特許第6604269号(P6604269)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6604269
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】硬質表面用リンス剤
(51)【国際特許分類】
   C11D 1/72 20060101AFI20191031BHJP
   C11D 1/722 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   C11D1/72
   C11D1/722
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-107392(P2016-107392)
(22)【出願日】2016年5月30日
(65)【公開番号】特開2017-214455(P2017-214455A)
(43)【公開日】2017年12月7日
【審査請求日】2019年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124349
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 圭啓
(72)【発明者】
【氏名】砂田 和輝
(72)【発明者】
【氏名】森川 稔之
【審査官】 山本 悦司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−213266(JP,A)
【文献】 特開2011−184595(JP,A)
【文献】 特開2010−155904(JP,A)
【文献】 特開2014−5456(JP,A)
【文献】 特表2015−531669(JP,A)
【文献】 特開2009−41078(JP,A)
【文献】 特開2012−140487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00−19/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分を50〜90質量%、下記(B)成分を10〜50質量%含有する硬質表面用リンス剤。
(A)一般式(1)で表される非イオン界面活性剤
O−(EO)a−H (1)
(式中、Rは分岐鎖を有する炭素数6〜8のアルキル基、EOはオキシエチレン基、aはオキシエチレン基の平均付加モル数で、a=3〜8である。)

(B)一般式(2)で表される非イオン界面活性剤
O−(EO)b−(PO)c−H (2)
(式中、Rは3〜4つの分岐鎖を有する炭素数9〜10のアルキル基、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基であり、EOおよびPOはブロックで付加している。bはオキシエチレン基の平均付加モル数で、b=2〜6であり、cはオキシプロピレン基の平均付加モル数で、c=2〜5であり、b/c=0.5〜2.0である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属、セラミックス、ガラスおよびプラスチック等の硬質表面の洗浄に用いられる硬質表面用リンス剤に関する。
【背景技術】
【0002】
金属、セラミックス、ガラスおよびプラスチック等の硬質表面の加工後には、表面に付着した金属粉や加工油等を除去するために、主に塩素系、炭化水素系および水系洗浄剤が種々の分野で工業用洗浄剤として使用されている。その中で、近年では環境への配慮、作業環境の衛生上および防災上好ましい条件を備えているとの理由から、水系洗浄剤の需要が高まっている。一方で、水系洗浄剤で溶媒として使用される水は、他の洗浄剤で用いられる溶剤や溶媒と比較して比熱が高く、さらに沸点も高いことから、乾燥に多くのエネルギーを必要とする。そこで、洗浄後の乾燥を促進させるために、リンス剤による洗浄が行われている。
【0003】
リンス剤による洗浄を行う目的は、主として、洗浄物からの水切れを向上させたり、水滴を表面に濡れ広がらせたりすることによって、洗浄物表面の乾燥を促進させることであるが、一方で、乾燥促進効果だけでなく、乾燥後の洗浄物表面の清浄性向上効果も重要な目的として挙げられる。
【0004】
