(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の圧力室は、前記第1方向に延びる第1圧力室列と、同じく前記第1方向に延び、且つ、前記第1圧力室列に対して前記第2方向の前記一方側に配置された第2圧力室列を構成し、
前記第1圧力室列に対応する前記環状導体に接続された前記第2導電部は、前記第2圧力室列の2つの前記圧力室の間を通過して、前記第1導電部に接続されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
前記第1圧力室列の前記圧力室に対応する前記貫通孔と前記環状導体は、前記圧力室の前記第2方向における前記一方側の端部と重なるように配置されていることを特徴とする請求項5に記載の液体吐出装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態に係るプリンタの概略的な平面図である。まず、
図1を参照してインクジェットプリンタ1の概略構成について説明する。尚、
図1に示す前後左右の各方向をプリンタの「前」「後」「左」「右」と定義する。また、紙面手前側を「上」、紙面向こう側を「下」とそれぞれ定義する。以下では、前後左右上下の各方向語を適宜使用して説明する。
【0012】
(プリンタの概略構成)
図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、プラテン2と、キャリッジ3と、インクジェットヘッド4と、搬送機構5と、制御装置6等を備えている。
【0013】
プラテン2の上面には、被記録媒体である記録用紙100が載置される。キャリッジ3は、プラテン2と対向する領域において2本のガイドレール10,11に沿って左右方向(以下、走査方向ともいう)に往復移動可能に構成されている。キャリッジ3には無端ベルト14が連結され、キャリッジ駆動モータ15によって無端ベルト14が駆動されることで、キャリッジ3は走査方向に移動する。
【0014】
インクジェットヘッド4は、キャリッジ3に取り付けられており、キャリッジ3とともに走査方向に移動する。インクジェットヘッド4は、走査方向に並ぶ4つのヘッドユニット16を備えている。4つのヘッドユニット16は、4色(ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ)のインクカートリッジ17が装着されるカートリッジホルダ7と、図示しないチューブによってそれぞれ接続されている。各ヘッドユニット16は、その下面(
図1の紙面向こう側の面)に形成された複数のノズル24(
図2〜
図4参照)を有する。各ヘッドユニット16のノズル24は、インクカートリッジ17から供給されたインクを、プラテン2に載置された記録用紙100に向けて吐出する。
【0015】
搬送機構5は、前後方向にプラテン2を挟むように配置された2つの搬送ローラ18,19を有する。搬送機構5は、2つの搬送ローラ18,19によって、プラテン2に載置された記録用紙100を前方(以下、搬送方向ともいう)に搬送する。
【0016】
制御装置6は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び、各種制御回路を含むASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を備える。
制御装置6は、ROMに格納されたプログラムに従い、ASICにより、記録用紙100への印刷等の各種処理を実行する。例えば、印刷処理においては、制御装置6は、PC等の外部装置から入力された印刷指令に基づいて、インクジェットヘッド4やキャリッジ駆動モータ15等を制御して、記録用紙100に画像等を印刷させる。具体的には、キャリッジ3とともにインクジェットヘッド4を走査方向に移動させながらインクを吐出させるインク吐出動作と、搬送ローラ18,19によって記録用紙100を搬送方向に所定量搬送する搬送動作とを、交互に行わせる。
【0017】
(インクジェットヘッドの詳細)
次に、インクジェットヘッド4のヘッドユニット16の構成について詳細に説明する。尚、4つのヘッドユニット16はそれぞれ同じ構成を有するものであるため、以下では、4つのヘッドユニット16のうちの1つについて説明する。
【0018】
図2は、ヘッドユニット16の平面図である。
図3は、
図2の一部拡大平面図、
図4は、
図3のIV-IV線断面図、
図5は
図4の一部拡大断面図である。
図2〜
図5に示すように、ヘッドユニット16は、ノズルプレート20と、流路基板21と、複数の圧電素子31を含む圧電アクチュエータ22と、リザーバ形成部材23等を備えている。尚、図面の簡素化のため、
図2、
図3では、流路基板21の端部に接合されるCOF50が、二点鎖線で概略的に示されている。また、
