(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、種々の実験を繰り返した結果、深紫外域の紫外光の透過率を所定範囲まで高めることにより、上記技術的課題を解決し得ることを見出し、本発明として提案するものである。すなわち、本発明の紫外線透過ガラスは、厚み0.7mm、波長200nmにおける透過率が10%以上であることを特徴とする。ここで、「波長200nmにおける透過率」は、市販の分光光度計(例えば、日立製作所製UV―3100)で測定可能である。
【0009】
第二に、本発明の紫外線透過ガラスは、厚み0.7mm、波長250nmにおける透過率をT
250とし、厚み0.7mm、波長300nmにおける透過率をT
300とした場合、T
250/T
300の値が0.3以上であることが好ましい。波長域が約270nmの紫外光は、殺菌用途に用いられる。これまでは、殺菌用途に水銀ランプが使用されてきたが、環境的影響から代替光源の使用が要望されており、発光波長が紫外域のLEDが有望視されている。そこで、T
250/T
300の値を0.3以上に規制すれば、上記用途に好適に適用可能になる。
【0010】
第三に、本発明の紫外線透過ガラスは、歪点が430℃以上であることが好ましい。ここで、「歪点」は、ASTM C336の方法に基づいて測定した値を指す。
【0011】
光源やデバイスの生産性を高めるために、紫外線透過ガラス上に各種機能膜を高温で成膜することが想定される。この場合、紫外線透過ガラスには、耐熱性が求められる。しかし、従来の紫外線透過ガラスは、歪点が低いため、TFT等の製造に使用されるガラス板と比較して、耐熱性が低かった。そこで、歪点を430℃以上、特に500℃以上に規制すると、各種機能膜を高温で成膜することが可能になる。
【0012】
第四に、本発明の紫外線透過ガラスは、30〜380℃の温度範囲における平均線熱膨張係数が30×10
−7〜100×10
−7/℃であることが好ましい。ここで、「30〜380℃の温度範囲における平均線熱膨張係数」は、ディラトメーターで測定した値を指す。
【0013】
第五に、本発明の紫外線透過ガラスは、軟化点が1000℃以下であることが好ましい。「軟化点」は、ASTM C338の方法に基づいて測定した値を指す。
【0014】
第六に、本発明の紫外線透過ガラスは、ガラス組成として、質量%で、SiO
2 50〜80%、Al
2O
3+B
2O
3 1〜45%、Li
2O+Na
2O+K
2O 0〜25%、MgO+CaO+SrO+BaO 0〜25%を含有することが好ましい。ここで、「Al
2O
3+B
2O
3」は、Al
2O
3とB
2O
3の合量である。「Li
2O+Na
2O+K
2O」は、Li
2O、Na
2O及びK
2Oの合量である。「MgO+CaO+SrO+BaO」は、MgO、CaO、SrO及びBaOの合量である。
【0015】
第七に、本発明の紫外線透過ガラスは、ガラス組成として、質量%で、SiO
2 50〜80%、Al
2O
3 1〜20%、B
2O
3 3〜25%、MgO 0〜10%、CaO 0〜15%、SrO 0〜7%、BaO 0〜7%、Na
2O 0〜15%、K
2O 0〜10%を含有することが好ましい。
【0016】
第八に、本発明の紫外線透過ガラスは、ガラス組成として、質量%で、SiO
2 55〜70%、Al
2O
3 3〜15%、B
2O
3 5〜20%、MgO 0〜5%、CaO 0〜10%、SrO 0〜5%、BaO 0〜5%、Na
2O 5〜15%、K
2O 0〜10%を含有することが好ましい。
【0017】
第九に、本発明の紫外線透過ガラスは、Fe
2O
3+TiO
2の含有量が100ppm以下(0.01質量%以下)であることが好ましい。ここで、「Fe
2O
3+TiO
2」は、Fe
2O
3とTiO
2の合量である。「Fe
2O
3」は、三価の酸化鉄と二価の酸化鉄の双方を含み、二価の酸化鉄は三価の酸化鉄に換算した上で取り扱うものとする。
【0018】
第十に、本発明の紫外線透過ガラスは、Sb
2O
3の含有量が1000ppm以下(0.1質量%以下)であることが好ましい。
