(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.本開示の一実施形態
1.1.概要
1.2.システム構成例
1.3.動作例
2.まとめ
【0014】
<1.本開示の一実施形態>
[1.1.概要]
本開示の一実施形態について説明する前に、本開示の一実施形態の概要について説明する。
【0015】
各需要家に蓄電池を有するバッテリサーバを備え、商用電源や、太陽光、風力、地熱等の自然エネルギーにより発生した電力を用いて蓄電池に電力を蓄えておき、その蓄電池に蓄えた電力を使って電気製品を動作させる仕組みが、今後ますます普及していくことが想定される。そのような仕組みの普及を踏まえ、上述したように、ある需要家のバッテリサーバにおいて電力が不足した場合に、電力に余裕のある需要家のバッテリサーバから、その電力が不足している需要家のバッテリサーバに電力を融通するシステムが考案されている。電力を需要家同士で供給しあう際は、蓄電池からの電力供給を考慮すると、直流電力による供給が行われることが、効率面を考えると望ましい。
【0016】
直流電力を需要家同士で供給しあう際に、送電側と受電側との間で、送電する電力量について予め合意しておくことが望ましい。そして、送電側と受電側との間で、予め合意した電力量で、電力が正しく送られることが求められる。送電側と受電側との間で正しい量で電力を送受電することは、送電側と受電側との間での取引の前提となるからである。
【0017】
しかし、直流電力を送信する際には、送電線の抵抗によって送電ロスが生じる。すなわち、送電側で送電電圧を決定しても、受電側では送電線の抵抗成分により電圧が低下する。この送電ロスが送電線の抵抗によるものなのかどうかは、受電側で正しく把握することは難しい。送電側が敢えて電圧を下げて送信しないとも限らないからである。
【0018】
また電力の受電側が、予め合意した量の電力を全て受電した状態で、送電の停止制御を受電側に委ねることで、送電側の送電電力量を決定する方法もあるが、この方法だと、送電側はいつ送電を停止できるかの予測が出来ず、また送電停止以降の送電スケジュールを計画したり、受電側へ送電する際に発生するロスを測定したり出来ない。従って電力の送電側が送電の停止制御を受電側に委ねる方法では、送電側において電力消費予測が出来ない。
【0019】
また送電側が、送電電圧と送電電流と送電時間の積で送電量を決定すると、途中の送電網の負荷や、送電網の中間で新たに発生する送電行為等による受電側の受電電圧の変動が無視され、受電側が受電側の受電電圧の変動に伴い発生するロスを全て受け持つという不公平が生じ得る。
【0020】
また送電側は、送電側のバッテリサーバの状態や、受電側のバッテリサーバの状態によって、送電電流を変化させる必要がある。送電電力は電圧と電流と時間との積で決まるため、高電圧で高電流に設定すると短時間で送電が終了するメリットがある一方、送電側や受電側のバッテリサーバの状態によっては、その設定値で送電できない可能性がある。
【0021】
そこで本件開示者らは、上述したような現象の発生を回避しつつ、直流電力を需要家同士で供給しあう際に、送電側と受電側との間で予め合意した量の電力を正しく供給することが可能な技術について鋭意検討を行なった。その結果。本件開示者らは、以下で示すように、上述したような現象の発生を回避しつつ、直流電力を需要家同士で供給しあう際に、送電側と受電側との間で予め合意した量の電力を正しく供給することが可能な技術を考案するに至った。
【0022】
以上、本開示の一実施形態の概要について説明した。続いて、本開示の一実施形態に係る送受電制御システムの機能構成例について説明する。
【0023】
[1.2.システム構成例]
図1は、本開示の一実施形態に係る送受電制御システムの全体構成例を示す説明図である。
図1に示したのは、蓄電池を有するバッテリサーバ間で直流電力を融通しあう送受電制御システムの全体構成例である。以下、
図1を用いて本開示の一実施形態に係る送受電制御システムの全体構成例について説明する。
【0024】
図1に示した送受電制御システム1は、各需要家(
図1では4つ)に設けられるバッテリサーバ同士で、必要に応じて直流電力を供給しあうことを目的として構築されたシステムである。需要家10aにはバッテリサーバ100aが設けられる。同様に需要家10bにはバッテリサーバ100bが、需要家10cにはバッテリサーバ100cが、需要家10dにはバッテリサーバ100dが、それぞれ設けられる。バッテリサーバ100a〜100dは、いずれも内部に、または外付けで、充放電可能なバッテリを備えている。
【0025】
またバッテリサーバ100a〜100dは、直流バスライン20に接続されて、必要に応じて直流電力を供給しあう。バッテリサーバ100a〜100dは、バッテリの電圧と直流バスライン20の電圧とを変換する双方向DC−DCコンバータを備えている。またバッテリサーバ100a〜100dは、通信線30に接続されて、直流バスライン20を通じて直流電力を供給しあう際に、通信線30を通じて情報の送受信を行なう。なお
図1では通信線30は有線であるとして示しているが、通信線30は無線であっても良い。
【0026】
各需要家10a〜10dは、それぞれ太陽光パネル200a〜200dを備えていても良い。太陽光パネル200a〜200dは、いずれも太陽光の照射を受けて発電するパネルであり、発電した電力を、それぞれバッテリサーバ100a〜100dに備えられるバッテリに蓄えることが出来るよう構成されている。なおバッテリサーバ100a〜100dに蓄えられる電力は、太陽光の他に、風力や地熱その他の自然エネルギーにより発生した電力であってもよい。
【0027】
そして本実施形態に係る送受電制御システム1は、直流バスライン20に接続されているバッテリサーバ100a〜100dの中の1つだけが、直流バスライン20を通じた直流電力の送受電を制御する制御権を有するように、バッテリサーバ100a〜100d間で調停する仕組みを備えたことを特徴としている。すなわち本実施形態に係る送受電制御システム1は、バッテリサーバ100a〜100dの中で制御権を有しているバッテリサーバだけが、他のバッテリサーバに対して、バッテリに蓄えた電力の送電や、バッテリへ充電するための電力の受電を指示し、制御権を有していないバッテリサーバは、勝手に電力の送受電を行なうことが出来ないようにする仕組みを備えている。
【0028】
このように、直流バスライン20に接続されているバッテリサーバ100a〜100dの中の1つだけが制御権を有して、他のバッテリサーバに対して直流バスライン20を通じた直流電力の送受電を制御することで、本実施形態に係る送受電制御システム1は、上述したような単にマスタとスレーブとに役割を分担する場合に生じ得る現象を回避し、直流電力の送受電を制御する制御権を効率よく管理することが可能になる。そして本実施形態に係る送受電制御システム1は、直流電力の送受電を制御する制御権を効率よく管理することで、バッテリサーバ間での制御の秩序を保つことが可能になる。
【0029】
