特許第6604458号(P6604458)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6604458杭保持治具、杭保持治具アッセンブリ、及び、杭の位置を保持する施工方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6604458
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】杭保持治具、杭保持治具アッセンブリ、及び、杭の位置を保持する施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 13/00 20060101AFI20191031BHJP
   E02D 7/00 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   E02D13/00 Z
   E02D7/00 Z
【請求項の数】11
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2019-103927(P2019-103927)
(22)【出願日】2019年6月3日
【審査請求日】2019年6月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515277300
【氏名又は名称】ジャパンパイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】荒木 繁幸
(72)【発明者】
【氏名】福井 寿大
(72)【発明者】
【氏名】永沼 信人
【審査官】 彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3256884(JP,B2)
【文献】 特開昭63−197719(JP,A)
【文献】 実開昭55−67288(JP,U)
【文献】 実開昭52−119268(JP,U)
【文献】 実開昭57−101144(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 13/00 − 13/10
E02D 7/00 − 7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が杭に接続され他端が杭打機に接続される柱状のロッドに取り付けられている状態で、地面よりも上側で支持されて前記杭の落下を防止する杭保持治具であって、
前記ロッドの外周に取り付けられる第1保持片と、
前記ロッドの前記外周に取り付けられる第2保持片と、
前記第1保持片及び前記第2保持片を締結する第1締結具と
を備え、
前記第1保持片及び前記第2保持片は、それぞれ、
前記ロッドの前記外周に取り付けられる略円弧状のハーフパイプと、
前記ハーフパイプの下端となる弧状端から、前記ハーフパイプの中心軸に対して径方向外方に突出するフランジと、
前記ハーフパイプの上下方向に延びる左右1対のエッジのうち、一方のエッジから前記ハーフパイプの外側に突出する第1固定板と、
前記1対のエッジのうち、他方のエッジから前記第1固定板とは反対側に前記ハーフパイプの外側に突出する第2固定板と、
前記フランジと前記ハーフパイプの外周面との間に、前記中心軸に対して放射状に設けられた補強リブと
を有し、
前記第1保持片の前記ハーフパイプ及び前記第2保持片の前記ハーフパイプが前記ロッドの前記外周に取り付けられ、前記第1保持片の前記フランジと前記第2保持片の前記フランジとが前記中心軸の軸回りの周方向に互いに隣接しているとき、前記第1保持片の前記第1固定板と前記第2保持片の前記第1固定板とが対向し、前記第1保持片の前記第2固定板と前記第2保持片の前記第2固定板とが対向してそれぞれ前記第1締結具で締結されるように構成されており、
前記第1保持片及び前記第2保持片の前記ハーフパイプが前記ロッドの前記外周に取り付けられ、前記第1保持片及び前記第2保持片の前記第1固定板が前記第1締結具で締結され、前記第1保持片及び前記第2保持片の前記第2固定板が前記第1締結具で締結されている状態で前記杭打機と前記ロッドとの接続が解除されたとき、前記フランジを地面から所望の高さ位置に支持することで前記杭が接続された前記ロッドの落下を防止するように構成されている、杭保持治具。
【請求項2】
前記フランジの前記径方向外方の外縁はそれぞれ円弧状であり、
前記ハーフパイプの前記外周面と前記フランジの前記外縁との間の距離は、前記中心軸に対する径方向に沿って、前記ハーフパイプの前記外周面と前記補強リブの前記径方向外方の外縁との間の距離に対して、90%から110%の範囲内である、請求項1に記載の杭保持治具。
【請求項3】
前記第1締結具に隣接した位置に設けられ、前記第1保持片及び前記第2保持片を締結する第2締結具を備え、
前記第1固定板と前記ハーフパイプの前記外周面との間には、それぞれ、前記第1締結具と前記第2締結具との間を仕切るように構成された第1リブが設けられ、
前記第2固定板と前記ハーフパイプの前記外周面との間には、それぞれ、前記第1締結具と前記第2締結具との間を仕切るように構成された第2リブが設けられている、請求項1もしくは請求項2に記載の杭保持治具。
【請求項4】
前記ハーフパイプの前記外周面と前記第1固定板の外縁との間の距離は、前記中心軸に対する径方向に沿って、前記ハーフパイプの前記外周面と前記第1リブの前記径方向外方の外縁との間の距離に対して、90%から110%の範囲内であり、
前記ハーフパイプの前記外周面と前記第2固定板の外縁との間の距離は、前記中心軸に対する径方向に沿って、前記ハーフパイプの前記外周面と前記第2リブの前記径方向外方の外縁との間の距離に対して、90%から110%の範囲内である、請求項3に記載の杭保持治具。
【請求項5】
前記第1保持片を上側から見たとき、前記補強リブと前記第1リブとの間、及び、前記補強リブと前記第2リブとの間はそれぞれ離間し、
前記第2保持片を上側から見たとき、前記補強リブと前記第1リブとの間、及び、前記補強リブと前記第2リブとの間はそれぞれ離間している、請求項3もしくは請求項4に記載の杭保持治具。
【請求項6】
前記ハーフパイプの上下方向の長さは、前記ロッドの直径よりも大きい、請求項1ないし請求項5のいずれか1に記載の杭保持治具。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1に記載の杭保持治具と、
前記ロッドの前記外周に前記杭保持治具が取り付けられているときに、前記フランジと、地面との間に配置される支持具と
を備え、
前記杭打機と前記ロッドとが接続されているとき、前記支持具の上端を前記杭保持治具の前記フランジに当接させて前記杭保持治具を所望の高さで支持するとともに、前記杭保持治具が取り付けられた前記ロッドにより前記杭を所望の深さに支持し、前記杭保持治具が前記所望の高さで支持され、前記杭保持治具が取り付けられた前記ロッドにより、前記杭が前記所望の深さに支持された状態で前記杭打機と前記ロッドとの接続が解除されたとき、前記杭保持治具を地面から所望の高さで維持することで前記杭の落下を防止するように構成されている、杭保持治具アッセンブリ。
【請求項8】
前記支持具として、独立して前記フランジの支持位置を調整可能で、前記杭保持治具の前記フランジを前記支持位置でそれぞれ支持可能な複数のジャッキが用いられる、請求項7に記載の杭保持治具アッセンブリ。
【請求項9】
請求項7もしくは請求項8に記載の杭保持治具アッセンブリを用いて、前記杭打機に接続された前記ロッドの位置、及び、前記ロッドの下端に前記杭の杭頭が連結された前記杭の位置を保持する施工方法であって、
杭穴を囲むように地面に基台が載置された状態で前記杭打機を動かして、前記杭打機に接続された前記ロッド、前記ロッドの前記外周に取り付けられた前記杭保持治具、及び、前記杭を移動させ、前記杭の杭先端位置を前記杭穴の底面から上側に離間させた状態で前記杭の前記杭頭を地面に対して前記所望の深さに配置するとともに、前記杭保持治具の前記フランジを地面に対して前記所望の高さに配置すること、