図3では、リザーバ形成部材23が、二点鎖線で概略的に示されている。
【0019】
(ノズルプレート)
ノズルプレート20は、例えば、シリコン等で形成されたプレートである。このノズルプレート20には、複数のノズル24が形成されている。
図2に示すように、複数のノズル24は、搬送方向に沿って配列され、走査方向に並ぶ2つのノズル列27(27a,27b)を構成している。また、1つのノズル列27におけるノズル24の配列ピッチをPとしたときに、2つのノズル列27a,27bの間で、ノズル24の位置が搬送方向にP/2だけずれている。
【0020】
(流路基板)
流路基板21は、シリコン単結晶の基板である。流路基板21には、複数のノズル24とそれぞれ連通する複数の圧力室26が形成されている。各圧力室26は、走査方向に長い、矩形の平面形状を有する。複数の圧力室26は、上述した複数のノズル24の配列に応じて配列され、走査方向に並ぶ2つの圧力室列28(28a,28b)を構成している。この流路基板21の下面はノズルプレート20で覆われており、上下方向から見て、各圧力室26の走査方向における外側の端部がノズル24と重なっている。即ち、
図2に示すように、右側の圧力室列28aにおいては、各圧力室26の右端部とノズル24とが重なり、左側の圧力室列28bにおいては、各圧力室26の左端部とノズル24とが重なっている。
【0021】
(圧電アクチュエータ)
圧電アクチュエータ22は、流路基板21に重ねて設けられた、絶縁膜30や圧電膜37等を含む、複数の膜の積層体である。圧電アクチュエータ22は、流路基板21の上面に、複数の圧力室26を覆うように配置されている。また、圧電アクチュエータ22の、各圧力室26の内側の端部には、上記複数の膜を貫通し、圧力室26に連通する貫通孔29が形成されている。詳細には、右側の圧力室列28においては、圧力室26の左端部と貫通孔29が重なり、左側の圧力室列28においては、圧力室26の右端部と貫通孔29が重なっている。後述のリザーバ形成部材23内のリザーバ60から、インクが、貫通孔29を通じて各圧力室26へと供給される。
【0022】
絶縁膜30は、例えば、シリコン基板の表面が酸化されることにより形成された、二酸化シリコンの膜である。絶縁膜30の厚みは、例えば、1.0〜1.5μmである。絶縁膜30の上面の、複数の圧力室26と重なる位置には、複数の圧電素子31がそれぞれ配置されている。圧電素子31は、圧力室26内のインクに、それぞれノズル24から吐出するための吐出エネルギーを付与する。
【0023】
圧電素子31の構成について説明する。絶縁膜30の上には、共通電極32、2つの圧電体33、複数の個別電極34が、この順で積層されている。
【0024】
共通電極32は、絶縁膜30の上面に形成されている。
図4、
図5に示されるように、共通電極32は、絶縁膜30の上面のほぼ全域に形成されている。共通電極32は、例えば、白金(Pt)で形成されている。また、共通電極32の厚みは、例えば、0.1μmである。
【0025】
共通電極32の上には、2つの圧力室列28にそれぞれ対応して、2つの圧電体33が配置されている。各圧電体33は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電材料で成膜された圧電膜37がパターニングされることによって形成されている。尚、圧電膜37は、PZTの他、鉛が含有されていない非鉛系の圧電材料で形成されていてもよい。圧電体33の厚みは、例えば、1.0〜2.0μmである。また、圧電体33は、搬送方向に長い平面形状を有し、対応する圧力室列28を構成する複数の圧力室26を、搬送方向において跨ぐように配置されている。
【0026】
圧電体33の上面の、複数の圧力室26とそれぞれ対向する位置には、複数の個別電極34が形成されている。各個別電極34は、圧力室26よりも小さい、矩形の平面形状を有し、対応する圧力室26の中央部と重なるように配置されている。個別電極34は、例えば、イリジウム(Ir)やプラチナ(Pt)で形成されている。また、個別電極34の厚みは、例えば、0.1μmである。
【0027】
以上の構成において、1つの圧力室26に対して、個別電極34、共通電極32のうちの前記圧力室26と対向する部分、及び、圧電体33のうちの個別電極34と共通電極32に挟まれた部分によって、1つの圧電素子31が構成されている。尚、圧電体33の、その下面側の共通電極32と上面側の1つの個別電極34とに挟まれた部分を、以下、活性部36と称する。各圧電素子31において、個別電極34と共通電極32の間に電位差が生じて、活性部36に厚み方向の電界が作用すると、この活性部36が面方向に変形する。この活性部36の変形に伴い、圧電素子31は全体的に撓むように変形し、圧力室26と対向する部分が、絶縁膜30の面方向と直交する上下方向に変位する。
