(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも冷却液の流通時において、前記第2流路の導入口近傍に、前記イオン交換樹脂が存在しない導入空間部が形成される構成となっていることを特徴とする請求項1に記載のイオン交換器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載のイオン交換器では、冷却液が導入管から導出管へ至る内部流路が、全体としてU字状やクランク状に屈曲しているため、依然として圧力損失が大きくなるおそれがある。これは、迂回流路のみに着目しても同様である。また、ケース内に迂回流路を設けた場合には、イオン交換器が大型化するおそれがある。
【0009】
さらに、特許文献2に記載のイオン交換器では、内部流路(主にイオン交換樹脂充填部)の流路断面積が導入管と比べ非常に広くなっているため、イオン交換器の内部における冷却液の流速が著しく遅くなるおそれがある。
【0010】
このため、冷却液にエアが混入している場合に、該エアが押し流されず、イオン交換器内に滞留してしまい、イオン交換樹脂の機能低下や冷却液の劣化など種々の不具合が発生するおそれがある。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、燃料電池システムの冷却系において、圧力損失の低減等を図ることのできるイオン交換器を提供することを主たる目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下、上記課題を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0013】
手段1.燃料電池システムの冷却系に用いられるイオン交換器であって、
両端部がそれぞれ前記冷却系の所定の配管に接続可能に構成され、一方側から導入される冷却液を他方側へ通過させる略直線状の第1流路を有する連通管部と、
前記連通管部へ導入される冷却液の一部が前記連通管部から分岐して流れ、再び前記連通管部へ合流する第2流路を有し、該第2流路にイオン交換樹脂を収容した収容ケース部とを備え、
前記第2流路へ冷却液を導入させる導入手段が前記連通管部内に配置されている
とともに、
前記連通管部が前記収容ケース部の下部に設けられており、
前記収容ケース部は、外筒部と、該外筒部の内部に収容された内筒部と、前記外筒部を塞ぐ着脱可能な蓋部とを備え、
前記内筒部は、その内部を2つのエリアに仕切る隔壁部を備え、該2つのエリアが前記内筒部の上部において連通することで、前記第2通路が逆U字状に屈曲して形成されていることを特徴とするイオン交換器。
【0014】
上記手段1によれば、上記連通管部(第1流路)を備えることにより、イオン交換器へ導入される冷却液の一部をイオン交換樹脂充填部を介さず真っ直ぐに通過させ、最短距離でイオン交換器から導出することができる。結果として、圧力損失を極めて小さくすることができる。
【0015】
また、圧力損失を低減するために、イオン交換樹脂充填部を迂回する迂回流路を収容ケース部内に設ける必要もなく、さらに連通管部の長さも短くできるため、イオン交換器の小型化を図ることができる。
【0016】
尚、上記手段1において、「略直線状」とは、U字状やL字状に屈曲し、圧力損失が著しく大きくなるものを含まない趣旨であり、完全な直線に限定されず、冷却液を円滑に流すことができる程度に緩やかに湾曲又は屈曲した形状を含む。
【0017】
さらに、本手段では、冷却液の一部が連通管部から分岐して流れる第2流路を備え、ここにイオン交換樹脂を収容し、冷却液に含まれるイオンを除去する構成となっている。本手段では、上記第1流路を備えているため、圧力損失の増大等を考慮することなく、第2流路を細くかつ長く形成することが可能となる。これにより、第2流路の流路断面積を大きくすることなく、より多くのイオン交換樹脂を収容することができる。結果として、イオンの交換効率の低下抑制を図ると共に、第2流路を通過する冷却液の流速の低下抑制を図ることができる。
【0018】
