特許第6604295号(P6604295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6604295
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】コイル部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/10 20060101AFI20191031BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   H01F41/10 C
   H01F27/29 125
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-192421(P2016-192421)
(22)【出願日】2016年9月30日
(65)【公開番号】特開2018-56399(P2018-56399A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2018年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100085143
【弁理士】
【氏名又は名称】小柴 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】村上 隆史
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 啓雄
(72)【発明者】
【氏名】大西 浩司
【審査官】 井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4184394(JP,B2)
【文献】 国際公開第2015/045955(WO,A1)
【文献】 特開昭53−064788(JP,A)
【文献】 特開平10−064747(JP,A)
【文献】 特開2018−041852(JP,A)
【文献】 特開2017−212352(JP,A)
【文献】 特開2017−199841(JP,A)
【文献】 特開2009−177148(JP,A)
【文献】 特開2009−158777(JP,A)
【文献】 特開2010−034338(JP,A)
【文献】 特開2005−056934(JP,A)
【文献】 特開2003−234218(JP,A)
【文献】 特開平05−144653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 41/10
H01F 27/29
H01F 27/28
H01R 4/02
H01R 43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体からなる芯線および前記芯線の周面を覆う絶縁樹脂被覆を有する、ワイヤと、前記芯線に電気的に接続される接続部を有する、金属端子と、を備える、コイル部品を製造する方法であって、
前記金属端子として、前記接続部が、前記ワイヤを受けかつ前記ワイヤが引き出される方向に延びる受け部と、前記ワイヤに当接して前記受け部との間に前記ワイヤを位置させるもので、前記受け部と同じ方向に延びる当接片と、前記受け部と前記当接片との間に所定の空間を隔てた状態で前記受け部と前記当接片とを各々の基端部で連結するもので、折り曲げ予定部を含む連結部と、を有する金属端子を用意する工程を備えるとともに、
前記ワイヤを前記受け部上に置いた状態で熱と圧力を加えることにより、溶融または軟化した前記絶縁樹脂被覆を接着剤として前記ワイヤを前記受け部に接着する、熱圧着工程と、
次いで、前記当接片が前記ワイヤを介して前記受け部と対向し、かつ前記当接片が前記ワイヤに当接するように、前記折り曲げ予定部を介して前記接続部を折り曲げる、当接工程と、
次いで、前記金属端子の一部にレーザ光を照射することによって、前記ワイヤと前記金属端子とを溶接する、溶接工程と、
を備え、
前記溶接工程において、前記受け部と前記当接片とは、前記ワイヤの先端側を位置させる各々の先端部において溶融玉を介して一体化され、前記ワイヤの端部は、その全周囲が溶融玉に覆われた状態となる、
コイル部品の製造方法。
【請求項2】
前記熱圧着工程は、前記絶縁樹脂被覆の、前記受け部側とは反対側に位置する部分を除去し、前記芯線を前記絶縁樹脂被覆から露出させる工程を含む、請求項1に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項3】
前記熱圧着工程の後に、前記ワイヤにレーザ光を照射することによって、前記芯線を前記絶縁樹脂被覆から露出させる工程をさらに備える、請求項1に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項4】
