特許第6604286号(P6604286)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6604286サンドイッチ構造用の多層織物及びサンドイッチ構造繊維強化複合材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6604286
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】サンドイッチ構造用の多層織物及びサンドイッチ構造繊維強化複合材
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/28 20060101AFI20191031BHJP
   D03D 11/00 20060101ALI20191031BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20191031BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   B32B5/28 A
   D03D11/00 Z
   C08J5/04CFC
   D03D1/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-150175(P2016-150175)
(22)【出願日】2016年7月29日
(65)【公開番号】特開2018-16036(P2018-16036A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2018年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】吉川 元基
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−080944(JP,A)
【文献】 特開平08−103960(JP,A)
【文献】 特開2001−303385(JP,A)
【文献】 実開平05−045081(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0144227(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B11/16
15/08−15/14
B32B1/00−43/00
C08J5/04−5/10
5/24
D03D1/00−27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化樹脂からなるスキンでコアが挟まれたサンドイッチ構造用の多層織物であって、
前記スキンとなるスキン部は、強化繊維からなる経糸及び強化繊維からなる緯糸から構成され、
前記コアとなるコア部は、前記スキンのマトリックス樹脂に不溶で前記強化繊維より比重が小さい繊維からなる経糸及び前記スキンのマトリックス樹脂に不溶で前記強化繊維より比重が小さい繊維からなる緯糸から構成され、
前記スキン部及び前記コア部は、前記スキンのマトリックス樹脂に不溶の結束糸により一体化されていることを特徴とするサンドイッチ構造用の多層織物。
【請求項2】
前記結束糸は、非強化繊維で構成されている請求項1に記載のサンドイッチ構造用の多層織物。
【請求項3】
前記コア部は、強化繊維からなるリブ構成部を有している請求項1又は請求項2に記載のサンドイッチ構造用の多層織物。
【請求項4】
前記繊維強化樹脂のマトリックス樹脂に不溶で前記強化繊維より比重が小さい繊維は、有機繊維である請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のサンドイッチ構造用の多層織物。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のサンドイッチ構造用の多層織物が、マトリックス樹脂と複合化されて形成されたことを特徴とするサンドイッチ構造繊維強化複合材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンドイッチ構造用の多層織物及びサンドイッチ構造繊維強化複合材に関する。
【背景技術】
【0002】
FRPの剛性不足を補うために、表面にFRP材、芯材にプラスチックフォームを用いたサンドイッチ構造がある。一般的にサンドイッチ構造の製作方法に、ウェットレイアップやプリプレグが用いられる。