上記「発明が解決しようとする課題」でも述べたように、冷却液の流速が低下すると、冷却液にエアが混入している場合に、該エアが押し流されず、イオン交換器内に滞留してしまうおそれがある。特に上から下へ、エアの浮力と反対方向に冷却液が流れる区間が存在する場合には、エアの浮力が冷却液の流れに勝り、冷却液の流れに乗せてエアを排出することが困難となる。結果として、イオン交換樹脂の機能低下や冷却液の劣化など種々の不具合が発生するおそれがある。
【0019】
具体的には、例えばエアの圧力によって冷却液の流れが遮られ、イオン交換樹脂の一部に冷却液が流れないおそれがある。これにより、イオン交換効率の低下、冷却液中のイオン濃度の上昇、イオン交換樹脂の劣化度合いの偏りなどの不具合が発生するおそれがある。また、エアが介在することで冷却液が適切に流れず、冷却系のポンプの動作が不安定となったり、イオン交換器内に蒸気が発生し、樹脂材料等により構成される部品の劣化が早くなるなどの不具合が発生するおそれがある。
【0020】
これに対し、本手段では、第2流路内にイオン交換樹脂が存在することで、さらにエアが排出されやすくなっている。通常、冷却液の流速が速ければ速いほど、エアは排出されやすく、エアの粒が小さければ小さいほど、エアは排出されやすい。この点、本手段では、第2流路内にイオン交換樹脂が存在することで、冷却液が第2流路を通過する際には、粒状のイオン交換樹脂の狭い隙間を通ることとなるため、冷却液の流速が上がると共に、エアが小さい粒に細分化される。
【0021】
尚、一般に冷却液中にエアが混入している場合には、ラジエータに付設されるリザーブタンク等を介してエア抜きが可能であるため、イオン交換器内にエアを滞留させずに押し流すことができれば、特段の不具合は生じにくい。
【0022】
加えて、本手段では、第2流路(イオン交換樹脂充填部)へ冷却液を導入させる導入手段が連通管部内に配置されている。これにより、第2流路へ冷却液を導入しやすくなり、イオンの交換効率の向上を図ることができる。また、イオン交換器の大型化を抑制することができる。
また、連通管部が収容ケース部の下部にあるため、イオン交換樹脂(カートリッジ)の交換作業を行う際に、収容ケース部内に冷却液が残留せず、交換作業が行いやすくなる。
【0023】
手段2.少なくとも冷却液の流通時において、前記第2流路の導入口近傍に、前記イオン交換樹脂が存在しない導入空間部が形成される構成となっていることを特徴とする手段1に記載のイオン交換器。
【0024】
冷却液を連通管部から第2流路へ導入する際には、上記導入手段によって冷却液の流れが強制的に曲げられるため、位置によって冷却液の流速や圧力などに差が生じるおそれがある。そのため、仮に導入空間部が形成されず、第2流路の導入口までイオン交換樹脂が充填されていると、冷却液がイオン交換樹脂充填部の導入面に対し均一に導入されないおそれがある。
【0025】
これに対し、上記手段2によれば、上記導入空間部が形成されることで、該導入空間部内において冷却液がより均一化されるため、イオン交換樹脂充填部の導入面に対し、より均一に冷却液を導入することができる。
【0026】
また、仮に導入空間部が形成されず、第2流路の導入口までイオン交換樹脂が充填されている構成では、冷却液中にエアが混入している場合に、該エアが第2流路(イオン交換樹脂充填部)に導入されずに、連通管部内(第2流路の導入口付近)に滞留してしまうおそれがある。
【0027】
これに対し、上記手段2によれば、上記導入空間部が形成されることで、該導入空間部内にエアを集めた上で冷却液の水圧によりイオン交換樹脂充填部に対しエアを導入することができる。
【0028】
手段3.前記導入手段として、前記第2流路の導入口に繋がる導入流路を形成する流路区画壁を備え、
前記流路区画壁は、前記第1流路の流路方向に沿って形成された横壁部と、該横壁部の下流側端部において前記流路方向と直交する方向に沿って形成された縦壁部と備えていることを特徴とする手段1又は2に記載のイオン交換器。
【0029】
