特許第6604195号(P6604195)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6604195
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】トルク測定装置付回転伝達装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/10 20060101AFI20191031BHJP
【FI】
   G01L3/10 317
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-252767(P2015-252767)
(22)【出願日】2015年12月25日
(65)【公開番号】特開2017-116433(P2017-116433A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】特許業務法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石橋 央成
(72)【発明者】
【氏名】早田 史明
【審査官】 大森 努
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−172563(JP,A)
【文献】 特開2015−137926(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/207953(WO,A1)
【文献】 特表2007−508555(JP,A)
【文献】 特開昭57−157861(JP,A)
【文献】 特表2016−531798(JP,A)
【文献】 特開平04−052537(JP,A)
【文献】 米国特許第4150566(US,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2386844(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 3/04−3/10,
F16H 3/091−3/093
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルク伝達軸と、内軸と、1対のエンコーダと、1対のセンサとを備え、
前記トルク伝達軸は、軸方向複数箇所に、トルク入力部とトルク出力部とのうちの一方のトルク伝達部を、前記軸方向複数箇所よりも軸方向片側に位置する軸方向1箇所に、トルク入力部とトルク出力部とのうちの他方のトルク伝達部を、それぞれ有すると共に、径方向内側に軸方向に伸長する中心孔を有するものであり、
前記内軸は、前記中心孔の内側に配置されると共に、前記トルク伝達軸のうちで、軸方向に関して最も片側に位置する前記一方のトルク伝達部から前記他方のトルク伝達部までの範囲のうち、前記他方のトルク伝達部に対し軸方向他側に離隔した部分に相対回転不能に連結されており、
前記1対のエンコーダは、それぞれの被検出部の特性を円周方向に関して交互に変化させたもので、一方のエンコーダを前記内軸に対し、他方のエンコーダを前記トルク伝達軸のうちで軸方向に関して最も片側に位置する前記一方のトルク伝達部よりも軸方向片側に位置する部分に対し、それぞれ支持されており、
前記1対のセンサは、一方のセンサの検出部を前記一方のエンコーダの被検出部に、他方のセンサの検出部を前記他方のエンコーダの被検出部に、それぞれ対向させた状態で、使用時にも回転しない部分に支持され、それぞれ前記1対のエンコーダの被検出部のうち自身の検出部を対向させた部分の特性変化に対応して出力信号を変化させるものである、
トルク測定装置付回転伝達装置。
【請求項2】