【0003】
また、軽量のコア材をスキン材で挟んだサンドイッチ構造の複合材料構造体が提案されている(特許文献1参照)。図5に示すように、この複合材料構造体81は、コア材82をスキン材83で挟んだサンドイッチ構造に構成されている。コア材82は合成樹脂製の発泡体で構成され、スキン材83は炭素繊維で形成された平織りの布で構成されている。スキン材83とコア材82とは両者を貫通するとともにスキン材83の外側で折り返して連続する繊維84によって結合されている。この複合材料構造体81は、スキン材83に樹脂を含浸硬化させて、スキン材83がFRP化された複合材料構造体となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−246686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ウェットレイアップは、FRP物性が低く、生産に人手がかかる。プリプレグは、FRP物性が高いが、生産に高額な投資が必要になる。
特許文献1の複合材料構造体では、FRP物性の高い複合材料構造体を得られるが、炭素繊維で形成された平織りの布にマトリックス樹脂を含浸硬化させて強化材(スキン材)を製造した後に、芯材(コア材)を強化材(スキン材)で挟んだ状態で繊維により結合(一体化)する手間が必要である。
【0006】
本発明は前記の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、スキン(強化材)とコア(芯材)とを別々に形成した後で一体化する場合に比べて製造に手間が掛からないサンドイッチ構造用の多層織物あるいはサンドイッチ構造繊維強化複合材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するサンドイッチ構造用の多層織物は、繊維強化樹脂からなるスキンでコアが挟まれたサンドイッチ構造用の多層織物である。そして、前記スキンとなるスキン部は、強化繊維からなる経糸及び強化繊維からなる緯糸から構成され、前記コアとなるコア部は、前記スキンのマトリックス樹脂に不溶で前記強化繊維より比重が小さい繊維からなる経糸及び前記スキンのマトリックス樹脂に不溶で前記強化繊維より比重が小さい繊維からなる緯糸から構成され、前記スキン部及び前記コア部は、前記スキンのマトリックス樹脂に不溶の結束糸により一体化されている。
【0008】
ここで、「多層織物」とは、緯糸と経糸の層が複数形成されるとともに、複数の層が結束糸で一体化されたものを意味する。
この構成によれば、サンドイッチ構造用の多層織物のスキン部は、経糸及び緯糸が強化繊維からなり、コア部は、経糸及び緯糸がスキンのマトリックス樹脂に不溶で強化繊維より比重が小さい繊維からなる。そして、スキン部及びコア部は、スキンのマトリックス樹脂に不溶の結束糸により一体化された状態に多層織りで製造される。したがって、サンドイッチ構造用の多層織物にマトリックス樹脂を含浸硬化させるだけでサンドイッチ構造が得られるため、スキンとコアとを別々に形成した後で一体化する場合に比べて製造に手間が掛からない。
【0009】
前記結束糸は、非強化繊維で構成されていてもよい。ここで、「非強化繊維」とは、マトリックス樹脂と複合化されても、マトリックス樹脂の強化機能の役割を果たす必要はなく、少なくとも形状保持の役割を果たせばよい繊維を意味する。結束糸は、サンドイッチ構造用の多層織物にマトリックス樹脂が含浸硬化されてサンドイッチ構造繊維強化複合材が形成されるまで、サンドイッチ構造用の多層織物のスキン部とコア部とを一体化した状態で保持可能であればよいため、強化繊維を使用する必要はない。非強化繊維であれば強化繊維よりも細い糸を選択することも容易であるため、サンドイッチ構造繊維強化複合材の強化繊維含有率を高めることができる。また、非強化繊維は強化繊維に比べて比重が小さなものを得易いため、強化繊維を使用する場合に比べて、軽量化にとって好ましい。
【0010】
前記コア部は、強化繊維からなるリブ構成部を有していてもよい。この構成によれば、サンドイッチ構造用の多層織物にマトリックス樹脂を含浸硬化させてサンドイッチ構造繊維強化複合材を製造した場合、リブ構成部がサンドイッチ構造繊維強化複合材のリブとなる。そのため、サンドイッチ構造繊維強化複合材は、リブの存在により、例えば、曲げ強度が高くなる。