【0019】
第十一に、本発明の紫外線透過ガラスは、SnO
2の含有量が2000ppm以下(0.2質量%以下)であることが好ましい。
【0020】
第十二に、本発明の紫外線透過ガラスは、F
2+Cl
2+SO
3の含有量が10〜10000ppm(0.001〜1質量%)であることが好ましい。ここで、「F
2+Cl
2+SO
3」は、F
2、Cl
2及びSO
3の合量である。
【0021】
第十三に、本発明の紫外線透過ガラスは、液相粘度が10
4.0dPa・s以上であることが好ましい。ここで、「液相粘度」は、液相温度におけるガラスの粘度を白金球引き上げ法で測定した値を指す。「液相温度」は、標準篩30メッシュ(500μm)を通過し、50メッシュ(300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れて、温度勾配炉中に24時間保持した後、結晶が析出する温度を顕微鏡観察にて測定した値を指す。
【0022】
第十四に、本発明の紫外線透過ガラスは、平板形状であり、そのサイズが100mm×100mm以上であることが好ましい。
【0023】
第十五に、本発明の紫外線透過ガラスは、平板形状であり、その板厚が2.0mm以下であることが好ましい。
【0024】
第十六に、本発明の紫外線透過ガラスは、平板形状であり、その表面の表面粗さRaが10nm以下であることが好ましい。ここで、「表面の表面粗さRa」は、触針式表面粗さ計又は原子間力顕微鏡(AFM)により測定可能である。
【0025】
第十七に、本発明の紫外線透過ガラスの製造方法は、上記の紫外線透過ガラスの製造方法であって、ガラス原料の一部に金属シリコンを用いることが好ましい。
【0026】
第十八に、本発明の紫外線透過ガラスの製造方法は、上記の紫外線透過ガラスの製造方法であって、ガラス原料の一部にフッ化アルミニウムを用いることが好ましい。
【0027】
第十九に、本発明の紫外線透過ガラスの製造方法は、上記の紫外線透過ガラスの製造方法であって、ガラス原料の一部に金属シリコン及びフッ化アルミニウムを用いることが好ましい。
【0028】
第二十に、本発明の紫外線透過ガラスの製造方法は、オーバーフローダウンドロー法で平板形状に成形することが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の紫外線透過ガラスにおいて、厚み0.7mm、波長200nmにおける透過率は10%以上であり、好ましくは20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上である。厚み0.7mm、波長200nmにおける透過率が低過ぎると、紫外光が透過し難くなり、光源やデバイスとして機能できなくなる。
【0031】
本発明の紫外線透過ガラスにおいて、厚み0.7mm、波長250nmにおける透過率は50%以上であり、好ましくは60%以上、70%以上、特に80%以上である。厚み0.7mm、波長250nmにおける透過率が低過ぎると、紫外光が透過し難くなり、光源やデバイスとして機能できなくなる。
【0032】
厚み0.7mm、波長250nmにおける透過率をT
250とし、厚み0.7mm、波長300nmにおける透過率をT
300としたときに、T
250/T
300の値は、好ましくは0.3以上、0.4以上、0.5以上、0.6以上、0.7以上、0.8以上、0.85以上、特に0.9以上である。T
250/T
300の値が小さ過ぎると、紫外光が透過し難くなり、光源やデバイスとして機能できなくなる。
【0033】
本発明の紫外線透過ガラスにおいて、歪点は、好ましくは430℃以上、460℃以上、480℃以上、500℃以上、520℃以上、530℃以上、550℃以上、600℃以上、特に630℃以上である。歪点が低過ぎると、高温の成膜工程でガラスが変形し易くなる。
【0034】
軟化点は、好ましくは1000℃以下、950℃以下、900℃以下、850℃以下、特に800℃以下である。軟化点が高過ぎると、ガラス溶融窯への負荷が大きくなり、ガラスの製造コストが高騰し易くなる。
【0035】
10