前記基台に複数の受台を配置し、前記複数の受台を前記ロッドに隣接させること、
前記複数の受台と前記フランジとの間に前記支持具をそれぞれ配置すること、
前記支持具の高さをそれぞれ調整して、前記支持具で、前記フランジをそれぞれ支持すること
を含む、施工方法。
【請求項10】
前記支持具で、前記フランジをそれぞれ支持した後、前記杭打機と前記ロッドとの間の接続を解除することを含む、請求項9に記載の施工方法。
【請求項11】
前記杭打機を動かして前記ロッド及び前記杭を前記ロッドの長手軸の軸回りに回したとき、前記フランジに対する、前記支持具の前記高さをそれぞれ変更することを含む、請求項9もしくは請求項10に記載の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、杭保持治具、杭保持治具アッセンブリ、及び、杭の位置を保持する施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
杭の下端の杭先端位置と杭穴の底面との間に距離を取る工法が用いられる場合がある。この工法が採用される場合、杭を所望の位置まで埋設して固定するため、例えば特許文献1に開示されている杭保持治具が用いられることがある。
杭保持治具は、杭打機に接続されるロッドの外周に1対のハーフパイプが取り付けられている。ロッドの下端で杭の杭頭を保持しながら杭打機を用いて杭を杭穴に対して所望の深さに埋め込んでいった後、地面に載置された基台に杭保持治具の下面が載置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3256884号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された杭保持治具が地面上の基台に載置された後、杭打機からロッドの接続が解除された場合、杭穴内の根固め液等の硬化具合によっては、杭及びロッドの重量の大半を基台に載置された杭保持治具で受けることになる可能性がある。このように、数十トンになり得る杭及びロッドの重量によっても、杭保持治具を確実に支持する必要がある。
【0005】
この発明は、杭及びロッドの重量を受ける際にも、確実に支持される杭保持治具、杭保持治具アッセンブリ、及び、杭の位置を保持する施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様に係る、一端が杭に接続され他端が杭打機に接続される柱状のロッドに取り付けられている状態で、地面よりも上側で支持されて前記杭の落下を防止する杭保持治具は、前記ロッドの外周に取り付けられる第1保持片と、前記ロッドの前記外周に取り付けられる第2保持片と、前記第1保持片及び前記第2保持片を締結する締結具とを備える。前記第1保持片及び前記第2保持片は、それぞれ、前記ロッドの前記外周に取り付けられる略円弧状のハーフパイプと、前記ハーフパイプの下端の弧状端から、前記ハーフパイプの中心軸に対して径方向外方に突出するフランジと、前記ハーフパイプの上下方向に延びる左右1対のエッジのうち、一方のエッジから前記ハーフパイプの外側に突出する第1固定板と、前記1対のエッジのうち、他方のエッジから前記第1固定板とは反対側に前記ハーフパイプの外側に突出する第2固定板と、前記フランジと前記ハーフパイプの外周面との間に、前記中心軸に対して放射状に設けられた補強リブとを有する。前記第1保持片の前記ハーフパイプ及び前記第2保持片の前記ハーフパイプが前記ロッドの前記外周に取り付けられ、前記第1保持片の前記フランジと前記第2保持片の前記フランジとが前記中心軸の軸回りの周方向に互いに隣接しているとき、前記第1保持片の前記第1固定板と前記第2保持片の前記第1固定板とが対向し、前記第1保持片の前記第2固定板と前記第2保持片の前記第2固定板とが対向してそれぞれ前記締結具で締結されるように構成されている。前記第1保持片及び前記第2保持片の前記ハーフパイプが前記ロッドの前記外周に取り付けられ、前記第1保持片及び前記第2保持片の前記第1固定板が前記第1締結具で締結され、前記第1保持片及び前記第2保持片の前記第2固定板が前記第1締結具で締結されている状態で前記杭打機と前記ロッドとの接続が解除されたとき、前記フランジを地面から所望の高さ位置に支持することで前記杭が接続された前記ロッドの落下を防止するように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、杭及びロッドの重量を受ける際にも、確実に支持される杭保持治具、杭保持治具アッセンブリ、及び、杭の位置を保持する施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A図1Aは、一実施形態に係る杭保持治具の概略的な正面図である。
図1B図1Bは、一実施形態に係る杭保持治具の概略的な左側面図である。
図1C図1Cは、一実施形態に係る杭保持治具の概略的な平面図である。
図1D図1Dは、一実施形態に係る杭保持治具の概略的な下面図である。
図2A図2Aは、杭保持治具を杭打機に接続されたロッドの外周の適宜の位置に固定した状態で、ロッドの下端の回転キャップに杭の杭頭をキャッチングさせた状態を示す概略図である。
図2B図2Bは、杭の杭先端位置を杭穴の底面に近づけ、杭頭を地面に対して所望の深さに配置した状態で、杭打機でロッド及び杭の位置を保持し、杭保持治具の下側と基台との間に、杭保持治具の下面を支持する伸縮具(支持具)を配置した状態を示す概略図である。
図2C図2Cは、図2Bに示す伸縮具を調整して、伸縮具の上端の支持位置で杭保持治具の下面を支持した状態を示す概略図である。
図2D図2Dは、図2Cに示す伸縮具の上端の支持位置で杭保持治具の下面を支持した状態で、杭打機とロッドとの接続を解除して、地面に対してロッド及び杭の位置を維持している状態を示す概略図である。
図3図3は、杭穴に対するロッド、杭、杭保持治具、基台、受台、伸縮具の、図2Dを拡大して示した概略図である。
図4A図4Aは、図2D及び図3に示す状態を鉛直方向の上側から見た状態を示す概略図である。
図4B図4Bは、基台に対して図4Aに示すロッド、杭、杭保持治具を図4Aに示す例に対して略90°回転させた状態で、杭保持治具の下面を伸縮具の上端の支持位置で支持している状態を示す概略図である。
図4C図4Cは、基台に対して図4Aに示すロッド、杭、杭保持治具を、図4Aに示す例に対して略30°回転させた状態で、杭保持治具の下面を伸縮具の上端の支持位置で支持している状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1Aから図4Cを用いて、杭保持治具10及び伸縮具(支持具)110を有する杭保持治具アッセンブリの一実施形態について説明する。
【0010】
本実施形態に係る杭保持治具10(図1Aから図4C参照)は、一端(下端)が杭520に着脱可能に接続され、他端(上端)が杭打機500(図2Aから図2C参照)に着脱可能に接続される鋼鉄製で柱状のロッド510(図2Aから図4C参照)の外周に取り付けられて用いられる。ロッド510は杭打機500に接続されて使用される際に、長手軸(中心軸)Lが上下方向(鉛直方向)に向けられる。ロッド510の下端には杭520の杭頭522を接続(キャッチ)可能な回転キャップ512が配設されている。杭打機500を用いてロッド510を動かすと、ロッド510及び杭520が長手軸Lに沿って上下方向に沿って移動する。杭打機500を用いてロッド510を回転させると、ロッド510及び杭520が長手軸Lの軸回りに回転する。このため、ロッド510には、上下方向及び長手軸Lが規定される。
【0011】
杭保持治具10はロッド510の上下方向の向きに合わせて、ロッド510の外周に取り付けられる。杭保持治具10がロッド510の外周に取り付けられたとき、杭保持治具10には、中心軸Cが規定される。杭保持治具10は、中心軸Cに対して対称に形成されていることが好適である。