上記手段3によれば、第1流路に冷却液が流れる際に、第2流路の導出口近傍に負圧を生じさせることができる。これにより、第2流路を流れる冷却液の流速を上げると共に、第2流路からの冷却液の導出効率を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。本発明に係るイオン交換器は、例えば燃料電池自動車における燃料電池システムの冷却系に用いられるものである。
図1は、後述するイオン交換器1が取付けられる燃料電池システムの冷却系50を示す概略構成図である。
【0032】
同図に示すように、冷却系50においては、冷却液を循環させる流路が、主に燃料電池51の導入口51aとラジエータ52の導出口52bとを接続する上流側配管53と、燃料電池51の導出口51bとラジエータ52の導入口52aとを接続する下流側配管54と、ラジエータ52と並列に上流側配管53と下流側配管54とに接続されたバイパス配管55とからなる。
【0033】
バイパス配管55にはイオン交換器1が設置され、バイパス配管55と上流側配管53との接続部位には三方弁(三方電磁弁)60が設置されている。また、三方弁60と燃料電池51の間の上流側配管53には、冷却液を循環させるためのポンプ61が設置されている。尚、三方弁60の切換制御やポンプ61の駆動制御など、冷却系50に係る各種制御は図示しない制御ユニットにより行われる。
【0034】
ここで、まず燃料電池51の構成について説明する。一般的な燃料電池(固体高分子型燃料電池)は、複数の発電セルを積層した燃料電池スタックを有する。発電セルは、電解質膜の両側に、それぞれ触媒層とガス拡散層とからなるアノード(燃料極)及びカソード(空気極)を配設した膜電極複合体(MEA)が一対のセパレータにより挟持されてなる。
【0035】
各発電セルのアノードには燃料ガス(例えば水素ガス)が供給され、カソードには酸化ガス(例えば空気)が供給される。アノードに燃料ガスが供給されることで、燃料ガスに含まれる水素がアノードを構成する触媒層の触媒と反応し、これによって水素イオンが発生する。発生した水素イオンは電解質膜を通過して、カソードで酸素と化学反応を起こす。この化学反応によって発電が行われる。
【0036】
各発電セルは発電に伴って発熱する。燃料電池51(燃料電池スタック)には、各発電セルに対し冷却液を流通させるための流路(図示略)が形成されており、上記導入口51aから内部に導入された冷却液によって発電セルが冷却される。そして、熱交換を終えた冷却液は上記導出口51bから排出される。
【0037】
尚、本実施形態では、冷却液として水にエチレングリコール(不凍液)を含有させたLLC(ロングライフクーラント)が用いられている。このため、冷却液により燃料電池51の発電セルが冷却されるとき、冷却液の中に含まれるエチレングリコールが加熱分解されて、酸(例えばギ酸等)が生成され、この酸によりマイナスのイオンが生成される。また、酸により冷却液の循環流路(配管53,54,55等)の内面が腐蝕されると、プラスのイオンも生成される。このようにして、冷却液はマイナスのイオンとプラスのイオンが混在した不純物イオンを含有する。このイオンは電荷をもっているので、冷却液に含まれる不純物イオンの濃度が高くなるほど、冷却液の導電率が上昇する。その結果、冷却液を通じて燃料電池51から外部へ漏電するおそれがある。
【0038】
一方、ラジエータ52は、図示しない送風ファンによって空気を吹き付けて、燃料電池51によって温められた冷却液を冷却するためのものである。冷却液はラジエータ52内を通過する際に放熱され、冷却される。本実施形態では、燃料電池51の温度が最適温度(例えば65℃)となるように冷却液の流れが制御されている。
【0039】
三方弁60は、冷却液が流れる流路を切換えるためのものである。より詳しくは、燃料電池51の温度が最適温度を下回っている場合には、三方弁60の第1入口(ラジエータ52側)が閉じられ、第2入口(バイパス配管55側)及び出口(ポンプ61側)が開かれる。これにより、冷却液はポンプ61の駆動により燃料電池51とバイパス配管55との間を循環する。これに対し、燃料電池51の温度が最適温度を上回ると、三方弁60の第1入口及び出口が開かれ、第2入口が閉じられる。これにより、冷却液はポンプ61の駆動により燃料電池51とラジエータ52との間を循環し、燃料電池51の冷却が図られる。