また各バッテリサーバ100a〜100dは、電流メータ31及び電圧メータ32から、それぞれ直流バスライン20との接続点の電流値および電圧値を取得するよう構成されている。各バッテリサーバ100a〜100dは、通信線30を通じて電流値および電圧値の情報をやり取りする。各バッテリサーバ100a〜100dは、通信線30を通じて取得した電流値および電圧値の情報に基づいて、自サーバの双方向DC−DCコンバータの制御を行う。
【0030】
このように直流バスライン20を介した直流電力の送受電がバッテリサーバ100a〜100dの間で行われる場合、上述したように、直流バスライン20の抵抗によって、送電側から受電側へ電力が送られる際に電圧降下が生じ得る。
図1では、バッテリサーバ100a〜100bの間の抵抗をR1、バッテリサーバ100b〜100cの間の抵抗をR2、バッテリサーバ100c〜100dの間の抵抗をR3としている。直流バスライン20の抵抗による電圧降下の例について説明する。
【0031】
図2は、直流バスライン20を介した直流電力の送受電がバッテリサーバ100a〜100dの間で行われる場合における、直流バスライン20の抵抗による電圧降下の例を示す説明図である。
図2に示した例では、各バッテリサーバ(BS)間の抵抗は10Ωであるとしている。
【0032】
最初の例として、バッテリサーバ100aがバッテリサーバ100cへ直流電力を送電する場合の直流バスライン20の抵抗による電圧降下の例を示す。バッテリサーバ100aが電圧100Vで直流電力を出力し、バッテリサーバ100cが電流1Aで直流バスライン20から直流電力を受電するとした場合、バッテリサーバ100aの地点では電圧が100Vであっても、バッテリサーバ100cの地点の電圧は20V低下した80Vとなる。
【0033】
次の例として、バッテリサーバ100aがバッテリサーバ100cへ、バッテリサーバ100bがバッテリサーバ100dへ、それぞれ直流電力を送電する場合の直流バスライン20の抵抗による電圧降下の例を示す。バッテリサーバ100a、100bが電圧100Vで直流電力を出力し、バッテリサーバ100c、100dがそれぞれ電流1Aで直流バスライン20から直流電力を受電するとした場合、バッテリサーバ100aの地点では電圧が100Vであっても、バッテリサーバ100cの地点の電圧は30V低下した70Vとなり、またバッテリサーバ100dの地点の電圧はさらに10V低下した60Vとなる。
【0034】
次の例として、バッテリサーバ100aがバッテリサーバ100bへ、バッテリサーバ100dがバッテリサーバ100cへ、それぞれ直流電力を送電する場合の直流バスライン20の抵抗による電圧降下の例を示す。バッテリサーバ100a、100dが電圧100Vで直流電力を出力し、バッテリサーバ100b、100cがそれぞれ電流1Aで直流バスライン20から直流電力を受電するとした場合、バッテリサーバ100a、100dの地点では電圧が100Vであっても、バッテリサーバ100b、100cの地点の電圧は10V低下した90Vとなる。
【0035】
このように、バッテリサーバ100a〜100dが直流バスライン20を通じて直流電力を送受電する場合、直流バスライン20の抵抗によって、送電側の電圧より受電側の電圧の方が低くなる。従って送電側となるバッテリサーバ100a〜100dは、直流電力の送受電に先立って送受電の合意を確立するにあたり、受電側が希望する電力量を受電するための時間について、理想的な時間より長い時間を設定して受電側に通知することが望ましい。
【0036】
そこで送電側となるバッテリサーバ100a〜100dは、直流電力の送受電に先立って、直流電力の送電時のパラメータを決定するが、その際に、直流バスライン20による送電ロスを加味した直流電力の送電時間を含んだパラメータを決定する。また送電側となるバッテリサーバ100a〜100dは、直流バスライン20において行われている送受電の状況を取得し、その送受電の状況に基づいて直流電力の送電時のパラメータを決定してもよい。
【0037】
図3は、電圧によって送電時間が変化することを示す説明図である。例えば送電側から1kwhの電力を100Vで送電する場合、受電側の受電条件が100V、1Aであれば(すなわち電圧降下が全く発生しなければ)10時間で送電できる。しかし、受電側の受電条件が90V、1Aであれば10時間では送電できず、およそ11時間強かかる。
【0038】
従って、電流1Aで受電する受電側のバッテリサーバ100a〜100dが1kwhの電力を要求する場合、送電側となるバッテリサーバ100a〜100dは、この送電ロスを加味した上で送電時間を決定して受電側のバッテリサーバ100a〜100dに通知し、受電側に判断を仰ぐ。受電側のバッテリサーバ100a〜100dがその送電時間を受け入れることができれば、送電側のバッテリサーバ100a〜100dは、送電ロスを加味した送電時間で受電側のバッテリサーバ100a〜100dへ直流バスライン20を通じて直流電力を送電する。
【0039】
本開示の一実施形態にかかるバッテリサーバ100a〜100dは、このように送電ロスを加味した送電時間を決定することで、送電側のバッテリサーバ100a〜100dは、送電ロスを吸収する余裕を持って送電を開始する判断と、送電時間の予測とが可能とる。また受電側のバッテリサーバ100a〜100dは、送電ロスを加味した送電時間で電力が送電されてくることで、要求した電力を正確に受け取ることが出来る。
【0040】
以上、
図1を用いて本開示の一実施形態に係る送受電制御システムの全体構成例について説明した。続いて本開示の一実施形態に係る送受電制御システムの機能構成例について説明する。
【0041】
図4は、本開示の一実施形態に係る送受電制御システムの機能構成例を示す説明図である。以下、
図4を用いて本開示の一実施形態に係る送受電制御システムの機能構成例について説明する。
【0042】
図4に示したように、バッテリサーバ100aは、U−Agent110aと、M−Agent120aと、GM−Agent130aと、C−Agent140aと、DC−DCコンバータ150aと、バッテリ160aと、を含んで構成される。バッテリサーバ100b、100c、100dについても、バッテリサーバ100aと同等の構成を有する。以下では、バッテリサーバ100aを構成する各要素についての説明を行う。
【0043】
図4に示したように、通信線30は通信線30a、30bの2つの経路(チャネル)に分かれている。通信線30a、30bは、物理的に異なる有線の通信線であってもよく、物理的には同一の有線または無線の通信線であって、認証や暗号化等によって論理的に分かれていてもよい。そして
図4に示したように、U−Agent110a及びM−Agent120aは通信線30aで他のU−Agent110b〜110d及びM−Agent120b〜120dと通信し、GM−Agent130a及びC−Agent140aは通信線30bで他のGM−Agent130b〜130d及びC−Agent140b〜140dと通信する。
【0044】
本実施形態に係る送受電制御システム1は、このようにU−Agent110a及びM−Agent120aと、GM−Agent130a及びC−Agent140aとで通信経路を分けることで、U−Agent110a及びM−Agent120aがGM−Agent130a及びC−Agent140aへ直接指示を送出することを防ぎ、またGM−Agent130a及びC−Agent140aがU−Agent110a及びM−Agent120aへ直接指示を送出することも防いでいる。
