(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の各実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
(第1実施形態)
図1Aは、本発明の第1実施形態に係るセンターピラー100(自動車用構造部材)を示す概略斜視図である。また、
図1Bは、センターピラー100の分解斜視図であって、(a)がセンターピラーインナー110を示す図であり、(b)がセンターピラーインナー110にセンターピラーアウター120を接合した状態を示す図であり、(c)がセンターピラーアウター120に接合されるパッチ部材130を示す図である。また、
図2は、
図1AのA−A断面図である。
【0015】
図1A及び
図1Bに示すように、センターピラー100は、一方向に長くかつ、センターピラーインナー110と、このセンターピラーインナー110に接合されたセンターピラーアウター120(第1の鋼板部材)と、このセンターピラーアウター120に接合されたパッチ部材130(第2の鋼板部材)とを備えている。そして、センターピラー100は、自動車車体の側方に、その上下方向に沿って配置される。
また、
図2に示すように、センターピラー100は、その長手方向に垂直な断面が中空断面であり、車体側方から衝突Fがあった際に、衝突Fによる荷重を受けて曲げ変形し、衝突エネルギーを吸収するようになっている。
【0016】
センターピラー100のセンターピラーインナー110は、
図2に示すように、平板形状を有している。そして、センターピラーインナー110は、例えば、板厚が0.6〜1.6mmであり、引張強さが980MPa級以上の鋼板である。
なお、センターピラーインナー110には、引張強さが1180MPa級以上の鋼板を用いることがより好ましい。
【0017】
センターピラー100のセンターピラーアウター120は、板厚が0.8〜2.0mm、引張強さが980MPa級以上の鋼板である。そして、センターピラーアウター120は、
図2に示すように、その長手方向と直交する断面がハット状であり、センターピラーインナー110に対向する主壁部121と、主壁部121の両端121a(両端縁)から垂直に立ち上る一対の立上り壁部122と、主壁部121に平行でかつ主壁部121から離間するように、立上り壁部122の一端122a(端縁)から延びる一対のフランジ部123とを備えている。
なお、センターピラーアウター120には、引張強さが1180MPa級以上の鋼板を用いることがより好ましい。
【0018】
また、センターピラーアウター120は、
図2に示すように、センターピラーインナー110の外面110a(車体外側の面)に、フランジ部123をスポット溶接することにより接合されている。換言すれば、センターピラーインナー110の外面110aとセンターピラーアウター120のフランジ部123の内面123aとの間には、スポット溶接部150が設けられている。なお、スポット溶接に代えて、例えば、レーザ溶接やロウ付け等により、センターピラーインナー110とセンターピラーアウター120のフランジ部123とを接合してもよい。
【0019】
センターピラー100のパッチ部材130は、板厚が0.8〜3.0mm、引張強さが980MPa以上の鋼板である。そして、パッチ部材130は、
図2に示すように、断面形状がチャネル状であり、横壁部131と、横壁部131の両端131a(両端縁)から垂直に立ち上る一対の縦壁部132とを備えている。
また、パッチ部材130は、縦壁部132とセンターピラーアウター120の立上り壁部122とをスポット溶接するとともに、横壁部131とセンターピラーアウター120の主壁部121とをスポット溶接することにより、センターピラーアウター120の外面に接合されている。換言すれば、センターピラーアウター120の立上り壁部122の外面122bとパッチ部材130の縦壁部132の内面132aとの間にスポット溶接部160(第1の接合部)が形成されるとともに、センターピラーアウター120の主壁部121の外面121bとパッチ部材130の横壁部131の内面131bとの間にスポット溶接部170(第2の接合部)が形成されている。なお、スポット溶接に代えて、例えば、レーザ溶接やロウ付け等により、センターピラーアウター120とパッチ部材130とを接合してもよい。
【0020】
