特許第6604164号(P6604164)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6604164-燃焼機器 図000002
  • 特許6604164-燃焼機器 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6604164
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】燃焼機器
(51)【国際特許分類】
   F23N 5/24 20060101AFI20191031BHJP
   F23K 5/00 20060101ALI20191031BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   F23N5/24 101Z
   F23K5/00 304
   F23K5/00 301D
   F16K31/06 310F
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-231468(P2015-231468)
(22)【出願日】2015年11月27日
(65)【公開番号】特開2017-96595(P2017-96595A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年10月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【弁理士】
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】100107593
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100107445
【弁理士】
【氏名又は名称】小根田 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】110002088
【氏名又は名称】特許業務法人プロイスIPパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】柴▲崎▼ 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】安福 洋伸
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 佳則
(72)【発明者】
【氏名】藤井 孝平
【審査官】 吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−190621(JP,A)
【文献】 特開平08−270822(JP,A)
【文献】 特開2011−017520(JP,A)
【文献】 特開平09−243066(JP,A)
【文献】 実開昭62−125857(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23N 5/24
F16K 31/06
F23K 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料供給路を開閉する電磁弁と、該電磁弁の開動作制御中に電磁弁オン信号を出力する制御部と、前記電磁弁オン信号が出力されているとき前記電磁弁を電源に導通させるとともに前記電磁弁オン信号が出力されていないとき前記電磁弁を電源から遮断するよう動作するスイッチング回路とを備える燃焼機器において、
前記電磁弁が電源に導通している状態から電源から遮断された状態に遷移したときに前記電磁弁に印加される駆動電圧を少なくとも一時的に保持する駆動電圧保持回路をさらに備え、
前記制御部は、前記電磁弁の開動作制御中に前記電磁弁オン信号をパルス状に出力させたときの前記スイッチング回路の出力状態に基づいて前記スイッチング回路の故障診断を行う故障診断機能を有するとともに、前記故障診断を行わない場合には前記電磁弁の開動作制御中は定常的に前記電磁弁オン信号を出力することを特徴とする燃焼機器。
【請求項2】
燃料供給路を開閉する電磁弁と、該電磁弁の閉動作制御中に電磁弁オフ信号を出力する制御部と、前記電磁弁オフ信号が出力されていないとき前記電磁弁を電源に導通させるとともに前記電磁弁オフ信号が出力されているとき前記電磁弁を電源から遮断するよう動作するスイッチング回路とを備える燃焼機器において、