【0045】
U−Agent110aは、バッテリ160aの充電状態(SOC;State of Charge)を定期的に確認する。そしてU−Agent110aは、バッテリ160aの充電状態が所定の条件を満たした場合に、M−Agent120aへ受電を依頼する。U−Agent110aがM−Agent120aへ送出する依頼の内容は、受電の際の電圧値や電流値、受電する時間(例えば、開始時刻、終了時刻、継続時間等)、受電を停止するバッテリ160aの充電状態、などが含まれ得る。
【0046】
U−Agent110aは、バッテリ160の充電状態が所定の条件を満たしたかどうかの判断に、シナリオ170aを参照する。シナリオ170aには、U−Agent110aがM−Agent120aへ受電を依頼するためのバッテリ160aの充電状態の条件が記述されている。シナリオ170aに記述される条件としては、例えば、バッテリ160aの充電状態が20%以下になるとU−Agent110aがM−Agent120aへ受電を依頼する、という内容があり得る。
【0047】
U−Agent110aは、ユーザからの要求に基づき、シナリオ170aの内容を編集する機能を有していても良い。シナリオ170aの内容は例えばテキストで記述されてもよく、XML(Extensible Markup Language)等のマークアップ言語で記述されてもよく、Lisp、Perl、PHP等のスクリプト言語として記述されていてもよい。シナリオ170aの内容がスクリプト言語で記述されている場合は、シナリオ170aの内容は、例えば関数の塊として記述され得る。
【0048】
またシナリオ170aの編集には、例えばテキストエディタが用いられてもよく、専用のエディタが用いられてもよく、Webブラウザが用いられてもよい。U−Agent110aは、これらのシナリオ170aの内容を編集することが可能なツールが動作可能に構成され得る。
【0049】
またシナリオ170aには、他のバッテリサーバから電力の要求があった場合に、どのような条件を満たしていればその要求に応えて送電を許可するか、についても記述され得る。シナリオ170aに記述される条件としては、例えば、他のバッテリサーバから電力の要求があった場合に、バッテリ160aの充電状態が80%以上であればその要求に応えて送電を許可する、という内容があり得る。またシナリオ170aに記述される条件としては、例えば、他のバッテリサーバから電力の要求があった場合に、バッテリ160aの充電状態が80%以上であり、かつ、電力の1時間あたりの使用率が10%以下であればその要求に応えて送電を許可する、という内容があり得る。すなわち、バッテリ160aの充電状態だけでなく、バッテリ160aに蓄えられた電力の使用状態も、シナリオ170aに記述される条件に含まれ得る。
【0050】
シナリオの内容は、各バッテリサーバで独自に定められることが出来る。従って、上述の受電を依頼するための条件や、他のバッテリサーバから電力の要求があった場合にその要求に応えて送電を許可するための条件は、各バッテリサーバでそれぞれ異なり得る。また各バッテリサーバで定められるシナリオは、1つだけに限定されず、状況に応じてU−Agent110aが参照するシナリオが切り替えられても良い。
【0051】
M−Agent120aは、U−Agent110aから受電の依頼が発生した場合に、他のバッテリサーバのM−Agent120b、120c、120dとの間で通信線30aを通じて通信を行なって、送電可能かどうかを問い合わせる。またM−Agent120aは、他のバッテリサーバのM−Agent120b、120c、120dから送電可能かどうかの問い合わせがあった場合に、送電可能、または送電不可能の回答を返答する。
【0052】
またM−Agent120aは、他のバッテリサーバのM−Agent120b、120c、120dから送電可能かどうかの問い合わせがあった場合に、送電可能であると回答する時は、GM−Agent130aが起動されていなければ、他のバッテリサーバのM−Agent120b、120c、120dへ、GM−Agent130b、130c、130dが起動中かどうか、通信線30aを通じて問い合わせる。詳細は後述するが、GM−Agent130aは、M−Agent120aからの起動指示に基づいて起動して、各バッテリサーバのDC−DCコンバータ150a〜150dの動作を制御する。
【0053】
本実施形態に係る送受電制御システム1では、GM−Agent130a〜130dの中のいずれか1つだけが起動を許可される。従ってM−Agent120aは、GM−Agent130aが起動されていなければ、バッテリサーバ100aは送受電の制御権を有していないと判断して、他のバッテリサーバのM−Agent120b、120c、120dへ、送受電の制御権を有しているか、すなわち、GM−Agent130b、130c、130dが起動中かどうかを通信線30aを通じて問い合わせる。起動中のGM−Agentがあれば、M−Agent120aは、その起動中のGM−Agentに、そのGM−Agentを起動させているM−Agentを介して送受電を依頼する。例えばGM−Agent130bが起動中であれば、M−Agent120aは、M−Agent120bを介して、GM−Agent130bへ電力の送受電を依頼する。
【0054】
一方、他のバッテリサーバのM−Agent120b、120c、120dから送電可能かどうかの問い合わせがあった場合に、送電可能であると回答する時は、GM−Agent130aが起動されていれば、GM−Agent130aが起動中である旨を併せて回答する。
【0055】
M−Agent120aは、制御権を有しているバッテリサーバのGM−Agentのみからの指示に従うようにC−Agent140aに通知する。例えばM−Agent120aは、制御権を有しているバッテリサーバのGM−Agentを識別する識別情報をC−Agent140aに通知する。C−Agent140aは、制御権を有しているバッテリサーバのGM−Agentを識別する識別情報の通知を受けることで、その識別情報以外の識別情報を有するGM−Agentからの指示を無視することが出来る。
【0056】
GM−Agent130aは、M−Agent120aからの起動指示によって起動されて活性化され、M−Agent120aからの停止指示によって停止されて不活性化される。活性化されたGM−Agent130aは、M−Agent120a〜120dからの電力の送受電の依頼に基づき、C−Agent140a〜140dを介してDC−DCコンバータ150a〜150dによる電力の送受電を、通信線30bを通じて制御する。そしてGM−Agent130aは、依頼された全ての電力の送受電が終了すると、制御権を開放する手続きを実行する。制御権を開放すると、GM−Agent130aはM−Agent120aからの停止指示によって停止されて不活性化される。
【0057】