2.5dPa・sにおける温度は、好ましくは1580℃以下、1550℃以下、1520℃以下、1500℃以下、1480℃以下、特に1470℃以下である。10
2.5dPa・sにおける温度が高過ぎると、溶融性が低下して、ガラスの製造コストが高騰し易くなる。ここで、「10
2.5dPa・sにおける温度」は、白金球引き上げ法で測定可能である。なお、10
2.5dPa・sにおける温度は、溶融温度に相当し、この温度が低い程、溶融性が向上する。
【0036】
30〜380℃の温度範囲における平均線熱膨張係数は、好ましくは30×10
−7/℃以上、50×10
−7/℃以上、60×10
−7/℃以上、特に70×10
−7/℃以上であり、また105×10
−7/℃以下、100×10
−7/℃以下、95×10
−7/℃以下、特に90×10
−7/℃以下である。平均線熱膨張係数が低過ぎると、各種部材、特にガラスフリットの熱膨張係数に整合させ難くなる。結果として、ガラスフリットの低融点化が困難になるため、デバイスの工程温度の上昇を招き、デバイスの性能が劣化し易くなる。一方、平均線熱膨張係数が高過ぎると、熱衝撃により、ガラスが破損し易くなる。
【0037】
液相温度は、好ましくは1150℃未満、1120℃以下、1100℃以下、1080℃以下、1050℃以下、1030℃以下、980℃以下、960℃以下、950℃以下、特に940℃以下である。液相粘度は、好ましくは10
4.0dPa・s以上、10
4.3dPa・s以上、10
4.5dPa・s以上、10
4.8dPa・s以上、10
5.1dPa・s以上、10
5.3dPa・s以上、特に10
5.5dPa・s以上である。このようにすれば、耐失透性が向上し、ダウンドロー法、特にオーバーフローダウンドロー法で成形し易くなるため、薄型のガラス板を作製し易くなると共に、表面を研磨しなくても、板厚ばらつきを低減することができる。結果として、ガラス板の製造コストを低廉化することができる。
【0038】
ヤング率は、好ましくは55GPa以上、60GPa以上、65GPa以上、特に70GPa以上である。ヤング率が低過ぎると、デバイスの製造工程における搬送ラインでガラス板が剛性を維持し難くなり、ガラス板の変形、反り、破損が発生し易くなる。
【0039】
本発明の紫外線透過ガラスは、ガラス組成として、質量%で、SiO
2 50〜80%、Al
2O
3+B
2O
3 1〜45%、Li
2O+Na
2O+K
2O 0〜25%、MgO+CaO+SrO+BaO 0〜25%であることが好ましい。上記のように各成分の含有量を限定した理由を以下に示す。なお、各成分の含有量の説明において、%表示は、特に断りがある場合を除き、質量%を表す。
【0040】
SiO
2は、ガラスの骨格を形成する主成分である。SiO
2の含有量は、好ましくは50〜80%、55〜75%、58〜70%、特に60〜68%である。SiO
2の含有量が少な過ぎると、ヤング率、耐酸性が低下し易くなる。一方、SiO
2の含有量が多過ぎると、高温粘度が高くなり、溶融性が低下し易くなることに加えて、クリストバライト等の失透結晶が析出し易くなって、液相温度が上昇し易くなる。
【0041】
Al
2O
3とB
2O
3は、耐失透性を高める成分である。Al
2O
3+B
2O
3の含有量は、好ましくは1〜40%、5〜35%、10〜30%、特に15〜25%である。Al
2O
3+B
2O
3の含有量が少な過ぎると、ガラスが失透し易くなる。一方、Al
2O
3+B
2O
3の含有量が多過ぎると、ガラス組成の成分バランスが損なわれて、逆にガラスが失透し易くなる。
【0042】
Al
2O
3は、ヤング率を高める成分であると共に、分相、失透を抑制する成分である。Al
2O
3の含有量は、好ましくは1〜20%、3〜18%、特に5〜16%である。Al
2O
3の含有量が少な過ぎると、ヤング率が低下し易くなり、またガラスが分相、失透し易くなる。一方、Al
2O
3の含有量が多過ぎると、高温粘度が高くなり、溶融性が低下し易くなる。
【0043】
B
2O
3は、溶融性、耐失透性を高める成分であり、また傷の付き易さを改善して、強度を高める成分である。B
