特許第6604438号(P6604438)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6604438
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】切削工具支持装置及び工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23B 21/00 20060101AFI20191031BHJP
   B23B 29/24 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   B23B21/00 C
   B23B29/24 A
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-528446(P2018-528446)
(86)(22)【出願日】2017年6月12日
(86)【国際出願番号】JP2017021602
(87)【国際公開番号】WO2018016226
(87)【国際公開日】20180125
【審査請求日】2018年9月3日
(31)【優先権主張番号】特願2016-144279(P2016-144279)
(32)【優先日】2016年7月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100105946
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 富彦
(72)【発明者】
【氏名】石原 正史
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−142049(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/079836(WO,A1)
【文献】 特開平07−195209(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01661650(EP,A1)
【文献】 特開2000−117506(JP,A)
【文献】 特開昭59−205205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 1/00 − 29/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを切削する直線切刃を有する複数の切削工具を支持し、前記ワークを保持して回転する主軸の軸線に平行なZ方向と、前記Z方向に直交しかつ前記ワークに対する切削量を規定するX方向と、のいずれにも直交するY方向を少なくとも含む移動方向に前記ワークに対して相対的に移動する切削工具支持装置であって、
前記切削工具を保持するホルダと、
複数の前記ホルダを前記Y方向または前記Y方向に対して傾斜した方向に並べた状態で装着可能な1つのホルダ保持部と、を備え
前記切削工具は、前記ホルダを前記ホルダ保持部に装着した際に、前記直線切刃の方向が前記X方向から見て前記Z方向に対して傾いた状態となり、
複数の前記切削工具は、前記直線切刃の方向が互いに異なる、切削工具支持装置。
【請求項2】
前記切削工具をそれぞれ保持する複数の前記ホルダから選択されて前記ホルダ保持部に装着される、請求項1に記載の切削工具支持装置。
【請求項3】
前記ホルダ保持部は、前記ホルダの一部が当接して前記ホルダを位置決めする段部を備える、請求項1または請求項2に記載の切削工具支持装置。
【請求項4】
前記段部は、前記Y方向に沿って形成される、請求項3に記載の切削工具支持装置。
【請求項5】
前記ホルダ保持部は、前記段部から離れて配置されるクサビ部材を備え、
前記ホルダは、前記段部と前記クサビ部材とで挟まれることにより前記ホルダ保持部に装着される、請求項4に記載の切削工具支持装置。
【請求項6】
ワークを切削する直線切刃を有する複数の切削工具を支持し、前記ワークを保持して回転する主軸の軸線に平行なZ方向と、前記Z方向に直交しかつ前記ワークに対する切削量を規定するX方向と、のいずれにも直交するY方向を少なくとも含む移動方向に前記ワークに対して相対的に移動する切削工具支持装置であって、
前記切削工具を保持するホルダと、
複数の前記ホルダを前記Y方向または前記Y方向に対して傾斜した方向に並べた状態で装着可能な1つのホルダ保持部と、を備え
前記ホルダ保持部は、前記ホルダの一部が当接して前記ホルダを位置決めする段部を備え、
前記段部は、前記Y方向に沿って形成され、
前記ホルダ保持部は、前記段部から離れて配置されるクサビ部材を備え、
前記ホルダは、前記段部と前記クサビ部材とで挟まれることにより前記ホルダ保持部に装着される、切削工具支持装置。
【請求項7】
前記切削工具は、前記ホルダを前記ホルダ保持部に装着した際に、前記直線切刃の方向が前記X方向から見て前記Z方向に対して傾いた状態となる、請求項6に記載の切削工具支持装置。
【請求項8】
前記ホルダは、前記Y方向の両端面が平面に形成され、
複数の前記ホルダは、前記Y方向の端面どうしが接触した状態で前記ホルダ保持部に装着される、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の切削工具支持装置。
【請求項9】
ワークを保持して回転する主軸と、
前記ワークを切削する切削工具と、