【0011】
前記スキンのマトリックス樹脂に不溶で前記強化繊維より比重が小さい繊維は、有機繊維である。前記スキンのマトリックス樹脂に不溶で強化繊維より比重が小さい繊維は、有機繊維である必要はない。しかし、有機繊維の場合、サンドイッチ構造用の多層織物にマトリックス樹脂を含浸硬化させてサンドイッチ構造繊維強化複合材を製造した場合、マトリックス樹脂と親和性が高く、サンドイッチ構造繊維強化複合材の物性が高くなり易い。
【0012】
上記課題を解決するサンドイッチ構造繊維強化複合材は、前記構成のサンドイッチ構造用の多層織物が、マトリックス樹脂と複合化されて形成されている。この構成によれば、サンドイッチ構造繊維強化複合材は、例えば、前記構成のサンドイッチ構造用の多層織物を型内に入れてマトリックス樹脂を含浸硬化させることにより形成される。そして、スキン部を構成する強化繊維がマトリックス樹脂と複合化してスキンとなり、コア部を構成する非強化繊維がマトリックス樹脂と複合化してコアとなる。したがって、スキンとコアとを別々に形成した後で一体化する場合に比べて製造に手間が掛からない。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、スキンとコアとを別々に形成した後で一体化する場合に比べてサンドイッチ構造の製造に手間が掛からない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)は第1の実施形態のサンドイッチ構造用の多層織物の模式断面図、(b)はサンドイッチ構造繊維強化複合材の模式斜視図。
図2】(a)は第2の実施形態のサンドイッチ構造繊維強化複合材の模式斜視図、(b)はサンドイッチ構造用の多層織物の模式断面図。
図3】(a),(b),(c)は第2の実施形態のサンドイッチ構造用の多層織物のリブ構成部を構成する強化繊維の配列を示す模式断面図。
図4】別の実施形態のリブ構成部を有するサンドイッチ構造用の多層織物のリブ構成部を構成する強化繊維の配列を示す模式断面図。
図5】従来技術の複合材料構造体の模式斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1にしたがって説明する。
図1(a)に示すように、サンドイッチ構造用の多層織物10は、コア部20がスキン部30で挟まれている。コア部20及びスキン部30は、マトリックス樹脂が含浸されて、図1(b)に示すサンドイッチ構造繊維強化複合材50のコア51及びスキン52となる。マトリックス樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂のエポキシ樹脂が使用される。サンドイッチ構造用の多層織物10は、スキン部30と、スキン部30に挟まれたコア部20とが結束糸Zによって一体化されている。
【0016】
スキン部30は、強化繊維からなる緯糸Ybと、強化繊維からなる経糸Xbとで構成されている。緯糸Yb及び経糸Xbは互いに直交する方向に真っ直ぐ延びている。この実施形態では強化繊維として炭素繊維が使用されている。
【0017】
コア部20は、マトリックス樹脂に不溶で強化繊維より比重が小さい繊維からなる緯糸Yaと、マトリックス樹脂に不溶で強化繊維より比重が小さい繊維からなる経糸Xaとで構成されている。緯糸Ya及び経糸Xaは互いに直交する方向に真っ直ぐ延びている。マトリックス樹脂に不溶で強化繊維より比重が小さい繊維として有機繊維が使用されている。有機繊維としては、例えば、PA(ナイロン)、ポリエステル、PP(ポリプロピレン)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)が挙げられるが、この実施形態ではナイロンが使用されている。ナイロンは、比重が小さく、マトリックス樹脂としてのエポキシ樹脂との接着性が良いため、マトリックス樹脂に不溶で強化繊維より比重が小さい繊維として好ましい。また、コア部20を構成する経糸Xa及び緯糸Yaは、非強化繊維、すなわち、マトリックス樹脂としてのエポキシ樹脂と一体化されても、マトリックス樹脂の強化機能の役割は果たさず、形状保持の役割のみを果たす繊維としてのナイロンで構成されている。
【0018】
結束糸Zは、サンドイッチ構造用の多層織物10の形状保持用であって、非強化繊維で構成されている。結束糸Zは、両スキン部30及びコア部20を貫通するとともに、両スキン部30の外側で折り返すように配置されている。結束糸Zは、強化繊維及び非強化繊維のいずれであってもよいが、この実施形態では非強化繊維としてのナイロンが使用されている。
