特許第6604170号(P6604170)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6604170
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】振動型角速度センサ
(51)【国際特許分類】
   G01C 19/5769 20120101AFI20191031BHJP
   G01C 19/574 20120101ALI20191031BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   G01C19/5769
   G01C19/574
   H01L29/84 Z
   H01L29/84 A
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-232036(P2015-232036)
(22)【出願日】2015年11月27日
(65)【公開番号】特開2017-96877(P2017-96877A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 勝昭
(72)【発明者】
【氏名】岩城 隆雄
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−258165(JP,A)
【文献】 特開2010−190873(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0187227(US,A1)
【文献】 特開2013−238437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C19/00−19/72
G01P15/00−15/18
H01L29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板(11)と、
前記支持基板に対して固定された固定部(20)と、駆動錘(31、32)および検出錘(31、32)とを有する可動部(30)と、前記駆動錘を前記基板の平面と平行な平面上において移動可能としつつ前記固定部に対して支持する駆動梁(42)、および、前記検出錘を前記基板の平面と平行な平面上において移動可能としつつ前記固定部に対して支持する検出梁(41)を有する梁部(40)と、を有するセンサ部(100)を含み、前記固定部と前記可動部および前記梁部とが前記支持基板に接合される周辺部(10c)によって囲まれたセンサ基板(10)と、
前記周辺部において前記センサ基板に接合されることで、該センサ基板を覆うキャップ層(13)と、を備え、
前記支持基板には、該支持基板のうち前記固定部が接合される部分を囲む溝部(11a)が形成され、該溝部の部分において部分的に薄くなっていることでバネ部(11b)が構成されている振動型角速度センサ。
【請求項2】
前記溝部は多段階の段付溝とされており、該溝部のうち最も深い位置において前記バネ部が構成されている請求項1に記載の振動型角速度センサ。
【請求項3】
前記溝部には前記支持基板を貫通する貫通孔が含まれており、前記支持基板のうち前記溝部とされた部分における前記貫通孔ではない部分によって前記バネ部が構成され、該バネ部によって前記支持基板のうち前記固定部に接合される部分および前記センサ部が支持されている請求項1または2に記載の振動型角速度センサ。
【請求項4】
前記支持基板のうち前記溝部とされた部分における前記貫通孔ではない部分が複数備えられることで前記バネ部が複数箇所に構成され、複数箇所の前記バネ部によって前記支持基板のうち前記固定部に接合される部分および前記センサ部が支持されている請求項3に記載の振動型角速度センサ。
【請求項5】
前記支持基板には、前記貫通孔が渦巻状とされることで構成された渦巻形状部(11c)が備えられ、該渦巻形状部の一端が前記バネ部によって支持され、該渦巻形状部の他端に前記固定部が接続される部分とされている請求項3に記載の振動型角速度センサ。
【請求項6】
