特許第6604456号(P6604456)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6604456太陽電池モジュール用裏面保護シート及び太陽電池モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6604456
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール用裏面保護シート及び太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/049 20140101AFI20191031BHJP
   H01L 31/056 20140101ALI20191031BHJP
【FI】
   H01L31/04 562
   H01L31/04 624
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-94722(P2019-94722)
(22)【出願日】2019年5月20日
【審査請求日】2019年5月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 卓久
(72)【発明者】
【氏名】白髭 靖史
(72)【発明者】
【氏名】松本 裕司
(72)【発明者】
【氏名】在原 慶太
(72)【発明者】
【氏名】中原 敦
【審査官】 吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/043335(WO,A1)
【文献】 特開2013−063659(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0289682(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04−31/056
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池モジュール用裏面保護シートであって、
近赤外線を反射する第1層と、
前記第1層よりも受光面側に位置する、近赤外線及び可視光線を透過する第2層と、
前記第2層よりも受光面側に位置する、近赤外線及び可視光線を透過する第3層と
記第2層と前記第3層との間に位置し、ペリレン系顔料を含むとともに近赤外線を透過する着色層と、を備え
前記第1層と前記第2層との間に、近赤外線を透過する追加の着色層が位置する、太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項2】
前記着色層は、着色接着剤層である、請求項1に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項3】
前記追加の着色層は、着色接着剤層である、請求項1又は2に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれか一項記載の太陽電池モジュール用裏面保護シートを備えた、太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、太陽電池モジュール用裏面保護シート及び太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に対する意識の高まりから、クリーンなエネルギー源としての太陽電池が注目されている。一般に、太陽電池を構成する太陽電池モジュールは、受光面側から、透明前面基板、封止材、太陽電池素子、封止材及び裏面保護シートが順に積層された構成であり、太陽光が上記太陽電池素子に入射することにより発電する機能を有している。
【0003】
太陽電池モジュールに用いられる裏面保護シートにおいては、意匠性の観点から外観を黒色にすることが求められる場合がある。裏面保護シートの外観を黒色にするために、カーボンブラックを含むインキを用いることも考えられる。しかしながら、カーボンブラックは太陽光に含まれる近赤外線を吸収するため、使用時に太陽電池モジュールの温度を上昇させてしまい、その結果、太陽電池モジュールの発電効率は低下する。このため、カーボンブラックを含む裏面保護シートを太陽電池モジュールに用いることは必ずしも好ましいとはいえない。
【0004】
そこで、黒色の裏面保護シートにおける発熱を抑え、更に、反射光を太陽電池素子に入射させて、発電効率を向上させるために、赤外線透過性を有するオキサジン系顔料等の有機顔料が含まれた黒色系樹脂層と赤外線反射性とを有する白色系樹脂層と、耐候性を有する裏面保護層等を備え、これらの複数の層を接着剤等で接着して製造する太陽電池モジュール用の裏面保護シートが開発されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−216689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、黒色の裏面保護シートは、樹脂に黒色顔料を混ぜることで作製されることが一般的である。しかしながら、とりわけ黒色顔料としてペリレン系顔料を用いた場合、裏面保護シートを含む太陽電池モジュールを高温下に曝した際、ペリレン顔料の一部が周辺の層に移行する現象(マイグレーション)が発生しやすいことが判明した。このようなマイグレーションが発生した場合、裏面保護シート全体としての意匠性が損なわれるおそれがある。また、マイグレーションが背面封止材層側まで達した場合、太陽電池モジュールの出力の低下につながるおそれもある。