【0019】
前記のように構成されたサンドイッチ構造用の多層織物10は、コア部20を構成するのに必要な本数の経糸Xaと、コア部20を挟んで位置する両スキン部30を構成するのに必要な本数の経糸Xbと、必要な本数の結束糸Zを配列した状態で、緯糸Ya,Ybを緯入れする多層織りで形成される。なお、結束糸Zは、経糸Xa,Xbと平行に配列されるとともに、結束糸Z用のヘルドによって、スキン部30を構成する最上層の経糸Xbより上の位置と、最下層の経糸Xbより下の位置との間を移動するように開口動作が行われる。すなわち、結束糸Zは多層織物の経糸の一部を構成している。その結果、結束糸Zは、両スキン部30及びコア部20を貫通するとともに、両スキン部30の外側で折り返すように配置される。
【0020】
前記のように構成されたサンドイッチ構造用の多層織物10は、マトリックス樹脂を含浸硬化させて、サンドイッチ構造繊維強化複合材50となる。樹脂の含浸硬化は、例えば、RTM(レジン・トランスファー・モールディング)法で行なわれる。
【0021】
サンドイッチ構造用の多層織物10にマトリックス樹脂が含浸硬化されることにより、サンドイッチ構造用の多層織物10を構成するコア部20の緯糸Ya及び経糸Xaは、マトリックス樹脂と複合化してコア51となる。また、スキン部30の緯糸Yb及び経糸Xbは、マトリックス樹脂と複合化してスキン52となる。
【0022】
図1(b)に示すように、サンドイッチ構造用の多層織物10にマトリックス樹脂を含浸硬化させて形成されたサンドイッチ構造繊維強化複合材50は、コア51がスキン52で挟まれた構造である。
【0023】
サンドイッチ構造繊維強化複合材50は、例えば、航空機や乗用車等の移動体の外板として使用される。
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
【0024】
(1)サンドイッチ構造用の多層織物10は、繊維強化樹脂からなるスキン52でコア51が挟まれたサンドイッチ構造用の多層織物である。そして、スキン52となるスキン部30は、強化繊維からなる経糸Xb及び強化繊維からなる緯糸Ybから構成され、コア51となるコア部20は、スキン52のマトリックス樹脂に不溶で強化繊維より比重が小さい繊維からなる経糸Xa及びスキン52のマトリックス樹脂に不溶で強化繊維より比重が小さい繊維からなる緯糸Yaから構成される。スキン部30及びコア部20は、スキン52のマトリックス樹脂に不溶の結束糸Zにより一体化される。結束糸Zは、スキン部30及びコア部20を貫通するとともにスキン部30の外側で折り返して連続する。経糸Xa,Xb、緯糸Ya,Yb及び結束糸Zは、繊維強化複合材を構成するマトリックス樹脂と複合化可能である。
【0025】
この構成によれば、サンドイッチ構造用の多層織物10は、スキン52となるスキン部30及びコア51となるコア部20は、結束糸Zにより一体化された状態に多層織りで製造される。したがって、サンドイッチ構造用の多層織物10にマトリックス樹脂を含浸硬化させるだけでサンドイッチ構造が得られるため、スキンとコアとを別々に形成した後で一体化する場合に比べて製造に手間が掛からない。
【0026】
(2)結束糸Zは、非強化繊維で構成されている。結束糸Zは非強化繊維に限らず強化繊維で構成されてもよい。しかし、結束糸Zは、サンドイッチ構造用の多層織物10にマトリックス樹脂が含浸硬化されてサンドイッチ構造繊維強化複合材50が形成されるまで、サンドイッチ構造用の多層織物10のスキン部30とコア部20とを一体化した状態で保持可能であればよいため、必ずしも強化繊維を使用する必要はない。非強化繊維であれば強化繊維よりも細い糸を選択することも容易であるため、サンドイッチ構造繊維強化複合材の強化繊維含有率を高めることができる。また、非強化繊維は強化繊維に比べて比重が小さなものを得易いため、強化繊維を使用する場合に比べて、軽量化にとって好ましい。
【0027】
(3)スキン52のマトリックス樹脂に不溶で強化繊維より比重が小さい繊維は、有機繊維である。スキン52のマトリックス樹脂に不溶で強化繊維より比重が小さい繊維は、有機繊維である必要はない。しかし、有機繊維の場合、サンドイッチ構造用の多層織物10にマトリックス樹脂を含浸硬化させてサンドイッチ構造繊維強化複合材50を製造した場合、マトリックス樹脂と親和性が高く、サンドイッチ構造繊維強化複合材の物性が高くなり易い。