【0040】
従って、燃料電池51の温度が最適温度を下回っている場合には、常に冷却系50内のすべての冷却液がバイパス配管55を通って循環することとなる。この際、冷却液がイオン交換器1を通過することにより、冷却液に含まれる不純物イオンが一部除去される。これにより、冷却液の導電率の上昇を抑制している。
【0041】
以下、イオン交換器1の構成について
図2〜
図4を参照して詳しく説明する。
図2はイオン交換器1を示す分解斜視図である。
図3は冷却液が流れていない状態のイオン交換器を示す断面図であり、
図4は冷却液が流れている状態のイオン交換器を示す断面図である。
【0042】
イオン交換器1は、バイパス配管55と接続される連通管部2と、該連通管部2と一体形成された外筒部3と、該外筒部3の内部に収容される内筒部4と、外筒部3を塞ぐ蓋部5とを備えてなる。外筒部3、内筒部4及び蓋部5により本実施形態における収容ケース部が構成される。
【0043】
連通管部2は、全体として直線状に形成された略円筒状をなす。連通管部2は、その中心軸線C1が略水平方向に沿うようにバイパス配管55に対し接続される。
【0044】
連通管部2は、その長手方向一端部において上流側のバイパス配管55aを接続可能な導入側継手部2aを備え、長手方向他端部において下流側のバイパス配管55bを接続可能な導出側継手部2bを備えている。導入側継手部2aの開口部が連通管部2の導入口を構成し、導出側継手部2bの開口部が連通管部2の導出口を構成する。
【0045】
外筒部3は、連通管部2から上方へ突出形成されており、上面が開口した有底円筒状をなす。但し、連通管部2と外筒部3は開口部9を介して内部で連通している。
【0046】
連通管部2の中心軸線C1と外筒部3の中心軸線C2は直交しており、イオン交換器1がバイパス配管55に取付けられた状態では、外筒部3の中心軸線C2が略鉛直方向に沿った状態となる。
【0047】
連通管部2内には、上記開口部9に対応して流路区画壁10が設けられている。本実施形態の流路区画壁10は連通管部2と一体形成されている。
【0048】
流路区画壁10は、連通管部2の導入口から導入される冷却液を導出口へ通過させる第1流路11と、冷却液の一部が分岐して流れる後述の第2流路12とに流路を分岐させるためのものである。つまり、流路区画壁10が設けられることにより、第2流路12の導入口に繋がる導入流路13が連通管部2内に形成されることとなる。従って、流路区画壁10(導入流路13)により本実施形態における導入手段が構成される。
【0049】
流路区画壁10は、連通管部2の中心軸線C1に沿って形成された略水平板状の横壁部10aと、該横壁部10aの下流側端部から外筒部3の中心軸線C2に沿って上方(開口部9側)へ突出形成された略平板状の縦壁部10bと備え、全体として断面略L字状に形成されている。但し、横壁部10aと縦壁部10bの連接部における導入流路13側の面は、冷却液が第2流路12へ流れやすくなるように略円弧状の湾曲面となっている。
【0050】
内筒部4は、全体として略円筒状をなし、その中心軸線C3が外筒部3の中心軸線C2と重なるように外筒部3内に収容されている。
【0051】
内筒部4には、その内部を2つのエリアに仕切る隔壁部15が形成されている。隔壁部15は、連通管部2の中心軸線C1と直交しかつ中心軸線C3を含む平面に沿って形成されている。但し、隔壁部15の上端部は、内筒部4の上端部よりも低い位置に設けられており、2つのエリアは内筒部4の上部において連通している。
【0052】
一方、隔壁部15の下端部は内筒部4の下端部よりも下方へ突出しており、内筒部4が外筒部3に収容された状態で、流路区画壁10の縦壁部10bの上端部と係合するように構成されている。
【0053】
これにより、連通管部2の開口部9が上流側と下流側とに2つに仕切られた状態となる。そして、連通管部2と内筒部4は、内筒部4の上流側の下開口部4a及び連通管部2の上流側の開口部9aを介して連通した状態となると共に、内筒部4の下流側の下開口部4b及び連通管部2の下流側の開口部9bを介して連通した状態となる。
【0054】