前記他方のエンコーダが、前記トルク伝達軸のうちで軸方向に関して前記他方のトルク伝達部よりも軸方向片側に位置する部分に対して支持されている請求項1に記載したトルク測定装置付回転伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車用変速機に組み込んで、トルクを伝達すると共に、伝達するトルクの大きさを測定する為に利用する、トルク測定装置付回転伝達装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、自動車の高効率化、低燃費化を進めるべく、エンジンの最適な出力制御(ハイブリッドカーに於けるモータと同調した出力制御を含む)を行う為に、エンジンの出力トルクの大きさを測定する事が求められている。エンジンの出力トルクの大きさを測定する方法としては、例えば、エンジンの下流側に存在する何れかのトルク伝達部材により伝達されるトルクの大きさを測定する方法が考えられる。
【0003】
一方、従来、トルク伝達部材により伝達されるトルクの大きさを測定する方法として、トルク伝達部材の弾性的な捩れ変形量を1対のセンサの出力信号の位相差に変換し、この位相差に基づいてトルクの大きさを測定する方法が知られている。
【0004】
又、特許文献1には、この様な方法を利用して、自動車用変速機を構成するトルク伝達軸(インプットシャフト、カウンタシャフト等)により伝達されるトルクの大きさを測定する装置が記載されている。特に、この特許文献1に記載されたトルク測定装置の場合には、従来、トルク伝達軸の軸方向両側に離隔配置していた1対のセンサを、軸方向片側の1箇所にまとめて配置できる様にしている。この為に、前記トルク伝達軸の径方向内側に内軸を配置し、この内軸の軸方向一端部をこのトルク伝達軸の軸方向一端部に対して相対回転不能に連結すると共に、この内軸の軸方向他端部をこのトルク伝達軸の軸方向他端開口を通じて外部に突出させている。そして、この内軸の軸方向他端部と前記トルク伝達軸の軸方向他端部とに、互いに隣接配置した1対のエンコーダをそれぞれ支持固定すると共に、これら1対のエンコーダに、前記1対のセンサを対向させている。
【0005】
上述の様な従来構造の場合、前記トルク伝達軸にトルク入力部(例えば入力歯車の固定部)とトルク出力部(例えば出力歯車の固定部)とが1つずつ設けられている場合には、特に問題を生じる事はない。
しかしながら、例えばマニュアルトランスミッション(MT)を構成するトルク伝達軸の様に、トルク入力部(又はトルク出力部)が軸方向複数箇所に設けられており、選択されるギヤ段(1速、2速等の別)によって、何れのトルク入力部からトルクが入力されるか(又は何れのトルク出力部からトルクが出力されるか)が変化する場合には、次の様な問題を生じる。
【0006】
即ち、この場合には、選択されるギヤ段によって、捩れる部分(トルクが入力されるトルク入力部とトルクが出力されるトルク出力部との間部分)の軸方向長さが変化する為、同じ大きさのトルクを伝達する場合でも、選択されるギヤ段が変化すると、捩れ角も変化し、捩れ角とトルクとの関係が一意に定まらなくなる。
そして、この様なトルク伝達軸に対して、上述した様な従来構造を適用すべく、軸方向他端部に一方のエンコーダを支持固定した内軸の軸方向一端部を、当該トルク伝達軸の軸方向一端部に連結すると共に、他方のエンコーダを、当該トルク伝達軸の軸方向他端部に支持固定すると、選択されるギヤ段によって、1対のセンサの出力信号同士の位相差とトルクとの関係を表す変換係数が変化してしまう。従って、この様な場合に正確なトルク測定を行う為には、現在選択されているギヤ段に合わせて、前記変換係数を変更(補正)する制御を行う必要があり、トルク測定のシステムが煩雑になると言う問題がある。
又、複数のトルク入力部から同時にトルクが入力される(又は複数のトルク出力部から同時にトルクが出力される)場合には、それぞれのトルクによる捩れが合成される為、上述した従来構造では、前記変換係数を設定する事ができないと言う問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−29328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の様な事情に鑑み、内軸を備えたトルク測定装置付回転伝達装置に関して、トルク伝達軸の軸方向複数箇所にトルク入力部又はトルク出力部が存在する場合でも、1つの変換係数を使用して、正確なトルク測定を行える構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のトルク測定装置付回転伝達装置は、トルク伝達軸と、内軸と、1対のエンコーダと、1対のセンサとを備える。