【0012】
図1Aから図1Dに示すように、杭保持治具10は、第1保持片12と、第2保持片14とを有する。第1保持片12及び第2保持片14は概略、円筒を半割れ状にした状態に形成されている。杭保持治具10は、第1保持片12及び第2保持片14を組み合わせた状態で略円筒状となる第1保持片12及び第2保持片14の下端に径方向外方に突出するフランジ24a,24b及び適宜の補強リブ30a,30bが形成されている。杭保持治具10は、図3から図4Cに示すように、第1保持片12と、第2保持片14とを固定する、第1締結具16、第2締結具18及び第3締結具20を有する。ここでは、杭保持治具10が第1締結具16、第2締結具18及び第3締結具20の3つの締結具を有する例について説明する。また、ここでは、第1締結具16と第2締結具18とは離間し、第1締結具16と第2締結具18の間に第3締結具20が配設されているものとする。杭保持治具10は、第1締結具16及び第2締結具18の2つの締結具のみを有していてもよく、4つなどさらに多くの締結具を有していてもよい。なお、本実施形態では第1締結具16は、単数の締結具として説明するが、複数の締結具を有していてもよい。
【0013】
第1保持片12と第2保持片14とは同一の大きさで同一形状に形成されていることが好適である。第1保持片12及び第2保持片14は、例えば鋼鉄製であることが好適である。第1保持片12及び第2保持片14は、杭520(図2Aから図3参照)が予め形成された杭穴530に入れられた状態で、地面Gよりも上側でロッド510及び杭520の重力に耐え、ロッド510及び杭520の上下方向の位置を保持可能であれば、鋼材に限られず、例えばFRPなど、鋼材より軽量な樹脂材等の適宜の素材が用いられてもよい。
【0014】
本実施形態では、第1締結具16、第2締結具18及び第3締結具20として、それぞれ適宜の径のボルト92及びナット94が用いられる例について説明する。その他、後述する第1固定板26a,26bの間、第2固定板28a,28bの間を確実に固定可能であれば、複数のクランプ(図示せず)を用いるなど、適宜の締結具が使用され得る。その他、第1固定板26a,26bの間、第2固定板28a,28bの間は、適宜の固定ピン(図示せず)によっても固定可能である。
【0015】
杭打機500に接続されるロッド510の適宜の位置の横断面は円形状であることが多い。ここでは説明の簡略化のため、ロッド510が円柱状であり、ロッド510の横断面が真円であるものとして説明する。ここでは、ロッド510の外周に杭保持治具10が適切に取り付けられたとき、ロッド510の長手軸Lと、杭保持治具10の中心軸Cとが一致するものとする。すなわち、杭保持治具10がロッド10の外周に取り付けられている状態では、杭保持治具10の中心軸Cとロッド510の長手軸Lとは同軸となるものとする。
【0016】
上述したように、第2保持片14は第1保持片12と同じ大きさ及び形状に形成されている。第1保持片12に対して第2保持片14は中心軸Cに対して対称に形成されている。このため、ここでは第1保持片12の構造について説明し、第2保持片14の構造の説明を適宜に省略する。第1保持片12の構造を示す場合、必要に応じて参照符号に小文字「a」を付し、第2保持片14の構造を示す場合、必要に応じて参照符号に小文字「b」を付すものとする。
【0017】
第1保持片12は、ハーフパイプ22aと、フランジ24aと、第1固定板26aと、第2固定板28aと、複数の補強リブ30aと、複数の第1リブ32aと、複数の第2リブ34aとを有する。ここでは、フランジ24a、第1固定板26a、及び、第2固定板28aは、ハーフパイプ22aに対して例えば溶接により固定されている。補強リブ30aは、ハーフパイプ22aの外周面44a及びフランジ24aの上面62aに例えば溶接により固定されている。複数の補強リブ30aは、中心軸Cに対してそれぞれ放射状に設けられている。
【0018】
ハーフパイプ22aは、内周面42aと、外周面44aと、1対の弧状端46a,48aと、1対の弧状端46a,48aの間に形成された1対のエッジ50a,52aとを有する。ハーフパイプ22aの内周面42a及び/又は外周面44aにより、中心軸Cが規定される。すなわち、第1保持片12のハーフパイプ22a及び第2保持片14のハーフパイプ22bは、それぞれ中心軸Cを規定する。1対のエッジ50a,52aは、中心軸Cに平行な状態にあることが好適である。1対の弧状端46a,48aは略円弧の一部として形成されている。1対の弧状端46a,48aは、ハーフパイプ22aの内周面42aに連続した内周弧、及び、ハーフパイプ22aの外周面44aに連続した外周弧をそれぞれ有する。1対の弧状端46a,48aは、中心軸Cに対して180°よりも小さい。1対の弧状端46a,48aが形成する面は、互いに平行である。
【0019】
ハーフパイプ22aの内周面42aは、ロッド510の外周にほぼ沿った形状に形成されている。具体的には、ハーフパイプ22aの内周面42aは、ハーフパイプ22aの内周面42aのうちエッジ50a,52a間の中央の位置がロッド510の外周に当接された状態で、エッジ50a,52aとロッド510の外周との間にそれぞれ僅かな隙間(例えば、2mm〜3mm)が存在する形状に形成されている。このため、ハーフパイプ22aの内周面42a及び/又は外周面44aは、実際には、エッジ50a,50b間の距離を長径とし、エッジ50a,50bを通る長軸と直交する直線を短軸とする略楕円状に形成されている。この場合、第1固定板26a,26bの間、第2固定板28a,28bの間をそれぞれボルト92及びナット94により締結させたときに、ハーフパイプ22aのうち、エッジ50a,52aの近傍の位置を弾性変形させて、ハーフパイプ22aの内周面42aをロッド510の外周に当接させやすい。
【0020】
フランジ24aは、ハーフパイプ22aの1対の弧状端46a,48aのうち、下端となる位置に固定されている。フランジ24aは、ハーフパイプ22aの外周面44aに対して径方向外方に突出し、上面(補強リブ形成面)62a及び下面(補強リブ非形成面)64aを有する。フランジ24aの上面62a及び下面64aは、それぞれハーフパイプ22aの内周面42a及び外周面44aに直交する面として形成されていることが好適である。フランジ24aの上面62a及び下面64aは、それぞれ平面であることが好適である。
【0021】
フランジ24aの内縁及び外縁66aは、ハーフパイプ22aと同様に、中心軸Cに対して180°よりも小さい内周弧及び外周弧をそれぞれ有する。フランジ24aの内縁及び外縁66aはそれぞれ略円弧状である。
【0022】
フランジ24aの上面62aは、ハーフパイプ22aの外周面44aとフランジ24aの外縁66aと固定板26a,28aとにより決まる面を有する。フランジ24aの下面64aは、上面62aとは異なり、ハーフパイプ22aの内周面42aとフランジ24aの外縁66aと固定板26a,28aとにより決まる面を有する。
フランジ24aの上面62aの中心軸Cに対する径方向に沿う距離Dftは、フランジ24aの下面64aの中心軸Cに対する径方向に沿う距離Dfuよりも小さい。なお、フランジ24aの下面64aの径方向距離Dfuは、例えばジャッキ112などの伸縮具110の上端(支持位置)114が適宜の面積で接触可能な大きさに形成されている。伸縮具110は、1又は複数により、例えばロッド510、杭保持治具10、及び、杭520を合わせた重量を支持可能なものが用いられる。伸縮具110として適宜のジャッキ112を用いる場合、距離Dfuは、例えば100mm以上となる。
【0023】
本実施形態では、ジャッキ112の上端114の大きさと、フランジ24aの下面64aにジャッキ112の上端114を接触させたときの、フランジ24aの上面62aに補強リブ30aを配置した状態でのフランジ24aの変形量とを考慮して、フランジ24aの大きさ、素材、厚さ等が設定されている。
