特許第6604189号(P6604189)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6604189
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】画像読取装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20191031BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   H04N1/00 127B
   G03G21/00 386
   G03G21/00 500
【請求項の数】14
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-249331(P2015-249331)
(22)【出願日】2015年12月22日
(65)【公開番号】特開2017-118227(P2017-118227A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】西▲崎▼ 孝志
【審査官】 橋爪 正樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−054209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
G03G21/00
G06F 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキャナと、
ユーザ情報取得部と、
警告部と、
メモリと、
制御部とを備える画像読取装置であって、
前記ユーザ情報取得部は、携帯端末から送出される無線信号を受信する第1通信インタフェースを少なくとも含み、前記無線信号は、送出元の前記携帯端末が該画像読取装置に近いほど信号強度が強く、
前記制御部は、該画像読取装置のユーザを識別するユーザ情報を、前記ユーザ情報取得部を通じて現ユーザ情報として取得する第1取得処理を実行し、前記第1通信インタフェースが前記携帯端末から受信する前記無線信号は、前記ユーザ情報を含み、
前記制御部は、
直近の前記第1取得処理で取得した前記現ユーザ情報を、前記メモリに記憶させる第1記憶処理と、
前記現ユーザ情報で識別されるユーザから読取指示を取得する第2取得処理とを実行し、前記読取指示は、原稿に記録された画像を読み取って画像データを生成する読取動作を前記スキャナに実行させる指示であり、
前記制御部は、
前記第2取得処理で前記読取指示を取得したことに応じて、前記スキャナに前記読取動作を実行させる第1読取処理と、
前記第1読取処理の後に、前記スキャナに原稿が残されているか否かを判断する第1判断処理と、
原稿が残されていると前記第1判断処理で判断したことに応じて、前記現ユーザ情報を残紙ユーザ情報として前記メモリに記憶させる第2記憶処理とを実行し、
前記制御部は、前記第1取得処理を実行したことに応じて、さらに、
前記メモリに前記残紙ユーザ情報が記憶されているか否かを判断する第2判断処理と、
前記現ユーザ情報と前記残紙ユーザ情報とが一致するか否かを判断する第3判断処理と、
前記残紙ユーザ情報が記憶されていると前記第2判断処理で判断し、且つ前記現ユーザ情報と前記残紙ユーザ情報とが一致しないと前記第3判断処理で判断したことに応じて、前記スキャナに残されている原稿を持ち去らないことを前記警告部を通じて警告する第1警告処理とを、前記第1読取処理に先立って実行し、
前記現ユーザ情報と前記残紙ユーザ情報とが一致すると前記第3判断処理で判断したことに応じて、前記メモリに記憶された前記残紙ユーザ情報を削除する削除処理を実行する画像読取装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1読取処理の後で且つ前記第1判断処理の前において、さらに、
前記スキャナに前記読取動作を実行させる第2読取処理と、
前記メモリに前記残紙ユーザ情報が記憶されているか否かを判断する第4判断処理と、
読取画像データと残紙画像データとが一致するか否かを判断する第5判断処理とを実行し、前記読取画像データは、直近の前記第2読取処理で生成した画像データであり、前記残紙画像データは、過去の前記第2記憶処理において、前記残紙ユーザ情報と対応付けて前記メモリに記憶された前記読取画像データであり、
前記制御部は、
前記残紙ユーザ情報が記憶されていると前記第4判断処理で判断し、且つ前記読取画像データと前記残紙画像データとが一致しないと前記第5判断処理で判断したことに応じて、前記残紙ユーザ情報で識別されるユーザに前記現ユーザ情報を開示する情報開示処理を実行し、
前記第1警告処理において、原稿を持ち去ると前記情報開示処理を実行することを、前記警告部を通じてさらに警告する請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記画像読取装置は、携帯端末と通信する第2通信インタフェースを備えており、
前記制御部は、
前記第1取得処理において、通知先情報を含む前記ユーザ情報を前記現ユーザ情報として取得し、前記通知先情報は、前記ユーザ情報で識別されるユーザの前記携帯端末を特定するための情報であり、
前記情報開示処理において、前記残紙ユーザ情報に含まれる前記通知先情報で特定される前記携帯端末に、前記第2通信インタフェースを通じて前記現ユーザ情報を送信する請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
該画像読取装置は、ユーザによる入力操作を受け付ける入力インタフェースを備えており、
前記警告部は、ディスプレイを含み、
前記制御部は、前記第1警告処理において、
警告の内容を表す警告メッセージを含む第1画面を、前記ディスプレイに表示させる第1表示処理と、
前記入力インタフェースを通じて入力操作を受け付ける第1受付処理とを実行し、
前記警告メッセージに同意することを示す同意操作を前記第1受付処理で受け付けたことに応じて、前記第2取得処理を実行する請求項1から3のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記スキャナは、
前記読取動作の実行が可能な動作可能状態と、
前記読取動作の実行が規制された動作規制状態とに状態変化が可能であり、
前記制御部は、前記メモリに前記残紙ユーザ情報が記憶されている期間のうち、前記同意操作を前記第1受付処理で受け付けてからの所定の期間にのみ、前記スキャナを前記動作可能状態にする請求項4に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記スキャナは、
原稿を支持する第1面、及び前記第1面と反対の第2面を有する支持部と、
前記第2面と対面する位置で前記第1面に支持された原稿を読み取る読取部と、
前記第1面を露出させる開位置、及び前記第1面を被覆する閉位置の間を移動可能なカバーと、
前記動作可能状態において前記カバーの移動を許容し、前記動作規制状態において前記カバーを前記閉位置に固定するロック機構とを備えており、
前記制御部は、
前記同意操作を前記第1受付処理で受け付けた、或いは原稿が残されていないと前記第1判断処理で判断したことに応じて、前記スキャナを前記動作可能状態にする解除処理と、
前記同意操作を前記第1受付処理で受け付けてから所定の時間が経過したことに応じて、前記第2読取処理に先立って、前記スキャナを前記動作規制状態にするロック処理とを実行する請求項5に記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記制御部は、
該画像読取装置の管理者に割り当てられた認証情報を入力する入力操作を前記第1受付処理で受け付けたことに応じて、前記削除処理、前記解除処理、及び前記第2取得処理を実行する請求項6に記載の画像読取装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記第1取得処理において、前記第1通信インタフェースを通じて前記携帯端末から受信した前記無線信号に含まれる前記ユーザ情報を、前記現ユーザ情報として取得し、
前記同意操作を前記第1受付処理で受け付けたことに応じて、前記第1通信インタフェースで繰り返し受信される対象信号の信号強度が閾値強度以上か否かを判断する第6判断処理を実行し、前記対象信号は、前記現ユーザ情報と同一の前記ユーザ情報を含む前記無線信号であり、
前記対象信号の信号強度が閾値強度未満と前記第6判断処理で判断したことに応じて、前記第1判断処理を実行する請求項1から7のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記第1取得処理において、現時点から過去に遡った所定の時間内に前記第1通信インタフェースを通じて受信した複数の前記無線信号のうち、信号強度が最大の前記無線信号に含まれる前記ユーザ情報を、前記現ユーザ情報として取得する請求項8に記載の画像読取装置。
【請求項10】
該画像読取装置は、画面を表示するディスプレイを備えており、
前記ユーザ情報取得部は、ユーザによる入力操作を受け付ける入力インタフェースを含み、
前記制御部は、前記第2取得処理において、
