(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記改質制御部は、前記触媒の温度が前記触媒の活性温度領域における中温領域であると前記第一出力部が出力するとき、改質炭素数が前記触媒の活性温度領域における低温領域および高温領域での改質炭素数に比べ少なくなるよう前記改質部における炭化水素化合物の改質反応を制御する請求項1に記載の排気浄化システムの制御装置。
前記改質制御部は、前記触媒における気体の流速が増加するにしたがって改質炭素数が少なくするよう前記改質部における炭化水素化合物の改質反応を制御する請求項1または2に記載の排気浄化システムの制御装置。
前記改質制御部は、前記触媒における酸素濃度が増加するにしたがって改質炭素数が多くするよう前記改質部における炭化水素化合物の改質反応を制御する請求項1〜3のいずれか一項に記載の排気浄化システムの制御装置。
前記改質制御部は、前記改質部における気体の流速を制御可能な流速制御部(14)を制御可能であって、前記流速制御部によって前記改質部における気体の流速を増加するにしたがって改質炭素数が多くなるよう前記改質部における炭化水素化合物の改質反応を制御する請求項1〜5のいずれか一項に記載の排気浄化システムの制御装置。
前記改質制御部は、前記改質部の温度を制御可能な温度制御部(121,321,421)を制御可能であって、前記温度制御部によって前記改質部の温度を高くするにしたがって改質炭素数が少なくなるよう前記改質部における炭化水素化合物の改質反応を制御する請求項1〜6のいずれか一項に記載の排気浄化システムの制御装置。
前記改質制御部は、前記改質部における炭化水素化合物の改質反応の進行度合いが温度を高くするにしたがって小さくなるとき、前記温度制御部によって前記改質部の温度を高くするにしたがって改質炭素数が不変となるよう、または、多くなるよう前記改質部における炭化水素化合物の改質反応を制御する請求項7に記載の排気浄化システムの制御装置。
前記改質制御部は、前記改質部の温度が前記改質部における炭化水素化合物の改質反応を行うことが可能な温度領域のうち低温となるよう前記温度制御部を制御する請求項7または8に記載の排気浄化システムの制御装置。
前記改質制御部は、前記改質部における酸素濃度を制御可能な酸素濃度制御部(15)を制御可能であって、前記酸素濃度制御部によって前記改質部における酸素濃度を増加するにしたがって改質炭素数が少なくなるよう前記改質部における炭化水素化合物の改質反応を制御する請求項1〜9のいずれか一項に記載の排気浄化システムの制御装置。
前記改質制御部は、前記改質部の酸素濃度が前記改質部における炭化水素化合物の改質反応を行うことが可能な酸素濃度範囲のうち高い酸素濃度となるよう前記酸素濃度制御部を制御する請求項10に記載の排気浄化システムの制御装置。
前記改質制御部は、前記改質部における炭化水素化合物の濃度を制御可能な炭化水素濃度制御部(11)を制御可能であって、前記炭化水素濃度制御部によって前記改質部における炭化水素化合物の濃度を増加するにしたがって改質炭素数が少なくなるよう前記改質部における炭化水素化合物の改質反応を制御する請求項1〜11のいずれか一項に記載の排気浄化システムの制御装置。
前記改質制御部は、前記改質部から排出される気体が基準気体より含酸素炭化水素化合物を多く含む場合、改質炭素数が少なくなるよう前記改質部における炭化水素化合物の改質反応を制御する請求項1〜12のいずれか一項に記載の排気浄化システムの制御装置。
前記改質制御部は、前記改質部から排出される気体が基準気体より炭素同士の二重結合を含む炭化水素化合物を多く含む場合、改質炭素数が少なくなるよう前記改質部における炭化水素化合物の改質反応を制御する請求項1〜13のいずれか一項に記載の排気浄化システムの制御装置。
前記改質制御部は、前記改質部から排出される気体が基準気体より低反応性炭化水素化合物を多く含む場合、改質炭素数が少なくなるよう前記改質部における炭化水素化合物の改質反応を制御する請求項1〜14のいずれか一項に記載の排気浄化システムの制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の複数の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0010】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態による「排気浄化システムの制御装置」は、内燃機関が排出する排気に含まれる窒素酸化物を排気から除去する「内燃機関の排気浄化システム」に適用される。
【0011】
最初に、排気浄化システム1の構成について
図1に基づいて説明する。排気浄化システム1は、「内燃機関」としてのエンジン8に適用され、「炭化水素濃度制御部」としての燃料添加部11、改質部12、「触媒」としての排気浄化部13、制御装置20などを有する。なお、
図1には、排気浄化システム1における気体の流れを実線矢印Fgで示す。
【0012】
燃料添加部11は、エンジン8の排気系6に接続する還元剤添加管111に設けられている。還元剤添加管111が有する還元剤添加通路110は、排気系6が有する排気通路60に連通するよう形成されている。還元剤添加通路110には、図示しないフィルタを介して外部から大気圧の空気が流入可能である。
【0013】
