特許第6604387号(P6604387)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社島津製作所の特許一覧

<>
  • 特許6604387-送液装置 図000002
  • 特許6604387-送液装置 図000003
  • 特許6604387-送液装置 図000004
  • 特許6604387-送液装置 図000005
  • 特許6604387-送液装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6604387
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】送液装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/32 20060101AFI20191031BHJP
【FI】
   G01N30/32 C
   G01N30/32 A
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-561074(P2017-561074)
(86)(22)【出願日】2016年1月12日
(86)【国際出願番号】JP2016050611
(87)【国際公開番号】WO2017122259
(87)【国際公開日】20170720
【審査請求日】2018年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】今村 信也
【審査官】 赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05142875(US,A)
【文献】 特開平07−083891(JP,A)
【文献】 特開平09−318611(JP,A)
【文献】 特開2006−292392(JP,A)
【文献】 特開平08−105872(JP,A)
【文献】 特開平07−218488(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0215341(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00−30/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプボディ、前記ポンプボディの先端に設けられ内部にポンプ室を有するポンプヘッド、前記ポンプボディ側から前記ポンプヘッド側へ伸びて先端が前記ポンプ室内に挿入されたプランジャ、及び前記プランジャの基端を保持して前記プランジャの軸方向へ前記プランジャを往復動させる駆動機構を有するプランジャポンプと、
前記プランジャポンプを収容する筐体であって、前記ポンプボディを収容するポンプボディ収容部、及び前記ポンプヘッドを収容するポンプヘッド収容部を有し、前記ポンプヘッド収容部が断熱部材により囲われて前記筐体の外部及び前記ポンプボディ収容部とは熱的に分離されている筐体と、を備え
前記筐体は、前記ポンプヘッド収容部の開閉を行なうための開閉カバーを有し、前記開閉カバーの少なくとも内側面が前記断熱部材により構成されている、送液装置。
【請求項2】
前記プランジャポンプを複数台備え、それらのプランジャポンプのポンプ室が流路を介して互いに接続されており、
前記各プランジャポンプのポンプ室内の圧力を検出する圧力センサを有し、それらの前記圧力センサが前記ポンプヘッド収容部内に収容されている請求項1に記載の送液装置。
【請求項3】
前記駆動機構は前記ポンプボディの外側に設けられたモータを含み、
前記ポンプボディは前記モータとは熱的に分離された空間内に配置されている請求項1に記載の送液装置。
【請求項4】
分析流路と、
前記分析流路において移動相を送液する送液装置と、
前記分析流路上における前記送液装置の下流側に接続された試料注入部と、
前記分析流路上における前記試料注入部の下流側に接続された分析カラムと、
前記分析流路上における前記分析カラムの下流側に接続された検出器と、を備え、
前記送液装置は、
ポンプボディ、前記ポンプボディの先端に設けられ内部にポンプ室を有するポンプヘッド、前記ポンプボディ側から前記ポンプヘッド側へ伸びて先端が前記ポンプ室内に挿入されたプランジャ、及び前記プランジャの基端を保持して前記プランジャの軸方向へ前記プランジャを往復動させる駆動機構を有するプランジャポンプと、
前記プランジャポンプを収容する筐体であって、内部に、前記ポンプボディを収容するポンプボディ収容部、及び前記ポンプヘッドを収容するポンプヘッド収容部を有し、前記ポンプヘッド収容部が断熱部材により囲われて前記筐体の外部及び前記ポンプボディ収容部とは熱的に分離されている筐体と、を備え
前記筐体は、前記ポンプヘッド収容部の開閉を行なうための開閉カバーを有し、前記開閉カバーの少なくとも内側面が前記断熱部材により構成されている、液体クロマトグラフ。
