加工データDWにおける加工内容は、一又は複数の加工要素DCを組み合わせて表現される。一の加工要素DCは、一又は複数の加工点を配置することで構成されており、例えば、文字等の場合、複数の加工点を列状に配置することで、文字を構成する線分を表現している。
【0073】
そして、加工データDWにおける概要データは、マーキング加工によって加工内容が描画される加工領域DRの位置やサイズを示しており、矩形状の加工領域DRを特定する為の4つの領域基準点PRに係るXY座標データにより構成される。4つの領域基準点PRに係るXY座標データは、加工内容を構成する各加工点のXY座標値における最大値、最小値の組み合わせによって構成される。
【0074】
再び図4を参照しつつ、PC7から出力された加工データDWの受信を完了した後の処理について説明する。加工データDWの受信を完了して、S6に移行すると、CPU61は、データ格納処理を実行して、加工データDWを構成する詳細データと概要データを、レーザコントローラ5のRAM62に格納する。即ち、本実施形態においては、加工データDWにおける詳細データは、本発明における第1データとして、加工データDWにおける概要データは、本発明における第2データとしてRAM62に格納され、プレビュー表示処理(S9)においてプレビューデータとして用いられる。加工データDWをRAM62に格納した後、CPU61は、S7に処理を移行する。
【0075】
S7では、CPU61は、マーキング加工の実行開始を示す制御コマンドと、RAM62に格納した加工データDWに基づいて、加工実行処理を実行し、加工データDWの加工内容に従ったマーキング加工を、ワークW表面に施す。具体的には、加工実行処理(S7)では、CPU61は、加工データDWの詳細データに基づいて、各加工点のXY座標データ、加工順や走査速度及び走査回数等の情報を、ガルバノコントローラ56に対して出力し、ガルバノスキャナ19の駆動制御を行う。同時に、CPU61は、加工データDWの詳細データに基づいて、パルスレーザLの出力強度に関する情報をレーザドライバ51に出力する。この加工実行処理(S7)を実行することで、ワークW表面には、加工データDWの詳細データに基づく加工内容がマーキング加工される。その後、CPU61は、S1に処理を戻す。
【0076】
マーキング加工を行う上で安全な状態ではないと判断された場合(S4:NO)に移行するS8においては、CPU61は、警告処理を実行し、マーキング加工を行う上で安全な状態ではない旨を、ユーザに報知して警告する。当該警告処理(S8)においては、CPU61は、PC7に対して制御コマンドを出力することで、PC7の液晶ディスプレイ77上に警告メッセージを表示する。この点、警告処理(S8)における報知の方法は、メッセージ表示に限定されるものではなく、レーザ加工装置1のリモコン65等に配設されたLEDによる点灯態様によって報知してもよいし、音声によって報知してもよい。警告処理(S8)を終了した後、CPU61は、S1に処理を戻す。
【0077】
(プレビュー表示処理プログラムの処理内容)
次に、プレビュー表示処理(S9)で実行されるプレビュー表示処理プログラムの処理内容について、図6を参照しつつ詳細に説明する。上述したように、CPU61は、入力された制御コマンドがプレビュー表示コマンドである場合(S3:YES)に、プレビュー表示処理(S9)に移行して、プレビュー表示処理プログラムを実行する。
【0078】
ここで、本実施形態においては、プレビュー表示の種別として、詳細データを用いたフルライン表示(図7(A)参照)と、概要データを用いたアウトライン表示(図7(B)参照)とを行うことができ、プレビュー表示コマンドには、ユーザ所望のプレビュー表示の種別(フルライン表示と、アウトライン表示の何れか)を示す情報が含まれる。ユーザは、PC7又はリモコン65からプレビュー表示コマンドを出力する際に、PC7の入力操作部76又はリモコン65の操作ボタンを操作することで、プレビュー表示の種別として、フルライン表示とアウトライン表示の何れか所望の種別を入力するように構成されている。
【0079】