【0007】
本開示は、マイグレーションによる影響を抑制することが可能な、太陽電池モジュール用裏面保護シート及び太陽電池モジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施の形態による太陽電池モジュール用裏面保護シートは、太陽電池モジュール用裏面保護シートであって、近赤外線を反射する第1層と、前記第1層よりも受光面側に位置する、近赤外線及び可視光線を透過する第2層と、前記第2層よりも受光面側に位置する、近赤外線及び可視光線を透過する第3層と、前記第1層と前記第2層との間又は前記第2層と前記第3層との間に位置し、ペリレン系顔料を含むとともに近赤外線を透過する着色層と、を備えている。
【0009】
本実施の形態による太陽電池モジュール用裏面保護シートにおいて、前記着色層は、着色接着剤層であってもよい。
【0010】
本実施の形態による太陽電池モジュール用裏面保護シートにおいて、前記着色層は、前記第2層と前記第3層との間に位置し、前記第1層と前記第2層との間に、近赤外線及び可視光線を透過する第4層が位置してもよい。
【0011】
本実施の形態による太陽電池モジュール用裏面保護シートにおいて、前記着色層は、前記第1層と前記第2層との間に位置し、前記第2層と前記第3層との間に、近赤外線及び可視光線を透過する第4層が位置してもよい。
【0012】
本実施の形態による太陽電池モジュール用裏面保護シートにおいて、前記第4層は、透明接着剤層であってもよい。
【0013】
本実施の形態による太陽電池モジュール用裏面保護シートにおいて、前記着色層は、前記第2層と前記第3層との間に位置し、前記第1層と前記第2層との間に、近赤外線を透過する追加の着色層が位置してもよい。
【0014】
本実施の形態による太陽電池モジュール用裏面保護シートにおいて、前記追加の着色層は、着色接着剤層であってもよい。
【0015】
本実施の形態による太陽電池モジュールは、本実施の形態による太陽電池モジュール用裏面保護シートを備えている。
【発明の効果】
【0016】
本実施の形態によれば、マイグレーションによる影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、一実施の形態による太陽電池モジュールの層構成を示す概略断面図である。
図2図2は、一実施の形態による太陽電池モジュール用裏面保護シートの層構成を示す概略断面図である。
図3図3は、一実施の形態による太陽電池モジュールを示す概略断面図である。
図4図4は、太陽電池モジュール用裏面保護シートにマイグレーションが発生した状態を示す概略断面図である。
図5図5は、一変形例による太陽電池モジュール用裏面保護シートの層構成を示す概略断面図である。
図6図6は、一変形例による太陽電池モジュール用裏面保護シートの層構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら一実施の形態について具体的に説明する。以下に示す各図は、模式的に示したものである。そのため、各部の大きさ、形状は理解を容易にするために、適宜誇張している。また、技術思想を逸脱しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。なお、以下に示す各図において、同一部分には同一の符号を付しており、一部詳細な説明を省略する場合がある。また、本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値および材料名は、実施の形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。本明細書において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば平行や直交、垂直等の用語については、厳密に意味するところに加え、実質的に同じ状態も含むものとする。
【0019】
また、本明細書において、「受光面側」とは、太陽電池モジュールに対して太陽光が入射する面が位置する側をいい、具体的には、図1乃至図3の紙面上方側をいう。
【0020】
以下、本実施の形態による太陽電池モジュール用裏面保護シート(本明細書において、単に「裏面保護シート」ともいう。)について詳細に説明する。本実施の形態は以下に記載されるものに限定されるものではない。
【0021】
まず、本実施の形態による太陽電池モジュール用裏面保護シートが使用される太陽電池モジュールについて説明する。図1は、太陽電池モジュールについて、その層構成の一例を例示する断面の模式図である。
【0022】