【請求項5】
前記プランジャポンプを複数台備え、それらのプランジャポンプのポンプ室が流路を介して互いに接続されており、
前記各プランジャポンプのポンプ室内の圧力を検出する圧力センサを有し、それらの前記圧力センサが前記ポンプヘッド収容部内に収容されている請求項に記載の液体クロマトグラフ。
【請求項6】
前記駆動機構は前記ポンプボディの外側に設けられたモータを含み、
前記ポンプボディは前記モータとは熱的に分離された空間内に配置されている請求項に記載の液体クロマトグラフ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフにおける移動相の送液等に使用され、予め設定された一定の流量で送液を行なう送液装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフによる分析では、分析流路中に導入された分析対象の試料を移動相によって分析カラムへ導き、分析カラムにおいて分離され溶出した試料成分を検出器で検出する。検出器で得られた検出信号により、分析カラムからの溶出時間に基づいた成分の同定やクロマトグラムのピーク面積による成分濃度の算出が行われる。かかる分析を再現性よく行なうためには、移動相の送液流量を正確に制御することが重要である。
【0003】
液体クロマトグラフ用の送液装置として、プランジャの往復動により液の吸入と吐出を連続的に行なうプランジャポンプを利用したものが一般に用いられる(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−32355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液体クロマトグラフ用の送液装置は、プランジャポンプが筐体内に収容されてユニット化されていることが一般的である。送液装置の筐体内には、プランジャを駆動するためのモータも収容されており、そのモータで発生した熱がこもらないように、筐体内に外気が取り込まれる構造になっていることが多い。
【0006】
しかし、筐体内に外気が取り込まれるようにすると、外気の温度が変化したときに筐体内のポンプヘッドがその影響を受けやすい。ポンプヘッド内に設けられているポンプ室は、液体クロマトグラフ全体の内部容量のうちの大きな割合を占める部分である。かかる部分が外気の温度変化の影響を受けると、移動相が熱膨張又は熱収縮を起こし、分析カラム内の移動相の流量が変化するという問題がある。特に、検出器として質量分析計を用いる場合など、移動相を100μL/min以下の微少流量で送液する場合に、移動相の送液流量に変動が生じると、分析カラムの保持時間の再現性が悪化するなど分析結果に与える影響が大きい。
【0007】
そこで、本発明は、微少流量での送液を高精度に行なうことができる送液装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る送液装置は、ポンプボディ、ポンプボディの先端に設けられ内部にポンプ室を有するポンプヘッド、ポンプボディ側からポンプヘッド側へ伸びて先端がポンプ室内に挿入されたプランジャ、及びプランジャの基端を保持してプランジャの軸方向へ当該プランジャを往復動させる駆動機構を有するプランジャポンプと、前記プランジャポンプを収容する筐体と、を備えたものである。筐体は、ポンプボディを収容するポンプボディ収容部とポンプヘッド収容部を有する。ポンプヘッド収容部は断熱部材により囲われており、前記筐体の外部及び前記ポンプボディ収容部とは熱的に分離されている。
【0009】
プランジャポンプでは、ポンプヘッドにおけるプランジャとプランジャシールとの間の摩擦による発熱が考えられる。しかし、本願発明者らは、特に100μL/min以下の微少流量で送液する場合には、ポンプヘッドにおける発熱が送液に与える影響はほとんどなく、それよりも積極的に取り込まれる外気の温度変動が移動相の送液流量に影響を与えることを見出した。
【0010】
本発明に係る液体クロマトグラフは、分析流路と、分析流路において移動相を送液する上記送液装置と、分析流路上における送液装置の下流側に接続された試料注入部と、分析流路上における試料注入部の下流側に接続された分析カラムと、分析流路上における分析カラムの下流側に接続された検出器と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る送液装置では、プランジャポンプを収容する筐体は、ポンプボディを収容するポンプボディ収容部とポンプヘッド収容部を有し、ポンプヘッド収容部は断熱部材により囲われており、前記筐体の外部及び前記ポンプボディ収容部とは熱的に分離されているので、ポンプヘッド内が外部の温度変化の影響やモータの発熱の影響を受けにくく、熱膨張や熱収縮による流量変化が起こりにくい。これにより、移動相の送液を微少流量で行なう場合にも、外気の温度変化による分析結果への影響を小さくすることができる。