パッチ部材130には、ホットスタンプ材等の種々の鋼板を用いることができる。また、パッチ部材130には、引張強さが1180MPa級以上の鋼板を用いることがより好ましく、引張強さが1500MPa以上の鋼板を用いることがさらに好ましい。
【0021】
パッチ部材130の横壁部131は、センターピラーアウター120の主壁部121の形状に沿った形状を有する。また、パッチ部材130の縦壁部132は、センターピラーアウター120の立上り壁部122の形状に沿った形状を有する。すなわち、センターピラー100では、パッチ部材130の横壁部131がセンターピラーアウター120の主壁部121に当接し、パッチ部材130の縦壁部132がセンターピラーアウター120の立上り壁部122に当接している。
【0022】
上述のように、センターピラー100では、パッチ部材130をセンターピラーアウター120に接合しているため、センターピラーアウター120を補強することができる。また、パッチ部材130をセンターピラーアウター120に接合しているため、必要な部分のみ補強することができる。そのため、センターピラーアウター120全体の板厚を増加させる場合と比べて、重量増加を低減することができる。
【0023】
スポット溶接部160は、
図2に示すように、パッチ部材130の縦壁部132の側端面132b(先端面)からL1(mm)の範囲内に、少なくともその一部が形成されていることが好ましい。ここで、L1は、パッチ部材130の縦壁部132の高さ(縦壁部132の側端面132bから横壁部131の外面131cまでの距離)の40%を表す。すなわち、例えば、パッチ部材130の縦壁部132の高さが60mmの場合には、パッチ部材130の縦壁部132の側端面132bからL1=24mmの範囲内に、スポット溶接部160の少なくとも一部が形成されていることが好ましい。
スポット溶接部170は、縦壁部132の内面132aからL2(mm)の範囲内に、少なくともその一部が形成されていることが好ましい。ここで、L2は、L1と同様に、パッチ部材130の縦壁部132の高さ(縦壁部132の側端面132bから横壁部131の外面131cまでの距離)の40%を表す。なお、主壁部121と立上り壁部122との間にR部が設けられている場合には、R止りからL2の範囲内に、スポット溶接部170の少なくとも一部が形成されていることが好ましい。
【0024】
次に、センターピラー100の各パラメーターについて説明する。センターピラー100では、センターピラーアウター120及びパッチ部材130が、以下の式(1)及び(2)の双方を満足する。
(H/t)≦20.0 ・・・式(1)
0.6≦(H1/H)≦1.0 ・・・式(2)
【0025】
ここで、
図2に示すように、H(mm)は、フランジ部123の外面123bと主壁部121の外面121bとの距離、及びフランジ部123の外面123bと横壁部131の外面131cとの距離のうち、いずれか大きい方の距離を表している。すなわち、センターピラー100では、パッチ部材130がセンターピラーアウター120の外面に接合されているため、上記のHは、センターピラーアウター120のフランジ部123の外面123bからパッチ部材130の横壁部131の外面131cまでの距離(高さ)を表している。
また、t(mm)は、センターピラーアウター120の立上り壁部122の板厚、及びパッチ部材130の縦壁部132の板厚の和を表している。
また、H1(mm)は、縦壁部132の側端面132bと主壁部121の外面121bとの距離、及び縦壁部132の側端面132bと横壁部131の外面131cとの距離のうち、いずれか大きい方の距離(高さ)を表している。すなわち、センターピラー100では、パッチ部材130がセンターピラーアウター120の外面に接合されているため、上記のH1は、縦壁部132の側端面132bから横壁部131の外面131cまでの距離(高さ)を表している。
【0026】
センターピラー100では、上述のように、センターピラーアウター120にパッチ部材130が接合されることにより、センターピラーアウター120が補強され、上記の式(1)及び式(2)の双方を満足することにより、衝突Fがあった際のエネルギー吸収効率を向上させることができる。ここで、上記の式(1)及び式(2)を規定する理由は以下の通りである。
【0027】
