(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下,本発明にかかる読取装置を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,画像読取機能を備えたスキャナに本発明を適用したものである。
【0014】
本形態のスキャナ100は,
図1に示すように,光学的に画像を読み取る読取部21を備え,原稿と読取部21とを相対的に移動させつつ,原稿の画像を読み取る装置である。読取部21は,主走査方向(
図1の奥行き方向)に複数の光学素子が一列に並んで配置されており,原稿からの反射光を電気信号に変換して出力する。読取部21としては,例えば,CISやCCDが適用可能である。なお,
図1中に矢印で示すように,主走査方向に直交する面内における上下左右の方向を規定する。副走査方向は,
図1中の左右方向である。
【0015】
本形態のスキャナ100は,原稿を固定して,読取部21を移動させつつ読み取るFB読取と,読取部21を固定して,原稿をに搬送しつつ読み取るADF読取と,を実行可能である。そのために,スキャナ100は,読取部21を移動させるためのキャリッジ51と,原稿を搬送するためのADF61とを有している。
【0016】
また,スキャナ100は,
図1に示すように,読取部21の移動範囲の上面で,ADF61の下側に,透明な2枚のコンタクトガラス15,16を備えている。コンタクトガラス15は,コンタクトガラス16と同一平面内で,コンタクトガラス16より
図1中で左側に配置されている。読取部21は,コンタクトガラス15またはコンタクトガラス16上の原稿の画像を読み取る。
【0017】
読取部21は,キャリッジ51にて
図1中で左右方向へ移動される。キャリッジ51は,
図1中の左右方向に延びるスライド軸52に対してスライド自在に支持され,後述するモータ68によって駆動される。スライド軸52の両端部は,スキャナ100本体の筐体に固定されている。読取部21は,モータ68の駆動により,左右いずれの方向へも移動可能である。
【0018】
ADF61は,読み取り前の原稿を載置する原稿トレイ62と,読み取り後の原稿を載置する排出トレイ63とを備えている。原稿トレイ62は,排出トレイ63の上方に配設されている。そして,ADF61の内部には,原稿が搬送される経路として,原稿トレイ62から排出トレイ63へ至る搬送路64(
図1中の一点鎖線)が設けられている。搬送路64には,原稿搬送方向の上流側から,搬入ローラ65,メインローラ66,排出ローラ67等の複数の搬送部材が設けられている。
【0019】
また,ADF61は,その下面に開口部71が設けられ,その開口部71から原稿押さえ板72が露出するように配置されている。この原稿押さえ板72は,原稿搬送方向の,メインローラ66よりも下流で排出ローラ67よりも上流に位置し,ADF61を閉じた状態でコンタクトガラス15と対向している。
【0020】
ADF61の下面にはフラットベッドカバー69が一体的に設けられている。フラットベッドカバー69は,一辺がスキャナ100の筐体と接続し,その接続箇所を中心として筐体に対して上方へ回動自在に設けられている。フラットベッドカバー69は,閉状態ではコンタクトガラス15,16の上面を覆い,開状態ではコンタクトガラス15,16の上面を開放する。つまり,フラットベッドカバー69の配置によって,コンタクトガラス15,16の上面が開閉される。フラットベッドカバー69は,カバー部の一例である。
【0021】
スキャナ100は,キャリッジ51と,メインローラ66等のADF61に含まれる複数の搬送部材と,の駆動を行うモータ68を備えている。モータ68は,共通モータの一例であり,駆動部の一例である。なお,モータとして,キャリッジ51の移動用と,ADF61の駆動用とで異なるモータを備えていてもよい。その場合,キャリッジ51の移動用のモータが,第1モータの一例であり,ADF61の駆動用のモータが第2モータの一例である。
【0022】
FB読取の実行時には,原稿はコンタクトガラス16の上面にセットされる。コンタクトガラス16は,原稿台の一例である。FB読取の開始時に,スキャナ100は,読取部21をFB開始位置(