前記読取指示に対応する読取指示オブジェクトを含む第2画面を前記ディスプレイに表示させる第2表示処理と、
前記現ユーザ情報の一部である部分情報を入力する入力操作、及び前記読取指示オブジェクトを指定する指示操作を、前記入力インタフェースを通じて受け付ける第2受付処理と、
前記第2受付処理で入力された前記部分情報が前記メモリに記憶された前記現ユーザ情報に含まれるか否かを判断する第7判断処理とを実行し、
前記部分情報が前記現ユーザ情報に含まれると前記第7判断処理で判断したことに応じて、前記第1読取処理を実行する請求項9に記載の画像読取装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記第2取得処理において、
前記携帯端末に登録された前記ユーザ情報である登録ユーザ情報を含み且つ前記読取指示に対応する読取指示情報を、前記第1通信インタフェースを通じて前記携帯端末から受信する受信処理と、
前記受信処理で受信した前記登録ユーザ情報と、前記メモリに記憶された前記現ユーザ情報とが一致するか否かを判断する第7判断処理とを実行し、
前記登録ユーザ情報と前記現ユーザ情報とが一致すると前記第7判断処理で判断したことに応じて、前記第1読取処理を実行する請求項9に記載の画像読取装置。
【請求項12】
前記ユーザ情報取得部は、画像を撮影するカメラをさらに含み、
前記制御部は、前記第1取得処理において、
前記ユーザ情報が記載された物を前記カメラに撮影させる撮影処理と、
前記撮影処理で撮影した画像に含まれる前記ユーザ情報を、前記現ユーザ情報として抽出する抽出処理とを実行する請求項1から7のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項13】
前記制御部は、原稿が残されていると前記第1判断処理で判断したことに応じて、前記現ユーザ情報で識別されるユーザに、前記警告部を通じて原稿の置き忘れを警告する第2警告処理を実行する請求項1から12のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項14】
前記スキャナは、
原稿を支持する第1面、及び前記第1面と反対の第2面を有する支持部と、
前記第2面と対面する位置で前記第1面に支持された原稿を読み取る読取部と、
前記第1面を露出させる開位置、及び前記第1面を被覆する閉位置の間を移動可能なカバーとを備えており、
前記閉位置において前記第1面に対面する前記カバーの面の色は、基準色であり、
前記制御部は、前記第1判断処理において、前記読取画像データで示される画像に含まれる前記基準色の割合が閾値割合未満であることに応じて、原稿が残されていると判断する請求項2に記載の画像読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿に記録された画像を読み取る画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、原稿の置き忘れをユーザに通知する画像読取装置が知られている。例えば特許文献1に記載の複写機は、PHS(Personal Handy−phone Systemの略)端末から出力される電波から端末IDを取得し、原稿の取り忘れを検知したことに応じて、取得した端末IDで識別されるPHS端末に原稿の取り忘れを報知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−88757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、画像読取装置が複数のユーザで共有される場合において、通知に気づいたユーザが置き忘れた原稿を回収する前に、当該原稿が他のユーザによって移動されるという課題を解決することはできない。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、あるユーザが置き忘れた原稿が他のユーザによって移動されることを抑制した画像読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に記載の画像読取装置は、スキャナと、ユーザ情報取得部と、警告部と、メモリと、制御部とを備える。前記ユーザ情報取得部は、携帯端末から送出される無線信号を受信する第1通信インタフェースを少なくとも含む。前記無線信号は、送出元の前記携帯端末が該画像読取装置に近いほど信号強度が強い。前記制御部は、該画像読取装置のユーザを識別するユーザ情報を、前記ユーザ情報取得部を通じて現ユーザ情報として取得する第1取得処理を実行する。前記第1通信インタフェースが前記携帯端末から受信する前記無線信号は、前記ユーザ情報を含む。前記制御部は、直近の前記第1取得処理で取得した前記現ユーザ情報を、前記メモリに記憶させる第1記憶処理と、前記現ユーザ情報で識別されるユーザから読取指示を取得する第2取得処理とを実行する。前記読取指示は、原稿に記録された画像を読み取って画像データを生成する読取動作を前記スキャナに実行させる指示である。前記制御部は、前記第2取得処理で前記読取指示を取得したことに応じて、前記スキャナに前記読取動作を実行させる第1読取処理と、前記第1読取処理の後に、前記スキャナに原稿が残されているか否かを判断する第1判断処理と、原稿が残されていると前記第1判断処理で判断したことに応じて、前記現ユーザ情報を残紙ユーザ情報として前記メモリに記憶させる第2記憶処理とを実行する。前記制御部は、前記第1取得処理を実行したことに応じて、さらに、前記メモリに前記残紙ユーザ情報が記憶されているか否かを判断する第2判断処理と、前記現ユーザ情報と前記残紙ユーザ情報とが一致するか否かを判断する第3判断処理と、前記残紙ユーザ情報が記憶されていると前記第2判断処理で判断し、且つ前記現ユーザ情報と前記残紙ユーザ情報とが一致しないと前記第3判断処理で判断したことに応じて、前記スキャナに残されている原稿を持ち去らないことを前記警告部を通じて警告する第1警告処理とを、前記第1読取処理に先立って実行する。前記制御部は、前記現ユーザ情報と前記残紙ユーザ情報とが一致すると前記第3判断処理で判断したことに応じて、前記メモリに記憶された前記残紙ユーザ情報を削除する削除処理を実行する。
【0007】
上記構成によれば、スキャナに原稿(以下、「残紙」と表記する。)が残されている状態で、他のユーザが画像読取装置を利用しようとすると、画像読取装置の利用後に残紙を持ち去らないよう警告される。これにより、残紙が他のユーザによって持ち去られることが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係るシステム100を構成する複合機10及び携帯端末50のブロック図である。
図2図2は、複合機10の外観斜視図であって、(A)はFBカバー12Cの開状態を、(B)はFBカバー12Cの閉状態を示す。
図3図3は、データ記憶領域32B、62Bに記憶される情報の例であって、(A)は端末信号リストを、(B)は現ユーザ情報を、(C)は対応する残紙ユーザ情報及び残紙画像データを示す。
図4図4は、コピー処理のフローチャートである。
図5図5は、ユーザ特定処理のフローチャートである。
図6図6は、ディスプレイ23の表示例であって、(A)はコピー指示画面を、(B)は警告画面を示す。
図7図7は、ディスプレイ53に表示されるコピー指示画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。例えば、後述する各処理の実行順序は、本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜変更することができる。
【0010】
図1は、本実施形態に係るシステム100の概略図である。図1に示されるシステム100は、複合機10と、携帯端末50A、50B、50C(以下、これらを総称して、「携帯端末50」と表記することがある。)とで構成されている。複合機10及び携帯端末50は、相互に通信可能に構成されている。複合機10及び携帯端末50の通信方法は、所謂直接無線通信であってもよいし、通信ネットワーク101を通じた間接通信であってもよい。通信ネットワーク101は、例えば、有線LAN(Local Area Networkの略)、無線LAN、或いはこれらの組み合わせであってもよい。
【0011】
[複合機10]
複合機10は、図1に示されるように、プリンタ11と、スキャナ12と、ディスプレイ23と、入力I/F(InterFaceの略)24と、BT(Bluetoothの略、BluetoothはBluetooth SIG, Inc.の登録商標)通信I/F25と、Wi−Fi(Wi−Fi Allianceの登録商標)通信I/F26と、CPU(Central Processing Unitの略)31と、メモリ32と、通信バス33とを主に備える。複合機10を構成する各構成要素は、通信バス33を通じて相互に接続されている。複合機10は、画像読取装置の一例である。また、入力I/F24及びBT通信I/F25は、ユーザ情報取得部の一例である。さらに、ディスプレイ23、Wi−Fi通信I/F26、及び不図示のスピーカは、警告部の一例である。
【0012】
[プリンタ11]