前記支持基板には、前記貫通孔が渦巻状とされることで構成された渦巻形状部(11c)が備えられ、該渦巻形状部が該渦巻形状部の周囲において複数の前記バネ部によって支持されている請求項3に記載の振動型角速度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動型角速度センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1において、振動型の角速度センサが提案されている。この角速度センサでは、角速度センサに備えられる可動部の駆動振動や検出振動方向がxy平面上である場合において、z軸方向への不要振動が発生したときに、検出信号に不要振動に起因する不要信号が含まれることから、これを補正するようにしている。具体的には、可動部に補正電極を形成し、この補正電極によって検出信号に含まれる不要信号と逆位相の補正信号を取り出し、検出信号に対して付加することで、不要信号を減衰するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−59040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1に記載されているように、不要振動は、本来可動部を振動させたい方向以外の方向に振動するものであり、この不要振動によって検出信号にノイズが付加され、振動型角速度センサの検出精度を低下させている。特許文献1に示されるように補正電極によって逆位相の補正信号を取り出せば、検出信号から不要信号を減衰することができる。しかしながら、この方法では不要振動自体を抑制することはできない。
【0005】
また、従来では、可動部の剛性向上や周波数設計によって不要振動が生じ難くなるようにすることも行われているが、不要振動の方向や大きさが変わるような場合、つまりゆらぎを持つ場合には対応できない。
【0006】
さらに、角速度センサが外部からの衝撃を受けた場合には、その衝撃による振動の影響による検出精度の低下も抑制することが望まれる。外部からの衝撃による影響を無くすために、防振材を備えたり、加工によって防振用の枠体を新たに設けて防振部を構成することも考えられるが、複数の部材を組み合わせて作製するため保持構造が複雑となり、組み立て工数が増加してコストアップするなどの問題が生じる。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、別部材による防振部を必要としなくても、可動部の不要振動を抑制し、検出精度を向上させることが可能な振動型角速度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、支持基板(11)と、支持基板に対して固定された固定部(20)と、駆動錘(31、32)および検出錘(31、32)とを有する可動部(30)と、駆動錘を基板の平面と平行な平面上において移動可能としつつ固定部に対して支持する駆動梁(42)、および、検出錘を基板の平面と平行な平面上において移動可能としつつ固定部に対して支持する検出梁(41)を有する梁部(40)と、を有するセンサ部(100)を含み、固定部と可動部および梁部とが支持基板に接合される周辺部(10c)によって囲まれたセンサ基板(10)と、周辺部においてセンサ基板に接合されることで、該センサ基板を覆うキャップ層(13)と、を備え、支持基板には、該支持基板のうち固定部が接合される部分を囲む溝部(11a)が形成され、該溝部の部分において部分的に薄くなっていることでバネ部(11b)が構成されている。
【0009】
このように、支持基板に溝部を形成し、センサ部がバネ部を介して支持基板の外縁部に支持された構造とされている。このため、例えば外部衝撃などに起因する駆動振動や検出振動の共振周波数(つまり駆動周波数や検出周波数)よりも共振周波数が小さな不要振動モードの際に、梁部よりもバネ部が主に変形して不要振動を減衰できる。これにより、不要振動モードの際に梁部40のを抑制することが可能となる。よって、検出精度を低下させるような不要振動モードを減らすことが可能となり、検出精度の向上を図ることが可能となる。
【0010】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態にかかる振動型角速度センサの上面レイアウト図である。
図2図1中のII−II断面図である。
図3図1中のIII−III断面図である。
図4図1中のIV−IV断面図である。
図5】支持基板の上面図である。
図6図1に示す振動型角速度センサの駆動振動時の様子を示した上面図である。
図7図1に示す振動型角速度センサの角速度印加時の様子を示した上面図である。
図8】第1実施形態の変形例で説明する振動型角速度センサの断面図である。
