【実施例1】
【0016】
実施例1に係る配管の接続構造及び接続方法につき、
図1から
図4を参照して説明する。先ず
図1の符号1は、本発明の配管に接続構造が適用された冷媒循環サイクルである。
【0017】
図1に示されるように、冷凍装置あるいは空調装置等として適用される冷媒循環サイクル1は、冷媒を圧縮する圧縮機2から順に、凝縮器3、受液器4、膨張弁5、蒸発器6及び付帯する圧力ゲージ7等の各機器が、配管部材8を介して連通状態で接続されており、これら機器内及び配管部材8内に冷媒が循環するように構成されている。
【0018】
圧縮機2や凝縮器3、蒸発器6等の各機器には、冷媒を機内に導入若しくは機外に導出するための開口部9が設けられ、またこれら機器の開口部9には、この冷媒を機器間で移送するための配管部材8が密封状に接続されている。また配管部材8は、隣接した端部同士を互いに密封状に接続した複数の管体から構成されている。このような開口部9及び配管部材8に適用される金属材料としては、耐食性の高い鋼材や熱伝導率の高い銅材など、その金属の属性や機能又はコストを考慮して適宜選択された複数種類の金属材が適用される場合が多い。
【0019】
これらの異種金属材の配管部材同士の接続構造について説明する。
図2,3に示されるように、熱交換器や圧縮機等の各機器間に介設される配管部材として、主たる配管部が銅製の銅管10と、主たる金属材料が鋼製の鋼管11とを密封状に繋げる場合、これら異種金属材同士の接続作業を簡便に行うために、銅管10と鋼管11との間に短管状に形成された鋼製の鋼管継手12を介設する。すなわち本発明の一方の管体として銅管10、他方の管体として鋼管継手12、及び別の管体として鋼管11が構成されている。
【0020】
より詳しくは、例えば銅管10の端部である挿口部10aと、鋼管継手12の一方の端部である受口部13とを後述するロウ付け溶接により接続する工程を経て、鋼管継手12の他端部15と鋼管11の端部11aとを溶接する工程によって、銅管10と鋼管11とを鋼管継手12を介し繋げる。このように鋼管継手12は、銅管10と鋼管11とを繋ぐ取扱いを簡便にするために介設されるものであることから、鋼管継手12自体は短管の直管であることが好ましい。
【0021】
なお、本願において異種金属材とは、互いに接続される各配管部材を構成する主たる金属同士が異種であることを意味するものであり、例えば一方の金属材が、他方の金属材を構成する主たる金属を微量に含むものであってもよい。また、これら銅管10、鋼管11若しくは鋼管継手12の外面又は内面に、防錆、防食、防汚等を目的とした被覆材が吹付けや塗布、貼付によって被膜されていてもよい。
【0022】
次に、銅管10は、管軸方向に直交する断面視で略円形状の直管であって、その管径に対し管軸方向に十分な延長を有しており、その端部が挿口部10aとして構成されている。また鋼管継手12は、管軸方向に直交する断面視で略円形状の直管であって、その管径及び肉厚に後述のように相関する管軸方向に所定の延長寸法を有しており、その管軸方向の一端部である受口部13、本管部14、及び他端部15から構成されている。受口部13は、後述するように銅管10の挿口部10aを管軸方向に所定長さ受容れ可能に切欠き形成されている。また鋼管継手12の受口部13よりも管軸方向の中央側である本管部14は、受口部13の内径よりも小径で、且つ銅管10の外径よりも小径の内径を有している。
【0023】
次に、鋼管継手12の一端部である受口部13について説明する。
図2(a)に示されるように、鋼管継手12の受口部13は、その内周側に全周に亘り切り欠き形状の内周切欠部16を有するとともに、外周側にも全周に亘り切り欠き形状の外周切欠部17を有する。受口部13の内周切欠部16は、受口部13の先端面13aから面取部16bを介し管軸方向に所定長さ切削加工され、その奥端面16aを介し本管部14の内周面に連なる。内周切欠部16の奥端面16aは、管軸方向に略直交する方向に延びており、銅管10の挿口部10aの先端面10bが当接する段差部として機能する。
【0024】
また受口部13の外周切欠部17は、受口部13の先端面13aから管軸方向に所定長さ切削加工され、管軸方向に本管部14に向けて漸次拡径されるテーパ面17aを介し本管部14の外周面に連なる。内周切欠部16の終点である奥端面16aと、外周切欠部17のテーパ面17aの終点である最外径部とは、管軸方向に同じ位置に形成されている。また、内周切欠部16と外周切欠部17とにより、受口部13の径方向の肉厚寸法(t)は、管軸方向及び周方向に一律の寸法に形成されており、本実施例では2mmに形成されている。
【0025】