プリンタ11は、画像データで示される画像を記録用紙に記録する記録動作を実行する。記録用紙は、シート或いは被記録媒体の一例である。プリンタ11の記録方式として、インクジェット方式や電子写真方式などの公知の方式を採用することができる。プリンタ11は出力動作を実行可能な出力部の一例であり、記録動作は画像データに対する出力動作の一例である。なお、出力部の具体例はプリンタ11に限定されず、例えば、USBメモリを着脱可能な不図示のUSB(Universal Serial Busの略)インタフェースであってもよい。また、出力動作の具体例は記録動作に限定されず、出力部がUSBインタフェースである場合の出力動作は、例えば、USBインタフェースに装着されたUSBメモリに画像データを記憶させるものであってもよい。
【0013】
[スキャナ12]
スキャナ12は、原稿に記録されている画像を読み取って画像データを生成する読取動作を実行する。スキャナ12は、図1及び図2に示されるように、原稿を支持するコンタクトガラス12Aと、コンタクトガラス12Aに支持された原稿に記録された画像を読み取る読取部12Bと、開閉可能なFBカバー12Cと、FBカバー12Cをロックするロック機構12Dとを備える。すなわち、スキャナ12は、所謂フラットベッド方式を採用している。但し、所謂ADF(Auto Document Feederの略)がFBカバー12Cの上面にさらに設けられていてもよい。
【0014】
コンタクトガラス12Aは、上面と下面とを有する板状の部材である。コンタクトガラス12Aは、透光性を有する材料で形成されている。コンタクトガラス12Aは、上面において原稿を支持する支持部の一例である。また、上面は第1面の一例であり、下面は第1面と反対の第2面の一例である。読取部12Bは、CIS(Contact Image Sensorの略)を有する。読取部12Bは、コンタクトガラス12Aの下方において、コンタクトガラス12Aに対面する位置に配置されている。但し、読取部12Bは、CCD(Charge−Coupled Deviceの略)と、光源と、ミラーとを、CISに代えて備えてもよい。
【0015】
FBカバー12Cは、図2(A)に示される開位置と、図2(B)に示される閉位置との間を移動可能に構成されている。より詳細には、FBカバー12Cは、スキャナ12の外縁部に回動可能に支持されている。また、閉位置においてコンタクトガラス12Aに対面するFBカバー12Cの下面には、白色のプレート12Eが取り付けられている。プレート12Eの色は、例えば、一般的なシートより輝度値の高い基準色の一例である。
【0016】
開位置は、コンタクトガラス12Aの上面を露出させる位置である。すなわち、ユーザは、FBカバー12Cが開位置のときに、コンタクトガラス12Aに原稿を載置することができ、コンタクトガラス12Aに載置された原稿を取り除くことができる。一方、閉位置は、コンタクトガラス12Aの上面を被覆する位置である。すなわち、ユーザは、FBカバー12Cが閉位置のときに、コンタクトガラス12Aに原稿を載置することができず、コンタクトガラス12Aに載置された原稿を取り除くことができない。
【0017】
ロック機構12Dは、FBカバー12Cの移動を許容或いは規制する。ロック機構12Dは、不図示のモータによってスキャナ12の筐体から出没される。筐体から突出されたロック機構12Dは、閉位置のFBカバー12Cに係合されて、FBカバー12Cを閉位置に固定する。一方、筐体に没入されたロック機構12Dは、FBカバー12Cとの係合が解除されて、FBカバー12Cの移動を許容する。
【0018】
FBカバー12Cの移動が許容されたスキャナ12の状態は、コンタクトガラス12Aに原稿を載置可能な状態であって、読取動作の実行が許容された動作可能状態の一例である。一方、ロック機構12DによってFBカバー12Cが閉位置に固定されたスキャナ12の状態は、コンタクトガラス12Aに原稿を載置不可能な状態であって、読取動作の実行が規制された動作規制状態の一例である。すなわち、ロック機構12Dは、スキャナ12を動作可能状態或いは動作規制状態に切り替える。
【0019】
但し、動作可能状態及び動作規制状態は、前述の例に限定されない。例えば、後述する指示操作を入力I/F24を通じて受け付けたことに応じて、読取部12Bを動作させる状態を動作可能状態とし、読取部12Bを動作させない状態を動作規制状態としてもよい。この場合のスキャナ12は、ロック機構12Dを有していなくてもよい。
【0020】
[ディスプレイ23]
ディスプレイ23は、各種情報を表示する表示面を備える。ディスプレイ23としては、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Displayの略)、有機ELディスプレイ(Organic Electro−Luminescence Displayの略)等を採用することができる。
【0021】
[入力I/F24]
入力I/F24は、ユーザによる入力操作を受け付けるユーザインタフェースである。具体的には、入力I/F24はボタンを有しており、押下されたボタンに対応づけられた各種の操作信号をCPU31へ出力する。さらに、入力I/F24は、ディスプレイ23の表示面に重畳された膜状のタッチセンサを有していてもよい。すなわち、ディスプレイ23がタッチパネルディスプレイとして構成されてもよい。ディスプレイ23の表示面に表示されたオブジェクトを指定する操作、文字列或いは数字列を入力する操作は、入力操作の一例である。
【0022】
なお、「オブジェクト」とは、ユーザが入力I/F24を操作することによって指定可能な画像を指す。一例として、オブジェクトはディスプレイ23に表示された文字列、アイコン、ボタン、リンク等であってよい。オブジェクトは、入力I/F24の方向キー或いは決定ボタンを押下することによって指定されてもよい。入力I/F24がタッチパネルである場合、ディスプレイ23に表示されたオブジェクトは、表示位置へのタッチによって指定されてもよい。
【0023】
タッチパネルとして実現される入力I/F24は、ユーザがタッチした表示面上の位置を示す位置情報を出力する。なお、本明細書中における「タッチ」とは、入力媒体を表示面に接触させる操作全般を含む。すなわち、タッチした入力媒体を所定時間内に表示面から離間させるタップ操作、ロングタッチ操作、タッチした入力媒体を表示面上でスライドさせるスライド操作、フリック操作、ピンチイン操作、ピンチアウト操作等は、タッチの一例である。
【0024】
また、入力媒体が表示面に触れていなくても、表示面との間の距離がごく僅かな位置まで入力媒体を近接させることを、前述の「タッチ」の概念に含めてもよい。さらに入力媒体とは、ユーザの指であってもよいし、タッチペン等であってもよい。以下、ディスプレイ53に表示されたアイコンの位置のタップを、当該アイコンを指定する入力操作の一例として説明する。
【0025】
[BT通信I/F25]
BT通信I/F25は、外部装置との間で無線信号を送受信することが可能な通信インタフェースである。すなわち、複合機10は、BT通信I/F25を通じて携帯端末50に各種情報を出力し、BT通信I/F25を通じて携帯端末50から各種情報を受信する。BT通信I/F25から送出される無線信号は、徐々に減衰しながら空気中を伝搬する。すなわち、無線信号の信号強度は、複合機10との間の距離が短い位置ほど強くなり、複合機10との距離が長い位置ほど弱くなる傾向がある。
【0026】
BT通信I/F25は、例えば、Bluetooth、Bluetooth LE(Low Energyの略)に準拠した方式で外部装置と無線通信すればよい。または、BT通信I/F25の通信手順の他の例として、ZigBee(ZigBee Alliance, Inc.の登録商標)、TransferJet(TransferJet コンソーシアムの登録商標)等を採用してもよい。BT通信I/F25は、第1通信I/Fの一例である。
【0027】
[Wi−Fi通信I/F26]
Wi−Fi通信I/F26は、通信ネットワーク101を通じて外部装置と通信可能なインタフェースである。すなわち、複合機10は、Wi−Fi通信I/F26を通じて携帯端末50に各種情報を出力し、Wi−Fi通信I/F26を通じて携帯端末50から各種情報を受信する。Wi−Fi通信I/F26の具体的な通信手順は特に限定されないが、例えば、Wi−Fiを採用することができる。Wi−Fi通信I/F26は、第2通信I/Fの一例である。
【0028】
[CPU31]
CPU31は、複合機10の全体動作を制御するものである。CPU31は、入力I/F24から出力される各種情報、BT通信I/F25及びWi−Fi通信I/F26を通じて外部装置から取得した各種情報等に基づいて、後述する各種プログラムをメモリ32から取得して実行する。CPU31及びメモリ32は、制御部の一例を構成する。
【0029】
[メモリ32]
メモリ32は、プログラム記憶領域32Aと、データ記憶領域32Bとを有する。プログラム記憶領域32Aには、OS(Operating Systemの略)34と、装置プログラム35とが格納される。なお、装置プログラム35は、単一のプログラムであってもよいし、複数のプログラムの集合体であってもよい。データ記憶領域32Bには、装置プログラム35の実行に必要なデータ或いは情報が記憶される。
【0030】