前記電磁弁が電源に導通している状態から電源から遮断された状態に遷移したときに前記電磁弁に印加される駆動電圧を少なくとも一時的に保持する駆動電圧保持回路をさらに備え、
前記制御部は、前記電磁弁の開動作制御中に前記電磁弁オフ信号をパルス状に出力させたときの前記スイッチング回路の出力状態に基づいて前記スイッチング回路の故障診断を行う故障診断機能を有するとともに、前記故障診断を行わない場合には前記電磁弁の開動作制御中は定常的に前記電磁弁オフ信号を出力しないことを特徴とする燃焼機器。
【請求項3】
燃料供給路を開閉する電磁弁と、該電磁弁と電源との間に直列に設けられた第1及び第2のスイッチング回路と、前記電磁弁の閉動作制御中に前記第1のスイッチング回路に対して電磁弁オフ信号を出力するとともに前記電磁弁の開動作制御中に前記第2のスイッチング回路に対して電磁弁オン信号を出力する制御部を備え、前記第1のスイッチング回路は、前記電磁弁オフ信号が出力されていないとき前記電磁弁を電源に導通させるとともに前記電磁弁オフ信号が出力されているとき前記電磁弁を電源から遮断するよう動作し、前記第2のスイッチング回路は、前記電磁弁オン信号が出力されているとき前記電磁弁を電源に導通させるとともに前記電磁弁オン信号が出力されていないとき前記電磁弁を電源から遮断するよう動作する燃焼機器において、
前記電磁弁が電源に導通している状態から電源から遮断された状態に遷移したときに前記電磁弁に印加される駆動電圧を少なくとも一時的に保持する駆動電圧保持回路をさらに備え、
前記制御部は、前記電磁弁の開動作制御中に前記電磁弁オン信号を定常的に出力し且つ前記電磁弁オフ信号をパルス状に出力させたときの前記第1及び第2のスイッチング回路の出力状態に基づいて前記第1のスイッチング回路の故障診断を行う第1の故障診断機能と、前記電磁弁の開動作制御中に前記電磁弁オン信号をパルス状に出力させ且つ前記電磁弁オフ信号を定常的に出力しないときの前記第1及び第2のスイッチング回路の出力状態に基づいて前記第2のスイッチング回路の故障診断を行う第2の故障診断機能とを有するとともに、前記第1及び第2の故障診断機能によるいずれの故障診断をも行わない場合には前記電磁弁の開動作制御中は定常的に前記電磁弁オフ信号を出力せず且つ定常的に前記電磁弁オン信号を出力することを特徴とする燃焼機器。
【請求項4】
請求項1,2又は3に記載の燃焼機器において、前記制御部は、前記電磁弁に印加される駆動電圧を監視するとともに、当該電圧が所定の閾値未満となったときは前記故障診断を行わないよう構成されていることを特徴とする燃焼機器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の燃焼機器において、前記制御部は、前記故障診断を行った後、所定時間経過するまでは次回の故障診断を行わないように構成されていることを特徴とする燃焼機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁安全弁や元ガス電磁弁などの電磁弁を備えるガスコンロやガス瞬間湯沸器などの燃焼機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガスコンロやガス瞬間湯沸器などの燃焼機器においては、燃料ガスをガスバーナなどの燃焼部に供給するための燃料供給路の途中に設けた電磁安全弁や元ガス電磁弁などの電磁弁の駆動回路の故障診断機能が具備されている。
【0003】
例えば下記の特許文献1には、半導体スイッチ、ダイオード、及び電磁弁を順に直列接続して作動用電源に接続するとともに、電磁弁と並列にコンデンサを接続し、燃焼制御中は半導体スイッチをパルス信号によって間欠的にオン/オフさせることによってコンデンサを電磁弁の必要駆動電圧以上に充電して電磁弁を駆動させる一方、半導体スイッチとダイオードとの接続点のレベル変化とパルス信号の波形との対応関係によって、燃焼中に前記半導体スイッチの故障を判別する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−270822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術の構成によれば、電磁弁の駆動中は常時パルス信号による半導体スイッチのオン/オフ切替が行われるようになっており、オン/オフ切替のための電力消費が比較的大きくなり、特に電池式ガスコンロなどにおいては電池寿命に影響を及ぼす。