(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.第1実施形態]
[1−1.構成]
本開示が適用された通信システム1は、例えば乗用車等の車両に搭載され、電波を用いた無線通信を行うことによって、緊急通報や非常通報等の通信を行うよう構成されたシステムである。なお、通信システム1が搭載された車両を自車両ともいう。
【0012】
詳細には、
図1に示すように、通信システム1は、通信装置10と、複数のassy41〜45とを備える。ここで、assyとはassemblyの略であり、複数のパーツから構成されるユニットを示す。特に本実施形態でのassyは電子制御装置(ECU)を含む構成を示す。
【0013】
複数のassyとしては、メータECU41、ナビゲーションECU42、ソナーECU43、オーディオECU44、ライトECU45等を備える。複数のassyはそれぞれ、通信線5に接続されており、通信線5を介して通信装置10や他のassyと通信を行う機能を備える。
【0014】
特に、メータECU41は、通信線5を流れるデータに基づいてメータへの表示を行う周知の機能を有する。メータECU41は、警告灯を表示させたときにはその旨を通信線5に対して送出する。また、メータECU41は、自車両の総走行距離等の自車両の移動距離を示す情報を通信線5に対して送出する。
【0015】
ナビゲーションECU42は、自車両の位置を検知し、自車両を目的地まで案内する周知の機能を有する。ナビゲーションECU42は、自車両の位置を通信線5に対して送出する。
【0016】
ソナーECU43は、音波を送受信するソナーを用いて自車両の周囲の物体の位置を検知する周知の機能を有する。ソナーECU43は、周囲の物体の位置に関する情報を通信線5に対して送出する。
【0017】
オーディオECU44は、ラジオやテレビ等の電波を復調することによって得られる音声や画像をスピーカやディスプレイを介して乗員に提供する周知の機能を有する。オーディオECU44は、ラジオやテレビにおける電波状況を認識し、この電波状況を通信線5に対して送出する。
【0018】
ライトECU45は、周知の照度センサを用いて自車両の周囲の照度を検知し、この照度に応じてライトのオン・オフ、或いはその明るさを制御する周知の機能を有する。ライトECU45は、照度に関する情報を通信線5に対して送出する。
【0019】
通信装置10は、制御部20と、無線通信モジュール25とを備える。無線通信モジュール25は、無線通信を行うための無線基地局であって例えば携帯電話の基地局として構成された基地局30を介して、予め設定された通信相手と通信を行う機能を有する。無線通信モジュール25は、例えば、事故時等の非常時に、非常時における対処方法等のアドバイスを行ったり、データの収集を行ったりする通報センタ35と通信を行う。
【0020】
無線通信モジュール25は、制御部20からの指示を受けると、通報センタ35との通信を確立させる。この際、通報センタ35との通信の確立に失敗すると、無線通信モジュール25は、所定回数(例えば5回)だけ通信が確立できるようリトライする。無線通信モジュール25は、周知の規格において規定されるタイマ3402(26)を備えており、所定回数連続して通信の確立に失敗すると、制御部20からの指令によりタイマ3402(26)が起動する。
【0021】
このタイマ3402(26)が予め設定された不通信時間(例えば、12分間)を刻むまで、無線通信モジュール25は通報センタ35に対して通信を確立する作動が禁じられる。ただし、無線通信モジュール25は、不通信時間が経過する前であっても、無線通信モジュール25が再起動される等によりタイマ3402(26)がリセットされると通信を確立する作動が実施可能となる。
【0022】
制御部20は、CPU21と、RAM、ROM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ(以下、メモリ22)と、を有する周知のマイクロコンピュータを中心に構成される。制御部20の各種機能は、CPU21が非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。非遷移的実体的記録媒体とは、一般的な記録媒体から電波を除いたものを示す。この例では、メモリ22が、プログラムを格納した非遷移的実体的記録媒体に該当する。また、このプログラムの実行により、プログラムに対応する方法が実行される。なお、制御部20を構成するマイクロコンピュータの数は1つでも複数でもよい。
【0023】
制御部20は、CPU21がプログラムを実行することで実現される機能の構成として、後述する通報処理として機能を備える。すなわち、無線通信モジュール25を制御する機能、および通信線5を介して他の装置と通信する機能等を備える。制御部20を構成するこれらの要素を実現する手法はソフトウェアに限るものではなく、その一部または全部の要素を、論理回路やアナログ回路等を組み合わせたハードウェアを用いて実現してもよい。