図1中のA位置)に配置する。FB開始位置は,コンタクトガラス16の下側であって,コンタクトガラス16の左端に近い位置である。FB開始位置は,第1の位置の一例である。
【0023】
FB読取では,スキャナ100は,読取部21をコンタクトガラス16の下面に沿って,FB開始位置から副走査方向(
図1中の右向き)に,所定の速度で移動させつつ,読取部21に読み取りを実行させる。指定された読取範囲までの読み取りが終了したら,スキャナ100は,読取部21を一旦停止させる。FB読取の終了時には,読取部21は,FB開始位置よりも
図1中で右方の読取終了時の位置にある。
【0024】
ADF読取の実行時には,スキャナ100は,読取部21をコンタクトガラス15の下側のADF開始位置(
図1中のB位置)に停止させて,読み取りを実行させる。ADF開始位置は,コンタクトガラス15を介して,開口部71と対向する位置であり,FB開始位置よりも左側である。ADF開始位置は,第2の位置の一例である。
【0025】
ADF読取では,スキャナ100は,ADF61の原稿トレイ62にセットされた原稿を,搬入ローラ65によって1枚ずつ取り出し,搬送路64に沿って移動させ,メインローラ66にて下方へUターンさせる。さらに,ADF61は,その原稿を,原稿押さえ板72とコンタクトガラス15との間を通過させ,排出ローラ67を介して排出トレイ63上に排出する。つまり,ADF61にて搬送される原稿は,開口部71にてコンタクトガラス15を介して読取部21と対向する。読取部21は,ADF読取の実行中およびADF読取の終了時には,ADF開始位置に配置されている。
【0026】
なお,スキャナ100には,ADF61の原稿トレイ62上の原稿の有無を検知するための原稿センサ74と,フラットベッドカバー69の開閉状態を検知するためのカバーセンサ75とが備えられている。原稿センサ74は,原稿トレイ62の下面に設けられた光反射センサであり,1枚以上の原稿が有る場合と,原稿が無い場合とで異なる信号を出力する。また,カバーセンサ75は,フラットベッドカバー69の下面に設けられた光反射センサであり,フラットベッドカバー69がコンタクトガラス15,16に対して開放されている場合と,閉止されている場合とで異なる信号を出力する。
【0027】
さらに,スキャナ100は,コンタクトガラス15の上面であって,ADF61の開口部71よりも左方に,白板77を備えている。白板77は,所定の光反射率を有する板である。白板77は,白レベル基準板の一例である。スキャナ100では,例えば,温度変化等により,読取部21の光学素子の特性が変化することがある。そのため,スキャナ100は,適宜,読取部21の光量調整を実行する。具体的に,スキャナ100は,読取部21にて白板77を読み取り,その読取結果に基づいて,白レベルを調整する。
【0028】
そして,スキャナ100は,読み取りを実行していないとき,読取部21を,白板77に向かい合う位置であるホームポジション(
図1中のC位置)に停止させる。ホームポジションは,FB開始位置とも,ADF開始位置とも,異なる位置であり,読取部21による読み取りを実行しない位置である。ホームポジションは,第3の位置の一例である。ホームポジションは,ADF開始位置よりも左側である。
【0029】
続いて,スキャナ100の電気的構成について説明する。スキャナ100は,
図2に示すように,CPU31と,ROM32と,RAM33と,NVRAM(不揮発性RAM)34とを含むコントローラ30を備えている。また,スキャナ100は,読取部21と,ネットワークインターフェース(ネットワークIF)37と,操作パネル40と,モータ68と,原稿センサ74と,カバーセンサ75と,を備え,これらがコントローラ30に電気的に接続されている。
【0030】
ROM32には,スキャナ100を制御するための各種制御プログラムや各種設定,初期値等が記憶されている。RAM33は,各種制御プログラムが読み出される作業領域として,あるいは,データを一時的に記憶する記憶領域として利用される。CPU31は,ROM32から読み出した制御プログラムに従って,その処理結果をRAM33またはNVRAM34に記憶させながら,スキャナ100の各構成要素を制御する。CPU31は,制御部の一例である。なお,コントローラ30が制御部であってもよい。
【0031】