図9】第1実施形態の変形例で説明する振動型角速度センサに備えられる支持基板の上面図である。
図10】第1実施形態の変形例で説明する振動型角速度センサに備えられる支持基板の上面図である。
図11】第2実施形態にかかる振動型角速度センサに備えられる支持基板の上面図である。
図12】第2実施形態の変形例で説明する振動型角速度センサに備えられる支持基板の上面図である。
図13】第3実施形態にかかる振動型角速度センサの断面図である。
図14】第3実施形態の変形例で説明する振動型角速度センサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0013】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態で説明する振動型角速度センサは、センサ部を構成する基板の表面側および裏面側をそれぞれ支持基板とキャップ層にて覆ってウェハレベルパッケージ(以下、WLP(Wafer Level Package)という)構造としたものである。振動型角速度センサは、例えば、車両の上下方向に平行な中心線周りの回転角速度の検出を行うために用いられるが、勿論、カメラなど車両用以外にも適用できる。
【0014】
以下、図1図7を参照して、本実施形態にかかる振動型角速度センサについて説明する。
【0015】
本実施形態にかかる振動型角速度センサは、図1および図2に示すように、センサ基板10を用いてセンサ部100を形成したものである。以下、図1および図2の紙面左右方向をx軸方向、図1の紙面上下方向および図2の紙面法線方向をy軸方向、図1の紙面法線方向および図2の紙面上下方向をz軸方向として本実施形態にかかる振動型角速度センサの詳細について説明する。
【0016】
振動型角速度センサは、図1中のxy平面が車両水平方向に向けられ、図2のz軸方向が車両の上下方向と一致するようにして車両に搭載される。
【0017】
図1および図2に示すように、振動型角速度センサに備えられるセンサ部100は、板状のセンサ基板10をエッチングして所定のレイアウトとすることで形成されている。センサ基板10の裏面10a側には、支持基板11が配置されており、接合部12を介して接合されている。また、センサ基板10の表面10b側、つまり支持基板11と反対側には、キャップ層13が配置されており、接合部14を介して接合されている。このように、センサ基板10を挟んで支持基板11とキャップ層13とを貼り合せることでWLP構造の振動型角速度センサを構成している。
【0018】
本実施形態では、センサ基板10、支持基板11およびキャップ層13を例えばシリコン基板によって構成しており、接合部12、14を例えばシリコン酸化膜などの絶縁膜によって構成している。センサ基板10、支持基板11およびキャップ層13については1枚1枚独立したシリコン基板によって構成されていても良いが、例えば、センサ基板10および支持基板11が接合部12を挟み込んだSOI(Silicon on insulatorの略)基板にて構成されていても良い。
【0019】
センサ部100は、固定部20と可動部30および梁部40にパターニングされている。固定部20は、図2に示すように、接合部12を介して支持基板11に固定されている。可動部30および梁部40は、センサ部100における振動子を構成するものである。可動部30は、支持基板11の上にリリースされた状態で配置されている。梁部40は、可動部30を支持すると共に角速度検出を行うために可動部30をx軸方向およびy軸方向において変位させるものである。これら固定部20と可動部30および梁部40の具体的な構造を説明する。
【0020】
固定部20は、可動部30を支持すると共に、駆動用電圧の印加用のパッド接続部や角速度検出に用いられる検出信号の取り出し用のパッド接続部などの各種パッド接続部200が形成される部分である。本実施形態では、これら各機能を1つの固定部20によって実現しているが、例えば可動部30を支持するための支持用固定部、駆動用電圧が印加される駆動用固定部、角速度検出に用いられる検出用固定部に分割した構成とされても良い。その場合、例えば図1に示した固定部20を支持固定部とし、支持固定部に連結されるように駆動用固定部と検出用固定部を備え、駆動用固定部に駆動用電圧の印加用のパッド接続部や検出用固定部に検出信号取り出し用のパッド接続部などを備えればよい。
【0021】
