(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2容量構成部は、前記駆動錘の駆動振動における振動量が最も大きくなる振動位置に近づくほど、該振動位置から離れているときよりも前記第2変化量が大きくなるものである請求項1または2に記載の振動型角速度センサ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0012】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態で説明する振動型角速度センサ(いわゆるジャイロセンサ)は、物理量として角速度を検出するためのセンサである。振動型角速度センサは、例えば車両の上下方向に平行な中心線周りの回転角速度の検出に用いられるが、勿論、車両用以外に適用されても良い。
【0013】
以下、
図1〜
図8を参照して、本実施形態にかかる振動型角速度センサについて説明する。
【0014】
振動型角速度センサのセンサ素子100は、
図1中のxy平面が車両水平方向に向けられ、z軸方向が車両の上下方向と一致するようにして車両に搭載される。振動型角速度センサのセンサ素子100は、
図2に示すように板状の基板10を用いて形成されている。本実施形態では、基板10は、支持基板11と半導体層12とで犠牲層となる埋込酸化膜13を挟み込んだ構造とされたSOI(Silicon on insulatorの略)基板にて構成されている。この基板10の平面の一方向がx軸、この平面上におけるx軸に対する垂直方向がy軸、この平面の法線方向かつx軸およびy軸に対する垂直方向がz軸となり、この基板10の平面がxy平面と平行な平面をなしている。このような基板10を用いてセンサ素子100が構成されており、
図2に示すように、例えば半導体層12側をセンサ構造体のパターンにエッチングしたのち埋込酸化膜13を部分的に除去し、センサ構造体の一部をリリースすることで構成されている。なお、
図2中では支持基板11を簡略化して記載してあるが、実際には平面板状で構成されている。また、
図2は断面図ではないが、図を見やすくするために、埋込酸化膜13にハッチングを示してある。
【0015】
半導体層12は、固定部20と可動部30および梁部40にパターニングされている。固定部20は、
図2に示すように、少なくともその裏面の一部に埋込酸化膜13が残されており、支持基板11からリリースされることなく、埋込酸化膜13を介して支持基板11に固定された状態とされている。可動部30および梁部40は、センサ素子100における振動子を構成するものである。可動部30は、その裏面側において埋込酸化膜13が除去されており、支持基板11からリリースされている。梁部40は、可動部30を支持すると共に角速度検出を行うために可動部30をx軸方向およびy軸方向において変位させるものである。これら固定部20と可動部30および梁部40の具体的な構造を説明する。
【0016】
固定部20は、可動部30を支持すると共に、図示しないが駆動用電圧の印加用のパッドや角速度検出に用いられる検出信号の取り出し用のパッドが形成される部分である。本実施形態では、これら各機能を1つの固定部20によって実現しているが、例えば可動部30を支持するための支持用固定部、駆動用電圧が印加される駆動用固定部、角速度検出に用いられる検出用固定部に分割した構成とされても良い。その場合、例えば
図1に示した固定部20を支持固定部とし、支持固定部に連結されるように駆動用固定部と検出用固定部を備え、駆動用固定部に駆動用電圧の印加用のパッドを備えると共に検出用固定部に検出信号取り出し用のパッドを備えればよい。
【0017】
固定部20は、例えば上面形状が四角形で構成されている。固定部20の下方には埋込酸化膜13が残されており、埋込酸化膜13を介して固定部20が支持基板11に固定されている。固定部20のx軸方向およびy軸方向の幅については任意であるが、後述する検出梁41の幅よりも広くしてある。
【0018】