ネットワークインターフェース37は,有線LAN,無線LAN等を用いてネットワークを介して接続された装置と通信を行うためのハードウェアである。操作パネル40は,表示出力と,ユーザによる操作入力の受け付けとを行うためのハードウェアである。なお,
図2中のコントローラ30は,CPU31等,スキャナ100の制御に利用されるハードウェアを纏めた総称であって,実際にスキャナ100に存在する単一のハードウェアを表すとは限らない。
【0032】
続いて,本形態のスキャナ100の,継続読み取りの動作について説明する。本形態のスキャナ100は,継続読み取りの設定を受け付ける。継続読み取りは,複数回の読み取り動作による複数の画像データを纏めて出力できる読み取り動作である。スキャナ100は,継続読み取り動作の実行時には,読取指示の入力に応じた原稿の読み取りを行い,当該原稿の読み取りが完了したら読み取った画像データをRAM33に保持する。そして,スキャナ100は,次の読取指示を受け付けた場合には,さらに読み取りを行って画像データをRAM33に保持する。一方,スキャナ100は,終了指示が入力されたことに応じて,RAM33に保持されている画像データを纏めて出力する。つまり,スキャナ100は,継続読み取り動作では,終了指示が入力されるまでは読み取った画像データを出力せずにRAM33に保持する。
【0033】
スキャナ100は,
図3に示すように,読み取り動作を開始する前に,各種の読取設定を受け付ける。読取設定としては,例えば,読み取り対象の原稿のサイズ,カラー読取かモノクロ読取かの選択,出力ファイルの形式の他に,継続読み取りの有無が含まれる。各種の設定は,RAM33またはNVRAM34に記憶される。
【0034】
スキャナ100は,読取スタートの指示入力を受け付けた時,ADF61に原稿が有ればADF読取を実行し,ADF61に原稿が無ければFB読取を実行する。FB読取を実行した場合,スキャナ100は,コンタクトガラス16の上にセットされた原稿の画像を読み取り,読取結果の画像データをRAM33に保存する。そして,スキャナ100は,読み取った画像データをすぐには出力せず,ユーザへの問い合わせを表示する。具体的に,スキャナ100は,
図3に示すように,FB読取の実行後に,操作パネル40にて,次の原稿を読み取るか否かを問い合わせ,継続ボタンと,終了ボタンとを表示させる。
【0035】
そして,継続ボタンの入力を受け付けると,スキャナ100は,読取スタートの指示入力を待って,次の原稿を読み取る。つまり,スキャナ100は,FB読取では,読取設定にて継続読み取りが設定されていなくても,継続ボタンの押下を受け付けたことで,継続読み取りが設定されたと見なす。
【0036】
一方,終了ボタンの入力を受け付けると,スキャナ100は,RAM33に保存されている画像データを,読取設定にて指定されている形式のファイルに生成して出力する。例えば,PDF形式のファイルでの出力が指定されている場合,スキャナ100は,保存されている画像データを,1つのPDFファイルとして出力する。複数の画像データが保存されている場合には,スキャナ100は,それらを纏めて1つのファイルに生成する。
【0037】
また,ADF読取を実行した場合,スキャナ100は,ADF61にセットされている原稿を1枚ずつ続けて読み取り,それぞれの画像データをRAM33に保存する。スキャナ100は,ADF読取では,読取設定にて継続読み取りが設定された状態で,読み取りを開始した場合,FB読取の場合と同様の問い合わせを表示する。一方,読取設定にて継続読み取りが設定されていない状態で,ADF読取を開始した場合,スキャナ100は,読み取った画像データを,直ちに出力する。
【0038】
継続読み取りの複数の読み取りにおける読取方式は,同じであっても異なっていてもよい。スキャナ100は,ADF読取とADF読取との継続読み取り,ADF読取とFB読取との継続読み取り,FB読取とFB読取との継続読み取りを実行可能である。例えば,厚紙製の表紙と普通紙の内容ページとを含む冊子を読み取らせたいユーザは,表紙をFB読取にて読み取らせ,内容ページをADF読取で読み取らせて,1つのファイルとして取得することができる。この場合,スキャナ100は,FB読取とADF読取との組合せによる継続読み取りを受け付ける。
【0039】