リンス剤による洗浄方法としては、リンス剤に硬質表面を浸漬した後に超音波やポンプにより加圧して生じた水流やバブリング等により洗浄する方法、ポンプやエアーにより加圧した水を硬質表面に当てるシャワー洗浄方法などが挙げられる。その中でもシャワー洗浄方法は、物理的な洗浄効果が見込まれるため、短時間で洗浄が可能で、作業効率が向上するといったメリットを有する。一方で、シャワー洗浄方法は、その水の勢いによってリンス剤が泡立ち、洗浄ライン上で泡がオーバーフローすることにより、作業を停止せざるを得ない状況がしばしば起こったり、泡が洗浄物に付着することでリンス性が低下したりする問題を有している。
【0005】
従来、リンス洗浄時の泡立ちの問題を解決するために、低泡性の界面活性剤が使用されており、かかる界面活性剤として、例えば特許文献1には、直鎖脂肪族炭化水素基または分岐脂肪族炭化水素基を有する脂肪族アルコールに炭素数2〜4のアルキレンオキシドを付加した低泡性の界面活性剤が記載されている。
また、特許文献2には、リンス洗浄が不要で、高い洗浄効果とリンス効果の2つの効果を併せ持つ食器洗浄機用の洗浄剤組成物として、炭素数10〜16のアルコールにエチレンオキシド、プロピレンオキシドを付加した非イオン性界面活性剤化合物の組成物が開示されている。
【0006】
一方で、リンス洗浄では泡立ちの問題だけでなく、洗浄物表面にウォータースポットと呼ばれる白斑やリンス剤の主成分である界面活性剤が残るといったリンス洗浄不良により、表面がべたつくといった問題も有している。従来のリンス剤による洗浄では、洗浄物表面へ界面活性剤が微量に残ることが大きな問題とならない用途に限定されたり、また、部材の耐熱性や製造コスト増加の問題を考慮した上で、乾燥温度を高温としたり乾燥時間を長くしたりすることでそのような問題に対処していた。
【0007】
しかしながら、洗浄後の部材表面に薄膜コーティングなどを行う場合には、より微量のウォータースポットや界面活性剤の残りによってハジキ等が生じ、コーティング不良が起こることが大きな問題となっている。特に近年では、コスト削減や高性能化のために、コーティング膜をより薄くする傾向にあることから、さらにコーティング不良が起き易くなっており、リンス洗浄物表面への界面活性剤残りが極めて少ないことが求められている。
【0008】
上記の特許文献1や2に開示されているような従来の界面活性剤および洗浄剤組成物では、高温で乾燥させても、洗浄物表面にリンス剤の主成分である界面活性剤が微量に残りやすいことから、高性能化が進む部材表面へ薄膜コーティングなどを行う場合にはコーティング不良が生じやすく、また作業効率の向上を図るために洗浄スピードをさらに上昇させることによる泡立ちの増加といった問題へは対応できていない。
それらの問題を解決するために、より低泡性であり、洗浄物表面の乾燥を促し、かつ乾燥後の洗浄物表面への界面活性剤残りが極めて少ない硬質表面用リンス剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−231176号公報
【特許文献2】特開2013−237792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、洗浄時の泡立ち抑制に優れ、洗浄物表面の乾燥を促し、かつ乾燥後の洗浄物表面への界面活性剤残りが極めて少ない硬質表面用リンス剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、特定のアルコールにオキシエチレン基を特定のモル数付加した構造物と、特定のアルコールにオキシエチレン基やオキシプロピレン基を特定の割合で、かつ特定の順序で付加した構造物とを特定の割合で配合した界面活性剤組成物の水溶液が、優れた低泡性を有し、洗浄物の乾燥を促し、かつ界面活性剤の残渣が極めて少ないといった、リンス剤として優れた性能を有することを見出し、本発明の完成に至ったものである。
【0012】
すなわち本発明は、下記(A)成分を50〜90質量%、下記(B)成分を10〜50質量%含有する硬質表面用リンス剤である。
【0013】
(A)一般式(1)で表される非イオン界面活性剤
O−(EO)a−H (1)
(式中、Rは分岐鎖を有する炭素数6〜8のアルキル基、EOはオキシエチレン基、aはオキシエチレン基の平均付加モル数で、a=3〜8である。)
【0014】
(B)一般式(2)で表される非イオン界面活性剤
O−(EO)b−(PO)c−H (2)
(式中、Rは3〜4つの分岐鎖を有する炭素数9〜10のアルキル基、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基であり、EOおよびPOはブロックで付加している。bはオキシエチレン基の平均付加モル数で、b=2〜6であり、cはオキシプロピレン基の平均付加モル数で、c=2〜5であり、b/c=0.5〜2.0である。)