図6に示すように、プレビュー表示処理プログラムの実行を開始すると、先ず、CPU61は、プレビュー表示コマンドの送信元がPC7であるか否かを判断する(S11)。上述したように、本実施形態において、プレビュー表示コマンドは、入力操作部76による所定の操作に基づいてPC7から入力される場合と、リモコン65における所定の操作に基づいて、リモコン65から入力される場合がある。従って、S21においては、プレビュー表示コマンドの送信元がPC7であるか、リモコン65であるかを判断している。プレビュー表示コマンドの送信元がPC7である場合(S11:YES)、CPU61は、S12に処理を移行する。一方、プレビュー表示コマンドの送信元がPC7でない場合(S11:NO)、CPU61は、S13に処理を移行する。
【0080】
S12においては、CPU61は、PC7からプレビュー表示コマンドと共に出力されるプレビューデータにおける或る一定量を受信したか否かを判断する。このプレビューデータは、上述した加工データと同様に、詳細データと概要データとを有して構成されている。プレビューデータを構成する詳細データ及び概要データにおける或る一定量を受信した場合(S12:YES)、CPU61は、受信したプレビューデータをRAM62に格納した後、S14に処理を移行する。一方、プレビューデータにおける或る一定量を受信していない場合(S12:NO)、CPU61は、プレビューデータにおける或る一定量を受信するまで処理を待機する。
【0081】
ここで、PC7から受信するプレビューデータについて説明する。当該プレビューデータにおける詳細データは、加工データDWの詳細データと同一内容であり、パルスレーザLを用いたマーキング加工によってワークW表面に描画される加工内容、及び、当該加工内容に従ってマーキング加工する際の加工順や、パルスレーザLの走査速度等の制御パラメータを含んで構成されている。
【0082】
そして、プレビューデータにおける概要データは、加工データDWにおける概要データと同様に、マーキング加工によって加工内容が描画される加工領域DRの位置やサイズを示しており、4つの領域基準点PRに係るXY座標データにより構成されている。即ち、概要データは、詳細データと比較して、少ない点の位置情報(XY座標データ)によって加工内容を示している。
【0083】
プレビュー表示コマンドの送信元がリモコン65である場合に移行するS13では、CPU61は、RAM62に格納済データがあるか否かを判断する。ここで、格納済データは、データ格納処理(S5)においてRAM62に格納した加工データDWの詳細データ及び概要データと、S12において受信してRAM62に格納したプレビューデータの詳細データ及び概要データを含んでいる。RAM62に格納済データがある場合(S13:YES)、CPU61は、S14に処理を移行する。一方、RAM62に格納済データがない場合(S13:NO)、CPU61は、そのまま、プレビュー表示処理プログラムを終了する。
【0084】
S14においては、CPU61は、入力されたプレビュー表示コマンドに基づいて、当該プレビュー表示コマンドにおけるプレビュー表示の種別がフルライン表示であるか否かを判断する。プレビュー表示の種別がフルライン表示である場合(S14:YES)、CPU61は、S15に処理を移行する。一方、プレビュー表示の種別がフルライン表示でない場合(S14:NO)、CPU61は、S16に処理を移行する。
【0085】
S15に移行すると、CPU61は、第1プレビュー表示処理を実行することで、プレビュー表示コマンドに規定されたプレビュー表示の種別に従って、加工内容のフルライン表示を行う。当該第1プレビュー表示処理(S15)においては、CPU61は、PC7から受信したプレビューデータの詳細データ又はRAM62内の格納済データの詳細データに従って、ガイド光部16から出力される可視レーザ光Mの走査を制御することにより、可視レーザ光Mによって、加工内容をワークW表面上に表示する。第1プレビュー表示処理(S15)を終了した後、CPU61は、プレビュー表示処理プログラムを終了する。
【0086】