かかる構成により、連通管部2から導入流路13を介して冷却液の一部が導入され、内筒部4の内部を通り、再び連通管部2へ戻る全体として逆U字状に屈曲した第2流路12が形成されることとなる。ここで、内筒部4の上流側の下開口部4aにより第2流路12の導入口が構成され、内筒部4の下流側の下開口部4bにより第2流路12の導出口が構成される。
【0055】
内筒部4(第2流路12)には、冷却液に含まれる不純物イオンをイオン交換により除去可能な粒状のイオン交換樹脂16が収容されている。イオン交換樹脂16は公知のものであり、本実施形態ではマイナスのイオンを吸着するアニオン交換樹脂と、プラスのイオンを吸着するカチオン交換樹脂とが混在するように収容されている。
【0056】
内筒部4の下開口部4a,4bには網目状のメッシュ17が取付けられている。メッシュ17は、冷却液の通過を許容する一方、イオン交換樹脂16の通過を阻止するためのものである。
【0057】
内筒部4は、その上開口部4cの周縁が蓋部5の内面(裏面)に対し所定の接着手段により固定されている。これにより、内筒部4と蓋部5が一体となって、イオン交換樹脂16が内部に封入された1つの交換カートリッジとして取り扱い可能となる。また、蓋部5の内面によって第2流路12の一部が構成されることとなる。
【0058】
一方、蓋部5は外筒部3に対し着脱可能に固定されている。本実施形態では、外筒部3の上開口部3aの周縁に形成されたフランジ部3bに対しパッキン19を介して複数のボルト20により締結されている。
【0059】
次に上記のように構成された本実施形態のイオン交換器1の作用について説明する。
【0060】
上流側のバイパス配管55aを介して連通管部2に導入された冷却液は、流路区画壁10により分岐され、その一部が導入流路13を介して第2流路12へ導かれる。残りの冷却液は、第1流路11を介して導出口へ導かれ、下流側のバイパス配管55bへ排出される。
【0061】
尚、
図4に示すように、本実施形態では、冷却液の流通時に、内筒部4内においてイオン交換樹脂16が下流側に押し流され、第2流路12の導入口(内筒部4の下開口部4a)近傍にイオン交換樹脂16が存在しない導入空間部25が形成されるように構成されている。従って、導入流路13によって上方へ流れを曲げられた冷却水は、第2流路12の導入口(内筒部4の下開口部4a)を介して、まず導入空間部25へ入ることとなる。
【0062】
冷却液の流れが導入流路13によって強制的に曲げられる構成の下、仮に導入空間部25が形成されず、第2流路12の導入口までイオン交換樹脂16が充填されている場合には、イオン交換樹脂16の導入面に対し冷却液が均一に導入されないおそれがある。また、冷却液にエアが混入している場合には、該エアが第2流路12に導入されずに、導入流路13に滞留してしまうおそれがある。
【0063】
これに対し、本実施形態では、導入空間部25が形成されることで、該導入空間部25内において冷却液がより均一化されるため、イオン交換樹脂16の導入面に対し、より均一に冷却液を導入することができる。また、冷却液にエアが混入している場合には、導入空間部25内にエアを集めることができ、より確実にイオン交換樹脂16にエアを導入することができる。
【0064】
導入空間部25を通過した冷却液はイオン交換樹脂16の隙間を通り、第2流路12に沿って上方へ向け流れる。この際、冷却液にエアが混入している場合には、該エアはイオン交換樹脂16の間を通過可能な大きさに細分化され、押し流される。
【0065】
その後、冷却液は第2流路12に沿って隔壁部15の上端部でUターンして、第2流路12の導出口(内筒部4の下開口部4b)に向け下方へ流れる。この移動の間に、冷却液に含まれる不純物イオンはイオン交換樹脂16によって除去される。
【0066】
そして、冷却液は第2流路12の導出口から連通管部2へ排出される。このようにして連通管部2に排出された冷却液は、連通管部2内の冷却液と合流し、連通管部2の導出口へ導かれ、下流側のバイパス配管55bへ排出される。
【0067】
