特許第6604257号(P6604257)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6604257
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】キャプスタン装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/00 20060101AFI20191031BHJP
   G02B 6/00 20060101ALI20191031BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   G01M11/00 S
   G02B6/00 A
   G02B6/02 356A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-77529(P2016-77529)
(22)【出願日】2016年4月7日
(65)【公開番号】特開2017-187427(P2017-187427A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2018年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 卓
【審査官】 藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−162515(JP,A)
【文献】 特開平10−114537(JP,A)
【文献】 実開平5−81692(JP,U)
【文献】 特開平11−322375(JP,A)
【文献】 特開2002−362833(JP,A)
【文献】 米国特許第4500043(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00
G02B 6/00
G02B 6/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面が光ファイバと接触するキャプスタンホイールと、前記キャプスタンホイールの前記外周面と対向する外周面との間に前記光ファイバを挟み込むキャプスタンベルトと、前記光ファイバに張力を付与するスクリーニング部と、を備えるキャプスタン装置であって、
前記キャプスタンホイールの前記外周面および前記キャプスタンベルトの前記外周面のそれぞれに、前記光ファイバを嵌め込んで走行させる光ファイバ用溝を有する、キャプスタン装置。
【請求項2】
前記光ファイバ用溝は、その曲率半径が、走行させる前記光ファイバの外径の1/2以上である、請求項1に記載のキャプスタン装置。
【請求項3】
前記光ファイバ用溝の深さは、走行させる前記光ファイバの外径の1/2以下である、請求項1または請求項2に記載のキャプスタン装置。
【請求項4】
前記光ファイバの走行方向に対して直交する方向の一箇所以上において、少なくとも前記キャプスタンホイールと前記キャプスタンベルトとのいずれか一方の前記外周面に連続する突起部を備え、他方の前記外周面には前記突起部に対向する位置に溝部を備える、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のキャプスタン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャプスタン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバのスクリーニングは、例えば線引機に付帯、或は独立した、キャプスタン装置等で行われる。上記のキャプスタン装置は、駆動される2つのホイール間で規定の長さとなるようなパスラインを設けてウェイトあるいはトルクによる張力を光ファイバに発生させ、光ファイバを走行させてスクリーニングを行う。キャプスタン装置としては、例えば特許文献1に、キャプスタンホイール及びガイドローラにより回転されるキャプスタンベルトからなるキャプスタン部と、キャプスタンベルトの押え圧力を調整するベルト張力調整器と、からなる装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−227171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、特許文献1のような従来のキャプスタン装置におけるキャプスタンホイールは、外周面は平坦であり、かつ、光ファイバを上から抑えるキャプスタンベルトも外周面は平坦である。光ファイバの断面は円形であるので、光ファイバの被覆外周がキャプスタンホイールおよびキャプスタンホイールに線接触して挟み込まれた状態でキャプスタン装置を走行する。
光ファイバに対してスクリーニングのための張力をかけた場合、キャプスタン装置を走行する光ファイバは、その被覆外周がキャプスタンホイールの平坦な外周面に押し付けられ、且つ長手方向に張力が掛かり、被覆が線接触する部分に大きな力がかかるので被覆が押し潰された状態になり、光ファイバの被覆が変形したり被覆樹脂内部に亀裂が発生したりする虞がある。光ファイバの被覆に変形や亀裂が発生すると、その後の検査で不良品と判定されてしまう。
【0005】
そこで、本発明の目的は、光ファイバの被覆の変形や亀裂の発生を防止できるキャプスタン装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るキャプスタン装置は、外周面が光ファイバと接触するキャプスタンホイールと、前記キャプスタンホイールの前記外周面と対向する外周面との間に前記光ファイバを挟み込むキャプスタンベルトと、前記光ファイバに張力を付与するスクリーニング部と、を備えるキャプスタン装置であって、