第1プレビュー表示処理(S15)の処理内容について、具体的に説明すると、CPU61は、プレビュー表示の対象である詳細データに基づく制御信号を、可視光レーザドライバ58に対して出力することにより、ガイド光部16を構成する可視半導体レーザ28のオンオフ制御を行い、可視半導体レーザ28から出射される可視レーザ光Mの発光タイミングや光量を制御する。同時に、CPU61は、プレビュー表示の対象である詳細データに基づいて、各加工点のXY座標データ、加工順や走査速度及び走査回数等の情報を、ガルバノコントローラ56に対して出力することにより、ガルバノスキャナ19の駆動制御を行い、加工内容に沿った可視レーザ光Mの走査を行うことができる。
【0087】
これにより、第1プレビュー表示処理(S15)においては、プレビュー表示の対象である加工内容を構成する各加工要素DCが、ガルバノスキャナ19の走査に従った可視レーザ光Mの軌跡によって、ワークW表面上に表示される(図7(A)参照)。つまり、第1プレビュー表示処理(S15)を行うことで、マーキング加工を行った場合と同一の加工内容が可視レーザ光Mによって表示されるため、当該レーザ加工装置1によれば、高精度のプレビュー機能を実現することができる。又、第1プレビュー表示処理(S15)においては、ユーザは、加工実行処理(S7)の実行に伴ってワークWを消費することなく、マーキング加工を行った場合と同一の内容を確認することができる。
【0088】
S16においては、CPU61は、第2プレビュー表示処理を実行することで、プレビュー表示コマンドに規定されたプレビュー表示の種別に従って、加工内容のアウトライン表示を行う。当該第2プレビュー表示処理(S16)では、CPU61は、PC7から受信したプレビューデータの概要データ又はRAM62内の格納済データの概要データに従って、ガイド光部16から出力される可視レーザ光Mの走査を制御することにより、可視レーザ光Mによって、加工内容の加工領域DRをワークW表面上に表示する。第2プレビュー表示処理(S16)を終了した後、CPU61は、プレビュー表示処理プログラムを終了する。
【0089】
ここで、第2プレビュー表示処理(S16)の処理内容を具体的に説明すると、CPU61は、プレビュー表示の対象である概要データに基づく制御信号を、可視光レーザドライバ58に対して出力することにより、ガイド光部16を構成する可視半導体レーザ28のオンオフ制御を行い、可視半導体レーザ28から出射される可視レーザ光Mの発光タイミングや光量を制御する。同時に、CPU61は、プレビュー表示の対象である概要データを構成する4つの領域基準点PRのXY座標データを、ガルバノコントローラ56に対して出力することにより、ガルバノスキャナ19の駆動制御を行い、加工内容に係る矩形状の加工領域DRの輪郭に沿った可視レーザ光Mの走査を行うことができる。
【0090】
これにより、第2プレビュー表示処理(S16)では、プレビュー表示の対象である加工内容に係る加工領域DRの輪郭が、ガルバノスキャナ19の走査に従った可視レーザ光Mの軌跡によって、ワークW表面上に表示される(図7(B)参照)。つまり、第2プレビュー表示処理(S16)を行うことで、マーキング加工を行った場合の加工領域DRの位置関係が可視レーザ光MによってワークW表面上に表示される為、簡易的なプレビュー機能を実現することができる。又、第2プレビュー表示処理(S16)では、矩形状の加工領域DRの輪郭を、可視レーザ光Mの軌跡によって表示する為、第1プレビュー表示処理(S15)と比較して、短い所要時間でプレビュー表示を行い得る。
【0091】
即ち、当該レーザ加工装置1によれば、プレビュー表示コマンドを出力する際に、第1プレビュー表示処理(S15)によるフルライン表示と、第2プレビュー表示処理(S16)によるアウトライン表示の何れかを設定しておくことで、ユーザ所望の態様でのプレビュー表示を、レーザ加工装置1に実行させることができ、もって、ユーザの用途に応じたプレビュー機能を実現することができる。
【0092】
(データ編集処理プログラムの処理内容)
続いて、データ編集処理(S10)で実行されるデータ編集処理プログラムの処理内容について、図8を参照しつつ詳細に説明する。上述したように、CPU61は、入力された制御コマンドがデータ編集コマンドである場合(S2:YES)に、データ編集処理(S10)に移行して、データ編集処理プログラムを実行する。