GM−Agent130aは、M−Agent120a〜120dから電力の送受電の依頼があると、各バッテリサーバ100a〜100dの送電能力及び受電能力をC−Agent140a〜140dから通信線30bを通じて取得する。またGM−Agent130aは、加えて直流バスライン20の総送電電流量から、送電可能な電流量を算出する。GM−Agent130aは、送電開始後に、累積送電量が要求された送電量に達すると、その送電を停止するようC−Agent140a〜140dに通信線30bを通じて指示する。
【0058】
C−Agent140aは、GM−Agent130a〜130dの中の、活性化された(すなわち、制御権を有する)GM−Agentからの指示に基づいてDC−DCコンバータ150aを制御する。C−Agent140aは、制御権を有しているバッテリサーバのGM−Agentのみからの指示に従うようにM−Agent120aから通知を受けているので、制御権を有しているバッテリサーバのGM−Agentからの指示のみに従ってDC−DCコンバータ150aを制御する。
【0059】
C−Agent140aは、定期的にDC−DCコンバータ150aのパラメータをチェックする。DC−DCコンバータ150aのパラメータに異常が生じると、送電または受電相手に警告を通知する。
【0060】
DC−DCコンバータ150aは、バッテリ160aや太陽光パネル200aとローカルバスライン21aで接続されるとともに、他のバッテリサーバ100b〜100dのDC−DCコンバータ150b〜150dと直流バスライン20で接続されている。DC−DCコンバータ150aは、C−Agent140aの制御に基づき、直流バスライン20とローカルバスライン21aとの間の直流電力の変換を行なう。
【0061】
U−Agent110aは、各バッテリサーバ100a〜100dで独立のシナリオ170aに従って動作する。M−Agent120a、GM−Agent130a及びC−Agent140aは、全てのバッテリサーバ100a〜100dで共通のポリシ180に従って動作する。従って、M−Agent120a、GM−Agent130a及びC−Agent140aは、他のバッテリサーバ100b〜100dと異なるルールで動作することは許されない。
【0062】
ポリシ180の内容は例えばテキストで記述されてもよく、XML(Extensible Markup Language)等のマークアップ言語で記述されてもよく、Lisp、Perl、PHP等のスクリプト言語として記述されていてもよい。ポリシ180の内容がスクリプト言語で記述されている場合は、ポリシ180の内容は、例えば関数の塊として記述され得る。
【0063】
またポリシ180の編集には、例えばテキストエディタが用いられてもよく、専用のエディタが用いられてもよく、Webブラウザが用いられてもよい。上述したように、ポリシ180は全てのバッテリサーバ100a〜100dで共通のものが参照されるので、ユーザが簡単に編集できないようにされていることが望ましいが、必要に応じて編集されることも有り得る。M−Agent120a、GM−Agent130aまたはC−Agent140aは、ポリシ180に定められたルールに基づいて、ポリシ180の編集を実行し得る。
【0064】
シナリオ170aに記述される内容としては、例えば以下の様なものが考えられ得る。
・電力供給を依頼するSOCレベル
・電力提供可能と判断するSOCレベル
・1日の消費サイクルによるバッテリ残存量予測計算手法
・気象情報取得に依る一週間の発電量予測計算手法
・電力融通に依るAC電力利用削減計算
【0065】
ポリシ180に記述される内容としては、例えば、ドキュメントのバージョン、変更日時、記述内容を変更する際のルール、M−Agent120a〜120d、GM−Agent130a〜130d、C−Agent140a〜140dのそれぞれに対して定められるルールが含まれ得る。
【0066】
M−Agent120a〜120dに対して定められるルールとしては、例えば以下の様なものが考えられ得る。
・制御権獲得のための判断条件や判定手順
・他の装置からの異議申立てに対する判定手順
・送受電制御システム1に参加するバッテリサーバの生存確認手順
・送受電制御システム1に参加していたバッテリサーバの登録削除手順
・送受電制御システム1に参加するメンバーのリスト及びメンバーの認証情報
【0067】
制御権獲得のための判断条件の例としては、賛成したM−Agentが1つでもあれば制御権を獲得できる、過半数が賛成すれば制御権を獲得できる、等が考えられる。制御権獲得のための判定手順の例としては、制御権獲得のために他のM−Agentにコマンドをブロードキャスト送信し、所定時間内に返答を返した他のM−Agentからの返答に基づいて制御権の獲得の是非を判定する、などが考えられる。同様に、他の装置からの異議申立てに対する判定手順の例としては、制御権獲得のために他のM−Agentにコマンドを送信し、所定時間内に返答を返した他のM−Agentからの異議申立ての内容に基づいて制御権の獲得の是非を判定する、などが考えられる。
【0068】
送受電制御システム1に参加するバッテリサーバの生存確認手順の例としては、最後に制御権を獲得したバッテリサーバのM−Agentが他のバッテリサーバの生存確認を確認する、等が考えられる。
【0069】
送受電制御システム1に参加していたバッテリサーバの登録削除手順の例としては、例えば削除を要求するコマンドに基づき、ポリシ180に記述されている登録情報を削除する、等が考えられる。
【0070】
またポリシ180に送受電制御システム1に参加するメンバーのリスト及びメンバーの認証情報が記述されていることで、M−Agentは、そのメンバーに対してのみ各種コマンドを送信したり、コマンドの送信の際に認証情報を付加したりすることが出来る。メンバーの認証情報としては、例えば各バッテリサーバのアドレス情報や、共通の認証鍵等が考えられる。
【0071】
GM−Agent130a〜130dに対して定められるルールとしては、例えば以下の様なものが考えられ得る。
・自分の位置から見た各バッテリサーバの接続状態の情報
・各バッテリサーバの接続状態の情報に基づく電流容量の計算手法
・DC−DCコンバータの制御手順及び制限事項
・各バッテリサーバに対する電力送電、受電に関する開始から終了までの手順
・電力供給が停止したことによる制御権の放棄または委譲手順
・異常が通知された場合の処理手順
【0072】
直流バスライン20には直流の電力が流れるので、GM−Agent130a〜130dは、バッテリサーバ100a〜100dの直流バスライン20への接続状態を把握しておき、そのバッテリサーバ100a〜100dの位置情報に基づき、どのように電力を供給するかを決定することが求められる。ポリシ180には、バッテリサーバ100a〜100dの直流バスライン20への接続状態を記述しておくことで、GM−Agent130a〜130dは、その接続状態を参照し、DC−DCコンバータ150a〜150dを制御する。
【0073】
DC−DCコンバータの制御手順の例としては、例えば直流電圧を変換する際にDC−DCコンバータに送出する指示の内容等が考えられる。またDC−DCコンバータの制限事項としては、例えば電圧の変換可能範囲等が考えられる。