さらに,本形態のスキャナ100では,FB読取またはADF読取を実行し,継続読み取りが設定されている状態であれば,次の読み取りの読取方式を推定して,読取スタートの指示入力を受け付ける前に,読取部21を配置する。なお,読み取りの実行と継続読み取りの設定とは,どちらが先でもよい。すなわち,スキャナ100は,1枚目の読み取りの指示入力を受け付ける前に継続読み取りの設定を受け付ける。また,スキャナ100は,1枚目の読み取りの指示入力を受け付け,読み取りを実行した後,所定時間が経過するまでの間にも,継続読み取りの設定を受け付ける。
【0040】
続いて,スキャナ100のモータ68の制御について説明する。スキャナ100のモータ68を所定の基準温度を超える高温状態で使用し続けることは,モータ68の寿命を短くする要因となる。そのため,スキャナ100では,モータ68の温度が,所定の基準温度より高いと判断した場合には,モータ68の駆動を制限して,読み取り動作を実行しない。モータ68の駆動を制限する動作は,制限処理の一例である。モータ68の駆動を制限する基準温度は,ROM32またはNVRAM34に記憶されている。
【0041】
また,前述したように,継続読み取りでは,スキャナ100は,読み取りの実行後,次の読み取りの読取方式を推定して,読取部21の配置を決定する。そして,その推定を行う際には,例えば,コンタクトガラス16上の原稿の有無を検知するために,モータ68を駆動する場合がある。モータ68は,連続して駆動させると,温度が高くなる傾向にある。モータ68の温度が基準温度に近い場合に,次の読み取りの読取方式を推定するためのモータ68の駆動を行うと,モータ68の温度が基準温度に到達してしまうおそれがある。つまり,読取方式を推定して読取部21を読み取り開始位置に移動させておくと生産性の向上が期待できるが,モータ68の駆動が過剰となりモータ68の温度が基準温度に到達した場合には読み取り動作を実行せず,生産性が低下する可能性があるため,改善の余地がある。
【0042】
具体的に,スキャナ100では,コントローラ30がモータ68の駆動を制御する。そして,スキャナ100は,
図4に示すように,モータ68に電力を供給する電源81と,モータ68の温度を検出する温度検出部82と,モータ68への電源81からの電力の供給を切断する切断部83と,を備えている。
【0043】
温度検出部82は,モータ68の温度に対応する信号を出力する。そして,コントローラ30は,温度検出部82の出力信号に基づいて,モータ68の温度を取得する。温度検出部82は,モータ68の温度を直接測定して,測定結果に基づく信号を出力する温度センサでもよいし,モータ68の連続駆動量をカウントして,カウント値に基づく信号を出力するカウンタでもよい。コントローラ30は,モータ68の連続駆動量に基づいて,モータ68の温度を推定する。つまり,モータ68の温度は,実測値でも推定値でもよい。
【0044】
切断部83は,コントローラ30によって制御され,モータ68への電力の供給状態を切り替える。具体的に,コントローラ30は,モータ68の温度が基準温度より高いと判断した場合,切断部83に電源の供給を遮断させて,モータ68への電力の供給を制限する。なお,モータ68の駆動を制限する動作では,スキャナ100は,モータ68への電力供給を遮断してモータ68を駆動しないとしてもよいし,モータ68の駆動速度を低下させるとしてもよい。
【0045】
続いて,本形態のスキャナ100にて前述した読取動作及び駆動制限動作を実現するための処理である読取処理の手順について,
図5のフローチャートを参照して説明する。この読取処理は,読取指示を受け付けたことを契機に,CPU31にて実行される。なお,スキャナ100は,読取指示を,操作パネル40を介して受け付けてもよいし,ネットワークインターフェース37を介して外部の装置から受け付けてもよい。
【0046】
読取処理では,CPU31は,まず,原稿センサ74の出力信号に基づいて,ADF61に原稿が有るか否かを判断する(S101)。そして,ADF61に原稿が有ると判断した場合には(S101:YES),CPU31は,ADF読取を実行させる。この場合,CPU31は,ADF読取と,読取後に次原稿の読み取りに備えて読取部21を配置するためのADF読取処理を実行する(S102)。ADF読取処理については後述する。
【0047】