なお、本明細書中の「データ」と「情報」とは、コンピュータによって取り扱い可能なビット或いはビット列である点において共通する。「データ」とは、各ビットが示す意味内容をコンピュータが考慮することなく取り扱えるものを指す。これに対して、「情報」とは、各ビットが示す意味内容によってコンピュータの動作が分岐するものを指す。さらに、「指示」は、送信先の装置に対して次の動作を促すための制御信号であって、情報を含んでいることもあるし、それ自体が情報としての性質を有していることもある。
【0031】
また、「データ」及び「情報」は、形式(例えば、テキスト形式、バイナリ形式、フラグ形式等)がコンピュータ毎に変更されたとしても、同一の意味内容と認識される限り、同一のデータ及び情報として取り扱われる。例えば、「2つ」であることを示す情報が、あるコンピュータではASCIIコードで”0x32“というテキスト形式の情報として保持され、別のコンピュータでは二進数表記で”10“というバイナリ形式の情報として保持されてもよい。
【0032】
但し、上記の「データ」及び「情報」の区別は厳密なものではなく、例外的な取り扱いも許容される。例えば、データが一時的に情報として扱われてもよいし、情報が一時的にデータとして扱われてもよい。また、ある装置ではデータとして扱われるものが、他の装置では情報として扱われてもよい。さらには、データの中から情報が取り出されてもよいし、情報の中からデータが取り出されてもよい。
【0033】
メモリ32は、例えば、RAM(Random Access Memoryの略)、ROM(Read Only Memoryの略)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memoryの略)、HDD(Hard Disk Driveの略)、複合機10に着脱されるUSBメモリ等の可搬記憶媒体、CPU31が備えるバッファ等、或いはそれらの組み合わせによって構成される。
【0034】
なお、メモリ32は、コンピュータが読み取り可能なストレージ媒体であってもよい。コンピュータが読み取り可能なストレージ媒体とは、non−transitoryな媒体である。non−transitoryな媒体には、上記の例の他に、CD−ROM、DVD−ROM等の記録媒体も含まれる。また、non−transitoryな媒体は、tangibleな媒体でもある。一方、インターネット上のサーバなどからダウンロードされるプログラムを搬送する電気信号は、コンピュータが読み取り可能な媒体の一種であるコンピュータが読み取り可能な信号媒体であるが、non−transitoryなコンピュータが読み取り可能なストレージ媒体には含まれない。
【0035】
プログラム記憶領域32Aに記憶されているプログラムは、CPU31によって実行される。しかしながら、本明細書では、CPU31を省略して各プログラムの動作を説明することがある。すなわち、以下の説明において、「プログラムAが処理Aを実行する」という趣旨の記述は、「CPU31がプログラムAに記述された処理Aを実行する」ことを指してもよい。後述する携帯端末50についても同様である。
【0036】
また、プログラム記憶領域32Aに記憶されているプログラムは、事象を判断し、判断結果に応じて動作する。しかしながら、本明細書では、判断することを省略して各プログラムの動作を説明することがある。すなわち、以下の説明において、「プログラムが条件Aに応じて、処理Aを実行する」という趣旨の記述は、「プログラムは条件Aであるか否かを判断する。プログラムは、肯定判断であることに応じて、処理Aを実行する」ことを指してもよい。後述する携帯端末50についても同様である。
【0037】
また、プログラム記憶領域32Aに記憶されているプログラムは、データ等を特定し、取得し、抽出し、決定し、或いは選択する。プログラムがデータ等を特定するとは、例えば、複数のデータ等のうちから条件に合致するデータを特定し、当該データ等そのもの或いは当該データ等を識別するための情報を、予め定められた記憶領域に記憶させる処理を指す。データ等を識別するための情報とは、例えば、当該データ等を識別するための識別情報、当該データ等が記憶された配列のインデックス、当該データ等が記憶された記憶領域のポインタ等である。プログラムがデータ等を取得し、抽出し、決定し、或いは選択する処理も同様である。後述する携帯端末50についても同様である。
【0038】
OS34は、複合機10を構成するハードウェアであるプリンタ11、スキャナ12、ディスプレイ23、入力I/F24、BT通信I/F25、及びWi−Fi通信I/F26等を制御するためのAPI(Application Programming Interfaceの略)を提供する基本プログラムである。すなわち、上記の各プログラムは、OS34が提供するAPIを呼び出すことによって、各ハードウェアを制御する。しかしながら、本明細書では、OS34を省略して各プログラムの動作を説明することがある。すなわち、以下の説明において、「プログラムBがハードウェアCを制御する」という趣旨の記述は、「プログラムBがOS34のAPIを通じてハードウェアCを制御する」ことを指してもよい。後述する携帯端末50についても同様である。
【0039】
メモリ32のデータ記憶領域32Bは、図3(A)に示されるように、日時情報と、ユーザ情報と、強度情報とを記憶することができる。以下、図3(A)に示される情報全体を「端末信号リスト」と表記することがあり、端末信号リストにおいて互いに対応付けられた日時情報、ユーザ情報、及び強度情報のセットを「端末信号レコード」と表記することがある。すなわち、端末信号リストは、複数の端末信号レコードを含むことができる。端末信号レコードは、BT通信I/F25を通じて携帯端末50から端末信号を受信したことに応じて、装置プログラム35によって端末信号リストに追加される。すなわち、端末信号レコードは、BT通信I/F25を通じて受信した端末信号に対応する。
【0040】
日時情報は、対応する端末信号の受信日時を示す。なお、日時情報は、時間、分、秒、及びミリ秒の組み合わせに限定されず、例えば、タイムスタンプの形式であってもよいし、不図示のクロックカウンタのカウント値そのままでもよい。強度情報は、対応する端末信号の信号強度を示す。または、強度情報は、携帯端末50が複合機10から受信したビーコン信号の信号強度であってもよい。この場合の携帯端末50は、受信したビーコン信号の信号強度を示す強度情報を、端末信号に含めて複合機10に送信する。
【0041】
ユーザ情報は、端末信号の送信元である携帯端末50のユーザを識別するための情報である。ユーザ情報は、対応する端末信号に含まれる情報である。本実施形態に係るユーザ情報は、電話番号と、電子メールアドレスとを含む。ユーザ情報に含まれる電話番号は、携帯端末50の後述する電話部52に設定された電話番号である。ユーザ情報に含まれる電子メールアドレスは、携帯端末50にインストールされた不図示のメールクライアントに設定された電子メールアドレスである。
【0042】
ユーザ情報に含まれる電話番号は、携帯端末50A、50B、50Cをユニークに識別する端末IDの一例である。但し、端末IDの具体例は電話番号に限定されず、後述する端末プログラム65にユニークに割り当てられた情報であってもよいし、Wi−Fi通信I/F56に割り当てられたMAC(Media Access Controlの略)アドレスであってもよい。
【0043】
ユーザ情報に含まれる電子メールアドレスは、ユーザ情報で識別されるユーザの携帯端末50を特定するための通知先情報の一例である。換言すれば、電子メールアドレスは、ユーザ情報で識別されるユーザへの情報の通知先を示す情報である。すなわち、携帯端末50は、ユーザ情報に含まれる電子メールアドレスを宛先とする電子メールを、Wi−Fi通信I/F56を通じて不図示のメールサーバから受信することができる。通知先情報の具体例は電子メールアドレスに限定されず、例えば、電話番号であってもよい。
【0044】
また、データ記憶領域32Bは、図3(B)に示されるように、現ユーザ情報を記憶することができる。また、データ記憶領域32Bは、図3(C)に示されるように、残紙ユーザ情報と、残紙ユーザ情報に対応付けられた残紙画像データ(以下、これらを総称して、「残紙情報」と表記する。)とを記憶することができる。現ユーザ情報及び残紙ユーザ情報は、端末信号リストに含まれるユーザ情報の1つである。残紙画像データは、スキャナ12に生成させた画像データである。現ユーザ情報、残紙ユーザ情報、及び残紙画像データの詳細は、後述する。
【0045】
さらに図示は省略するが、データ記憶領域32Bは、複合機10の管理者に割り当てられる解除PIN(Prsonal Identification Numberの略)を記憶することができる。解除PINは、スキャナ12を動作可能状態に状態遷移させるための認証情報の一例である。解除PINは、例えば、複数桁の文字列或いは数字列である。解除PINは、例えば、出荷時の複合機10に既に設定されてもよいし、管理者の指示に応じて複合機10によって発行されてもよいし、管理者によって複合機10に設定されてもよい。
【0046】
[携帯端末50]
