(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、
図1〜
図4を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、内燃機関60と、この内燃機関60を電気的に制御する制御装置としてのECM30(Electronic Control Module)を示している。
【0012】
図1において、本発明の実施形態に係る車載装置を搭載した車両50は、図示しない内燃機関等に配置された複数のセンサ類と、車載装置としてのECM30と、を含んで構成されている。
【0013】
車両50はアクセルポジションセンサ11を備えており、このアクセルポジションセンサ11は、図示しないアクセルペダルの位置(踏み込み量)を検出し、検出信号をアクセル開度としてECM30に送信する。
【0014】
車両50はスロットルポジションセンサ12を備えており、このスロットルポジションセンサ12は、図示しないスロットルバルブの位置(スロットル開度)を検出し、検出信号をECM30に送信する。
【0015】
車両50は車速センサ13を備えており、この車速センサ13は、図示しないドライブシャフトの回転速度に基づく車速(車両速度)を検出し、検出信号をECM30に送信する。
【0016】
車両50はクランク角センサ14を備えており、このクランク角センサ14は、内燃機関の図示しないクランクシャフトの回転角度に基づくエンジン回転数を検出し、検出信号をECM30に送信する。
【0017】
車両50はカム角センサ15を備えており、このカム角センサ15は、内燃機関の図示しないカムシャフトの回転角度を検出し、検出信号をECM30に送信する。
【0018】
車両50はエアフローセンサ16を備えており、このエアフローセンサ16は、図示しない吸気管を通ってエンジンに吸気される空気の吸気量を検出し、検出信号をECM30に送信する。
【0019】
車両50は吸気管圧力センサ17を備えており、吸気管圧力センサ17は、図示しない吸気管の内部の圧力を検出し、検出信号をECM30に送信する。
【0020】
車両50は油温センサ18を備えており、この油温センサ18は、内燃機関を流通するエンジンオイルの温度(油温)を検出し、検出信号をECM30に送信する。
【0021】
車両50は冷却水温センサ19を備えており、この冷却水温センサ19は、内燃機関を流通する冷却水の温度(冷却水温)を検出し、検出信号をECM30に送信する。
【0022】
車両50は吸気温センサ20を備えており、この吸気温センサ20は、図示しない吸気管を通ってエンジンに吸気される空気の吸気温度を検出し、検出信号をECM30に送信する。
【0023】
車両50はブレーキセンサ21を備えており、このブレーキセンサ21は、図示しないブレーキペダルの位置(踏み込み量)を検出し、検出信号をECM30に送信する。
【0024】
車両50はABS(Antilock Brake System)22を備えており、このABS22は、図示しない車輪のロックを防止するように作動し、作動に関する信号をECM30に送信する。
【0025】
車両50はエアバッグ23を備えており、このエアバッグ23は、図示しない操舵輪等に設けられており、車両の衝突時に展開する。エアバッグ23は、作動に関する信号をECM30に送信する。
【0026】
車両50はGセンサ24を備えており、このGセンサ24は、車両50の加速度を検出して検出信号をECM30に送信する。
【0027】
車両50はシフトポジションセンサ25を備えており、このシフトポジションセンサ25は、図示しないシフトレバーの位置に基づく変速段の位置を検出し、検出信号をECM30に送信する。
【0028】
ECM30は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えるマイクロコンピュータを含んで構成されている。CPUは、RAMの一時記憶機能を利用するとともにROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うようになっている。ROMには、各種制御定数や各種マップ等が予め記憶されている。
【0029】
ECM30は、前述のセンサ類から受け取った信号に基づいて、内燃機関60等の運転状態を電気的に制御するようになっている。