図1に示すように、太陽電池を構成する太陽電池モジュール10は、入射光L1の受光面側から順に積層された、透明前面基板11と、前面封止材層12と、太陽電池素子13と、背面封止材層14と、裏面保護シート20とを備えている。この太陽電池モジュール10は、透明前面基板11、前面封止材層12、太陽電池素子13、背面封止材層14、及び裏面保護シート20を順次積層し、例えば真空熱ラミネート加工により一体化することにより作製されても良い。この際のラミネート温度は、130℃以上190℃以下の範囲内とすることが好ましい。また、ラミネート時間は、5分以上60分以下の範囲内が好ましく、特に8分以上40分以下の範囲内が好ましい。このようにして、上記の各層を一体成形体として加熱圧着成形して、太陽電池モジュール10を製造することができる。本実施の形態において、このように裏面保護シート20を備えた太陽電池モジュール10も提供する。
【0023】
[太陽電池モジュール用裏面保護シートの全体構造]
次に、図2を用いて本実施の形態による裏面保護シート20について説明する。裏面保護シート20は、上述した太陽電池モジュール10に用いられるものであり、全体として黒色の外観を呈している。なお、黒色とは、無色彩の黒のみでなく、暗い灰色、色味を帯びた黒や暗い灰色も含まれる。色味を帯びた黒や暗い灰色として、例えば、赤みの黒や暗い灰色、黄みの黒や暗い灰色、緑みの黒や暗い灰色、青みの黒や暗い灰色、紫みの黒や暗い灰色、などがあげられる。
【0024】
この裏面保護シート20は、近赤外線を反射する第1層21と、第1層21よりも受光面側に位置するとともに近赤外線及び可視光線を透過する透明な第2層22と、第2層22よりも受光面側に位置するとともに近赤外線及び可視光線を透過する透明な第3層23と、を備えている。第1層21と第2層22との間には、近赤外線及び可視光線を透過する透明な第4層26が位置している。また第2層22と第3層23との間には、黒色層25が位置している。
【0025】
この場合、裏面保護シート20は、5層の層から構成されている。すなわち、第1層21上に第4層26が直接積層され、第4層26上に第2層22が直接積層されている。また、第2層22上に黒色層25が直接積層され、黒色層25上に第3層23が直接積層されている。なお、第1層21が太陽電池モジュール10の最外層側(受光面の反対側)に配置される。また、第3層23が太陽電池モジュール10の内層側、すなわち背面封止材層14の側(受光面側)に配置される。
【0026】
次に、裏面保護シート20を構成する各層について説明する。
【0027】
[第1層]
第1層21は、例えば白色顔料を含む樹脂シート又は白色顔料を含むコート層(塗布膜や印刷膜)を形成した樹脂シートからなり、近赤外線を反射する白色樹脂層であっても良い。第1層21は、黒色層25、第2層22及び第4層26を透過してきた近赤外線を反射する反射層であっても良い。第1層21が近赤外線を反射することにより、太陽電池モジュール10の発電効率向上に寄与する。なお、白色とは、無色彩の白のみでなく、うすい灰色、色味を帯びたうすい灰色も含まれる。なお、本明細書では、樹脂をシート状に加工したものの名称として樹脂シートという用語を使用するが、この用語は、樹脂フィルムも含む概念として使用される。
【0028】
第1層21を構成する樹脂シートとしては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(四フッ化エチレン・エチレン共重合体)等のフッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)等のポリエステル系樹脂等の樹脂シートを好ましく用いることができる。あるいは、第1層21を構成する樹脂シートとして、ポリオレフィン系樹脂の樹脂シート、PBT(ポリブチレンテレフタラート)、PPE(ポリフェニルエーテル)、PEN(ポリエチレンナフタレート)等の樹脂シートを用いても良い。本実施の形態においては第1層21は太陽電池モジュール10における最外層側(受光面の反対側)に配置されるため、高い耐候性、バリア性、耐加水分解性が求められる。そのような観点から以上のうちでも、PETに代表されるポリエステル系樹脂を用いることが特に好ましい。
【0029】
第1層21は、近赤外線を反射する機能を有する。そのために、粒径が0.1μm以上1.5μm以下の白色顔料を含む白色樹脂層を用いることが好ましく、粒径が0.1μm以上0.6μm以下の白色顔料を含む白色樹脂層を用いることがより好ましい。また、第1層21においては、粒径が0.1μm以上0.6μm以下の白色顔料の粒子が、全白色顔料の粒子中の80質量%以上であることが好ましい。白色顔料の粒径及び配分比を上記の範囲にすることにより、白色樹脂層は近赤外線を効率よく反射するため、上記白色顔料は太陽電池モジュールの発電効率向上に寄与する。近赤外線を反射するとは、例えば、およそ750nm以上1200nm以下の波長領域において、平均反射率が50%以上であることを意味する。なお、「平均反射率」とは、反射率分光スペクトル(各波長毎の反射率)から、該当波長領域を抜き出して平均値を求めたものである。例えば750nm以上1200nm以下の波長領域の平均反射率は、「(各波長の反射率の和)/(1200−750)」によって求めることができる。
【0030】
粒径が0.1μm以上1.5μm以下の白色顔料の代表例は酸化チタンであり、本実施の形態においても、白色顔料として、酸化チタンを用いることが好ましい。ここで、酸化チタンには表面処理された酸化チタンも含まれる。例えば、酸化チタンの場合、その製造は、以下のようにして行うことができる。
【0031】