一方,ADF61に原稿が無いと判断した場合(S101:NO),CPU31は,FB読取を実行する(S103)。S103は,第1読取処理の一例である。具体的に,CPU31は,モータ68にて読取部21をまずFB開始位置に移動させ,読取部21に読み取りを開始させるとともに,モータ68にて読取部21を右方へ一定の速度で移動させる。そして,CPU31は,例えば,読取結果に基づいて,原稿の端部に到達したと判断したら,読取部21に読み取りを終了させ,モータ68を停止させる。CPU31は,読取設定に基づいて,読取終了の位置を決定してもよい。
【0048】
次に,CPU31は,読取部21を戻すための移動を開始させる(S104)。具体的に,CPU31は,FB開始位置を目標の停止位置として,読取部21を左方へ向かって移動開始させる。そして,CPU31は,継続して次原稿を読み取る継続読み取りの選択入力を受け付けたか否かを判断する(S105)。前述したように,スキャナ100は,FB読取を実行すると,継続して読み取るか,あるいは,読み取りを終了するかの選択入力を受け付ける表示を,操作パネル40に表示する。操作パネル40にて継続の選択入力を受け付けていないと判断した場合(S105:NO),CPU31は,FB開始位置を目標の停止位置としたままで,読取部21の移動を続ける。
【0049】
そして,CPU31は,操作パネル40にて,読取終了の選択入力を受け付けたか否かを判断する(S106)。読取終了の選択入力を受け付けていないと判断した場合(S106:NO),CPU31は,S105に戻って,継続の指示を受け付けるか,読取終了の指示を受け付けるかのいずれかとなるまで,読取部21を移動させ続ける。すなわち,CPU31は,読取部21を移動させている間,継続の指示あるいは読み取り終了の指示がされたか否かを判断している。なお,継続の指示も読取終了の指示も受け付けていない間に読取部21がFB開始位置に到達した場合には,CPU31は,読取部21を,FB開始位置に停止させる。また,継続の指示も読取終了の指示も受け付けていないまま,所定の待機時間が経過したら,終了が選択されたと判断してもよい。
【0050】
終了が選択されたと判断した場合(S106:YES),CPU31は,読み取り終わって保存している画像データを,読取設定にて指定された出力形式にて出力する(S108)。さらに,CPU31は,モータ68にて読取部21をホームポジションへ移動させ(S109),読取処理を終了する。継続してさらに読み取りを実行するのではない場合には,次回の読み取り開始まで時間がある可能性が高いことから,読取部21をホームポジションへ移動させることで,次原稿の読み取り開始が指示された場合などに,素早く光量調整等の各種の補正処理を実行できる。
【0051】
一方,操作パネル40にて継続読み取りの指示入力を受け付けた場合には(S105:YES),CPU31は,モータ68が高温状態であるか否かを判断する(S111)。具体的には,CPU31は,モータ68の温度が所定の第1閾値温度よりも高いか否かを判断する。第1閾値温度は,前述した基準温度より低い温度である。第1閾値温度は,第1温度の一例である。
【0052】
モータ68が高温状態であると判断した場合(S111:YES),CPU31は,原稿センサ74の出力信号に基づいて,ADF61に原稿が有るか否かを判断する(S112)。ADF61に原稿が無いと判断した場合(S112:NO),CPU31は,読取部21の停止位置を変更可能であるか否かを判断する(S113)。
【0053】
S104では,CPU31は,FB開始位置を目標の停止位置として,読取部21の移動を開始させている。そして,モータ68の停止位置を変更可能な限度の位置にまだ到達せず,読取部21の停止位置を変更できると判断した場合(S113),CPU31は,S112に戻って,ADF61に原稿が有るか否かを判断する。そして,CPU31は,ADF61に原稿が有る,または,停止位置を変更可能な限度の位置に到達した,のいずれかと判断されるまで,読取部21の移動を続ける。なお,モータ68の停止位置を変更可能な限度の位置とは,読取部21をFB開始位置に停止させるための停止制御を開始する位置である。
【0054】