前記切削工具を支持する請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の切削工具支持装置と、を備える、工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削工具支持装置及び工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の1つである旋盤は、加工対象であるワークを回転軸(スピンドル)に保持し、ワークを回転させながらバイト等の切削工具により切削加工等を行う。このような旋盤を用いた加工法として、例えば、ワークの接線方向(回転軸と交差する方向)に切削工具を送りながらワークを切削する加工方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この加工方法を実施する際、複数の切削工具を送りながら加工する場合があり、複数の切削工具は1つのホルダに並んだ状態で保持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3984052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数の切削工具を1つのホルダで保持すると、切削工具のうち1つが摩耗または破損したときに、他の切削工具が使用可能であってもホルダごと交換する必要があり、使用可能な切削工具が無駄になる場合がある。また、複数の切削工具を1つのホルダで保持した場合、切削工具の並びを容易に変更できず、複数の切削工具の並びを組み合わせた多くのホルダを予め用意しておくことが必要であるため、これらホルダの作成又は保管が面倒であるといった課題がある。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明は、複数の切削工具のそれぞれを着脱可能とすることにより、切削工具ごとに容易に交換することができ、また、複数の切削工具の組み合わせを容易にして利便性を向上させることができる切削工具支持装置及び工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る切削工具支持装置は、ワークを切削する直線切刃を有する複数の切削工具を支持し、ワークを保持して回転する主軸の軸線に平行なZ方向と、Z方向に直交しかつワークに対する切削量を規定するX方向と、のいずれにも直交するY方向を少なくとも含む移動方向にワークに対して相対的に移動する切削工具支持装置であって、切削工具を保持するホルダと、複数のホルダをY方向またはY方向に対して傾斜した方向に並べた状態で装着可能な1つのホルダ保持部と、を備え、切削工具は、ホルダをホルダ保持部に装着した際に、直線切刃の方向がX方向から見てZ方向に対して傾いた状態となり、複数の切削工具は、直線切刃の方向が互いに異なる
【0007】
また、切削工具をそれぞれ保持する複数のホルダから選択されてホルダ保持部に装着されてもよい。また、ホルダ保持部は、ホルダの一部が当接してホルダを位置決めする段部を備えてもよい。また、段部は、Y方向に沿って形成されてもよい。また、ホルダ保持部は、段部から離れて配置されるクサビ部材を備え、ホルダは、段部とクサビ部材とで挟まれることによりホルダ保持部に装着されてもよい。
また、本発明に係る切削工具支持装置は、ワークを切削する直線切刃を有する複数の切削工具を支持し、ワークを保持して回転する主軸の軸線に平行なZ方向と、Z方向に直交しかつワークに対する切削量を規定するX方向と、のいずれにも直交するY方向を少なくとも含む移動方向にワークに対して相対的に移動する切削工具支持装置であって、切削工具を保持するホルダと、複数のホルダをY方向またはY方向に対して傾斜した方向に並べた状態で装着可能な1つのホルダ保持部と、を備え、ホルダ保持部は、ホルダの一部が当接してホルダを位置決めする段部を備え、段部は、Y方向に沿って形成され、ホルダ保持部は、段部から離れて配置されるクサビ部材を備え、ホルダは、段部とクサビ部材とで挟まれることによりホルダ保持部に装着される。また、切削工具は、ホルダをホルダ保持部に装着した際に、直線切刃の方向がX方向から見てZ方向に対して傾いた状態となってもよい。
また、ホルダは、Y方向の両端面が平面に形成され、複数のホルダは、Y方向の端面どうしが接触した状態でホルダ保持部に装着されてもよい。
【0008】
また、本発明に係る工作機械は、ワークを保持して回転する主軸と、ワークを切削する切削工具と、切削工具を支持する上記した切削工具支持装置と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の切削工具支持装置によれば、切削工具を保持する複数のホルダをそれぞれ1つのホルダ保持部に装着可能であるため、ホルダ保持部に対して切削工具ごとに容易に交換することができる。したがって、切削工具のうち1つが摩耗または破損した場合でも他の切削工具をそのまま残して、摩耗または破損した1つの切削工具を容易に交換することができる。さらに、使用可能な切削工具を残すことができるので、経済性に優れる。また、複数の切削工具をホルダ保持部において容易に組み合わせることができ、切削工具の配置を容易に変更することができる。
【0010】
また、ホルダをホルダ保持部に装着した際に、直線切刃の方向がX方向から見てZ方向に対して傾いた状態で切削工具を保持する切削工具支持装置では、ワークと切削工具とをY方向に相対的に移動させる際、切削工具の刃先がワークに対してスムーズに切り込むので、ワークの不要な振動を抑制させることができ、ワークの加工面の面粗度を高めることができる。また、複数の切削工具において直線切刃の方向が互いに異なる切削工具支持装置では、ワークに対する粗加工または仕上げ加工を行うことができる。また、複数のホルダから選択されてホルダ保持部に装着される切削工具支持装置では、予め用意しホルダ(切削工具)から選択することにより、複数の切削工具の組み合わせまたは並びを容易に行うことができる。
【0011】