前記当接工程において、前記当接片は前記絶縁樹脂被覆から露出した前記芯線に当接する、請求項2または3に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項5】
前記当接工程は、前記金属端子の前記受け部と前記当接片とを密着させるようにかしめる工程を含む、請求項1ないし4のいずれかに記載のコイル部品の製造方法。
【請求項6】
前記溶接工程において、前記レーザ光は、前記当接片における前記ワイヤと接着した面とは反対側の面に照射される、請求項1ないし5のいずれかに記載のコイル部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コイル部品の製造方法に関するもので、特に、ワイヤと金属端子との接続方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この発明にとって興味ある技術として、たとえば特許第4184394号公報(特許文献1)に記載されたものがある。図9および図10は、特許文献1から引用したもので、それぞれ、特許文献1における図2および図4に相当する。図9および図10には、コイル部品に備えるコアの一部である一方の鍔部1およびそこに配置された金属端子2、ならびに金属端子2に接続されるワイヤ3の端部が図示されている。
【0003】
ワイヤ3は、図9および図10に示されるように、導体からなる芯線4および芯線4の周面を覆う絶縁樹脂被覆5を備えている。金属端子2は、鍔部1の外側端面6側に配置された基部7と、基部7から屈曲部8を介して延びるもので、ワイヤ3の端部を受ける受け部9とを備えている。金属端子2は、さらに、受け部9から第1の折返し部10を介して延びるもので、ワイヤ3の芯線4に溶接される溶接部11と、受け部9から第2の折返し部12を介して延びるもので、ワイヤ3を保持して位置決めする保持部13とを備えている。
【0004】
上述した溶接部11に関して、溶接工程を実施する前の状態が図9に示され、溶接工程後の状態が図10に示されている。図10には、溶接によって生じた溶融玉14が図示されている。溶融玉14は、溶接時において溶融した金属が表面張力により玉状となったまま冷却されて凝固して得られたものである。
【0005】
ワイヤ3を金属端子2に接続するための工程の詳細は、以下のとおりである。この接続工程の前の段階では、金属端子2において、溶接部11および保持部13は、受け部9に対して開いた状態にあり、受け部9とは対向していない。図9には、保持部13が受け部9と対向するが、溶接部11については受け部9に対して開いた状態が図示されている。
【0006】
まず、金属端子2の受け部9上に、ワイヤ3が置かれ、この状態を仮に固定するため、受け部9と保持部13とによってワイヤ3が挟まれるように、保持部13が受け部9に対して第2の折返し部12を介して折り曲げられる。
【0007】
次に、保持部13より先端側の部分において、図9に示すように、ワイヤ3の絶縁樹脂被覆5が除去される。この絶縁樹脂被覆5の除去のために、たとえばレーザ光の照射が適用される。なお、図9によく示されているように、絶縁樹脂被覆5における受け部9に接する部分については、除去されずに残される。
【0008】
次に、溶接部11が受け部9に対して第1の折返し部10を介して折り曲げられ、溶接部11と受け部9との間にワイヤ3を挟んだ状態とされる。
【0009】
次に、ワイヤ3の芯線4と溶接部11とが溶接される。より具体的には、レーザ溶接が適用される。レーザ光は、溶接部11に照射され、それによって、ワイヤ3の芯線4と溶接部11とが溶融し合い、液状化した溶融部分は表面張力によって玉状になる。その後、玉状となったまま冷却されて凝固し、溶融玉14が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4184394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した特許文献1に記載の技術では、溶接前のワイヤ3を仮固定するため、第2の折返し部12を介して折り曲げることによって、保持部13を受け部9に対向する状態とし、保持部13と受け部9との間にワイヤ3を挟んだ状態としなければならない。このことは、以下のような不都合を招く。
【0012】
まず、上述したような仮固定のため、金属端子2において、溶接部11とは別に保持部13を設けておかなければならない。そのため、金属端子2の形状が複雑化し、金属端子2を得るための加工が煩雑化するおそれがある。
【0013】