さらに、電磁弁の駆動電圧も常に脈動波形となって電磁弁動作の安定性にとって好ましくなく、その一方、駆動電圧の振幅が小さくなるよう設計すると故障判定が難しくなるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、燃焼中に電磁弁駆動用のスイッチング回路の故障診断を行う燃焼機器において、故障診断を行わない場合には低消費電力で安定的に電磁弁を開動作させることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、次の技術的手段を講じた。
【0008】
すなわち、本発明は、燃料供給路を開閉する電磁弁と、該電磁弁の開動作制御中に電磁弁オン信号を出力する制御部と、前記電磁弁オン信号が出力されているとき前記電磁弁を電源に導通させるとともに前記電磁弁オン信号が出力されていないとき前記電磁弁を電源から遮断するよう動作するスイッチング回路(第2のスイッチング回路)とを備える燃焼機器において、前記電磁弁が電源に導通している状態から電源から遮断された状態に遷移したときに前記電磁弁に印加される駆動電圧を少なくとも一時的に保持する駆動電圧保持回路をさらに備え、前記制御部は、前記電磁弁の開動作制御中に前記電磁弁オン信号をパルス状に出力させたときの前記スイッチング回路の出力状態に基づいて前記スイッチング回路の故障診断を行う故障診断機能を有するとともに、前記故障診断を行わない場合には前記電磁弁の開動作制御中は定常的に前記電磁弁オン信号を出力することを特徴とするものである(請求項1)。
【0009】
かかる本発明の燃焼機器によれば、微分回路に入力されるウォッチドッグパルスを電磁弁駆動用のスイッチング回路の故障診断に用いるのではなく、電磁弁オン信号を故障診断時にパルス状に出力させて、スイッチング回路の出力がパルス信号となるか否かによって故障診断を行うことができ、かかる故障診断の基準が明確となるため容易かつ正確に故障判定を行うことができる。一方、電磁弁に印加される駆動電圧は、駆動電圧保持回路によって保持されるため、スイッチング回路の出力が一時的にパルス信号となっても電磁弁を開動作状態で安定的に保持させることができる。また、故障診断を行わない場合には電磁弁オン信号を定常的に出力することによってスイッチング回数がむやみに増加してしまうことを回避でき、消費電力の低減や電池寿命の長期化を図ることができる。
【0010】
また、本発明は、燃料供給路を開閉する電磁弁と、該電磁弁の閉動作制御中に電磁弁オフ信号を出力する制御部と、前記電磁弁オフ信号が出力されていないとき前記電磁弁を電源に導通させるとともに前記電磁弁オフ信号が出力されているとき前記電磁弁を電源から遮断するよう動作するスイッチング回路(第1のスイッチング回路)とを備える燃焼機器において、前記電磁弁が電源に導通している状態から電源から遮断された状態に遷移したときに前記電磁弁に印加される駆動電圧を少なくとも一時的に保持する駆動電圧保持回路をさらに備え、前記制御部は、前記電磁弁の開動作制御中に前記電磁弁オフ信号をパルス状に出力させたときの前記スイッチング回路の出力状態に基づいて前記スイッチング回路の故障診断を行う故障診断機能を有するとともに、前記故障診断を行わない場合には前記電磁弁の開動作制御中は定常的に前記電磁弁オフ信号を出力しないことを特徴とするものである(請求項2)。
【0011】
かかる本発明の燃焼機器によれば、微分回路に入力されるウォッチドッグパルスを電磁弁駆動用のスイッチング回路の故障診断に用いるのではなく、電磁弁オフ信号を故障診断時にパルス状に出力させて、スイッチング回路の出力がパルス信号となるか否かによって故障診断を行うことができ、かかる故障診断の基準が明確となるため容易かつ正確に故障判定を行うことができる。一方、電磁弁に印加される駆動電圧は、駆動電圧保持回路によって保持されるため、スイッチング回路の出力が一時的にパルス信号となっても電磁弁を開動作状態で安定的に保持させることができる。また、故障診断を行わない場合には電磁弁オン信号を定常的に出力することによってスイッチング回数がむやみに増加してしまうことを回避でき、消費電力の低減や電池寿命の長期化を図ることができる。