また、ホルダ保持部において、ホルダの一部が当接してホルダを位置決めする段部を備える切削工具支持装置では、段部によって各ホルダを高精度に位置決めすることができる。また、段部がY方向に沿って形成される切削工具支持装置では、複数のホルダをY方向に沿って並ぶように位置決めすることができる。また、ホルダ保持部にクサビ部材を備え、ホルダを段部とクサビ部材とで挟むことによりホルダ保持部に装着する切削工具支持装置では、クサビ部材によりホルダを容易にホルダ保持部に装着できる。また、ホルダのY方向の両端面が平面に形成され、複数のホルダにおいてY方向の端面どうしが接触した状態でホルダ保持部に装着される切削工具支持装置では、ホルダ保持部に装着した際、Y方向の端面どうしが接触することによりホルダどうしをY方向に容易に位置決めすることができる。
【0012】
本発明の工作機械によれば、上記した切削工具支持装置を用いるため、切削工具の交換が容易となり、ワークの加工効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る切削工具支持装置を備えた工作機械の要部の一例を示し、(A)は側面図、(B)は正面図である。
図2】ワークに対応する部分を拡大して示す斜視図である。
図3図1に示す切削工具支持装置を拡大した図であり、(A)は斜視図、(B)は(A)におけるA−A線に沿った断面図である。
図4】(A)〜(C)は、X方向からワークを見たとき切削工具の動作の一例を示す図である。
図5】(A)及び(B)は、X方向からワークを見たとき切削工具の動作の他の例を示す図である。
図6】(A)及び(B)は、図5に続いて、X方向からワークを見たとき切削工具の動作の他の例を示す図である。
図7】第2実施形態に係る切削工具支持装置の一例を示す図である。
図8】第3実施形態に係る切削工具支持装置の一例を示す図である。
図9】第4実施形態に係る切削工具支持装置の一例を示す図である。
図10】第5実施形態に係る切削工具支持装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は以下に説明する内容に限定されない。また、図面においては実施形態を説明するため、一部分を大きくまたは強調して記載するなど適宜縮尺を変更して表現している。以下の各図において、XYZ座標系を用いて図中の方向を説明する。このXYZ座標系においては、水平面に平行な平面をYZ平面とする。このYZ平面において主軸7(対向軸8)の回転軸方向をZ方向と表記し、Z方向に直交する方向をY方向と表記する。また、YZ平面に垂直な方向はX方向と表記する。X軸は、Z方向に直交し、かつ、ワークに対する切削量を規定する方向である。X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の方向が+方向であり、矢印の方向とは反対の方向が−方向として説明する。
【0015】
〔第1実施形態〕
第1実施形態に係る切削工具支持装置TH及び工作機械100について、図面を用いて説明する。図1は、第1実施形態に係る切削工具支持装置THを搭載した工作機械100の要部の一例を示し、(a)は側面図、(b)は正面図である。図1に示す工作機械100は、旋盤である。図1において、工作機械100の+Y側が正面であり、−Y側が背面である。また、工作機械100の±Z側は側面であり、Z方向は工作機械100の左右方向である。
【0016】
図1に示すように、工作機械100は、ベース1を有している。ベース1には、主軸台2と心押し台4とが設けられる。主軸台2は、不図示の軸受け等により主軸7を回転可能な状態で支持している。なお、主軸台2は、ベース1に固定されるが、Z方向、X方向、Y方向等に移動可能に形成され、モータ等の駆動によって移動してもよい。主軸7の+Z側の端部には、チャック駆動部9が設けられている。チャック駆動部9は、複数の把握爪9aを主軸7の径方向に移動させてワークWを保持させる。ワークWは、円筒面Waを有する形状(例えば円柱形など)に形成されている。なお、把握爪9aの形態は任意であり、ワークWを保持可能な任意の構成が用いられる。
【0017】
主軸7の端部は主軸台2から−Z方向に突出しており、この端部にプーリ11が取り付けられる。プーリ11と、ベース1に設けられたモータ12の回転軸との間にはベルト13が掛け渡されている。これにより、主軸7は、モータ12の駆動によりベルト13を介して回転する。また、主軸7は、モータ12及びベルト13によって駆動されることに限定されず、モータ12の駆動を歯車列等で主軸7に伝達してもよく、または、モータ12によって直接主軸7を回転させてもよい。
【0018】
心押し台4は、ベース1上に設置されたZ方向ガイド3に沿って移動可能に形成される。心押し台4は、不図示の軸受け等により対向軸8を回転可能な状態で支持している。主軸7の回転軸方向と、対向軸8の回転軸方向とはZ方向に一致した状態となっている。心押し台4の−Z側の端部には、センタ10が取り付けられている。なお、対向軸8は、心押し台4に固定され、デッドセンタとして使用されてもよい。
【0019】
図1(b)の一点鎖線で示すように、ワークWが長尺である場合(Z方向に長い場合)は、ワークWの+Z側の端部を心押し台4のセンタ10で保持する。これにより、長尺のワークWは主軸7と対向軸8とに挟まれた状態で回転するため、切削加工時に安定してワークWを回転させることができる。ワークWが短尺の場合(Z方向に短い場合)、ワークWは、主軸7の把握爪9aのみにより保持されて回転する。この場合には、心押し台4を用いなくてもよい。
【0020】
続いて、図1(a)及び(b)に示すように、ベース1にはZ方向に配置されたZ方向ガイド5が設けられる。また、Z方向ガイド5の−X位置には、Z方向ガイド5と同様にZ方向に配置されたZ方向ガイド5Aが設けられる。Z方向ガイド5、5Aのそれぞれには、Z方向ガイド5、5Aに沿ってZ方向に移動可能なZ軸スライド17、17Aが設けられる。Z軸スライド17は、図1(b)に示すように、Z方向駆動系(移動装置)M1の駆動によりZ方向に移動し、所定位置で保持される。なお、Z方向駆動系M1は、例えば、電気モータ等が用いられる。また、Z軸スライド17Aは、上記したZ方向駆動系M1と同様の駆動系を有している。