式(1)を満たさない場合((H/t)>20.0):センターピラーアウター120の立上り壁部122が容易に座屈変形してしまい、衝突による荷重を十分に受け止める前に立上り壁部122が破断してしまう虞がある。この場合、破断後の荷重を、センターピラーインナー110とセンターピラーアウター120の主壁部121とパッチ部材130の横壁部131で受け持つことになる。そうすると、センターピラー100をその長手方向に沿って見た場合に、センターピラー100が、衝突ポイントから離れた位置を含む広範囲で変形し、キャビン内に至る虞がある。
【0028】
式(2)の下限値を満たさない場合(0.6>(H1/H)):センターピラーアウター120の立上り壁部122が、パッチ部材130の縦壁部132による補強効果を十分に得られないため、立上り壁部122が容易に座屈変形してしまい、衝突による荷重を十分に受け止める前に立上り壁部122が破断してしまう虞がある。この場合、破断後の荷重をセンターピラーインナー110とセンターピラーアウター120の主壁部121とパッチ部材130の横壁部131で受けもつことになる。そうすると、センターピラー100をその長手方向に沿って見た場合に、センターピラー100が、衝突ポイントから離れた位置を含む広範囲で変形し、キャビン内に至る虞がある。
【0029】
式(2)の上限値を満たさない場合((H1/H)>1.0):寸法的にありえないため、パッチ部材130をセンターピラーアウター120に接合することができない。よって、パッチ部材130の補強効果を得ることができないので、立上り壁部122が容易に座屈変形してしまい、衝突による荷重を十分に受け止める前に立上り壁部122が破断してしまう虞がある。
【0030】
式(1)及び式(2)の双方を満たす場合:本発明の範囲内であり、衝突による、センターピラーアウター120の立上り壁部122の破断を防止することができる。そして、衝突エネルギーを、センターピラーアウター120の立上り壁部122、及びパッチ部材130の縦壁部132の変形動作により確実に吸収することができる。
なお、上記の式(1)に関して、H/tの値は、破断防止効果の観点から、小さいほど好ましい。例えば、H/tは、17.5以下であることが好ましく、15.0以下であることがより好ましく、12.5以下であることがさらに好ましい。一方、H/tの下限は、特に限定されるものではないが、H/tは、例えば、5.0以上である。
また、上記の式(2)に関して、H1/Hは、破断防止効果の観点から、0.7以上であることが好ましく、0.8以上であることがさらに好ましい。
【0031】
ここで、上記の式(1)及び(2)の双方を満たす場合のセンターピラー100に、衝突Fがあった場合の変形の一例を
図3に示す。
図3では、センターピラー100が上記の式(1)及び(2)の双方を満たしているため、センターピラーアウター120の立上り壁部122がパッチ部材130により十分に補強され、立上り壁部122が容易に座屈変形することを防止することができる。
一方、上記の式(1)を満たさないセンターピラー50に、衝突Fがあった場合の変形の一例を
図4Aに示す。
図4Aでは、センターピラー50が上記の式(1)を満足していないため、パッチ部材130によってセンターピラーアウター120の立上り壁部122を十分に補強することができず、立上り壁部122が容易に座屈変形する。
また、上記の式(2)を満たさないセンターピラー60に、衝突Fがあった場合の変形の一例を
図4Bに示す。
図4Bでは、センターピラー60が上記の式(2)を満足していないため、パッチ部材130による補強効果を十分に得ることができず、立上り壁部122が容易に座屈変形する。
【0032】
以上に説明したように、本実施形態に係るセンターピラー100によれば、センターピラーアウター120にパッチ部材130を接合するので、センターピラーアウター120全体の板厚を増加させることなく、必要な部分のみ補強することができる。そのため、センターピラー100の重量増加を抑えつつ、センターピラーアウター120を補強することができる。また、センターピラーアウター120及びパッチ部材130が上記の式(1)及び式(2)の双方を満足するため、車体側方から衝突があった場合に、センターピラーアウター120の立上り壁部122の破断を防止することができる。したがって、低コストに衝突エネルギー吸収効率を向上させることができる。
【0033】
なお、センターピラー100では、