【0028】
図4、
図5に示すように、圧電アクチュエータ22は、上述した絶縁膜30、及び、複数の圧電素子31に加えて、圧電体保護膜40と層間絶縁膜41を有する。
【0029】
図4、
図5に示すように、圧電体保護膜40は、2つの圧電体33を覆うように配置されている。圧電体保護膜40は、空気中の水分が圧電体33へ浸入するのを防止するなど、圧電体33(圧電膜37)を保護するための膜である。圧電体保護膜40は、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ:Al2O3)、酸化シリコン(SiOx)、酸化タンタル(TaOx)等の酸化物、あるいは、窒化シリコン(SiN)等の窒化物など、透水性の低い材料で形成される。
【0030】
圧電体保護膜40の上には、層間絶縁膜41が形成されている。層間絶縁膜41の材質は特に限定されないが、例えば、二酸化シリコン(SiO2)で形成される。また、層間絶縁膜41の厚みは、例えば、0.3〜0.5μmである。この層間絶縁膜41は、個別電極34に接続される次述の個別配線42と、共通電極32との間の、絶縁性を高めるために設けられている。
【0031】
尚、
図3〜
図5に示すように、圧電体33の上面の個別電極34の中央部において、圧電体保護膜40と層間絶縁膜41が、部分的に除去されている。また、後で述べる、個別配線42と共通配線44を覆う配線保護膜43も、同様に、個別電極34の中央部において除去されている。つまり、個別電極34の中央部は、圧電体保護膜40、層間絶縁膜41、及び、配線保護膜43から露出している。これにより、圧電体33の上に膜40、41,43が設けられることによる、圧電体33の変形阻害が抑制されている。
【0032】
(個別配線と共通配線)
圧電アクチュエータ22の上面、即ち、層間絶縁膜41の上面には、複数の個別配線42と共通配線44が配置されている。個別配線42と共通配線44は、アルミニウム(Al)や金(Au)などの電気抵抗率の低い材料で形成されている。また、個別配線42と共通配線44の厚みは、例えば、1.0μmである。
【0033】
個別配線42の端部は、圧電体33の上面の端部と重なっている。この個別電極42の端部は、圧電体保護膜40及び層間絶縁膜41を貫通するコンタクトホール内の導通部48によって、個別電極34と導通している。各個別配線42は、対応する個別電極34から右方へ引き出され、リザーバ形成部材23から露出した流路基板21の右端部まで延びている。流路基板21の右端部の上面には、個別配線42よりも幅の大きい複数の駆動接点46が搬送方向に並べて配置されている。複数の個別配線42は、複数の駆動接点46とそれぞれ接続されている。また、複数の駆動接点46には、後述するCOF50が接続される。
【0034】
共通配線44は、第1導電部44aと、複数の第2導電部44bと、2つの第3導電部44cと、複数の環状導体45を有する。
【0035】
第1導電部44aは、複数の圧力室26の左側、即ち、個別配線42の引出側と反対側に配置されている。第1導電部44aは、複数の圧力室26の配列方向である搬送方向に延びている。第1導電部44aと共通電極32との間にある、層間絶縁膜41と圧電体保護膜40には、複数のコンタクトホール53が形成されている。第1導電部44aは、複数のコンタクトホール53内にそれぞれ配置された、導電性材料からなる接続部54を介して、共通電極32と接続されている。
【0036】
各第2導電部44bは、第1導電部44aから、左側の圧力室列28bを構成する2つの圧力室26の間を通過して、2つの圧力室列28a,28bの間の領域まで右方へ延びている。2つの圧力室列28a,28bの間の領域において、圧電体保護膜40と層間絶縁膜41には、複数の第2導電部44bにそれぞれ対応する複数のコンタクトホール55が形成されている。各第2導電部44bは、コンタクトホール55内に配置された、導電性材料からなる接続部56を介して、共通電極32と接続されている。
【0037】
図2、
図3に示すように、2つの第3導電部44cは、第1導電部44aの前端部と後端部から、リザーバ形成部材23から露出した流路基板21の右端部までそれぞれ延びている。流路基板21の右端部の上面には、2つのグランド接点47が配置されている。2つのグランド接点47は、複数の駆動接点46に対して前側と後側にそれぞれ配置されている。2つの第3導電部44cは、2つのグランド接点47とそれぞれ接続されている。尚、2つのグランド接点47は、後述するCOF50に接続されることにより、グランド電位が付与される接点である。
【0038】