【0024】
[1−2.処理]
次に、制御部20が実行する通報処理について、
図2のフローチャートを用いて説明する。通報処理は、通信イベントが発生したとき通信相手に対する通信を確立させ、通信相手に通報を行う処理である。また、通報処理は、通信の確立に失敗すると、その後、電波状態値が変化したかどうかを判定し、電波状態値が変化すると、通信を確立させないようにする作動を停止させ、通信を確立できる状態にする処理である。なお、電波状態とは、電波の状態を表し、通信装置10と基地局30とが互いに通信できるか否かによって状態の良し悪しが決められる。電波状態は、例えば、遮蔽物の有無、電波強度、受信感度等によって変化する。
【0025】
通報処理は、例えば車両の電源が投入されると開始され、その後、繰り返し実施される処理である。具体的には、通報処理では、
図2に示すように、S110にて、通信イベントが発生したか否かを判定する。
【0026】
通信イベントとは、無線通信モジュール25に通信をさせるトリガとなる事象を示し、例えば、警告灯が表示されたこと、エアバッグが作動したこと、所定値以上の加速度が検知されたこと、のような事象を示す。その他、事故が発生したことが推定される事象であってもよい。通信イベントが発生していなければ、通報処理を始めから繰り返す。
【0027】
また、通信イベントが発生していれば、S120にて、アタッチが成功したか否かを判定する。ここで、アタッチとは、基地局30を含むネットワークにおいて通信装置10が通信可能な状態になるよう試みることを示し、「通信を確立する」作動と同義である。また、「アタッチが成功した」とは、通信装置10がこのネットワークにおいて通信可能な状態に遷移したことを示す。つまり、通信装置10と通信相手となる通報センタ35との間の通信が確立された状態になったことを示す。
【0028】
アタッチに成功していれば、S130にて、イベント内容に従った通信を行う。例えば、事故が発生した場合には、自車両の位置の情報を通報センタ35に通知する。
アタッチに失敗していれば、S140にて、アタッチに連続して失敗した回数を判定する。アタッチに連続して失敗した回数が4回以内であれば、S120の処理に戻る。また、アタッチに連続して失敗した回数が5回以上であれば、S150にて、タイマ3042を起動させる。タイマ3042が起動すると、無線通信モジュール25はアタッチを実施できなくなる。
【0029】
続いて、S160にて、緊急通報を行うか否かを判定する。緊急通報とは、通信イベントのうちのより緊急度が高い事象を示し、例えば、事故が発生した場合の通報等を示す。
緊急通報を行う場合には、後述するS190の処理に移行する。また、緊急通報を行わない場合には、S170にて、状態変化情報があるか否かを判定する。ここで、状態変化情報とは、無線通信モジュール25と基地局30との間の電波状態が変化した可能性があることを示す情報を表す。例えば、電波状態値が変化したことを表す。電波状態値とは、無線通信モジュール25と基地局30との間の電波状態に応じた値を表す。
【0030】
状態変化情報には、例えば
図3に示すパターンAのように、車速センサから得られる車速信号である車速パルスが検知されたことが含まれうる。ただし、例えば
図3においてパターンBとして示すように、ナビゲーション装置から得られる車両位置信号から推定される自車両の移動距離が予め設定された距離に到達したことや、パターンCとして示すように、パターンBとその他の事象であるαとの組み合わせとしてもよい。
【0031】
また、αとしては、
図4に示すように、自車両の位置情報が変化したこと、自車両の回転角速度を示すジャイロ情報が変化したこと、ラジオやテレビの電波強度を示すオーディオ電波強度が変化したこと、自車両が無線LANを搭載している場合、無線LANにおける電波強度を表すRSSIが変化したこと、照度センサにて検知される照度が変化したこと、ソナーにおける周囲の物体の検知状態が変化したこと等が挙げられる。つまり、電波状態が改善した可能性を、自車両の移動や電波状態の変化等から推定できればよい。
【0032】
状態変化情報があれば、S190にて、タイマ3402を解除する。タイマ3402を解除するには、例えば、無線通信モジュール25を再起動することによってタイマ3402をリセットすればよい。この処理によって、無線通信モジュール25が通信可能になり、早期に再アタッチを行うことができる状態となる。
【0033】
また、状態変化情報がなければ、S180にて、タイマ3402が終了したか否かを判定する。すなわち、タイマ3402が起動されてから不通信時間が経過したか否かを判定する。タイマ3402が終了していなければ、S160の処理に戻る。また、タイマ3402が終了していれば、通報処理を始めから繰り返す。
【0034】
[1−3.効果]