図2に示すように、パッチ部材130の縦壁部132の側端面132bとセンターピラーアウター120のフランジ部123の外面123bとの間に、所定の距離D(mm)を設けることが好ましい(D>0)。換言すれば、上記の式(2)に関して、H1/Hは、1.0未満((H1/H)<1.0)であることが好ましい。この場合、パッチ部材130の縦壁部132の側端面132bとセンターピラーアウター120のフランジ部123の外面123bとの間に隙間が生じるため、衝突Fによりパッチ部材130が変形する際に、パッチ部材130の側端面132bがセンターピラーアウター120のフランジ部123に拘束されることを防止することができる。したがって、センターピラーアウター120の立上り壁部122の変形に対して、パッチ部材130の縦壁部132を確実に追従させることができ、その結果、スポット溶接部160の剥離を防止することができる。
なお、上記の距離Dは、例えば、Hの10%以上とすることがさらに好ましい。すなわち、上記の式(2)に関して、H1/Hは、0.9以下であることがさらに好ましい。
【0034】
[第1実施形態の変形例]
本実施形態では、チャネル状のパッチ部材130がセンターピラーアウター120に接合される場合を示した。しかしながら、
図5に示すように、断面L字形状を有する一対のパッチ部材140をセンターピラーアウター120に接合してもよい。この場合、センターピラーアウター120の主壁部121に当接する、パッチ部材140の横壁部131の体積が小さくなるため、センターピラー100の重量を低減することができる。
【0035】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るセンターピラー200について説明する。
【0036】
図6は、本実施形態に係るセンターピラー200を示す横断面図である。上記の第1実施形態に係るセンターピラー100では、パッチ部材130がセンターピラーアウター120の外面に接合される場合を示した。これに対して、
図6に示すように、本実施形態に係るセンターピラー200では、パッチ部材130がセンターピラーアウター120の内面に接合されている。
【0037】
図6に示すように、センターピラー200では、パッチ部材130の横壁部131が、スポット溶接部170によりセンターピラーアウター120の主壁部121の内面121cに接合されるとともに、パッチ部材130の縦壁部132が、スポット溶接部160によりセンターピラーアウター120の立上り壁部122の内面122cに接合されている。
【0038】
すなわち、本実施形態に係るセンターピラー200は、第1実施形態に係るセンターピラー100と同様に、センターピラーアウター120を補強することができる。そして、センターピラー200は、第1実施形態に係るセンターピラー100と同様に、上記の式(1)及び式(2)を満足することにより、衝突エネルギー吸収効率を向上させることができる。
【0039】
なお、上記の式(1)及び式(2)に関して、センターピラー200では、パッチ部材130がセンターピラーアウター120の内面に接合されているため、H(mm)は、センターピラーアウター120のフランジ部123の外面123bからセンターピラーアウター120の主壁部121の外面121bまでの距離(高さ)となる。また、H1(mm)は、パッチ部材130の縦壁部132の側端面132bからセンターピラーアウター120の主壁部121の外面121bまでの距離(高さ)となる。
【0040】
[第2実施形態の変形例]
本実施形態では、チャネル状のパッチ部材130がセンターピラーアウター120の内面に接合される場合を示した。しかしながら、
図7に示すように、断面L字形状を有する一対のパッチ部材140をセンターピラーアウター120の内面に接合してもよい。この場合、センターピラーアウター120の主壁部121に当接する、パッチ部材140の横壁部131の体積が小さくなるため、センターピラー200の重量を低減することができる。
【0041】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係るバンパー300について説明する。
【0042】
図8は、本実施形態に係るバンパー300(自動車用構造部材)を示す概略斜視図である。また、
図9は、
図8のB−B断面図である。第1実施形態及び第2実施形態では、センターピラー100またはセンターピラー200が、パッチ部材130を備える場合を示した。これに対して、本実施形態では、バンパー300が一対のパッチ部材330を備えている。