前記キャプスタンホイールの前記外周面および前記キャプスタンベルトの前記外周面のそれぞれに、前記光ファイバを嵌め込んで走行させる光ファイバ用溝を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光ファイバの被覆の変形や亀裂の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係るキャプスタン装置の一例を示す構成図である。
図2図1のキャプスタンホイールとキャプスタンベルトとが接するA−A部分の断面図である。
図3】キャプスタンホイールとキャプスタンベルトとが接触するガイド部の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施形態を列記して説明する。
本発明の実施形態に係るキャプスタン装置は、
(1) 外周面が光ファイバと接触するキャプスタンホイールと、前記キャプスタンホイールの前記外周面と対向する外周面との間に前記光ファイバを挟み込むキャプスタンベルトと、前記光ファイバに張力を付与するスクリーニング部と、を備えるキャプスタン装置であって、
前記キャプスタンホイールの前記外周面および前記キャプスタンベルトの前記外周面のそれぞれに、前記光ファイバを嵌め込んで走行させる光ファイバ用溝を有する。
【0010】
(1)のキャプスタン装置によれば、光ファイバ用溝に光ファイバを嵌め込んでスクリーニング張力をかけた際に、光ファイバの被覆の外周は、光ファイバ用溝に面で接する。このため、被覆の接触部分には、従来の平坦面への線接触の場合のような大きな力がかからず、被覆が押し潰されることを防ぐことができる。光ファイバの被覆が押し潰された状態にならないので、被覆の変形や亀裂の発生を防止することができる。よって、被覆の変形や亀裂を防ぐことができ、光ファイバが不良品となることを抑制できる。
【0011】
(2) 前記光ファイバ用溝は、その曲率半径が、走行させる前記光ファイバの外径の1/2以上である。
上記構成では、光ファイバ用溝の曲率が光ファイバの曲率よりも大きくなるので、光ファイバと光ファイバ用溝との間に隙間があり、光ファイバを光ファイバ用溝に嵌め込む際に、被覆が光ファイバ用溝の角部で擦れて被覆表面に外傷や捩れが発生するのを防ぐことができる。
【0012】
(3) 前記光ファイバ用溝の深さは、走行させる前記光ファイバの外径の1/2以下である。
光ファイバ用溝の深さが走行させる光ファイバの外径の1/2以下であるので、光ファイバが溝内に完全に入り込んで、キャプスタンベルトと接触しなくなるようなことはなく、光ファイバに対する若干の押え込みが働くようにできる。
【0013】
(4) 前記光ファイバの走行方向に対して直交する方向の一箇所以上において、少なくとも前記キャプスタンホイールと前記キャプスタンベルトとのいずれか一方の前記外周面に連続する突起部を備え、他方の前記外周面には前記突起部に対向する位置に溝部を備える。
突起部が溝部に嵌合することでキャプスタンホイール上をキャプスタンベルトが走行するガイドとして機能して、キャプスタンベルトのずれを規制することができ、光ファイバを光ファイバ用溝に対して容易に導入できる。
【0014】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係るキャプスタン装置の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。
なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0015】
図1は、本実施形態に係るキャプスタン装置の一例を示す構成図である。図2は、図1のキャプスタンホイールとキャプスタンベルトとが接するA−A部分の断面図である。なお、図1における右側のキャプスタンホイールとキャプスタンベルトとが接する箇所の断面も図2と同じである。図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
図1および図2に示すように、キャプスタン装置1は、外周面2aが光ファイバ10と接触するキャプスタンホイール2と、キャプスタンホイール2の外周面2aと対向する外周面3aとの間に光ファイバ10を挟み込むキャプスタンベルト3と、光ファイバ10に張力を付与するスクリーニング部4と、を備える。
【0017】
スクリーニング部4は、図1に示すように、2つのキャプスタンホイール2およびキャプスタンベルト3の間の光ファイバ10に張力を付与するように設けられている。スクリーニング部4は、例えば光ファイバ母材から線引きして被覆を施した光ファイバ10に、抗張力のテストをする部分である。なお、スクリーニング部4は、着色機等における着色時のスクリーニングなど、線引き時以外のスクリーニングにも適用できる。
【0018】
図1の例では、スクリーニング部4は、2つのキャプスタンホイール2間のパスラインP1−P2に、ガイドローラ5と、ダンサローラ6,7とを備えている。ガイドローラ5は、パスラインP1−P2においてダンサローラ6,7の間でその位置が固定されるように設けられて、光ファイバ10をガイドするガイドローラである。ダンサローラ6,7は、それぞれの回転軸が互いに平行軸8に支持されている。平行軸8には、ウェイト9等が吊り下げられており、ウェイト9の重量によってダンサローラ6,7は、下方向に引っ張られてパスラインP1−P2を走行する光ファイバ10に所定の張力が付加される。なお、スクリーニング部4は、トルクによって張力を光ファイバ10に発生させる機構など、パスラインP1−P2において光ファイバ10に張力をかけられれば、図1以外の他の構成でもよい。