携帯端末50は、図1に示されるように、電話部52と、ディスプレイ53と、入力I/F54と、BT通信I/F55と、Wi−Fi通信I/F56と、CPU61と、メモリ62と、通信バス63とを主に備える。携帯端末50に含まれるディスプレイ53、入力I/F54、BT通信I/F55、Wi−Fi通信I/F56、CPU61、メモリ62、及び通信バス63は、複合機10に含まれるディスプレイ23、入力I/F24、BT通信I/F25、Wi−Fi通信I/F26、CPU31、メモリ32、及び通信バス33と同様の構成であるので、説明は省略する。CPU61及びメモリ62は、制御部の一例である。
【0047】
[電話部52]
電話部52は、外部装置との間で音声データを送受信(以下、「通話」と表記することがある。)する通話機能を実現する。通話機能の実現には、例えば、携帯端末50が備える不図示のマイク及び不図示のスピーカがさらに利用される。すなわち、携帯端末50は、不図示のマイクで集音した音声を示す音声データを電話部52を通じて外部装置に送信し、電話部52を通じて外部装置から受信した音声データで示される音声を不図示のスピーカを通じて出力する。
【0048】
電話部52は、入力I/F54を通じて入力を受け付けた電話番号、或いはデータ記憶領域62Bに記憶された電話番号で特定される外部装置に対して、通話を要求(すなわち、発信)することができる。また、電話部52には、携帯端末50に割り当てられた電話番号が設定されている。そして、電話部52は、当該電話番号に対する通話の要求を受け付ける(すなわち、受信)ことができる。
【0049】
メモリ62のプログラム記憶領域62Aは、OS64と、端末プログラム65とを記憶している。OS64は、例えば、Android(Google inc.の登録商標) OS、iOS(Cisco Systems,Inc.の登録商標)、Windows Phone(Microsoft Corporationの登録商標) Operating System等であってもよい。
【0050】
メモリ62のデータ記憶領域62Bは、携帯端末50のユーザのユーザ情報が記憶されている。本実施形態において、携帯端末50Aには電話番号“xxx−xxxx−xxxx”及び電子メールアドレス“ABC@abc.com”が設定され、携帯端末50Bには電話番号“yyy−yyyy−yyyy”及び電子メールアドレス“LMN@lmn.com”が設定され、携帯端末50Cには電話番号“zzz−zzzz−zzzz”及び電子メールアドレス“XYZ@xyz.com”が設定されているものとする。
【0051】
携帯端末50は、例えば、電話部52を有する携帯電話或いはスマートフォン等であってもよい。但し、電話部52は必須の構成要素ではなく、電話部52を有しないタブレット端末或いはラップトップPC(Personal Computerの略)等であってもよい。
【0052】
[システム100の動作]
図4及び図5を参照して、本実施形態に係るシステム100の動作を説明する。複合機10の装置プログラム35は、複合機10の電源が投入されたことに応じて、図4に示されるコピー処理を実行する。本実施形態に係るコピー処理の開始時点において、現ユーザ情報及び残紙情報はデータ記憶領域32Bに記憶されておらず、スキャナ12は動作可能状態だとする。
【0053】
まず、装置プログラム35は、ユーザ特定処理を実行する(S11)。ユーザ特定処理は、複合機10を利用しようとするユーザ(以下、「現ユーザ」と表記する。)を特定する処理である。図5を参照して、ユーザ特定処理の詳細を説明する。
【0054】
装置プログラム35は、所定の信号強度のビーコン信号をBT通信I/F25を通じて送出する(S31)。ビーコン信号は、端末信号の送信を要求する無線信号である。装置プログラム35は、コピー処理が終了するまでの間、所定の時間間隔で繰り返しビーコン信号を送出する。また、装置プログラム35は、コピー処理が終了するまでの間、BT通信I/F35を通じて端末信号を受信する。
【0055】
一方、図示は省略するが、ビーコン信号の到達範囲に存在する携帯端末50の端末プログラム65は、BT通信I/F55を通じて複合機10からビーコン信号を受信する。端末プログラム65は、データ記憶領域62Bに記憶されたユーザ情報を含む端末信号を、ビーコン信号の送出元である複合機10にBT通信I/F55を通じて送信する。なお、複合機10と携帯端末50との間では、ペアリング等の接続準備処理が端末信号の送信に先立って実行されるが、これらの処理は既に周知なので、説明を省略する。
【0056】
次に、装置プログラム35は、ビーコン信号の応答である端末信号を、BT通信I/F25を通じて携帯端末50から受信する(S32:Yes)。ステップS32の処理は、ユーザ情報を取得する第1取得処理の一例である。そして、装置プログラム35は、ステップS32で受信した端末信号に含まれるユーザ情報を、現ユーザ情報としてデータ記憶領域32Bに記憶させる(S33)。ステップS33の処理は、第1記憶処理の一例である。
【0057】
なお、装置プログラム35は、ステップS32で初めて端末信号を受信してから所定の時間が経過するまで、ステップS31、S32の処理を繰り返し実行してもよい。次に、装置プログラム35は、ステップS32で端末信号を受信する度に、当該端末信号に含まれるユーザ情報と、当該端末信号の受信日時を示す日時情報と、当該端末信号の信号強度を示す強度情報とを含む端末信号レコードを、図3(A)に示される端末信号リストに追加してもよい。端末信号レコードに含められる強度情報は、受信した端末信号の信号強度を示してもよいし、端末信号に含まれる強度情報であってもよい。
【0058】
そして、装置プログラム35は、ステップS32で初めて端末信号を受信してから所定の時間が経過したことに応じて、現時点から過去に遡った所定の時間内にBT通信I/F25を通じて受信した複数の端末信号のうち、信号強度が最大の端末信号に含まれるユーザ情報を、現ユーザ情報として取得してもよい(S32:Yes)。より詳細には、装置プログラム35は、日時情報で示される受信日時が現在時刻から過去に遡った所定の時間内である複数の端末信号レコードのうち、強度情報で示される信号強度が最大の端末信号レコードを読み出せばよい。そして、装置プログラム35は、読み出した端末信号レコードに含まれるユーザ情報を、現ユーザ情報としてデータ記憶領域32Bに記憶させればよい(S33)。
【0059】
本実施形態では、図3(A)に示される端末信号レコードのうち、強度情報“3.3[dB]”を含む端末信号レコードが読み出される。そして、図3(B)に示されるように、当該端末信号レコードに含まれるユーザ情報“xxx−xxxx−xxxx”、“ABC@abc.com”が現ユーザ情報としてデータ記憶領域32Bに記憶される。または、装置プログラム35は、例えば、強度情報が所定の値(例えば、“3.0”)以上の端末信号をBT通信I/F25を通じて受信したことに応じて、所定の時間の経過を待つことなく、当該端末信号に含まれるユーザ情報を、現ユーザ情報として取得してもよい(S32:Yes)。
【0060】
次に、装置プログラム35は、データ記憶領域32Bに残紙情報が記憶されているか否かを判断する(S34)。また、装置プログラム35は、現ユーザ情報と残紙ユーザ情報とが一致するか否かを判断する(S35)。ステップS34の処理は第2判断処理の一例であり、ステップS35の処理は第3判断処理の一例である。そして、装置プログラム35は、データ記憶領域32Bに残紙情報が記憶されていないと判断したことに応じて(S34:No)、ステップS36〜S38の処理をスキップして、ユーザ特定処理を終了する。本実施形態では、携帯端末50Aのユーザが現ユーザとして特定される。
【0061】
一方、装置プログラム35は、データ記憶領域32Bに残紙情報が記憶されており、且つ現ユーザ情報と残紙ユーザ情報とが一致しないと判断したことに応じて(S34:Yes&S35:No)、ステップS36、S37の処理を実行して、ユーザ情報特定処理を終了する。また、装置プログラム35は、データ記憶領域32Bに残紙情報が記憶されており、且つ現ユーザ情報と残紙ユーザ情報とが一致すると判断したことに応じて(S34:Yes&S35:Yes)、ステップS38の処理を実行して、ユーザ情報特定処理を終了する。ステップS36〜S38の処理の詳細は、後述する。
【0062】
図4に戻って、装置プログラム35は、ロック機構13Dを動作させることによって、スキャナ12を動作規制状態から動作可能状態に状態遷移させる(S12)。ステップS12の処理は、解除処理の一例である。なお、スキャナ12が既に動作可能状態の場合、ステップS12の処理は省略される。これにより、現ユーザは、FBカバー12Cを開状態にし、コンタクトガラス12Aに原稿を載置し、FBカバー12Cを閉状態にし、読取指示の一例であるコピー指示を複合機10に入力することができる。
【0063】
次に、装置プログラム35は、BT通信I/F25を通じて繰り返し受信する対象信号の信号強度が閾値強度以上か否かを判断する(S13)。対象信号は、現ユーザ情報と同一のユーザ情報を含む端末信号である。閾値強度以上の対象信号を繰り返し受信している場合、現ユーザが複合機10の傍に留まっている可能性が高いと判断できる。一方、閾値強度未満の対象信号を受信した、或いは対象信号を受信できなかった場合、現ユーザが複合機10の傍から立ち去った可能性が高いと判断できる。
