(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記液体供給部及び前記栽培ユニットは、貯液槽がそれぞれ設けられた複数の処理エリアに移動可能となっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の植物栽培装置。
前記支持部材は、前記液体供給部に接続され、前記植物栽培筒に液体を供給する補助タンクを更に支持することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の植物栽培装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した文献に記載の野菜の育成方法においては、野菜に供給する培養液を変更して栽培を行なう。すなわち、野菜の栽培環境を変更することにより、目的の野菜を育成している。しかしながら、野菜の量産工程において、栽培環境を変更する場合、環境変更のための作業負担が大きかった。例えば、通常の培養液を用いて栽培した後、鉄や亜鉛の濃度が高い培養液で栽培するため、培養液を切り替える必要がある。従って、培養液の交換等の作業に時間がかかるため、作業負担が大きく、また植物に影響が出る場合があった。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされ、その目的は、植物の栽培環境を効率的に変更するための植物栽培装置及び植物栽培方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
・上記課題を解決する植物栽培装置は、植物を配置する設置部を設け、垂直方向に立設させた植物栽培筒を含む栽培ユニットと、前記植物栽培筒に液体を供給する液体供給部と、前記液体供給部と前記栽培ユニットとを移動可能に支持する支持部材とを備えた植物栽培装置であって、前記液体供給部が、移動先の貯液槽から液体を、前記植物栽培筒に供給する。これにより、植物栽培筒を移動させることにより植物の栽培環境を効率的に変更することができる。
【0007】
・上記植物栽培装置において、前記貯液槽は、前記植物栽培筒の上方に設置されていることが好ましい。これにより、高低差を利用して、液体を、貯液槽から植物栽培筒に供給することができる。
【0008】
・上記植物栽培装置において、前記液体供給部及び前記栽培ユニットは、貯液槽がそれぞれ設けられた複数の処理エリアに移動可能となっていることが好ましい。これにより、植物栽培筒を各処理エリアに移動させて、植物栽培筒に配置される植物の栽培環境を変更することができる。
【0009】
・上記植物栽培装置において、前記支持部材は、前記液体供給部に接続され、前記植物栽培筒に液体を供給する補助タンクを更に支持することが好ましい。これにより、補助タンクから液体を流すことにより、移動先の貯液槽からの液体供給時等において、液体供給部に混入した空気を排出して、貯液槽から植物栽培筒に液体を、より確実に供給することができる。
【0010】
・上記植物栽培装置において、前記支持部材は、前記植物栽培筒を吊り下げた状態でガイドするガイドレールを備えていることが好ましい。これにより、植物栽培筒を吊り下げてガイドして移動させるので、植物栽培筒の下方に作業空間を確保することができる。
【0011】
・上記植物栽培装置において、前記植物栽培筒の管理を行なう制御部を更に備え、前記制御部は、前記栽培ユニットを特定するための識別情報に関連付けて、前記液体の供給開始時期を記憶する管理情報記憶部を備えており、前記制御部は、移動させた前記植物栽培筒に、移動先の貯液槽から液体を供給し始めた時期を、前記供給開始時期として前記管理情報記憶部に記憶することが好ましい。これにより、植物栽培筒において、的確な栽培環境を管理することができる。
【0012】
・上記植物栽培装置において、前記制御部は、前記管理情報記憶部に記録された供給開始期間からの経過時間を計測し、前記経過時間が、前記液体を供給して処理を実行する予定期間を経過した場合には、前記栽培ユニットを移動させることが好ましい。これにより、設置場所の移動により、栽培環境を変更することができる。
【0013】