このうちのトルク伝達軸は、軸方向複数箇所に、トルク入力部とトルク出力部とのうちの一方のトルク伝達部を、前記軸方向複数箇所よりも軸方向片側に位置する軸方向1箇所に、トルク入力部とトルク出力部とのうちの他方のトルク伝達部を、それぞれ有すると共に、径方向内側に軸方向に伸長する中心孔を有する。
又、前記内軸は、前記中心孔の内側に配置されると共に、前記トルク伝達軸のうちで、軸方向に関して最も片側に位置する前記一方のトルク伝達部から前記他方のトルク伝達部までの範囲のうち、前記他方のトルク伝達部に対し軸方向他側に離隔した部分に相対回転不能に連結されている。
又、前記1対のエンコーダは、それぞれの被検出部の特性を円周方向に関して交互に変化させたもので、{好ましくは、互いの被検出部を近接配置(例えば10mm以内、好ましくは5mm以内の間隔をあけて配置)した状態で、}一方のエンコーダを前記内軸に対し、他方のエンコーダを前記トルク伝達軸のうちで軸方向に関して最も片側に位置する前記一方のトルク伝達部よりも軸方向片側に位置する部分に対し、それぞれ支持されている。
又、前記1対のセンサは、一方のセンサの検出部を前記一方のエンコーダの被検出部に、他方のセンサの検出部を前記他方のエンコーダの被検出部に、それぞれ対向させた状態で、使用時にも回転しない部分に支持され、それぞれ前記1対のエンコーダの被検出部のうち自身の検出部を対向させた部分の特性変化に対応して出力信号を変化させるものである。
そして、前記1対のセンサの出力信号同士の間の位相差に基づいて、前記トルク伝達軸により伝達されるトルクを測定可能とする。
【0010】
尚、本発明を実施する場合、前記トルク伝達部(前記トルク入力部、前記トルク出力部)としては、例えば、前記トルク伝達軸の外周面又は内周面に、歯車、プーリ、スプロケット等をトルク伝達可能に係合させる為のスプライン部、キー係合部、嵌合面部、螺子部等を、直接形成する構成を採用できる他、歯車、プーリ、スプロケット等を、前記トルク伝達軸と一体に設けたり、或いは、別体として結合固定する構成を採用する事ができる。
【0011】
本発明のトルク測定装置付回転伝達装置を実施する場合には、例えば、前記他方のエンコーダを、前記トルク伝達軸のうちで軸方向に関して前記他方のトルク伝達部よりも軸方向片側に位置する部分に対して支持する事ができる。
【発明の効果】
【0012】
上述の様に構成する本発明のトルク測定装置付回転伝達装置によれば、トルク伝達軸の軸方向複数箇所に位置する一方のトルク伝達部のうちの何れのトルク伝達部を通じてトルク伝達が行われる(前記トルク伝達軸に対し、トルクが入力される、又は、トルクが出力される)場合でも、1対のセンサの出力信号同士の位相差とトルクとの関係を表す変換係数を変更(補正)する事なく、前記トルク伝達軸により伝達されるトルクを正確に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態の第1例を示す断面模式図。
図2】本発明の実施の形態の第2例を示す、図1と同様の図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施の形態の第1例]
本発明の実施の形態の第1例に就いて、図1を参照しつつ説明する。
本例のトルク測定装置付回転伝達装置は、例えば自動車用変速機に組み込んで使用するもので、カウンタシャフトとして機能するトルク伝達軸1と、複数個(図示の例では3個)の入力歯車2a、2b、2cと、1個の出力歯車3と、1対の転がり軸受4a、4bと、内軸5と、1対のエンコーダ6a、6bと、1対のセンサ7a、7bとを備える。
尚、本例に関する以下の説明中、軸方向に関して「片側」とは、図1に於ける右側を言い、軸方向に関して「他側」とは、図1に於ける左側を言う。
【0015】