【0064】
そして、装置プログラム35は、対象信号の信号強度が閾値強度以上であることに応じて(S13:Yes)、ステップS14以降の処理を実行する。一方、装置プログラム35は、信号強度が閾値強度以上の対象信号を受信できなくなったことに応じて(S13:No)、ステップS16以降の処理を実行する。ステップS13の処理は、第6判断処理の一例である。換言すれば、装置プログラム35は、現ユーザからコピー指示を取得するまで(S14:No)、所定の時間間隔で繰り返し対象信号の信号強度と閾値強度とを比較する(S13)。
【0065】
そして、装置プログラム35は、繰り返し受信する対象信号の信号強度が閾値強度以上であるうちに(S13:Yes)、現ユーザからコピー指示を取得したことに応じて(S14:Yes)、プリンタ11及びスキャナ12にコピー動作を実行させる(S15)。コピー動作は、スキャナ12に画像データを生成させ、当該画像データで示される画像をシートに対してプリンタ11に記録させる動作である。ステップS15の処理は、第1読取処理の一例である。
【0066】
なお、「現ユーザからコピー指示を取得する(S14:Yes)」とは、例えば、複合機10にコピー指示を入力したユーザが現ユーザであると後述の方法で確認したことを指す。一方、「現ユーザからコピー指示を取得していない(S14:No)」とは、例えば、コピー指示が複合機10に入力されていないこと、或いは複合機10にコピー指示を入力したユーザが現ユーザであると後述の方法で確認できなかったことを指す。ステップS14の処理は、第2取得処理の一例である。
【0067】
一例として、装置プログラム35は、以下のようにコピー指示を取得する。装置プログラム35は、第2画面の一例であるコピー指示画面をディスプレイ23に表示させる。図6(A)は、コピー指示画面の一例である。図6(A)に示されるコピー指示画面は、「電話番号の下4桁を入力してから、[コピー]アイコンをタップして下さい。」とのメッセージと、入力I/F24を通じて入力された電話番号が表示されるテキストボックス111と、読取指示オブジェクトの一例である[コピー]アイコン112とを含む。コピー指示画面を表示させる処理は、第2表示処理の一例である。
【0068】
次に、装置プログラム35は、携帯端末50Aに設定された電話番号の下4桁“xxxx”を入力する入力操作と、[コピー]アイコン112を指定する指示操作とを、入力I/F24を通じて受け付ける。電話番号の下4桁は、現ユーザ情報の一部である部分情報の一例である。但し、部分情報は、電話番号の下4桁に限定されない。また、入力操作及び指示操作を受け付ける処理は、第2受付処理の一例である。
【0069】
次に、装置プログラム35は、入力I/F24を通じて入力操作及び指示操作を受け付けたことに応じて、入力I/F24を通じて入力された電話番号の下4桁と、データ記憶領域32Bに記憶された現ユーザ情報に含まれる電話番号の下4桁とが一致するか否かを判断する。この処理は、部分情報が現ユーザ情報に含まれるか否かを判断する第7判断処理の一例である。
【0070】
そして、装置プログラム35は、入力された電話番号の下4桁と、現ユーザ情報に含まれる電話番号の下4桁とが一致すると判断したことに応じて(S14:Yes)、ステップS15の処理を実行する。すなわち、入力された電話番号の下4桁と、現ユーザ情報に含まれる電話番号の下4桁とが一致するとの判断は、現ユーザからコピー指示を受け付けたとの判断の一例である(S13:Yes)。一方、装置プログラム35は、入力された電話番号の下4桁と、現ユーザ情報に含まれる電話番号の下4桁とが不一致と判断したことに応じて(S14:No)、ステップS15の処理を実行することなく、ステップS13以降の処理を実行する。すなわち、入力された電話番号の下4桁と、現ユーザ情報に含まれる電話番号の下4桁とが一致しないとの判断は、現ユーザと異なるユーザからコピー指示を受け付けたとの判断の一例である(S13:No)。
【0071】
他の例として、装置プログラム35は、以下のようにコピー指示を取得する。装置プログラム35は、BT通信I/F25を通じて携帯端末50Aに指示要求情報を送信する。指示要求情報は、読取指示情報の送信を要求するための情報である。一方、携帯端末50Aの端末プログラム65は、BT通信I/F55を通じて複合機10から指示要求情報を受信する。そして、端末プログラム65は、コピー指示画面をディスプレイ53に表示させる。図7は、コピー指示画面の一例である。図7に示されるコピー指示画面は、「複合機に原稿をセットして[コピー]アイコンをタップして下さい。」とのメッセージと、[コピー]アイコン131とを含む。
【0072】
そして、端末プログラム65は、[コピー]アイコン131の指定を入力I/F54を通じて受け付けたことに応じて、BT通信I/F55を通じて複合機10に読取指示情報を送信する。読取指示情報は、携帯端末50Aのユーザ情報(以下、「登録ユーザ情報」と表記する。)を含み、且つコピー指示に対応する情報である。また、複合機10の装置プログラム35は、BT通信I/F25を通じて携帯端末50Aから読取指示情報を受信する。読取指示情報を受信する処理は、受信処理の一例である。なお、指定要求情報を送信してから読取指示情報を受信するまでの間に、信号強度が閾値強度以上の対象信号を受信できなくなった場合、装置プログラム35は、以降の処理を中止して、ステップS16以降の処理を実行してもよい。
【0073】
そして、装置プログラム35は、読取指示情報に含まれる登録ユーザ情報と、データ記憶領域32Bに記憶された現ユーザ情報とが一致するか否かを判断する。この処理は、第7判断処理の一例である。装置プログラム35は、登録ユーザ情報と現ユーザ情報とが一致すると判断したことに応じて、ステップS15の処理を実行する。すなわち、登録ユーザ情報と現ユーザ情報とが一致するとの判断は、現ユーザからコピー指示を受け付けたとの判断の一例である(S13:Yes)。一方、装置プログラム35は、登録ユーザ情報と現ユーザ情報とが不一致と判断したことに応じて(S14:No)、ステップS15の処理を実行することなく、ステップS13以降の処理を実行する。すなわち、登録ユーザ情報と現ユーザ情報とが一致しないとの判断は、現ユーザと異なるユーザからコピー指示を受け付けたとの判断の一例である(S13:No)。
【0074】
さらに他の例として、閾値強度以上の対象信号を受信している状態でコピー指示を取得したことによって、装置プログラム35は、現ユーザからコピー指示を取得したと判断してもよい(S13:Yes&14:Yes)。閾値強度以上の対象信号を受信している場合、現ユーザが複合機10の傍に留まっていると推定される。そこで、前述の第7判断処理を省略して、ステップS15の処理を実行してもよい。
【0075】
そして、装置プログラム35は、繰り返し受信する対象信号の信号強度が閾値強度以上である間、ステップS13〜S15の処理を繰り返し実行する。すなわち、装置プログラム35は、現ユーザから1回以上のコピー指示を取得し(S14:Yes)、取得したコピー指示に従ってコピー動作を実行することができる(S15)。一方、装置プログラム35は、コピー指示を受け付ける前に信号強度が閾値強度以上の対象信号を受信できなくなったことに応じて、ステップS15の処理を実行することなく、ステップS16以降の処理を実行することもできる。
【0076】
そして、装置プログラム35は、信号強度が閾値強度以上の対象信号を受信できないと判断したことに応じて(S13:No)、ロック機構を動作させることによって、スキャナ12を動作可能状態から動作規制状態に状態遷移させる(S16)。ステップS16の処理は、ロック処理の一例である。すなわち、閾値強度以上の対象信号を受信できない場合(S13:No)、現ユーザが複合機10の傍から立ち去ったと推定される。そこで、ステップS16でFBカバー12Cを閉位置に固定することによって、コンタクトガラス12A上に原稿が残されていたとしても、当該原稿を取り出すことができなくなる。
【0077】
次に、装置プログラム35は、スキャナ12に読取動作を実行させる(S17)。以下、ステップS17でスキャナ12が生成した画像データを、読取画像データと表記する。また、装置プログラム35は、データ記憶領域32Bに残紙情報が記憶されているか否かを判断する(S18)。ステップS17の処理は第2読取処理の一例であり、ステップS18の処理は第4判断処理の一例である。そして、装置プログラム35は、データ記憶領域32Bに残紙情報が記憶されていると判断したことに応じて(S18:Yes)、ステップS19以降の処理を実行する。ステップS19、S20の処理の詳細は、後述する。
【0078】
一方、装置プログラム35は、データ記憶領域32Bに残紙情報が記憶されていないと判断したことに応じて(S18:No)、コンタクトガラス12Aに原稿が残されている(以下、この原稿を「残紙」と表記する。)か否かを判断する(S21)。ステップS17で生成した読取画像データで示される画像に含まれる基準色の割合が閾値割合未満であるとの判断は、残紙が存在するとの判断の一例である(S21:Yes)。一方、ステップS17で生成した読取画像データで示される画像に含まれる基準色の割合が閾値割合以上であるとの判断は、残紙が存在しないとの判断の一例である(S21:No)。ステップS21の処理は、第1判断処理の一例である。