【0074】
各バッテリサーバに対する電力送電、受電に関する開始から終了までの手順の例としては、電力送電や受電の開始時の電流の上げ方の手順、電力送電や受電の終了時の電流の下げ方の手順等が考えられる。
【0075】
電力供給が停止したことによる制御権の放棄または委譲手順としては、例えば、他に電力を供給しているバッテリサーバがあれば、そのバッテリサーバに制御権を委譲する等の手順が考えられる。
【0076】
異常が通知された場合の処理手順としては、例えば、あるバッテリサーバが故障したら、そのバッテリサーバは無視して処理を進める等の手順が考えられる。
【0077】
C−Agent140a〜140dに対して定められるルールとしては、例えば以下の様なものが考えられる。
・制御権を有しているバッテリサーバのGM−Agentからの制御が続いているか確認する手順及び異常処理手順
・複数のGM−Agentから同時に制御されていないかどうかを確認する手順
・複数のGM−Agentから同時に制御されていた場合の処理手順
・DC−DCコンバータの動作を確認し制御権を有しているバッテリサーバのGM−Agentに適宜通知するモニタリング手順
【0078】
制御権を有しているバッテリサーバのGM−Agentからの制御が続いているか確認する手順としては、例えば所定間隔毎にGM−Agentからの制御が発生したかどうかを確認する等が考えられる。また異常処理手順としては、GM−Agentからの制御が所定の時間以上途絶えたら制御権を有しているバッテリサーバのGM−Agentにその旨を通知する等が考えられる。
【0079】
複数のGM−Agentから同時に制御されていないかどうかを確認する手順としては、M−Agentから通知された識別情報とは異なる識別情報を有するGM−Agentからの制御が発生しているかどうかを確認するなどが考えられる。そして複数のGM−Agentから同時に制御されていた場合の処理手順としては、例えばM−Agentから通知された識別情報とは異なる識別情報を有するGM−Agentからの制御は無視する、全てのGM−Agentからの制御をエラーとして扱って、制御権を有しているバッテリサーバのGM−Agentに複数のGM−Agentから同時に制御されている旨を通知する、等が考えられる。
【0080】
DC−DCコンバータの動作を確認し制御権を有しているバッテリサーバのGM−Agentに適宜通知するモニタリング手順の例としては、所定間隔毎にDC−DCコンバータのパラメータを確認し、制御権を有しているバッテリサーバのGM−AgentにDC−DCコンバータのパラメータを通知する、等が考えられる。
【0081】
ポリシ180が上述のように規定されていることで、C−Agent140a〜140dは、GM−Agentからの指示がポリシ180の内容に違反していれば、即座にDC−DCコンバータ150a〜150dに送受電の停止指示を送出することが可能になる。
【0082】
もちろん、上述したシナリオ170aやポリシ180の記述内容及びシナリオ170aやポリシ180の記述内容の例は、上述したものに限定されるものではない。シナリオ170aやポリシ180の記述内容は、送受電制御システム1の構成や各バッテリサーバ100a〜100dの構成に応じて適宜変更され得る。
【0083】
バッテリ160aは、充放電可能な二次電池で構成される。バッテリ160aは、太陽光パネル200aが発電した電力や、商用電源(図示せず)から供給される電力によって充電され得る。またバッテリ160aは、必要に応じて他のバッテリサーバ100b〜100dから供給される電力によって充電され得る。またバッテリ160aに蓄えられた電力は、需要家10aにおいて設けられるエアーコンディショナー、冷蔵庫、洗濯機、テレビ受像機、電子レンジその他の電化製品に供給され得る。さらにバッテリ160aに蓄えられた電力は、他のバッテリサーバ100b〜100dからの求めに応じて、DC−DCコンバータ150aから他のバッテリサーバ100b〜100dへ供給され得る。
【0084】
本開示の一実施形態に係るバッテリサーバ100a〜100dは、
図4に示したような構成を有することで、1つのバッテリサーバだけが制御権を有して、他のバッテリサーバに対して直流バスライン20を通じた直流電力の送受電を制御することができる。本開示の一実施形態に係るバッテリサーバ100a〜100dは、
図4に示したような構成を有することで、上述したような単にマスタとスレーブとに役割を分担する場合に生じ得る現象を回避し、直流電力の送受電を制御する制御権を効率よく管理することが可能になる。そして本開示の一実施形態に係るバッテリサーバ100a〜100dは、
図4に示したような構成を有することで、直流電力の送受電を制御する制御権を効率よく管理することで、バッテリサーバ間での制御の秩序を保つことが可能になる。
【0085】
なお、直流バスライン20やローカルバスライン21a〜21dの形態は特定の構成に限定されるものではない。例えば直流バスライン20やローカルバスライン21a〜21dは、2つのラインで正電圧及び負電圧を供給し、もう1つのラインでグランドに接続される直流単相3線式のバスラインとして構成されていても良い。
【0086】
上述したように、本開示の一実施形態に係るバッテリサーバ100a〜100dは、電力の送受電について合意する際に、送電側となるバッテリサーバ100a〜100dは、この送電ロスを加味した上で送電時間を決定して受電側のバッテリサーバ100a〜100dに通知し、受電側に判断を仰ぐ。受電側のバッテリサーバ100a〜100dがその送電時間を受け入れることができれば、送電側のバッテリサーバ100a〜100dは、送電ロスを加味した送電時間で受電側のバッテリサーバ100a〜100dへ、DC−DCコンバータ150〜150dを介し、直流バスライン20を通じて直流電力を送電する。
【0087】
例えば、U−Agent110a〜110dは、本開示の電力供給要求取得部や、電力供給要求生成部、電力供給要求送信部の一例として動作しうる。また例えば、M−Agent120a〜120dは、本開示の送電電力決定部や、送電電力情報取得部の一例として動作しうる。もちろんこれは一例に過ぎず、U−Agent110a〜110dが本開示の送電電力決定部として機能するようにバッテリサーバ100a〜100dが構成されていても良い。
【0088】
例えば、バッテリサーバ100aからバッテリサーバ100cへ直流バスライン20を介して直流電力を送電する場合、U−Agent110cは通信線30aを通じて電力要求を送出する。この電力要求には、例えば総電力量、受電時の電流の最大値、最大受電時間の情報が含まれ得る。
【0089】
U−Agent110cが送出した電力要求を、バッテリサーバ100aがU−Agent110aで取得し、その電力要求に応えられるとM−Agent120aが判定すると、M−Agent120aは、バッテリサーバ100aからバッテリサーバ100cへ送電する際のパラメータを決定する。このパラメータには、例えば送電時の電流の最大値、送電ロスを加味した送電時間が含まれ得る。M−Agent120aは、決定したパラメータを、通信線30aを通じてバッテリサーバ100cへ送信する。
【0090】