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)通信システム1において通信装置10は、制御部20と無線通信モジュール25とを備える。
【0035】
無線通信モジュール25は、基地局30を介して予め設定された通信相手との通信を確立させるよう構成される。制御部20は、無線通信モジュール25が通信の確立に失敗したときに、予め設定された不通信時間を経過するまで無線通信モジュール25が通信を確立しないようにする。また、制御部20は、不通信時間が経過するまでの間に、電波状態に応じた値を表す電波状態値を取得し、電波状態値が変化したときに、制御部20が無線通信モジュール25に通信を確立させないようにする作動を停止させる。
【0036】
このような通信システム1によれば、電波状態値が変化したときに、通信を確立させないようにする作動を停止させ、通信を確立できる状態にするので、通信の確立に失敗した場合に一定時間が経過するまで通信を再確立することができる。よって、電波状態が改善した可能性があるときに、簡素な構成で良好に通信を確立できる。
【0037】
(1b)通信システム1において通信装置10は、予め設定された設定回数だけ繰り返し通信の確立に失敗したときに、通信を確立しないようにする。
このような通信システム1によれば、設定回数だけは繰り返し通信の確立を試みることができるので、通信できる確率を向上させることができる。
【0038】
(1c)通信システム1において通信装置10は、電波状態値として、当該車両が移動した際に変化する値を取得する。
このような通信システム1によれば、車両が移動することで電波状態が変化した可能性があることを認識することができる。
【0039】
(1d)通信システム1において通信装置10は、電波状態値として、車速センサから得られる車速信号を含む情報を取得する。
このような通信システム1によれば、車速センサから得られる車速信号を用いて電波状態が変化した可能性があることを認識することができる。
【0040】
(1e)通信システム1において通信装置10は、電波状態値として、ナビゲーション装置から得られる車両位置信号を含む情報を取得する。
このような通信システム1によれば、ナビゲーション装置から得られる車両位置信号を用いて電波状態が変化した可能性があることを認識することができる。
【0041】
(1f)通信システム1において通信装置10は、車両に異常が発生した旨を検知し、当該車両の異常が検知された際に、予め設定された異常通報先を通信相手として、通信を確立させる。
【0042】
このような通信システム1によれば、車両の異常が検知され、異常通報先に通報を行う際に、良好に通信を確立させることができる。
[2.他の実施形態]
以上、本開示を実施するための形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0043】
(2a)上記実施形態では、状態変化情報として
図3および
図4にて対象となりうる事象を例示したが、これに限定されるものではない。状態変化情報としては、無線通信モジュール25と基地局30との間の電波状態が変化した可能性があることを示す値であれば任意の情報を採用できる。
【0044】
(2b)上記実施形態では、緊急通報を行う場合にタイマ3402を解除するよう構成したが、緊急通報を行う場合にタイマ3402を解除することなく、状態変化情報がある場合だけにタイマ3402を解除するようにしてもよい。
【0045】
(2c)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合させたりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加または置換してもよい。なお、特許請求の範囲に記載した文言のみによって特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【0046】
(2d)上述した通信システム1の他、当該通信システム1の構成要素となる装置、当該通信システム1としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体、通信方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【0047】
[3.実施形態の構成と本開示の構成との関係]
上記実施形態の構成のうち、無線通信モジュール25は本開示でいう通信確立部の一例に相当する。また、上記実施形態において制御部20が実行する処理のうち、S110、S160の処理は本開示でいう異常検知部の一例に相当し、上記実施形態においてS150の処理は本開示でいう不確立部の一例に相当する。
【0048】
また、上記実施形態においてS170の処理は本開示でいう状態値取得部の一例に相当し、上記実施形態においてS190の処理は本開示でいう作動停止部の一例に相当する。