【0043】
図8及び
図9に示すように、バンパー300は、一方向に長くかつ、ベースプレート310と、このベースプレート310に接合されたバンパー本体320(第1の鋼板部材)と、このバンパー本体320に接合された一対のパッチ部材330(第2の鋼板部材)とを備えている。そして、バンパー300は、自動車車体の前方又は後方に配置される。
また、バンパー300は、
図9に示すように、その長手方向に垂直な断面が中空断面であり、車体前方または後方から衝突Fがあった際に、衝突Fによる荷重を受けて曲げ変形し、衝突エネルギーを吸収するようになっている。
【0044】
バンパー300のベースプレート310は、平板形状を有している。また、バンパー300のベースプレート310は、例えば、板厚が1.4mm、引張強さが980MPa級以上の鋼板である。
なお、ベースプレート310には、1180MPa級以上の鋼板を用いることがより好ましい。
【0045】
バンパー300のバンパー本体320は、
図9に示すように、その長手方向に垂直な断面がハット形状であり、板厚が0.8〜2.0mm、引張強さが980MPa級以上の鋼板である。そして、バンパー本体320は、ベースプレート310に対向する主壁部321と、主壁部321の両端321aから垂直に立ち上る一対の立上り壁部322と、主壁部321に平行でかつ主壁部321から離間するように、立上り壁部322の一端322aから延びる一対のフランジ部323とを備えている。
なお、バンパー本体320には、1180MPa級以上の鋼板を用いることがより好ましい。
【0046】
バンパー本体320の主壁部321は、幅方向中央部に、ベースプレート310に向かって突出する突出部324を有している。そして、この突出部324は、主壁部321からベースプレート310に向かって立ち上る一対の中央補強壁部324aと、この一対の中央補強壁部324aを接続する平面部324bとを有している。
【0047】
また、バンパー本体320は、ベースプレート310の外面310a(車体外側の面)に、フランジ部323をスポット溶接することにより接合されている。換言すれば、ベースプレート310の外面310aとバンパー本体320のフランジ部323の内面323aとの間には、スポット溶接部150が設けられている。
【0048】
パッチ部材330は、板厚が0.8〜3.0mm、引張強さが980MPa以上の鋼板である。そして、パッチ部材330は、その長手方向に垂直な断面がチャネル状であり、横壁部331と、横壁部331の一端331aから垂直に立ち上る縦壁部332と、横壁部331の他端331dから立ち上る保持壁部333とを備えている。
なお、パッチ部材330には、ホットスタンプ材等の種々の鋼板を用いることができる。また、パッチ部材330には、引張強さが1180MPa級以上の鋼板を用いることがより好ましく、引張強さが1500MPa級以上の鋼板を用いることがさらに好ましい。
【0049】
パッチ部材330は、縦壁部332とバンパー本体320の立上り壁部322とをスポット溶接し、横壁部331とバンパー本体320の主壁部321とをスポット溶接し、保持壁部333とバンパー本体320の中央補強壁部324aとをスポット溶接することにより、バンパー本体320の外面に接合されている。換言すれば、バンパー本体320の立上り壁部322の外面322bとパッチ部材330の縦壁部332の内面332aとの間にスポット溶接部160が形成され、バンパー本体320の主壁部321の外面321bとパッチ部材330の横壁部331の内面331bとの間にスポット溶接部170が形成され、バンパー本体320の中央補強壁部324aの外面324a1とパッチ部材330の保持壁部333の内面333aとの間にスポット溶接部380が形成されている。
【0050】
パッチ部材330の横壁部331は、バンパー本体320の主壁部321の形状に沿った形状を有する。また、パッチ部材330の縦壁部332は、バンパー本体320の立上り壁部322の形状に沿った形状を有する。また、パッチ部材330の保持壁部333は、バンパー本体320の中央補強壁部324aの形状に沿った形状を有する。すなわち、バンパー300では、パッチ部材330の横壁部331がバンパー本体320の主壁部321に当接し、パッチ部材330の縦壁部332がバンパー本体320の立上り壁部322に当接し、パッチ部材330の保持壁部333がバンパー本体320の中央補強壁部324aに当接している。