そして,読取部21が,その停止位置を変更可能な限度の位置に到達したと判断した場合(S113:NO),CPU31は,読取部21をFB開始位置に停止させ(S115),読取処理を終了する。なお,スキャナ100は,継続して実行する次回の読み取りの読取指示を受け付けた際に,ADF61に原稿が無いと判断した場合には,S115にて停止させたFB開始位置から読取部21を移動させつつFB読取を実行する。
【0055】
一方,読取部21が停止位置を変更可能な限度の位置に到達する前に,ADF61に原稿が有ると判断した場合(S112:YES),CPU31は,読取部21の目標停止位置をADF開始位置に変更して読取部21を移動させ(S116),読取処理を終了する。つまり,CPU31は,読取部21を,FB開始位置ではなくADF開始位置に停止させる。
【0056】
継続読み取りの設定であって,FB読取の実行後にADF61に原稿が有ることから,次回の読取はADF読取であると推測される。そこで,スキャナ100は,継続読み取りにてFB読取の終了後,ADF61に原稿が有れば,読取部21をADF開始位置に停止させる。そして,ADF61に原稿が有る状態で,スキャナ100が次回の読取開始の指示を受け付けたら,読取部21をすでにADF開始位置に配置しているので即座に読取動作を開始できる。従って,読取部21をFB読取の終了後に一旦FB開始位置に戻して,開始指示を受け付けた後にADF61に原稿が有るか否かに基づいて読取部21を移動させる場合に比較して,読取ジョブを早期に完了できる可能性が高い。S112,S115,S116は,第1読取後配置処理の一例である。
【0057】
また,S111にて,モータ68が高温ではないと判断した場合(S111:NO),CPU31は,モータ68の停止位置をホームポジションに変更し,読取部21をホームポジションへ移動させる(S117)。さらに,スキャナ100は,白板77を読み取らせて光量調整等の各種補正処理を実行して(S118),読取処理を終了する。
【0058】
FB読取が完了した後に読取部21をホームポジションに戻すと,光量調整等の補正処理が可能であり,以後の読み取りにて高画質の読み取りが可能になる。しかし,毎回ホームポジションへ移動させるとモータ68の駆動量が多くなり,モータ68の温度が上昇し易い。モータ68の温度が上昇し過ぎると,前述したように,モータ68の駆動を制限し,読み取りを行わないため,ユーザに不利益となる可能性が高い。本形態のスキャナ100は,モータ68の駆動量が多い場合にはホームポジションへ移動させずに,次回の読取の開始位置と推測される位置に読取部21を配置させることで,ユーザの不利益を軽減できる。
【0059】
なお,モータ68が高温でない場合,読取実行の度にホームポジションへ移動させて光量調整を行うとしているが,光量調整を毎回行う必要はない。たとえば,所定の枚数以上読み取りを実行した後に光量調整を行うとしてもよい。
【0060】
次に,読取指示を受け付けた際に,ADF61に原稿が有ると判断した場合に,CPU31にて実行されるADF読取処理について,
図6のフローチャートを参照して説明する。ADF読取処理は,
図5の読取処理のS101にてYESと判断された場合に,CPU31にて実行される。
【0061】
ADF読取処理では,CPU31は,まず,ADF読取を実行する(S201)。つまり,読取部21をADF開始位置に配置して,ADF61にて原稿を搬送しつつ読取部21にて原稿の画像を読み取らせる。S201は,第2読取処理の一例である。ADF読取の終了時には,読取部21は,ADF開始位置に停止している。
【0062】
次に,CPU31は,読取設定にて継続読み取りが設定されているか否かを判断する(S202)。そして,継続読み取りの設定ではないと判断した場合(S202:NO),CPU31は,読み取り終わって保存している画像データを,読取設定にて指定された出力形式にて出力する(S203)。さらに,CPU31は,モータ68にて読取部21をホームポジションへ移動させ(S204),ADF読取処理を終了する。ADF読取処理の終了後は,読取処理に戻り,CPU31は,読取処理を終了する。
【0063】
一方,継続読み取りが設定されている場合には(S202:YES),CPU31は,カバーセンサ75の出力信号に基づいて,フラットベッドカバー69が開閉されたか否かを判断する(S211)。フラットベッドカバー69が開閉されていないと判断した場合(S211:NO),CPU31は,所定時間が経過したか否かを判断する(S212)。所定時間は,ユーザがフラットベッドカバー69を開けて原稿をセットするのに必要と推定される時間であり,例えば,30秒程度である。