・上記課題を解決する植物栽培方法は、植物を配置する設置部を設けた植物栽培筒に、複数の貯液槽から異なる液体を、液体供給部を介して供給して、前記植物を栽培する方法であって、前記植物栽培筒を含む栽培ユニットを前記液体供給部とともに移動させて、移動先の前記貯液槽から、前記液体を前記植物栽培筒に供給させる。これにより、植物栽培筒を移動させることにより、植物の栽培環境を効率的に変更することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、植物の栽培環境を効率的に変更することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1〜
図6を用いて、植物栽培装置及び植物栽培方法の一実施形態を説明する。本実施形態では、植物として、食用植物(例えばレタスや青梗菜等の葉物野菜)を栽培する。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の植物栽培装置10が配置される空間は、植物に供給する液体が異なる複数の処理エリア(A1,A2)に区画されている。ここでは、通常の培養液を用いて育成処理を実行する育成処理エリアA1と、鉄分を増加させるためにクエン酸アンモニウム鉄溶液を用いて浸漬処理を実行する浸漬処理エリアA2として説明する。植物栽培装置10は、ガイドレール15に沿って移動可能に、立設された複数の栽培ユニット20を有している。また、各処理エリア(A1,A2)の入口のガイドレール15には、後述するコード画像を読み取るためのコードリーダ(図示せず)が設けられる。
【0018】
各処理エリア(A1,A2)には、それぞれ、栽培ユニット20に液体(通常の培養液又はクエン酸アンモニウム鉄溶液)を供給する貯液槽30a,30bが、栽培ユニット20の上方に配置されている。
【0019】
更に、各処理エリア(A1,A2)には、栽培ユニット20の下方に、受液槽40a,40bと、栽培ユニット20からの液体を受液槽40a,40bに導く戻り管41a,41bとが配置されている。受液槽40a,40bには、ポンプ42a,42bと、貯液槽30a,30bに液体を供給する供給管45a,45bの端部とが設けられている。各ポンプ42a,42bは、貯液槽30a,30bに収容されている液体が少なくなったことを検知した場合に駆動されて、受液槽40a,40bから貯液槽30a,30bに、供給管45a,45bを介して液体を供給する。
【0020】
図2(a)に示すように、栽培ユニット20は、複数(本実施形態では4つ)の植物栽培筒P1によって構成されている。各植物栽培筒P1は、
図2(b)に示すように、鉛直方向(垂直方向)に延在するように立設されている。各植物栽培筒P1には、複数の植物設置部Paが、所定の間隔で形成されている。本実施形態では、植物設置部Paは、植物栽培筒P1の長手方向(垂直方向)に対して、一列で形成されている。植物設置部Paは、筒形状をしており、植物栽培筒P1の長手方向(垂直方向)に対して、所定方向(例えば45度)で固定されている。そして、一端部は斜め方向(例えば45度)に開口されている。
【0021】
図2(b)に示すように、植物設置部Paの端部は、斜め上側に開口しており、植物の苗が植わった培地G1を保持できるように構成されている。また、植物設置部Paは、端部に苗が設置された場合に、苗の根が、植物栽培筒P1内に位置する大きさで形成されている。
【0022】
図3に示すように、上述した栽培ユニット20のそれぞれには、吊下部材21を介して、移動装置22が取り付けられている。吊下部材21には、この栽培ユニット20を特定するためのユニット識別子及びこの識別子を含むコード画像が表示されたラベルが貼付されている。
【0023】
移動装置22は、移動支持部を備え、栽培ユニット20を移動させる。この移動装置22は、軸部材によって1対(2つ)のローラを一体に固定して構成されている。これらローラ間の軸には、吊下部材21の上端部が固定されている。従って、移動装置22は、吊下部材21を介して栽培ユニット20を吊り下げた状態で移動可能に支持している。更に、移動装置22は、移動支持部のローラを駆動するモータを備えている。この移動支持部のモータ駆動により、栽培ユニット20がガイドレール15に沿って移動する。
【0024】