含水酸化チタンを原料とし、そこに酸化チタン分に対して酸化アルミニウム換算で0.1質量%以上0.5質量%以下のアルミニウム化合物と炭酸カリウム換算で0.1質量%以上0.5質量%以下のカリウム化合物、及び、酸化亜鉛換算で0.2質量%以上1.0質量%以下の亜鉛化合物を添加し、乾燥、焙焼することによって製造することができる。
【0032】
第1層21の製造方法については、例えば、樹脂シート上に白色顔料を含むコート層を形成する方法、樹脂シート中に白色顔料を練り込む方法が挙げられる。いずれも、特に限定はなく従来公知の方法により製造することができる。
【0033】
樹脂シート上に白色顔料を含むコート層(塗布膜や印刷膜)を形成する場合は、通常の塗料用ないしインキ用ビヒクルを主成分とし、これに、白色顔料を添加し、更に、必要ならば、紫外線吸収剤、架橋剤、その他の添加剤を任意に添加し、塗料ないしインキ組成物を調整し、基材フィルムの表面に、通常のコ−ティング法或いは印刷法等を用いて塗布ないし印刷し、その塗布膜或いは印刷膜を形成することができる。
【0034】
樹脂シート中に白色顔料を練り込む場合は、樹脂シートを構成する樹脂を主成分とし、これに、白色顔料を添加し、更に、必要ならば、その他等の添加剤を任意に添加し、樹脂組成物を調整し、例えば、押し出し法、Tダイ法等のフィルム成形法により、フィルムないしシートを製造し、白色顔料を練り込み加工してなるシートを製造することができる。
【0035】
第1層21の厚みは、例えば25μm以上200μm以下とすることが好ましく、40μm以上150μm以下とすることがより好ましい。第1層21の厚みを25μm以上とすることにより、第1層21によって近赤外線を反射しやすくするとともに、第1層21に対して高い耐候性、バリア性及び耐加水分解性をもたせることができる。第1層21の厚みを200μm以下とすることにより、裏面保護シート20の製造コストの上昇を抑えることができる。
【0036】
[第4層]
第4層26は、主として第1層21と第2層22とを互いに接着する接着層であっても良く、透明接着剤層であっても良い。本実施の形態において、第4層26は、第1層21の上面(受光面側の面)、又は、第2層22の下面(受光面と反対側の面)に塗布された透明接着剤が積層後に硬化することによって形成される。
【0037】
第4層26には、十分な接着性と接着耐久性が求められるが、本実施の形態の第4層26は、そのような特性に加えて、その外観が透明であることすなわち可視光線を透過し、かつ、近赤外線を透過する性質を有しても良い。本実施の形態において近赤外線とは、750nm以上2200nm以下の波長域の電磁波を指す。その内、特に蓄熱を促進する波長は1000nm以上1500nm以下である。なお、「近赤外線を透過する」とは、第4層26において波長750nm以上1500nm以下の全光線透過率が80%以上であることを意味する。また、「可視光線を透過する」とは、第4層26において波長380nm以上750nm以下の全光線透過率が80%以上であることを意味する。
【0038】
第4層26に用いる透明接着剤組成物の主成分としては、主剤と硬化剤からなる2液タイプのものを用いることが好ましい。
【0039】
主剤成分としては、例えばウレタン系の材料が用いられ、ウレタン系の材料にカーボネートを含むものであっても良く、カーボネートを含まないものであっても良い。カーボネートを含むもの含むものを用いる場合、主剤成分は、ポリウレタンジオールと脂肪族ポリカーボネートジオールとの混合物を含む、ポリウレタン/ポリカーボネートジオール系が好ましい。主剤を構成するポリウレタンジオール及び脂肪族ポリカーボネートジオールは、ともに水酸基を有するポリオールであり、イソシアネート基を有する硬化剤と反応して、接着剤層を構成するものである。本実施の形態においては、主剤を特定のポリウレタンジオールと脂肪族ポリカーボネートジオールを所定量配合した混合物とすることによって、接着剤層の接着性及び耐候性を向上させている。
【0040】
硬化剤は、ポリイソシアネート化合物を主成分とするものである。ポリイソシアネート化合物は、1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物であり、このイソシアネート基が上記主剤のポリウレタンジオール化合物中の水酸基と反応することにより、ポリウレタンジオール化合物を架橋する。このようなポリイソシアネート化合物としては、上記主剤のポリウレタンジオール化合物を架橋することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリウレタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」)、イソシアヌレート変性のイソホロンジイソシアネート(以下、「ヌレート変性IPDI」)等を例示することができる。これらのポリイソシアネート化合物の中でも、HDIとヌレート変性IPDIとを組み合わせた混合物が水酸基に対する反応性を向上させる観点より好ましい。
【0041】