【0064】
そして,所定時間が経過していないと判断した場合(S212:NO),CPU31は,S211に戻り,フラットベッドカバー69が開閉されたか否かを判断する。一方,所定時間が経過する前に,フラットベッドカバー69が開閉されたと判断した場合(S211:YES),CPU31は,FB開始位置へ読取部21を移動させ(S213),ADF読取処理を終了する。
【0065】
ADF読取の終了後,所定時間以内にフラットベッドカバー69が開閉された場合,コンタクトガラス16の上に原稿がセットされた可能性が高い。つまり,次回の読取はFB読取であると推定できる。スキャナ100は,次回の読取指示を受け付ける前にFB開始位置へ読取部21を配置するので,次回の読取がFB読取であれば,早期に読み取りを開始でき,読取ジョブを早期に完了できる。
【0066】
一方,フラットベッドカバー69が開閉されることなく,所定時間が経過したと判断した場合(S212:YES),CPU31は,モータ68が高温であるか否かを判断する(S215)。具体的には,CPU31は,モータ68の温度が所定の第2閾値温度よりも高い高温状態であるか否かを判断する。第2閾値温度は,前述した基準温度より低い温度である。第2閾値温度は,第1閾値温度と同じ温度でも異なる温度でもよい。第2閾値温度は,第2温度の一例である。
【0067】
モータ68の温度が高くないと判断した場合(S215:NO),具体的に,モータ68の温度が第2閾値温度以下であると判断した場合,CPU31は,原稿センサ74の出力信号に基づいて,ADF61に原稿が有るか否かを判断する(S216)。そして,ADF61に原稿が無いと判断した場合(S216:NO),CPU31は,コンタクトガラス16の上の原稿を検出する動作を行う(S217)。
【0068】
S217では,スキャナ100は,読取部21をFB開始位置に移動させ,さらに,読取部21にて読取動作を実行させつつ読取部21を右方へ所定の距離だけ移動させる。つまり,スキャナ100は,副走査方向に所定の範囲を読み取らせ,その読取結果に基づいて,コンタクトガラス16の上の原稿を検出する。スキャナ100は,例えば,読み取った画像データに,原稿のエッジと判断できる低輝度の領域が含まれている場合,あるいは,フラットベッドカバー69等の背景部材と輝度値の異なる領域が含まれている場合に,原稿が有ると判断する。ここで読み取る所定の範囲は,原稿の有無を判断できる程度の画像データが得られる範囲であれば良く,例えば,5〜20mmである。
【0069】
そして,CPU31は,S217の検出結果に基づいて,コンタクトガラス16の上に原稿が有るか否かを判断する(S218)。S218は,原稿判断処理の一例である。コンタクトガラス16の上に原稿が有ると判断した場合(S218:YES),CPU31は,読取部21をFB開始位置に移動させて(S213),ADF読取処理を終了する。
【0070】
コンタクトガラス16の上に原稿があれば,次回の読取指示はFB読取である可能性が高い。スキャナ100は,コンタクトガラス16の上に原稿が有ると判断した場合,FB開始位置へ読取部21を配置するので,次回の読取がFB読取であれば,早期に読み取りを開始でき,読取ジョブを早期に完了できる。
【0071】
一方,コンタクトガラス16の上に原稿が無いと判断した場合(S218:NO),CPU31は,読取部21をADF開始位置に移動させて(S219),ADF読取処理を終了する。コンタクトガラス16の上に原稿が無ければ,次回の読取指示はADF読取である可能性が高い。ADF開始位置へ読取部21を配置することで,次回の読取がADF読取であれば,早期に読み取りを開始でき,読取ジョブを早期に完了できる。S218と,その後のS213およびS219は,第2読取後配置処理の一例である。
【0072】
なお,モータ68の温度が高い場合には,S217にて読取部21を移動させて原稿の有無を検出する動作を行うと,さらに温度が高くなるおそれがある。そこで,モータ68が高温であると判断した場合(S215:YES),読取部21をADF開始位置に配置したままで移動させず,ADF読取処理を終了する。