また、ワイヤ3を金属端子2に接続するための工程において、第2の折返し部12を介しての保持部13の折り曲げ加工と、第1の折返し部10を介しての溶接部11の折り曲げ加工と、の2つの折り曲げ加工を別の時点で実施する必要がある。そのため、製造設備において、上記2つの折り曲げ加工をそれぞれ別個に実施するための装置が必要となる。
【0014】
そこで、この発明の目的は、上述したような課題を解決し得る、コイル部品の製造方法を提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は、導体からなる芯線および芯線の周面を覆う絶縁樹脂被覆を有する、ワイヤと、芯線に電気的に接続される接続部を有する、金属端子と、を備える、コイル部品を製造する方法に向けられる。
【0016】
この発明に係るコイル部品の製造方法は、上述した技術的課題を解決するため、金属端子として、接続部が、ワイヤを受けかつワイヤが引き出される方向に延びる受け部と、ワイヤに当接して受け部との間にワイヤを位置させるもので、受け部と同じ方向に延びる当接片と、受け部と当接片との間に所定の空間を隔てた状態で受け部と当接片とを各々の基端部で連結するもので、折り曲げ予定部を含む連結部と、を有する金属端子を用意する工程を備えるとともに、ワイヤを受け部上に置いた状態で熱と圧力を加えることにより、溶融または軟化した絶縁樹脂被覆を接着剤としてワイヤを受け部に接着する、熱圧着工程と、次いで、当接片がワイヤを介して受け部と対向し、かつ当接片がワイヤに当接するように、折り曲げ予定部を介して接続部を折り曲げる、当接工程と、次いで、金属端子の一部にレーザ光を照射することによって、ワイヤと金属端子とを溶接する、溶接工程と、を備え、上記溶接工程において、上記受け部と上記当接片とは、ワイヤの先端側を位置させる各々の先端部において溶融玉を介して一体化され、ワイヤの端部は、その全周囲が溶融玉に覆われた状態となることを特徴としている。
【0017】
この発明では、上述した熱圧着工程が、溶接前のワイヤを仮固定するための工程となる。
【0018】
この発明において、熱圧着工程は、絶縁樹脂被覆の、受け部側とは反対側に位置する部分を除去し、芯線を絶縁樹脂被覆から露出させる工程を含んでいてもよい。熱圧着工程では、熱が絶縁樹脂被覆に付与されるので、この熱を利用すれば、熱圧着工程と同時に、芯線を絶縁樹脂被覆から露出させることが可能となる。そして、芯線を絶縁樹脂被覆から露出させておけば、後の溶接工程において、良好な溶接状態を達成することができる。
【0019】
あるいは、熱圧着工程の後に、ワイヤにレーザ光を照射することによって、芯線を絶縁樹脂被覆から露出させる工程をさらに実施するようにしてもよい。この構成によれば、絶縁樹脂被覆から芯線をより確実に露出させることができる。また、この場合にも、後の溶接工程において、良好な溶接状態を達成することができる。特に、絶縁樹脂被覆として、ポリアミドイミドのような高耐熱樹脂を用いる場合は、熱圧着により絶縁樹脂被覆から芯線を露出させにくいため、有効である。
【0020】
上述した2つの実施態様によれば、当接工程を実施しようとする段階で、芯線は絶縁樹脂被覆から露出した状態となっている。したがって、当接工程において、当接片が、絶縁樹脂被覆から露出した芯線に当接した状態を容易に得ることができる。このことも、後の溶接工程における、良好な溶接状態の達成に寄与する。
【0021】
この発明において、当接工程は、金属端子の受け部と当接片とを密着させるようにかしめる工程を含むことが好ましい。このかしめ工程によれば、金属端子の接続部の折り曲げに際して生じがちなスプリングバック現象に抗して、当接片とワイヤとの密着状態を確実に得ることができる。このことも、後の溶接工程における、良好な溶接状態の達成に寄与する。
【0022】
好ましくは、溶接工程において、レーザ光は、当接片におけるワイヤと接着した面とは反対側の面に照射される。この構成によれば、ワイヤの端部を全周囲から覆う溶融玉を形成しやすく、そのため、信頼性の高い接続状態をワイヤと金属端子との間で得ることができる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、熱圧着工程において、ワイヤを受け部上に置いた状態で熱と圧力を加えることにより、溶融または軟化した絶縁樹脂被覆を接着剤としてワイヤを受け部に接着して、金属端子の接続部へのワイヤの仮固定を図るようにしているので、特許文献1に記載の保持部13(図9および図10参照)のような形状部分を金属端子に設けておく必要はない。
【0024】
したがって、金属端子へのワイヤの接続にあたって実施すべき折り曲げ加工は、当接片がワイヤを介して受け部と対向し、かつ当接片がワイヤに当接するように、折り曲げ予定部を介して接続部を折り曲げる、当接工程における折り曲げ加工だけで済む。そのため、製造設備の簡略化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】この発明に係る製造方法によって製造されるコイル部品の一例の外観を示す正面図である。