【0093】
ここで、本実施形態においては、データ編集処理(S10)における編集内容として、格納済データにおける加工内容の拡大、縮小、移動に関する位置編集と、格納済データに係る加工内容についてマーキング加工を行う場合のマーキングの濃度に関する濃度編集とを行うことができ、データ編集コマンドには、ユーザ所望の編集内容を示す情報が含まれる。ユーザは、リモコン65からデータ編集コマンドを出力する際に、リモコン65の操作ボタンを操作することで、データ編集処理における編集内容として、位置編集と濃度編集との何れか所望の編集内容と、その詳細を入力するように構成されている。
【0094】
図8に示すように、データ編集処理プログラムの実行を開始すると、先ず、CPU61は、RAM62に格納済データがあるか否かを判断する(S21)。RAM62に格納済データがある場合(S21:YES)、CPU61は、S22に処理を移行する。一方、RAM62に格納済データがない場合(S21:NO)、CPU61は、そのままデータ編集処理プログラムを終了する。
【0095】
S22においては、CPU61は、入力されたデータ編集コマンドの内容に基づいて、データ編集コマンドにおける編集内容が位置編集であるか否かを判断する。編集内容が位置編集である場合(S22:YES)、CPU61は、位置編集処理(S23)に処理を移行する。一方、編集内容が位置編集でない場合(S22:NO)、CPU61は、濃度編集処理(S24)に処理を移行する。
【0096】
S23では、CPU61は、位置編集処理を実行して、格納済データにおける加工内容の拡大、縮小、移動に関する編集を行う。具体的には、CPU61は、RAM62から編集対象となる格納済データの詳細データ及び概要データを読み出し、加工内容を構成する各加工点のXY座標データの値や領域基準点PRのXY座標データの値や座標間の移動時間の値を編集することで、加工内容の拡大、縮小、移動を行う。位置編集処理(S23)を終了した後、CPU61は、S24に処理を移行する。
【0097】
ここで、位置編集処理(S23)の処理内容について具体的に説明する。例えば、加工内容の拡大・縮小を行う場合、CPU61は、格納済データにおける加工領域内に位置する所定の基準点と、加工内容を構成する各加工点及び領域基準点PRとの距離を各点のXY座標値から算出し、基準点と、各加工点及び領域基準点PRの距離を、リモコン65の操作に応じた所定倍率で変更することで、加工内容の拡大、縮小を行うことができる。この場合、座標間の距離が加工内容の拡大、縮小に伴って変更される為、座標間の移動時間の値を編集する。
【0098】
例えば、リモコン65における或る操作ボタンの入力がなされる毎に、CPU61は、前記所定倍率を、1.25倍、1.5倍、1.75倍、2倍…と変更する。これにより、当該レーザ加工装置1は、PC7を介することなく、格納済データにおける加工内容を、所望の大きさに拡大することができる。又、リモコン65における別の操作ボタンの入力がなされる毎に、CPU61は、前記所定倍率を、0.8倍、0.75倍、0.5倍…と変更する。この結果、当該レーザ加工装置1は、PC7を介することなく、格納済データにおける加工内容を、所望の大きさに縮小し得る。
【0099】
そして、位置編集処理(S23)において、格納済データにおける加工内容の移動を行う場合、CPU61は、格納済データにおける加工内容を構成する各加工点及び領域基準点PRのXY座標データに対して、一律に所定値を加算又は減算することによって、加工内容全体として所定方向に移動させることができる。この場合、座標間の距離が加工内容の移動に伴って変更されることはない為、座標間の移動時間の値を編集する必要はない。
【0100】
例えば、リモコン65における操作ボタンによって上方向への移動が入力された場合、CPU61は、加工内容を構成する各加工点及び領域基準点PRのXY座標データにおけるY座標値に対して、一律に所定値を加算する。これにより、当該レーザ加工装置1は、加工済データにおける加工内容を、所定距離だけ上方へ移動させることができる。そして、操作ボタンによって下方向への移動が入力された場合、CPU61は、加工内容を構成する各加工点及び領域基準点PRのXY座標データにおけるY座標値から、一律に所定値を減算する。これにより、当該レーザ加工装置1は、加工済データにおける加工内容を、所定距離だけ下方へ移動させることができる。