【0012】
また、本発明は、燃料供給路を開閉する電磁弁と、該電磁弁と電源との間に直列に設けられた第1及び第2のスイッチング回路と、前記電磁弁の閉動作制御中に前記第1のスイッチング回路に対して電磁弁オフ信号を出力するとともに前記電磁弁の開動作制御中に前記第2のスイッチング回路に対して電磁弁オン信号を出力する制御部を備え、前記第1のスイッチング回路は、前記電磁弁オフ信号が出力されていないとき前記電磁弁を電源に導通させるとともに前記電磁弁オフ信号が出力されているとき前記電磁弁を電源から遮断するよう動作し、前記第2のスイッチング回路は、前記電磁弁オン信号が出力されているとき前記電磁弁を電源に導通させるとともに前記電磁弁オン信号が出力されていないとき前記電磁弁を電源から遮断するよう動作する燃焼機器において、前記電磁弁が電源に導通している状態から電源から遮断された状態に遷移したときに前記電磁弁に印加される駆動電圧を少なくとも一時的に保持する駆動電圧保持回路をさらに備え、前記制御部は、前記電磁弁の開動作制御中に前記電磁弁オン信号を定常的に出力し且つ前記電磁弁オフ信号をパルス状に出力させたときの前記第1及び第2のスイッチング回路の出力状態に基づいて前記第1のスイッチング回路の故障診断を行う第1の故障診断機能と、前記電磁弁の開動作制御中に前記電磁弁オン信号をパルス状に出力させ且つ前記電磁弁オフ信号を定常的に出力しないときの前記第1及び第2のスイッチング回路の出力状態に基づいて前記第2のスイッチング回路の故障診断を行う第2の故障診断機能とを有するとともに、前記第1及び第2の故障診断機能によるいずれの故障診断をも行わない場合には前記電磁弁の開動作制御中は定常的に前記電磁弁オフ信号を出力せず且つ定常的に前記電磁弁オン信号を出力することを特徴とするものである(請求項3)。
【0013】
かかる本発明の燃焼機器によれば、微分回路に入力されるウォッチドッグパルスを電磁弁駆動用のスイッチング回路の故障診断に用いるのではなく、電磁弁オン信号及び電磁弁オフ信号のいずれかを故障診断時にパルス状に出力させて、第1及び第2のスイッチング回路の出力がパルス信号となるか否かによって、第1又は第2のスイッチング回路の故障診断を行うことができ、かかる故障診断の基準が明確となるため容易かつ正確に故障判定を行うことができる。一方、電磁弁に印加される駆動電圧は、駆動電圧保持回路によって保持されるため、スイッチング回路の出力が一時的にパルス信号となっても電磁弁を開動作状態で安定的に保持させることができる。また、故障診断を行わない場合には電磁弁オン信号を定常的に出力することによってスイッチング回数がむやみに増加してしまうことを回避でき、消費電力の低減や電池寿命の長期化を図ることができる。
【0014】
上記本発明の燃焼機器において、前記制御部は、前記電磁弁に印加される駆動電圧を監視するとともに、当該電圧が所定の閾値未満となったときは前記故障診断を行わないよう構成されているものとすることができる(請求項4)。これによれば、電源として電池を用いている場合の電池電圧の低下時など、何らかの原因によって電磁弁駆動電圧が十分に上昇しない場合に、上記故障診断を行うことによって電磁弁が意図せず閉動作してしまうことを回避できる。
【0015】
また、前記制御部は、前記故障診断を行った後、所定時間経過するまでは次回の故障診断を行わないように構成されているものとすることができる(請求項5)。これによれば、故障診断中のスイッチング回路のパルス駆動によって駆動電圧保持回路が保持する駆動電圧が低下しても、所定時間の経過によって駆動電圧保持回路が保持する電圧を復帰させることができる。第1及び第2の故障診断機能を有する場合には、いずれかの故障診断機能による故障診断が行われた後は、所定時間経過するまではいずれの故障診断機能による故障診断をも行わないようにする。
【0016】