燃料添加部11は、エンジン8に燃料を噴射供給する燃料噴射弁51の燃料を一時的に貯留するコモンレール52に接続している。コモンレール52には、燃料タンク50が貯留し高圧ポンプ53によって昇圧された比較的高圧の燃料が貯留されている。燃料添加部11は、後述する制御装置20が有する改質制御部29と電気的に接続している。燃料添加部11は、改質制御部29の指令に基づいてコモンレール52内の燃料を還元剤添加通路110に噴射可能である(
図1の点線F1参照)。以下、燃料添加部11が噴射した燃料を「添加燃料」という。
【0014】
改質部12は、還元剤添加管111の燃料添加部11の下流側に設けられる。改質部12は、還元剤添加通路110を流れる添加燃料に含まれる炭化水素化合物(以下、単に「炭化水素」という)を改質する。改質部12において改質された炭化水素(以下、「改質炭化水素」という)は、還元剤添加通路110および排気通路60を介して排気浄化部13に導かれる。改質部12における炭化水素の改質反応の詳細については後述する。
【0015】
改質部12には、改質部12の温度を変更可能な「温度制御部」としてのヒータ121が設けられている。ヒータ121は、改質制御部29と電気的に接続している。ヒータ121は、改質制御部29の指令に応じて改質部12の温度を制御する。
【0016】
排気浄化部13は、排気系6の還元剤添加管111が接続する部位から下流側に設けられている。排気浄化部13は、還元触媒を有する。排気浄化部13は、排気に含まれる窒素酸化物を還元することによって排気から窒素酸化物を取り除く。排気浄化部13には、排気通路60を流れるエンジン8の排気、還元剤添加通路110を流れる空気、添加燃料、および、改質炭化水素が流入する。
【0017】
制御装置20は、流量センサ21,22、酸素濃度センサ23,24、ガス温度センサ25、改質部温度センサ26、触媒温度センサ27、炭化水素濃度センサ28、および、改質制御部29を有する。流量センサ22、酸素濃度センサ24、および、触媒温度センサ27は、特許請求の範囲に記載の「第一出力部」に相当する。流量センサ21、酸素濃度センサ23、改質部温度センサ26、および、炭化水素濃度センサ28は、特許請求の範囲に記載の「第二出力部」に相当する。
【0018】
流量センサ21は、還元剤添加管111において燃料添加部11の下流側を流れる気体、すなわち、大気から流入する空気と燃料添加部11が添加する添加燃料との混合気の流量を検出可能に設けられている。流量センサ21は、改質制御部29と電気的に接続している。流量センサ21は、空気と添加燃料との混合気の流量に応じた信号を改質制御部29に出力する。
【0019】
流量センサ22は、排気系6において排気浄化部13の上流側を流れる気体、すなわち、排気通路60を流れるエンジン8の排気、還元剤添加通路110を流れる空気、添加燃料、および、改質炭化水素の混合気の流量を検出可能に設けられている。流量センサ22は、改質制御部29と電気的に接続している。流量センサ22は、排気通路60を流れるエンジン8の排気、還元剤添加通路110を流れる空気、添加燃料、および、改質炭化水素の混合気の流量に応じた信号を改質制御部29に出力する。
【0020】
酸素濃度センサ23は、還元剤添加管111において燃料添加部11の下流側を流れる大気から流入する空気と燃料添加部11が添加する添加燃料との混合気に含まれる酸素濃度を検出可能に設けられている。酸素濃度センサ23は、改質制御部29と電気的に接続している。酸素濃度センサ23は、空気と添加燃料との混合気に含まれる酸素濃度に応じた信号を改質制御部29に出力する。
【0021】
酸素濃度センサ24は、排気系6において排気浄化部13の上流側を流れるエンジン8の排気、大気から流入する空気、添加燃料、および、改質炭化水素の混合気に含まれる酸素濃度を検出可能に設けられている。酸素濃度センサ24は、改質制御部29と電気的に接続している。酸素濃度センサ24は、エンジン8の排気、空気、添加燃料、および、改質炭化水素の混合気に含まれる酸素濃度に応じた信号を改質制御部29に出力する。
【0022】
ガス温度センサ25は、還元剤添加管111において燃料添加部11の下流側を流れる大気から流入する空気と燃料添加部11が添加する添加燃料との混合気の温度を検出可能に設けられている。ガス温度センサ25は、改質制御部29と電気的に接続している。ガス温度センサ25は、空気と添加燃料との混合気の温度に応じた信号を改質制御部29に出力する。
【0023】
改質部温度センサ26は、改質部12の温度を検出可能に設けられている。改質部温度センサ26は、改質制御部29と電気的に接続している。改質部温度センサ26は、改質部12の温度に応じた信号を改質制御部29に出力する。
【0024】
触媒温度センサ27は、排気浄化部13の温度を検出可能に設けられている。触媒温度センサ27は、改質制御部29と電気的に接続している。触媒温度センサ27は、排気浄化部13の温度応じた信号を改質制御部29に出力する。
【0025】
炭化水素濃度センサ28は、還元剤添加管111において燃料添加部11の下流側であって改質部12の上流側を流れる大気から流入する空気と燃料添加部11によって添加される添加燃料との混合気に含まれる炭化水素の濃度を検出可能に設けられている。炭化水素濃度センサ28は、改質制御部29と電気的に接続している。炭化水素濃度センサ28は、空気と添加燃料との混合気の炭化水素の濃度に応じた信号を改質制御部29に出力する。
【0026】