なお、この冷媒循環サイクル1の管路には、この形状仕様の鋼管継手12のみならず、鋼管継手12とは本管部の肉厚が異なり、且つ受口部の肉厚が同じく形成された、別の形状仕様の鋼管継手が複数種類設けられている。より詳しくは、
図4(a)に示される鋼管継手22は、鋼管継手12よりも本管部24の肉厚寸法が大きいが、これに応じて大きく切り欠かれた外周切欠部27、及びこの外周切欠部27から本管部24の外周面に向けて広いテーパ面27aを有しており、鋼管継手22の受口部23の肉厚寸法(t1)は、鋼管継手12と同じく2mmに形成される。また
図4(b)に示される鋼管継手32は、鋼管継手12よりも本管部34の肉厚が2mmを僅かに超える寸法であるため、鋼管継手32の受口部33は内周切欠部36のみを有し、外周切欠部は有さず本管部34の外周面と面一に形成されており、鋼管継手32の受口部33の肉厚寸法(t2)は、鋼管継手12と同じく2mmに形成される。
【0026】
更に、鋼管継手12の他端部15について説明すると、この他端部15は、管軸方向に略直交する方向に延びる端面15aと、この端面15aから本管部14の外周面に向けて漸次拡径されるテーパ面15bとから構成されている。
【0027】
次に、上記したこれら銅管10、鋼管継手12及び鋼管11を接続する工程について順に説明する。先ず
図2(b)に示されるように、銅管10の先端部である挿口部10aと鋼管継手12の受口部13とをロウ付け溶接により接続する工程を行い、この後、
図3に示されるように、鋼管継手12の他端部15と鋼管11の端部11aとを溶接により接続する工程を行う。
【0028】
先ず
図2(a)に示されるように、銅管10の挿口部10aを鋼管継手12の受口部13に対し管軸方向に挿入する。このとき挿口部10aは、その先端面10bが受口部13の内周切欠部16の奥端面16aに当接することで、挿入延長を過不足なく容易に設定することができる。この挿入状態で、鋼管継手12の受口部13を例えば図示しないガスバーナー等の加熱手段により加熱するとともに、挿口部10aの外周面と受口部13の内周面との間に形成される僅かな隙間に、加熱した受口部13との接触により漸次溶融状態となったロウ材Vを管軸方向に流し込む。このロウ材Vは、銅材のロウ付けに適した材料(例えばりん銅ロウ等)からなり、銅の融点及び鋼の融点よりも低い融点を有することから、上記した加熱手段により、ロウ材Vの融点よりも高い温度であって、且つ母材である銅管10や鋼管継手12の融点よりも低い温度に加熱することで、母材である銅管10や鋼管継手12が溶融する虞はなく、ロウ材Vのみを溶融状態とすることができる。
【0029】
ただし、少なくともロウ材Vの融点を超える高熱に加熱された受口部13の外周面等を受熱面として、鋼管継手12の管体に入熱がされ、この熱エネルギは管軸方向に鋼管継手12の他端部15側に向けて伝導される。
【0030】
このとき上記したように、受口部13の径方向の肉厚寸法(t)は、管軸方向及び周方向の略全面に亘り一律の寸法に形成されているため、受口部13の外周面等を受熱面として鋼管継手12に入熱された熱エネルギの伝導の態様を一律にすることができる。よって鋼管継手12の他端部15が周方向に局所的な熱変形を生じることなく、後の工程で行われる鋼管継手12の他端部15と鋼管11との溶接の密封性を高く維持することができる。
【0031】
次に、
図3に示されるように、上記したように受口部13が銅管10に対しロウ付け溶接された鋼管継手12の他端部15と、鋼管11の端部11aとを、これらに共通する母材である鋼材を溶融させるアーク溶接等の溶接により接続する。ここで用いられるアーク材Wは、鋼管継手12の他端部15のテーパ面15bと、このテーパ面15bに対向する鋼管11の端部11aのテーパ面11bとの間に加熱状態で生成される。この溶接は、同種金属である鋼材同士の溶接であることから、この鋼管継手12の他端部15を受熱面として、上記したロウ付け溶接よりも高い温度であって母材である鋼材の融点を超えた高温のアークの熱エネルギが鋼管継手12の管体に入熱され、この高温の熱エネルギは管軸方向に受口部13側に向けて伝導される。
【0032】
このとき上記したように、受口部13の径方向の肉厚寸法(t)は、管軸方向及び周方向の略全面に亘り一律の寸法に形成されているため、鋼管継手12に入熱された熱エネルギの受口部13に対する伝導の態様を一律にすることができる。よって既にロウ付けされ自然温度となったロウ材Vが局所的な熱変形を生じることなく、受口部13におけるロウ付け溶接の密封性を高く維持することができる。
【0033】
特に上記したようにロウ材Vは融点が比較的低く、鋼管継手12の他端部15における同種金属である鋼材同士の溶接の際に発生する高い熱エネルギによって、既にロウ付けされたロウ材Vが再び溶融する虞を生じるが、当該熱エネルギが受口部13の略全面に均一に分散されるため、ロウ付け後のロウ材Vの再溶融を防止することができる。