なお、ジャッキ112の種類はジャーナルジャッキなど、種々のものが使用される。
【0024】
ロッド510及び杭保持治具10を上側から見たとき、図4Aから図4Cに示すように、伸縮具110の上端114の一部がフランジ24aの外縁66aから中心軸Cに対して径方向外方にはみ出していてもよい。伸縮具110が中心軸を有する場合、伸縮具110の中心軸がフランジ24a,24bの下面64a,64bに交差する状態にあれば良い。
【0025】
図1B中、ハーフパイプ22aの下端とフランジ24aとが嵌合されて溶接されている例について示している。ハーフパイプ22aの下端の外周面44aにフランジ24aの内縁が溶接等により固定されていてもよい。また、ハーフパイプ22aの下端が、フランジ24aの内縁上に載置された状態で、両者が溶接等により固定されていてもよい。
【0026】
補強リブ30aは、ハーフパイプ22aの外周面44aから中心軸Cに対して径方向外方の位置に外縁を有する。ハーフパイプ22aの外周面44aと補強リブ30aの外縁との間の距離Dr1は、距離Dftと同じか、距離Dftよりもわずかに小さいことが好適である。なお、距離Dr1は、距離Dftの90%から110%の範囲内であるなど、補強リブ30aによってフランジ24aの変形を適切に抑制可能であればよい。
【0027】
第1固定板26a及び第2固定板28aは、それぞれ略矩形状に形成されている。第1固定板26aはハーフパイプ22aの一方のエッジ50aからハーフパイプ22aの外側に向かって突出している。第2固定板28aはハーフパイプ22aの他方のエッジ52aからハーフパイプ22aの外側に向かって突出している。第2固定板28aは、中心軸Cに対して第1固定板26aとは反対側に突出する。第1固定板26a及び第2固定板28aはそれぞれ中心軸Cに平行な1対の面を有する状態に形成されていることが好適である。
【0028】
第1固定板26aは、第1リブ32aが形成された非対向面72aと、第2保持片14の第1固定板26bに対向する対向面74aと、非対向面72a及び対向面74aを貫通する複数のボルト穴76とを有する。非対向面72a及び対向面74aは杭保持治具10がロッド510に適切に取り付けられたときに、中心軸Cに平行であることが好適である。
なお、第1固定板26aの非対向面72aと、第2固定板28aの後述する非対向面82aとは平行であることが好適である。第1固定板26aの対向面74aと、第2固定板28aの後述する対向面84aとは平行であることが好適である。
本実施形態では、第1固定板26aは、3つのボルト穴76を有する。第1固定板26aに長さ(高さ)L0、幅W0、厚さTを規定したとき、3つのボルト穴76は、第1固定板26aのうち、第1固定板26aの長さを規定する方向に沿って、幅W0の例えば中央の位置に形成されている。図1Bに示すように、ボルト穴76の中心が、固定板26aの幅W0の中央になくてもよく、多少のずれは許容される。すなわち、ボルト穴76は、第1固定板26aの幅の中央の位置に形成されているだけでなく、中央の位置よりもハーフパイプ22aのエッジ50aに対して近い位置にあってもよく、中央の位置よりもハーフパイプ22aのエッジ50aに対して遠い位置にあってもよい。
【0029】
なお、長さL0は、ロッド510の外径(=2R)よりも大きいことが好適である。すなわち、ハーフパイプ22aの上下方向の長さは、ロッド510の直径よりも大きい。この場合、第1保持片12及び第2保持片14でロッド510の外周の周長に対する接触面積だけでなく、中心軸Cに平行な成分との接触面積をより大きくすることができる。
【0030】
3つのボルト穴76の径は同一であることが好適である。ボルト穴76は、等間隔L1,L1に形成されていることが好適である。なお、上側のボルト穴76の中心と、固定板26aの上端との距離L2は、下側のボルト穴76の中心と、固定板26aの下端との距離L3よりも小さいことが好適である。すなわち、下側のボルト穴76の中心と、固定板26aの下端との距離L3は、距離L2よりも大きい。このため、下側のボルト穴76にボルト92及びナット94を固定するのに適宜の工具を用いる際に、作業性が低下するのが抑制されている。
【0031】
ボルト穴76は2つであってもよい。この場合、3つのボルト穴76が形成されている場合よりもボルト穴76同士の距離が離されている。2つのボルト穴76は、上側及び下側に離間されている。第1リブ32aは、第1固定板26aとハーフパイプ22aの外周面44aとの間に、複数のボルト穴76(第1の締結具16、第2締結具18及び第3締結具20)のうち、隣接するボルト穴76(締結具16,18間及び締結具18,20間)の間を仕切るように構成されている。
ボルト穴76は、第1固定板26a,26bが適切に対向しているときに、同一軸上にある。
【0032】
第1リブ32aは、ハーフパイプ22aの外周面44a及び第1固定板26aのうち第2保持片14に対向しない非対向面72aに例えば溶接により固定されている。第2リブ34aは、ハーフパイプ22aの外周面44a及び第2固定板28aのうち第2保持片14に対向しない非対向面82aに例えば溶接により固定されている。
【0033】
第1リブ32aは、特に、上側のボルト穴76と中間位置のボルト穴76との中間、及び、中間位置のボルト穴76と下側のボルト穴76との中間にそれぞれ固定されている。すなわち、第1リブ32aは、第1固定板26aとハーフパイプ22aの外周面44aとの間に、締結具16,18,20のうち、隣接する締結具16,18間、及び、締結具18,20間を仕切るように構成されている。第1リブ32aはそれぞれ略三角形の板状である。第1リブ32aの一部は、ハーフパイプ22aの外周面44aに固定される曲面に形成されている。そして、第1リブ32aにより、第1固定板26aの変形が抑制されている。
【0034】
第1リブ32aは、ハーフパイプ22aの外周面44aから中心軸Cに対して径方向外方の位置に外縁を有する。ハーフパイプ22aの外周面44aと第1リブ32aの外縁との間の距離Dr2は、固定板26aの径方向に沿う幅W0よりもわずかに小さいことが好適である。なお、距離Dr2は、幅W0の90%から110%の範囲内であるなど、第1リブ32aによって第1固定板26aの変形を適切に抑制可能で、締結具16,18,20に対して後述する工具を適切に用いることが可能であればよい。すなわち、ハーフパイプ22aの外周面44aと第1固定板26aの外縁との間の幅(距離)W0は、中心軸Cに対する径方向に沿って、ハーフパイプ22aの外周面44aと第1リブ32aの径方向外方の外縁との間の距離Dr2に対して、90%から110%の範囲内であることが好適である。
【0035】
第1固定板26aと第1リブ32aとの関係と同様に、第2固定板28aには第2リブ34aが設けられている。図1B中に示すように、第2リブ34aは第1リブ32aと左右対称に形成されていることが好適である。第2固定板28aは、第2リブ34aが形成された非対向面82aと、第2保持片14の第2固定板28bに対向する対向面84aと、非対向面82a及び対向面84aを貫通する複数のボルト穴86とを有する。第2固定板28aの非対向面82aは第1固定板26aの非対向面72aと同一平面上にあり、第2固定板28aの対向面84aは第1固定板26aの対向面74aと同一平面上にあることが好適である。また、第1固定板26aの非対向面72a及び対向面74a、及び、第2固定板28aの非対向面82a及び対向面84aは、フランジ24aの上面62a及び下面64aに垂直である。
ボルト穴86は、第2固定板28a,28bが適切に対向しているときに、同一軸上にある。
【0036】
上述した補強リブ30aは、フランジ24aの上面62aに、等間隔に、それぞれ溶接により固定されている。本実施形態では、第1固定板26aから第2固定板28aに向かって、中心軸Cに対して、略45°、略90°、略135°ずらした位置に形成されている。補強リブ30aは、それぞれ略三角形の板状である。
【0037】