2O
3の含有量は、好ましくは3〜25%、5〜22%、7〜19%、特に9〜16%である。B
2O
3の含有量が少な過ぎると、溶融性、耐失透性が低下し易くなり、またフッ酸系の薬液に対する耐性が低下し易くなる。一方、B
2O
3の含有量が多過ぎると、ヤング率、耐酸性が低下し易くなる。
【0044】
Li
2O、Na
2O及びK
2Oは、高温粘性を下げて、溶融性を顕著に高めると共に、ガラス原料の初期の溶融に寄与する成分である。Li
2O+Na
2O+K
2Oの含有量は、好ましくは0〜25%、1〜20%、4〜15%、特に7〜13%である。Li
2O+Na
2O+K
2Oの含有量が少な過ぎると、溶融性が低下し易くなる。一方、Na
2Oの含有量が多過ぎると、熱膨張係数が不当に高くなる虞がある。
【0045】
Li
2Oは、高温粘性を下げて、溶融性を顕著に高めると共に、ガラス原料の初期の溶融に寄与する成分である。Li
2Oの含有量は、好ましくは0〜5%、0〜3%、0〜1%、特に0〜0.1%である。Li
2Oの含有量が少な過ぎると、溶融性が低下し易くなることに加えて、熱膨張係数が不当に低くなる虞がある。一方、Li
2Oの含有量が多過ぎると、ガラスが分相し易くなる。
【0046】
Na
2Oは、高温粘性を下げて、溶融性を顕著に高めると共に、ガラス原料の初期の溶融に寄与する成分である。また熱膨張係数を調整するための成分である。Na
2Oの含有量は、好ましくは0〜25%、1〜20%、3〜18%、5〜15%、特に7〜13%である。Na
2Oの含有量が少な過ぎると、溶融性が低下し易くなることに加えて、熱膨張係数が不当に低くなる虞がある。一方、Na
2Oの含有量が多過ぎると、熱膨張係数が不当に高くなる虞がある。
【0047】
K
2Oは、高温粘性を下げて、溶融性を顕著に高めると共に、ガラス原料の初期の溶融に寄与する成分である。また熱膨張係数を調整するための成分である。K
2Oの含有量は、好ましくは0〜15%、0.1〜10%、特に1〜5%である。K
2Oの含有量が多過ぎると、熱膨張係数が不当に高くなる虞がある。
【0048】
MgO、CaO、SrO及びBaOは、高温粘性を下げて、溶融性を高める成分である。MgO+CaO+SrO+BaOの含有量は、好ましくは0〜25%、0〜15%、0.1〜12%、1〜5%である。MgO+CaO+SrO+BaOの含有量が多過ぎると、ガラスが失透し易くなる。
【0049】
MgOは、高温粘性を下げて、溶融性を高める成分であり、アルカリ土類金属酸化物の中では、ヤング率を顕著に高める成分である。MgOの含有量は、好ましくは0〜10%、0〜8%、0〜5%、特に0〜1%である。MgOの含有量が多過ぎると、耐失透性が低下し易くなる。
【0050】
CaOは、高温粘性を下げて、溶融性を顕著に高める成分である。またアルカリ土類金属酸化物の中では、導入原料が比較的安価であるため、原料コストを低廉化する成分である。CaOの含有量は、好ましくは0〜15%、0.5〜10%、特に1〜5%である。CaOの含有量が多過ぎると、ガラスが失透し易くなる。なお、CaOの含有量が少な過ぎると、上記効果を享受し難くなる。
【0051】
SrOは、耐失透性を高める成分である。SrOの含有量は、好ましくは0〜7%、0〜5%、0〜3%、特に0〜1%未満である。SrOの含有量が多過ぎると、ガラスが失透し易くなる。
【0052】
BaOは、耐失透性を高める成分である。BaOの含有量は、好ましくは0〜7%、0〜5%、0〜3%、0〜1%未満である。BaOの含有量が多過ぎると、ガラスが失透し易くなる。
【0053】
上記成分以外にも、任意成分として、他の成分を導入してもよい。なお、上記成分以外の他の成分の含有量は、本発明の効果を的確に享受する観点から、合量で10%以下、5%以下、特に3%以下が好ましい。
【0054】
ZnOは、溶融性を高める成分であるが、ガラス組成中に多量に含有させると、ガラスが失透し易くなる。よって、ZnOの含有量は、好ましくは0〜5%、0〜3%、0〜1%、0〜1%未満、特に0〜0.1%である。
【0055】
ZrO