【0034】
また、本実施例の鋼管継手12は、以下の数式を満たす管軸方向の延長寸法(L)を有することが望ましい。
【0035】
(数1)
鋼管継手12の管軸方向の延長寸法(L)≧本管部14の外径寸法(D)÷本管部14の肉厚寸法(T)
2×50
【0036】
このように鋼管継手12が延長寸法(L)を有することで、鋼管継手12の管体全体の熱容量を確保できるため、その受口部13と他端部15との両端に架けて伝導される熱エネルギを、これら受口部13と他端部15との間に架設される所定長の本管部14にて十分に吸収することができる。
【0037】
以上説明したように、本発明の配管の接続構造は、鋼材からなる鋼管継手12(一方の管体)の受口部13と、鋼管継手12とは異種の金属材である銅材からなる銅管10(他方の管体)の挿口部10aとの周面間がロウ材V(溶接材)によって溶接された継手部を備え、鋼管継手12は、受口部13の外周側に鋼管継手12の周方向に亘り肉厚が切り欠かれた外周切欠部17を少なくとも有しており、このように受口部13の肉厚寸法を外周切欠部17によって調整することで、ガスバーナー等の加熱手段により加熱した受口部13と挿口部10aとの間にロウ材Vを溶融させながら流し込み溶接する際に、この加熱手段により入熱した受口部13に伝わる熱伝導の態様を所望に設定することができるため、継手部における密封性能を安定させることができる。
【0038】
また、鋼管継手12は、受口部13の内周側に周方向に亘り肉厚が切り欠かれ、銅管10の挿口部10aの先端が係合される内周切欠部16を有しており、このように受口部13内に挿入される挿口部10aの先端が内周切欠部16に係合することで、受口部13に対する挿口部10aの挿入長さを、設計通りに正確に設定できる。
【0039】
また、鋼管継手12の内周切欠部16と外周切欠部17とは、受口部13の管端から管軸方向に略同じ位置まで延設されており、このようにすることで、外周切欠部17が、挿口部10aとロウ材Vによって溶接される部位である内周切欠部16への入熱を、管軸方向に差熱を生じることなく伝達することができる。
【0040】
更に、受口部13は、内周切欠部16と外周切欠部17とにより全周に亘り略均一な肉厚に形成されており、このようにすることで、鋼管継手12の周方向に亘り熱伝導の態様を一律にすることができる。
【0041】
また、内周切欠部16と、この内周切欠部16に隣接する本管部14の内周面とに架けて、奥端面16a(段差部)が形成されており、受口部13内に挿入した挿口部10aの先端を内周切欠部16の奥端面16aに当接させることで、溶接の領域となる受口部13及び挿口部10aの対向する周面間の領域を容易に設定することができる。
【0042】
また、外周切欠部17と、この外周切欠部17に隣接する本管部14の外周面とに架けて、管軸方向にテーパ面17aが形成されており、このようにすることで、外周切欠部17から管軸方向に生じる熱勾配を滑らかにすることができる。
【0043】
更に、鋼管継手12の受口部13と反対側の他端部15は、この鋼管継手12と同種の金属材からなる鋼管11(別の管体)と溶接されており、このようにすることで、同種金属からなる鋼管継手12及び鋼管11同士の溶接の際に、鋼管継手12に入熱した熱エネルギが、管軸方向に伝導され一律の肉厚を有する受口部13に均等に分散されるため、この受口部13のロウ材Vの溶融を防止し、高い密封状態を維持することができる。
【0044】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0045】
例えば、前記実施例では、異種金属材からなる配管として、銅管10及び短管状の鋼管継手12との接続構造が説明されたが、これに限らず例えば、鋼管及び短管状の銅管継手であってもよいし、本実施例とは異なる別の金属素材からなる管同士の接続構造であってもよい。
【0046】
また例えば、前記実施例では、異種金属である銅管10と鋼管継手12の受口部13とをロウ付け溶接する工程の後、同種金属である鋼管継手12の他端部15と鋼管11とを溶接したが、これに限らず例えば、同種金属の管継手の一端部と管とを溶接する工程の後、当該管継手の他端部と異種金属からなる管とをロウ付け等により溶接してもよい。
【0047】
また例えば、前記実施例では、異種金属の管である銅管10と鋼管継手12とを、ロウ付け溶接によって密封状に接合したが、ロウ付け溶接に限らず、種々の溶接材を用いて溶接するものであってもよい。更に前記実施例では、同種金属の管である鋼管継手12と鋼管11とを、アーク溶接によって密封状に接合したが、アーク溶接に限らず、種々の溶接材を用いて溶接するものであっても構わない。