具体的には、固定部20は、例えば上面形状が四角形で構成されている。固定部20のx軸方向およびy軸方向の幅については任意であるが、後述する検出梁41の幅よりも広くしてある。
【0022】
固定部20と支持基板11との間には内側接合部12aが配置されており、内側接合部12aを介して固定部20が支持基板11に固定されている。内側接合部12aにより、センサ基板10と支持基板11がそれぞれの中央位置において接合されている。
【0023】
可動部30は、角速度印加に応じて変位する部分であり、駆動用電圧の印加によって駆動振動させられる駆動用錘と駆動振動時に角速度が印加されたときにその角速度に応じて振動させられる検出用錘とを有した構成とされる。本実施形態の場合、可動部30として、駆動用錘と検出用錘の役割を同じ錘によって担う駆動兼検出用錘31、32が備えられている。駆動兼検出用錘31、32は、x軸方向において、固定部20を挟んだ両側に配置されており、固定部20から等間隔の場所に配置されている。各駆動兼検出用錘31、32は、同寸法、同質量で構成され、本実施形態の場合、上面形状が四角形で構成されている。各駆動兼検出用錘31、32は、それぞれ相対する二辺において梁部40に備えられる後述する駆動梁42に連結させられることで、両持ち支持されている。各駆動兼検出用錘31、32の下方においては、接合部12が除去されており、支持基板11から各駆動兼検出用錘31、32がリリースされている。このため、各駆動兼検出用錘31、32は、駆動梁42の変形によってx軸方向に駆動振動可能とされ、角速度印加の際には駆動梁42などの変形によってy軸方向を含む固定部20を中心とした回転方向へも振動可能とされている。
【0024】
梁部40は、検出梁41と、駆動梁42および支持梁43を有した構成とされている。
【0025】
検出梁41は、固定部20と支持梁43とを連結するy軸方向に延設された直線状の梁とされ、本実施形態では固定部20の相対する二辺に連結されることで、支持梁43を固定部20に連結させている。検出梁41のx軸方向の寸法は、z軸方向の寸法よりも薄くされており、x軸方向に変形可能とされている。
【0026】
駆動梁42は、駆動兼検出用錘31、32と支持梁43とを連結するy軸方向、つまり検出梁41と平行な方向に延設された直線状の梁とされている。各駆動兼検出用錘31、32に備えられた駆動梁42から検出梁41までは等距離とされている。駆動梁42のx軸方向の寸法も、z軸方向の寸法よりも薄くされており、x軸方向に変形可能とされている。これにより、駆動兼検出用錘31、32をxy平面上において変位可能としている。
【0027】
支持梁43は、x軸方向に延設された直線状の部材とされ、支持梁43の中心位置において検出梁41が連結されており、両端位置において各駆動梁42が連結されている。支持梁43は、y軸方向の寸法が検出梁41や駆動梁42におけるx軸方向の寸法よりも大きくされている。このため、駆動振動時には駆動梁42が主に変形し、角速度印加時には検出梁41および駆動梁42が主に変形するようになっている。
【0028】
このような構造により、駆動梁42と支持梁43および駆動兼検出用錘31、32によって上面形状が四角形の枠体が構成され、その内側に検出梁41および固定部20が配置されたセンサ部100の基本構造が構成されている。
【0029】
さらに、駆動梁42には、図1および図3に示すように駆動部51が形成されており、検出梁41には、図4に示すように、振動検出部53が形成されている。これら駆動部51および振動検出部53が外部に備えられた図示しない制御装置に電気的に接続されることで、振動型角速度センサの駆動が行われるようになっている。
【0030】
駆動部51は、図1に示すように、各駆動梁42のうち支持梁43との連結部近傍に備えられており、各場所に2本ずつ所定距離を空けて配置され、y軸方向に延設されている。図3に示すように、駆動部51は、センサ基板10のうちの駆動梁42を構成する部分の表面に下層電極51aと駆動用薄膜51bおよび上層電極51cが順に積層された構造とされている。下層電極51aおよび上層電極51cは、例えばAl電極などによって構成されている。これら下層電極51aおよび上層電極51cは、図1に示した支持梁43および検出梁41を経て固定部20まで引き出された配線部51d、51eを通じて、駆動用電圧の印加用のパッドやGND接続用のパッドに接続されている。また、駆動用薄膜51bは、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(いわゆるPZT)膜などの圧電膜によって構成されている。