以上より、共通電極32は、共通配線44の第1導電部44a、第2導電部44b、第3導電部44cを介して、グランド接点47に接続されている。これにより、共通電極32の電位がグランド電位に保持される。また、共通電極32とグランド接点47は、第1導電部44aから接続部54を経由する経路と、第1導電部44aから第2導電部44b、及び、接続部56を経由する経路の、2つの経路によって導通しているとも言える。この構成では、各圧電素子31を駆動したときに共通電極32からグランド接点47へ、上記2つの経路を経由してそれぞれ電流が流れることになる。そのため、グランド接点47から離れた位置にある圧電素子31までの電気抵抗が小さくなり、異なる位置にある複数の圧電素子31の間での共通電極32の電位ばらつきが小さく抑えられるという効果が得られる。
【0039】
図3〜
図5に示すように、環状導体45は、圧電アクチュエータ22の上面である層間絶縁膜41の表面に、貫通孔29を取り囲むように設けられている。環状導体45の厚み、即ち、環状導体45の上端面の、圧電アクチュエータ22の上面からの高さは、例えば、1.0μmである。圧電アクチュエータの上面の貫通孔29の周囲領域には、後述するリザーバ形成部材23が、環状導体45を介して接合される。
【0040】
また、環状導体45は、第1導電部44aから2つの圧力室列28の間の領域まで延びる、第2導電部44bの先端部と導通している。具体的には、
図3に示すように、1本の第2導電部44bの先端部に、左右2つの圧力室26に対応する2つの環状導体45が導通している。環状導体45は、圧電体保護膜40及び層間絶縁膜41を挟んで環状導体45よりも下の層に位置する共通電極32と、第2導電部44b及び接続部56を介して導通している。また、環状導体45の電位は、共通電極32と同様に、グランド電位に維持される。
【0041】
図4、
図5に示すように、各環状導体45は、貫通孔29内の流路に露出している。そのため、後述するリザーバ形成部材23から貫通孔29を通過して圧力室26に供給されるインクが、貫通孔29内の流路において、この流路に露出している環状導体45と接触する。これにより、接触したインクの電位がグランド電位となり、インクの帯電が防止される。
【0042】
尚、本実施形態では、層間絶縁膜41の上に、上記の個別配線42と共通配線44を覆う配線保護膜43が形成されている。これにより、複数の個別配線42の間、及び、個別配線42と共通配線44との間の絶縁性が高められている。配線保護膜43は、例えば、窒化シリコン(SiNx)等で形成されている。配線保護膜43の厚みは、例えば、0.1〜1μmである。
図3、
図4に示すように、配線保護膜43は、流路基板21の右端部には設けられておらず、駆動接点46とグランド接点47は配線保護膜43に覆われていない。尚、個別配線42や共通配線44が金で形成されている場合など、配線材質や配線ピッチ等の条件によっては、配線保護膜43を省略することも可能である。
【0043】
(COF)
図2、
図3に示すように、駆動接点46とグランド接点47が配置された、流路基板21の右端部の上面には、COF50の一端部が接合されている。このCOF50の途中部には、ドライバIC51が実装されている。また、各COF50の他端部は、プリンタ1の制御装置6(
図1参照)に接続されている。COF50には、複数の駆動配線52(
図4参照)と、グランド配線(図示略)とが形成されている。各駆動配線52は、ドライバIC51の出力端子と接続している。COF50が流路基板21の右端部に接合されたときに、駆動配線52は、対応する駆動接点46と電気的に接続される。また、同時に、COF50のグランド配線が、グランド接点47と電気的に接続される。
【0044】
ドライバIC51は、制御装置6からの制御信号に基づいて駆動信号を生成し、各圧電素子31に出力する。駆動信号は、駆動配線52を介して駆動接点46に入力され、さらに、個別配線42を介して対応する個別電極34に供給される。このとき、個別電極34の電位が、所定の駆動電位とグランド電位との間で変化する。一方、共通配線44を介してグランド接点47と接続されている共通電極32の電位は、グランド電位に維持される。
【0045】
ドライバIC51から駆動信号が供給されたときの、各圧電素子31の動作について説明する。駆動信号が入力されていない状態では、個別電極34の電位はグランド電位となっており、共通電極32と同電位である。この状態から、個別電極34に駆動信号が入力されると、共通電極32との電位差により、圧電体33の活性部36に厚み方向の電界が作用する。このとき、絶縁膜30の上にある活性部36が変形して、1つの圧電素子31全体が圧力室26側に凸となるように撓む。これにより、圧力室26の容積が減少して圧力室26内に圧力波が発生し、圧力室26に連通するノズル24からインクの液滴が吐出される。