【0101】
又、操作ボタンによって右方向への移動が入力された場合、CPU61は、加工内容を構成する各加工点及び領域基準点PRのXY座標データにおけるX座標値に対して、一律に所定値を加算する。これにより、当該レーザ加工装置1は、加工済データにおける加工内容を、所定距離だけ右方向へ移動させることができる。同様に、操作ボタンによって左方向への移動が入力された場合、CPU61は、加工内容を構成する各加工点及び領域基準点PRのXY座標データにおけるX座標値から、一律に所定値を減算する。これにより、当該レーザ加工装置1は、加工済データにおける加工内容を、所定距離だけ左方向へ移動させることができる。
【0102】
S24においては、CPU61は、位置編集処理(S23)の処理結果に基づいて、RAM62内の格納済データを構成する詳細データ及び概要データの内容を更新する。具体的には、CPU61は、格納済データにおける詳細データについては、加工内容を構成する各加工点のXY座標データの値と各座標間の移動時間の値を、位置編集処理(S23)の処理結果に従って更新する。そして、概要データについては、CPU61は、各領域基準点PRのXY座標データの値を、位置編集処理(S23)の処理結果に従って更新する。これにより、格納済データにおける加工内容の位置やサイズは、位置編集処理(S23)の処理結果に応じた内容を示すことになる為、レーザ加工装置1は、PC7を介することなく、格納済データにおける加工内容の位置やサイズを微調整することができる。RAM62における格納済データの内容を更新した後、CPU61は、データ編集処理プログラムを終了する。
【0103】
一方、データ編集コマンドにおける編集内容が位置編集でなく(S22:NO)、濃度編集である場合に移行するS25では、CPU61は、濃度編集処理を実行して、格納済データおける加工内容のマーキング加工を行う場合のマーキングの濃度に関する編集を行う。具体的には、CPU61は、RAM62から編集対象となる格納済データの詳細データを読み出して、当該詳細データに含まれるパルスレーザLの走査速度、走査回数、出力強度等を編集することで、マーキングの濃度の濃淡を変更する。濃度編集処理(S25)を終了した後、CPU61は、S26に処理を移行する。
【0104】
ここで、濃度編集処理(S25)の処理内容について具体的に説明する。濃度編集処理(S25)においては、CPU61は、リモコン65の操作ボタンに対する操作に基づいて、パルスレーザLの走査速度を変更することで、マーキング加工におけるマーキングの濃度を変更する。パルスレーザLの走査速度が遅い程、ワークWにおける単位面積あたりに与えられる熱量が大きくなる為、マーキングの濃度を濃くすることができ、走査速度を速くすれば、マーキングの濃度を薄くすることができる。従って、リモコン65における操作ボタンによってマーキングの濃度を濃くする指示が入力された場合、CPU61は、パルスレーザLの走査速度(即ち、ガルバノスキャナ19の駆動速度)を遅い設定に変更する。これにより、当該レーザ加工装置1は、マーキングの濃度を濃くすることができる。一方、リモコン65における操作ボタンによってマーキングの濃度を薄くする指示が入力された場合、CPU61は、パルスレーザLの走査速度を速い設定に変更する。これにより、当該レーザ加工装置1は、マーキングの濃度を薄くすることができる。
【0105】
尚、上述した濃度編集処理(S25)においては、パルスレーザLの走査速度によって、マーキングの濃度を調整していたが、パルスレーザLの走査回数や、パルスレーザLの出力強度によって、マーキングの濃度を調整することも可能である。例えば、加工内容をマーキング加工する際のパルスレーザLの走査回数を増やせば増やすほど、パルスレーザLによって熱が与えられる回数が増大する為、マーキングの濃度を濃くすることができる。又、パルスレーザLの出力強度を上げれば、ワークWにおける単位面積あたりに与えられる熱量が大きくなる為、マーキングの濃度を濃くすることができ、出力強度を下げれば、マーキングの濃度を薄くすることができる。更に、これら3つの項目の内のいくつかを組み合わせて、マーキングの濃度を調整することも可能であり、より詳細な濃度調整を実現することができる。