【0028】
(4)サンドイッチ構造繊維強化複合材50は、前記構成のサンドイッチ構造用の多層織物10が、マトリックス樹脂と複合化されて形成されている。この構成によれば、サンドイッチ構造繊維強化複合材50は、前記構成のサンドイッチ構造用の多層織物10を型内に入れてマトリックス樹脂を含浸硬化させることにより形成される。そして、スキン部30を構成する強化繊維がマトリックス樹脂と複合化してスキン52となり、コア部20を構成する繊維がマトリックス樹脂と複合化してコア51となる。したがって、スキンとコアとを別々に形成した後で一体化する場合に比べて製造に手間が掛からない。
【0029】
(第2の実施形態)
次に第2の実施形態を図2にしたがって説明する。
図2(a)に示すように、この実施形態のサンドイッチ構造繊維強化複合材50は、コア51を挟んで設けられたスキン52の間に跨る複数のリブ53が設けられている点が第1の実施形態と大きく異なっている。第1の実施形態と同一部分は同一符号を付して詳しい説明を省略する。なお、図2(a)は、サンドイッチ構造繊維強化複合材50を模式的に示したものであり、リブ53の数や間隔は、図2(b)に示すサンドイッチ構造用の多層織物10のリブ構成部25の数や間隔と異なる状態で図示されている。
【0030】
図2(b)に示すように、サンドイッチ構造用の多層織物10は、スキン部30と、スキン部30に挟まれたコア部20とが結束糸Zによって一体化されるとともに、コア部20の一部に、リブ構成部25を有する。リブ構成部25は、サンドイッチ構造用の多層織物10にマトリックス樹脂を含浸硬化させてサンドイッチ構造繊維強化複合材50を製造した場合、サンドイッチ構造繊維強化複合材50のリブ53を構成する。
【0031】
図2(b)に示すように、リブ構成部25はスキン部30を構成する強化繊維からなる経糸Xbの一部と、その経糸Xbの一部に隣接してコア部20内に配列された強化繊維からなる緯糸Ybとで構成されている。この実施形態では、リブ構成部25は緯糸Ybの配列方向、即ち緯糸Ybの延びる方向に延びる状態に形成されている。
【0032】
詳述すると、スキン部30を構成し、かつコア部20と対向する位置に配置された強化繊維からなる経糸Xbは、途中でコア部20内に進入し、他方のスキン部30で折り返すように配置されることにより、サンドイッチ構造用の多層織物10の厚さ方向に延びる部分Xbcを有する。
【0033】
図3(a),(b)に示すように、リブ構成部25を構成する強化繊維からなる経糸Xbは、下側のスキン部30側からコア部20に進入する方向に延びる部分Xbcが、強化繊維からなる緯糸Ybに挟まれた状態で配列されている。また、上側のスキン部30側からコア部20に進入する方向に延びる部分Xbcは、強化繊維からなる緯糸Ybと非強化繊維からなる緯糸Ya(図示せず)とに挟まれた状態で配列されている。
【0034】
図3(c)に示すように、リブ構成部25を構成する強化繊維からなる経糸Xbは、上側のスキン部30側からコア部20に進入して、下側のスキン部30側からコア部20に進入する部分の間隔が、下側のスキン部30側からコア部20に進入して、上側のスキン部30側からコア部20に進入する部分の間隔より広く設定されている。なお、図3(a),(b),(c)においては、非強化繊維で構成された経糸Xa及び緯糸Yaと、スキン部30の外側に配置された強化繊維からなる緯糸Ybと、結束糸Zの図示を省略している。
【0035】
この実施形態のサンドイッチ構造用の多層織物10は、両スキン部30を構成する経糸Xbのうち、コア部20と対向する位置に配置される経糸Xbは、ヘルドによって、コア部20を構成する最上層の緯糸Yaより上の位置と、最下層の緯糸Yaより下の位置との間で、予め設定された間隔で折り返すように開口動作が行われる多層織りで形成される。
【0036】
この第2の実施形態によれば、第1の実施形態における(1)〜(4)と同様な効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(5)サンドイッチ構造用の多層織物10のコア部20は、強化繊維からなるリブ構成部25を有している。この構成によれば、サンドイッチ構造用の多層織物10にマトリックス樹脂を含浸硬化させてサンドイッチ構造繊維強化複合材50を製造した場合、リブ構成部25がサンドイッチ構造繊維強化複合材50のリブ53を構成する。そのため、サンドイッチ構造繊維強化複合材50は、リブ53の存在により、リブ53が存在しない第1の実施形態のサンドイッチ構造繊維強化複合材50に比べて、例えば、曲げ強度が高くなる。