なお、上記本発明の燃焼機器において、上記故障診断は適時に行われるものであってよく、電磁弁開動作制御中は所定時間毎に周期的に行ってもよいし、所定条件を満たしたときに行われるものであってもよい。また、第1及び第2の故障診断機能による故障診断は、交互に行われることが好ましいが、第1及び第2の故障診断機能のいずれかによる故障診断回数を比較的多くするなど、適宜のものとすることができる。
【0017】
また、故障診断時に電磁弁オン信号若しくは電磁弁オフ信号をパルス状に出力した際、スイッチング回路の出力波形がパルス波形となるよう回路構成しておくことが好ましく、これによれば、スイッチング回路の出力状態に基づく故障診断を容易かつ正確に行えるようになる。また、駆動電圧保持回路として積分回路を用いることによって、スイッチング回路の出力波形がパルス波形であっても電磁弁に印加される電圧を安定させることができる。
【0018】
また、電磁弁オフ信号によってオフ動作する第1のスイッチング回路は、制御部が出力するウォッチドッグパルスによってオン動作するが、電磁弁オフ信号の出力によってウォッチドッグパルスが出力されていても強制的にオフ動作するよう構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る燃焼機器における電磁弁の駆動回路の概略回路図である。
図2】同燃焼機器の電磁弁開動作制御中のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る燃焼機器における電磁弁Lの駆動回路の概略構成を示しており、該燃焼機器は、ガスバーナなどの燃焼部への燃料供給路を開閉する電磁弁Lと、該電磁弁Lの開閉動作を制御する制御部としてのマイクロコンピュータ1と、該マイクロコンピュータ1からの制御指令に応じて電磁弁Lに駆動電圧を出力する駆動回路2とを備えている。
【0022】
マイクロコンピュータ1は、パルス波形のウォッチドッグ信号を出力制御可能なウォッチドッグ信号出力端子と、強制オフ指令(電磁弁オフ信号)を出力制御可能な強制オフ出力端子と、電磁弁オン指令(電磁弁オン信号)を出力制御可能な電磁弁オン出力端子と、電磁弁Lに対して駆動電圧が出力されているか否かを確認するための電磁弁チェック入力端子と、電磁弁Lに印加されている電圧を確認するための電磁弁駆動電圧監視入力端子とを備えている。
【0023】
駆動回路2は、電磁弁Lを電源V(例えば電池)に導通させるべくオン動作可能であるとともにオフ動作時に電磁弁Lを電源から遮断する第1及び第2のスイッチング回路S1,S2を備えており、これら第1及び第2のスイッチング回路S1,S2は電源Vと電磁弁Lとの間で直列に接続され、両スイッチング回路S1,S2がオン動作した場合にのみ電磁弁Lが電源Vに導通されて電源電圧に基づく駆動電圧が電磁弁Lに供給され、いずれかのスイッチング回路S1,S2がオフ動作しているときは電磁弁Lが電源Vから遮断されて電磁弁Lに駆動電圧が出力されないように構成されている。
【0024】
第1のスイッチング回路S1は、2つの半導体スイッチング素子Q1,Q2により主構成されており、一方のスイッチング素子Q1は電源Vから電磁弁Lへの電源供給路の途中に設けられたpnp型トランジスタにより構成されている。このスイッチング素子Q1のエミッタが電源V側に接続され、コレクタが電磁弁L側に接続されている。スイッチング素子Q1のエミッタとベースとは抵抗R1を介して接続されている。
【0025】
別のスイッチング素子Q2は、そのコレクタがベース抵抗R2を介してスイッチング素子Q1のベースに接続されたnpn型トランジスタにより構成されている。このスイッチング素子Q2のエミッタ(接地端子)はグラウンドに接地されており、スイッチング素子Q2のベースが、第1のスイッチング回路S1の制御端子3となる。
【0026】
この制御端子3には、スイッチング素子Q2をオン動作させるための制御電圧を保持可能な平滑コンデンサC1がベース抵抗R3を介して接続されており、該平滑コンデンサC1の負側端子はグラウンドに接地されている。平滑コンデンサC1とマイクロコンピュータ1のウォッチドッグ信号出力端子とは、RC直列微分回路4を介して接続されており、これによりウォッチドッグ信号出力端子からパルス波形のウォッチドッグ信号が出力されているときに微分回路4を介して平滑コンデンサC1にパルス状に電流供給を行うことにより平滑コンデンサC1が上記制御電圧以上に充電され、スイッチング素子Q2及びQ1が順次オン動作するようになっている。一方、ウォッチドッグ信号出力端子からパルス信号ではない直流信号(High信号又はLow信号)が出力されているときは、微分回路4を構成するカップリングコンデンサC2によってウォッチドッグ信号出力端子から平滑コンデンサC1への電流供給が遮断され、平滑コンデンサC1の放電によってスイッチング素子Q2及びQ1が順次オフ動作するようになっている。