図1Cに示すように、杭保持治具10の第1保持片12を上側から見たとき、補強リブ30aと第1リブ32aとは離間している。同様に、補強リブ30aと第2リブ34aとは離間している。このため、ボルト穴76,86にボルト92及びナット94を固定する際に用いられるスパナ/レンチなどの適宜の工具と、補強リブ30a、第1リブ32a、第2リブ34aとが干渉するのが抑制されている。
【0038】
ここで、図1Aから図1Dに示す杭保持治具10の第1保持片12の寸法を例示する。
ロッド510の外径(直径)に応じて変更されるが、ハーフパイプ22aの内周面42aの内径(直径)は、例えば260mmから320mmである。ハーフパイプ22aの内周面42aの内径(直径)は、一例として269mmである。
第1保持片12の高さは一例として300mmである。ハーフパイプ22aの内周面42aと外周面44aとの間の板厚は19mmである。
ボルト穴76,86の径はそれぞれ24mmである。
フランジ24aのうち、ハーフパイプ22aの内周面42aとフランジ24aの外縁66aとの間は、100mmである。
補強リブ30aは、フランジ24aの上面62aに中心軸Cに対して径方向に沿って固定される位置の長さが90mmであり、ハーフパイプ22aの外周面44aに中心軸Cに平行な方向に沿って固定される位置の長さが90mmである。
第1固定板26aは、一例として、高さL0:278mm×幅W0:86mm×厚さT:22mmに形成されている。3つのボルト穴76は、90mm(=L1)間隔である。上側のボルト穴76は、第1固定板26aの上端から45mm(=L2)の位置に、幅の中央の位置に26mm径に形成されている。下側のボルト穴76は、第1固定板26aの下端から53mm(=L3)の位置に、幅の中央の位置(W1=W2=86mm)に26mm径に形成されている。ボルト穴76には、例えばM24のボルト92が挿入される。中間位置のボルト穴76は、上側のボルト穴76及び下側のボルト穴76からそれぞれ90mm離れた位置に、幅の中央の位置に26mm径に形成されている。
【0039】
第1リブ32aは、第1固定板26aの非対向面72aから、非対向面72aに対して遠位の位置までの距離が60mmであり、非対向面72aの幅に沿う長さDr2が略80mmである。
【0040】
なお、ロッド510の外径は、一例として、267mmから315mm程度である。ここではロッド510の外径が272mmであるものとする。
【0041】
各鋼材の板厚は20mm程度である。ハーフパイプ22aの左右1対のエッジ50a,52aの長さは例えば300mm程度であり、ロッド510の外径よりも大きく形成されている。1対のエッジ50a,52a間の距離は、269mmである。
【0042】
ボルト穴76,86は、M24である。ハーフパイプ22aの内周面42aとフランジ24aの外縁66aとの間の距離Dfuは略100mmである。このため、フランジ24aの内縁に連続するハーフパイプ22aの内周面42aとフランジ24aの外縁66aとの間の距離は、略100mmをこえる。
【0043】
フランジ24a,24bの下面64a,64bはそれぞれ、上下方向に伸縮し、数トンから数十トン以上の重量物を支持可能な複数の伸縮具110に支持される。ここでは、伸縮具110として、適宜のジャッキ112を用いる例について説明する。なお、本実施形態のジャッキ112は、それぞれ、十数トンから数十トン程度の耐荷重を有するものが用いられることが好適である。ジャッキ112を用いる他、伸縮具(支持具)110として適宜の大きさのブロックを積み上げることで地面Gに対する高さを規定し、ジャッキ112の代わりとしてもよい。
【0044】
本実施形態に係るフランジ24aの下面64aは、ハーフパイプ22aの内周面42aに沿う内縁と外縁66aとの距離Dfuが略100mmに形成されている。これは、適宜のジャッキ112の上端114で支持されるのに十分な大きさである。
【0045】
(作業手順(施工方法))
次に、ロッド510の外周への杭保持治具10の固定方法、及び、杭穴530への杭520の建て込みを行った後、杭保持治具アッセンブリを用いて、ロッド510及び杭520の上下方向位置を維持する施工方法について説明する。
【0046】
杭打機500にロッド510が接続された場合、ロッド510は上下方向に延びている。杭打機500に接続されたロッド510の外周のうち、ロッド510の下端の回転キャップ512から所望の距離だけ上側に離れた位置に、フランジ24a,24bが下側に配置されるように杭保持治具10を取り付ける。特に、杭保持治具10のフランジ24a,24bの下面64a,64bを、ロッド510の回転キャップ512から所望の距離だけ離れた位置の外周に固定する。なお、ロッド510の外周に対する杭保持治具10の中心軸Cの軸回り方向の向きを気にする必要はない。
【0047】
ここで、本実施形態に係る杭保持治具10をロッド510の外周に取り付ける取り付け作業について説明する。
【0048】
ロッド510の外周に杭保持治具10を取り付ける際、ロッド510の長手軸Lを上下方向(鉛直方向)に配置する。又は、ロッド510の長手軸Lを地面Gに水平又はそれに近い状態に配置してもよい。ここでは、説明の簡略化のため、ロッド510の長手軸Lを上下方向(鉛直方向)に配置した状態で、ロッド510の外周に杭保持治具10を取り付けるものとする。
【0049】
ロッド510の外周に杭保持治具10を取り付ける際、杭保持治具10は、ロッド510の外周に長手軸Lを挟むように第1保持片12及び第2保持片14を対向させる。すなわち、第1の保持片12をロッド510の外周に取り付けるとともに、第2の保持片14をロッド510の外周に取り付ける。このとき、ハーフパイプ22a,22bの内周面42a,42bをロッド510の外周に沿って配置する。ロッド510の回転キャップ512に近い位置(下側)に杭保持治具10のフランジ24a,24bを配置する。第1保持片12のハーフパイプ22aの中心軸Cと、第2保持片14のハーフパイプ22bの中心軸Cとが一致してもよく、ずれていてもよい。ここでは説明の簡略化のため、第1保持片12のハーフパイプ22aの中心軸Cと、第2保持片14のハーフパイプ22bの中心軸Cとが一致し、杭保持治具10が1つの中心軸Cを有するものとして説明する。第1保持片12のフランジ24aと第2保持片14のフランジ24bとを中心軸Cの軸回りの周方向に隣接させる。また、第1固定板26a,26bを対向させるとともに、第2固定板28a,28bを対向させる。この状態で、第1固定板26a,26bを3つの締結具16,18,20(それぞれボルト92及びナット94)を用いて固定するとともに、第2固定板28a,28bを3つの締結具16,18,20(それぞれボルト92及びナット94)を用いて固定する。すなわち、第1保持片12及び第2保持片14を締結具16,18,20で締結する。このとき、杭保持治具10の下端は、2つのフランジ24a,24bにより、中心軸Cに垂直な略円環となる。なお、第1保持片12と第2保持片14とはそれぞれ締結具16,18,20で締結されているが、第1保持片12と第2保持片14との直接的な接触はなく、離間している。このとき、第1保持片12のハーフパイプ22aの中心軸C、第2保持片14のハーフパイプ22bの中心軸C、及び、ロッド510の長手軸Lが一致する。
【0050】
ロッド510の外周に対する杭保持治具10の脱落を確実に防止するため、杭保持治具10を、それぞれ適宜の強度を有する6つの締結具16,18,20で強固に固定する。対向する第1固定板26a,26bを3か所で固定する締結具16,18,20、対向する第2固定板28a,28bを3か所で固定する締結具16,18,20は、中心軸Cに平行な軸に沿って上下方向に適宜の間隔の位置にある。第1固定板26a,26bにそれぞれ形成された複数のリブ32a,32bは、締結具16,18,20を締結するスパナやレンチ等の工具の作業を許容する間隔、及び、ハーフパイプ22a,22bの外周面44a,44bに対する突出量に形成されている。同様に、第2固定板28a,28bにそれぞれ形成された複数のリブ34a,34bは、締結具16,18,20を締結する工具の作業を許容する間隔、及び、ハーフパイプ22a,22bの外周面44a,44bに対する突出量に形成されている。このため、ロッド510の外周に対して杭保持治具10の上側部位の保持力、下側部位の保持力、上側部位及び下側部位の間の中間部位の保持力を、それぞれ適切に、強固にすることができる。