【発明の効果】
【0015】
本発明の硬質表面用リンス剤は、洗浄時の泡立ち抑制に優れ、洗浄物表面の乾燥を促し、かつ乾燥後の洗浄物表面への界面活性剤残りが極めて少ないので、従来技術に対して作業効率の向上や不良率の減少が可能となり、大変有用である。
なお、本発明における「硬質表面」とは、金属、セラミックス、ガラスおよびプラスチック等の材質からなる部材の表面をいい、かかる部材としては、例えば、加工部品、金属部品、光学レンズなどの光学部品、ガラス、電子部品、精密部品などが挙げられる。本発明の硬質表面用リンス剤による除去対象は、例えば、切削油や圧延油等の加工油、防錆油、潤滑油、切削金属粉、ワックス、ピッチ、フラックスなどが挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を説明する。
本発明の硬質表面用リンス剤は、(A)成分の非イオン界面活性剤と、(B)成分の非イオン界面活性剤とをそれぞれ特定の割合で含有する。各成分について以下に説明する。
【0017】
〔(A)成分の非イオン界面活性剤〕
(A)成分は、下記の一般式(1)で表される非イオン界面活性剤である。
O−(EO)a−H (1)
【0018】
は分岐鎖を有する炭素数6〜8のアルキル基である。濡れ性および水切れの観点から、アルキル基の炭素数は、7〜8が好ましく、特に8が好ましい。
の炭素数が小さすぎると、洗浄物に対する濡れ性に劣ったり、水切れが遅くなったりすることがある。反対に炭素数が大きすぎると、低泡性に劣ることがある。また、Rが炭素数6〜8の直鎖状のアルキル基であると、泡膜の安定性が高くなることから、低泡性に劣ることがある。
分岐鎖としては、メチル分岐、エチル分岐、プロピル分岐およびブチル分岐が挙げられるが、濡れ性、水切れおよび低泡性の観点から、エチル分岐、プロピル分岐が好ましく、その中でもエチル分岐が特に好ましい。分岐数は1つまたは2つであれば良く、好ましくは1つである。
【0019】
EOはオキシエチレン基であり、aはオキシエチレン基の平均付加モル数である。オキシエチレン基の平均付加モル数aは3〜8であり、好ましくは3〜5である。aが小さすぎると、水への溶解性が低下し、リンス剤が経時的に分離したり、不均一な洗浄となったりするため、リンス剤として最大限の効果を発揮できないことがある。また、aが大きすぎると、低泡性に劣ったり、洗浄物の乾燥後に洗浄物表面の界面活性剤の残存率が上昇したりすることがある。
なお、一般式(1)で表される非イオン界面活性剤は、1種を単独で使用しても良く、2種類以上を併用しても良い。
【0020】
〔(B)成分の非イオン界面活性剤〕
(B)成分は、下記の一般式(2)で表される非イオン界面活性剤である。
O−(EO)b−(PO)c−H (2)
【0021】
は3〜4つの分岐鎖を有する炭素数9〜10のアルキル基である。アルキル基の炭素数は9が好ましい。
の炭素数が小さすぎると、洗浄物に対する濡れ性に劣ることがある。反対に炭素数が大きすぎると、低泡性に劣ったり、洗浄物の乾燥後に洗浄物表面の界面活性剤の残存率が上昇したりすることがある。また、Rが炭素数9〜10の直鎖状のアルキル基であると、泡膜の安定性が高くなって低泡性に劣ったり、洗浄物の乾燥後に洗浄物表面の界面活性剤の残存率が上昇したりすることがある。
分岐鎖としては、メチル分岐、エチル分岐およびプロピル分岐などが挙げられるが、分岐鎖の合計炭素数が5以上の場合、濡れ性や水切れに劣ることがあり、また分岐数が2以下の場合、低泡性に劣ったり、洗浄物の乾燥後に洗浄物表面の界面活性剤の残存率が上昇したりすることがある。以上の観点から、分岐鎖はメチル分岐が好ましい。
【0022】
EOはオキシエチレン基であり、bはオキシエチレン基の平均付加モル数である。オキシエチレン基の平均付加モル数bは2〜6であり、好ましくは3〜5であり、より好ましくは3〜4である。bが小さすぎると、水への溶解性が低下し、リンス剤が経時的に分離したり、不均一な洗浄となったりするため、水切れの悪化や洗浄物表面における界面活性剤の残存率の上昇を引き起こす原因となることがある。また、bが大きすぎると、洗浄物の乾燥後に洗浄物表面の界面活性剤の残存率が上昇することがある。
【0023】