【0027】
なお、微分回路4の出力部とグラウンドとの間には負電圧をカットするダイオードD1が設けられ、微分回路4の出力部と平滑コンデンサC1の間には逆流防止ダイオードD2が設けられている。
【0028】
さらに、制御端子3は、マイクロコンピュータ1の強制オフ出力端子に接続されている。この強制オフ出力端子はオープンコレクタ出力端子によって構成され、強制オフ出力端子から強制オフ指令としてLow信号出力がなされると平滑コンデンサC1の正極側端子を接地させる放電回路が構成されている。これにより、電磁弁Lを緊急閉制御する場合などにおいて、マイクロコンピュータ1が強制オフ指令を出力することによって平滑コンデンサC1が急速放電され、瞬時にスイッチング回路1をオフ動作させることが可能になっている。一方、電磁弁Lを開動作させる場合には、強制オフ出力端子をオープン出力として強制オフ指令を出力しない状態とすることで、ウォッチドッグ信号によってスイッチング回路1をオン動作させることが可能になっている。なお、マイクロコンピュータ1の外部に設けたトランジスタを用いて上記放電回路を構成し、該放電回路に対してマイクロコンピュータ1からHigh信号又はLow信号の強制オフ指令(電磁弁オフ信号)を出力させることも可能である。
【0029】
また、平滑コンデンサC1と、微分回路4のカップリングコンデンサC2とは、同程度の容量とされ、これらコンデンサC1,C2に電荷が蓄積されていない状態でウォッチドッグ信号出力端子から微分回路4に直流信号を出力されると、これらコンデンサC1,C2間の電荷の移動によって両コンデンサC1,C2がほぼ同電位まで充電されるようになっており、このとき、平滑コンデンサC1は、スイッチング素子Q2をオン動作させるに十分な電圧まで一時的に充電されるようになっている。直流信号の出力が継続されている間、微分回路4のカップリングコンデンサC2は満充電された状態が維持されるが、カップリングコンデンサC2が満充電されて以降は両コンデンサC1,C2間の電荷の移動が無くなるために、平滑コンデンサC1に蓄積された電荷が主としてスイッチング素子Q2のベース−エミッタ間抵抗成分を介して徐々に放電していき、数秒程度で平滑コンデンサC1の両端電圧がスイッチング素子Q2をオフ動作させる程度まで降下する。
【0030】
上記第2のスイッチング回路S2は、一つの半導体スイッチング素子Q3により主構成されている。このスイッチング素子Q3は、pnp型トランジスタにより構成され、電源Vと電磁弁Lとの間で上記スイッチング素子Q1と直列に接続されている。すなわち、スイッチング素子Q3のエミッタがスイッチング素子Q1のコレクタに接続され、スイッチング素子Q3のコレクタが電磁弁L側に接続されている。スイッチング素子Q3のエミッタとベースとは抵抗R4を介して接続され、スイッチング素子Q3のベースはベース抵抗R5を介してマイクロコンピュータ1の電磁弁オン出力端子に接続されている。電磁弁オン出力端子は、図示例ではオープンコレクタ出力端子により構成され、オープン出力時(電磁弁オン信号未出力時)はスイッチング素子Q3がオフ動作し、電磁弁Lを開動作させるときに電磁弁オン信号としてLow信号出力を行うことによってスイッチング素子Q3がオン動作する。
【0031】
上記スイッチング素子Q1,Q2,Q3がすべてオン動作すると、電磁弁Lがスイッチング素子Q1,Q3を介して電源Vに導通されて、スイッチング素子Q3のコレクタ出力から電磁弁Lの駆動電圧として電源電圧が出力される。而して、スイッチング素子Q3のコレクタ出力が、本実施形態の駆動回路2の出力となる。なお、スイッチング素子Q3のスイッチングによる逆起電力をカットするために、スイッチング素子Q3のコレクタ出力には負電圧カット用のダイオードD3が接続されている。
【0032】