【0031】
なお、図3では、駆動部51をセンサ基板10の表面10b側に形成する例について示してあるが、裏面10a側に形成しても良い。表面10b側に駆動部51を形成する場合、表面10bから裏面10aに貫通するように設けられる図示しない貫通電極や拡散層を通じてパッド接続部200に接続され、さらに駆動用電圧の印加用のパッドやGND接続用のパッドに接続される。
【0032】
このような構成において、下層電極51aと上層電極51cとの間に電位差を発生させることで、これらの間に挟まれた駆動用薄膜51bを変位させ、駆動梁42を強制振動させることで駆動兼検出用錘31、32をx軸方向に沿って駆動振動させる。例えば、各駆動梁42のx軸方向の両端側に1本ずつ駆動部51を備えるようにし、一方の駆動部51の駆動用薄膜51bを圧縮応力で変位させると共に他方の駆動部51の駆動用薄膜51bを引張応力で変位させる。このような電圧印加を各駆動部51に対して交互に繰り返し行うことで、駆動兼検出用錘31、32をx軸方向に沿って駆動振動させている。
【0033】
振動検出部53は、図1および図4に示すように、検出梁41のうちの固定部20との連結部近傍に備えられており、検出梁41におけるx軸方向の両側それぞれに設けられ、y軸方向に延設されている。図4に示すように、振動検出部53は、検出梁41を構成する接合部12の表面に下層電極53aと検出用薄膜53bおよび上層電極53cが順に積層された構造とされている。下層電極53aおよび上層電極53cや検出用薄膜53bは、それぞれ、駆動部51を構成する下層電極51aおよび上層電極51cや駆動用薄膜51bと同様の構成とされている。下層電極53aおよび上層電極53cは、図1に示した固定部20まで引き出された配線部53d、53eを通じて、検出信号出力用のパッドに接続されている。
【0034】
なお、図4では、振動検出部53をセンサ基板10の表面10b側に形成する例について示してあるが、裏面10a側に形成しても良い。表面10b側に振動検出部53を形成する場合、表面10bから裏面10aに貫通するように設けられる図示しない貫通電極や拡散層を通じてパッド接続部200に接続され、さらに検出信号出力用のパッドに接続される。
【0035】
このような構成では、角速度の印加に伴って検出梁41が変位すると、それに伴って検出用薄膜53bが変形する。これにより、例えば下層電極53aと上層電極53cとの間の電気信号、例えば定電圧駆動の場合の電流値もしくは定電流駆動の場合の電圧値が変化することから、それを角速度を示す検出信号として図示しない検出信号出力用のパッドを通じて外部に出力している。
【0036】
以上のようにして、本実施形態にかかる振動型角速度センサに備えられたセンサ部100が構成されている。なお、図1中では、駆動部51の配線部51d、51eや振動検出部53の配線部53d、53eと各種パッド接続部200との接続関係を省略してあるが、各配線部51d、51e、53d、53eは、例えばそれぞれが異なるパッド接続部200に接続されている。
【0037】
さらに、センサ基板10には、センサ部100を囲むように配置された周辺部10cが形成されている。周辺部10cは、センサ部100の周囲を囲む四角形の枠体形状で構成されている。そして、周辺部10cは、外側接合部12bを介して支持基板11と接合され、接合部14を介してキャップ層13と接合されている。この周辺部10cには、貫通電極10dが形成されており、周辺部10cの表裏での電気的接続が可能とされている。
【0038】
支持基板11は、上記したようにシリコン基板によって構成されており、一面側が接合部12を介してセンサ基板10に貼り合わされている。具体的には、支持基板11は、内側接合部12aを介して固定部20と接合されており、外側接合部12bを介して周辺部10cと接合されている。
【0039】
また、支持基板11は、板状部材に対してエッチングを施すことで所望位置に溝部11aを設けた形状とされている。具体的には、図5に示すように、支持基板11のうちセンサ基板10と接合される中央部および外縁部については、エッチングを施しておらず、中央部と外縁部との間、つまり中央部を囲むようにエッチングを施すことで溝部11aが形成されている。そして、溝部11aが形成された位置において、支持基板11の厚みが部分的に薄くなったバネ部11bが構成されており、外部からの衝撃などの不要振動が生じたときに、バネ部11bが撓むことで不要振動を減衰できるようになっている。なお、センサ部100と支持基板11との間のうち、固定部20と支持基板11との間以外の部分では接合部12が除去されている。このため、センサ部100を構成する各部が支持基板11と接触しないようにされている。