上記の透明接着剤組成物としては、良好な塗布性及びハンドリング適正を得るために、溶剤成分を添加することが好ましい。このような溶剤成分としては、上記酢酸エチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル等のカルボン酸エステルを挙げることができるがこれに限定されない。なお、既に述べたように上記接着剤の主成分は、主剤と硬化剤の2液剤として構成されるが、主剤で使用される溶剤成分と硬化剤で使用される溶剤成分はそれぞれ独立に選択され、同一でも異なっていてもよい。
【0042】
以上説明した透明接着剤組成物を第1層21及び/又は第2層22上に塗布又は積層して乾燥硬化することにより第4層26を形成することができる。塗布の方法としては、ロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、その他等のコート法、或いは、印刷法等によって塗布することができる。透明接着剤組成物の塗布量は3g/m以上7g/m以下とすることが好ましい。第4層26の厚さは、2.0μm以上10μm以下の範囲であることが好ましく、3.0μm以上6.0μm以下の範囲であることが更に好ましい。第4層26の厚さを2.0μm以上とすることにより、第1層21と第2層22との接着強度を保持することができる。また、第4層26の厚さを10μm以下とすることにより、近赤外線を効率よく透過することできる。
【0043】
[第2層]
第2層22は、第4層26と黒色層25との間に介在されている。第2層22は、裏面保護シート20の強度を増す機能を有するとともに、後述するように、黒色層25からの黒色顔料のマイグレーションによる影響を緩和する役割を果たす。第2層22は、近赤外線及び可視光線を透過する透明中間層であっても良い。第2層22は透明又は半透明であっても良い。このような観点から第2層22には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を用いることが好ましい。これらの樹脂の中でも、とりわけ透明性が高く意匠性の面で優れるPETを、特に好ましく用いることができる。なお、「近赤外線を透過する」とは、第2層22において波長750nm以上1500nm以下の全光線透過率が80%以上であることを意味する。また、「可視光線を透過する」とは、第2層22において波長380nm以上750nm以下の全光線透過率が80%以上であることを意味する。
【0044】
第2層22の厚みは、例えば30μm以上200μm以下とすることが好ましく、100μm以上150μm以下とすることがより好ましい。第2層22の厚みを30μm以上とすることにより、マイグレーションにより黒色層25中の黒色顔料が第1層21側に移行することを抑えることができる。第2層22の厚みを200μm以下とすることにより、近赤外線を第2層22中に効率よく透過させることできる。
【0045】
[黒色層]
黒色層25は、主として第2層22と第3層23とを互いに接着する接着層であっても良く、黒色接着剤層であっても良い。本実施の形態において黒色層25は、第2層22の上面(受光面側の面)、又は、第3層23の下面(受光面と反対側の面)に塗布された黒色接着剤が積層後に硬化することによって形成される。
【0046】
黒色層25には、十分な接着性と接着耐久性が求められるが、本実施の形態の黒色層25は、そのような特性に加えて、その外観が黒色であることすなわち可視光線を吸収すること、かつ、近赤外線を透過する性質を有しても良い。
【0047】
黒色層25を形成する黒色接着剤には、硬化した状態において波長750nm以上1500nm以下の光線を透過する特性を有する接着剤を使用する。なお、「波長750nm以上1500nm以下の光線を透過する」とは、黒色層25において波長750nm以上1500nm以下の光線を15%以上透過、好ましくは50%以上透過、更に好ましくは80%以上透過することを意味する。また、可視光線、紫外線の透過率は黒色に着色されている範疇にあれば特に規定されない。
【0048】
黒色層25に用いる黒色接着剤組成物は、好ましくは主成分に有機系の黒色顔料を含むものであり、塗布性、ハンドリング性の観点から、組成物としては適宜溶剤が含まれる。黒色接着剤組成物の主成分としては、主剤と硬化剤からなる2液タイプのものを用いることが好ましい。
【0049】
黒色接着剤組成物の主剤成分及び硬化剤としては、上述した第4層26に用いられる透明接着剤組成物の主剤成分及び硬化剤と同様のものを用いることができる。
【0050】
黒色層25を黒色とするための着色材料としては、ペリレン系の黒色顔料が用いられる。ペリレン系の黒色顔料は良好な黒味を得ることが容易だからである。ペリレン系の黒色顔料としては、例えばLumogen Black K0087(BASF製)を用いることができる。ペリレン系の黒色顔料を用いることにより、黒色層25に含まれる黒色顔料の成分量を抑えても、裏面保護シート20の全体としての色ムラ(黒色の濃さが面内で不均一になる現象)を目立たなくすることができる。また、黒色層25に含まれる黒色顔料の成分量を抑えても、裏面保護シート20の全体として、可視光領域の分光透過率を低減し、黒味を増加することができる。
【0051】