前記トルク伝達軸1は、円管状の中空軸であり、径方向内側に軸方向に伸長する中心孔8を有する。この中心孔8は、軸方向片半部に設けられた断面円形の大径孔部9と、軸方向他半部に設けられた断面円形の小径孔部10との、互いの軸方向端部同士を、軸方向中央部に設けられたテーパ孔部11により連続させて成る。又、前記トルク伝達軸1の外周面のうち、前記小径孔部10の径方向外側に位置する、軸方向他端寄り部分の軸方向複数箇所(図示の例では3箇所)には、それぞれトルクを入力する部分であるトルク入力部12a、12b、12cが設けられている。又、前記トルク伝達軸1の外周面のうち、前記大径孔部9の径方向外側に位置する、軸方向片端寄り部分の軸方向1箇所には、トルクを出力する部分であるトルク出力部13が設けられている。
【0016】
前記複数個の入力歯車2a、2b、2cは、前記軸方向複数箇所のトルク入力部12a、12b、12cに1個ずつ、トルク伝達を可能に(例えば、スプライン係合により、又は、シンクロメッシュ機構を介してトルク伝達の可否の切り換えを可能に)外嵌支持されている。
前記1個の出力歯車3は、前記軸方向1箇所のトルク出力部13に、トルク伝達を可能に(例えば、スプライン係合により)外嵌支持されている。
【0017】
前記1対の転がり軸受4a、4bは、図示しないミッションケースに対して前記トルク伝達軸1を回転可能に支持する為のもので、このトルク伝達軸1の軸方向両端部(前記トルク入力部12a、12b、12c及び前記トルク出力部13の全体を軸方向両側から挟む位置)に外嵌支持されている。本例の場合、前記1対の転がり軸受4a、4bはそれぞれ、前記トルク伝達軸1の軸方向両端部に外嵌固定された回転輪である内輪14と、前記ミッションケースに内嵌固定される静止輪である外輪15と、前記内輪14の外周面に設けられた深溝型の内輪軌道と前記外輪15の内周面に設けられた深溝型の外輪軌道との間にそれぞれ図示しない保持器により保持された状態で転動自在に設けられた複数個の玉16、16とを備えた、深溝玉軸受である。但し、本発明を実施する場合、前記1対の転がり軸受4a、4bとしては、それぞれアンギュラ玉軸受、円筒ころ軸受、円すいころ軸受等の、他の種類のものを使用する事もできる。
【0018】
又、前記内軸5は、炭素鋼の如き合金鋼又は合成樹脂により略円柱状(又は円管状)に造られたもので、前記トルク伝達軸1の中心孔8を構成する大径孔部9の内側に、このトルク伝達軸1と同心(同軸)に配置されている。又、前記内軸5は、軸方向他端部に設けた大径部17を、前記大径孔部9の軸方向他端部の内周面に、締り嵌めによる内嵌又はスプライン係合等により相対回転不能に連結すると共に、軸方向片端部を、前記トルク伝達軸1の軸方向片端開口から軸方向片側に突出させている。又、本例の場合、前記内軸5の軸方向他端部(前記大径部17)が、前記トルク伝達軸1のうちで、軸方向に関して最も片側に位置するトルク入力部12aと、前記トルク出力部13との間部分に位置している。具体的には、本例の場合、前記内軸5の軸方向他端部(前記大径部17)は、前記トルク伝達軸1のうちで、軸方向に関して最も片側に位置するトルク入力部12aから前記トルク出力部13までの範囲Xのうち、このトルク出力部13に対し軸方向他側に寸法Lだけ離隔した部分に、相対回転不能に連結されている。又、本例の場合には、前記内軸5のうち、前記大径部17から軸方向に外れた部分の外周面と、前記トルク伝達軸1の中心孔8(前記大径孔部9)の内周面との間部分には、軸方向全長且つ全周に亙って、隙間(微小隙間)が設けられている。この間部分には、潤滑油を充満させて、フィルムダンパとして機能させる事もできる。
【0019】
前記1対のエンコーダ6a、6bのうちの一方のエンコーダ6aは、前記内軸5の軸方向片端部に外嵌固定されている。換言すれば、前記一方のエンコーダ6aは、前記内軸5を介して、前記トルク伝達軸1の軸方向中間部(前記大径部17を回転不能に連結した部分)に間接的に取り付けられている。この為、前記一方のエンコーダ6aは、前記トルク伝達軸1の軸方向中間部と共に(同期して)回転可能である。これに対して、前記1対のエンコーダ6a、6bのうちの他方のエンコーダ6bは、前記トルク伝達軸1の軸方向片端部のうち、軸方向片側の転がり軸受4aよりも軸方向片側に突出した部分(前記トルク出力部13よりも軸方向片側に位置する部分)に外嵌固定されている。この為、前記他方のエンコーダ6bは、前記トルク伝達軸1の軸方向片端部のうち、軸方向片側の転がり軸受4aよりも軸方向片側に突出した部分と共に(同期して)回転可能である。