【0106】
S26では、CPU61は、濃度編集処理(S25)の処理結果に基づいて、RAM62内の格納済データを構成する詳細データの内容を更新する。具体的には、CPU61は、格納済データにおける詳細データについては、加工内容をマーキング加工する際のパルスレーザLの走査速度の値を、濃度編集処理(S25)の処理結果に従って更新する。これにより、格納済データにおける加工内容をマーキング加工する場合のマーキングの濃度は、濃度編集処理(S25)の処理結果に応じた内容を示すことになる為、レーザ加工装置1は、PC7を介することなく、格納済データにおける加工内容をマーキング加工する際のマーキングの濃度を微調整することができる。RAM62における格納済データの内容を更新した後、CPU61は、データ編集処理プログラムを終了する。
【0107】
以上説明したように、本実施形態に関するレーザ加工システム100において、レーザ加工装置1は、レーザ発振ユニット12と、ガルバノスキャナ19と、レーザコントローラ5と、電源ユニット6を有しており、PC7と接続されている。当該レーザ加工装置1によれば、ガルバノスキャナ19によって、レーザ発振ユニット12からのパルスレーザLを走査することで、ワークW表面に加工を施すことができる。
【0108】
又、当該レーザ加工装置1は、加工実行処理(S7)を行う際にPC7から取得した詳細データ及び概要データを含む加工データDWや、PC7からプレビュー表示コマンドを出力してプレビュー表示を実行する際に取得した詳細データ及び概要データを含むデータを、格納済データとしてRAM62に格納するように構成されている(S6、S12)。そして、当該レーザ加工装置1は、リモコン65による所定の操作によって、プレビュー表示コマンドをレーザコントローラ5が受け付けた場合に、前記RAM62に格納されている格納済データを、プレビューデータとして用いて、ガイド光部16及びガルバノスキャナ19を制御することにより、前記格納済データの加工内容を、ワークWに対して可視レーザ光Mを用いて表示し得る(図7参照)。
【0109】
従って、当該レーザ加工装置1によれば、リモコン65を用いてプレビュー表示処理を実行した場合、PC7からデータを再度取得することなく、RAM62の格納済データを用いて、加工内容をワークW上に表示するプレビュー機能を実現することができる。又、当該レーザ加工装置1によれば、プレビュー機能によって、ワークWを無駄に消費することなく位置を確認することができるので、ワークW上の所望の位置に、パルスレーザLによる加工を正確に施すことができる。更に、当該レーザ加工装置1によれば、RAM62から格納済データを読み出す為、PC7との間のデータ通信によって、プレビューデータを取得する場合に比べて、プレビュー機能を迅速に実現し得る。
【0110】
更に、当該レーザ加工装置1は、リモコン65による所定の操作によって、プレビュー表示コマンドをレーザコントローラ5が受け付けた場合(S11:YES)に、RAM62に格納済データがあるか否かを判断する(S13)。そして、当該レーザ加工装置1によれば、RAM62に格納済データがある場合(S13:YES)に、前記RAM62に格納されている格納済データを、プレビューデータとして用いて、ガイド光部16及びガルバノスキャナ19を制御することにより、前記格納済データの加工内容を、ワークWに対して可視レーザ光Mを用いて表示する為、PC7からデータを再度取得することなく、RAM62の格納済データを用いて、加工内容をワークW上に表示するプレビュー機能を実現することができる。
【0111】