尚、本実施形態では、流路区画壁10の縦壁部10bが第1流路11の流路方向に対し直交するように形成されている。このため、第1流路11に冷却液が流れる際に、第2流路12の導出口近傍に負圧を生じさせることができる。これにより、第2流路12を流れる冷却液の流速を上げると共に、第2流路12の導出口からの冷却液の導出効率を向上させることができる。
【0068】
以上詳述したように、本実施形態によれば、連通管部2(第1流路11)を備えることにより、イオン交換器1へ導入される冷却液の一部を内筒部4(イオン交換樹脂16の充填部)を介さず真っ直ぐに通過させ、最短距離でイオン交換器1から導出することができる。結果として、圧力損失を極めて小さくすることができる。
【0069】
また、圧力損失を低減するために、内筒部4(イオン交換樹脂16の充填部)を迂回する迂回流路を外筒部3内に設ける必要もなく、さらに連通管部2の長さも短くできるため、イオン交換器1の小型化を図ることができる。
【0070】
さらに、本実施形態では、冷却液の一部が連通管部2から分岐して流れる第2流路12を備え、ここにイオン交換樹脂16を収容し、冷却液に含まれるイオンを除去する構成となっている。本実施形態では、連通管部2(第1流路11)を備えているため、圧力損失の増大等を考慮することなく、第2流路12を細くかつ長く形成することが可能となる。これにより、第2流路12の流路断面積を大きくすることなく、より多くのイオン交換樹脂16を収容することができる。結果として、イオンの交換効率の低下抑制を図ると共に、第2流路12を通過する冷却液の流速の低下抑制を図ることができる。
【0071】
また、このように第2流路12を細長くして冷却液の流速を速めることで、冷却液に混入したエアを排出しやすくなる。特に本実施形態では、冷却液が第2流路12を通過する際に、冷却液が粒状のイオン交換樹脂16の狭い隙間を通ることで、冷却液の流速が上がると共に、エアが小さい粒に細分化されるため、さらにエアが排出されやすくなる。
【0072】
加えて、本実施形態では、第2流路12へ冷却液を導入させる流路区画壁10(導入流路13)が連通管部2内に配置されている。これにより、第2流路12へ冷却液を導入しやすくなり、イオンの交換効率の向上を図ることができる。また、イオン交換器1の大型化を抑制することができる。
【0073】
また、本実施形態では、連通管部2が外筒部3の下部に設けられているため、イオン交換樹脂カートリッジ(内筒部4及び蓋部5)の交換作業を行う際に、外筒部3内に冷却液が残留せず、交換作業が行いやすくなる。
【0074】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0075】
(a)上記実施形態では、本発明を燃料電池自動車における燃料電池システムの冷却系に用いられるイオン交換器として具体化したが、これに限らず、例えば工場や一般家庭の発電用の燃料電池システムの冷却系に用いられるイオン交換器として具体化してもよい。
【0076】
(b)イオン交換器1の取付位置など、冷却系50の構成は上記実施形態に限定されるものではない。例えばラジエータ52やバイパス配管55への冷却液の流量を制御可能な冷却系にイオン交換器1を取付けた構成としてもよい。また、バイパス配管55から分岐した第2のバイパス配管を設け、該第2のバイパス配管にイオン交換器1を取付けた構成としてもよい。
【0077】
(c)上記実施形態では、直線状に形成された略円筒状の連通管部2を採用しているが、連通管部の構成は、これに限定されるものではない。例えば冷却液を円滑に流すことができる程度に緩やかに湾曲又は屈曲した形状の連通管部を採用してもよい。
【0078】
(d)上記実施形態では、第2流路12へ冷却液を導入させる導入手段として、流路区画壁10が連通管部2に一体形成されている。導入手段は、これに限定されるものではなく、他の構成を採用してもよい。
【0079】
例えば
図5に示すように、連通管部2から流路区画壁10を省略すると共に、内筒部4とは異なる内筒部30を採用した構成としてもよい。内筒部30は、有底円筒状をなし、外筒部3内に収容されている。但し、内筒部30の下端部は開口部9を介して連通管部2に突出している。
【0080】