【0073】
原稿の検知のためにモータ68を駆動すれば,モータ68がさらに高温となって,基準温度に到達する可能性がある。そこで,モータ68が高温であれば,モータ68の駆動を伴う動作であるコンタクトガラス16の上の原稿の検知動作を行わず,次回の読取指示を受け付けるまで,読取部21をADF開始位置にて待機させるとよい。
【0074】
また,ADF61に原稿が有ると判断した場合(S216:YES)も,CPU31は,そのままADF読取処理を終了する。ADF61に原稿が有れば,次回の読取指示もADF読取である可能性が高い。そこで,ADF61に原稿が有る場合には,コンタクトガラス16の上の原稿の検知を行わず,次回の読取指示を受け付けるまで,読取部21をADF開始位置にて待機させるとよい。
【0075】
以上,詳細に説明したように,本形態のスキャナ100は,FB読取とADF読取とを実行可能な装置であって,継続読み取りの実行が可能である。そして,FB読取を実行し,継続読み取りの読取設定となっている場合,スキャナ100は,FB読取での読取終了後,読取部21をFB開始位置に戻すまでの間に,ADF61に原稿が有れば,読取部21をADF開始位置に配置する。継続読み取りであって,FB読取を開始した後にADF61に原稿が置かれた場合,FB読取に続いてADF読取が実行される可能性が高い。読取部21をADF開始位置に配置しておけば,早期にADF読取を開始でき,読取ジョブの早期の完了が期待できる。一方,ADF61に原稿が無いままで読取部21がFB開始位置に戻った場合には,スキャナ100は,読取部21をFB開始位置に配置する。ADF読取が実行される可能性が高くない場合には,FB開始位置に配置されるので,読取ジョブの早期の完了が期待できる。
【0076】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,スキャナに限らず,複写機,複合機,FAX装置等,画像読取機能を備えるものであれば適用可能である。
【0077】
また,例えば,白板77は,白色の板とは限らず,グレー等の白色以外の色でもよいし,板状でなくてもよい。つまり,読取部21をホームポジションに配置した場合に読み取ることのできる位置に,読取濃度の基準値が設定され,読取部21の光量調整に使用できる部材が配置されていればよい。
【0078】
また,FB読取であっても,読み取り開始前の読取設定にて継続読み取りの指示を受け付け,受け付けた読取設定に基づく動作を行ってもよい。例えば,読取設定にて継続読み取りを行わない設定が指示された場合には,FB読取の後に問い合わせを行わず,読み取った画像データを直ちに出力してもよい。
【0079】
また,スキャナ100は,ADF61の各搬送部材を駆動するモータと,読取部21のキャリッジ51を移動させるモータとで,別のモータを備えていてもよい。その場合には,各モータごとに温度を取得し,当該モータの温度が高いと判断した場合に,当該モータの駆動を制限するとよい。
【0080】
また,コンタクトガラス16上に原稿が有るか否かの判断は,読取動作によるものに限らない。例えば,コンタクトガラス16上の原稿の有無に応じて異なる信号を出力する専用のセンサを有して,その出力信号に基づいて行ってもよい。
【0081】
また,実施の形態では,コントローラ30にてモータ68の駆動を制限する動作を行っているが,モータ68の駆動を制御する専用回路を有して,専用回路にて行ってもよい。その場合,専用回路も,制御部の一例である。
【0082】
また,温度によるモータ68の駆動制限は,しなくてもよい。例えば,読取処理のS111を消去し,モータ68の温度に関わらず,S112とS113とを実行するとしてもよい。また,FB読取の後の光量調整は,しなくてもよい。また,ADF読取の後のコンタクトガラス16の上の原稿の検出動作は行わなくてもよい。例えば,ADF読取の実行後は,読取指示を受け付けるまで読取部21をADF開始位置に配置したままとしてもよい。
【0083】
また,実施の形態に開示されている処理は,単一のCPU,複数のCPU,ASICなどのハードウェア,またはそれらの組み合わせで実行されてもよい。また,実施の形態に開示されている処理は,その処理を実行するためのプログラムを記録した記録媒体,または方法等の種々の態様で実現することができる。