また、スイッチング素子Q1,Q2,Q3が正常動作しているか否かを確認するために、駆動回路2の出力部には、出力電圧確認回路5が設けられている。図示例の確認回路5は、エミッタ接地されたpnp型トランジスタからなる半導体スイッチング素子Q4によって主構成され、該スイッチング素子Q4のベースがベース抵抗R6を介して駆動回路2の出力部(スイッチング素子Q3のコレクタ出力)に接続され、スイッチング素子Q4のベースとエミッタとは抵抗R7を介して接続されている。スイッチング素子Q4のコレクタは負荷抵抗R8を介して電源Vに接続され、負荷抵抗R8とスイッチング素子Q4との接続点6がマイクロコンピュータ1の電磁弁チェック入力端子に接続されている。電磁弁Lに向けて駆動回路2から出力される電圧が電磁弁Lを開動作させる(電磁弁Lが保持弁などの場合には開状態で保持させる)に十分な電圧である場合は、該出力電圧によってスイッチング素子Q4がオン動作して接続点6を接地させ、電磁弁チェック入力端子にLow信号が入力される。一方、出力電圧が不十分である場合には、スイッチング素子Q4がオフ動作して接続点6がプルアップされ、High信号が電磁弁チェック入力端子に入力されるようになっている。そして、マイクロコンピュータ1は、電磁弁Lを開動作させるためにウォッチドッグ信号としてパルス信号をウォッチドッグ信号出力端子から出力するとともに電磁弁オン出力端子から電磁弁オン指令信号としてLow信号出力を行っているにもかかわらず、電磁弁チェック入力端子からHigh信号が入力されているときは、何らかの故障乃至不具合が生じたものと判定してウォッチドッグ信号並びに電磁弁オン指令信号の出力を停止し、所定のエラー処理を行うよう構成されている。
【0033】
なお、スイッチング素子Q3のコレクタ出力を直接、若しくは、分圧回路によって分圧された電圧をマイクロコンピュータ1のA/D入力ポートに入力させることにより、電磁弁Lに出力される駆動電圧を監視させることもできる。
【0034】
また、本実施形態においては、駆動回路2と電磁弁Lとの間に駆動電圧保持回路8が設けられている。この駆動電圧保持回路8は、第1及び第2のスイッチング回路S1,S2がいずれもオン動作することにより電磁弁Lが電源Vに導通している状態から、第1及び第2のスイッチング回路S1,S2のいずれかがオフ動作することにより電源Vから遮断された状態に遷移したときに、電磁弁Lに印加される駆動電圧を少なくとも一時的に保持するものであり、本実施形態ではRC積分回路によって構成されており、積分回路を構成するコンデンサの正極側端子が電磁弁Lに接続され、その負極側端子は接地されている。この積分回路を構成するコンデンサの容量は適宜設計できるが、電源Vから遮断された後の数十ミリ秒程度で放電して電磁弁Lが閉動作するよう構成することが好ましい。
【0035】
駆動電圧保持回路8のコンデンサの正極側端子は、マイクロコンピュータ1の電磁弁駆動電圧監視入力端子に接続されている。該監視入力端子は、A/D入力端子によって構成することができ、マイクロコンピュータ1によって電磁弁Lに印加されている駆動電圧をリアルタイムで監視させることができる。なお、電磁弁駆動電圧の監視を、上記出力電圧確認回路5と同様の回路によって駆動電圧が所定の閾値未満であるか否かに基づいて行うことも可能である。
【0036】
本実施形態では、マイクロコンピュータ1は、図2に示すように、燃焼制御のための電磁弁Lの開動作制御中、ウォッチドック信号出力端子からウォッチドックパルス(WDパルス)を出力し、強制オフ出力をオープン出力(電磁弁オフ信号を出力しない状態)とし、電磁弁オン出力端子から電磁弁オン信号を第2のスイッチング回路S1に対して出力する。これにより、駆動回路2の第1及び第2のスイッチング回路S1,S2がともにオン動作して、電磁弁Lが電源Vに導通されて、駆動回路2からの出力電圧が瞬時に立ち上がるとともに、駆動電圧保持回路8のコンデンサが数ミリ秒〜数十ミリ秒程度で電磁弁Lの最低駆動電圧以上まで充電されて電磁弁Lが開動作する。
【0037】
また、本実施形態のマイクロコンピュータ1は、電磁弁Lの開動作制御中に第1のスイッチング回路S1の故障診断を行う第1の故障診断機能と、電磁弁Lの開動作制御中に第2のスイッチング回路S2の故障診断を行う第2の故障診断機能とを有している。
【0038】