【0021】
Z軸スライド17、17Aに形成されたX方向ガイド18、18Aに沿ってX軸スライド15、15Aが移動可能に設けられる。X軸スライド15は、X方向駆動系(移動装置)M2の駆動によりX方向に移動し、所定位置で保持される。なお、X方向駆動系M2は、例えば、電気モータ等が用いられる。また、X軸スライド15Aは、上記したX方向駆動系M2と同様の駆動系を有している。
【0022】
X軸スライド15、15Aに形成されたY方向ガイド16、16Aに沿って刃物台駆動部21、21Aが移動可能に設けられる。刃物台駆動部21は、Y方向駆動系(移動装置)M3の駆動によりY方向に移動し、所定位置で保持される。なお、Y方向駆動系M3は、例えば、電気モータ等が用いられる。また、刃物台駆動部21Aは、上記したY方向駆動系M3と同様の駆動系を有している。上記したZ方向駆動系M1、X方向駆動系M2及びY方向駆動系M3は、制御部CONTによって制御される。
【0023】
刃物台駆動部21には、第1タレット23が取り付けられている。第1タレット23は、不図示の回転駆動装置によりZ方向を軸として回転可能となっている。同様に、刃物台駆動部21Aには、第2タレット23Aが取り付けられている。第2タレット23Aは、不図示の回転駆動装置によりZ方向を軸として回転可能となっている。第1タレット23は、ワークWの上方(+X側)に配置され、第2タレット23Aは、ワークWの下方(−X側)に配置される。これら第1及び第2タレット23、23AでワークWを挟むように配置される。
【0024】
第1及び第2タレット23、23Aの周面には、切削工具Tを保持するための複数の保持部が設けられている。これら保持部の全部または一部には切削工具Tが保持される。従って、第1及び第2タレット23、23Aを回転させることにより、所望の切削工具Tが選択される。第1及び第2タレット23、23Aの保持部に保持される切削工具Tは交換可能である。切削工具Tとしては、ワークWに対して切削加工を施すバイト等の他、ドリル又はエンドミル等の回転工具であってもよい。
【0025】
第1及び第2タレット23、23Aの保持部には、切削工具支持装置TH、TH1がそれぞれ取り付けられる。切削工具支持装置THとTH1とは、同一の構成であってもよく、また、異なる構成であってもよい。また、第2タレット23Aには、切削工具支持装置TH1が設けられなくてもよい。切削工具支持装置TH、TH1は、ホルダ保持部として1つのホルダプレート24と、複数のホルダ25とを備えている。ホルダプレート24は、複数のホルダ25を装着する(図2参照)。複数のホルダ25は、それぞれ切削工具Tを保持する。
【0026】
図1に示す工作機械100では、ワークWに対して±X側に、ワークWを挟むように切削工具Tが配置されているが、いずれか一方であってもよい。また、切削工具Tは、ワークWに対してX方向(上下方向)に配置されているが、これに代えて、ワークWに対する切削工具Tの配置をX方向としてもよい。また、切削工具TによるワークWへの切削は、制御部CONTによって行われ、いずれか一方によりワークWを切削させてもよく、また両者を交互に使用する場合、又は両者を同時に使用する場合など、いずれであってもよい。
【0027】
また、図1では切削工具TのY方向の移動をX軸スライド15、15Aに形成されたY方向ガイド16、16Aによって刃物台駆動部21、21A及び第1及び第2タレット23、23AをY方向に移動させることで行っているが、これに限定されない。例えば、第1及び第2タレット23、23Aの保持部にY方向ガイドを形成し、このY方向ガイドに沿ってホルダプレート24、24AをY方向に移動させてもよい。
【0028】
図2は、ワークWに対応する部分として、主軸7及び第1タレット23を含む要部を拡大して示す斜視図である。図2に示すように、第1タレット23の−X側の面には、ホルダプレート24が取り付けられている。ホルダプレート24の−X側には、複数のホルダ25が装着されている。各ホルダ25は、それぞれ1つの切削工具Tを保持する。本実施形態では、4つのホルダ25がホルダプレート24に装着されている。したがって、ホルダプレート24には、4つのホルダ25を介して、4つの第1切削工具T1、第2切削工具T2、第3切削工具T3、及び第4切削工具T4が保持される。
【0029】
図3(A)は、切削工具支持装置THにおいて、ホルダ25を装着したホルダプレート24を−X側から見たときの一例を示している。図3(B)は、図3(A)におけるA−A線に沿った断面図である。図3(A)及び(B)に示すように、ホルダプレート24は、載置部24aと、段部24bと、クサビ配置部24cと、を有する。
【0030】
載置部24aは、平面状であり、例えば、YZ平面に平行に配置される。載置部24aは、ホルダ25が載置される。載置部24aは、ホルダ25の底面形状に合わせて凹凸が形成されてもよい。段部24bは、載置部24aの−Z側に配置され、Y方向に沿って形成される。段部24bは、ホルダ25の一部、例えばホルダ25の−Z側の面が当接してホルダ25を位置決めする。段部24bは、ホルダ25の−Z側の面に対応する形状に形成される。例えば、ホルダ25の−Z側の面が+X方向に張り出している場合は、段部24bはホルダ25に合わせて凹ませてもよい。この場合、ホルダ25の張り出し部分が段部24bに入り込むので、後述するクサビ部材26が緩んだ場合でもホルダ25が−X方向に容易に抜けるのを抑制できる。
【0031】