移動装置22には、制御装置50と通信を行なうための通信部を備える。そして、通信部には、移動装置22が設けられた栽培ユニット20を特定するためのユニット識別子が割り振られている。
【0025】
更に、栽培ユニット20には、栽培ユニット20と一体化された液体供給部LSが取り付けられている。この液体供給部LSは、貯液槽30a,30bから栽培ユニット20の植物栽培筒P1に液体を供給する供給管25を備えている。この供給管25の途中には、開閉弁25aが設けられている。更に、各供給管25には、貯液槽30a,30bからの取り入れ部の高さを調整するための昇降機構(図示せず)が設けられている。また、各供給管25の下端の先端部は、分岐されており、
図2(b)に示すように、栽培ユニット20の各植物栽培筒P1に挿入された供給管28に接続されている。なお、各供給管25の先端部と各供給管28との間には、流量調整弁(図示せず)が設けられている。
【0026】
更に、各供給管25には、開閉弁25aよりも下流側に、接続管27を介して、補助タンク26が接続されている。この補助タンク26には、供給管の中の気体を排出するための呼び水が収容される。また、接続管27の途中には、開閉弁27aが設けられている。
【0027】
次に、
図4〜
図6を用いて、植物栽培装置10を用いて、鉄分を増量させたホウレン草を生産する場合の実施例について説明する。ここでは、例えば、通常の培養液を用いて、ホウレン草を21日育成させる。その後、そのホウレン草を、クエン酸アンモニウム鉄溶液に17時間浸漬させて鉄分を吸収させて強化させる。そして、この鉄分を吸収させたホウレン草に、3日、水を供給して、脱硝酸態窒素処理を実行する。
【0028】
このため、植物栽培装置10は、定植エリア、育成処理エリアA1、浸漬処理エリアA2及び収穫エリア以外に、脱硝酸態窒素処理エリアA3を備えている。そして、
図4に示すように、栽培ユニット20を、育成処理エリアA1、浸漬処理エリアA2及び脱硝酸態窒素処理エリアA3の順番で移動させる。このため、植物栽培装置10には、各処理エリア(A1〜A3)が、処理を行なう順番で配置されている。なお、各処理エリア(A1〜A3)は、栽培ユニット20を載置するユニット数に応じた長さに設定されている。
【0029】
そして、育成処理エリアA1においては、通常の培養液を栽培ユニット20に供給し、浸漬処理エリアA2においては、クエン酸アンモニウム鉄溶液を栽培ユニット20に供給し、脱硝酸態窒素処理エリアA3においては、水を栽培ユニット20に供給する。また、各処理エリア(A1〜A3)には、植物の明期を生成する光源が配置されている。本実施形態では、光源として、垂直方向に延在させた蛍光灯型LED(発光ダイオード)を用いる。
なお、定植エリアの出口、脱硝酸態窒素処理エリアA3の入口及び収穫エリアの入口のガイドレール15にも、コード画像を読み取るためのコードリーダが設けられる。
【0030】
図5に示すように、植物栽培装置10は、移動する栽培ユニット20を管理する制御装置50を備えている。この制御装置50は、制御部として機能し、管理制御部51及び管理データ記憶部55を備えている。
【0031】
管理制御部51は、ガイドレールのコードリーダ、栽培ユニット20の液体供給部LSの開閉弁25a,27a、昇降装置及び移動装置22に接続されている。管理制御部51は、各所に配置されたコードリーダから、栽培ユニット20のコード画像を取得し、栽培ユニット20の移動を特定する。
【0032】
更に、管理制御部51は、管理データ記憶部55に記憶した管理データを用いて、各栽培ユニット20の処理状況を管理する。また、管理制御部51は、栽培ユニット20を支持している移動装置22を制御し、栽培ユニット20の移動を管理する。更に、管理制御部51は、各処理の予定期間(育成処理は21日、浸漬処理は17時間、脱硝酸態窒化処理は3日)を記憶している。
【0033】
管理データ記憶部55は、各栽培ユニット20に関する管理データを記憶する。この管理データは、各栽培ユニット20に、ホウレン草の苗を定植した場合に登録される。この管理データは、ユニット識別子、育成開始日時、浸漬処理開始日時、脱硝酸態窒素処理開始日時及び収穫日時に関するデータを含んで構成される。
【0034】
ユニット識別子データ領域には、各栽培ユニット20を特定するための識別子(ユニット識別子)に関するデータが記録される。