図2図1に示したコイル部品20を底面側から示す斜視図である。
図3図1および図2に示したコイル部品20の一部を示す底面図であり、金属端子41およびそれを配置するコアの鍔部23の一部、ならびに金属端子41に接続されるワイヤ35を示している。
図4】金属端子41を示す、図3の線IV−IVに沿う断面図である。
図5】この発明の一実施形態による製造方法、特に、図3に示した金属端子41とワイヤ35との接続工程を説明するためのもので、金属端子41の受け部50上にワイヤ35を配置した状態を示している。
図6図5に示した金属端子41の受け部50に対してワイヤ35を熱圧着して仮固定した状態を示している。
図7図6における熱圧着部分を示す、図6の線VII−VIIに沿う断面図である。
図8図6に示した工程の後、当接片51が受け部50上に重なるように、接続部49を折り曲げ、受け部50と当接片51との間にワイヤ35を挟んだ状態を示している。
図9】特許文献1に記載されたコイル部品に備えるコアの鍔部1およびそこに配置された金属端子2、ならびに金属端子2に接続されるワイヤ3を示す斜視図であって、溶接工程前の状態を示す。
図10図9に示した部分の溶接工程後の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1および図2を主として参照して、この発明に係る製造方法によって製造されるコイル部品20の構造について説明する。図示したコイル部品20は、より具体的には、コイル部品の一例としてのコモンモードチョークコイルを構成するものである。
【0027】
コイル部品20は、巻芯部21を有するコア22を備えている。コア22は、ドラム状をなし、巻芯部21の各端部にそれぞれ設けられた第1および第2の鍔部23および24を備えている。コア22は、たとえば、フェライト等の磁性体から構成される。
【0028】
鍔部23および24は、それぞれ、巻芯部21側に向きかつ巻芯部21の各端部を位置させる内側端面25および26と、内側端面25および26の反対側の外側に向く外側端面27および28とを有し、さらに、実装時において実装基板(図示しない。)側に向けられる底面29および30を有している。
【0029】
また、第1の鍔部23における底面29の両端部に、切欠き形状の窪み31および32が設けられる。同様に、第2の鍔部24における底面30の両端部に、切欠き形状の窪み33および34が設けられる。
【0030】
コイル部品20は、さらに、巻芯部21に螺旋状に巻回された第1および第2のワイヤ35および36を備えている。これらワイヤ35および36は、後述する図6および図7に表わされているように、それぞれ、導体からなる芯線37と、芯線37の周面を覆う絶縁樹脂被覆38とを有する。芯線37は、たとえば銅線からなる。絶縁樹脂被覆38は、たとえばポリウレタン、ポリイミド、ポリエステルイミド、ポリアミドイミドのような樹脂からなる。
【0031】
コイル部品20がコモンモードチョークコイルであるとき、ワイヤ35および36は、互いに同方向に巻回される。このとき、ワイヤ35および36は、いずれか一方が内層側に、いずれか他方が外層側に、というように、2層巻きにされても、巻芯部21の軸線方向において交互に配列されかつ互いに平行に並んだ状態で巻くバイファイラ巻きにされてもよい。
【0032】
コイル部品20は、さらに、第1ないし第4の金属端子41〜44を備えている。これら第1ないし第4の金属端子41〜44のうち、第1および第3の金属端子41および43は、第1の鍔部23に接着剤を介して固定される。第2および第4の金属端子42および44は、第2の鍔部24に接着剤を介して固定される。
【0033】
第1の金属端子41と第4の金属端子44とは、互いに同じ形状であり、第2の金属端子42と第3の金属端子43とは、互いに同じ形状である。また、第1の金属端子41と第3の金属端子43とは、互いに面対称形状をなし、第2の金属端子42と第4の金属端子44とは、互いに面対称形状をなしている。したがって、第1ないし第4の金属端子41〜44のうちのいずれか1つの金属端子、たとえば第1の金属端子41について、その詳細を説明し、第2、第3および第4の金属端子42、43および44の詳細については、その説明を省略する。
【0034】
図3ないし図8には、金属端子41またはその一部が図示されている。
【0035】
金属端子41は、通常、たとえばリン青銅やタフピッチ銅などの銅系合金からなる1枚の金属板に対して板金加工を施すことにより製造される。しかし、金属端子41は、他の製造方法、たとえば鋳込みなどによって製造されてもよい。
【0036】