クサビ配置部24cは、載置部24aの+Z側にY方向に沿って溝状に設けられる。クサビ配置部24cは、後述するクサビ部材26を配置するためのスペースである。クサビ配置部24cは、斜面24dを有している。ホルダプレート24は、クサビ部材26を備える。クサビ部材26は、段部24bから離れてクサビ配置部24cに配置される。クサビ部材26は、ホルダ25の+Z側の面と、ホルダプレート24の斜面24dとに接触するように配置される。これにより、ホルダ25は、段部24bとクサビ部材26とで挟まれた状態となる。
【0032】
クサビ部材26は、例えばボルト等の締結部材24eによってクサビ配置部24cに保持される。図3(B)に示すように、締結部材24eは、クサビ部材26に設けられた貫通孔26aに挿入され、先端が、ホルダプレート24のネジ穴24fにネジ結合している。締結部材24eを締めることにより、クサビ部材26が+X方向に移動する。これにより、ホルダ25は、クサビ部材26と段部24bとの間に挟まれてホルダプレート24に装着される。また、この状態から締結部材24eを緩めてクサビ部材26を−X方向に移動させることにより、ホルダ25をホルダプレート24から取り外し可能となる。
【0033】
4つのホルダ25は、Y方向に並んで配置される。本実施形態では、4つのホルダ25がY方向に平行な直線に沿って配置されている。各ホルダ25は、外形及び寸法がそれぞれ同一に形成されて規格化されているが、これに限定されず、ホルダ25ごとに外形及び寸法が異なってもよい。各ホルダ25は、Y方向の両側の端面25sが平面に形成される。隣り合うホルダ25は、端面25s同士が接触した状態でホルダプレート24に装着される。このため、隣り合うホルダ25は、端面25s同士による面接触となるため、高い剛性が確保され、互いにY方向に位置決めされる。なお、複数のホルダ25は、端面25s同士が離れた状態で配置されてもよい。
【0034】
また、+Y側に配置されるホルダ25は、ホルダプレート24の+Y側に形成された壁部24gに接触した状態で装着される。これにより、4つのホルダ25は、ホルダプレート24に対してY方向に位置決めされた状態で保持される。なお、本実施形態ではホルダプレート24に4つのホルダ25を装着しているが、これに限定されず、2つ、3つ、または5つ以上のホルダ25を装着してもよい。また、ホルダ25とホルダ25との間にスペーサを挟んでY方向に並べてもよい。この場合、スペーサも段部24bとクサビ部材26との間に挟んで保持してもよい。
【0035】
各切削工具T1〜T4は、例えば、予めホルダに保持されて複数用意された一群から選択されてホルダプレート24に装着される。この場合、各ホルダ25は、ホルダプレート24に装着可能な形状に規格化されているので、任意に選択可能である。ただし、ホルダ25の形状を規格化することに限定されず、段部24bとクサビ部材26とで挟むことが可能であればホルダ25の形状は任意である。
【0036】
本実施形態では、4つのホルダ25のうち、最も+Y側に配置されるホルダ25は、第1切削工具T1を保持する。+Y側から2番目のホルダ25は、第2切削工具T2を保持する。+Y側から3番目のホルダ25は、第3切削工具T3を保持する。+Y側から4番目のホルダ25は、第4切削工具T4を保持する。
【0037】
第1切削工具T1〜第4切削工具T4は、例えば、楔形の挿入部材が嵌め込まれることによってホルダ25に押圧されて固定されている。なお、挿入部材は、例えばボルト等によってホルダ25に締結されてもよい。この場合、ボルトを緩めて挿入部材の押圧力を弱めることで、第1切削工具T1をホルダ25から取り外すことができるようになっており、ホルダ25に対して第1切削工具T1を交換できるようになっている。
【0038】
第1切削工具T1〜第4切削工具T4は、それぞれ直線切刃H1〜H4を有する。図3(A)に示すように、複数のホルダ25のそれぞれは、ホルダプレート24に装着された際に、直線切刃H1〜H4の方向がX方向から見てZ方向に対して傾いた状となるように切削工具T1〜T4を保持する。本実施形態では、直線切刃H1の方向と直線切刃H3の方向とがほぼ平行となっている。また、直線切刃H2の方向と直線切刃H4の方向とがほぼ平行となっている。また、直線切刃H1及びH3の方向と、直線切刃H2及びH4の方向とは、互いに異なっている。このように、4つのホルダ25により、少なくとも1つの直線切刃の方向が他と異なるように切削工具T1〜T4を保持している。
【0039】
続いて、以上のように構成された切削工具支持装置TH及び工作機械100の動作について説明する。図4は、X方向からワークWを見たときの第1〜第4切削工具T1〜T4の動きの一例を示す図である。以下の切削加工では第1切削工具T1及び第2切削工具T2を用いる場合を例として説明する。先ず、加工対象であるワークWを主軸7に保持した後、ワークWを回転させる。ワークWの回転数は、加工処理に応じて適宜設定される。
【0040】
次に、第1タレット23を回転させてワークWに切削工具支持装置THを対応させる。なお、ホルダプレート24には、予め第1〜第4切削工具T1〜T4を保持する4つのホルダ25がホルダプレート24に装着されている。この状態では、第1〜第4切削工具T1〜T4の直線切刃H1〜H4は、それぞれYZ平面に平行に配置される。次に、2つの直線切刃H1及びH2のX方向の位置がワークWの円筒面Waに対応するように、X方向駆動系M2によって調整される。直線切刃H1及びH2のX方向の位置は、ワークWの円筒面Waに対する切削量を規定する。
【0041】
次に、ワークWの回転が安定した段階で、第1切削工具T1の位置合わせを行う。第1切削工具T1の直線切刃H1が移動するYZ座標位置は、例えば、Z軸スライド17のZ方向への移動、及び刃物台駆動部21のY方向への移動によって設定される。次に、第1切削工具T1の直線切刃H1を、ワークWの円筒面Waの接線方向であるY方向に移動させる。第1切削工具T1の直線切刃H1は、ワークWの円筒面Wa上のZ方向の母線(軸線)Dに対して−Y側から+Y側に移動した場合、直線切刃H1の+Y側の端部H1aが先にワークWに当接することになる。