【0037】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
図4に示すように、サンドイッチ構造用の多層織物10の一つのリブ構成部25を構成する強化繊維からなる経糸Xbの部分Xbcの数は、3本以上、例えば、4本であってもよい。一つのリブ構成部25を構成する強化繊維からなる経糸Xbの部分Xbcの数は、サンドイッチ構造繊維強化複合材50に対する要求性能によって設定される。図4図3(c)と同様に、非強化繊維で構成された経糸Xa及び緯糸Yaと、スキン部30の外側に配置された強化繊維からなる緯糸Ybと、結束糸Zの図示を省略している。
【0038】
○ サンドイッチ構造とは、強化繊維からなる対向するスキン部30が少なくとも一対存在すればよく、例えば、スキン部30で挟まれた非強化繊維からなるコア部20に強化繊維からなる層が存在してもよい。
【0039】
○ 経糸Xa,Xb及び緯糸Ya,Ybは同じ太さに限らず、異なる太さであってもよい。
○ 複数本の経糸Xaは異なる太さの経糸Xaが混在し、複数本の経糸Xbは異なる太さの経糸Xbが混在してもよい。
【0040】
○ 複数本の緯糸Yaは異なる太さの緯糸Yaが混在し、複数本の緯糸Ybは異なる太さの緯糸Ybが混在してもよい。
○ サンドイッチ構造用の多層織物10は、多層織りで形成される多層織物に限らず、三次元織物であってもよい。三次元織物とは、経糸及び緯糸からなる繊維層が複数積層された状態で、結束糸により複数の繊維層が結合する状態に形成されたものを意味する。この場合であっても、サンドイッチ構造用の三次元織物にマトリックス樹脂を含浸硬化させるだけでサンドイッチ構造が得られる。
【0041】
○ 多層織物及び三次元織物の場合、結束糸は全ての隣り合う緯糸間に挿入されるのではなく、多層織物及び三次元織物に対する要求性能によって、結束糸の挿入間隔を適宜変更してもよい。
【0042】
○ コア部20を構成する非強化繊維は、スキン部30を構成する強化繊維より比重が小さければよく、有機繊維に限らない。
○ スキン部30を構成する強化繊維からなる緯糸Yb及び強化繊維からなる経糸Xbに使用される強化繊維は炭素繊維に限らず、例えば、ガラス繊維やセラミック繊維を使用してもよい。
【0043】
○ サンドイッチ構造用の多層織物10からサンドイッチ構造繊維強化複合材50を製造するのに使用されるマトリックス樹脂は、エポキシ樹脂に限らず、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂等の他の熱硬化性樹脂であってもよい。また、マトリックス樹脂は、熱硬化性樹脂に限らず、熱可塑性樹脂であってもよい。
【0044】
○ 結束糸Zに強化繊維を使用してもよい。また、複数本の結束糸Zの一部を強化繊維とし、残りを非強化繊維としてもよい。
○ サンドイッチ構造用の多層織物10のリブ構成部25の数及びサンドイッチ構造繊維強化複合材50のリブ53の数は、サンドイッチ構造繊維強化複合材50に要求される性能によって適宜設定される。
【0045】
○ 両スキン部30を構成する緯糸Ybと経糸Xbの配列構造は、緯糸Ybが最外層になる構成に代えて、経糸Xbが最外層になる構成であってもよい。また、両スキン部30のうちの一方のスキン部30では緯糸Ybが最外層になる構成とし、他方のスキン部30では経糸Xbが最外層になる構成であってもよい。
【0046】
○ サンドイッチ構造用の多層織物10において、緯糸Yaと経糸Xaとを入れ替え、緯糸Ybと経糸Xbとを入れ替えた構成としてもよい。
○ 結束糸Zは、スキン部30及びコア部20を貫通するとともにスキン部30の外側で折り返して連続するものに限られず、スキン部30及びコア部20を構成する各層を一体化する内部結合糸と、スキン部30とコア部20とを一体化する外部結合糸とで構成してもよい。
【符号の説明】
【0047】
Xa,Xb…経糸、Ya,Yb…緯糸、Z…結束糸、10…サンドイッチ構造用の多層織物、20…コア部、25…リブ構成部、30…スキン部、51…コア、52…スキン。
図1
図2
図3
図4
図5