黒色層25に占める黒色顔料の割合は、5質量%以上30質量%未満であることが好ましく、10質量%以上25質量%以下であることが更に好ましい。黒色層25に占める黒色顔料の割合を5質量%以上とすることにより、裏面保護シート20の全体としての色ムラを目立たなくすることができるとともに、裏面保護シート20の全体としての黒味を確保することができる。また、黒色層25に占める黒色顔料の割合を30質量%未満とすることにより、黒色層25の接着強度の低下が生じにくくなり、裏面保護シート20の長期信頼性を高めることができる。
【0052】
上記の黒色接着剤組成物としては、良好な塗布性及びハンドリング適正を得るために、溶剤成分を添加することが好ましい。このような溶剤成分としては、上述した第4層26に用いられる透明接着剤組成物の溶剤成分と同様のものを用いることができる。
【0053】
以上説明した黒色接着剤組成物を第1層21及び/又は第2層22上に塗布又は積層して乾燥硬化することにより黒色層25を形成することができる。塗布の方法としては、ロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、その他等のコート法、或いは、印刷法等によって塗布することができる。黒色接着剤組成物の塗布量は3g/m以上7g/m以下とすることが好ましい。黒色層25の厚さは、2.0μm以上10μm以下の範囲であることが好ましく、3.0μm以上6.0μm以下の範囲であることが更に好ましい。黒色層25の厚さを2.0μm以上とすることにより、第1層21と第2層22との接着強度を保持することができる。また、黒色層25の厚さを10μm以下とすることにより、近赤外線を効率よく透過することできる。
【0054】
[第3層]
第3層23は、エチレン−酢酸ビニルアルコール共重合体樹脂(EVA樹脂)、又はポリエチレン等のポリオレフィンを使用した背面封止材層14と、裏面保護シート20との接着性を向上させる機能を有しても良い。また、第3層23は、透明密着層であっても良い。第3層23には、第1層21で反射された近赤外線を透過するものであること、また、意匠性の要請より可視光を透過する透明若しくは半透明であるものであっても良い。このような観点から第3層23には、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等を用いることが好ましい。これらの樹脂のなかでも、とりわけ低密度ポリエチレン(LDPE)を好ましく用いることができる。なお、「近赤外線を透過する」とは、第3層23において波長750nm以上1500nm以下の全光線透過率が80%以上であることを意味する。また、「可視光線を透過する」とは、第3層23において波長380nm以上750nm以下の全光線透過率が80%以上であることを意味する。なお、第3層23の厚みは、例えば30μm以上120μm以下とすることが好ましく、40μm以上80μm以下とすることがより好ましい。
【0055】
[太陽電池モジュール用裏面保護シートの製造方法]
裏面保護シート20は、第1層21と第2層22の間に第4層26を設けるとともに、第2層22と第3層23の間に黒色層25を設け、これらの層をドライラミネート加工により製造することができる。
【0056】
[本実施の形態の作用]
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
【0057】
図1に示すように、本実施の形態による太陽電池モジュール10においては、受光面側から入射光L1が入射し、この入射光L1の一部が、透明前面基板11及び前面封止材層12を順次通過して太陽電池素子13に到達し、太陽電池素子13において発電を行う。
【0058】
一方、入射光L1のうちの一部は、太陽電池素子13に直接到達しない。とりわけ、図3に示すように、裏面保護シート20においては、太陽電池素子13に吸収されなかった太陽光(入射光L2)が第3層23側から入射する。入射光L2に含まれる近赤外線の多くは、第3層23、黒色層25、第2層22及び第4層26に吸収されることなく透過するため、第1層21まで到達する。一方、第1層21は近赤外線を反射するものであるため、第1層21まで到達した近赤外線の多くは、第4層26、第2層22、黒色層25及び第3層23に戻るように反射される。反射した近赤外線は、第4層26、第2層22、黒色層25及び第3層23を透過し、更に反射して太陽電池素子13に吸収される。第4層26、第2層22、黒色層25及び第3層23が近赤外線を吸収しないため、第4層26、第2層22、黒色層25及び第3層23での近赤外線吸収による太陽電池モジュール10の温度上昇が抑制される。この結果、太陽電池モジュール10の温度上昇による発電効率の低下を防ぐことができる。また、裏面保護シート20を用いることにより、太陽電池素子13に吸収される近赤外線量が増大する。この結果、太陽電池モジュール10の発電効率を向上させることができる。
【0059】
ここで、一般に太陽電池モジュール10用の封止材の多くは透明或いは半透明であるので、太陽電池モジュール10を透明前面基板11側から見た場合、太陽電池素子13が配置されていない隙間の部分については、第3層23及び第2層22を通して、黒色層25の色が見えることになる。また、太陽電池素子13については、表面が黒色である場合が多い。特に近年需要が増えている薄膜系の太陽電池素子については、ほとんどの製品においてその表面は黒色である。本実施の形態による裏面保護シート20は、黒色層25が黒色であるため、多くの太陽電池モジュール10、とりわけ、薄膜系の太陽電池素子を搭載した薄膜型の太陽電池モジュール10の外観を色ムラのない黒色に統一し、意匠性の面で好ましいものとすることができる。