当該レーザ加工装置1は、リモコン65の操作によって、フルライン表示を指示するプレビュー表示コマンドを受け付けた場合に、第1プレビュー表示処理(S15)を実行して、RAM62に格納された格納済データの詳細データに基づいて、加工データDWの加工内容を構成する各加工要素DCを、可視レーザ光Mの軌跡によってワークW上に表示する。加工済データの詳細データは、加工要素DCを構成する複数の加工点のXY座標データを含んで構成されている為、当該レーザ加工装置1は、第1プレビュー表示処理(S15)におけるフルライン表示を行った場合、加工内容と完全に同一な内容を可視レーザ光Mの軌跡によって表現することができ(図7(A)参照)、高精度なプレビュー機能を実現することができる。
【0112】
一方、リモコン65の操作によって、アウトライン表示を指示するプレビュー表示コマンドを受け付けた場合に、当該レーザ加工装置1は、第2プレビュー表示処理(S16)を実行して、RAM62に格納された格納済データの概要データに基づいて、加工内容の概略として加工領域DRの輪郭を、可視レーザ光Mの軌跡によりワークW上に表示する。格納済データの概略データは、加工領域DRを構成する4つの領域基準点PRのXY座標データによって構成されている為、当該レーザ加工装置1は、第2プレビュー表示処理(S16)におけるアウトライン表示を行った場合、格納済データの加工内容が複雑な文字、図柄及び記号の組み合わせで構成されていたとしても、その加工領域DRの輪郭を表示する(図7(B)参照)。即ち、当該レーザ加工装置1は、加工領域DRの輪郭を表示することで、加工領域DRの位置、大きさ、範囲を適切にユーザに伝達すると同時に、フルライン表示と比較してプレビュー機能に係る処理を軽減し得る。
【0113】
そして、当該レーザ加工装置1によれば、リモコン65からプレビュー表示コマンドを出力する際に、フルライン表示とアウトライン表示の何れかを選択することで、プレビュー表示処理(S9)における表示態様を、フルライン表示(図7(A)参照)と、アウトライン表示(図7(B)参照)から選択することができる。この結果、当該レーザ加工装置1は、ユーザの用途に応じたプレビュー機能を実現することができ、もって、プレビュー機能の利便性を高めることができる。
【0114】
又、当該レーザ加工装置1によれば、リモコン65の操作によって、位置編集を指示するデータ編集コマンドを受け付けた場合に、位置編集処理(S23)を実行することによって、RAM62内の格納済データにおける詳細データ及び概要データに関し、加工内容を構成する各加工点のXY座標データ及び各領域基準点PRのXY座標データを変更して、加工内容の拡大、縮小、移動といった位置編集を行うことができる。この位置編集処理(S23)に際して、当該レーザ加工装置1によれば、PC7による位置編集が行われたデータを再度取得することなく、レーザ加工装置1単独で、RAM62内の格納済データにおける詳細データ及び概要データに対する位置編集を行うことができ、もって、ワークW上における加工内容の位置を微調整することができる。
【0115】
更に、当該レーザ加工装置1によれば、リモコン65の操作によって、濃度編集を指示するデータ編集コマンドを受け付けた場合に、濃度編集処理(S25)を実行することによって、RAM62内の格納済データにおける詳細データに関し、パルスレーザLの走査速度等に関する情報を変更することで、パルスレーザLによって加工内容をワークW表面にマーキング加工する際のマーキングの濃度に関する編集を行うことができる。即ち、当該レーザ加工装置1によれば、PC7による濃度編集が行われた加工データを再度取得することなく、レーザ加工装置1単独で、RAM62内の格納済データにおける詳細データに対する濃度編集を行うことができ、もって、ワークW上に加工内容をマーキング加工する際のマーキングの濃度を微調整することができる。
【0116】
又、上述した実施形態においては、一台のPC7に対して一台のレーザ加工装置1が接続された構成であったが、レーザ加工装置1の使用環境によっては、一台のPC7に対して複数台のレーザ加工装置1が接続される構成も採用され得る。ここで、従来のレーザ加工装置では、PC7から制御コマンドやデータを出力しなければ、プレビュー機能を実現することはできず、加工データの編集(位置編集、濃度編集)も、PC7でのみ可能な構成であった。
【0117】