金属端子41は、鍔部23の外側端面27に沿って延びる基部45と、当該基部45から、鍔部23の外側端面27と底面29とが交差する稜線部分を覆う第1の屈曲部46を介して、鍔部23の底面29に沿って延びる実装部47と、を備えている。実装部47は、コイル部品20が図示しない実装基板上に実装されるとき、実装基板上の導電ランドに対して、はんだ付け等によって電気的かつ機械的に接続される部分となる。
【0037】
さらに、金属端子41は、実装部47から第2の屈曲部48を介して延びる接続部49を有する。第2の屈曲部48は、S字状の屈曲形態を与えている。接続部49は、ワイヤ35を受けて位置決めする機能とワイヤ35を金属端子41に電気的かつ機械的に接続する機能との双方を有している。
【0038】
より詳細には、接続部49は、ワイヤ35を受けかつワイヤ35が引き出される方向に延びる受け部50と、ワイヤ35に当接して受け部50との間にワイヤ35を位置させるもので、受け部50と同じ方向に延びる当接片51と、受け部50と当接片51との間に所定の空間を隔てた状態で受け部50と当接片51とを各々の基端部で連結するもので、後述する折り曲げ予定部55を含む連結部52と、を備える。接続部49は、第1の鍔部23に設けられた窪み31内に位置される。
【0039】
なお、上述した第1の金属端子41における基部、第1の屈曲部、実装部、第2の屈曲部および接続部、ならびに受け部、当接片および連結部をそれぞれ指すために用いた参照符号45、46、47、48および49、ならびに50、51および52は、第2、第3および第4の金属端子42、43および44における対応の基部、第1の屈曲部、実装部、第2の屈曲部および接続部、ならびに受け部、当接片および連結部をそれぞれ指すためにも用いることがある。
【0040】
前述した第1のワイヤ35の一方端は第1の金属端子41に接続され、第1のワイヤ35の他方端は第2の金属端子42に接続される。他方、第2のワイヤ36の一方端は第3の金属端子43に接続され、第2のワイヤ36の他方端は第4の金属端子44に接続される。以下、コイル部品20の製造方法に含まれる特徴的工程である、ワイヤ35および36を金属端子41〜44に接続するための工程について説明する。なお、ここでは、代表して、第1のワイヤ35を第1の金属端子41に接続する工程について説明する。
【0041】
ワイヤ35を接続する前の段階では、金属端子41は、接続部49において、図5に示すように、当接片51が受け部50に対して展開した状態となっている。この状態で、巻芯部21上に巻回されたワイヤ35の端部が、金属端子41の受け部50上にまでワイヤノズルで引き出され、受け部50上に位置される。
【0042】
次に、受け部50にワイヤ35が仮固定される。この仮固定のため、ワイヤ35を受け部50上に置いた状態で熱と圧力を加える、熱圧着工程が実施される。熱圧着工程では、図5において点線で示す領域を加熱する、たとえばヒーターチップ53が用いられる。受け部50上のワイヤ35が、ヒーターチップ53によって加熱されながら押圧されると、絶縁樹脂被覆38が溶融または軟化する。その結果、図6および図7に示すように、絶縁樹脂被覆38に由来する溶融/軟化物54が接着剤の働きをし、ワイヤ35が溶融/軟化物54を介して受け部50に接着される。このとき、ワイヤ35の芯線37は、熱圧着工程における加圧の結果、通常、図7に示すように、断面扁平状となる。
【0043】
上述の熱圧着工程の結果、図7によく示されているように、絶縁樹脂被覆38の、受け部50側とは反対側に位置する部分が除去され、芯線37が絶縁樹脂被覆38から露出する状態となっていることが好ましい。このような芯線37が絶縁樹脂被覆38から露出する状態を熱圧着工程で得るには、たとえば、以下のような条件で熱圧着工程が実施される。
【0044】
まず、ヒーターチップ53として、ワイヤ35と受け部50とを十分に覆う面積を持つものが用いられ、その接触面は平滑な表面を有する平面とされる。絶縁樹脂被覆38がポリアミドイミドからなる場合、熱圧着温度として400℃以上かつ550℃以下の温度が適用され、熱圧着時間は2秒以下とされる。この場合、ヒーターチップ53が接触する箇所のみ、絶縁樹脂被覆38が除去されるが、非接触箇所では、熱伝導による絶縁樹脂被覆38の溶融は完了せず、溶け残った状態で、ワイヤ35と受け部50との接着に寄与する。
【0045】
芯線37の絶縁樹脂被覆38からの露出が不十分な場合、たとえばレーザ光照射によって、絶縁樹脂被覆38が除去されてもよい。なお、芯線37の絶縁樹脂被覆38からの露出は、必須ではなく、露出が不十分または露出がないまま、以後の工程が実施されもよい。
【0046】
上述した熱圧着工程と同時に、ワイヤ35の、受け部50からはみ出した部分が切断されて除去される。
【0047】