改質制御部29は、燃料添加部11、および、ヒータ121と電気的に接続している。改質制御部29は、流量センサ21,22、酸素濃度センサ23,24、ガス温度センサ25、改質部温度センサ26、触媒温度センサ27、および、炭化水素濃度センサ28が出力する信号に基づいて、改質部12における炭化水素の改質反応を制御する。具体的には、改質部12から排出される気体に含まれる炭化水素一分子当たりの炭素数(以下、「改質炭素数」という)が所望の改質炭素数となるよう燃料添加部11による燃料の添加量および改質部12の温度を制御する。
【0027】
次に、制御装置20における排気浄化システムの制御プロセスについて
図2〜12に基づいて説明する。
図2に制御装置20における排気浄化システムの制御プロセスのフローチャートを示す。
図2に示すフローチャートは、エンジン8が駆動している間、常時実行される。
【0028】
最初に、ステップ(以下、単に「S」という)101において、排気浄化部13の状態を検出する。S101では、改質制御部29は、流量センサ22、酸素濃度センサ24、および、触媒温度センサ27が出力する信号に基づいて排気浄化部13を流れる気体の流量、酸素濃度、および、排気浄化部13の温度を検出する。
【0029】
次に、S102において、改質部12における炭化水素の改質反応の進行度合いの目標を設定する。排気浄化部13における窒素酸化物の除去率(以下、「NOx除去率」という)および炭化水素による触媒被毒(以下、「HC被毒」という)の度合いは、排気浄化部13に流入する気体の改質炭素数によって異なる。改質炭素数は、改質部12における炭化水素の改質反応の進行度合いによって異なる。
そこで、S102では、S101において検出された排気浄化部13の状態に基づいてNOx除去率を維持しつつHC被毒の度合いを比較的小さくする改質炭素数となる炭化水素の改質反応の進行度合いを目標の進行度合いとして設定する。
【0030】
ここで、排気浄化部13における改質炭素数とNOx除去率およびHC被毒の度合いとの関係について
図3に基づいて説明する。
図3には、排気浄化部13が窒素酸化物を還元可能な活性温度領域におけるNOx除去率およびHC被毒と改質炭素数との関係を示している。
図3では、温度軸T3に沿って、例えば、250度以下の低温領域(
図3の領域TL3)、250度から450度までの間の中温領域(
図3の領域TM3)、および、450度以上の高温領域(
図3の領域TH3)におけるNOx除去率(
図3に示す「ReNOx」)およびHC被毒の度合い(
図3に示す「PoHC」)と改質炭素数(
図3に示す「NuC」)との関係を示している。なお、
図3に示す特性図において改質炭素数のスケールは、低温領域から高温領域まで全て同じにしてある
【0031】
図3に示すように、中温領域TM3および高温領域TH3では、低温領域TL3に比べ、炭化水素の炭素数が小さくてもNOx除去率は比較的高い。一方、中温領域TM3では、低温領域TL3および高温領域TH3に比べ、炭化水素の炭素数が小さくてもHC被毒が発生しやすい。このように、NOx除去率およびHC被毒の度合いと改質炭素数との関係は、排気浄化部13の温度によっても変化する。
【0032】
図4に、改質部12における炭化水素の改質反応の進行度合いと改質炭素数との関係を示す。
図4では、横軸に炭化水素の改質反応の進行度合い(
図4に示す「deR」)を示す。縦軸に改質炭素数を示す。
図4に示すように、改質部12における改質反応が一定程度進行した後は、改質反応が進行すると改質炭素数は減少する。
S102では、改質制御部29は、
図3および
図4に示す情報およびS101において検出された排気浄化部13の状態に基づいて、改質部12における炭化水素の改質反応の目標を設定する。
【0033】
次に、S103において、改質部12の状態を検出する。S103では、改質制御部29は、流量センサ21、酸素濃度センサ23、ガス温度センサ25、炭化水素濃度センサ28、および、改質部温度センサ26が出力する信号に基づいて改質部12を流れる気体の流量、酸素濃度、気体の温度、炭化水素濃度、および、改質部12の温度を検出する。
【0034】
次に、S104において、改質部12における炭化水素の改質反応の現在の状態を算出する。ここで、改質部12の状態を表す因子と炭化水素の改質反応の進行度合いとの関係について、
図5〜9に基づいて説明する。
【0035】
図5には、還元剤添加管111において大気から流入する空気と燃料添加部11が添加する添加燃料との混合気の流速と炭化水素の改質反応の進行度合いとの関係を示す。
図5では、横軸に当該混合気の流速(
図5に示す「frM」)を示し、縦軸に改質反応の進行度合いを示す。
図5に示すように、空気と添加燃料との混合気の流速が速くなると、改質反応の進行度合いは小さくなる。
【0036】
図6には、改質部12の温度と炭化水素の改質反応の進行度合いとの関係を示す。
図6では、横軸に改質部12の温度(
図6に示す「TeM」)を示し、縦軸に改質反応の進行度合いを示す。
図6に示すように、改質部12の温度が高くなると、改質反応の進行度合いは大きくなる。
【0037】
また、
図6に示す改質部12の温度に比べ低い温度領域では、炭化水素は低温酸化反応によって改質反応が進行する場合がある。この場合、
図7の低温領域における改質部12の温度と燃料の改質反応の進行度合いとの関係を表す特性図に示すように、特定の温度領域において、改質部12の温度が高くなると改質反応の進行度合いが小さくなる(
図7の温度T71から温度T72までの間)。すなわち、低温領域では、改質反応の進行度合いは、改質部12の温度の変化に比べ安定している。
【0038】