育成開始日時データ領域、浸漬処理開始日時データ領域、脱硝酸態窒素処理開始日時データ領域には、この栽培ユニット20が育成処理、浸漬処理、脱硝酸態窒素処理をそれぞれ開始したときの年月日及び時刻に関するデータが記録される。
収穫日時データ領域には、この栽培ユニット20を用いて栽培した植物を収穫した日時に関するデータが記録される。
【0035】
更に、制御装置50は、入力部61及び表示部62に接続されている。
入力部61は、キーボードやポインティングデバイスを備え、制御装置50に、ユニット識別子等の情報を入力する。
【0036】
表示部62は、ディスプレイを備え、入力したユニット識別子や現在の処理状況等を表示する。
【0037】
次に、
図6を用いて、鉄分を増量させたホウレン草の栽培管理処理について説明する。
まず、栽培ユニット20におけるホウレン草の定植を行なう。具体的には、定植エリアにおいて、作業者は、栽培ユニット20の各植物栽培筒P1の各植物設置部Paに、ホウレン草の苗が植わった培地G1を固定する。
【0038】
そして、
図6に示す栽培管理開始処理において、制御装置50の管理制御部51は、まず、栽培ユニットの識別情報の登録処理を実行する(ステップS1−1)。具体的には、栽培ユニット20を、定植エリアの出口へと移動させる。この場合、定植エリアの出口のガイドレール15に設けられたコードリーダが、定植した栽培ユニット20に貼付されているラベルのユニット識別子を読み込み、制御装置50の管理制御部51に送信する。制御装置50の管理制御部51は、入力されたユニット識別子を含む管理データを管理データ記憶部55に記録する。
【0039】
次に、制御装置50の管理制御部51は、育成処理エリアへの移動処理を実行する(ステップS1−2)。具体的には、管理制御部51は、定植した栽培ユニット20の移動装置22を駆動して、この栽培ユニット20を育成処理エリアA1に移動させる。
【0040】
そして、育成処理、浸漬処理、脱硝酸態窒素処理の各処理について、制御装置50は、以下の栽培ユニット管理処理を実行する。
栽培ユニット管理処理において、まず、制御装置50の管理制御部51は、処理の開始処理を実行する(ステップS2−1)。具体的には、管理制御部51は、この処理エリアの入口のコードリーダを介して、移動してきた栽培ユニット20のユニット識別子を読み取る。そして、管理制御部51は、この栽培ユニット20の供給管25の昇降機構を駆動して、供給管25の端部を貯液槽(30a,30b)の液体を吸込み可能な高さまで降下させる。次に、管理制御部51は、栽培ユニット20に液体供給部LSの開閉弁25a,27aを開いて、補助タンク26から水を流すことにより、供給管25の空気を排出する。供給管25の空気が押し出されると、貯液槽(30a,30b)から液体が、各栽培ユニット20の植物栽培筒P1を流れる。貯液槽(30a,30b)から液体が植物栽培筒P1に流れ始めた場合には、液体供給部LSの開閉弁27aを閉じる。
【0041】
そして、制御装置50の管理制御部51は、この栽培ユニット20のユニット識別子が設定された管理データの開始日時データ領域に、現在の日時を記録する。育成処理エリアA1においては育成開始日時、浸漬処理エリアA2においては浸漬処理開始日時、脱硝酸態窒素処理エリアA3においては脱硝酸態窒素処理開始日時が記録される。以上により、栽培ユニット20に定植されたホウレン草は、育成処理エリアA1においては培養液を用いて育成され、浸漬処理エリアA2においてはクエン酸アンモニウム鉄溶液を用いて鉄分が増加され、脱硝酸態窒素処理エリアA3においては水を用いて硝酸態窒素が除去される。
【0042】
そして、栽培ユニット管理処理においては、定期的に、制御装置50の管理制御部51は、各処理エリア(A1〜A3)に配置されている栽培ユニット20の管理データを特定する。具体的には、管理制御部51は、管理データ記憶部55から、この処理エリアの開始日時が記録され、かつ次の処理エリアの開始日時が記録されていない管理データを抽出する。
【0043】
次に、抽出した管理データについて、順次、処理対象を特定し、この管理データに含まれるユニット識別子によって栽培ユニット20の管理データを特定する。そして、処理対象の栽培ユニット20毎に、以下の処理を繰り返して実行する。