上述のように、一台のPC7に対し複数台のレーザ加工装置が接続されている場合、複数台のレーザ加工装置の内、或るレーザ加工装置のユーザがプレビュー機能又はデータ編集等でPC7を使用していると、他のレーザ加工装置のユーザは、PC7が空くまで、作業を待たなければならなかった。
【0118】
この点、上述した実施形態に係るレーザ加工装置1によれば、RAM62内に格納済データがあれば、格納済データを対象として、プレビュー表示処理(S9)、データ編集処理(S10)及び加工実行処理(S7)を、PC7を介することなく、レーザ加工装置1単独で行うことができる。即ち、一台のPC7に対し複数台のレーザ加工装置が接続されている場合であっても、PC7の空きを待つことなく、作業を進めることができるので、レーザ加工装置1の利便性を、より高めることができる。
【0119】
尚、上述した実施形態において、レーザ加工装置1は、本発明におけるレーザ加工装置の一例である。そして、レーザ発振ユニット12は、本発明におけるレーザ出射部の一例であり、ガイド光部16は、本発明における可視光出射部の一例である。又、ガルバノスキャナ19は、本発明における走査部の一例である。そして、リモコン65は、本発明における操作部の一例であり、RAM62は、本発明における記憶部の一例である。CPU61は、本発明における制御部の一例であり、S5、S12の処理を実行する際のCPU61は、本発明におけるデータ取得部の一例である。位置編集処理(S23)を実行する際のCPU61は、本発明における位置編集部の一例であり、濃度編集処理(S25)を実行する際のCPU61は、本発明における濃度編集部の一例である。そして、RAM62に格納された格納済データは、プレビュー表示処理(S9)でプレビュー表示を行う際に読み出された場合に、本発明におけるプレビューデータの一例として機能する。この場合に、当該格納済データの詳細データは、本発明における第1データとして機能し、当該格納済データの概要データは、本発明における第2データとして機能する。
【0120】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。例えば、上述した実施形態においては、パルスレーザLを出射してマーキング加工を行うレーザ加工装置1及びレーザ加工システム100であったが、本発明に係るレーザ加工装置は、この態様に限定されるものではなく、切断加工、トリミング加工若しくは穿孔加工などに使用することができる。ワークWに対する加工が可能であれば、パルスレーザLに限らず、種々のレーザを用いることができる。
【0121】
上述した実施形態では、格納済データ等を構成し、本発明における第2データとして機能する概要データは、矩形状の加工領域DRの輪郭を示すように定義していたが、この態様に限定されるものではない。本発明における第2データは、前記加工データDW等の加工内容を、前記第1データで或る詳細データよりも簡略化して示すデータであればよく、例えば、詳細情報よりも少ない数の加工点の位置情報(XY座標データ)によって、加工内容を示すことができれば、そのデータを本発明における第2データとしてもよい。
【0122】
又、上述した実施形態においては、レーザコントローラ5が、PC7からデータ(加工データDW、プレビューデータ)を取得する際に、詳細データ及び概要データを取得し、RAM62に格納する構成であったが、この態様に限定されるものではない。例えば、レーザコントローラ5が、PC7からデータを取得する際には、詳細データのみを取得し、当該詳細データから概要データを生成する構成とすることも可能である。この場合、レーザコントローラ5は、当該詳細データから概要データを生成する為に十分な処理能力を有していることが望ましい。
【符号の説明】
【0123】
1 レーザ加工装置
2 レーザ加工装置本体部
3 レーザヘッド部
5 レーザコントローラ
6 電源ユニット
7 PC
12 レーザ発振ユニット
16 ガイド光部
19 ガルバノスキャナ
61 CPU
62 RAM
65 リモコン
76 入力操作部
100 レーザ加工システム
L パルスレーザ
M 可視レーザ光
DW 加工データ
DC 加工要素
DR 加工領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8