図8には、還元剤添加管111において燃料添加部11の下流側を流れる大気から流入する空気と燃料添加部11が添加する添加燃料との混合気に含まれる酸素濃度と炭化水素の改質反応の進行度合いとの関係を示す。
図8では、横軸に空気と添加燃料との混合気に含まれる酸素濃度(
図8に示す「CoM」)を示し、縦軸に改質反応の進行度合いを示す。
図8に示すように、空気と添加燃料との混合気に含まれる酸素濃度が高くなると、改質反応の進行度合いは大きくなる。
【0039】
図9には、還元剤添加管111において燃料添加部11の下流側であって改質部12の上流側を流れる大気から流入する空気と燃料添加部11によって添加される添加燃料との混合気に含まれる炭化水素の濃度と炭化水素の改質反応の進行度合いとの関係を示す。
図9では、横軸に空気と添加燃料との混合気に含まれる炭化水素の濃度(
図9に示す「ChcM」)を示し、縦軸に改質反応の進行度合いを示す。
図9に示すように、空気と添加燃料との混合気に含まれる改質燃料の濃度が高くなると、改質反応の進行度合いは大きくなる。
【0040】
S104では、
図5〜9に示した改質部12の状態を示す因子と燃料の改質反応の進行度合いとの関係に基づいて改質部12における燃料の改質反応の現在の状態を算出する。
【0041】
次に、S105において、改質部12における炭化水素の改質反応を制御する。改質制御部29は、排気浄化部13におけるNOx除去率を維持しつつHC被毒を低減するよう炭化水素の改質反応を制御する。
【0042】
具体的には、燃料添加部11によって還元剤添加通路110に添加された添加燃料の量を多くすると、改質部12における改質反応が進行するため、改質炭素数は小さくなる。
また、ヒータ121によって改質部12の温度を高くすると、改質部12における改質反応が進行するため、改質炭素数は小さくなる。さらに、
図7で述べたように、低温領域における改質反応では、温度の変化に対して改質反応が安定していることから、この温度領域での改質反応によって改質炭素数を高い精度で制御することが可能である。
S105では、このように、添加燃料の量および改質部12の温度を制御することによって,改質部12における改質反応を目標の改質反応の進行度合いとする。
【0043】
また、排気浄化部13における流速が速くなるとHC被毒の度合いが高まる。そこで、改質制御部29は、流量センサ22が検出する排気浄化部13を流れる混合気の流量に基づいて、改質部12における改質反応において改質炭素数を小さくするよう改質部12を制御する。
また、排気浄化部13における酸素濃度が低くなるとHC被毒の度合いが高まる。そこで、改質制御部29は、酸素濃度センサ24が検出する排気浄化部13を流れる混合気の酸素濃度に基づいて、改質部12における改質反応において改質炭化水素の改質炭素数を小さくする。
【0044】
また、排気浄化部13に流入する気体が含む成分によってNOx除去率やHC被毒の度合いが変化する。そこで、S105では、改質制御部29は、炭化水素の分子構造に着目した炭化水素の改質反応を行う。ここで、排気浄化部13に流入する気体が含む成分とNOx除去率およびHC被毒の度合いとの関係について、
図10〜12に基づいて説明する。
【0045】
図10には、アルデヒドやエーテルなど含酸素炭化水素における改質炭素数とNOx除去率との関係を示す。
図10では、横軸に改質炭素数を示し、縦軸にNOx除去率を示す。
図10には、「基準気体」としての主成分が直鎖パラフィンである改質炭化水素の特性を実線L100で示し、含酸素炭化水素を比較的多く含む改質炭化水素の特性を点線L101で示す。
図10に示すように、改質炭素数が少なくなると主成分が直鎖パラフィンである改質炭化水素ではNOx除去率が低下するが、含酸素炭化水素を比較的多く含む改質炭化水素ではNOx除去率は向上する。このことから、改質制御部29は、改質炭化水素に含酸素炭化水素が多く含まれる場合、改質炭素数が少なくなるよう改質部12における炭化水素の改質反応を進める制御を行う。
【0046】
また、含酸素炭化水素を多く含む改質炭化水素は、比較的NOx除去率が高い。そこで、ヒータ121による改質部12の温度制御では、改質部12の温度を炭化水素の改質反応を行うことが可能な温度領域のうち比較的低温とすることによって含酸素炭化水素を比較的多く含むよう制御することもできる。
【0047】
図11(a)には、炭素同士の二重結合を含む炭化水素であるオレフィンにおける改質炭素数とNOx除去率との関係を示す。
図11(a)では、横軸に改質炭素数を示し、縦軸にNOx除去率を示す。
図11(a)には、主成分が直鎖パラフィンである改質炭化水素の特性を実線L110で示し、オレフィンを比較的多く含む改質炭化水素の特性を点線L111で示す。
また、
図11(b)には、オレフィンにおける改質炭素数とHC被毒の度合いとの関係を示す。
図11(b)では、横軸に改質炭素数を示し、縦軸にHC被毒の度合いを示す。
図11(b)には、主成分が直鎖パラフィンである改質炭化水素の特性を実線L112で示し、オレフィンを比較的多く含む改質炭化水素の特性を点線L113で示す。
図11に示すように、オレフィンを比較的多く含む改質炭化水素では、改質炭素数が少なくなるとHC被毒の度合いは低くなる一方、NOx除去率は高いままとなる。このことから、改質炭化水素にオレフィンが多く含まれる場合、改質炭素数が少なくなるよう改質部12における炭化水素の改質反応を進める制御を行う。
【0048】
図12には、芳香族化合物、ナフテン、側鎖を有する炭化水素、パラフィンなどの低反応性炭化水素における改質炭素数とHC被毒の度合いとの関係を示す。