バッテリサーバ100cは、例えばM−Agent120cで、バッテリサーバ100aから送信されたパラメータの内容を判断し、受け入れることが可能であると判定すると、送電を受け入れる旨の応答をバッテリサーバ100aに送信する。バッテリサーバ100aは、バッテリサーバ100cからの応答を受信すると、DC−DCコンバータ150aから直流電力を直流バスライン20へ送出する処理を開始する。
【0091】
バッテリサーバ100aは、自装置が直流バスライン20の制御権を有していればGM−agent130aからC−Agent140aへDC−DCコンバータ150aの制御を指示し、自装置が直流バスライン20の制御権を有していなければ、直流バスライン20の制御権を有しているバッテリサーバに対して、C−Agent140aへDC−DCコンバータ150aの制御を指示するよう依頼する。
【0092】
なお、バッテリサーバ100a〜100dにそれぞれ設けられるバッテリ160a〜160dには、安全に動作する電圧範囲が存在する。
図5は、バッテリ160a〜160dが安全に動作する電圧範囲について説明する説明図である。
図5には、バッテリ160a〜160dが安全に動作する電圧範囲が48V〜57Vであることを示している。バッテリ160a〜160dは、充電や放電に伴い、この電圧範囲内に収まるように制御される必要がある。充電電流や放電電流が増えすぎると、バッテリ160a〜160dの内部抵抗による電圧上昇で、この電圧範囲を超えてしまうおそれがある。
【0093】
従って、M−Agent120aは、バッテリサーバ100aからバッテリサーバ100cへ送電する際のパラメータを決定する際に、バッテリ160aの特性を考慮してパラメータを決定してもよい。またU−Agent110cは、電力要求を送出する際に、バッテリ160cの特性を考慮して電力要求を生成してもよい。
【0094】
送電側となるバッテリサーバ100a〜100dは、直流バスライン20において行われている送受電の状況を取得し、その送受電の状況に基づいて直流電力の送電時のパラメータを決定してもよい。その際、例えば直流バスラインの制御権を有しているGM−Agentから、直流バスライン20において行われている送受電の状況を、例えばM−Agent120aが取得してもよい。従ってM−Agent120aは、例えば本開示の送電状況取得部として機能し得る。
【0095】
以上、
図4を用いて本開示の一実施形態に係る送受電制御システムの機能構成例について説明した。続いて、本開示の一実施形態に係る送受電制御システムの動作例について説明する。
【0096】
[1.3.動作例]
図6は、本開示の一実施形態に係る送受電制御システム1の動作例を示す流れ図である。
図6に示したのは、
図4に示した本開示の一実施形態に係る送受電制御システム1におけるバッテリサーバ100aとバッテリサーバ100bとの間で直流バスライン20を通じた直流電力の送受電を行う場合の動作例である。以下、
図6を用いて本開示の一実施形態に係る送受電制御システム1の動作例について説明する。
【0097】
なお
図6の説明にあたり、本開示の一実施形態に係る送受電制御システム1の前提を示す。直流バスライン20は、リファレンス電圧は350Vで、最大電流は100Aである。バッテリサーバ100a、100bは、いずれも最大出力2.5kW、平均送電ロスが70WのDC−DCコンバータ150a、150bを備えるとともに、また最大容量3.6kWh、公称電圧が50Vのバッテリ160a、160bを備える。
【0098】
例えば、バッテリサーバ100bに備わっているバッテリ160bのSOCが40%になり、内部スケジュールから充電が必要になるとU−Agent110bが判断すると、U−Agent110bは、通信線30aを通じて他のバッテリサーバに送電要求を送信する(ステップS101)。内部スケジュールとしては、例えばバッテリ160bを使用する機器の動作スケジュール、太陽光パネルによるバッテリ160bへの充電が行われる時間等の、電力に関する様々な要素が含まれ得る。
【0099】
U−Agent110bは、他のバッテリサーバに送電要求を送信する際に、バッテリ160bの特性を考慮した送電要求を生成する。
図6に示した例では、U−Agent110bは、総電力量1.4kWhの電力を、最大4Aの電流で、2時間以内に受電したいという送電要求を生成し、通信線30aを通じて他のバッテリサーバに送電要求を送信する。またU−Agent110bは、他のバッテリサーバに送電要求を送信する際に、バッテリ160bの充電許容値を考慮した送電要求を生成してもよい。充電許容値とは、例えば充電時に許容される最大の電流値のことをいう。
【0100】
通信線30aを通じてバッテリサーバ100bから送信された送電要求を受信したバッテリサーバ100aのM−Agent120aは、バッテリ160aのSOCや放電許容値を確認し、送電可能と判断すると、M−Agent120aは、バッテリサーバ100aからバッテリサーバ100bへ送電する際のパラメータを決定する。このパラメータには、例えば送電時の電流の最大値、送電ロスを加味した送電時間が含まれ得る。また放電許容値とは、例えば放電時に許容される最大の電流値のことをいう。M−Agent120aは、決定したパラメータを、通信線30aを通じてバッテリサーバ100bに送信する(ステップS102)。ここでは、M−Agent120aは、最大2.67Aでなら送電できると決定したとする。
【0101】
なおバッテリ160aは、SOCが60%の場合、充電時は5Aまで、放電時は60Aまでの電流を許容し、バッテリ160bは、SOCが40%の場合、充電時は30Aまで、放電時は50Aまでの電流を許容するものとする。
【0102】
送電ロスがなければ、1400/(350×2.67)≒1.5時間でバッテリサーバ100aからバッテリサーバ100bへ送電できるが、上述したように、バッテリサーバ100aからバッテリサーバ100bへの送電の際には送電ロスが発生する。従ってM−Agent120aは、送電ロス分を考慮に入れて、送電時間を1.5時間ではなく、例えば1.6時間と算出する。
【0103】
バッテリサーバ100aからのパラメータを受信したバッテリサーバ100bは、バッテリサーバ100aが設定した条件で受電できるかどうかをM−Agent120bで判断する。バッテリサーバ100bは、バッテリサーバ100aが設定した条件で受電できるかどうかの判断として、バッテリ160bの充電状態や、バッテリ160bの充電許容値に基づいて判断してもよい。バッテリサーバ100aが設定した条件で受電できると判断した場合は、M−Agent120bは、送電受け入れの応答を、通信線30aを通じてバッテリサーバ100aに送信する(ステップS103)。
【0104】
バッテリサーバ100bからの送電受け入れの応答を受信したバッテリサーバ100aは、DC−DCコンバータ150aを制御し、バッテリサーバ100bとの間で合意した条件で直流電力を直流バスライン20に送出する(ステップS104)。一方、バッテリサーバ100bは、DC−DCコンバータ150bを制御し、バッテリサーバ100aとの間で合意した条件で直流電力を直流バスライン20から受電する(ステップS105)。