内筒部30には、その内部を2つのエリアに仕切る隔壁部31が形成されている。隔壁部31の上端部は、内筒部30の上端部よりも低い位置に設けられており、2つのエリアは内筒部30の上部において連通している。一方、隔壁部31の下端部は内筒部30の底部32に連接されている。
【0081】
連通管部2内に露出した内筒部30の外周面には、上流側において側面開口部33aが形成され、下流側において側面開口部33bが形成されている。側面開口部33a,33bには網目状のメッシュ34が取付けられている。
【0082】
そして、内筒部30の底部32と連通管部2の内壁部との間に第1流路35が形成される。一方、連通管部2から側面開口部33aを介して冷却液の一部が導入され、内筒部30の内部を通り、側面開口部33bを介して再び連通管部2へ戻る第2流路36が形成される。内筒部30(第2流路36)にはイオン交換樹脂37が収容されている。本実施形態においては、第2流路36の導入口を構成する側面開口部33aにより導入手段が構成される。
【0083】
また、連通管部2内への内筒部30の突出量を調節可能な構成とし、これにより第2流路36へ導入される冷却液の流量を調節可能な構成としてもよい。
【0084】
(e)上記実施形態に係る流路区画壁10は、第1流路11の流路方向に沿って形成された横壁部10aと、該横壁部10aの下流側端部において前記流路方向と直交する方向に沿って形成された縦壁部10bと備え、全体として断面略L字状に形成されている。
【0085】
これに限らず、例えば冷却液が第2流路12の導入口に向け流れやすくなるように断面略円弧状に湾曲した流路区画壁を設けた構成としてもよい。
【0086】
(f)上記実施形態では、冷却液の流通時に、内筒部4内においてイオン交換樹脂16が下流側に押し流され、第2流路12の導入口(内筒部4の下開口部4a)近傍にイオン交換樹脂16が存在しない導入空間部25が形成される構成となっている。
【0087】
これに限らず、内筒部4の下開口部4aよりも下流側にメッシュ17を取付け、冷却液の流通前より予め導入空間部が形成されている構成を採用してもよい。
【0088】
(g)イオン交換樹脂16が収容される収容ケース部としての外筒部3、内筒部4及び蓋部5の構成は、上記実施形態に限定されるものではなく、他の構成を採用してもよい。
【0089】
また、外筒部3や内筒部4を円筒形状ではなく、楕円筒状や四角形筒状に構成してもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、内筒部4が蓋部5の内面に対し所定の接着手段により固定され、内筒部4と蓋部5が一体となって、イオン交換樹脂16が内部に封入された1つの交換カートリッジとして取り扱い可能な構成となっている。
【0091】
これに限らず、例えば内筒部4と蓋部5とが着脱自在に構成され、カートリッジ交換時には内筒部4のみ交換する、又は、内筒部4内のイオン交換樹脂16のみ交換する構成としてもよい。また、内筒部4と蓋部5が組付けられることなく、それぞれ別々に取り扱う構成としてもよい。
【0092】
また、蓋部5と外筒部3の組付け構成も上記実施形態に限定されるものではなく、他の構成を採用してもよい。例えば外筒部3の外周部に雄ネジ部を形成し、蓋部5の内側に雌ネジ部を形成し、両者を螺合する構成としてもよい。
【0093】
(h)上記実施形態では、連通管部2の中心軸線C1が略水平方向に沿い、外筒部3の中心軸線C2(内筒部4の中心軸線C3)が略鉛直方向に沿うように、イオン交換器1が設置される構成となっている。
【0094】
これに限らず、例えば連通管部2の中心軸線C1が略鉛直方向に沿い、外筒部3の中心軸線C2(内筒部4の中心軸線C3)が略水平方向に沿うように、イオン交換器1が設置される構成としてもよい。
【0095】
また、連通管部2の中心軸線C1が略水平方向に沿い、外筒部3の中心軸線C2(内筒部4の中心軸線C3)が略水平方向に沿うように、イオン交換器1が設置される構成としてもよい。
【0096】
また、連通管部2の中心軸線C1や、外筒部3の中心軸線C2(内筒部4の中心軸線C3)が水平方向や鉛直方向に対して傾斜するように、イオン交換器1が設置される構成としてもよい。