可動部30は、角速度印加に応じて変位する部分であり、駆動用電圧の印加によって駆動振動させられる駆動用錘と駆動振動時に角速度が印加されたときにその角速度に応じて振動させられる検出用錘とを有した構成とされる。本実施形態の場合、可動部30として、駆動用錘と検出用錘の役割を同じ錘によって担う駆動兼検出用錘31、32が備えられている。駆動兼検出用錘31、32は、x軸方向において、固定部20を挟んだ両側に配置されており、固定部20から等間隔の場所に配置されている。各駆動兼検出用錘31、32は、同寸法、同質量で構成され、本実施形態の場合、上面形状が四角形で構成されている。そして、各駆動兼検出用錘31、32は、それぞれ相対する二辺において梁部40に備えられる後述する駆動梁42に連結させられることで、両持ち支持されている。各駆動兼検出用錘31、32の下方においては、埋込酸化膜13が除去されており、支持基板11から各駆動兼検出用錘31、32がリリースされている。このため、各駆動兼検出用錘31、32は、駆動梁42の変形によってx軸方向に駆動振動可能とされ、角速度印加の際には駆動梁42などの変形によってy軸方向を含む固定部20を中心とした回転方向へも振動可能とされている。
【0019】
梁部40は、検出梁41と、駆動梁42および支持部材43を有した構成とされている。
【0020】
検出梁41は、固定部20と支持部材43とを連結するy軸方向に延設された直線状の梁とされている。検出梁41のx軸方向の寸法は、z軸方向の寸法よりも薄くされており、x軸方向に変形可能とされている。
【0021】
駆動梁42は、駆動兼検出用錘31、32と支持部材43とを連結するy軸方向、つまり検出梁41と平行な方向に延設された直線状の梁とされている。各駆動兼検出用錘31、32に接続られた駆動梁42から検出梁41までは等距離とされている。駆動梁42のx軸方向の寸法も、z軸方向の寸法よりも薄くされており、x軸方向に変形可能とされている。これにより、駆動兼検出用錘31、32をxy平面状において変位可能としている。
【0022】
支持部材43は、x軸方向に延設された直線状の部材とされ、支持部材43の中心位置において検出梁41が連結されており、両端位置において各駆動梁42が連結されている。支持部材43は、y軸方向の寸法が検出梁41や駆動梁42におけるx軸方向の寸法よりも大きくされている。このため、駆動振動時には駆動梁42が主に変形し、角速度印加時には検出梁41および駆動梁42が主に変形するようになっている。
【0023】
このような構造により、駆動梁42と支持部材43および駆動兼検出用錘31、32によって上面形状が四角形の枠体が構成され、その内側に検出梁41および固定部20が配置されたセンサ素子100が構成されている。
【0024】
さらに、駆動梁42には、
図1および
図3に示すように駆動部51が形成されており、検出梁41には、
図4に示すように、振動検出部53が形成されている。これら駆動部51および振動検出部53が、
図5に示すように、外部に備えられた制御装置70に電気的に接続されている。そして、制御装置70からの駆動信号が伝えられることでセンサ素子100の駆動が行われると共に、センサ素子100からの角速度の検出信号が制御装置70に伝えられることで角速度検出が行われるようになっている。
【0025】
駆動部51は、
図1に示すように、各駆動梁42のうち支持部材43との連結部近傍に備えられており、各場所に2本ずつ所定距離を空けて配置され、y軸方向に延設されている。
図3に示すように、駆動部51は、駆動梁42を構成する半導体層12の表面に下層電極51aと駆動用薄膜51bおよび上層電極51cが順に積層された構造とされている。下層電極51aおよび上層電極51cは、例えばAl電極などによって構成されている。これら下層電極51aおよび上層電極51cは、
図1に示した支持部材43および検出梁41を経て固定部20まで引き出された配線部51d、51eを通じて、図示しない駆動用電圧の印加用のパッドやGND接続用のパッドに接続されている。また、駆動用薄膜51bは、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(いわゆるPZT)膜によって構成されている。
【0026】