2は、耐酸性を高める成分であるが、ガラス組成中に多量に含有させると、ガラスが失透し易くなる。よって、ZrO
2の含有量は、好ましくは0〜5%、0〜3%、0〜1%、0〜0.5%、特に0.001〜0.2%である。
【0056】
Fe
2O
3とTiO
2は、深紫外域での透過率を低下させる成分である。Fe
2O
3+TiO
2の含有量は、好ましくは100ppm以下、80ppm以下、60ppm以下、0.1〜40ppm以下、特に1〜20ppmである。Fe
2O
3+TiO
2の含有量が多過ぎると、ガラスが着色して、深紫外域での透過率が低下し易くなる。なお、Fe
2O
3+TiO
2の含有量が少な過ぎると、高純度のガラス原料を使用しなければならず、バッチコストの高騰を招く。
【0057】
Fe
2O
3は、深紫外域での透過率を低下させる成分である。Fe
2O
3の含有量は、好ましくは100ppm以下、80ppm以下、60ppm以下、40ppm以下、20ppm以下、10ppm以下、特に1〜8ppmである。Fe
2O
3の含有量が多過ぎると、ガラスが着色して、深紫外域での透過率が低下し易くなる。なお、Fe
2O
3の含有量が少な過ぎると、高純度のガラス原料を使用しなければならず、バッチコストの高騰を招く。
【0058】
酸化鉄中のFeイオンは、Fe
2+又はFe
3+の状態で存在する。Fe
2+の割合が少な過ぎると、深紫外線での透過率が低下し易くなる。よって、酸化鉄中のFe
2+/(Fe
2++Fe
3+)の質量割合は、好ましくは0.1以上、0.2以上、0.3以上、0.4以上、特に0.5以上である。
【0059】
TiO
2は、深紫外域での透過率を低下させる成分である。TiO
2の含有量は、好ましくは100ppm以下、80ppm以下、60ppm以下、40ppm以下、20ppm以下、10ppm以下、特に0.5〜5ppmである。TiO
2の含有量が多過ぎると、ガラスが着色して、深紫外域での透過率が低下し易くなる。なお、TiO
2の含有量が少な過ぎると、高純度のガラス原料を使用しなければならず、バッチコストの高騰を招く。
【0060】
Sb
2O
3は、清澄剤として作用する成分である。Sb
2O
3の含有量は、好ましくは1000ppm以下、800ppm以下、600ppm以下、400ppm以下、200ppm以下、100ppm以下、特に50ppm未満である。Sb
2O
3の含有量が多過ぎると、深紫外域での透過率が低下し易くなる。
【0061】
SnO
2は、清澄剤として作用する成分である。SnO
2の含有量は、好ましくは2000ppm以下、1700ppm以下、1400ppm以下、1100ppm以下、800ppm以下、500ppm以下、200ppm以下、特に100ppm以下である。SnO
2の含有量が多過ぎると、深紫外域での透過率が低下し易くなる。
【0062】
F
2、Cl
2及びSO
3は、清澄剤として作用する成分である。F
2+Cl
2+SO
3の含有量は10〜10000ppmであることが好ましい。F
2+Cl
2+SO
3の好適な下限範囲は10ppm以上、20ppm以上、50ppm以上、100ppm以上、300ppm以上、特に500ppm以上であり、好適な上限範囲は3000ppm以下、2000ppm以下、1000ppm以下、特に800ppm以下である。また、F
2、Cl
2、SO
3の各々の好適な下限範囲は10ppm以上、20ppm以上、50ppm以上、100ppm以上、300ppm以上、特に500ppm以上であり、好適な上限範囲は3000ppm以下、2000ppm以下、1000ppm以下、特に800ppm以下である。これらの成分の含有量が少な過ぎると、清澄効果を発揮し難くなる。一方、これらの成分の含有量が多過ぎると、清澄ガスがガラス中に泡として残存する虞がある。
【0063】
本発明の紫外線透過ガラスは、平板形状であり、そのサイズが100mm×100mm以上、200mm×200mm以上、400mm×400mm以上、1000mm×1000mm以上、特に2000mm×2000mm以上が好ましい。サイズが大きい程、デバイスの製造工程において、一枚のガラス板から多数のデバイスを採取し得るため、デバイスの製造コストを低廉化し易くなる。