POはオキシプロピレン基であり、好ましくはプロピレンオキサイド由来のオキシプロピレン基(メチルオキシエチレン基)である。cはオキシプロピレン基の平均付加モル数で、2〜5であり、好ましくは2〜4である。cが小さすぎると、低泡性に劣ることがあり、cが大きすぎると、水への溶解性が低下し、水切れの悪化や洗浄物表面における界面活性剤の残存率の上昇を引き起こす原因となることがある。
【0024】
b/cは、オキシエチレン基の平均付加モル数bとオキシプロピレン基の平均付加モル数cとの比を意味し、0.5〜2.0であり、好ましくは0.5〜1.5であり、より好ましくは0.7〜1.3である。b/cが小さすぎる場合、水への溶解性が低下し、水切れの悪化や洗浄物表面における界面活性剤の残存率の上昇を引き起こす原因となることがある。また、b/cが大きすぎる場合、親水性が強くなり、濡れ性や低泡性に劣り、水切れが遅くなることがある。
【0025】
EOおよびPOはブロックで付加している。互いに位置を入れ替えた場合やランダムで付加した場合には、いずれも低泡性に劣ることがある。
なお、一般式(2)で表される非イオン界面活性剤は、1種を単独で使用しても良く、2種類以上を併用しても良い。
【0026】
本発明の硬質表面用リンス剤において、一般式(1)で表される(A)成分の含有量は、50〜90質量%であり、好ましくは50〜85質量%、特に好ましくは60〜75質量%である。また、一般式(2)で表される(B)成分の含有量は、10〜50質量%であり、好ましくは15〜50質量%、特に好ましくは25〜40質量%である。
(A)成分および(B)成分の各含有量が上記範囲内であることにより、2成分の界面活性剤同士がお互いに泡膜の気液界面に安定に配向することを妨げるため低泡性に優れるとともに、洗浄物への適度な濡れ性を付与できるため、洗浄物表面の水が素早くリンス剤と置換され、かつ水切れが良いため水乾きに優れ、乾燥後のウォータースポットおよび界面活性剤の残量を低減することができる。(A)成分の含有量が少なすぎたり、(B)成分の含有量が多すぎたりすると、水切れが遅くなるため、ウォータースポットが生じやすくなることがある。また、(A)成分の含有量が多すぎたり、(B)成分の含有量が少なすぎたりすると、低泡性に劣ることがある。
【0027】
本発明の硬質表面用リンス剤は、通常、水に溶解された水溶液にて用いられる。水としては、例えば、水道水、工業用水、脱イオン水が挙げられる。
水溶液における硬質表面用リンス剤の濃度、即ち(A)成分および(B)成分の合計濃度は、0.001〜5質量%、好ましくは0.01〜4質量%、特に好ましくは0.1〜3質量%である。なお、水溶液のリンス剤を使用する際には、さらに水の添加により濃度を調整することができる。
水溶液における本発明の硬質表面用リンス剤の濃度が低すぎると、水切れが遅くなることがあり、リンス剤としての機能が損なわれることがあり、濃度が高すぎると、泡立ちしやすくなるため低泡性に劣ることがあり、また洗浄物の乾燥後に洗浄物表面の界面活性剤の残存率が上昇することがある。
【0028】
本発明の硬質表面用リンス剤は、リンス剤として使用できる公知の添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲内で使用目的に応じて配合することができる。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、アルキル(炭素数1〜4)ポリアルキレングリコール等のグリコール類;グリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール等の多価アルコール類;エタノール、プロパノール、2−プロパノール、低級アルキルエトキシレート等の可溶化剤;色素、香料等を配合することができる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明する。
本発明に用いた化合物およびその合成例を以下に示す。得られた化合物は、H−NMR分析により、分子設計どおりのEO/PO比率であることを確認した。
なお、表1および表2に合成した化合物を示す。実施例および比較例中の配合量は質量%である。
【0030】
(化合物A−1の合成)