【0079】
次に、装置プログラム35は、残紙が存在すると判断したことに応じて(S21:Yes)、データ記憶領域32Bに残紙情報を記憶させる(S22)。例えば図3(C)に示されるように、装置プログラム35は、データ記憶領域32Bに記憶された現ユーザ情報“xxx−xxxx−xxxx”、“ABC@abc.com”を残紙ユーザ情報とし、直近のステップS17で生成した読取画像データ“画像データA”を残紙画像データとする残紙情報を、データ記憶領域32Bに記憶させる。ステップS22の処理は、第2記憶処理の一例である。
【0080】
次に、装置プログラム35は、現ユーザ情報で識別されるユーザに原稿の置き忘れを警告する(S23)。そして、装置プログラム35は、データ記憶領域32Bに記憶された現ユーザ情報を削除してコピー処理を終了し、新たなコピー処理を開始する。すなわち、コンタクトガラス12Aに原稿を残して現ユーザが複合機10から立ち去った場合に(S21:Yes)、装置プログラム35は、スキャナ12を動作規制状態にしたままコピー処理を終了する。
【0081】
なお、装置プログラム35は、例えばステップS23において、現ユーザ情報に含まれる電子メールアドレス“ABC@abc.com”を宛先とし、コンタクトガラス12Aが原稿に残されていることを示すメッセージを本文とする電子メールを、Wi−Fi通信I/F26を送信してもよい。または、装置プログラム35は、例えばステップS23において、複合機10が備える不図示のスピーカを通じて、警告メッセージ或いは警告音を出力させてもよい。ステップS23の処理は、第2警告処理の一例である。
【0082】
一方、装置プログラム35は、残紙が存在しないと判断したことに応じて(S21:No)、ロック機構を動作させることによって、スキャナ12を動作規制状態から動作可能状態に状態遷移させる(S24)。ステップS24の処理は、解除処理の一例である。そして、装置プログラム35は、データ記憶領域32Bに記憶された現ユーザ情報を削除してコピー処理を終了し、新たなコピー処理を開始する。すなわち、コンタクトガラス12Aに原稿を残さずに現ユーザが複合機10から立ち去った場合に(S21:No)、装置プログラム35は、スキャナ12を動作可能状態にしてコピー処理を終了する。
【0083】
次に、コンタクトガラス12Aに原稿を残して立ち去った携帯端末50Aのユーザが、置き忘れた原稿を回収しに複合機10に戻ってきた場合の処理を説明する。この場合にデータ記憶領域32Bに記憶されている残紙情報は、残紙ユーザ情報“xxx−xxxx−xxxx”、“ABC@abc.com”と、残された原稿に記録された画像を示す残紙画像データとを含む。また、前述の処理との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0084】
装置プログラム35は、ビーコン信号の応答として携帯端末50Aから送信された端末信号を、BT通信I/F25を通じて受信する(S32:Yes)。そして、装置プログラム35は、受信した端末信号に含まれるユーザ情報“xxx−xxxx−xxxx”、“ABC@abc.com”を、現ユーザ情報としてデータ記憶領域32Bに記憶させる(S33)。さらに、装置プログラム35は、データ記憶領域32Bに残紙情報が記憶されており、且つ現ユーザ情報と残紙ユーザ情報とが一致すると判断したことに応じて(S34:Yes&S35:Yes)、データ記憶領域32Bから残紙情報を削除して(S38)、ユーザ特定処理を終了する。ステップS38の処理は、削除処理の一例である。削除処理は、残紙情報をNull値等で上書きする処理であってもよいし、残紙情報に対応付けられた削除フラグに“ON”をセットする処理であってもよい。
【0085】
そして図4に戻って、装置プログラム35は、ロック機構を動作させることによって、スキャナ12を動作規制状態から動作可能状態に状態遷移させる(S12)。これにより、携帯端末50Aのユーザは、FBカバー12Cを開状態にして、コンタクトガラス12Aに支持された原稿を回収することができる。この場合のステップS13以降の処理は、前述の処理と共通するので、説明は省略する。
【0086】
次に、携帯端末50Aのユーザがコンタクトガラス12Aに原稿を残して立ち去った後に、携帯端末50Bのユーザが複合機10に近づいた場合の処理を説明する。この場合にデータ記憶領域32Bに記憶されている残紙情報は、残紙ユーザ情報“xxx−xxxx−xxxx”、“ABC@abc.com”と、残された原稿に記録された画像を示す残紙画像データとを含む。また、前述の処理との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0087】
装置プログラム35は、ビーコン信号の応答として携帯端末50Bから送信された端末信号を、BT通信I/F25を通じて受信する(S32:Yes)。そして、装置プログラム35は、受信した端末信号に含まれるユーザ情報“yyy−yyyy−yyyy”、“LMN@lmn.com”を、現ユーザ情報としてデータ記憶領域32Bに記憶させる(S33)。さらに、装置プログラム35は、データ記憶領域32Bに残紙情報が記憶されており、且つ現ユーザ情報と残紙ユーザ情報とが不一致と判断したことに応じて(S34:Yes&S35:No)、第1画面の一例である警告画面をディスプレイ23に表示させる(S36)。そして、装置プログラム35は、警告画面に対する入力操作を入力I/F24を通じて受け付ける(S37)。
【0088】
図6(B)は、警告画面の一例である。図6(B)に示される警告画面は、「前ユーザの原稿が残っています。使用後に原稿を元に戻さないと、あなたの個人情報が前ユーザに通知されますがよろしいですか?」との警告メッセージと、[Yes]アイコン121と、[No]アイコン122と、入力I/F24を通じて入力された解除PINを表示するテキストボックス123とを含む。ステップS36の処理は第1表示処理の一例であり、ステップS37の処理は第1受付処理の一例である。また、ステップS36、S37の処理は、スキャナ12に残されている原稿を持ち去らないことを警告する第1警告処理の一例である。
【0089】
なお、図6(B)に示される警告メッセージは、スキャナ12に残されている原稿を持ち去らないことの警告の一例である。但し、警告メッセージの具体的な内容は図6(B)の例に限定されず、例えば、「残された原稿を持ち去らないで下さい」、「残された原稿を元に戻すか、管理者に渡して下さい」等であってもよい。また、警告メッセージは、図6(B)に示されるように、原稿を持ち去ると現ユーザ情報が開示されることをさらに警告するものであってもよい。
【0090】
そして、装置プログラム35は、[No]アイコン122の指定を入力I/F24を通じて受け付けたことに応じて(S37:[No]アイコン)、データ記憶領域32Bから現ユーザ情報を削除して、ステップS31以降の処理を再び実行する。すなわち、[No]アイコン122を指定した携帯端末50Bのユーザ、すなわち、警告画面に表示された警告メッセージに同意しない携帯端末50Bのユーザは、複合機10にコピー動作を実行させることができない。
【0091】
また、装置プログラム35は、解除PINを入力する入力操作を入力I/F24を通じて受け付けたことに応じて(S37:解除PIN)、残紙情報を削除する処理(S38)及びステップS12以降の処理を実行する。すなわち、複合機10の管理者は、入力I/F24を通じて解除PINを入力し、コンタクトガラス12Aに支持された原稿を回収することができる。その後、携帯端末50Bのユーザは、前ユーザが残した原稿を気にすることなく、複合機10にコピー動作を実行させることができる。この場合のステップS12以降の処理は、前述の処理と共通するので、説明は省略する。
【0092】
さらに、装置プログラム35は、[Yes]アイコン121の指定を入力I/F24を通じて受け付けたことに応じて(S37:[Yes]アイコン)、ユーザ特定処理を終了する。[Yes]アイコン121の指定は、警告メッセージに同意することを示す同意操作の一例である。これにより、携帯端末50Bのユーザは、前ユーザが残した原稿を一時的にコンタクトガラス12Aから移動させて、複合機10にコピー動作を実行させることができる。この場合のステップS12〜S17の処理は、前述の処理と共通するので、説明は省略する。
【0093】
次に、装置プログラム35は、データ記憶領域32Bに残紙情報が記憶されていると判断したことに応じて(S18:Yes)、直近のステップS17で生成した読取画像データと、残紙情報に含まれる残紙画像データとが一致するか否かを判断する(S19)。ステップS19の処理は、第5判断処理の一例である。そして、装置プログラム35は、読取画像データと残紙画像データとが一致すると判断したことに応じて(S19:Yes)、ステップS20〜S23の処理をスキップし、データ記憶領域32Bに記憶された現ユーザ情報を削除してコピー処理を終了し、新たなコピー処理を開始する。すなわち、携帯端末50Bのユーザが残紙を元に戻して複合機10の傍から立ち去った場合、ステップS20〜S23の処理は実行されない。