【0051】
上述のように、バンパー300では、パッチ部材330をバンパー本体320に接合しているため、バンパー本体320を補強することができる。これにより、バンパー300に衝突Fがあった場合に、バンパー本体320の立上り壁部322の破断等を防止することができる。また、パッチ部材330によりバンパー本体320を補強しているため、必要な部分のみ補強することができる。そのため、バンパー本体320全体の板厚を増加させる場合と比べて、重量増加を低減することができる。
【0052】
次に、バンパー300の各パラメーターについて説明する。バンパー300では、バンパー本体320及びパッチ部材330が、第1実施形態で説明した式(1)及び(2)の双方を満足する。
(H/t)≦20.0 ・・・式(1)
0.6≦(H1/H)≦1.0 ・・・式(2)
【0053】
ここで、第1実施形態の場合と同様に、H(mm)は、バンパー本体320のフランジ部323の外面323bからパッチ部材330の横壁部331の外面331cまでの距離(高さ)を表している。また、t(mm)は、バンパー本体320の立上り壁部322の板厚、及びパッチ部材330の縦壁部332の板厚の和を表している。また、H1(mm)は、パッチ部材330の縦壁部332の側端面332b(先端面)から横壁部331の外面331cまでの距離(高さ)を表している。
【0054】
バンパー300では、第1実施形態の場合と同様に、バンパー本体320にパッチ部材330が接合されることにより、バンパー本体320が補強され、上記の式(1)及び式(2)の双方を満足することにより、衝突Fがあった場合のエネルギー吸収効率を向上させることができる。
【0055】
[第3実施形態の変形例]
本実施形態では、チャネル状のパッチ部材330がバンパー本体320に接合される場合を示した。しかしながら、
図10に示すように、断面L字形状を有する一対のパッチ部材340及び一対のパッチ部材345をバンパー本体320に接合してもよい。この場合、バンパー本体320の主壁部321に当接する、パッチ部材330の横壁部331の体積を小さくすることができるため、バンパー300の重量をさらに低減することができる。
【0056】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係るバンパー400について説明する。
【0057】
図11は、本実施形態に係るバンパー400を示す横断面図である。上記の第3実施形態に係るバンパー300では、パッチ部材330がバンパー本体320の外面に接合される場合を示した。これに対して、
図11に示すように、本実施形態に係るバンパー400では、パッチ部材330がバンパー本体320の内面に接合されている。
【0058】
図11に示すように、バンパー400では、パッチ部材330の横壁部331が、スポット溶接部170によりバンパー本体320の主壁部321の内面に接合されるとともに、パッチ部材330の縦壁部332が、スポット溶接部160によりバンパー本体320の立上り壁部322の内面に接合されている。
【0059】
すなわち、本実施形態に係るバンパー400は、第3実施形態に係るバンパー300と同様に、バンパー本体320を補強することができる。そして、バンパー400は、第3実施形態に係るバンパー300と同様に、上記の式(1)及び式(2)の双方を満足することにより、衝突エネルギー吸収効率を向上させることができる。
【0060】
なお、上記の式(1)及び式(2)に関して、本実施形態では、パッチ部材330がバンパー本体320の内面に接合されているため、H(mm)は、バンパー本体320のフランジ部323の外面323bからバンパー本体320の主壁部321の外面321bまでの距離(高さ)となる。また、H1(mm)は、パッチ部材330の縦壁部332の側端面332bからバンパー本体320の主壁部321の外面321bまでの距離(高さ)となる。
【0061】
[第4実施形態の変形例]
本実施形態では、チャネル状のパッチ部材330がバンパー本体320の内面に接合される場合を示した。しかしながら、
図12に示すように、断面L字形状を有する一対のパッチ部材340及び一対のパッチ部材345をバンパー本体320に接合してもよい。この場合、バンパー本体320の主壁部321に当接する、パッチ部材340及び345の横壁部331の体積を小さくすることができるため、バンパー400の重量をさらに低減することができる。