【0040】
支持基板11の中央部には、貫通孔300が形成されており、貫通孔300内にスルーホールビア(以下、TSVという)301が形成されている。また、支持基板11の中央部における表面側にはパッド接続部200が形成されており、TSV301と電気的に接続されている。また、支持基板11の裏面側にはパッド部302が形成されており、TSV301と電気的に接続されている。このような構造により、パッド部302に対して例えばワイヤボンディングを行うことで、TSV301およびパッド接続部200を通じて、センサ基板10の各部と電気的接続が行われる。これにより、駆動部51への電圧印加や、振動検出部53からの検出信号の取り出しなどが行えるようになっている。
【0041】
キャップ層13も、上記したようにシリコン基板によって構成されており、一面側が接合部14を介してセンサ基板10に貼り合わされている。具体的には、キャップ層13は、接合部14を介して周辺部10cと接合されている。キャップ層13は、単なる板状部材であっても良いが、本実施形態の場合、接合部14を介して接合されている周辺部10cと対応する場所以外の部分についてはエッチングによってキャビティ13aを形成している。このようなキャビティ13aが形成されることで、センサ部100を構成する各部がキャップ層13と接触しないようにされている。
【0042】
以上のようにして、本実施形態にかかる振動型角速度センサが構成されている。次に、このように構成される振動型角速度センサの作動について説明する。
【0043】
まず、図3に示すように、駆動梁42に備えられた駆動部51に対して駆動用電圧の印加を行う。具体的には、下層電極51aと上層電極51cとの間に電位差を発生させることで、これらの間に挟まれた駆動用薄膜51bを変位させる。そして、2本並んで設けられた2つの駆動部51のうち、一方の駆動部51の駆動用薄膜51bを圧縮応力で変位させると共に他方の駆動部51の駆動用薄膜51bを引張応力で変位させる。このような電圧印加を各駆動部51に対して交互に繰り返し行うことで、駆動兼検出用錘31、32をx軸方向に沿って駆動振動させる。これにより、図6に示すように、駆動梁42によって両持ち支持された駆動兼検出用錘31、32が固定部20を挟んでx軸方向において互いに逆方向に移動させられる駆動モードとなる。つまり、駆動兼検出用錘31、32が共に固定部20が近づく状態と遠ざかる状態とが繰り返されるモードとなる。
【0044】
この駆動振動が行われているときに、振動型角速度センサに対して角速度、つまり固定部20を中心軸としたz軸周りの振動が印加されると、図7に示すように駆動兼検出用錘31、32がy軸方向を含む固定部20を中心とした回転方向へも振動する検出モードとなる。これにより、検出梁41も変位し、この検出梁41の変位に伴って、振動検出部53に備えられた検出用薄膜53bが変形する。これにより、例えば下層電極53aと上層電極53cとの間の電気信号が変化し、この電気信号が外部に備えられる図示しない制御装置などに入力されることで、発生した角速度を検出することが可能となる。
【0045】
このような動作を行うに際し、例えば振動型角速度センサ以外の部分から伝わる振動、例えば車両振動、軸配向ズレ、加工の非対称性、結晶欠陥の存在の有無など、何らかの原因でz軸方向への不要振動が発生することがある。
【0046】
しかしながら、本実施形態の場合、支持基板11に溝部11aを形成し、センサ部100がバネ部11bを介して支持基板11の外縁部に支持された構造とされている。このため、例えば外部衝撃などに起因する駆動振動や検出振動の共振周波数(つまり駆動周波数や検出周波数)よりも共振周波数が小さな不要振動モードの際に、梁部40よりもバネ部11bが主に変形して不要振動を減衰できる。これにより、不要振動モードの際に梁部40の変形を抑制することが可能となる。
【0047】
このように、駆動モードにおいて駆動振動するときの駆動周波数や検出モードにおいて検出振動するときの検出周波数よりも低い不要振動が発生する不要振動モードにおいて、不要振動によって梁部40が変形することを抑制することができる。これにより、検出精度を低下させるような不要振動モードを減らすことが可能となり、検出精度の向上を図ることが可能となる。