【0012】
本発明に係る液体クロマトグラフでは、移動相を送液する送液装置として上記送液装置を備えているので、移動相の送液流量を100mL/min以下の低流量に設定した場合であっても、移動相の送液流量が室温の変化によって変動することが抑制され、分析カラムの保持時間の再現性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】送液装置の一実施例の外観を示す斜視図である。
図2】同実施例において開閉カバーを取り外した状態を示す斜視図である。
図3】同実施例の内部構造を概略的に示す断面図である。
図4】送液装置の他の実施例の内部構造を概略的に示す断面図である。
図5】液体クロマトグラフの一実施例を概略的に示す流路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る送液装置において、筐体が、ポンプヘッド収容部の開閉を行なうための開閉カバーを有し、その開閉カバーの少なくとも内側面が断熱部材により構成されていることが好ましい。そうすれば、プランジャポンプのメンテナンス性を確保しながら、開閉カバーを閉じたときにポンプヘッド収容部内を外部と熱的に遮断して、外部温度の変化による送液流量への影響を小さくすることができる。
【0015】
本発明に係る送液装置が、プランジャポンプを複数台備え、それらのプランジャポンプのポンプ室が流路を介して互いに接続されており、各プランジャポンプのポンプ室内の圧力を検出する圧力センサを有する場合には、それらの圧力センサがポンプヘッド収容部内に収容されていることが好ましい。
【0016】
圧力センサは内部容量が大きいため、ポンプ室内の圧力を検出する圧力センサが設けられている場合には、その圧力センサも液体クロマトグラフ全体の内部容量のうちの大きな割合を占める部分である。したがって、圧力センサが外部の温度変化の影響を受けると、移動相が熱膨張又は熱収縮を起こし、分析カラム内の移動相の流量が変化する。そこで、圧力センサも断熱部材によって囲われたポンプヘッド収容部内に収容し、圧力センサ内における移動相の熱膨張や熱収縮を防止することで、移動相の送液流量の変動を抑制することができる。
【0017】
本発明に係る送液装置において、プランジャを駆動する駆動機構はモータを含んでいるが、そのモータは前記ポンプボディの外側に設けられ、ポンプボディがモータとは熱的に分離された空間内に配置されていることが好ましい。そうすれば、モータで発生した熱がポンプボディに伝わりにくくなる。それによって、モータで発生した熱がポンプボディを介してポンプヘッドに伝わることが抑制され、ポンプヘッドの温度をより安定させることができる。
【0018】
以下、図面を用いて、送液装置及び液体クロマトグラフの一実施例について説明する。
【0019】
まず、送液装置の一実施例を、図1から図3を用いて説明する。
【0020】
まず、図1及び図2に示されているように、送液装置2は筐体4を有する。筐体4は、前面側(図1及び図2において左手前側)に操作パネル6と開閉カバー8を備えている。筐体4の内部には、2つのプランジャポンプ10,11が収容されている。プランジャポンプ10,11のそれぞれは、先端側にポンプヘッド10a,11aを有し、そのポンプヘッド10a,11aが前面側を向くように配置されている。
【0021】
筐体4は、プランジャポンプ10,11のポンプボディ10d,11d(図3参照)を収容するポンプボディ収容部12、及びプランジャポンプ10,11のポンプヘッド10a,11aを収容するポンプヘッド収容部14を内部に備えている。開閉カバー8は、筐体4の前面側からポンプヘッド収容部14を開閉することができるように、開閉可能又は着脱可能に設けられている。開閉カバー8を開くか又は取り外すと、プランジャポンプ10,11のポンプヘッド10a,11aが前面側に露出するようになっている(図2参照)。
【0022】
ポンプボディ収容部12とポンプヘッド収容部14は断熱部材18によって熱的に分離されている。開閉カバー8の内側側面には板状の断熱部材16が設けられている。これにより、ポンプヘッド収容部14は断熱部材16,18によって囲われた空間となっている。断熱部材16,18としては、例えば化学架橋ポリエチレン発泡体を用いることができる。
【0023】
ポンプヘッド10aの下方にチェック弁22が設けられている。チェック弁22には第1入口流路20が接続されている。図示は省略されているが、入口流路20は筐体4の一側面(例えば、背面)に設けられた入口ポートに通じている。入口ポートには、送液対象の溶媒を収容した容器に通じる流路が接続される。ポンプヘッド10aのチェック弁22とは反対側に第1出口流路24が接続されている。第1出口流路24は圧力センサ26に通じている。圧力センサ26はポンプヘッド10a,11aとともにポンプヘッド収容部14内に収容されている。
【0024】