【0042】
次に、図4(a)に示すように、直線切刃H1〜H4を、+Y方向(移動方向P)に移動させることにより第1切削工具T1による切削加工を行う。この移動方向は、ワークWの円筒面Waに対する接平面に沿った軌道となる。先ず、直線切刃H1の+Y側の端部H1aが円筒面Waに当たり、この端部H1aにおいて円筒面Waの切削を行う。その後、直線切刃H1は、円筒面Waに沿って+Y方向に移動することにより、ワークWへの切削部分が端部H1aから端部H1bに向けて徐々に−Z方向にずれた状態となる。このように、直線切刃H1が+Y方向に移動する間に、ワークWの円筒面Waでは切削部分はZ方向に進んでいく。
【0043】
図4(b)に示すように、直線切刃H1の端部H1bが母線Dから離れた段階で、第1切削工具T1による円筒面Waの切削加工が終了する。この切削加工では、直線切刃H1の端部H1aから端部H1bまで全体を用いることで円筒面WaのうちZ方向についての領域L1(図4(b)参照)を切削しているが、直線切刃H1の一部を用いて円筒面Waを切削してもよい。
【0044】
直線切刃H1の端部H1bが母線Dから離れた後、続いて直線切刃H1〜H4を+Y方向に移動させることにより、第2切削工具T2による切削加工を行う。第1切削工具T1の直線切刃H1の端部H1bと、第2切削工具T2の直線切刃H2の端部H2aとの間には、距離YLだけY方向に間隔が空いている。したがって、直線切刃H1の端部H1bが母線Dから離れた後、直線切刃H1及び直線切刃H2のいずれもがワークWから離れた状態となる。これにより、直線切刃H1による切削の際にワークWに撓み等の変形が発生していた場合であっても、当該撓みが解放されることになる。なお、撓みをより一層解放するため、第2切削工具T2で切削する際、+Y方向への移動を一旦停止し、所定時間経過後に+Y方向への移動を行ってもよい。
【0045】
第2切削工具T2による切削は、直線切刃H2の+Y側の端部H2aが円筒面Waに当たることで開始され、直線切刃H2が円筒面Waに沿って+Y方向に移動し、端部H2bが母線Dから離れた段階で終了する。ここでは、直線切刃H2の長さのZ成分と移動方向とが直線切刃H1の長さのZ成分と移動方向とにそれぞれ等しい。そのため、第2切削工具T2による切削加工では、図4(c)に示すように、直線切刃H2の端部H2aから端部H2bまで全体を用いることで、円筒面Waのうち直線切刃H1で切削した領域と同一の領域L1を切削している。第2切削工具T2による切削が終了することにより、切削加工が完了する。
【0046】
上記の切削加工において、母線Dに対する直線切刃H2の刃先角度が直線切刃H1の刃先角度に比べて小さいため、直線切刃H2は直線切刃H1よりもワークWの母線に近づいた状態で当接される。このため、Z方向について同一の長さの領域L1を切削する場合、単位時間あたりの送り量が同じときには、第2切削工具T2の方が、第1切削工具T1よりも短時間で加工でき、かつ面精度がよい(面粗度が小さい)。一方、第1切削工具T1による切削では、第2切削工具T2による切削と同等の時間で加工するには送り量を増加させる必要があるので、面精度を悪化させる(面粗度が大きくなる)ことになる。したがって、上記のように、第1切削工具T1を用いて主加工(粗加工)を行い、第2切削工具T2を用いて仕上げ加工を行うことにより、切削加工を高精度かつ効率的に行うことができる。
【0047】
なお、上記では直線切刃H1及び直線切刃H2をY方向(移動方向P)に移動させてワークWを切削する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されず、直線切刃H1及び直線切刃H2を、+Y方向と−Z方向とを合成した方向(移動方向)P1及びP2に移動させることにより切削加工を行ってもよい。
【0048】
図5は、X方向からワークWを見たとき第1〜第4切削工具T1〜T4の動きの他の例を示す図である。図6は、図5に続いて、第1〜第4切削工具T1〜T4の動きを示す図である。以下、図5及び図6を適宜参照しながら説明する。先ず、第1切削工具T1の位置合わせを行う。次に、図5(a)に示すように、直線切刃H1〜H4を、移動方向P1(+Y方向と−Z方向とを合成した方向)に移動させることにより、第1切削工具T1による切削加工を行う。この移動方向P1は、ワークWの円筒面Waに対する接平面に沿った軌道となる。
【0049】
第1切削工具T1による切削は、直線切刃H1の+Y側の端部H1aが円筒面Waに当たることで開始され、直線切刃H1が円筒面Waに沿って移動方向P1に移動し、端部H1bが母線Dから離れた段階で終了する。この切削加工では、図5(b)に示すように、円筒面WaのうちZ方向についての領域L2を切削している。領域L2のZ方向の長さは、直線切刃H1を母線Dに投影したときのZ方向の長さと、直線切刃H1の移動距離のうちZ方向についての成分とを足した長さである。
【0050】
直線切刃H1の端部H1bが母線Dから離れた後、直線切刃H2の端部H2aが母線Dに到達する前に移動方向Pへの移動を停止させる。その後、直線切刃H1〜H4を+Z方向に移動させ、直線切刃H2の位置合わせを行う。この位置合わせでは、上記の直線切刃H1が切削直前に配置された位置に、直線切刃H2を配置させる。
【0051】
次に、図6(a)に示すように、上記の移動方向P1とは異なる移動方向P2に直線切刃H1〜H4を移動させることにより、第2切削工具T2による切削加工を行う。移動方向P2は、円筒面Waのうち直線切刃H1で切削した領域と同一の領域L2を切削するように設定される。第2切削工具T2による切削は、直線切刃H2の+Y側の端部H2aが円筒面Waに当たることで開始され、直線切刃H2が円筒面Waに沿って移動方向P2に移動し、図6(b)に示すように端部H2bが母線Dから離れた段階で終了する。第2切削工具T2による切削が終了することにより、切削加工が完了する。