このような構成において、下層電極51aと上層電極51cとの間に電位差を発生させることで、これらの間に挟まれた駆動用薄膜51bを変位させ、駆動梁42を強制振動させることで駆動兼検出用錘31、32をx軸方向に沿って駆動振動させる。例えば、各駆動梁42のx軸方向の両端側に1本ずつ駆動部51を備えるようにし、一方の駆動部51の駆動用薄膜51bを圧縮応力で変位させると共に他方の駆動部51の駆動用薄膜51bを引張応力で変位させる。このような電圧印加を各駆動部51に対して交互に繰り返し行うことで、駆動兼検出用錘31、32をx軸方向に沿って駆動振動させている。
【0027】
振動検出部53は、
図1および
図4に示すように、検出梁41のうちの固定部20との連結部近傍に備えられており、検出梁41におけるx軸方向の両側それぞれに設けられ、y軸方向に延設されている。
図4に示すように、振動検出部53は、検出梁41を構成する半導体層12の表面に下層電極53aと検出用薄膜53bおよび上層電極53cが順に積層された構造とされている。下層電極53aおよび上層電極53cや検出用薄膜53bは、それぞれ、振動検出部53を構成する下層電極51aおよび上層電極51cや駆動用薄膜51bと同様の構成とされている。下層電極53aおよび上層電極53cは、
図1に示した固定部20まで引き出された配線部53d、53eを通じて、図示しない検出信号出力用のパッドに接続されている。
【0028】
このような構成では、角速度の印加に伴って検出梁41が変位すると、それに伴って検出用薄膜53bが変形する。これにより、例えば下層電極53aと上層電極53cとの間の電気信号(すなわち、定電圧駆動の場合の電流値、定電流駆動の場合の電流値)が変化する。このため、その電気信号を角速度を示す検出信号として図示しない検出信号出力用のパッドを通じて外部の制御装置70に出力している。
【0029】
また、駆動兼検出用錘31、32およびその周囲には、
図6に示したように駆動振動検出部60が備えられている。この駆動振動検出部60の詳細構造について説明する。なお、
図6では、駆動兼検出用錘32およびその周囲に備えられる駆動振動検出部60を示しているが、駆動兼検出用錘31およびその周囲にも同様の構造のものが備えられている。
【0030】
図6に示すように、駆動兼検出用錘32は、四角形で構成されており、x軸と平行な相対する二辺において駆動梁42に連結されている。そして、駆動兼検出用錘32のうち駆動梁42と連結されている2辺と異なる相対するy軸と平行な2辺において、x軸方向に沿って複数の可動櫛歯電極61が形成されている。可動櫛歯電極61は、駆動兼検出用錘32におけるy軸方向の両側に離れて複数個ずつ備えられており、ここではそれぞれ同数ずつとされている。また、可動櫛歯電極61が離されることで空いている部分において、駆動兼検出用錘32の側面、つまり駆動振動の方向を法線方向とする一面に可動平面電極62が形成されている。
【0031】
一方、駆動兼検出用錘32のy軸と平行な辺のうち可動櫛歯電極61が形成された部分と対向する位置には、櫛歯固定部63が形成されている。この櫛歯固定部63には複数の可動櫛歯電極61と対向するx軸方向に伸びた固定櫛歯電極64が形成されている。駆動兼検出用錘32のy軸と平行な辺のうち可動平面電極62が形成された部分と対向する位置には、電極固定部65が形成されている。この電極固定部65のうち駆動兼検出用錘32と対向する一面には固定平面電極66が形成されている。
【0032】
これらのうち、可動櫛歯電極61と固定櫛歯電極64とが、駆動兼検出用錘32におけるx軸方向の振動を粗い第1精度で検出するための第1容量構成部として機能する。また、可動平面電極62と固定平面電極66とが、駆動兼検出用錘32におけるx軸方向の振動を第1精度よりも高い第2精度で検出する第2容量構成部として機能する。
【0033】
なお、図中には記載していないが、櫛歯固定部63や電極固定部65は、例えば支持基板11を通じて制御装置70に引き出される配線部と電気的に接続されている。可動櫛歯電極61や可動平面電極62は駆動兼検出用錘32に電気的に接続されており、駆動兼検出用錘32は、駆動梁42や支持部材43および検出梁41を通じて固定部20に引き出された配線を通じて制御装置70に電気的に接続されている。
【0034】