【0051】
なお、ロッド510の長手軸Lに直交する断面が真円であると仮定すると、締結具16,18,20による締結(締め付け)を考慮して、ハーフパイプ22a,22bの内周面42a,42bは真円の半円よりも、わずかにエッジ50a,52a間、エッジ50b,52b間の幅がロッド510の外周面よりも大きく形成されている。締結具16,18,20の締結により、ハーフパイプ22a,22bの内周面42a,42bが、弾性変形してロッド510の外周に密着する。
【0052】
そして、ロッド510の外周に対し、締結具16,18,20によって、杭保持治具10の上側部位、下側部位、及び、中間部位の保持力を、バランスさせることができる。
【0053】
なお、固定板26a,26bに対して1つの締結具であり、固定板28a,28bに対して1つの締結具である場合、ロッド510に対して第1保持片12及び第2保持片14の下端や、第1保持片12及び第2保持片14の上端が片当たりする可能性がある。この場合、ロッド510に無理な負荷がかけられるおそれがある。これに対して、本実施形態の杭保持治具10では、対向する固定板26a,26bに3つなど複数の締結具16,18,20でロッド510の外周に対する保持力をバランスさせ、対向する固定板28a,28bに3つなど複数の締結具16,18,20でロッド510の外周に対する保持力をバランスさせている。このため、ロッド510の外周に対して、杭保持治具10の内周面42a,42bをより多くの面積に接触させることができる。
【0054】
第1リブ32a,32bは締結具16,18,20の締結によって第1固定板26a,26bが変形しすぎるのを抑制する。第2リブ34a,34bは締結具16,18,20の締結によって第2固定板28a,28bが変形しすぎるのを抑制する。このため、ボルト92及びナット94が止まる範囲が適宜に設定される。したがって、杭保持治具10は、それぞれ複数の締結具16,18,20を用いて、ロッド510の外周の所望の位置に、所望の締め付け具合に取り付けられる。
【0055】
採掘作業を行った杭穴530に対して杭520を建て込み、杭520を地面Gに対して所望の深度に定着させる一連の作業について説明する。
【0056】
カンザシやロッド受け台と称されるコ字状の基台540を、杭穴530の入り口となる地面Gに載置する。基台540は例えば鋼鉄で形成されている。このとき、基台540の1対の延出部542,544間の距離は、杭520の外径よりも大きく、かつ、回転キャップ512の外径よりも大きい。なお、基台540の1対の延出部542,544間には、1対の延出部542,544を連結する連結板541が固定されていることが好適である。
【0057】
基台540を地面Gに配置する場合、杭穴530を囲むように基台540の延出部542,544を配置する。杭520が適切に杭穴530に建て込みされるのであれば、杭穴530の縁部の上側に延出部542,544が配置されてもよい。
【0058】
基台540の上面は水平であることが好適であるが、傾いていてもよい。1対の延出部542,544の上面は水平であることが好適であるが、傾いていてもよい。
【0059】
本実施形態に係る杭保持治具アッセンブリ(杭保持治具10及び伸縮具110)は、杭520の下端の杭先端位置524と杭穴530の底面532との間に距離を取る工法に用いられる。このため、杭穴530の地面Gから底面532までの採掘長を適宜にし、杭穴530の底面532は、杭520の杭先端位置524よりも下側になる。
【0060】
杭穴530の底面532まで杭穴530を採掘したら、採掘底に根固め液を注入し、根固め部534を築造する。また、杭520の周囲に満たされ、杭520を固定する杭周固定液を注入する。このとき、根固め部534が杭穴530の底部にあり、その上に杭周固定液が満たされている。
【0061】
図示しないクレーン等により杭520の杭先端位置524を杭穴530の底面532に向かって挿入する。杭520の長さが杭穴530の深さに対して足りない場合、必要に応じて適宜の継手(図示せず)により上側に杭520を連結する。
【0062】
クレーン等により杭520を保持し、杭頭522が地面Gよりも上側にある状態で、杭打機500を適宜に動かして、杭520の杭頭522をロッド510の下端のキャップ512でキャッチングする。すなわち、杭520の上端の杭頭522にロッド510の下端を接続する。このとき、杭520の杭頭522は、杭打機500に接続されたロッド510の下端の回転キャップ512に連結されている。その後、クレーン等での杭520の保持を解放する。このとき、杭穴530の底部の根固め部534は、硬化途中である。このため、杭打機500に対するロッド510の接続を解除すると、通常は、ロッド510、杭保持治具10及び杭520を合わせた、例えば数十トンの重量により、杭先端位置524が底面532に近づこうとする。杭打機500は、ロッド510、杭保持治具10及び杭520の重量を保持している。
【0063】
杭520及びロッド510は共通の長手軸L上にある。長手軸Lは鉛直方向に平行であることが好適である。
【0064】
杭打機500を動かして、杭520を基台540の1対の延出部542,544間を通して、杭穴530の入り口から自沈あるいは回転させながら杭穴530に建て込む。杭打機500を動かしながら、図2Bに示すように、杭520の杭頭522及びロッド510の下端の回転キャップ512を地面Gよりも下側に入れる。
【0065】
そして、地面Gに対する杭520の杭頭522の深さが所望の範囲内に入ったら、杭打機500の動作を停止させ、杭打機500により、ロッド510及び杭520の位置を維持する。
【0066】
杭520の杭頭522の位置あるいは回転キャップ512の位置を測る場合、杭520の杭頭522の天端又は回転キャップの天端に、マーキングを付した検尺棒の下端を当てる。検尺棒の下端とマーキング位置との距離は予め所望の状態に設定する。地面Gに対するマーキングの高さ位置を計測機で計測して地面Gに対する杭520の杭頭522又は回転キャップの天端の深さ位置を確認する。
【0067】
地面Gに対する杭520の杭頭522又は回転キャップの天端の深さ位置を所望の状態にさらに近づける場合、杭打機500を動かして、地面Gに対する杭520の杭頭522又は回転キャップの天端の深さ位置を所望の位置に移動させる。杭520の杭頭522の天端又は回転キャップの天端に、再び検尺棒の下端を当てる。地面Gに対するマーキングの高さ位置を計測機で計測して地面Gに対する杭520の杭頭522又は回転キャップの天端の深さ位置を確認する。
【0068】
杭520の杭頭522の位置は、設計上の所望の位置から管理値(±100mm)以内に配置することが求められている。実際には、杭打機500による動作により、杭520の杭頭522の位置を、所望の位置から数センチメートル程度以内の誤差に抑えることができる。一方、杭520の杭頭522の位置は、顧客要求に応じて、所望の位置から例えば0mmから−(マイナス)50mmの範囲にすることも可能である。
【0069】
なお、杭520の杭頭522の天端あるいは回転キャップ512の天端と杭保持治具10のフランジ24a,24bの下面64a,64bとの間の距離は予め計測可能である。このため、地面Gに対するフランジ24a,24bの下面64a,64bの高さ位置を、計測機等を用いて確認することで、杭穴530に対して杭520の杭頭522が所望の深さ位置にあるか否か、判断することもできる。
【0070】