【0048】
また、外部からの衝撃などに起因する振動に対しても、支持基板11の形状に基づいて防振構造を実現していることから、別部材による防振部を必要としなくても、検出精度の向上が図れる。
【0049】
したがって、別部材による防振部を必要としなくても、可動部30の不要振動を抑制し、検出精度を向上させることが可能な角速度センサを提供することができる。
【0050】
(第1実施形態の変形例)
第1実施形態では、溝部11aの深さを一定としたが、多段階の段付溝とすることもできる。例えば、図8に示すように、溝部11aを多段階に深くされた段付溝とし、支持基板11の中央部から外縁部に向けてより深さを深くした構造にできる。そして、溝部11aのうち最も深くされた位置において、支持基板11の厚みが部分的に薄くなったバネ部11bが構成されるようにできる。このような構造としても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0051】
また、溝部11aを部分的に貫通孔とし、部分的にバネ部11aが残るようにしても良い。例えば、図9に示すように、支持基板11の中央部を囲んだ周囲の1箇所のみを除いて溝部11aを貫通孔とし、バネ部11bを1箇所にのみ残すことでセンサ部100が片持ち支持された構造とすることができる。また、図示しないが、センサ部100を挟んだ両側にバネ部11bを残すことで、センサ部100を両持ち支持する構造としても良い。さらに、図10に示すように、支持基板11の中央部を中心とした四方にバネ部11bが残るようにして、センサ部100を4点支持する構造としても良い。勿論、センサ部100を1点、2点、4点支持する構造に限らず、その他の支持数のバネ部11bを備える構造としても良い。
【0052】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して溝部10aおよびバネ部11bの構成を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0053】
図11に示したように、本実施形態では、溝部10aにおける貫通孔を渦巻状とすることで、支持基板11に渦巻形状部11cを構成している。そして、渦巻形状部11cの渦巻きの一端がバネ部11bを介して支持基板11の外縁部に支持され、渦巻きの他端が中央部に接続されている。すなわち、センサ部100を支持している支持基板11の中央部が渦巻形状部11cおよびバネ部11bを介して支持基板11の外縁部に支持された構造とされている。
【0054】
このように、支持基板11に対して渦巻形状部11cを備えるようにすれば、バネ部11bに加えて渦巻形状部11cもバネとして機能させることができる。したがって、更に検出精度を低下させるような不要振動モードを減らすことが可能となり、検出精度の向上を図ることが可能となる。
【0055】
(第2実施形態の変形例)
第2実施形態では、溝部11aによって支持基板11に渦巻形状部11cを構成する場合について説明したが、渦巻形状部11cを支持するバネ部11bは1箇所のみでなく、渦巻形状部11cの周囲において複数箇所に備えるようにしても良い。
【0056】
例えば、図12に示すように、渦巻形状部11cが四角形状の枠体部11dによって囲まれるようにし、枠体部11dの四方にバネ部11bを備えることで、支持基板11の外縁部に複数のバネ部11bを介して渦巻形状部11cが支持される構造にできる。このような構造としても、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0057】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対してキャップ層13などの構成を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0058】
図13に示すように、本実施形態では、センサ部100を支持基板11だけでなくキャップ層13にも接合した構造としている。具体的には、キャップ層13の裏面のうち固定部20と対応する位置および支持基板11の外縁部と対応する位置以外の部分に溝部13bを形成している。溝部13bについては深さを一定としても良いが、ここでは溝部13bを段付溝としており、キャップ層13の中央部から外縁部に向かうに連れて溝部13bの深さが深くなるようにしている。そして、キャップ層13にも、溝部13bが最も深くなる位置において、キャップ層13が部分的に薄くされたバネ部13cが構成されるようにしている。