そして、可動櫛歯電極61と固定櫛歯電極64との間に構成される容量を第1容量として、駆動兼検出用錘32がx軸方向に振動したときに、櫛歯固定部63を通じて第1容量の変化が制御装置70に出力される。同様に、可動平面電極62と固定平面電極66との間に構成される容量を第2容量として、駆動兼検出用錘32がx軸方向に振動したときに、電極固定部65を通じて第2容量の変化が制御装置70に出力される。すなわち、駆動兼検出用錘32のx軸方向の振動に伴って、可動櫛歯電極61と固定櫛歯電極64との間の対向面積が変化することから、第1容量が変化する。同様に、可動平面電極62と固定平面電極66との間の距離が変化することから、第2容量が変化する。これら第1容量および第2容量の変化が、
図5に示したようにC−V変換回路80を通じて電気的な検出信号として取り出され、これが制御装置70に出力される。
【0035】
このとき、第1容量については、駆動兼検出用錘32の駆動振動に伴って、緩やかに変化することになる。これに対して、第2容量については、駆動兼検出用錘32の駆動振動に伴って変化するものの、可動平面電極62と固定平面電極66との間の距離が離れているときには緩やかな変化で、近づくと急峻に変化する。これら変化の異なる第1容量および第2容量の検出信号がそれぞれC−V変換回路80を介して制御装置70に伝えられるようになっている。
【0036】
以上のようにして、本実施形態にかかる振動型角速度センサが構成されている。次に、このように構成される振動型角速度センサの作動について説明する。
【0037】
まず、
図3に示すように、駆動梁42に備えられた駆動部51に対して駆動用電圧の印加を行う。具体的には、下層電極51aと上層電極51cとの間に電位差を発生させることで、これらの間に挟まれた駆動用薄膜51bを変位させる。そして、2本並んで設けられた2つの駆動部51のうち、一方の駆動部51の駆動用薄膜51bを圧縮応力で変位させると共に他方の駆動部51の駆動用薄膜51bを引張応力で変位させる。このような電圧印加を各駆動部51に対して交互に繰り返し行うことで、駆動兼検出用錘31、32をx軸方向に沿って駆動振動させる。これにより、
図7に示すように、駆動梁42によって両持ち支持された駆動兼検出用錘31、32が固定部20を挟んでx軸方向において互いに逆方向に移動させられる駆動モードとなる。つまり、駆動兼検出用錘31、32が共に固定部20が近づく状態と遠ざかる状態とが繰り返されるモードとなる。
【0038】
この駆動振動が行われているときに、振動型角速度センサに対して角速度、つまり固定部20を中心軸としたx軸周りの振動が印加されると、
図8に示すように駆動兼検出用錘31、32がy軸方向を含む固定部20を中心とした回転方向へも振動する検出モードとなる。これにより、検出梁41も変位し、この検出梁41の変位に伴って、振動検出部53に備えられた検出用薄膜53bが変形する。これにより、例えば下層電極53aと上層電極53cとの間の電気信号が変化し、この電気信号が外部に備えられる制御装置70に入力されることで、発生した角速度を検出することが可能となる。
【0039】
また、上記のようにして駆動振動が行われるときに、駆動振動が所望の振動量で行われるように、制御装置70にて駆動兼検出用錘32の駆動振動の振幅をモニタし、駆動部51に対して印加する駆動用電圧を自動的にフィードバック制御するAGCを行っている。このときの駆動振動の振幅のモニタを第1容量の変化と第2容量の変化に基づいて精度良く行えるようにしている。これについて、第1容量と第2容量の変化の様子を参照して説明する。
【0040】
図9は、駆動兼検出用錘32の駆動振動に伴う第1容量および第2容量の変化の一例を示している。
図9に示されるように、第1容量は、サイン波状の変化を示し、駆動兼検出用錘32の駆動振動に伴って緩やかな変化となる。これに対して、第2容量については、可動平面電極62と固定平面電極66との間の距離が離れているときには殆ど変化せず、近づくと急峻に変化している。
【0041】