【0060】
ところで、このような太陽電池モジュール10を使用している間、直射日光等により太陽電池モジュール10が加熱され、裏面保護シート20が局所的に高温(例えば100℃以上)に達する場合がある。とりわけ、黒色顔料としてペリレン系のものを用いた場合、裏面保護シート20が高温になった際、黒色層25に含まれる黒色顔料が、隣接する他の層に移行する現象(マイグレーション)が生じやすいことが判明した。
【0061】
これに対して本実施の形態においては、黒色層25は、可視光線を透過する第2層22と、可視光線を透過する第3層23とに挟まれている。このため、黒色層25の黒色顔料にマイグレーションが発生した場合であっても、第2層22及び第3層23中にそれぞれ移行した黒色顔料は、第2層22及び第3層23の内部に留まる(図4参照)。したがって、黒色顔料が背面封止材層14(受光面側)や第1層21(受光面の反対側)まで達することが抑えられる。この場合、第2層22及び第3層23はそれぞれ可視光線を透過するので、受光面側から見たとき、黒色層25だけでなく第3層23及び第2層22中に移行した黒色顔料の色も、併せて視認することができる。これにより、裏面保護シート20の外観の黒色の色味が変化することを抑え、裏面保護シート20全体としての意匠性が低下することが抑えられる。また、黒色顔料が第3層23を通過して背面封止材層14まで到達することがないので、黒色顔料の影響で太陽電池モジュール10の出力が低下することも抑えられる。
【0062】
以上説明したように、本実施の形態によれば、可視光線を透過する第2層22と可視光線を透過する第3層23との間に、ペリレン系顔料を含む黒色層25が配置されている。これにより、黒色層25の黒色顔料にマイグレーションが発生した場合であっても、マイグレーションによる影響を最小限に抑え、裏面保護シート20の全体としての色味の変化を抑制することができる。
【0063】
また、本実施の形態によれば、黒色層25は黒色接着剤層である。これにより、黒色層25を用いて第2層22及び第3層23を互いに接合することができる。
【0064】
また、本実施の形態によれば、第1層21と第2層22との間に、近赤外線及び可視光線を透過する第4層26が位置している。これにより、第1層21に向けて近赤外線を透過することができ、第1層21による近赤外線の反射効率を高め、太陽電池モジュール10の発電効率向上に寄与することができる。また、仮にマイグレーションによって黒色顔料が第4層26まで到達した場合であっても、受光面側から見て、第4層26中に移行した黒色顔料の色も視認することができるので、裏面保護シート20の外観の色味の変化を抑えることができる。
【0065】
また、本実施の形態によれば、第4層26は透明接着剤層である。これにより、第4層26を用いて第1層21及び第2層22を互いに接合することができる。
【0066】
[太陽電池モジュール用裏面保護シートの変形例]
上記において、第4層26と黒色層25との間に第2層22が直接介在されている場合を例にとって説明したが、これに限られるものではない。例えば、第4層26と黒色層25との間に、第2層22に加えて他の中間層を介在させても良い。この場合、他の中間層は近赤外線及び可視光線を透過するものであることが好ましい。
【0067】
また、上記において、第2層22と第3層23との間に黒色層25が位置している場合を例にとって説明したが、これに限られるものではない。図5に示すように、黒色層25は、第1層21と第2層22との間に位置していても良い。この場合、第4層26は、第2層22と第3層23との間に位置していても良い。このように、黒色層25が第1層21と第2層22との間に位置していることにより、マイグレーションにより黒色顔料が背面封止材層14側まで移行することをより確実に抑えることができる。なお、図5において、第1層21側へのマイグレーションを抑えるために、黒色層25と第1層21との間に他の中間層を介在させても良い。この場合、他の中間層は近赤外線及び可視光線を透過するものであることが好ましい。
【0068】
また、上記において、裏面保護シート20が1つの黒色層(黒色層25)を含む場合を例にとって説明したが、これに限られるものではない。裏面保護シート20は、2つの黒色層を含んでいても良い。例えば、図6に示すように、第1層21と第2層22との間に、第4層26に代えて追加の黒色層27を配置しても良い。この場合、追加の黒色層27は、第1層21と第2層22とを互いに接着する黒色接着剤層であっても良い。また、追加の黒色層27は、黒色層25と同一の構成を有していても良い。このように、裏面保護シート20が2つの黒色層(黒色層25及び追加の黒色層27)を有することにより、黒色層25及び追加の黒色層27のそれぞれに色ムラが生じている場合であっても、黒色層25及び追加の黒色層27の2層を重ね合わせることで、裏面保護シート20全体としての色ムラを低減し、意匠性の良好な黒色の裏面保護シート20を提供することができる。また、黒色層25及び追加の黒色層27のそれぞれに含まれる黒色顔料の成分量を低く抑えた場合であっても、裏面保護シート20全体としての十分な濃さの黒色を実現することができる。黒色層25及び追加の黒色層27のそれぞれに含まれる黒色顔料の成分量を低く抑えた場合には、濃度勾配による拡散が起こりに難くなるので、黒色顔料のマイグレーションを抑えることができる。なお、図6において、第1層21側へのマイグレーションを抑えるために、追加の黒色層27と第1層21との間に他の中間層を介在させても良い。この場合、他の中間層は近赤外線及び可視光線を透過するものであることが好ましい。