【0044】
まず、制御装置50の管理制御部51は、栽培ユニットの処理経過時間の算出処理を実行する(ステップS2−2)。具体的には、管理制御部51は、特定した管理データに含まれる現在の処理エリアの開始日時を、現在日時から減算して、この処理エリアの処理開始日時からの経過時間を算出する。
【0045】
次に、制御装置50の管理制御部51は、処理終了か否かの判定処理を実行する(ステップS2−3)。具体的には、管理制御部51は、ステップS2−2において算出した経過時間が、この処理の予定期間を経過したか否かを判定する。ここで、経過時間がこの処理の予定期間を経過しておらず、処理終了ではないと判定した場合(ステップS2−3において「NO」の場合)、この処理をそのまま継続する。
【0046】
一方、経過時間が、この処理の予定期間を経過しており、処理終了と判定した場合(ステップS2−3において「YES」の場合)、制御装置50の管理制御部51は、次のエリアへの移動処理を実行する(ステップS2−4)。具体的には、管理制御部51は、処理対象の栽培ユニット20の液体供給部LSの開閉弁25aを閉じる。更に、管理制御部51は、昇降機構を駆動して、供給管25の端部を貯液槽30aの壁面を超える高さまで引き上げる。次に、管理制御部51は、栽培ユニット20の移動装置22を駆動して、この栽培ユニット20を次のエリアに移動させる。
【0047】
そして、制御装置50は、次の処理エリアに移動した栽培ユニット20は、移動先の処理エリアにおいて、上述した栽培ユニット管理処理を実行する。
以上のようにして、移動装置22は、育成処理エリアA1、浸漬処理エリアA2、脱硝酸態窒素処理エリアA3を順次、移動した栽培ユニット20を、最終的に、収穫エリアに移動させる。
【0048】
そして、栽培ユニット20が収穫エリアの入口に至ると、コードリーダが、栽培ユニット20のユニット識別子を読み取り、制御装置50に送信する。制御装置50は、取得したユニット識別子を含む管理データを管理データ記憶部55において特定し、この管理データの収穫日時データ領域に現在日時を記録する。そして、収穫エリアに到着した植物栽培筒P1から、ホウレン草を収穫する。
【0049】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、植物栽培装置10は、垂直方向に立設させた植物栽培筒P1と液体供給部LSとを移動可能に支持している移動装置22を備える。液体供給部LSは、移動先の浸漬処理エリアA2の貯液槽30bから、植物栽培筒P1にクエン酸アンモニウム鉄溶液を供給する。これにより、植物栽培筒P1を移動させて、栽培環境を変更することができる。栽培環境として、供給する液体を変更するので、貯液槽30a,30bの液体の入れ替えを行なう必要がなく、植物に供給する液体を効率的に変更することができる。
【0050】
(2)本実施形態では、貯液槽30a,30bは、植物栽培筒P1の上方に設置されている。これにより、高低差によって、液体を、貯液槽30a,30bから植物栽培筒P1に流すことができる。
【0051】
(3)本実施形態では、移動装置22は、液体供給部LSに接続され、植物栽培筒P1に液体を供給する補助タンク26を更に支持する。これにより、補助タンク26から液体を流すことにより、液体の切り替え時に、液体供給部LSの供給管25に混入した空気を迅速に排出させることができる。
【0052】
(4)本実施形態では、移動装置22は、吊下部材21を介して栽培ユニット20を吊り下げた状態で移動可能に支持している。これにより、植物栽培筒P1を吊り下げてガイドして、迅速に移動させることができる。また、植物栽培筒P1の下方に作業空間を確保できる。このため、植物栽培筒P1を通過した液体を貯液槽30a,30bに戻す構成にする場合には、貯液槽30a,30bに戻すための戻し管41a,41bや受液槽40a,40bを容易に配置することができる。
【0053】
(5)本実施形態では、制御装置50は、管理制御部51及び管理データ記憶部55を有している。管理データ記憶部55には、複数の植物栽培筒P1で構成される栽培ユニット20に関する管理データを記憶している。管理制御部51は、栽培ユニット20を移動させた移動先の貯液槽から液体を供給し始めた供給開始日時を、この栽培ユニット20のユニット識別子に関連付けて管理データに記録する。これにより、栽培ユニット20の各植物栽培筒P1における液体の供給開始を的確に管理することができる。