【0052】
図5及び図6に示す第1切削工具T1〜第4切削工具T4の動作においても、図4に示す第1切削工具T1〜第4切削工具T4の動作と同様に、直線切刃H2が直線切刃H1よりもワークWの母線に近づいた状態で当接される。したがって、上記のように、第1切削工具T1を用いて主加工(粗加工)を行い、第2切削工具T2を用いて仕上げ加工を行うことにより、切削加工を高精度かつ効率的に行うことができる。
【0053】
なお、図4図6に示す例は、第1切削工具T1と第2切削工具T2とを用いた切削加工を示しているが、これに限定されない。例えば、第2切削工具T2による切削が終了した後、第3切削工具T3及び第4切削工具T4の一方または双方による切削を行ってもよい。また、複数の切削工具を用いることに限定されず、第1〜第4切削工具T1〜T4のいずれか1つを用いて切削してもよい。
【0054】
また、第1切削工具T1と第2切削工具T2とを用いることに代えて、例えば、ワークWに応じて、第1切削工具T1と第3切削工具T3、第1切削工具T1と第4切削工具T4、第2切削工具T2と第3切削工具T3、または第2切削工具T2と第4切削工具T4、第3切削工具T3と第4切削工具T4、を用いてもよい。例えば、第1切削工具T1及び第3切削工具T3を用いる場合、第1切削工具T1を移動方向P等に移動させてワークWを切削した後、一旦+X方向に移動させてから第2切削工具T2を移動方向Pに移動して母線D上を通過させ、続いて、第3切削工具T3を切削開始位置に位置決めして移動方向P等に移動させることにより、第3切削工具T3により切削を行う。
【0055】
このように、本実施形態によれば、所望の切削工具Tを持つホルダ25をホルダプレート24に装着できる。したがって、複数の切削工具Tの1つを交換する場合は、そのホルダ25をホルダプレート24から取り外して新たなホルダ25を装着するといった簡単な手順で切削工具Tを個別に交換することができる。また、ホルダプレート24には切削工具Tを任意に組み合わせることができるので、ワークWに対応した組み合わせを容易に実現でき、利便性を向上させることができる。
【0056】
〔第2実施形態〕
上記した第1実施形態では、平行な直線切刃H1、H3を持つ第1及び第3切削工具T1、T3と、平行な直線切刃H2、H4を持つ第2及び第4切削工具T2、T4を交互にY方向に並べて1つのホルダプレート24に装着した構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。第2実施形態では、直線切刃の向きが第1実施形態とは異なり、他の構成については第1実施形態と同様である。以下の説明において、上記した実施形態と同一または同等の構成部分については同一符号を付けて説明を省略または簡略化する。また、第2実施形態の切削工具支持装置TH2を含めて、後述する切削工具支持装置TH3〜5においても、工作機械100の第1又は第2タレット23、23Aの保持部に取り付けられる点は第1実施形態と同様である。
【0057】
図7は、第2実施形態に係る切削工具支持装置TH2の一例を示す図である。図7に示すように、切削工具支持装置TH2は、平行な直線切刃H1、H3、H4を持つ第1〜第3切削工具T1〜T3を保持する3つのホルダ25と、直線切刃H1と異なる方向の直線切刃H2を持つ第2切削工具T2を保持する1つのホルダ25と、を1つのホルダプレート24に装着している。第1〜第4切削工具T1〜T4は、−Y側から順に並んだ状態で配置される。
【0058】
この切削工具支持装置TH2において、第1切削工具T1と第2切削工具T2とを用いた切削加工では、上記した第1実施形態と同様である。なお、第3切削工具T3及び第4切削工具T4は、第1切削工具T1と同様のため、第1切削工具T1が摩耗または破損した場合のバックアップとして利用されてもよい。
【0059】
〔第3実施形態〕
上記した第1及び第2実施形態では、複数のホルダ25がY方向に沿って並んだ構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。第3実施形態では、複数のホルダ25(第1〜第4切削工具T1〜T4)が並ぶ方向が第1実施形態とは異なり、他の構成については第1実施形態と同様である。以下の説明において、上記した実施形態と同一または同等の構成部分については同一符号を付けて説明を省略または簡略化する。
【0060】
図8は、第3実施形態に係る切削工具支持装置TH3の一例を示す図である。図8に示すように、切削工具支持装置TH3は、ホルダ保持として1つのホルダプレート124を備える。ホルダプレート124は、1つのホルダ25に対応する載置部24a、段部24b、クサビ配置部24c及び斜面24dが、+Y側から順次+Z方向にずれた位置に配置されている。したがって、段部24b及び斜面24dは、Y方向に階段状に形成される。Z方向への各ずれ量はほぼ同一であるが、異なってもよい。
【0061】
このホルダプレート124に複数のホルダ25を装着すると、複数のホルダ25(第1〜第4切削工具T1〜T4)は、Y方向に対して傾斜した方向に並んで配置される。なお、Y方向に対する傾斜角度は任意である。この切削工具支持装置TH3を上記した図4図6の切削加工を行う場合は、直線切刃H1を用いた後、直線切刃H2のZ方向の位置を直線切刃H1に合わせる必要がある。
【0062】
また、切削工具支持装置TH3では、ホルダプレート124をY方向に移動させることにより、ワークWに対して直線切刃H1〜H4が一部重複しながら異なる部分を切削する。これによりワークWに対して広い範囲で切削加工を行うことができる。なお、切削工具支持装置TH3に保持する第1〜第4切削工具T1〜T4の直線切刃H1〜H4の方向は任意に設定可能である。