【0019】
キャプスタンホイール2は、図2に示すように、その外周面2aに光ファイバ用溝2bが設けられている。キャプスタンベルト3もまた、その外周面3aに光ファイバ用溝3bが設けられている。光ファイバ10は、キャプスタンホイール2の光ファイバ用溝2bと、キャプスタンベルト3の光ファイバ用溝3bとの間に嵌め込まれて、キャプスタン装置1のパスラインP1−P2を走行する。光ファイバ10は、図2に示すように、ガラスファイバ10aの周囲が被覆10bで覆われており、その外径Gは例えば250μmである。
【0020】
そして、キャプスタン装置1において、光ファイバ10が光ファイバ用溝2bと3bとの間に嵌め込まれている状態では、光ファイバ10の被覆10bの外周は、光ファイバ用溝2b,3bにそれぞれ面で接した状態となる。
【0021】
また、キャプスタン装置1において、光ファイバ用溝2b,3bの曲率半径Rを、光ファイバ10の外径Gの1/2と同じか、外径Gの1/2よりも僅かに大きいものとするとよい。例えば、上記曲率半径Rは、光ファイバの外径Gの1/2から10%程度大きいものまでが好ましい。これにより、光ファイバ10と光ファイバ用溝2b,3bとの間に僅かな隙間が生じ、光ファイバ10を光ファイバ用溝2b,3bに嵌め込む際に、光ファイバ10の被覆10bが光ファイバ用溝2b,3bの角部2c,3cで擦れて、被覆10bの表面に外傷や捩れが発生することを防ぐことができる。なお、光ファイバ用溝2b,3bは、その角部2c,3cを面取りしたものでもよい。
【0022】
また、キャプスタン装置1において、少なくとも光ファイバ用溝2b,3bのいずれか一方の深さDを、若干の抑え込みが働くように光ファイバの外径Gの1/2以下とするとよい。例えば、光ファイバの外径Gの1/2から15%程度小さいものまでが好ましい。これにより、光ファイバ10が光ファイバ用溝2b,3b内に完全に入り込んで、キャプスタンベルト3と接触しなくなるようなことはなく、光ファイバ10に対する若干の押え込みが働くようにできる。
【0023】
また、図3に示すように、光ファイバ10の走行方向に対して直交する方向の一箇所以上において、キャプスタンホイール2とキャプスタンベルト3とのいずれか一方に突起部2dを備え、他方には突起部2dに対向する位置に溝部3dを備えるようにしてもよい。
【0024】
図3に示す例では、キャプスタンホイール2の外周面2aの二箇所に外周面2a上を連続する突起部2dが設けられており、キャプスタンベルト3の外周面3aの二箇所には、外周面3a上を連続する溝部3dが設けられている。上記二箇所の突起部2dと溝部3dは、それぞれ嵌合するように対向する位置に設けられている。そして、二箇所の突起部2dと溝部3dとがそれぞれ嵌合した際に、光ファイバ用溝2b,3bの位置が光ファイバ10を挟み込む位置となる位置に、上記二箇所の突起部2dと溝部3dとが設けられている。なお、図3の例とは逆に、キャプスタンベルト3側に突起部を設け、キャプスタンホイール2側に溝部を設けてもよい。また、突起部や溝部は一箇所以上であれば、幾つあっても良く、キャプスタンベルト3に突起部と溝部の両方を設け、キャプスタンホイール2側にもそれに対応する突起部と溝部の両方を設けてもよい。
【0025】
上記のように、突起部2dと溝部3dとを設けることで、キャプスタンホイール2上をキャプスタンベルト3が走行するガイドとして機能して、キャプスタンベルト3のずれを規制することができ、光ファイバ10を光ファイバ用溝2b,3bに対して容易に導入できる。
【0026】
また、図3に示すように、キャプスタンホイール2の両側端に、鍔状のガイド部2eがそれぞれ設けられていてもよい。鍔状のガイド部2eがあることにより、キャプスタンベルト3がキャプスタンホイール2の両側端から外側に外れることを防いでいる。
【0027】
以上、詳述した本実施形態に係るキャプスタン装置1によれば、光ファイバ用溝2b,3bに光ファイバ10を嵌め込んでスクリーニング張力をかけた際に、光ファイバ10の被覆10bの外周は、光ファイバ用溝2b,3bに面で接する。このため、被覆10bの接触部分に、従来の平坦面への線接触の場合のような大きな力がかからず、被覆10bが押し潰されることを防ぐことができる。光ファイバ10の被覆10bが押し潰された状態にならないので、被覆10bの変形や亀裂の発生を防止することができる。よって、被覆10bの変形や亀裂を防ぐことができ、光ファイバ10が不良品となることを抑制できる。
【0028】
なお、特許文献1のように従来のキャプスタン装置では、キャプスタンベルトに圧力による変形や摩擦による摩耗により凹溝ができる場合がある。そして、この凹溝に光ファイバが出たり入ったりする際に光ファイバが捻れるという問題や、凹溝による不均一な応力負荷によって光ファイバの被覆の表面に波状のうねりが生ずるという問題がある。これに対して、本実施形態に係るキャプスタン装置1は、予めキャプスタンホイール2の外周面2aおよびキャプスタンベルト3の外周面3aに、それぞれ光ファイバ10を嵌め込んで走行させる光ファイバ用溝2b,3bを有しているので、このような問題が発生しない。
【符号の説明】
【0029】
1 キャプスタン装置
2 キャプスタンホイール
2a 外周面
2b 光ファイバ用溝
2c 角部
2d 突起部
3 キャプスタンベルト
3a 外周面
3b 光ファイバ用溝
3c 角部
3d 溝部
4 スクリーニング部
5 ガイドローラ
6、7 ダンサローラ
8 平行軸
9 ウェイト
10 光ファイバ
10a ガラスファイバ
10b 被覆
D 深さ
G 光ファイバの外径
P1−P2 パスライン
R 曲率半径
図1
図2
図3