第1の故障診断機能は、図2に示すように、第2のスイッチング回路S2に対して電磁弁オン信号を定常的に出力しつつ、第1のスイッチング回路S1に対して強制オフ指令(電磁弁オフ信号)をパルス状に出力させたときの駆動回路2の出力(第1及び第2のスイッチング回路の出力)の状態に基づいて第1のスイッチング回路S1の故障診断を行うものであり、本実施形態では、電磁弁チェック入力端子の入力信号が、強制オフ指令のパルス出力に対応するパルス信号になっているか否かによって故障判定を行うように構成している。このように電磁弁チェック入力端子を用いて故障判定を行えるように、駆動回路2の出力信号に現れるパルス波形の最小電圧値が、出力電圧確認回路5のスイッチング素子Q4のオン/オフ動作の出力電圧チェック閾値よりも小さくなるよう回路定数を設計している。
【0039】
また、第2の故障診断機能は、第2のスイッチング回路S2に対して電磁弁オン信号をパルス状に出力させるとともに、第1のスイッチング回路S1に対して電磁弁オフ信号を定常的に出力しないときの駆動回路2の出力状態に基づいて第2のスイッチング回路S2の故障診断を行うものである。かかる第2の故障診断機能における故障判定も、第1の故障診断機能と同様、電磁弁チェック入力端子の入力信号が、強制オフ指令のパルス出力に対応するパルス信号になっているか否かによって故障判定を行うように構成している。
【0040】
上記第1及び第2の故障診断機能による故障診断は、同時に行うことはできず、所定のインターバル期間をあけて順次行うことが好ましい。このインターバル期間は適宜設計できるが、駆動電圧保持回路8が保持する駆動電圧が十分に上昇するに必要な所定時間、例えば数十ミリ秒程度の所定時間を経過するまでは次回の故障診断を行わないようにする。
【0041】
また、マイクロコンピュータ1は、電磁弁駆動電圧監視入力端子から入力される駆動電圧が、電磁弁Lを開動作状態で保持するに必要な駆動電圧監視閾値未満になると、上記第1及び第2の故障診断機能による故障診断をいずれも行わないよう制御構成されており、駆動電圧が上記閾値以上に復帰した後、故障診断を実施するようにしている。
【0042】
なお、マイクロコンピュータ1は、上記故障診断によって第1及び第2のスイッチング回路S1,S2の少なくともいずれかのショート故障を検出すると、即座に燃焼動作の停止制御を行うように構成することもできるし、ユーザーによる燃焼終了操作の後、故障に応じた適切な終了処理によって迅速に燃焼動作を停止させた上でエラー報知等を行うよう構成することもできる。
【0043】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜設計変更できる。例えば、マイクロコンピュータ1はワンチップ上にすべての機能を実装したマイクロプロセッサによって構成することもできるし、CPU、メモリ、I/O処理部などの複数パーツを基板上に実装することによって構成することもできる。
【0044】
また、燃焼機器は、電磁弁を複数備えるものであってよく、この場合、各電磁弁毎に上記第2のスイッチング回路S2並びにマイクロコンピュータ1の電磁弁オン出力端子をそれぞれ設けて、複数の第2のスイッチング回路S2を第1のスイッチング回路S1の出力側に並列に接続することによって、ウォッチドッグ信号による安全回路として機能する第1のスイッチング回路S1を共用しつつ、各電磁弁毎に個別に開閉動作制御を行うことができる。複数の電磁弁は、例えば、複数の燃焼部毎にそれぞれ設けられた複数の電磁安全弁であってもよいし、電磁安全弁と元ガス電磁弁などの異なる種類の電磁弁であってもよいし、また、一つの元ガス電磁弁に内蔵された吸着弁と保持弁などであってもよい。
【0045】
また、駆動電圧保持回路は、例えばボタン電池などを保持用電源として用いて、該保持用電源からの電圧供給によって駆動電圧を保持するよう構成することもできる。この場合、電磁弁Lの閉動作時には保持用電源からの電源供給がなされないよう、適宜スイッチング回路を設けてマイクロコンピュータ1によってスイッチング制御を行うことができる。
【符号の説明】
【0046】
1 制御部(マイクロコンピュータ)
2 駆動回路
8 駆動電圧保持回路
L 電磁弁
V 電源(電池)
S1 第1のスイッチング回路
S2 第2のスイッチング回路
図1
図2