図12では、横軸に改質炭素数を示し、縦軸にHC被毒の度合いを示す。
図12には、主成分が直鎖パラフィンである改質炭化水素の特性を実線L130で示し、低反応性炭化水素を比較的多く含む改質燃料の特性を点線L131で示す。
図12に示すように、低反応性炭化水素を比較的多く含む改質炭化水素では、改質炭素数が多くなるとHC被毒の度合いが高くなる。このことから、改質炭化水素に低反応性炭化水素が多く含まれる場合、改質炭素数が少なくなるよう改質部12における炭化水素の改質反応を進める制御を行う。
S105では、燃料添加部11によって還元剤添加通路110に添加された添加燃料の量やヒータ121による改質部12の加熱を利用して、
図10〜12のような情報を基に改質部12における燃料の改質反応を制御する。
制御装置20における排気浄化システムの制御プロセスは、このようにして行われる。
【0049】
一般に、炭化水素を還元剤とする窒素酸化物の非選択接触還元法では、炭化水素が触媒に吸着され触媒の性能が低下するHC被毒が発生する。
第一実施形態による制御装置20では、流量センサ22、酸素濃度センサ24、および、触媒温度センサ27によって排気浄化部13の状態を検出する。このとき、改質制御部29は、触媒温度センサ27によって検出される排気浄化部13の温度に基づいて改質部12における炭化水素の改質反応を制御する。改質制御部29は、HC被毒の度合いに相関関係がある改質炭素数が所望の改質炭素数となるよう改質反応の進行度合いを制御する。これにより、改質制御部29によって制御される排気浄化システム1は、NOx除去率を維持しつつ排気浄化部13におけるHC被毒の度合いを低減することができる。
【0050】
また、改質制御部29は、排気浄化部13の温度が触媒の活性温度領域の中温領域であると触媒温度センサ27が検出するとき、改質炭素数が触媒の活性温度領域の低温領域および高温領域での改質炭素数に比べ小さくなるよう改質部12を制御する。これにより、
図3に示したように、触媒の活性温度領域の範囲内の温度によっても異なる特性を示すNOx除去率およびHC被毒に対し、改質炭素数を調整することができるため、排気浄化システム1は、NOx除去率を向上しつつ排気浄化部13におけるHC被毒の度合いをさらに低減することができる。
【0051】
一般に、反応の進行度合いは、反応時間が長いほど、また、反応速度が速いほど、反応は進行する。反応時間は、反応部を流れる気体の流量に対応する。反応速度は、反応部を流れる気体の濃度および反応部の温度に対応する。
改質制御部29では、還元剤添加通路110の混合気の流量を流量センサ21によって検出する。また、反応速度は、還元剤添加通路110の酸素濃度を酸素濃度センサ23によって検出し、改質部12の温度を改質部温度センサ26によって検出し、還元剤添加通路110の炭化水素の濃度を炭化水素濃度センサ28によって検出する。
改質制御部29では、このように、改質反応の進行度合いに関係する複数の因子についての情報に基づいて改質部12における炭化水素の改質反応を制御する。第一実施形態では、添加燃料の量を燃料添加部11において調整することによって改質部12における改質反応の進行度合いを制御することができる。また、改質部12の温度をヒータ121によって調整することによって改質反応の進行度合いを制御することができる。これにより、排気浄化部13に流入する改質炭化水素の改質炭素数が制御できるため、排気浄化システム1は、NOx除去率を向上しつつ排気浄化部13におけるHC被毒の度合いをさらに低減することができる。
【0052】
また、
図7に示したように、低温領域における炭化水素の改質反応は、温度の変化に対して比較的安定している。これにより、改質反応の進行度合いに対応する改質炭素数を高い精度で制御することができる。したがって、排気浄化システム1は、NOx除去率を向上しつつ排気浄化部13におけるHC被毒の度合いをさらに低減することができる。
【0053】
一般に、NOx除去率またはHC被毒の度合いは、排気浄化部13に流入する気体が含む炭化水素の種類によって異なる。そこで、改質制御部29では、NOx除去率を維持しつつHC被毒の度合いを低減することができるよう改質炭素数を制御する。第一実施形態では、含酸素炭化水素、炭素同士の二重結合を含む炭化水素、または、低反応性炭化水素を多く含む場合、改質制御部29は、改質炭素数が少なくなるよう改質部12を制御する。また、比較的NOx除去率が高い含酸素炭化水素が多く生成されるよう改質部12の温度を低温とする。これにより、排気浄化システム1は、NOx除去率を確実に維持しつつHC被毒の度合いをさらに低減することができる
【0054】
また、改質制御部29は、S105において、改質炭化水素に含酸素炭化水素が多く含まれるよう、改質部12の温度を炭化水素の改質反応を行うことが可能な温度領域のうち比較的低温とする。これにより、排気浄化システム1は、NOx除去率を向上することができる。
【0055】
炭化水素を還元剤とする窒素酸化物の非選択接触還元法では、触媒における流速が速くなるとHC被毒の度合いが高まる傾向がある。そこで、改質制御部29は、流量センサ22が検出する排気浄化部13を流れる混合気の流量に基づいて改質炭素数を小さくする。これにより、排気浄化システム1は、排気浄化部13におけるHC被毒の度合いをさらに低減することができる。
【0056】