ポンプヘッド11aの下方にチェック弁30が設けられている。チェック弁30は第2入口流路28によって圧力センサ26と接続されている。ポンプヘッド11aのチェック弁30とは反対側に第2出口流路32が接続されている。図1及び図2では図示が省略されているが、第2出口流路32は圧力センサ34(図3を参照)を介して、筐体4の一側面(例えば、背面)に設けられた出口ポートに通じている。出口ポートには、分析カラムへ通じる流路が接続される。圧力センサ34もポンプヘッド10a,11a及び圧力センサ26とともにポンプヘッド収容部14内に収容されている。
【0025】
プランジャポンプ10,11の具体的構造の一例について図3を用いて説明する。
【0026】
プランジャポンプ10のポンプヘッド10a内にポンプ室10bが設けられている。ポンプ室10bにはプランジャ10cが先端側から挿入されている。プランジャ10cの基端はポンプボディ10d内に収容されたクロスヘッド10eの前面(図において左側の面)に固定されている。クロスヘッド10eには、後面(図において右側の面)に開口をもつネジ穴が設けられている。このネジ穴は棒ネジ10fと螺合する。棒ネジ10fは、モータ10gによって回転させられる。棒ネジ10fの回転により、クロスヘッド10eは棒ネジ10fの軸方向に沿って移動し、それによってプランジャ10cがその軸方向に沿って移動する。クロスヘッド10e、棒ネジ10f及びモータ10gはプランジャ10cを駆動する駆動機構を構成する。
【0027】
プランジャポンプ11もプランジャポンプ10と同様に、ポンプヘッド11a内にポンプ室11bが設けられている。ポンプ室11bにはプランジャ11cが先端側から挿入されている。プランジャ11cの基端はポンプボディ11d内に収容されたクロスヘッド11eの前面(図において左側の面)に固定されている。クロスヘッド11eには、後面(図において右側の面)に開口をもつネジ穴が設けられている。このネジ穴は棒ネジ11fと螺合する。棒ネジ11fは、モータ11gによって回転させられる。棒ネジ11fの回転により、クロスヘッド11eは棒ネジ11fの軸方向に沿って移動し、それによってプランジャ11cがその軸方向へ移動する。クロスヘッド11e、棒ネジ11f及びモータ11gはプランジャ11cを駆動する駆動機構を構成する。
【0028】
プランジャ10cがポンプ室10bから引き抜かれる方向(図において右方向。以下、吸入方向という。)に駆動されると、チェック弁22が開き、入口流路20を介して液がポンプ室10b内に吸入される。ポンプ室10c内に液が吸入された後、プランジャ10cがポンプ室10bに挿し込まれる方向(図において左方向。以下、吐出方向という。)に駆動されると、チェック弁22が閉じ、ポンプ室10c内の液が第1出口流路24、圧力センサ26及び第2入口流路28を介してポンプ室11b側へ吐出される。
【0029】
プランジャポンプ10が上記吐出動作を行なっている間、プランジャポンプ11では、プランジャ11cをポンプ室11bから引き抜く方向(吸入方向)へ駆動して吸入動作を行なう。これにより、チェック弁30が開き、ポンプ室10bから吐出された液がポンプ室11bに流入する。プランジャポンプ11の吸入流量はプランジャポンプ10の吐出流量よりも小さくなるように、プランジャ10cと11cの駆動速度が調節される。したがって、プランジャポンプ10の吐出流量からプランジャポンプ11の吸入流量を差し引いた流量が第2出口流路32を通じて出口ポート側へ出力する送液流量となる。
【0030】
プランジャポンプ10は、吐出動作が終了した後、再び吸入動作に切り替わる。このタイミングで、プランジャポンプ11は、プランジャ11cがポンプ室11bへ挿し込む方向(吐出方向)へ駆動され、吐出動作を開始する。このとき、ポンプ室10bと11bの圧力差によってチェック弁30が閉じ、ポンプ室10bに貯留された液が第2出口流路32を通じて出口ポート側へ出力される。
【0031】
圧力センサ26はポンプ室10b内の圧力をモニタしており、圧力センサ34はポンプ室11b内の圧力をモニタしている。圧力センサ26及び34の出力信号は、モータ10g及び11gの駆動を制御する制御部(図示は省略)に取り込まれる。当該制御部は、圧力センサ26及び34の出力信号に基づいて、プランジャポンプ10,11の吸入動作と吐出動作との切替時における脈動の発生を防止するように、モータ10g及び11gの駆動を制御している。
【0032】
この実施例では、プランジャポンプ10,11のポンプヘッド10a,11aのほか、圧力センサ26,34が断熱部材16,18によって囲われたポンプヘッド収容部14内に収容されているので、これらの温度が一定に維持される。ポンプ室10b,11bや圧力センサ26,34は、液体クロマトグラフの分析カラムまでの系の内部容量において大きな割合を占める部分であるため、この部分の温度が一定に維持されれば、液体クロマトグラフの周囲温度が変化した場合にも、熱膨張又は熱収縮を起こす移動相の割合が小さくなる。したがって、分析カラムを流れる移動相の流量を安定させることができ、分析カラムの保持時間の再現性を向上させることができる。