【0094】
一方、装置プログラム35は、データ記憶領域32Bに残紙情報が記憶されていると判断し、且つ読取画像データと残紙画像データとが不一致と判断したことに応じて(S18:Yes&S19:No)、残紙ユーザ情報で識別されるユーザに現ユーザ情報を開示する(S20)。装置プログラム35は、例えばステップS20において、残紙ユーザ情報に含まれる電子メールアドレス“ABC@abc.com”を宛先とし、現ユーザ情報“yyy−yyyy−yyyy”、“LMN@lmn.com”を本文とする電子メールを、Wi−Fi通信I/F26を通じて不図示のメールサーバに送信してもよい。ステップS20の処理は、情報開示処理の一例である。
【0095】
次に、装置プログラム35は、携帯端末50Bのユーザの原稿がコンタクトガラス12A上に残されている、すなわち残紙が存在すると判断したことに応じて(S21:Yes)、ステップS22以降の処理を実行する。この場合のステップS22において、装置プログラム35は、データ記憶領域32Bに既に記憶されている残紙情報を新たな残紙情報で上書きしてもよい。または、装置プログラム35は、新たな残紙情報をデータ記憶領域32Bに追加してもよい。この場合、以降のコピー処理のステップS19において、装置プログラム35は、読取画像データと、複数の残紙画像データのうちの1つとが一致するか否かを判断すればよい。一方、装置プログラム35は、携帯端末50Bのユーザの原稿がコンタクトガラス12A上に残されていない、すなわち残紙が存在しないと判断したことに応じて(S21:No)、ステップS24以降の処理を実行する。
【0096】
[実施形態の作用効果]
上記の実施形態によれば、スキャナ12に残紙が存在している状態で、他のユーザが複合機10を利用しようとすると、複合機10の利用後に残紙を持ち去らないよう警告される。これにより、残紙が他のユーザによって持ち去られることが抑制される。また、警告を無視して残紙を移動させたままにすると、残紙ユーザ情報で識別されるユーザ(以下、「残紙ユーザ」と表記する。)に現ユーザ情報が開示される。これにより、残紙の移動がさらに抑制されると共に、残紙ユーザが残紙の所在を追跡できるようになる。
【0097】
また、上記の実施形態によれば、スキャナ12に原稿が残されている場合において、警告メッセージに同意しないとスキャナ12を動作させることができない。その結果、残紙の移動がさらに抑制される。一方、複合機10の管理者に解除PINを入力させることによって、警告メッセージに同意することなくスキャナ12を動作させることができる。このとき、認証情報を入力する管理者に残紙を保管させることができるので、現ユーザは、ユーザ情報が開示されることを心配せずに、複合機10を利用することができる。
【0098】
また、上記の実施形態によれば、図6(A)或いは図7に示されるコピー指示画面を通じてコピー指示の入力を受け付けることによって、ステップS32で取得した現ユーザ情報で識別されるユーザと、コピー指示を入力したユーザとの同一性を確認してから、ステップS14の処理を実行できる。その結果、残紙の移動がさらに抑制される。
【0099】
また、上記の実施形態によれば、現ユーザ情報を含む電子メールが残紙ユーザに送信されるので、残紙ユーザに現ユーザ情報が積極的に開示される。その結果、残紙の速やかな回収を残紙ユーザに促すことができる。但し、残紙ユーザに現ユーザ情報を開示する具体的な方法は、電子メールに限定されない。
【0100】
一例として、装置プログラム35は、例えばステップS20において、インターネット上の不図示のWEBサーバにWi−Fi通信I/F26を通じて現ユーザ情報をアップロードしてもよい。そして、WEBサーバにアップロードされた現ユーザ情報は、残紙ユーザ或いは管理者が携帯端末50Aを通じて閲覧することが可能にされてもよい。他の例として、装置プログラム35は、ステップS20において、データ記憶領域32Bに記憶されている残紙ユーザ情報に現ユーザ情報を追加記憶させてもよい。そして、装置プログラム35は、現ユーザ情報が追加記憶された残紙ユーザ情報を、残紙ユーザ或いは管理者が閲覧することを可能にしてもよい。
【0101】
また、上記の実施形態によれば、電波強度が最大の端末信号から現ユーザ情報を取得するので、携帯端末50A、50B、50Cを所持する複数のユーザが複合機10の近傍にいる場合に、複合機10を利用しようとするユーザを適切に検知することができる。そして、携帯端末50から送出される対象信号の信号強度に応じて、当該携帯端末50のユーザが複合機10に対して、近づいたこと及び立ち去ったことを検知することができる。また、ユーザ情報を入力させるユーザの手間を軽減することができる。
【0102】
但し、現ユーザ情報を取得する具体的な方法は、前述の例に限定されない。他の例として、装置プログラム35は、入力I/F24を通じて現ユーザ情報を取得してもよい。すなわち、複合機10を利用しようとするユーザに、電話番号及び電子メールアドレス等を、入力I/F24を通じて入力させてもよい。さらに他の例として、装置プログラム35は、不図示のカメラを通じて現ユーザ情報を取得してもよい。カメラは、ユーザ情報取得部の一例である。
【0103】
カメラが搭載された複合機10の装置プログラム35は、ステップS31、S32において、複合機10を利用しようとするユーザが提示した免許証等をカメラに撮影させる。この処理は、撮影処理の一例である。次に、装置プログラム35は、撮影処理で撮影した画像に含まれるユーザ情報を、現ユーザ情報として抽出する。この処理は、抽出処理の一例である。これにより、携帯端末50を所持していないユーザにも複合機10を利用させることができる。
【0104】
免許証は、ユーザ情報が記載された物の一例であって、健康保険証、名刺、社員証等でも代替できる。また、装置プログラム35は、免許証等を提示したユーザの顔をさらに撮影し、当該顔写真を現ユーザ情報に含めてもよい。さらに、装置プログラム35は、例えば抽出処理において、周知のOCR(Optical Character Recognitionの略)技術を利用して、カメラで撮影した画像からテキスト形式のユーザ情報を抽出すればよい。
【0105】
また、上記の変形例を採用する場合、装置プログラム35は、ステップS15において、現ユーザ情報を取得してからの経過時間、或いはステップS14の処理を最後に実行してからの経過時間が閾値時間を経過したことに応じて、現ユーザが立ち去ったと判断して、ステップS16以降の処理を実行してもよい。すなわち、スキャナ12は、データ記憶領域62Bに残紙情報が記憶されていない期間のうち、ステップS16〜S24の期間にのみ動作規制状態にされ、それ以外の期間に動作可能状態にされる。また、スキャナ12は、データ記憶領域62Bに残紙情報が記憶されている期間のうち、同意操作を受け付けてからの所定の期間(S37:Yes〜S15:No)にのみ動作可能状態にされ、それ以外の期間に動作規制状態にされる。
【0106】
また、上記の実施形態によれば、スキャナ12を動作規制状態にしてからステップS17の処理が実行される。これにより、ステップS17の処理中にコンタクトガラス12A上の原稿が取り去られることを防止できる。但し、ステップS12、S16、S24の実行タイミングは、図4の例に限定されない。例えば、装置プログラム35は、ステップS16、S24の処理を省略すると共に、残紙ありと判断したことに応じて(S21:Yes)、スキャナ12を動作可能状態から動作規制状態に状態変化させてもよい。
【0107】
また、上記の実施形態の複合機10及び携帯端末50において、メモリ32、62のプログラム記憶領域32A、62Aに記憶された各種プログラムがCPU31、61によって実行されることによって、本発明の制御部が実行する各処理が実現される例を説明した。しかしながら、制御部の構成はこれに限定されず、その一部又は全部を集積回路(IC(Integrated Circuitの略)とも言う。)等のハードウェアで実現してもよい。
【0108】
さらに、本発明は、複合機10及び携帯端末50として実現できるだけでなく、複合機10及び携帯端末50に処理を実行させるプログラムとして実現してもよい。そして、当該プログラムは、non−transitoryな記録媒体に記録されて提供されてもよい。non−transitoryな記録媒体は、CD−ROM、DVD−ROM等の他、通信ネットワーク101を通じて複合機10及び携帯端末50に接続可能なサーバに搭載された記憶部を含んでもよい。そして、サーバの記憶部に記憶されたプログラムは、当該プログラムを示す情報或いは信号として、インターネット等の通信ネットワーク101を通じて配信されてもよい。
【符号の説明】
【0109】
10・・・複合機
11・・・プリンタ
12・・・スキャナ
23,53・・・ディスプレイ
24,54・・・入力I/F
25,55・・・BT通信I/F
26,56・・・Wi−Fi通信I/F
31,61・・・CPU
32,62・・・メモリ
35・・・装置プログラム
65・・・端末プログラム
50・・・携帯端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7