また、炭化水素を還元剤とする窒素酸化物の非選択接触還元法では、排気浄化部における酸素濃度が低くなるとHC被毒の度合いが高まる傾向がある。そこで、改質制御部49は、酸素濃度センサ24が検出する排気浄化部13を流れる混合気の酸素濃度に基づいて改質炭素数を小さくする。これにより、排気浄化システム1は、排気浄化部13におけるHC被毒の度合いをさらに低減することができる。
【0057】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態による排気浄化システムの制御装置を
図13に基づいて説明する。第二実施形態は、排気系に改質部が設けられている点が第一実施形態と異なる。なお、第一実施形態と実質的に同一の部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0058】
第二実施形態の排気浄化システム2は、燃料添加部11、改質部32、排気浄化部13、制御装置30などを有する。排気浄化システム2では、燃料添加部11は、排気系6に設けられ、制御装置30が有する改質制御部39の指令に基づいてコモンレール52内の燃料を排気通路60に噴射可能である(
図13の点線F2参照)。なお、
図13には、排気浄化システム2における気体の流れを実線矢印Fgで示す。
【0059】
改質部32は、排気系6の燃料添加部11の下流側に設けられる。改質部32は、排気系6を流れる燃料添加部11が添加した添加燃料に含まれる炭化水素、および、エンジン8から排出された未燃炭化水素を改質する。改質部32から排出される改質炭化水素は、排気系6を通って排気浄化部13に到達する。
改質部32には、改質部32の温度を変更可能な「温度制御部」としてのヒータ321が設けられている。ヒータ321は、改質制御部39の指令に応じて改質部32の温度を制御する。
【0060】
制御装置30は、流量センサ31,22、酸素濃度センサ33,24、ガス温度センサ35、改質部温度センサ36、触媒温度センサ27、炭化水素濃度センサ38、および、改質制御部39を有する。流量センサ31、酸素濃度センサ33、改質部温度センサ36、および、炭化水素濃度センサ38は、特許請求の範囲に記載の「第二出力部」に相当する。
【0061】
流量センサ31は、排気通路60において燃料添加部11の下流側を流れる気体、すなわち、エンジン8が排出する排気と燃料添加部11が添加する添加燃料との混合気の流量を検出可能に設けられている。流量センサ31は、改質制御部39と電気的に接続し排気と添加燃料との混合気の流量に応じた信号を改質制御部39に出力する。
【0062】
酸素濃度センサ33は、排気通路60において燃料添加部11の下流側を流れるエンジン8の排気と燃料添加部11が添加する添加燃料との混合気に含まれる酸素濃度を検出可能に設けられている。酸素濃度センサ33は、改質制御部39と電気的に接続し排気と添加燃料との混合気に含まれる酸素濃度に応じた信号を改質制御部39に出力する。
【0063】
ガス温度センサ35は、排気通路60において燃料添加部11の下流側を流れるエンジン8の排気と燃料添加部11が添加する添加燃料との混合気の温度を検出可能に設けられている。ガス温度センサ35は、改質制御部39と電気的に接続し、排気と添加燃料との混合気の温度に応じた信号を改質制御部39に出力する。
【0064】
改質部温度センサ36は、改質部32の温度を検出可能に設けられている。改質部温度センサ36は、改質制御部39と電気的に接続し改質部32の温度に応じた信号を改質制御部39に出力する。
【0065】
炭化水素濃度センサ38は、排気通路60において燃料添加部11の下流側であって改質部32の上流側を流れるエンジン8の排気と燃料添加部11によって添加される添加燃料との混合気に含まれる炭化水素の濃度を検出可能に設けられている。炭化水素濃度センサ38は、改質制御部39と電気的に接続し排気と添加燃料との混合気の炭化水素の濃度に応じた信号を改質制御部39に出力する。
【0066】
改質制御部39は、燃料添加部11、および、ヒータ321と電気的に接続している。改質制御部39は、流量センサ31,22、酸素濃度センサ33,24、ガス温度センサ35、改質部温度センサ36、触媒温度センサ27、および、炭化水素濃度センサ38が出力する信号に基づいて改質部32における炭化水素の改質を制御する。具体的には、第一実施形態と同様に、改質炭素数が所望の改質炭素数となるよう燃料添加部11による燃料の添加量および改質部32の温度を制御する。
【0067】
第二実施形態の排気浄化システム2では、改質部32は、排気系6に設けられている。改質制御部39によって制御される改質部32は、燃料添加部11の添加燃料だけでなくエンジン8が排出する排気に含まれる未燃炭化水素も改質炭素数が所望の改質炭素数となるよう改質することができる。これにより、第二実施形態による制御装置30は、第一実施形態と同じ効果を奏する。
【0068】
(第三実施形態)
次に、本発明の第三実施形態による排気浄化システムの制御装置を
図14に基づいて説明する。第三実施形態は、還元剤添加管の上流側が排気系から分岐されている点が第一実施形態と異なる。なお、第一実施形態と実質的に同一の部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0069】
第三実施形態の排気浄化システム3は、燃料添加部11、改質部42、排気浄化部13、制御装置40などを有する。排気浄化システム3では、燃料添加部11は、バイパス管7に設けられ、制御装置40が有する改質制御部49の指令に基づいてコモンレール52内の燃料をバイパス通路70に噴射可能である(