オートクレーブに、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル(商品名:キョーワノールOX、KHネオケム(株)製)348.6g(2mol)および水酸化ナトリウム0.3gを仕込み、窒素置換後、撹拌しながら110℃に昇温した。次に滴下装置によりエチレンオキシド176.2g(4mol)を約8時間かけて滴下した後、2時間反応させた。その後、オートクレーブ内から、反応物を取り出し、塩酸で中和し、含有する水分を除去するため、120℃、1時間、減圧処理を行い、最後に濾過により塩を除去して、498.0gの化合物A−1を得た。
【0031】
(化合物A−2〜A−8の合成)
上記化合物A−1の合成に準じて、表1に示す化合物A−2〜A−8を合成した。
なお、化合物A−8の合成に際しては、イソトリデシルアルコール(製品名:エクサール13、エクソンモービル社製)を用いた。
【0032】
【表1】
【0033】
(化合物B−1の合成)
オートクレーブに、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール(商品名:ノナノール、KHネオケム(株)製)433. 0g(3mol)および水酸化カリウム4gを仕込み、窒素置換後、撹拌しながら120℃に昇温した。次に滴下装置によりエチレンオキシド264g(6mol)を約8時間かけて滴下した後、1時間反応させた。続いて滴下装置によりプロピレンオキシド523g(9mol)を5時間かけて滴下した後、3時間反応させた。その後、オートクレーブ内から、反応物を取り出し、塩酸で中和し、含有する水分を除去するため、120℃、1時間、減圧処理を行い、最後に濾過により塩を除去して、1160gの化合物B−1を得た。
【0034】
(化合物B−2〜B−9の合成)
上記化合物B−1の合成に準じて、表2に示す化合物B−2〜B−9を合成した。
なお、化合物B−9の合成に際しては、イソトリデシルアルコール(製品名:エクサール13、エクソンモービル社製)を用いた。
【0035】
【表2】
【0036】
〔実施例1〕
(リンス剤の調製)
ビーカーに化合物A−1:0.7g、化合物B−1:0.3g、水道水:499.0gを秤量し、撹拌を行うことで、界面活性剤濃度0.2%のリンス剤を調製した。
調製されたリンス剤について以下の評価を行なった。
【0037】
(濡れ性の評価)
ガラス板に対する実施例1のリンス剤の接触角(測定装置:協和界面化学(株)製、Drop Masterシリーズ、DM−501)を測定した。実施例1のリンス剤を、18Gのフッ素樹脂コート針を装着したガラスシリンジに充填し、液滴量を2.0μLに調整し、着滴1秒後の接触角の測定を行った。1サンプルにつき5回の測定を行い、その平均値を接触角の値とした。なお、評価は以下の基準で行った。結果を表3に示す。実施例1のリンス剤の接触角は29°であった。
◎(優):接触角が35°未満
○(良):接触角が35°以上、40°以下
×(不可):接触角が40°超
【0038】
(泡立ちの評価)
1000mLのトールメスシリンダーに実施例1のリンス剤:200mLを泡が立たないように加え、温度:25℃で、ディフーザーストーンを用いてAirを200mL/分で吹き込み、3分後の泡立ちを確認した。泡立ちの評価は、メスシリンダーのメモリを読み取り、泡の容量を測定することで行なった。なお、評価は以下の基準で行った。結果を表3に示す。実施例1のリンス剤の泡の容量は60mLであった。
◎(優):100mL未満
○(良):100mL以上、200mL未満
×(不可):200mL以上
【0039】
(水切れの評価)
ガラス板(76mm×26mm)の長辺を鉛直方向として、実施例1のリンス剤に3cm浸漬させた後、ゆっくりと引き上げ、ガラス板を鉛直に吊るした状態で、室温で10分間静置し、浸漬前と10分静置後の重量の差を測定した。ブランクとして水道水を用いた場合の測定も行い、実施例1のリンス剤とブランクの水残り量を比較し、下記式3にて水残り量の減少率を算出した。なお、評価は以下の基準で行った。結果を表3に示す。ブランクの水残り量は70mg、実施例1のリンス剤の水残り量は15mgであり、下記式3から水残り量の減少率を算出すると79%であった。
(式3) 水残り量の減少率(%)={1−(リンス剤の水残り量)/(ブランクの水残り量)}×100
◎(優):水残り量の減少率が80%以上
○(良):水残り量の減少率が60%以上、80%未満
×(不可):水残り量の減少率が60%未満
【0040】
(界面活性剤の残存率の評価)