【0105】
なお、バッテリサーバ100bからの送電受け入れの応答を受信したバッテリサーバ100aは、自装置が直流バスライン20の制御権を有していればGM−agent130aからC−Agent140aへDC−DCコンバータ150aの制御を指示し、自装置が直流バスライン20の制御権を有していなければ、直流バスライン20の制御権を有しているバッテリサーバに対して、C−Agent140aへDC−DCコンバータ150aの制御を指示するよう依頼する。同様にバッテリサーバ100bは、自装置が直流バスライン20の制御権を有していればGM−agent130bからC−Agent140bへDC−DCコンバータ150bの制御を指示し、自装置が直流バスライン20の制御権を有していなければ、直流バスライン20の制御権を有しているバッテリサーバに対して、C−Agent140bへDC−DCコンバータ150bの制御を指示するよう依頼する。
【0106】
図6を用いて、バッテリサーバ100a、100bの別の動作例を示す。例えば、バッテリサーバ100bに備わっているバッテリ160bのSOCが80%であるが、充電が必要になるとU−Agent110bが判断すると、U−Agent110bは、通信線30aを通じて他のバッテリサーバに送電要求を送信する(ステップS111)。他のバッテリサーバに送電要求を送信する際、U−Agent110bは、バッテリ160bの特性を考慮した送電要求を生成する。
図6に示した例では、U−Agent110bは、総電力量700Whの電力を、最大2Aの電流で、1時間以内に受電したいという送電要求を生成し、通信線30aを通じて他のバッテリサーバに送電要求を送信する。
【0107】
通信線30aを通じてバッテリサーバ100bから送信された送電要求を受信したバッテリサーバ100aのM−Agent120aは、バッテリ160aのSOCを確認し、送電可能と判断すると、M−Agent120aは、バッテリサーバ100aからバッテリサーバ100bへ送電する際のパラメータを決定する。このパラメータには、例えば送電時の電流の最大値、送電ロスを加味した送電時間が含まれ得る。M−Agent120aは、決定したパラメータを、通信線30aを通じてバッテリサーバ100bに送信する(ステップS112)。ここでは、M−Agent120aは、最大2Aで送電できると決定したとする。
【0108】
なおバッテリ160aは、SOCが90%の場合、充電時は20Aまで、放電時は60Aまでの電流を許容し、バッテリ160bは、SOCが80%の場合、充電時は10Aまで、放電時は55Aまでの電流を許容するものとする。
【0109】
送電ロスがなければ、700/(350×2)=1時間でバッテリサーバ100aからバッテリサーバ100bへ送電できるが、上述したように、バッテリサーバ100aからバッテリサーバ100bへの送電の際には送電ロスが発生する。従ってM−Agent120aは、送電ロス分を考慮に入れて、送電時間を1時間ではなく、例えば1.1時間と算出する。
【0110】
バッテリサーバ100aからのパラメータを受信したバッテリサーバ100bは、バッテリサーバ100aが設定した条件で受電できるかどうかをM−Agent120bで判断する。バッテリサーバ100aが設定した条件で受電できると判断した場合は、M−Agent120bは、送電受け入れの応答を、通信線30aを通じてバッテリサーバ100aに送信する(ステップS113)。
【0111】
バッテリサーバ100bからの送電受け入れの応答を受信したバッテリサーバ100aは、DC−DCコンバータ150aを制御し、バッテリサーバ100bとの間で合意した条件で直流電力を直流バスライン20に送出する(ステップS114)。一方、バッテリサーバ100bは、DC−DCコンバータ150bを制御し、バッテリサーバ100aとの間で合意した条件で直流電力を直流バスライン20から受電する(ステップS115)。
【0112】
送電側となるバッテリサーバ100aは、受電側のバッテリサーバ100bから送電要求を受信した場合、例えばDC−DCコンバータ150aの平均送電ロスの10倍以上の要求であれば、その送電要求に対して応答するようにしてもよい。送電側となるバッテリサーバ100aは、送電側が出力可能な最大電流量に対し、送電要求量以下の値となる送電電流を返答してもよい。送電を要求した受電側のバッテリサーバ100bは、その送電電流と送電時間が、内部スケジュールに対して問題が無ければ、正式に送電側となるバッテリサーバ100aに送電要求を出してもよい。
【0113】
以上、
図6を用いて本開示の一実施形態に係る送受電制御システム1の動作例について説明した。続いて、本開示の一実施形態にかかるバッテリサーバ100aの動作例について説明する。
【0114】
図7は、本開示の一実施形態にかかるバッテリサーバ100aの動作例を示す流れ図である。
図7に示したのは、バッテリサーバ100aが起動してから、他のバッテリサーバとの間で直流電力の送受電を行うまでの動作例である。以下、
図7を用いて本開示の一実施形態にかかるバッテリサーバ100aの動作例について説明する。
【0115】
本開示の一実施形態にかかるバッテリサーバ100aは、起動するとまずシナリオ170aを取り込む(ステップS121)。このステップS121のシナリオ170aの取り込みは、例えばU-Agent110aが実行し得る。
【0116】
上記ステップS121でシナリオ170aを取り込むと、続いてバッテリサーバ100aは、周期的に現在のバッテリ160aの状態を取り込む(ステップS122)。このステップS122の現在のバッテリ160aの状態の取り込みは、例えばU-Agent110aが実行し得る。
【0117】
続いてバッテリサーバ100aは、シナリオ170aの内容と、現在のバッテリ160aの状態とに基づいて、バッテリ160aに蓄えられている電力が不足しているかどうかを判断する(ステップS123)。このステップS123の電力不足かどうかの判断は、例えばU-Agent110aが実行し得る。
【0118】
上記ステップS123の判断の結果、バッテリ160aに蓄えられている電力が不足していると判断した場合は(ステップS123、Yes)、続いてバッテリサーバ100aは、他のバッテリサーバ100b〜100dに対して直流電力の送電を要求する(ステップS124)。このステップS124の直流電力の送電要求は、例えばU-Agent110aが実行し得る。
【0119】
他のバッテリサーバ100b〜100dから応答があれば、バッテリサーバ100aは、他のバッテリサーバ100b〜100dから送られてきた送電条件を確認し、その送電条件で問題が無ければ、他のバッテリサーバ100b〜100dのいずれかから、直流バスライン20を通じた直流電力の受電を開始する(ステップS125)。
【0120】
上記ステップS123の判断の結果、バッテリ160aに蓄えられている電力が不足していると判断した場合は(ステップS123、Yes)、続いてバッテリサーバ100aは、他のバッテリサーバ100b〜100dのいずれかから直流電力の送電要求があるかどうかを判断する(ステップS126)。このステップS126の送電要求の有無の判断は、例えばU-Agent110aが実行し得る。