【0033】
また、断熱材にスリットを設けることで、入口流路20や出口流路を取り外すことなく、開閉カバー16を開くか又は取り外すことにより、ポンプヘッド収容部14内のポンプヘッド10a,11aを送液装置2の前面側に露出させることができるため、ポンプ室10b,11bからの液漏れを防止するプランジャシールの交換等のメンテナンスを容易に行なうことができる。
【0034】
また、ポンプヘッド10aはポンプボディ10dと連結され、ポンプヘッド11aはポンプボディ11dと連結されていることから、ポンプボディ10d,11dの温度が変化すれば、その影響を受けてポンプヘッド10a,11aの温度が変化する。そして、ポンプボディ10d,11dはモータ10g,11gと同じポンプボディ収容部12内に収容されていることから、モータ10g,11gで発生した熱の影響によりポンプボディ10d,11dの温度が変化することが考えられる。
【0035】
そこで、図4に示されているように、ポンプボディ10d,11dの周囲を断熱部材19で囲うことによって、ポンプボディ10d,11dをモータ10g,11gとは熱的に分離された空間内に配置するようにしてもよい。そうすれば、ポンプボディ10d,11dにモータ10g,11gで発生した熱が伝わりにくくなる。これにより、モータ10g,11gで発生した熱がポンプボディ10d,11dを介してポンプヘッド10a,11aに伝わりにくくなり、ポンプヘッド10a,11aの温度をより安定させることができる。
【0036】
この実施例の送液装置2を適用した液体クロマトグラフの一実施例について図5を用いて説明する。
【0037】
この実施例の液体クロマトグラフは、上記の送液装置2を2台備えている(それぞれを送液装置2−1,2−2とする。)。送液装置2−1と2−2の入口ポートは互に異なる溶媒(例えば、水とアセトニトリル)を貯留した容器に接続されている。送液装置2−1と2−2の出口ポートは共通のミキサ36に接続されている。送液装置2−1と2−2により送液された溶媒はミキサ36において混合され、移動相として分析流路38を流れる。
【0038】
分析流路38上には、上流側から試料注入部40、分析カラム42及び検出器44が設けられている。試料注入部40、分析カラム42及び検出器44は、送液装置2−1,2−2と同様に、それぞれが個別のユニットとして構成されており、各ユニットが配管によって接続されることで分析流路38が構成されている。
【0039】
液体クロマトグラフでは、分析カラム42を流れる移動相の流量が変動すると分析カラム42の保持時間の再現性に影響を与える。送液装置2−1,2−2から分析カラム42までの間の系において液の熱膨張や熱収縮が起こると、その影響で移動相の流量が変動する。そのため、送液装置2−1,2−2から分析カラム42のまでの系全体を恒温槽に収容するなどして一定温度に維持することも考えられる。しかし、上述のように、液体クロマトグラフは複数のユニットによって構成されているものであるため、そのような手段を採ることは困難である。
【0040】
他方、送液装置2−1,2−2に設けられているプランジャポンプ10,11のポンプヘッド10a,11a(図3参照)や圧力センサ26,34(図3参照)の内部容量の合計は100μL以上であることが一般的であるのに対し、送液装置2−1,2−2よりも下流側における分析カラム42までの内部容量は、一般的に10μL以下である。したがって、送液装置2−1,2−2におけるポンプヘッド10a,11aや圧力センサ26,34の温度が一定に維持されれば、液の熱膨張や熱収縮による移動相の流量変動を大幅に抑制することができる。
【0041】
この実施例における送液装置2−1,2−2は、ポンプヘッド10a,11a(図3参照)や圧力センサ26,34(図3参照)が断熱部材で囲われたポンプヘッド収容部14(図3参照)内に収容されているため、移動相の流量が液体クロマトグラフの周囲温度の変化による影響を受けにくく、分析カラム42の保持時間の再現性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0042】
2,2−1,2−2 送液装置
4 筐体
6 操作パネル
8 開閉カバー
10,11 プランジャポンプ
10a,11a ポンプヘッド
10b,11b ポンプ室
10c,11c プランジャ
10d,11d ポンプボディ
10e,11e クロスヘッド
10f,11f 棒ネジ
10g,11g モータ
12 ポンプボディ収容部
14 ポンプヘッド収容部
16,18,19 断熱部材
20 第1入口流路
22,30 チェック弁
24 第1出口流路
26,34 圧力センサ
28 第2入口流路
32 第2出口流路
36 ミキサ
38 分析流路
40 試料注入部
42 分析カラム
44 検出器
図1
図2
図3
図4
図5