ガラス板(76mm×26mm)の長辺を鉛直方向として、実施例1のリンス剤に4cm浸漬させた後、ゆっくりと引き上げ、ガラス板の平面を上に向けた状態で、150℃の恒温槽で60分間静置した。その後、乾燥させたガラス板に対する水道水の接触角を測定することで、ガラス板表面の界面活性剤残量を評価した。フッ素樹脂コート針18Gを装着したガラスシリンジに水道水を充填し、液滴量を2.0μLに調整し、乾燥させたガラス板に着滴1秒後の接触角の測定を行った。1サンプルにつき5回の測定を行い、その平均値を接触角の値とした。なお、ブランクとして清浄なガラス板を用いた場合の水道水の接触角も測定し、実施例1のリンス剤に浸漬後乾燥させたガラス板とブランクのガラス板に対する接触角を比較し、下記式4にて接触角の減少率を算出した。
ガラス板表面に界面活性剤が多く残っている場合、ブランクに対して水道水の接触角は減少することから、評価は以下の基準で行った。結果を表3に示す。ブランクの接触角は58°、実施例1のリンス剤乾燥後の接触角は57°であり、下記式3から接触角減少率を算出すると2%であった。
(式4) 接触角減少率(%)={1−(リンス剤乾燥後の接触角)/(ブランクの接触角)}×100
◎:接触角減少率が10%未満
○:接触角減少率が10%以上、20%未満
△:接触角減少率が20%以上、30%未満
×:接触角減少率が30%以上
【0041】
〔実施例2〜8〕
上記実施例1に準じて、リンス剤を調製し評価を行った。結果を表3に示す。
【0042】
〔比較例1〜13〕
上記実施例1に準じて、リンス剤を調製し評価を行った。結果を表4および表5に示す。
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
【表5】
【0046】
表3の結果から、化合物A−1〜A−3と、化合物B−1〜B−3とを特定の割合で配合し、調製したリンス剤は、優れた濡れ性、水切れ、低泡性を示すだけでなく、洗浄乾燥後の洗浄物表面への界面活性剤の残存率が極めて低いことが分かる。
【0047】
これに対して、表4および表5に示す結果から、本発明の規定範囲から外れる比較例1〜13では本発明の効果が得られないことが分かる。
比較例1は、一般式(2)で表される化合物におけるオキシプロピレン基の付加モル数が本発明規定の範囲の下限値よりも小さく、一般式(2)におけるb/aが本発明規定の範囲の上限値よりも大きいために、低泡性に劣る。
比較例2は、一般式(2)で表される化合物のオキシエチレン基の付加モル数が本発明規定の範囲の上限値よりも大きいため、界面活性剤の残存率が高くなる。
比較例3は、一般式(2)で表される化合物のアルキル基の分岐数が本発明規定の範囲の下限値よりも小さいため、濡れ性と低泡性に劣る。
比較例4は、一般式(2)で表される化合物のアルキル基が直鎖状であるために、低泡性に劣り、界面活性剤の残存率が若干高くなる。
比較例5は、一般式(2)で表される化合物のアルキル基の炭素数および分岐数が本発明規定の範囲の下限値よりも小さいため、低泡性に劣り、界面活性剤の残存率が若干高くなる。
比較例6は、一般式(2)で表される化合物のアルキル基の炭素数が本発明規定の範囲の上限値よりも大きいため、低泡性に劣り、また界面活性剤の残存率が高くなる。
【0048】
比較例7は、一般式(1)で表される化合物のオキシエチレン基の付加モル数が本発明規定の範囲の上限値よりも大きいため、低泡性に劣り、さらに界面活性剤の残存率が高くなる。
比較例8は、一般式(1)で表される化合物におけるアルキル基の炭素数が本発明規定の範囲の下限値よりも小さいために、濡れ性と水切れに劣る。
比較例9は、一般式(1)で表される化合物のアルキル基が直鎖状であるために、低泡性に劣り、界面活性剤の残存率が若干高くなる。
比較例10は、一般式(1)で表される化合物のアルキル基の炭素数が本発明規定の範囲の上限値よりも大きいため、低泡性に劣る。
比較例11は、一般式(1)で表される化合物のアルキル基の炭素数が本発明規定の範囲の上限値よりも大きく、またオキシエチレン基の付加モル数が本発明規定の範囲の上限値よりも大きいために、低泡性に劣り、さらに界面活性剤の残存率が高くなる。
【0049】
比較例12は、一般式(1)で表される(A)成分の含有量が本発明規定の範囲の上限値よりも多く、一般式(2)で表される(B)成分の含有量が本発明規定の範囲の下限値よりも少ないために、濡れ性および低泡性に劣る。
比較例13は、一般式(1)で表される(A)成分の含有量が本発明規定の範囲の下限値よりも少なく、一般式(2)で表される(B)成分の含有量が本発明規定の範囲の上限値よりも多いために、水切れに劣り、界面活性剤の残存率が高くなる。