【0062】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態に係るドアビーム500について説明する。
【0063】
図13は、本実施形態に係るドアビーム500(自動車用構造部材)を示す概略斜視図である。また、
図14は、
図13のC−C断面図である。第1実施形態では、センターピラー100がパッチ部材130を備える場合を示した。これに対して、本実施形態では、ドアビーム500がパッチ部材530を備えている。
【0064】
図13及び
図14に示すように、ドアビーム500は、一方向に長くかつ、ドアビーム本体520(第1の鋼板部材)と、このドアビーム本体520に接合された一対のパッチ部材530(第2の鋼板部材)とを備えている。そして、ドアビーム500は、ドアビーム本体520のフランジ部523の内面523aを、自動車のドア(不図示)にスポット溶接することにより、自動車のドアの内部に配置される。
【0065】
ドアビーム500のドアビーム本体520は、板厚が0.8〜2.0mm、引張強さが980MPa以上の鋼板である。そして、ドアビーム本体520は、
図14に示すように、その長手方向と直交する断面がハット状であり、主壁部521と、この主壁部521の両端521aから立ち上る一対の立上り壁部522と、主壁部521に平行でかつ主壁部521から離間するように、立上り壁部522の一端522aから延びる一対のフランジ部523とを備えている。
なお、ドアビーム本体520には、引張強さが1180MPa級以上の鋼板を用いることがより好ましい。
【0066】
ドアビーム本体520の主壁部521は、その幅方向中央部に設けられた、フランジ部523に向かって突出する突出部524を有している。また、ドアビーム本体520の立上り壁部522は、主壁部521の一端521aに接続され、所定の傾斜角を有する第1傾斜部525と、この第1傾斜部525に接続され、上記傾斜角と異なる傾斜角を有する第2傾斜部526とを有している。
【0067】
ドアビーム500のパッチ部材530は、板厚が0.8〜3.0mm、引張強さが1180MPa級以上の鋼板である。そして、パッチ部材530は、
図14に示すように、断面形状がL字状であり、横壁部531と、横壁部531の一端531aから立ち上る縦壁部532とを有している。
また、パッチ部材530は、横壁部531とドアビーム本体520の主壁部521とをスポット溶接するとともに、縦壁部532とドアビーム本体520の立上り壁部522とをスポット溶接することにより、ドアビーム本体520の外面に接合されている。換言すれば、ドアビーム本体520の立上り壁部522の外面522bとパッチ部材530の縦壁部532の内面532aとの間にスポット溶接部160が形成されるとともに、ドアビーム本体520の主壁部521の外面521bとパッチ部材530の横壁部531の内面531bとの間にスポット溶接部170が形成されている。
なお、パッチ部材530には、ホットスタンプ材等の種々の鋼板を用いることができる。また、パッチ部材530には、引張強さが1180MPa級以上の鋼板を用いることがより好ましく、引張強さが1500MPa以上の鋼板を用いることがさらに好ましい。
【0068】
パッチ部材530の横壁部531は、ドアビーム本体520の主壁部521の形状に沿った形状を有する。また、パッチ部材530の縦壁部532は、ドアビーム本体520の立上り壁部522の形状に沿った形状を有する。すなわち、ドアビーム500では、パッチ部材530の横壁部531がドアビーム本体520の主壁部521に当接し、パッチ部材530の縦壁部532がドアビーム本体520の立上り壁部522に当接している。
【0069】
上述のように、ドアビーム500では、パッチ部材530をドアビーム本体520に接合しているため、ドアビーム本体520を補強することができる。これにより、ドアビーム500に衝突があった場合に、ドアビーム本体520の立上り壁部522の破断等を防止することができる。また、パッチ部材530をドアビーム本体520に接合しているため、必要な部分のみ補強することができる。そのため、ドアビーム本体520全体の板厚を増加させる場合と比べて、重量増加を低減することができる。
【0070】
次に、ドアビーム500の各パラメーターについて説明する。ドアビーム500では、ドアビーム本体520及びパッチ部材530が、第1実施形態で説明した式(1)及び(2)の双方を満足する。