このような現象を利用して、駆動兼検出用錘32の駆動振動の粗動検出、つまりx軸方向における振動位置の大まかな検出を行うと共に、駆動振動の微動検出、つまりx軸方向における振動位置の細かな検出を行う。すなわち、C−V変換回路80において、第1容量および第2容量をそれぞれ電圧変換し、これらを第1容量および第2容量を示す検出信号として制御装置70に入力する。そして、制御装置70にて、第1容量を示す検出信号に基づいて駆動兼検出用錘32の駆動振動の粗動検出を行い、第2容量を示す検出信号に基づいて駆動兼検出用錘32の駆動振動の微動検出を行う。
【0042】
例えば、第1容量や第2容量の変化に対応した電圧を所定の分解能で検出する。その場合、第1容量については駆動振動の振動全域において変化するが、所定の振動量に対する第1容量の変化量およびそれに対応する電圧変化量は小さい。一方、第2容量については駆動振動の振動量が最も大きくなるときに近づいた場合にだけ大きく変化し、そのときの所定の振動量に対する第2容量の変化量およびそれに対応する電圧変化量は大きい。
【0043】
このため、制御装置70の電圧検出の分解能が高くなくても、第1容量の変化に対応する電圧変化量に基づいて駆動振動の全域において粗動検出が行え、第2容量の変化に対応する電圧変化量に基づいて、振動量が最も大きくなるときに近づくと微動検出が行える。
【0044】
ここで、制御装置70の検出精度を向上させるのには、制御装置70による電圧検出の分解能を上げること、すなわち電圧変化量をより細かく検出できるようにすることが考えられる。しかしながら、分解能は電圧変化量を検出する回路のビット数によって決まり、分解能を上げるためには回路ビット数を増やさなければならない。
【0045】
一方、制御装置70による駆動振動の検出精度が要求されるのは、駆動振動の振幅精度を向上させるためである。そして、駆動振動の振幅精度を向上させるために必要なのは、駆動振動の全域において駆動振動の検出精度を向上させることではなく、駆動振動の振動量が最も大きくなる近辺において駆動振動の検出精度を向上させることである。
【0046】
このため、本実施形態では、可動櫛歯電極61と固定櫛歯電極64とによって、駆動振動に基づいて緩やかに変化する第1容量を構成する。この第1容量に基づいて振動位置の粗動検出を行うことで、駆動振動の全域において振動位置を確認する。また、可動平面電極62と固定平面電極66とによって、駆動振動の振動量が最も大きくなる振動位置に近づくと大きく変化する第2容量を構成する。この第2容量に基づいて微動検出を行うことで、回路ビット数を増やさなくても振動振幅の検出精度を高めることが可能となる。
【0047】
例えば、駆動振動の振幅が30μmと大きい場合であっても、駆動振動の全域で0.03μmの精度で検出する必要は無く、駆動振動の振幅量が最も大きくなる振動位置で0.03μmの精度で検出することが可能となる。
【0048】
このように、駆動振動の振幅量が最も大きくなる振動位置に近づいたときに、第2容量の変化に基づいて検出精度の高い第2精度で検出できるため、残りの領域では第1容量の変化に基づく検出精度の低い第1精度に落とすことができる。したがって、回路ビット数を増やさなくても、検出精度を高めたい振動位置において、所望の検出精度で駆動振動の振動量を検出することができる。
【0049】
なお、第2容量の変化に基づく微動検出を行う範囲と、第2容量構成部が構成する第2容量の容量値および容量変化の定め方次第で、検出精度を自由に変更することが可能である。
【0050】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して第2容量構成部の構成を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。なお、
本実施形態では、第1実施形態で説明した可動平面電極62や電極固定部65および固定平面電極66を無くしている。その代わりに、
図10に示すように、第2容量構成部を構成する可動櫛歯部67と固定櫛歯部68を備えている。なお、
図10では、駆動兼検出用錘32およびその周囲に備えられる駆動振動検出部60を示しているが、駆動兼検出用錘31およびその周囲にも同様の構造のものが備えられている。
【0051】