【0046】
(リザーバ形成部材)
リザーバ形成部材23の材質は、特に限定されるものではないが、流路基板21と同じくシリコン基板であってもよいし、樹脂など別の材料で形成されたものであってもよい。また、リザーバ形成部材23は、材質の異なる複数のプレートが積層されて形成されてもよい。
【0047】
リザーバ形成部材23の上部には、インクを貯留するリザーバ60が形成されている。リザーバ60には、ホルダ7のインクカートリッジ17(
図1参照)からインクが供給される。リザーバ形成部材23の下部には、2つの圧電体33にそれぞれ対応した2つの凹部63が形成されている。リザーバ形成部材23が、流路基板21の上面に接合されたときに、2つの凹部63内に、2つの圧電体33がそれぞれ収容される。また、リザーバ形成部材23の、2つの凹部63を区画する壁部65には、複数の供給流路64が形成されている。
【0048】
リザーバ形成部材23は、圧電アクチュエータ22に、熱硬化性接着剤66で接合される。このとき、リザーバ形成部材23の壁部65は、圧電アクチュエータ22の2つの圧電体33の間の領域に接合されるとともに、複数の供給流路64が複数の貫通孔29にそれぞれ連通する。また、壁部65は、貫通孔29の周囲領域において、環状導体45を介して接合される。そのため、貫通孔29の周囲領域におけるシール性が向上する。
【0049】
ここで、上述したように、環状導体45は、接続部54,56を介して共通電極32と接続され、共通電極32と同じくグランド電位に保持されている。また、環状導体45は、貫通孔29内の流路に露出している。そのため、リザーバ形成部材23から貫通孔29を通過して圧力室26に供給されるインクが、貫通孔29内の流路において環状導体45と接触し、接触したインクの電位がグランド電位となる。本実施形態では、グランド電位に維持された環状導体45が、貫通孔29内の流路に露出しただけの構成で、インクの電位をグランド電位にしてインクの帯電を防止できる。つまり、インク電位をグランドにするための専用の構成が不要であり、ヘッドユニット16のサイズアップが抑えられる。
【0050】
より詳細には、共通電極32は、圧電アクチュエータ22の上面の共通配線44と、接続部56を介して接続されている。その上で、共通配線44の、貫通孔29の近傍まで延びている第2導電部44bに、環状導体45が接続されることにより、環状導体45がグランド電位に維持されている。即ち、共通電極32をグランド接点47に接続するための構成を利用して、環状導体45がグランド電位に保持されていることから、そのための特別な構成を必要としない。
【0051】
尚、共通電極32の一部を貫通孔29内の流路に露出させて、インクを接触させる構成も可能ではある。しかし、本実施形態のように、共通電極32が非常に薄い(例えば、0.1μm)である場合には、共通電極32を貫通孔29内で露出させても、その露出面積は小さいため、インクがほとんど接触しない。この点、本実施形態の環状導体45は共通電極32よりも厚いため(例えば、1.0μm)、インクとの接触面積が大きくなる。従って、共通電極32を露出させる場合と比べて、インクをグランド電位に維持しやすくなる。
【0052】
また、
図2に示すように、本実施形態では、共通配線44の第2導電部44bは、環状導体45から第1導電部44aへ向けて左方に延びている。一方、個別配線42は、個別電極34から右方へ延びている。つまり、共通配線44の第2導電部44bと個別配線42とが異なる方向に延びているため、圧電アクチュエータ22の上面において、両者を配置しやすくなる。
【0053】
図3に示すように、貫通孔29は、対応する圧力室26の内側端部と重なるように配置されている。即ち、右側の圧力室列28aでは、貫通孔29は圧力室26の左端部と重なり、左側の圧力室列28bでは、貫通孔29は圧力室26の右端部と重なっている。そのため、第1導電部44aと反対側の、右側の圧力室列28aの環状導体45に接続された第2導電部44bは、左側の圧力室列28bの圧力室26の間だけを通過すればよく、右側の圧力室列28aを通過させずにすむ。そのため、個別電極34から右側に引き出される個別配線42を、右側の圧力室列28aの圧力室26の間に配置しやすくなる。
【0054】
以上説明した実施形態において、ヘッドユニット16が、本発明の「液体吐出装置」に相当する。流路基板21が、本発明の「流路部材」に相当する。リザーバ形成部材23が、本発明の「液体供給部材」に相当する。搬送方向が、本発明の「第1方向」に相当し、走査方向が、本発明の「第2方向」に相当する。
【0055】