図14の点線F3参照)。なお、
図14には、排気浄化システム3における気体の流れを実線矢印Fgで示す。
【0070】
バイパス管7は、両端が排気系6に接続している。バイパス管7の排気系6に接続している端部のうちエンジン8に近い側の端部71からバイパス管7が有するバイパス通路70にエンジン8が排出する排気が流入する。バイパス通路70を流れる排気には、燃料添加部11が噴射する添加燃料が添加される。バイパス通路70を流れる排気と添加燃料との混合気は、改質部42において改質される。改質部42において改質された改質炭化水素は、バイパス管7の排気系6に接続している端部のうちエンジン8から遠い側の端部72を通って排気系6に戻される。
【0071】
改質部42は、バイパス管7の燃料添加部11の下流側に設けられる。改質部42は、バイパス管7を流れる燃料添加部11が添加した添加燃料に含まれる炭化水素、および、エンジン8から排出された未燃炭化水素を改質する。改質部42から排出される改質炭化水素は、バイパス管7および排気系6を通って排気浄化部13に到達する。
改質部42には、改質部42の温度を変更可能な「温度制御部」としてのヒータ421が設けられている。ヒータ421は、改質制御部49の指令に応じて改質部42の温度を制御する。
【0072】
制御装置40は、流量センサ41,22、酸素濃度センサ43,24、ガス温度センサ45、改質部温度センサ46、触媒温度センサ27、炭化水素濃度センサ48、および、改質制御部49を有する。流量センサ41、酸素濃度センサ43、改質部温度センサ46、および、炭化水素濃度センサ48は、特許請求の範囲に記載の「第二出力部」に相当する。
【0073】
流量センサ41は、バイパス通路70において燃料添加部11の下流側を流れる気体、すなわち、エンジン8が排出する排気と燃料添加部11が添加する添加燃料との混合気の流量を検出可能に設けられている。流量センサ41は、改質制御部49と電気的に接続し排気と添加燃料との混合気の流量に応じた信号を改質制御部49に出力する。
【0074】
酸素濃度センサ43は、バイパス通路70において燃料添加部11の下流側を流れるエンジン8の排気と燃料添加部11が添加する添加燃料との混合気に含まれる酸素濃度を検出可能に設けられている。酸素濃度センサ43は、改質制御部49と電気的に接続し排気と添加燃料との混合気に含まれる酸素濃度に応じた信号を改質制御部49に出力する。
【0075】
ガス温度センサ45は、バイパス通路70において燃料添加部11の下流側を流れるエンジン8の排気と燃料添加部11が添加する添加燃料との混合気の温度を検出可能に設けられている。ガス温度センサ45は、改質制御部49と電気的に接続し、排気と添加燃料との混合気の温度に応じた信号を改質制御部49に出力する。
【0076】
改質部温度センサ46は、改質部42の温度を検出可能に設けられている。改質部温度センサ46は、改質制御部49と電気的に接続し改質部42の温度に応じた信号を改質制御部49に出力する。
【0077】
炭化水素濃度センサ48は、バイパス通路70において燃料添加部11の下流側であって改質部42の上流側を流れるエンジン8の排気と燃料添加部11によって添加される添加燃料との混合気に含まれる炭化水素の濃度を検出可能に設けられている。炭化水素濃度センサ48は、改質制御部49と電気的に接続し排気と添加燃料との混合気の炭化水素の濃度に応じた信号を改質制御部49に出力する。
【0078】
改質制御部49は、燃料添加部11、および、ヒータ421と電気的に接続している。改質制御部49は、流量センサ41,22、酸素濃度センサ43,24、ガス温度センサ45、改質部温度センサ46、触媒温度センサ27、および、炭化水素濃度センサ48が出力する信号に基づいて改質部42における炭化水素の改質を制御する。具体的には、第一実施形態と同様に、改質炭素数が所望の改質炭素数となるよう燃料添加部11による燃料の添加量および改質部42の温度を制御する。
【0079】
第三実施形態の排気浄化システム3では、改質部42は、排気系6をバイパスするバイパス管7に設けられている。改質制御部49によって制御される改質部42は、燃料添加部11の添加燃料だけでなくエンジン8が排出する排気に含まれる未燃炭化水素も改質炭素数が所望の改質炭素数となるよう改質することができる。これにより、第三実施形態による制御装置40は、第一実施形態と同じ効果を奏する。
【0080】
(第四実施形態)
次に、本発明の第四実施形態による排気浄化システムの制御装置を
図15に基づいて説明する。第四実施形態は、還元剤添加通路を流れる気体の流量を制御可能な点が第一実施形態と異なる。なお、第一実施形態と実質的に同一の部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0081】
第四実施形態の排気浄化システム4は、燃料添加部11、改質部12、排気浄化部13、「流速制御部」としての供給ポンプ14、制御装置20などを有する。
【0082】
供給ポンプ14は、還元剤添加管111の燃料添加部11の上流側に設けられている。供給ポンプ14は、改質制御部29と電気的に接続している。供給ポンプ14は、改質制御部29の指令に応じて、還元剤添加通路110を流れる気体の流量を調整することが可能である。
【0083】