【0020】
前記一方のエンコーダ6aの外周面は、被検出部18となっており、又、前記他方のエンコーダ6bの外周面は、被検出部19となっている。これら両被検出部18、19は、互いの直径が等しく、互いに同軸に、且つ、軸方向に隣り合う状態で近接(例えば軸方向に10mm以内、好ましくは5mm以内の間隔をあけて)配置されている。又、前記両被検出部18、19には、それぞれS極とN極とが、円周方向に関して交互に且つ等ピッチで配置されており、磁気特性を円周方向に関して交互に且つ等ピッチで変化させている。前記両被検出部18、19の磁極(S極、N極)の総数は、互いに等しくなっている。
【0021】
前記1対のセンサ7a、7bは、合成樹脂製のホルダ20に包埋される事により、センサユニット21を構成している。前記1対のセンサ7a、7bのそれぞれの検出部には、ホール素子、ホールIC、MR素子(GMR素子、TMR素子、AMR素子を含む)等の磁気検出素子が組み込まれている。前記センサユニット21は、前記1対のセンサ7a、7bのうちの一方のセンサ7aの検出部を前記一方のエンコーダ6aの被検出部18に、他方のセンサ7bの検出部を前記他方のエンコーダ6bの被検出部19に、それぞれ近接対向させた状態で、軸方向片側の転がり軸受4aを構成する、使用時にも回転しない静止輪である外輪15に支持固定されている。この為、前記一方のセンサ7aは、前記一方のエンコーダ6aの被検出部18の磁気特性変化に対応して出力信号を変化させ、又、前記他方のセンサ7bは、前記他方のエンコーダ6bの被検出部19の磁気特性変化に対応して出力信号を変化させる。本例の場合には、この様な1対のセンサ7a、7bの出力信号を、前記センサユニット21から引き出された図示しない1本のハーネスを通じて、図示しない演算器に送信する。
【0022】
上述の様な構成を有する本例のトルク測定装置付回転伝達装置の場合、前記1対のセンサ7a、7bの出力信号は、前記トルク伝達軸1と共に前記1対のエンコーダ6a、6bが回転する事に伴い、それぞれ周期的に変化する。ここで、この変化の周波数(及び周期)は、前記トルク伝達軸1の回転速度に見合った値をとる。従って、これら周波数(又は周期)と回転速度との関係を予め調べておけば、この周波数(又は周期)に基づいて、この回転速度を求められる。
【0023】
又、前記トルク伝達軸1によりトルクを伝達する際には、前記各トルク入力部12a、12b、12cと前記トルク出力部13との間部分が弾性的に捩れ変形する事に伴い、前記1対のエンコーダ6a、6b同士が回転方向に相対変位する。そして、この様に1対のエンコーダ6a、6b同士が回転方向に相対変位する結果、前記1対のセンサ7a、7bの出力信号同士の間の位相差比(=位相差/1周期)が変化する。従って、この位相差比と前記トルク伝達軸1により伝達されるトルクとの関係を予め調べておけば、この位相差比に基づいて、このトルクを求められる。
【0024】
尚、前記トルク伝達軸1に関しては、何れのトルク入力部12a、12b、12cにトルクが入力されるか(変速機に関して何れのギヤ段が選択されるか)によって、弾性的に捩れ変形する部分(実際にトルクが入力されるトルク入力部と前記トルク出力部13との間に挟まれた部分)の軸方向長さが変化する為、同じ大きさのトルクであっても、このトルクが何れのトルク入力部12a、12b、12cに入力されるかによって、弾性的に捩り変形する量が変化する。従って、例えば、前記一方のエンコーダ6aを支持した内軸5の軸方向他端部の連結位置と、前記他方のエンコーダ6bの支持位置とを、前記複数のトルク入力部12a、12b、12cの全体を軸方向両側から挟む位置に設けると、何れのトルク入力部12a、12b、12cにトルクが入力されるか(何れのギヤ段が選択されるか)によって、前記トルクと前記位相差比との関係を表す変換係数が変わってしまう。従って、この様な場合には、現在選択されているギヤ段に合わせて、前記トルクと前記位相差比との関係を変更する制御を行う事が必要となり、トルク測定のシステムが煩雑化する。更に、この場合、複数のトルク入力部12a、12b、12cから同時にトルクが入力されると、それぞれのトルクによる捩れが合成される為、前記変換係数を設定する事ができなくなる。