次に、前記第1実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の効果を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0056】
1]
図6に示すように、環状導体45だけでなく、共通電極32も、貫通孔29内の流路へ露出していてもよい。これにより、グランド電位に維持された導電部分の、インクとの接触面積が大きくなる。
【0057】
2]前記実施形態では、圧電体33の下側に共通電極32が配置され、圧電体33の上側に個別電極34が配置されているが、例えば
図7に示すように、個別電極74が下側、共通電極72が上側に配置されてもよい。この形態では、圧電体33の上の共通電極72がさらに絶縁膜75で覆われ、絶縁膜75の上に環状導体45が配置される。また、絶縁膜75を挟んで配置された環状導体45は、絶縁膜75に形成されたコンタクトホール76内の接続部77によって、共通電極72と接続される。
【0058】
3]環状導体45と共通電極32とを接続する、コンタクトホール55及び接続部56の位置は、適宜変更できる。例えば、
図8(a)に示すように、接続部56が、圧力室26と重なる領域内に配置されてもよい。あるいは、
図8(b)に示すように、接続部56が、環状導体45と重なる位置に配置され、環状導体45が、接続部56によって共通電極32と直接接続されてもよい。
【0059】
4]前記実施形態では、環状導体45と共通電極32との間に、圧電体保護膜40と層間絶縁膜41とが配置されているが、環状導体45と共通電極32との間に配置される膜の種類は、適宜変更可能である。例えば、圧電体33を構成する圧電膜37の一部が、環状導体45と共通電極32との間にも配置されてもよい。また、前記実施形態の構成において、圧電体保護膜40、あるいは、層間絶縁膜41の何れか一方が省略されてもよい。
【0060】
5]環状導体45が、共通電極32とグランド接点47とを繋ぐ、共通配線44と接続されている必要は必ずしもない。即ち、環状導体45が、その下の層にある共通電極32とコンタクトホール55で接続されることなく、共通配線44とは別の配線によって、直接グランド接点47と接続されていてもよい。
【0061】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図9は、第2実施形態のヘッドユニットの一部拡大平面図である。
図10は、
図9の断面図である。
【0062】
図9、
図10に示される第2実施形態のヘッドユニット80は、前記第1実施形態のヘッドユニット16(
図3、
図5)に対して、環状導体85が貫通孔29内の流路に露出していない点で異なる。環状導体85以外の構成については、前記第1実施形態と同様であるため、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0063】
この第2実施形態では、環状導体85が、貫通孔29内の流路に露出していないことから、環状導体85はインクとは接触しない。従って、前記第1実施形態とは異なり、環状導体85が共通配線44と接続されても、インク帯電防止に寄与するわけではないため、その観点では、環状導体85が共通配線44と接続される必要性はないと言える。
【0064】
但し、この第2実施形態では、共通配線44と共通電極32とを接続するための、コンタクトホール55及び接続部56が、2つの圧力室列28の間の領域にある。つまり、接続部56と、圧力室26の内側の端部と重なる位置にある環状導体85との距離が近い。この場合に、接続部56に接続される共通配線44の第2導電部44bを、環状導体85を迂回するように配置しようとすると、レイアウトによっては余計なスペースを取ることにもなる。そのような場合には、環状導体85を第2導電部44bに接続した方が、省スペース化を実現できる。
【0065】
また、
図11は、変更形態のヘッドユニットの一部拡大平面図である。
図11(a)に示すように、コンタクトホール55及び接続部56が、圧力室26と重なる領域にある場合も、上記と同様、接続部56と環状導体85との距離が近い。従って、環状導体85が第2導電部44bと接続されていることが好ましい。あるいは、
図11(b)に示すように、環状導体85が第2導電部44bと接続された上で、コンタクトホール55及び接続部56が、環状導体85と重なる位置に配置され、環状導体85が接続部56によって共通電極32と直接接続されてもよい。
【0066】
以上説明した実施形態は、本発明を、記録用紙にインクを吐出して画像等を印刷するインクジェットヘッドに適用したものであるが、画像等の印刷以外の様々な用途で使用される液体吐出装置においても本発明は適用されうる。例えば、基板に導電性の液体を吐出して、基板表面に導電パターンを形成する液体吐出装置にも、本発明を適用することは可能である。