【0121】
上記ステップS126の判断の結果、他のバッテリサーバ100b〜100dのいずれかから直流電力の送電要求があると判断した場合は(ステップS126、Yes)、続いてバッテリサーバ100aは、送電要求を送信したいずれかのバッテリサーバ100b〜100dに対して送電条件を送信し、受電側のバッテリサーバ100b〜100dで送電条件が確認され、その送電条件で問題がなければ、受電側のバッテリサーバ100b〜100dへ直流バスライン20を通じた直流電力の送電を開始する(ステップS127)。
【0122】
なお上記ステップS126の判断の結果、他のバッテリサーバ100b〜100dのいずれかから直流電力の送電要求がないと判断した場合は(ステップS126、No)、バッテリサーバ100aは、上記ステップS122の現在のバッテリ160aの状態の取り込み処理に戻る。バッテリサーバ100aは、このバッテリ160aの状態の取り込み処理は、所定の間隔(例えば5分間隔)で実行する。
【0123】
以上、
図7を用いて本開示の一実施形態にかかるバッテリサーバ100aの動作例について説明した。なお
図7ではバッテリサーバ100aのみについて動作例を説明したが、他のバッテリサーバ100b〜100dにおいても同様の動作が実行されることは言うまでもない。
【0124】
<2.まとめ>
以上説明したように本開示の一実施形態によれば、電力の送受電について合意する際に、送電ロスを加味した上で送電時間を決定するバッテリサーバ100a〜100dが提供される。
【0125】
送電側となるバッテリサーバ100a〜100dは、この送電ロスを加味した上で送電時間を決定して受電側のバッテリサーバ100a〜100dに通知し、受電側に判断を仰ぐ。受電側のバッテリサーバ100a〜100dがその送電時間を受け入れることができれば、送電側のバッテリサーバ100a〜100dは、送電ロスを加味した送電時間で受電側のバッテリサーバ100a〜100dへ、直流バスライン20を通じて直流電力を送電する。
【0126】
本開示の一実施形態に係るバッテリサーバ100a〜100dは、送電ロスを加味した上で送電時間を決定することで、直流電力を需要家同士で供給しあう際に、送電側と受電側との間で予め合意した量の電力を正しく供給することが可能になる。
【0127】
なお上述した実施形態では、バッテリサーバ100a〜100dは、いずれか一つのみが直流バスライン20の制御権を有するように構成されていたが、本開示は係る例に限定されるものではない。直流電力の送受電について合意する際に、送電ロスを加味した上で送電時間を決定するように構成されるものであれば、バッテリサーバ100a〜100dのその他の構成については特に限定されるものではない。
【0128】
本明細書の各装置が実行する処理における各ステップは、必ずしもシーケンス図またはフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はない。例えば、各装置が実行する処理における各ステップは、フローチャートとして記載した順序と異なる順序で処理されても、並列的に処理されてもよい。
【0129】
また、各装置に内蔵されるCPU、ROMおよびRAMなどのハードウェアを、上述した各装置の構成と同等の機能を発揮させるためのコンピュータプログラムも作成可能である。また、該コンピュータプログラムを記憶させた記憶媒体も提供されることが可能である。また、機能ブロック図で示したそれぞれの機能ブロックをハードウェアで構成することで、一連の処理をハードウェアで実現することもできる。
【0130】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0131】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)
直流バスラインから直流電力を受電する直流電力受電装置からの電力供給要求を取得する電力供給要求取得部と、
前記電力供給要求及び前記直流バスラインへ直流電力を供給する蓄電装置の特性に基づいて前記直流バスラインを通じた前記直流電力受電装置へ出力する直流電力のパラメータを決定する送電電力決定部と、
を備え、
前記パラメータは、前記直流電力受電装置へ直流電力が到達するまでの送電ロスを加味した、直流電力の送電時間を含む、直流電力送電装置。
(2)
前記直流バスラインへ直流電力を送電している他の装置の送電状況を取得する送電状況取得部をさらに備え、
前記送電電力決定部は、前記送電状況にも基づいて前記直流バスラインへ出力する直流電力のパラメータを決定する、前記(1)に記載の直流電力送電装置。
(3)
前記蓄電装置の特性は、該蓄電装置の充電状態である、前記(2)に記載の直流電力送電装置。
(4)
前記蓄電装置の特性は、該蓄電装置の放電許容値である、前記(2)または(3)に記載の直流電力送電装置。
(5)
前記パラメータは、前記直流バスラインへ出力する直流電力の最大電流量の情報を含む、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の直流電力送電装置。
(6)
前記送電電力決定部は、電力供給要求に含まれる電力量にも基づいて前記直流バスラインへ出力する直流電力のパラメータを決定する、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の直流電力送電装置。
(7)
受電した電力を蓄電する蓄電装置の特性に基づいて電力供給要求を生成する電力供給要求生成部と、
直流バスラインへ直流電力を送電する直流電力送電装置へ前記電力供給要求を送信する電力供給要求送信部と、
前記直流電力送電装置で生成された、前記直流電力送電装置が送電する直流電力のパラメータを決定する送電電力情報取得部と、
を備え、
前記パラメータは、前記直流電力送電装置から送電された直流電力が到達するまでの送電ロスを加味した、直流電力の送電時間を含む、直流電力受電装置。
(8)
前記蓄電装置の特性は、該蓄電装置の充電状態である、前記(7)に記載の直流電力受電装置。
(9)
前記蓄電装置の特性は、該蓄電装置の充電許容値である、前記(7)または(8)に記載の直流電力受電装置。
(10)
直流バスラインから直流電力を受電する直流電力受電装置と、
前記直流バスラインへ直流電力を送電する直流電力送電装置と、
を備え、
前記直流電力受電装置は、
受電した電力を蓄電する蓄電装置の特性に基づいて電力供給要求を生成する電力供給要求生成部と、
前記直流電力送電装置へ前記電力供給要求を送信する電力供給要求送信部と、
前記直流電力送電装置で生成された、前記直流電力送電装置が送電する直流電力のパラメータを決定する送電電力情報取得部と、
を備え、
前記直流電力送電装置は、
前記直流電力受電装置からの前記電力供給要求を取得する電力供給要求取得部と、
前記電力供給要求及び前記直流バスラインへ直流電力を供給する蓄電装置の特性に基づいて前記直流バスラインを通じた前記直流電力受電装置へ出力する直流電力のパラメータを決定する送電電力決定部と、
を備え、
前記パラメータは、前記直流電力送電装置から送電された直流電力が到達するまでの送電ロスを加味した、直流電力の送電時間を含む、直流電力送電システム。