このため、フランジ24a,24bの下面64a,64bはマーキング位置として用いることができる。例えば、ロッド510の外周の適宜の位置に杭保持治具10を固定することで、地上Gから例えば1mの位置にフランジ24a,24bの下面64a,64bを配置すると、杭520の杭頭522の深さ位置が所望の位置になるようにすることができる。
【0071】
図2Bから図4Cに示すように、基台540の1対の延出部542,544に対して、橋渡しするように、1対の受台546,548を載置する。受台546,548の上面は平面に形成されている。受台546,548は例えば鋼鉄製の角柱やH形鋼が用いられる。受台546,548の上面は水平であることが好適であるが、水平でなくてもよい。
【0072】
基台540の1対の延出部542,544はロッド510から離されているが、受台546,548の対向する側面は、ロッド510の外周に近接又は当接している。受台546,548の上面にジャッキ112を載置する。
【0073】
ジャッキ112の上端114の位置を上側に移動させて調整し、杭保持治具10のフランジ24a,24bの下面64a,64bに接触させる。ジャッキ112の上端114の受台546,548の上面に対する突出長は受台546,548の上面が水平か否かで異なる。水平でない場合、一方のジャッキ112の上端114の調整量と、他方のジャッキ112の上端114の調整量とは異なる。すなわち、一方のジャッキ112の上端114の位置と、他方のジャッキ112の上端114の位置とを独立して調整可能である。
【0074】
このため、複数のジャッキ112を用いて杭保持治具10のフランジ24a,24bの下面64a,64bを支持する場合、深度方向の精度を良好にすることができる。また、複数のジャッキ112により、杭保持治具10のフランジ24a,24bの下面64a,64bの水平を取ることが容易である。このため、杭打機500と協働して、ロッド510の長手軸Lを鉛直方向に配置することが容易である。
【0075】
杭打機500、ロッド510及び杭520の重量は、合わせると十数トンから数十トンになり得る。このため、ジャッキ112の上端114を杭保持治具10のフランジ24aの下面64aに強く接触させても、杭打機500で保持したロッド510及び杭520の位置が上側に動くことが防止される。このようにして、杭保持治具10のフランジ24aの下面64aをジャッキ112の上端114で支持する。なお、このとき、杭打機500のみで保持していた、ロッド510、杭保持治具10及び杭520の重力を、杭打機500及びジャッキ112の上端114で受けている。
【0076】
例えばロッド510の自沈のほか、ロッド510の回転により、杭520の杭先端位置524が杭穴530の底面532に近づけられるなど、杭520の杭先端位置524と杭穴530の底面532との間の距離が調整される。杭520の杭頭522の位置が所望の深さとしたときに、基台540に対する杭保持治具10の向きも所定の配置にすることは困難である場合がある。本実施形態では、基台540に対する杭保持治具10の向きが、例えば図4A図4B図4Cに示す、いずれの向きになるのか、意識する必要がない。
【0077】
図4Bに示すように、フランジ24a,24bのうち固定板26a,26bの下側の位置、及び、固定板28a,28bの下側の位置がジャッキ112の上端114に支持されていてもよい。この場合、対向する固定板26a,26b同士が締結具16,18,20で適宜に固定され、対向する固定板28a,28b同士が締結具16,18,20で適宜に固定されている。このため、固定板26a,26b,28a,28bがフランジ24a,24bの変形を抑制するリブとして用いられる。
【0078】
図4Cに示すように、フランジ24a,24bのうち、上側に補強リブ30a,30bが形成されていない位置の下面64a,64bの位置がジャッキ112の上端114に支持されていてもよい。フランジ24a,24bの上面62a,62bとハーフパイプ22a,22bの外周面44a,44bとの間の補強リブ30a,30bによって、フランジ24a,24bの変形が抑制される。この場合であっても、ロッド510及び杭520の重力は、ジャッキ112の上端114に支持されたフランジ24a,24bの下面64a,64bで受けることができる。
【0079】
本実施形態の杭保持治具10では、フランジ24aの下面64aのうち、ジャッキ112の上端114が当接される位置は、フランジ24aの下面64aの径方向のうち、内側から外側まで適宜の位置が許容される。
【0080】
杭打機500を動かしてロッド510及び杭520を長手軸Lの軸回りに回し、杭520の杭頭522の位置を調整したとき、フランジ24a,24bの下面64a,64bに対する、ジャッキ112の上端114の支持位置がそれぞれ変更される。杭打機500を動かしてロッド510及び杭520を長手軸Lの軸回りに回す場合、基台540に載置された受台546,548及びジャッキ112は、杭保持治具10から離されているとともに、ロッド510に隣接する位置から離されていることが好適である。
【0081】
この状態で、図2Dに示すように、杭打機500とロッド510の上端との接続を解除する。杭打機500からロッド510を離した後、杭打機500は別の杭穴を掘削するなど、別の作業を行うのに用いられる。
【0082】
ロッド510、杭保持治具10及び杭520には、杭520の杭先端位置524が杭穴530の底面532に向かって移動しようとする重力が働いている。杭打機500及びジャッキ112の上端114で保持されていた重力が、ジャッキ112の上端114にかけられる。このため、ジャッキ112には、ロッド510、杭保持治具10、及び、杭520の重力が負荷される。ここで、杭穴530の底面532の近傍には根固め部534を形成する根固め液が、根固め液の上層には杭520の外周を固定する杭周固定液が存在しているため、杭520には浮力が発生すると考えられる。このため、実際には、ロッド510、杭保持治具10、及び、杭520の自重よりも小さい重量がジャッキ112の上端114に負荷されると想定される。
【0083】
杭保持治具10のフランジ24a,24bの下面64a,64bには、ジャッキ112の上端114にかかる負荷と同等の反力が負荷される。フランジ24a,24bの下面64a,64bには、ジャッキ112の上端114を通して、例えば数十トンなど、ロッド510及び杭520の重力が負荷される可能性がある。このとき、フランジ24a,24bの上面62a,62bとハーフパイプ22a,22bの外周面44a,44bとの間に連結された補強リブ30a,30bにより、フランジ24a,24bの変形を抑制する。
【0084】
固定板26a,26b、固定板28a,28bには、締結具16,18,20のボルト92及びナット94が固定されている。このため、ロッド510及び杭520の重量が杭保持治具10に負荷されても、固定板26a,26bの間、固定板28a,28bの間が離れようとするのが防止されている。特に、リブ32a,32bにより変形が抑制された固定板26a,26b、リブ34a,34bにより変形が抑制された固定板28a,28bの上側のボルト92及びナット94、下側のボルト92及びナット94により、ハーフパイプ22a,22bの内周面42a,42bがロッド510の外周から離れようとするのを防止する。
【0085】
したがって、本実施形態に係る杭保持治具10がロッド510の外周に適切に取り付けられることにより、杭保持治具10がロッド510の外周に固定された状態がより確実に維持される。杭保持治具アッセンブリを用いることにより、ロッド510及び杭520のような重量物であっても、杭520の下端の杭先端位置524と杭穴530の底面532との間に距離を取った状態が維持される。
【0086】
なお、図4Aから図4C中、1つのフランジ24aに対して1つのジャッキ112の上端114で支持している例を示した。すなわち、2つのフランジ24a,24bに対して2つのジャッキ112の上端114で支持している状態を示した。複数のジャッキ112の上端114で1つのフランジ24aの下面64aを支持していてもよい。