(H/t)≦20.0 ・・・式(1)
0.6≦(H1/H)≦1.0 ・・・式(2)
ここで、第1実施形態の場合と同様に、H(mm)は、ドアビーム本体520のフランジ部523の外面523bからパッチ部材530の横壁部531の外面531cまでの距離(高さ)を表している。また、t(mm)は、ドアビーム本体520の立上り壁部522の板厚、及びパッチ部材530の縦壁部532の板厚の和を表している。また、H1(mm)は、パッチ部材530の縦壁部532の側端面532b(先端面)から横壁部531の外面531cまでの距離(高さ)を表している。
【0071】
ドアビーム500では、第1実施形態の場合と同様に、ドアビーム本体520にパッチ部材530が接合されることにより、ドアビーム本体520が補強され、上記の式(1)及び式(2)の双方を満足することにより、衝突があった場合のエネルギー吸収効率を向上させることができる。
【0072】
なお、
図15に示すように、第1実施形態の場合と同様、パッチ部材530をドアビーム本体520の内面に接合してもよい。
【実施例】
【0073】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
【0074】
第1実施形態に係るセンターピラー100の断面形状(
図2参照)を模したハット形状部材の三点曲げ変形のFEM解析を行い、単位重量当たりのエネルギー吸収量を求めた。具体的には、長手方向において所定の間隔をあけた二点で上記ハット形状部材を支持し、これら二点の中間位置に所定の荷重をかけてエネルギー吸収量を求めた。そして、このエネルギー吸収量を上記ハット形状部材の重量で除して、単位重量当たりのエネルギー吸収量を求めた。この際、上記ハット形状部材には、引張強さが980MPaの鋼板を用いた。
また、比較のため、式(1)及び/又は式(2)を満たさない場合についても同様の解析を行った。なお、下記の表1に示す試験No.1〜11では、H、t、及びH1以外の条件を全て同じとした。
【0075】
【表1】
【0076】
表1において、試験No.1〜4は、式(1)および/または式(2)を満たさない場合、すなわち比較例を示している。一方、試験No.
5、7、11は、式(1)および式(2)の双方を満たす場合、すなわち本発明例を示している。
また、
図16A及び
図16Bに、表1の結果をプロットしたグラフを示す。なお、
図16Aでは、横軸がH/tであり、縦軸が単位重量当たりのエネルギー吸収量EA/mass(kJ/kg)である。また、
図16Bでは、横軸がH1/Hであり、縦軸が単位重量当たりのエネルギー吸収量EA/mass(kJ/kg)である。
【0077】
表1、
図16A、及び
図16Bに示すように、式(1)及び式(2)の双方を満足する場合には、式(1)及び式(2)の一方を満足しない場合、及び式(1)及び式(2)の双方を満足しない場合と比較して、単位重量当たりのエネルギー吸収量が増大することを確認できた。
【0078】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、本発明の範囲が上記実施形態のみに限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0079】
例えば、上記実施形態では、自動車用構造部材が、センターピラー、バンパー、及びドアビームである場合を示した。しかしながら、本発明は、これら自動車用構造部材に限定されず、例えば、サイドシルに本発明を適用してもよい。
【0080】
また、例えば、上記の第1実施形態では、センターピラー100のセンターピラーアウター120の内面にパッチ部材130が接合される場合を示した。しかしながら、センターピラーアウター120の内面及び外面の双方に、パッチ部材130が接合されてもよい。
【0081】
また、例えば、上記の第1実施形態では、センターピラーアウター120の主壁部121が平板状である場合を示したが、バンパー300と同様に、センターピラーアウター120の主壁部121に突出部を設けてもよい。また、上記の第3実施形態では、バンパー本体320の主壁部321に突出部が設けられている場合を示したが、主壁部321を平板状としてもよい。また、上記の第5実施形態では、ドアビーム本体520の主壁部521に突出部が設けられている場合を示したが、主壁部521を平板状としてもよい。