【0064】
本発明の紫外線透過ガラスは、平板形状であり、その板厚は2.0mm以下、1.5mm以下、1.0mm以下、特に0.5mm以下が好ましい。板厚が大き過ぎると、ガラス板の質量が大きくなり、ガラス板を扱い難くなると共に、深紫外域での透過率が低下し易くなる。一方、板厚が小さ過ぎると、デバイスの製造工程における搬送ラインでガラス板が剛性を維持し難くなり、ガラス板の変形、反り、破損が発生し易くなる。
【0065】
本発明の紫外線透過ガラスは、平板形状であり、その表面の表面粗さRaは10nm以下、9nm以下、8nm以下、7nm以下、6nm以下、5nm以下、4nm以下、3nm以下、2nm以下、特に1nm以下が好ましい。表面の表面粗さRaが大き過ぎると、深紫外線での透過率が減少する傾向がある。
【0066】
本発明の紫外線透過ガラスは、例えば、各種ガラス原料を調合して、ガラスバッチを得た上で、このガラスバッチを溶融し、得られた溶融ガラスを清澄、均質化し、所定形状に成形することで作製することができる。
【0067】
本発明の紫外線透過ガラスの製造方法において、ガラス原料の一部として、還元剤を用いることが好ましい。このようにすれば、ガラス中に含まれるFe
3+が還元されて、深紫外線での透過率が向上する。還元剤として、木粉、カーボン粉末、金属アルミニウム、金属シリコン、フッ化アルミニウム等の材料が使用可能であるが、その中でも金属シリコン、フッ化アルミニウムが好ましい。
【0068】
本発明の紫外線透過ガラスの製造方法において、ガラス原料の一部として、金属シリコンを用いることが好ましく、その添加量は、ガラスバッチの全質量に対して0.001〜3質量%、0.005〜2質量%、0.01〜1質量%、特に0.03〜0.1質量%が好ましい。金属シリコンの添加量が少な過ぎると、ガラス中に含まれるFe
3+が還元されず、深紫外線での透過率が低下し易くなる。一方、金属シリコンの添加量が多過ぎると、ガラスが茶色に着色する傾向がある。
【0069】
ガラス原料の一部として、フッ化アルミニウム(AlF
3)を用いることも好ましく、その添加量は、ガラスバッチの全質量に対して、F
2換算で0.01〜5質量%、0.05〜4質量%、0.1〜3質量%、0.2〜2質量%、0.3〜1質量%が好ましい。一方、フッ化アルミニウムの添加量が多過ぎると、F
2ガスがガラス中に泡として残存する虞がある。フッ化アルミニウムの添加量が少な過ぎると、ガラス中に含まれるFe
3+が還元されず、深紫外線での透過率が低下し易くなる。
【0070】
本発明の紫外線透過ガラスの製造方法において、ダウンドロー法、特にオーバーフローダウンドロー法で平板形状に成形することが好ましい。オーバーフローダウンドロー法は、耐熱性の樋状構造物の両側から溶融ガラスを溢れさせて、溢れた溶融ガラスを樋状構造物の下頂端で合流させながら、下方に延伸成形してガラス板を成形する方法である。オーバーフローダウンドロー法では、ガラス板の表面となるべき面は樋状耐火物に接触せず、自由表面の状態で成形される。このため、薄型のガラス板を作製し易くなると共に、表面を研磨しなくても、板厚ばらつきを低減することができる。結果として、ガラス板の製造コストを低廉化することができる。なお、樋状構造物の構造や材質は、所望の寸法や表面精度を実現できるものであれば、特に限定されない。また、下方への延伸成形を行う際に、力を印加する方法も特に限定されない。例えば、充分に大きい幅を有する耐熱性ロールをガラスに接触させた状態で回転させて延伸する方法を採用してもよいし、複数の対になった耐熱性ロールをガラスの端面近傍のみに接触させて延伸する方法を採用してもよい。
【0071】
成形方法として、オーバーフローダウンドロー法以外にも、例えば、スロットダウン法、リドロー法、フロート法等を採択することもできる。
【実施例】
【0072】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、以下の実施例は単なる例示である。本発明は、以下の実施例に何ら限定されない。
【0073】
表1は、本発明の実施例(試料No.1〜3)と比較例(試料No.4、5)を示している。