【0087】
このように杭保持治具10及び伸縮具110を有する杭保持治具アッセンブリを用いることにより、杭穴530に対して杭520が固定されるまで、地上Gに対して所望の高さに杭保持治具10を保持しておくことができる。
すなわち、杭打機500とロッド510とが接続されているとき、伸縮具110の上端を杭保持治具10のフランジ24a,24bに当接させて杭保持治具10を所望の高さで支持するとともに、杭保持治具10が取り付けられたロッド510により杭520を所望の深さに支持することができる。また、杭保持治具10が所望の高さで支持され、杭保持治具10が取り付けられたロッド510により杭520が所望の深さに支持された状態で杭打機500とロッド510との接続が解除されたとき、杭保持治具10を地面から所望の高さで維持することで杭520の落下を防止することができる。
【0088】
根固め部534及び杭周固定液が杭520の位置を維持した状態で硬化するまで例えば数時間かかる。適宜の時間が経過し、杭穴530に対して杭520が固定された後、再び杭打機500をロッド510の上端に接続する。このとき、ロッド510及び杭保持治具10の重量を杭打機500で保持する。そして、ジャッキ112を適宜に操作して、ジャッキ112の上端114を下側に移動させジャッキ112の上端114でフランジ24a,24bの下面64a,64bを支持する状態を解除する。杭打機500を動かして回転キャップ512を杭520の杭頭522から取り外す。そして、杭打機500を動かして回転キャップ512を杭穴530から抜き取る。キャップ512が下端にあるロッド510は、再利用される。
なお、杭打機500を用いる代わりに、適宜の建設機械を用いてロッド510を保持し、杭520の杭頭522とロッド510の回転キャップ512との連結状態を解除し、杭520の位置を維持しながら、ロッド510を杭穴530から抜き取ってもよい。
【0089】
この状態において、杭520の杭先端位置524が杭穴530の底面532に離間した状態で、杭520が杭穴530に固定されている。
【0090】
本実施形態では、基台540上に受台546,548を用いる例について説明したが、基台540の1対の延出部542,544上に直接伸縮具110を配置してもよい。この場合、受台546,548は不要となり得る。
【0091】
杭穴530内の杭520には、杭520の自重から杭穴530内のセメントミルク等から得られる浮力を減じた力が負荷されると想定される。ロッド510には自重が負荷される。このため、杭保持治具10には、杭520及びロッド510の自重よりも小さい力が負荷されると想定されるが、その力は大きいと数十トンになり得る。
【0092】
本実施形態では、固定板26a,28aとハーフパイプ22aの外周面44aとの間に固定されたリブ32a,34a、固定板26b,28bとハーフパイプ22bの外周面44bとの間に固定されたリブ32b,34bにより、固定板26a,26b間、固定板28a,28b間に意図しない変形が抑制される。そして、固定板26a,26b間、固定板28a,28b間を、締結具16,18,20で固定する際に適宜の工具を用いる場合であっても、補強リブ30a,30b、第1リブ32a,32b、第2リブ34a,34bが干渉するのを防止することができる。このため、固定板26a,26b間、固定板28a,28b間は、変形が抑制されることにより、また、工具と補強リブ30a,30b、第1リブ32a,32b、第2リブ34a,34bとの干渉が抑制されることにより、締結具16,18,20による固定力のばらつきが抑制される。このため、固定板26a,26b間、固定板28a,28b間は、締結具16,18,20により、所定の固定力で固定される。このように、本実施形態の杭保持治具10の第1保持片12及び第2保持片14は、ロッド510の外周に、固定板26a,26b,28a,28bの変形が抑制された状態で確実に固定される。したがって、杭保持治具10をロッド510の外周に繰り返し着脱して用いる場合であっても、所定の固定力又はそれに近い状態で、ロッド510の外周面に第1保持片12及び第2保持片14を固定することができる。
【0093】
そして、本実施形態では、フランジ24a,24bの下面64a,64bが伸縮具110の上端114で支持されるのに十分な大きさである。フランジ24aの上面62aとハーフパイプ22aの外周面44aとの間に補強リブ30aが固定され、フランジ24bの上面62bとハーフパイプ22bの外周面44bとの間に補強リブ30bが固定されている。そして、補強リブ30a,30bの外縁と、フランジ24a,24bの外縁とは近接している。このため、伸縮具110を介して、フランジ24a,24bに十数トンから数十トンのような非常に大きな力がかけられても、フランジ24a,24bの変形を抑制できる。補強リブ30a,30bは、素材の厚さや強度によっては、1つでもよく、複数でもよい。
【0094】
フランジ24a,24bに対し十数トンから数十トンのような大きな力がかけられたときにも、ロッド510の外周に対して固定した杭保持治具10がロッド510の長手軸Lの軸方向に滑るのを防止することができる。このため、フランジ24a,24bを通して杭保持治具10に大きな力が負荷されても、杭保持治具10は、ロッド510との固定状態が維持される。したがって、伸縮具110を介して杭保持治具10でロッド510及び杭520の位置を保持している場合に、ロッド510、杭保持治具10、杭520の位置関係を保持することができる。したがって、本実施形態に係る杭保持治具10は、一端が杭520に接続され他端が杭打機500に接続される柱状のロッド510に取り付けられている状態で、地面よりも上側で支持されてロッド510の落下を防止し、すなわち、杭520の落下を防止することができる。このように、本実施形態によれば、杭520及びロッド510の重量を受ける際にも、確実に支持される杭保持治具10、杭保持治具アッセンブリ、及び、杭520の位置を保持する施工方法を提供することができる。
【0095】
本願発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。
【符号の説明】
【0096】
10…杭保持治具、12…第1保持片、14…第2保持片、16…第1締結具、18…第2締結具、20…第3締結具、22a…第1ハーフパイプ、22b…第2ハーフパイプ、24a…第1フランジ、24b…第2フランジ、26a,26b…第1固定板、28a,28b…第2固定板、30a,30b…補強リブ、32a,32b…第1リブ、34a,34b…第2リブ、42a,42b…内周面、44a,44b…外周面、46a,46b,48a,48b…弧状端、50a,50b,52a,52b…エッジ、62a,62b…上面、64a,64b…下面、66a,66b…外縁、72a…非対向面、74a…対向面、76…ボルト穴、82a,82b…非対向面、84a…対向面、86…ボルト穴、92…ボルト、94…ナット、110…伸縮具、112…ジャッキ、114…上端、500…杭打機、510…ロッド、512…回転キャップ、520…杭、522…杭頭、524…杭先端位置、530…杭穴、532…底面。
【要約】      (修正有)
【課題】杭及びロッドの重量を受ける際にも、確実に支持される杭保持治具を提供する。
【解決手段】杭保持治具10は、ハーフパイプと、ハーフパイプの下端の弧状端から径方向外方に突出するフランジと、ハーフパイプの上下方向に延びる左右1対のエッジのうち、一方のエッジからハーフパイプの外側に突出する第1固定板と、1対のエッジのうち、他方のエッジから第1固定板とは反対側にハーフパイプの外側に突出する第2固定板と、フランジとハーフパイプの外周面との間に、ハーフパイプの中心軸に対して放射状に設けられた補強リブ30a、30bとを有する1対の保持片を備える。
【選択図】図3
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4A
図4B
図4C