【0054】
(6)本実施形態では、制御装置50は、各処理の経過時間を算出し(ステップ2−2)、その処理が終了した場合(ステップS2−3において「YES」の場合)、次の処理エリアへの移動処理を実行する(ステップS2−4)。これにより、制御装置50は、栽培ユニット20を、各処理を的確な時間で行なうことができる。
【0055】
(7)本実施形態では、植物栽培装置10は、通常の培養液を栽培ユニット20に供給する育成処理エリアA1、クエン酸アンモニウム鉄溶液を栽培ユニット20に供給する浸漬処理エリアA2、水を栽培ユニット20に供給する脱硝酸態窒素処理エリアA3を備えている。これにより、栽培ユニット20の植物に供給する液体を迅速に変更して、鉄分を増量させたホウレン草を生産することができる。
【0056】
(8)本実施形態では、栽培ユニット20が、育成処理エリアA1、浸漬処理エリアA2及び脱硝酸態窒素処理エリアA3の順番で移動可能となるように、植物栽培装置10には、各処理エリア(A1〜A3)が順番に配置されている。更に、各処理エリア(A1〜A3)は、栽培ユニット20を載置するユニット数に応じた長さに設定されている。各処理の実施時間を考慮して、効率よく機能性野菜を生産することができる。
【0057】
また、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態においては、植物栽培筒P1を移動装置22に吊り下げて支持した。植物栽培筒P1を移動可能に支持する方法は、吊り下げに限定されない。例えば、植物栽培筒P1に車輪を付けて、移動可能にしてもよい。
【0058】
・上記実施形態においては、制御装置50は、4つの植物栽培筒P1から構成される栽培ユニット20毎に管理した。制御装置50は、植物栽培筒P1毎に管理してもよいし、2つ、3つ、4つより多くの植物栽培筒P1を1つのユニットとして管理してもよい。
【0059】
・上記実施形態においては、栽培ユニット20には、ユニット識別子を含むコード画像が表示されたラベルが設けられている。制御装置50は、取得したユニット識別子に応じて栽培ユニット20の場所を特定し、栽培ユニット20の移動装置22に、次の処理エリアへの移動処理を実行する。栽培ユニット20の管理や移動は、制御装置50による制御に限定されない。例えば、人手により行なうようにしてもよい。
【0060】
・上記実施形態において、液体供給部LSの供給管25には、貯液槽30a,30bからの取り入れ部の高さを調整できる昇降機構を設ける。移動時には、この昇降機構によって、供給管25における貯液槽30a,30b側の端部を、貯液槽の壁面を超える高さまで引き上げる。移動時に、貯液槽30a,30bの壁面を乗り越える供給管25の構成は、これに限定されず、例えば、供給管25における貯液槽30a,30b側の端部を、(ゴム等の)可撓性材料で構成してもよい。
【0061】
・上記実施形態においては、補助タンク26に貯水し、各処理エリアにおける処理を開始する際に、開閉弁27aを開けて、補助タンク26から水を流した。補助タンク26に貯蓄する液体は、水に限られず、例えば、栽培ユニット20に供給する液体と同じ液体を収容してもよい。この場合には、移動先に到着した際に、補助タンク26を交換してもよい。
【0062】
また、供給管25から空気を追い出すための構成は、補助タンク26を用いる構成に限定されない。例えば、供給管25にポンプを設け、供給する液体に切替時のみにポンプを駆動して、強制的に液体を供給して空気を追い出すようにしてもよい。
【0063】
・上記実施形態において、各処理エリア(A1〜A3)では、移動させた栽培ユニット20の植物栽培筒P1に供給する液体を変更する。栽培ユニット20を移動させる目的は、供給する液体を変更する場合に限られない。例えば、処理に適した光源を配置したエリア等、処理の環境を変更する場合に、栽培ユニット20を移動させてもよい。
【0064】
・上記実施形態において、植物栽培装置10は、レタスや青梗菜等の葉物を育成するとして説明した。育成する植物は、これに限定されず、例えば、苺等の植物であってもよい。