次に、図6において一点鎖線で示した折り曲げ予定部55を介して連結部52を折り曲げる、当接工程が実施される。この当接工程での折り曲げによって、図8に示すように、当接片51が、ワイヤ35に当接するとともに、ワイヤ35を挟んで受け部50と対向して重なるようにされる。当接片51がワイヤ35に当接するとき、絶縁樹脂被覆38から露出した芯線37に当接していることが好ましい。
【0048】
上述した当接工程では、金属端子41の基部45から実装部47までを固定した状態で、図6に示した状態にある接続部49における当接片51に対して、工具を図6の紙面裏側から表側に向かって突き上げることによって、折り曲げ予定部55を曲げ中心として、まず、90度曲げ状態を得る。次に、90度曲げ状態の当接片51に対して、工具を横から突き当てることによって、折り曲げ予定部55を曲げ中心として、さらに90度曲げを行なう。ここで、図8に示すような状態が得られ、当接片51とワイヤ35とが接触する。
【0049】
上述のようにして、当接片51とワイヤ35とを接触させた後、好ましくは、受け部50と当接片51とを密着させるようにかしめる工程が実施される。かしめ工程では、たとえば500℃に熱したヒーターを当接片51に押し当て、ワイヤ35を挟み込んだ状態で受け部50と当接片51とを圧着することが好ましい。このかしめ工程によれば、金属端子41の接続部49の折り曲げに際して生じがちなスプリングバック現象に抗して、当接片51とワイヤ35との密着状態を確実に得ることができる。また、ワイヤ35と受け部50および当接片51との間において、隙間を実質的になくすことができる。
【0050】
次に、溶接工程が実施される。溶接工程では、レーザ光が当接片51におけるワイヤ35と接着した面とは反対側の面に照射されることが好ましい。図8において、レーザ光照射位置56が図示されている。一例として、当接片51の先端から0.1mm内側に寄った箇所へ、1064nm波長のレーザ光が数ミリ秒照射される。
【0051】
上述したレーザ溶接工程において、図4に示すように、受け部50と当接片51とは、連結部52とは異なる位置において、溶融玉57を介して一体化される。溶融玉57は、レーザ溶接によって生じる。この実施形態では、受け部50と当接片51とは、ワイヤ35の先端側を位置させる各々の先端部において溶融玉57を介して一体化される。そして、図4に示すように、ワイヤ35の端部は、その全周囲が溶融玉57に覆われた状態となる。すなわち、ワイヤ35の端部は、溶融玉57の中に位置している。ワイヤ35の熱圧着により変形した部分と変形していない部分の境界部分はワイヤ35が薄くなるので断線しやすい。そのため、熱圧着により変形した部分すべてが溶融玉57に取り込まれることが好ましい。これにより、ワイヤ35の薄い部分がなくなって、ワイヤ35が断線しにくくなる。
【0052】
第1の金属端子41と第1のワイヤ35との接続について説明したが、他の金属端子42〜44とワイヤ35または36との接続についても同様の工程が実施され、図1および図2に示したコイル部品20が完成される。
【0053】
以上、この発明に係る製造方法によって製造されるコイル部品について、より具体的な実施形態に基づいて説明したが、この実施形態は、例示的なものであり、その他種々の変形例が可能である。
【0054】
たとえば、図1および図2では図示しなかったが、第1および第2の鍔部23および24の各々の天面に一方主面を接触させながら、1対の鍔部23および24間に渡された板状のコアが設けられてもよい。この場合、ドラム状のコア22および板状のコアが、ともにフェライトのような磁性体から構成されるとき、ドラム状のコア22および板状のコアによって閉磁路が形成される。
【0055】
なお、ドラム状のコア22は、たとえば樹脂のような非磁性体から構成されてもよい。
【0056】
また、この発明に係る製造方法の対象となるコイル部品は、コアを備えないものであってもよい。
【0057】
また、コイル部品に備えるワイヤの本数および金属端子の個数は、コイル部品の機能に応じて変更され得る。
【0058】
また、溶接工程では、当接片51におけるワイヤ35と接着した面とは反対側の面以外に、レーザ光を照射してもよい。たとえば、受け部50におけるワイヤ35と接着した面に、レーザ光を照射してもよい。
【符号の説明】
【0059】
20 コイル部品
21 巻芯部
22 コア
23,24 鍔部
35,36 ワイヤ
37 芯線
38 絶縁樹脂被覆
41〜44 金属端子
50 受け部
51 当接片
52 連結部
53 ヒーターチップ
54 溶融/軟化物
55 折り曲げ予定部
56 レーザ光照射位置
57 溶融玉
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10