【0069】
また、上記において、第4層26、黒色層25及び追加の黒色層27は、それぞれ接着剤層である場合を例にとって説明したが、これに限られるものではない。第4層26、黒色層25及び追加の黒色層27の少なくとも一つは、接着剤層でない非接着剤層であっても良い。この場合、非接着剤層は、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等のフィルムを含んでいても良い。黒色層25又は追加の黒色層27が非接着剤層である場合、黒色層25又は追加の黒色層27は、上記フィルムに黒色顔料を含ませた黒色樹脂層であっても良い。また、上記において、黒色顔料が混ぜられた黒色層を例にとって説明したが、これに限られるものではない。黒色以外の色の顔料の一種類または複数種類を用いて、黒色や黒色以外の任意の色を得ても良い。
【0070】
また、上記において、黒色の層(黒色層25及び追加の黒色層27)を用いる場合を例にとって説明したが、これに限られるものではない。黒色層に代えて着色層を用いても良い。この着色層としては、着色された接着剤層(着色接着剤層)を用いても良い。着色層は、黒色に限らず、例えば黒色に近い暗色であっても良い。黒色に近い暗色としては、例えば青紫色、赤紫色、灰色であっても良い。あるいは、着色層は、暗色に限らず、裏面保護シート20に意匠性を付与するために任意の色付けがなされていても良い。
【0071】
[実施例]
次に、本実施の形態における具体的実施例について説明する。
【0072】
(裏面保護シートの作成)
実施例及び比較例の裏面保護シートをそれぞれ以下の通り作製した。
【0073】
(実施例)
図2に示す構成をもつ裏面保護シートを作製した。この場合、まず第1層、第2層及び第3層を準備した。第1層としては、酸化チタンを含有する厚さ50μmの耐加水分解性白色PETフィルムを用いた。第2層としては、厚さ125μmの透明PETフィルムを用いた。また第3層としては、厚さ60μmの透明LDPEフィルムを用いた。続いて、第1層と第2層との間に透明な第4層を設けるとともに、第2層と第3層との間に黒色層を設け、これらの層をドライラミネート加工することにより裏面保護シートを作製した。なお、黒色層は、ウレタン系の主成分樹脂にペリレン系の黒色顔料を含有させたものを用いた。黒色層に占めるペリレン系の黒色顔料の割合は20質量%とした。また、第4層は、上記黒色層から黒色顔料を除いたこと以外は黒色層と同様のものを使用した。第4層及び黒色層の厚さは、それぞれ4.5μmとした。
【0074】
(比較例)
第2層と第4層を設けなかったこと、以外は、実施例と同様にして、比較例の裏面保護シートを作製した。すなわち、比較例の裏面保護シートは、第1層と、第1層上の黒色層と、黒色層上の第3層とを含む3層の構成とした。
【0075】
次に、実施例及び比較例の裏面保護シートをそれぞれ150℃で48時間加熱することにより、黒色層に含まれる黒色顔料にマイグレーションを発生させた。
【0076】
その後、受光面の反対方向から第1層を観察した。この結果、実施例の裏面保護シートについては、第1層が当初の色(白色)を維持していることが観察された。一方、比較例の裏面保護シートについては、マイグレーションにより黒色顔料が第1層中に移行したため、第1層が薄紫色に変色してしまった。
【0077】
上記実施の形態および変形例に開示されている複数の構成要素を必要に応じて適宜組合せることも可能である。あるいは、上記実施の形態および変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0078】
10 太陽電池モジュール
11 透明前面基板
12 前面封止材層
13 太陽電池素子
14 背面封止材層
20 裏面保護シート
21 第1層
22 第2層
23 第3層
25 黒色層
26 第4層
27 追加の黒色層
【要約】      (修正有)
【課題】黒色の裏面保護シートにおける発熱を抑え、更に、反射光を太陽電池素子に入射させて、発電効率を向上させた太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】太陽電池モジュール用裏面保護シート20は、近赤外線を反射する第1層21と、第1層21よりも受光面側に位置するとともに近赤外線及び可視光線を透過する透明な第2層22と、第2層22よりも受光面側に位置するとともに近赤外線及び可視光線を透過する透明な第3層23と、を備えている。第1層21と第2層22との間には、近赤外線及び可視光線を透過する透明な第4層26が位置している。また第2層22と第3層23との間には、ペリレン系顔料を含む黒色層25が位置している。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6