【0030】
本実施形態では、ECM30は、各種のセンサ類から入力された各項目のパラメータ(運転状態)を監視、取得および記憶するデータロガーとしての機能も備えている。本実施形態のECM30は、本発明における車載装置を構成している。
【0031】
このデータロガーとしての機能を実現するため、ECM30は、監視部31、取得部32および記憶部33を備えている。
【0032】
監視部31は、車両の状態に関する複数項目のパラメータを監視するようになっている。
【0033】
取得部32は、監視部31が監視するパラメータにおいて所定条件が成立した場合に、所定条件毎に予め記憶対象として選択された項目のパラメータを取得するようになっている。記憶対象とするパラメータの項目として、異常への関連性が大きい項目、パラメータの値の変化度合が大きい項目、解析の際の有用度が高い項目、が予め選択されている。パラメータの値の変化度合が大きいものは、異常への寄与度合、または寄与する可能性が高い。
【0034】
詳しくは、取得部32は、所定条件が成立した場合に、所定条件の成立時を含む前後の期間において、パラメータを取得するようになっている。
【0035】
より詳しくは、取得部32は、所定条件が成立した場合に、記憶対象として選択された項目毎に予め設定された取得間隔で、パラメータを取得するようになっている。
【0036】
ここで、所定条件とは、故障や不調に関わる運転条件だけでなく、アクセルペダルの急激な踏み込み等の、通常とは異なる運転状態を含んでいる。例えば、所定条件は、アクセル開度、ブレーキストローク量またはスロットル開度の何れか一つの項目のパラメータが、所定時間で所定量以上変化したことである。
【0037】
取得部32は、監視対象となるパラメータの項目と、所定条件の種類と、所定条件の成立時に取得するパラメータの項目と、パラメータの取得間隔とを定めたテーブル(
図3参照)を備えている。
【0038】
図3において、テーブルには、所定条件の種類として、アクセル開度、ブレーキストローク量、速度、冷却水温度、吸入空気温度、吸入空気量、オルタネータ電圧、スロットル開度、等が設定されている。
【0039】
また、テーブルには、所定条件の成立時に記憶対象として取得するパラメータの項目として、アクセル開度、ブレーキストローク量、速度、冷却水温度、吸入空気温度、吸入空気量、オルタネータ電圧、スロットル開度、等が設定されている。
【0040】
また、テーブルには、パラメータの取得間隔がミリ秒の単位で設定されている。
【0041】
例えば、このテーブルにおいて、所定条件の種類がアクセル開度である場合、所定条件の成立時に取得するパラメータの項目は、アクセル開度、ブレーキストローク量、速度となっている。また、アクセル開度、ブレーキストローク量、速度のパラメータの取得間隔は、何れも5msとなっている。
【0042】
取得部32は、所定条件の種類がアクセル開度である場合、このアクセル開度が所定時間で所定量以上変化した場合に所定条件が成立したと判断する。そして、取得部32は、アクセル開度、ブレーキストローク量、速度のパラメータをそれぞれ5msの取得間隔で取得する。
【0043】
記憶部33は、取得部32によって取得されたパラメータを記憶するようになっている。
【0044】
また、ECM30は、このデータロガーとしてのより優れた機能を実現するため、優先度設定部34を備えている。
【0045】
優先度設定部34は、所定条件を成立させたパラメータの変化度合が大きいほど、優先度としてのサンプリングレベルを大きくなるように設定する。
【0046】
優先度設定部34は、サンプリングレベルを設定する際に参照するテーブル(
図4参照)を備えている。
【0047】
図4のテーブルにおいて、パラメータの変化度合D[%]が10から100まで大きくなるほど、サンプリングレベル(優先度)が1から10まで大きくなるように設定されている。ここで、変化度合Dは、パラメータの値をXとしたとき、△Xt/Xtの数式から求めることができる。ここで、△Xtは、時間当りのXの変化量である。なお、△Xtを変化度合Dとして採用してもよい。
【0048】
また、記憶部33は、取得部32によって取得されたパラメータと、優先度設定部34で設定されたサンプリングレベルとを、互いに紐付けて記憶する。