【0059】
このように、固定部20がキャップ層13にも接合されるようにする構造にもできる。その場合、キャップ層13にもバネ部13cを備えるようにすれば、キャップ層13からセンサ部100に対して不要振動が伝わることを抑制でき、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0060】
(第3実施形態の変形例)
第3実施形態のようにキャップ層13も固定部20に接合されるようにする場合、キャップ層13側に外部との接続用の配線構造を構成することもできる。具体的には、図14に示すように、キャップ層13に貫通孔304を形成すると共に、貫通孔304内にTSV305を備える。そして、キャップ層13と固定部20との間にパッド接続部306を備え、TSV305と接続する。更に、キャップ層13の表面側にパッド部307を備え、TSV305と接続する。
【0061】
このような構造により、パッド部307に対して例えばワイヤボンディングを行うことで、TSV305およびパッド接続部306を通じて、センサ基板10の各部と電気的接続が行われる。これにより、駆動部51への電圧印加や、振動検出部53からの検出信号の取り出しなどが行えるようになっている。
【0062】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0063】
(1)例えば、上記各実施形態では、振動型角速度センサの構造の一例を示したが、センサ部10を他の構造のものとしても良い。
【0064】
(2)また、振動検出部53を構成する検出素子として、駆動部51と同様の圧電膜を用いた構造のものを用いている。しかしながら、圧電膜を用いた構造以外にも、検出梁41の変位を電気信号として取り出すことができる検出素子であれば、他の検出素子を用いても良い。例えば、検出梁41を構成するセンサ基板10にピエゾ抵抗を形成し、このピエゾ抵抗を検出素子としても良い。例えば、半導体で構成されるセンサ基板10の表層部にp+型層もしくはn+型層を形成することで、ピエゾ抵抗とすることができる。
【0065】
(3)上記各実施形態では、下層電極51aと上層電極51cとの間に電位差を発生させることで、これらの間に挟まれた駆動用薄膜51bを変位させ、駆動梁42を強制振動する圧電機能を用いた圧電駆動としてる。そして、角速度の印加に伴う検出梁41の変位に基づく検出用薄膜53bの変形を下層電極53aと上層電極53cとの間の電気信号として取り出す圧電効果を用いた圧電検出としている。つまり、圧電駆動−圧電検出型の振動型角速度センサとしている。
【0066】
これに対して、圧電駆動−静電検出型の振動型角速度センサとすることもできる。例えば、検出梁41およびそれに隣接する場所に静電容量を構成する電極部を形成し、その静電容量の変化に基づいて角速度を検出する形態としても良い。なお、静電容量については、検出梁41およびそれに隣接する場所に形成する以外の他の場所に形成することもできる。例えば、支持梁43の両端とそれに隣接する場所に電極部を形成することで静電容量を構成することもできる。
【0067】
(4)また、上記実施形態では、検出梁41や駆動梁42のうち支持梁43の近傍にのみ、駆動部51や振動検出部53を備えた構造とした。これについても単なる一例を示したに過ぎず、例えば検出梁41や駆動梁42の全域にこれらを設けるようにしても良い。
【0068】
(5)また、上記実施形態では、可動部30および梁部40によって構成される枠体構造の外形形状を四角形状としたが、必ずしも四角形状でなくても良い。例えば、可動部30および梁部40によって構成される枠体構造は、検出梁41を中心線とした線対称かつ固定部20を中心とした点対称の構造であれば良い。このため、例えば、支持梁43は、検出梁41に対して垂直に交差するのではなく斜めに交差した形状などであっても良い。
【符号の説明】
【0069】
10 センサ基板
11 支持基板
11a 溝部
11b バネ部
20 固定部
30 可動部
31、32 駆動兼検出用錘
40 梁部
41 検出梁
42 駆動梁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14