【0063】
〔第4実施形態〕
上記した第1〜第3実施形態では、1つのホルダ25に1つの切削工具Tを保持する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。第4実施形態では、1つのホルダ25に複数の切削工具を保持する点が第1〜第3実施形態とは異なり、他の構成については第1実施形態等と同様である。以下の説明において、上記した実施形態と同一または同等の構成部分については同一符号を付けて説明を省略または簡略化する。
【0064】
図9は、第4実施形態に係る切削工具支持装置TH4の一例を示す図である。図9に示すように、切削工具支持装置TH4は、1つのホルダプレート24に2つのホルダ125を装着する。ホルダ125は、複数の切削工具Tが保持される。+Y側に装着されたホルダ125は、第1切削工具T1及び第2切削工具T2を保持する。また、−Y側に装着されたホルダ125は、第3切削工具T3及び第4切削工具T4を保持する。各ホルダ125は、2つのクサビ部材26によって段部24bとの間に挟まれて装着される。第1及び第2切削工具T1、T2の直線切刃H1、H2の方向は異なっているが、平行でもよい。同様に、第3及び第4切削工具T3、T4の直線切刃H3、H4の方向は異なっているが、平行でもよい。
【0065】
ホルダ125のXZ断面は、上記したホルダ25と同様である。したがって、第1及び第2実施形態に示すホルダプレート24に装着することが可能である。なお、ホルダ125に2つの切削工具を保持することに限定されず、1つのホルダ125に3つ以上の切削工具を保持してもよい。このように、1つのホルダ125に複数の切削工具を保持することにより、複数の切削工具を同時に短時間で交換することができる。
【0066】
〔第5実施形態〕
上記した第4実施形態では、2つのホルダ125を装着する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。第5実施形態では、ホルダ25とホルダ125とを装着する点が第4実施形態とは異なり、他の構成については第1及び第4実施形態と同様である。以下の説明において、上記した実施形態と同一または同等の構成部分については同一符号を付けて説明を省略または簡略化する。
【0067】
図10は、第5実施形態に係る切削工具支持装置TH5の一例を示す図である。図10に示すように、切削工具支持装置TH5は、1つのホルダプレート24に2つのホルダ25と1つのホルダ125を装着する。+Y側にホルダ125が装着され、−Y側に2つのホルダ25が並んで装着されるが、これらホルダ25、125を並べる順番は任意である。ホルダ125は、第1切削工具T1及び第2切削工具T2を保持する。ホルダ25は、+Y側から順に第3切削工具T3及び第4切削工具T4をそれぞれ保持する。
【0068】
ホルダ25、125のように、Y方向の長さが異なるホルダを適宜組み合わせてホルダプレート24に装着することができる。したがって、予め切削工具を保持して用意されたホルダ25、125のいずれかを選択することにより、切削の態様に応じて適切な切削工具を容易にホルダプレート24に装着することができ、利便性を向上させることができる。
【0069】
以上、実施形態について説明したが、本発明は、上述した説明に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。上記した実施形態では、ホルダ保持部としてホルダプレート24、124を用いているが、ホルダプレート24、124を用いなくてもよい。例えば、第1タレット23又は/及び第2タレット23Aの一部に上記したホルダプレート24、124と同様の構成を適用し、複数のホルダ25、125を第1、第2タレット23、23Aに直接装着してもよい。この場合、第1、第2タレット23、23Aの一部(複数のホルダ25、125を装着する部分)が1つのホルダ保持部となる。また、上記した実施形態では、少なくとも1つの直線切刃の方向が異なっているが、すべて異なってもよいし、また、すべて同一の方向であってもよい。
【0070】
また、上記した第3実施形態では、ホルダ25が、+Y側から順次+Z方向にずれた位置に配置されるがこれに限定されない。例えば、複数のホルダ25が+Y側から順次+Z方向及び−Z方向に交互にずれた状態(千鳥状またはジグザグ)に配置されてもよい。この場合、第1切削工具T1と第3切削工具T3とはY方向に沿って並んでおり、第2切削工具T2と第4切削工具T4とはY方向に沿って並んだ状態となっている。
【0071】
また、上記した各実施形態では、切削加工の際、ワークW(主軸7等)に対して第1切削工具T1〜第4切削工具T4を移動させているが、これに代えて、第1切削工具T1〜第4切削工具T4に対してワークWを移動させて切削加工を行ってもよいし、第1切削工具T1〜第4切削工具T4とワークWとの双方を移動させて切削加工を行ってもよい。
また、法令で許容される限りにおいて、日本特許出願である特願2016−144279、及び本明細書で引用した全ての文献、の内容を援用して本文の記載の一部とする。
【符号の説明】
【0072】
H1〜H4・・・直線切刃
P,P1,P2・・・移動方向
T(T1〜T4)・・・切削工具
T1・・・第1切削工具
T2・・・第2切削工具
T3・・・第3切削工具
T4・・・第4切削工具
TH、TH1、TH2、TH3、TH4、TH5・・・切削工具支持装置
W・・・ワーク
7・・・主軸
24,124・・・ホルダプレート(ホルダ保持部)
24a・・・載置部
24b・・・段部
25,125・・・ホルダ
25s・・・端面
26・・・クサビ部材
100・・・工作機械
図1
図2
図3
図4
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図10