【0049】
なお、パラメータに紐付ける情報は、所定条件の成立時の時刻、または場所であってもよい。所定条件の成立時の時刻は、例えば、ECM30の図示しない内蔵時計、または図示しない電波時計、GPS(カーナビゲーションシステム)から取得できる。所定条件の成立時の場所は、例えばGPSから取得できる。
【0050】
また、記憶部33は、サンプリングレベルが大きいパラメータほど、サンプリングレベルが小さいパラメータより長い期間に渡って保存するように、パラメータの上書きを行うようになっている。
【0051】
取得部32は、記憶対象の項目のパラメータを、所定条件を成立させたパラメータとの関連が大きいほど、短い取得間隔で取得するようになっている。
【0052】
図3において、所定条件の種類が冷却水温度である場合、所定条件の成立時の取得対象は、速度、冷却水温度、吸入空気温度、吸入空気量である。そして、速度、冷却水温度、吸入空気温度、吸入空気量の取得間隔は、それぞれ20ms、50ms、100ms、100msに設定されている。
【0053】
このように、冷却水温度との関連が大きい速度は、短い取得間隔に設定され、冷却水温度との関連が小さい吸入空気温度および吸入空気量は、長い取得間隔に設定されている。
【0054】
したがって、所定条件の種類が冷却水温度である場合、取得部32は、冷却水温度との関連が大きい速度を、短い取得間隔で取得する。
【0055】
記憶部33は、優先度設定部34によって設定されたサンプリングレベルを、記憶後の所定時間が経過するごとに小さくするようになっている。
【0056】
次に、
図2を参照して、本実施形態に係る車載装置においてECM30により実行されるサンプリング動作について説明する。
【0057】
図2において、ECM30は、記憶部33に記憶されている各パラメータを参照し、パラメータの記憶後の保存期間が"サンプリングレベル(優先度)の更新所定期間(以下、更新所定期間という)"を経過したか否かを判別する(ステップS1)。
【0058】
ステップS1で更新所定期間を経過したと判別した場合、ECM30は、サンプリングレベルを更新する(ステップS2)。ここでは、ECM30は、更新所定時間を経過したパラメータのサンプリングレベルを1段階低下させる。
【0059】
ステップS1で更新所定期間を経過していない判別した場合、ECM30は、ステップS3に進む。
【0060】
ステップS2の後、ECM30は、各種パラメータを更新する(ステップS3)。ここでは、ECM30は、監視対象のパラメータの値を最新の値に更新する。
【0061】
ステップS3の後、ECM30は所定条件が成立したか否かを判別する(ステップS4)。ここでは、ECM30は、例えば、アクセル開度(アクセルペダルの踏み込み量)が所定量以上変化した場合に所定条件が成立したと判別する。ステップS4で所定条件が成立していない判別した場合、ECM30は、ステップS3に戻る。
【0062】
ステップS4で所定条件が成立したと判別した場合、ECM30は、データ取得処理を実施する(ステップS5)。ここでは、ECM30は、データ取得処理として、所定条件の成立時を含む期間において、所定条件毎に予め記憶対象として選択された項目のパラメータを、項目毎に予め設定された取得間隔で取得する。例えば、アクセル開度についての所定条件が成立している場合、ECM30は、アクセル開度、ブレーキストローク量、速度を記憶対象として、それぞれ5msの取得間隔で取得する。
【0063】
次いで、ECM30は、サンプリングレベルを算出する(ステップS6)。この例では、ECM30は、アクセル開度の変化度合Dに応じてサンプリングレベルを算出する。
【0064】
次いで、ECM30は、記憶部33の残り容量が所定容量以下であるか否かを判別する(ステップS7)。
【0065】
ステップS7で所定容量以下であると判別した場合、ECM30は、サンプリングレベルが最少のデータを削除する(ステップS8)。これにより、記憶部33に既に記憶されているパラメータのうち、保存期間が長くサンプリングレベルが低くなったパラメータから削除される。
【0066】
ステップS7で所定容量以下ではないと判別した場合、ECM30は、ステップS9に進む。
【0067】