【0025】
これに対して、本例の場合、前記一方のエンコーダ6aを支持した内軸5の軸方向他端部(前記大径部17)は、前記トルク伝達軸1のうちで、軸方向に関して最も片側に位置するトルク入力部12aから前記トルク出力部13までの範囲Xのうち、このトルク出力部13に対し軸方向他側に寸法Lだけ離隔した部分に連結されている。又、前記他方のエンコーダ6bは、前記トルク伝達軸1のうち、前記トルク出力部13よりも軸方向片側に位置する部分に支持されている。この為、本例の場合には、何れのトルク入力部12a、12b、12cにトルクが入力される場合でも、測定される捩れ量は、常に、前記内軸5の軸方向他端部の連結部と前記トルク出力部13との間部分(寸法Lに相当する部分)の捩れ量となる。従って、本例の場合には、トルクが入力されるトルク入力部12a、12b、12cが変わっても、捩れる部分の軸方向長さ(L)は変わらず、前記トルク伝達軸1により伝達されるトルクと前記位相差比との関係(変換係数)として、1つのものを使用できる。又、複数のトルク入力部12a、12b、12cから同時にトルクが入力された場合でも、前記トルク伝達軸1により伝達されるトルクを正確に測定できる。
【0026】
[実施の形態の第2例]
本発明の実施の形態の第2例に就いて、図2を参照しつつ説明する。
本例のトルク測定装置付回転伝達装置の場合、トルク伝達軸1は、自動車用変速機のインプットシャフトとして機能する。
この様な本例のトルク測定装置付回転伝達装置の場合には、上述した実施の形態の第1例のトルク測定装置付回転伝達装置(図1参照)に於いて、トルク伝達軸1の外周面のうち、複数のトルク入力部12a、12b、12cが設けられていた箇所に、複数のトルク出力部13a、13b、13cが設けられており、又、1つのトルク出力部13が設けられていた箇所に、1つのトルク入力部12が設けられている。
そして、本例の場合には、複数個の出力歯車3a、3b、3cが、前記軸方向複数箇所のトルク出力部13a、13b、13cに1個ずつ、トルク伝達を可能に(例えば、スプライン係合により、又は、シンクロメッシュ機構を介してトルク伝達の可否の切り換えを可能に)外嵌支持されている。又、1個の入力歯車2が、前記軸方向1箇所のトルク入力部12に、トルク伝達を可能に(例えば、スプライン係合により)外嵌支持されている。
【0027】
上述の様な構成を有する本例のトルク測定装置付回転伝達装置の場合も、上述した実施の形態の第1例の場合と同様の理由により、何れのトルク出力部13a、13b、13cからトルクが出力される場合でも、測定される捩れ量は、常に、内軸5の軸方向他端部(大径部17)の連結部と前記トルク入力部12との間部分(寸法Lに相当する部分)の捩れ量となる。従って、本例の場合には、トルクが出力されるトルク出力部13a、13b、13cが変わっても、捩れる部分の軸方向長さ(L)は変わらず、前記トルク伝達軸1により伝達されるトルクと1対のセンサ7a、7bの出力信号同士の位相差比との関係(変換係数)として、1つのものを使用できる。又、複数のトルク出力部13a、13b、13cから同時にトルクが出力された場合でも、前記トルク伝達軸1により伝達されるトルクを正確に測定できる。
その他の構成及び作用は、上述した実施の形態の第1例の場合と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明のトルク測定装置付回転伝達装置を変速機に組み込んで使用する場合、この変速器の種類は、特に問わない。
又、本発明のトルク測定装置付回転伝達装置は、変速機以外の装置に組み込んで使用する事もできる。
【符号の説明】
【0029】
1 トルク伝達軸
2、2a、2b、2c 入力歯車
3、3a、3b、3c 出力歯車
4a、4b 転がり軸受
5 内軸
6a、6b エンコーダ
7a、7b センサ
8 中心孔
9 大径孔部
10 小径孔部
11 テーパ孔部
12、12a、12b、12c トルク入力部
13、13a、13b、13c トルク出力部
14 内輪
15 外輪
16 玉
17 大径部
18 被検出部
19 被検出部
20 ホルダ
21 センサユニット
図1
図2