可動櫛歯部67は、可動櫛歯電極61の間に配置されており、x軸方向に延びるように構成されている。ただし、可動櫛歯部67におけるx軸方向寸法は可動櫛歯電極61よりも小さくされている。具体的には、駆動兼検出用錘32の駆動振動が小さいときには可動櫛歯部67が固定櫛歯部68と対向せず、駆動振動の最も振動量が大きくなるときに近づくと可動櫛歯部67が固定櫛歯部68と対向する程度に、可動櫛歯部67のx軸方向寸法が設定されている。
【0052】
固定櫛歯部68は、固定櫛歯電極64の先端に備えられており、固定櫛歯電極64の先端から更にx軸方向に延びるように形成されている。ただし、固定櫛歯部68におけるx軸方向寸法は固定櫛歯電極64よりも小さくされている。具体的には、駆動兼検出用錘32の駆動振動が小さいときには固定櫛歯部68が可動櫛歯部67と対向せず、駆動振動の最も振動量が大きくなるときに近づくと固定櫛歯部68が可動櫛歯部67と対向する程度に、固定櫛歯部68のx軸方向寸法が設定されている。
【0053】
このような構成において、本実施形態では、可動櫛歯電極61と固定櫛歯電極64との間に構成される容量を第1容量とし、可動櫛歯部67と固定櫛歯部68との間に構成される容量を第2容量として、これらの容量の変化を制御装置70に出力する。ただし、本実施形態の場合、可動櫛歯部67が駆動兼検出用錘32に備えられ、固定櫛歯部68が固定櫛歯部68に備えられている。このため、駆動兼検出用錘32と櫛歯固定部63との間の容量をC−V変換回路80によって電圧変換して取り出すと、第1容量の変化に第2容量の変化が重畳された合成容量の変化を示す電圧値を取り出すことになる。
【0054】
図11は、駆動兼検出用錘32の駆動振動に伴う第1容量に第2容量が重畳された合成容量の変化の一例を示している。
図11に示されるように、第1容量の変化に基づいてサイン波状の変化を示すが、駆動振動の振動量が最も大きくなる近辺において、可動櫛歯部67と固定櫛歯部68とが対向し、第2容量の変化に基づく急峻な変化が重畳される。
【0055】
したがって、このような合成容量の変化に対応する電圧値変化をモニタすることで、駆動兼検出用錘32の駆動振動の振動位置を検出できる。そして、第2容量の変化に基づく急峻な変化については第1実施形態と同様であることから、これに基づいて微動検出を行うことで、回路ビット数を増やさなくても振動振幅の検出精度を高めることが可能となる。
【0056】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0057】
例えば、駆動兼検出用錘31、32を用いることで、駆動錘と検出錘の両方を兼用したものとしたが、別々に備えた構造であっても良い。
【0058】
また、駆動振動検出部60における第1容量構成部や第2容量構成部として、上記と異なる構成のものとしても良い。具体的には、
図6に示したように、駆動兼検出用錘31、32のうちy軸方向に平行な各側面やそれに対向する位置に設けた櫛歯固定部63に可動櫛歯電極61と固定櫛歯電極64を2箇所に分けて配置し、その間に可動平面電極62や固定平面電極66を配置した。これは第1容量構成部や第2容量構成部の一例を示したに過ぎない。例えば、可動櫛歯電極61と固定櫛歯電極64を2箇所に分けて配置しなくても良い。また、可動櫛歯電極61や固定櫛歯電極64と可動平面電極62や固定平面電極66を配置する場所を異ならせ、例えば一方を駆動兼検出用錘31、32のうちx軸と平行な一面に形成しても良い。
【0059】
なお、上記各実施形態では、駆動振動検出部60の各振動検出部をそれぞれx軸、y軸に平行な直線を中心とした線対称形状で形成したが、必ずしも線対称形状にする必要はない。ただし、線対称形状にすると、対称配置された各素子それぞれから検出信号を得て、それらの差動を取ることで、不要振動成分のキャンセルが可能になるなど、より精度良い角速度検出を行うことが可能になる。
【0060】
また、上記実施形態では、検出梁41や駆動梁42のうち支持部材43の近傍にのみ、駆動部51や振動検出部53を備えた構造とした。これについても単なる一例を示したに過ぎず、例えば検出梁41や駆動梁42の全域にこれらを設けるようにしても良い。
【0061】
さらに、上記実施形態では、駆動部51として、圧電膜を用いて駆動振動を行わせる圧電タイプのものを用いたが、静電気力を用いて駆動振動を行わせる静電タイプのものを用いても良い。