【0074】
【表1】
【0075】
まず表中のガラス組成になるように、ガラス原料を調合したガラスバッチを白金坩堝に入れ、1550℃で4時間溶融した。得られた溶融ガラスについて、白金スターラーを用いて攪拌し、均質化を行った。次いで、溶融ガラスをカーボン板上に流し出し、平板形状に成形した後、徐冷点より20℃程度高い温度から室温まで3℃/分の速度で徐冷した。
【0076】
試料No.1の作製に際し、シリコン源として、金属シリコンをガラスバッチの全質量に対して0.05質量%添加すると共に、アルミニウム源として、フッ化アルミニウムをガラスバッチの全質量に対して0.76質量%添加した。試料No.2の作製に際し、シリコン源として、金属シリコンをガラスバッチの全質量に対して0.05質量%添加すると共に、アルミニウム源として、フッ化アルミニウムをガラスバッチの全質量に対して0.76質量%添加した。試料No.3の作製に際し、シリコン源として、金属シリコンをガラスバッチの全質量に対して0.05質量%添加すると共に、アルミニウム源として、フッ化アルミニウムをガラスバッチの全質量に対して0.89質量%添加した。試料No.4、5の作製に際し、金属シリコンとフッ化アルミニウムを添加しなかった。
【0077】
得られた各試料について、30〜380℃の温度範囲における平均熱膨張係数α、密度ρ、歪点Ps、徐冷点Ta、軟化点Ts、高温粘度10
4.0dPa・sにおける温度、高温粘度10
3.0dPa・sにおける温度、高温粘度10
2.5dPa・sにおける温度、液相温度TL、液相粘度η、ヤング率E及び各波長における透過率Tを評価した。
【0078】
密度ρは、周知のアルキメデス法によって測定した値である。
【0079】
30〜380℃の温度範囲における平均線熱膨張係数αは、ディラトメーターで測定した値である。
【0080】
歪点Ps、徐冷点Taは、ASTM C336の方法に基づいて測定した値である。軟化点Tsは、ASTM C338の方法に基づいて測定した値である。
【0081】
高温粘度10
4.0dPa・s、10
3.0dPa・s、10
2.5dPa・sにおける温度は、白金球引き上げ法で測定した値である。
【0082】
液相温度TLは、標準篩30メッシュ(500μm)を通過し、50メッシュ(300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れて、温度勾配炉中に24時間保持した後、結晶が析出する温度を顕微鏡観察にて測定した値である。液相粘度ηは、液相温度TLにおけるガラスの粘度を白金球引き上げ法で測定した値である。
【0083】
ヤング率Eは、共振法により測定した値を指す。
【0084】
透過率は、ダブルビーム型分光光度計を用いて、厚み方向の分光透過率を測定した値である。測定試料として、試料No.1、2、4、5については、板厚0.7mm、両面を光学研磨面(鏡面)に研磨したものを使用した。試料No.3については、板厚1.0mm、両面を光学研磨面(鏡面)に研磨したものを使用した。なお、AFMにより、これらの測定試料の表面の表面粗さRaを測定したところ、測定領域10μm×10μmで0.5〜1.0nmであった。
【0085】
図1は、波長200〜400nmにおける試料No.1の透過率曲線である。
図2は、波長200〜400nmにおける試料No.2の透過率曲線である。
図3は、波長200〜400nmにおける試料No.3の透過率曲線である。
図4は、波長200〜400nmにおける試料No.4の透過率曲線である。
図5は、波長200〜400nmにおける試料No.5の透過率曲線である。
【0086】
表1、
図1〜5から明らかなように、試料No.1〜3は、波長200nmにおける紫外線透過率が高かった。一方、試料No.4、5は、波長200nmにおける紫外線の透過は認められなかった。
【0087】
なお、上記では、本発明の説明の便宜上、溶融ガラスを流し出して平板形状に成形したが、工業的規模で生産する場合には、オーバーフローダウンドロー法等で平板形状に成形し、両表面が未研磨の状態で使用に供することが好ましい。