第四実施形態の排気浄化システム4では、改質制御部29は、改質反応の進行度合いに関係する還元剤添加通路110の混合気の流量に関する情報に基づいて改質部12における炭化水素の改質反応を制御する。第四実施形態では、供給ポンプ14によって還元剤添加通路110の混合気の流量を調整することによって改質部12における流速を制御する。これにより、改質部12における改質反応の進行度合いを制御することができる。したがって、排気浄化部13に流入する改質炭化水素の改質炭素数が制御できるため、排気浄化システム4は、NOx除去率を向上しつつ排気浄化部13におけるHC被毒の度合いをさらに低減することができる。
【0084】
(第五実施形態)
次に、本発明の第五実施形態による排気浄化システムの制御装置を
図16に基づいて説明する。第五実施形態は、バイパス通路を流れる気体の酸素濃度を制御可能な点が第三実施形態と異なる。なお、第三実施形態と実質的に同一の部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0085】
第五実施形態の排気浄化システム5は、燃料添加部11、改質部12、排気浄化部13、「酸素濃度制御部」としての大気供給バルブ15、制御装置40などを有する。
【0086】
大気供給バルブ15は、バイパス管7の燃料添加部11の上流側に設けられている。大気供給バルブ15は、改質制御部49と電気的に接続している。大気供給バルブ15は、改質制御部49の指令に応じて自身の開度を制御することによって、バイパス通路70に空気を供給することが可能である。これにより、バイパス通路70を流れる気体の酸素濃度を調整することが可能となる。
【0087】
第五実施形態の排気浄化システム5では、改質制御部49は、改質反応の進行度合いに関係するバイパス通路70の混合気の酸素濃度に関する情報に基づいて改質部12における炭化水素の改質反応を制御する。第五実施形態では、バイパス通路70の混合気の酸素濃度を大気供給バルブ15によって調整することによって改質部12における酸素濃度を制御する。これにより、改質部12における改質反応の進行度合いを制御することができる。したがって、排気浄化部13に流入する改質炭化水素の改質炭素数が制御できるため、排気浄化システム5は、NOx除去率を向上しつつ排気浄化部13におけるHC被毒の度合いをさらに低減することができる。
【0088】
また、第一実施形態でも述べたように、含酸素炭化水素を多く含む改質炭化水素は、比較的NOx除去率が高い。そこで、大気供給バルブ15による改質部12の酸素濃度制御では、改質部12における酸素濃度を炭化水素の改質反応を行うことが可能な酸素濃度範囲のうち比較的高い酸素濃度とすることによって含酸素炭化水素を比較的多く含むよう制御する。これにより、排気浄化システム5のNOx除去率を向上することができる。
【0089】
(他の実施形態)
上述の実施形態では、改質制御部は、排気浄化部の温度によって改質炭素数が変化するよう改質反応の進行度合いを変更するとした。しかしながら、排気浄化部の温度によって改質反応の進行度合いを変更しなくてもよい。排気浄化部を流れる気体の流速や酸素濃度によって改質反応の進行度合いを変更してもよい。
【0090】
上述の実施形態では、改質炭化水素の分子構造に着目して炭化水素の改質反応を行うとした。分子構造に着目しなくてもよく、改質部における改質反応での改質炭素数を制御可能であればよい。
【0091】
上述の実施形態では、「第一出力部」として排気浄化部の状態を検出可能な流量センサ、酸素濃度センサ、および、触媒温度センサを備えるとした。しかしながら、「第一出力部」の構成はこれに限定されない。排気浄化部の状態を検出可能であればよい。また、「第一出力部」として、エンジンの運転条件ごとの算出結果をまとめたマップに基づいて排気浄化部の状態を推定する推定部や、物理化学モデルから排気浄化部の状態を演算する演算部を備えてもよい。
【0092】
上述の実施形態では、改質部の状態を検出可能な流量センサ、酸素濃度センサ、改質部温度センサ、および、炭化水素濃度センサを備えるとした。しかしながら、これらのセンサはなくてもよい。
【0093】
上述の実施形態では、炭化水素濃度センサによって検出される混合気の炭化水素の濃度に基づいて改質部における改質反応の進行度合いを制御するとした。しかしながら、混合気の炭化水素の濃度を検出する方法はこれに限定されない。燃料添加部が噴射する燃料の添加量に基づいて混合気の炭化水素の濃度を算出してもよい。
【0094】
上述の実施形態では、「温度制御部」としてヒータを備えるとした。しかしながら、「温度制御部」はこれに限定されない。クーラーによって改質部を冷却してもよい。
【0095】
上述の実施形態では、「炭化水素濃度制御部」として燃料添加部を備えるとした。しかしながら、「炭化水素濃度制御部」はこれに限定されないし、なくてもよい。エンジンの排気に含まれる未燃炭化水素を改質してもよい。
【0096】
第四実施形態では、「流速制御部」として大気を供給可能な供給ポンプを備えるとした。しかしながら、「流速制御部」はこれに限定されない。供給ポンプの代わりにバルブを設け、バルブの開度を制御することによって改質部における流速を制御してもよい。
【0097】
第五実施形態では、「酸素濃度制御部」として排気に空気を混合可能な大気供給バルブを備えるとした。しかしながら、「酸素濃度制御部」はこれに限定されない。
【0098】
第五実施形態では、大気供給バルブをバイパス管に設けるとした。大気供給バルブは、第二実施形態の排気系に設けられてもよい。
【0099】
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。