ステップS8の後、ECM30は、サンプリングデータを保存する(ステップS9)。このステップS9では、ECM30は、ステップS5で取得したパラメータと、ステップS6で算出されたサンプリングレベルとを、互いに紐付けて記憶部33に記憶させる。
【0068】
次いで、ECM30は、イグニッションスイッチ(図中、IGと記す)がオフであるか否かを判別する(ステップS10)。
【0069】
ステップS10でイグニッションスイッチがオフではないと判別した場合、ECM30は、ステップS3に戻る。
【0070】
ステップS10でイグニッションスイッチがオフであると判別した場合、ECM30は、
図2のフローチャートを終了する。
【0071】
以上説明したように、本実施形態において、ECM30は、車両の状態に関する複数項目のパラメータを監視する監視部31と、監視部31が監視するパラメータにおいて所定条件が成立した場合に、所定条件の成立時を含む期間において、所定条件毎に予め記憶対象として選択された項目のパラメータを、項目毎に予め設定された取得間隔で取得する取得部32と、取得部32によって取得されたパラメータを記憶する記憶部33と、を備えている。
【0072】
この構成により、パラメータの項目に応じて取得間隔を予め適切に設定しておくことにより、所定条件の1回の成立に伴って記憶部33に記憶されるパラメータの情報量を少なくし、記憶部33の記憶容量を効率的に使用できる。
【0073】
これにより、少ない情報量で多くの運転状態を記憶できる。そして、少ない情報量で多くの運転状態を記憶できるため、記憶部33が容量オーバーとなってデータが上書きされることを防止できる。また、車両の状態に関して所定条件が成立した原因を適切に解析することができる。
【0074】
また、本実施形態において、ECM30は、所定条件を成立させたパラメータの変化度合が大きいほど大きくなるようにサンプリングレベル(優先度)を設定する優先度設定部34を備えることが好ましい。
【0075】
この場合、記憶部33は、取得部によって取得されたパラメータを、優先度設定部34で設定されたサンプリングレベルとを、互いに紐付けて記憶する。そして、記憶部33は、サンプリングレベルが大きいパラメータほど、サンプリングレベルが小さいパラメータより長い期間に渡って保存するように、パラメータの上書きを行っている。
【0076】
この構成により、記憶部33の残容量が少なくなった場合に、パラメータの上書き時に、優先度が小さいパラメータを削除し、優先度が大きいパラメータを長い期間に渡って保存できる。
【0077】
また、本実施形態において、取得部32は、記憶対象の項目のパラメータを、所定条件を成立させたパラメータとの関連が大きいほど、短い取得間隔で取得する。
【0078】
この構成により、所定条件を成立させたパラメータとの関連が大きい項目のパラメータは、解析の際の有用度が高いため、短い取得間隔による詳細な経時変化を記憶できる。一方、所定条件を成立させたパラメータとの関連が小さい項目のパラメータは、解析の際の有用度が低いため、長い取得間隔による少ない情報量にして、記憶容量の負担を少なくできる。
【0079】
また、本実施形態において、記憶部33は、優先度設定部34によって設定された優先度を、記憶後の所定時間が経過するごとに小さくしている。
【0080】
この構成により、記憶後の所定時間の経過ごとにパラメータの優先度が小さくなるため、パラメータの上書きの際に、記憶後の期間が長いパラメータから削除できる。
【0081】
また、本実施形態において、所定条件は、アクセル開度、ブレーキストローク量またはスロットル開度の何れか一つの項目のパラメータが、所定時間で所定量以上変化したことである。
【0082】
この構成により、車両の走行に影響がある項目のパラメータであって、かつ、ドライバの操作に関する項目のパラメータについて記憶することで、通常とは異なる運転状態により所定条件が成立したときのパラメータを詳細に確認することができる。
【0083】
上述の通り、本発明の実施形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。例えば、ECM30内の記憶部33に代えて、ECM30外のフラッシュカード等の外部メモリ40に、パラメータを記憶させてもよい。また、取得部32による取得対象(記憶対象)は、図示しないドライブレコーダーからの映像であってもよい。