特許第6604461号(P6604461)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6604461警告システム、コンピュータプログラム、及び警告方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6604461
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】警告システム、コンピュータプログラム、及び警告方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20191031BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20191031BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   G08G1/16 A
   G08G1/00 J
   G08G1/09 F
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-519115(P2019-519115)
(86)(22)【出願日】2018年4月9日
(86)【国際出願番号】JP2018014940
(87)【国際公開番号】WO2018211860
(87)【国際公開日】20181122
【審査請求日】2019年8月23日
(31)【優先権主張番号】特願2017-100063(P2017-100063)
(32)【優先日】2017年5月19日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】院南 誠嗣
(72)【発明者】
【氏名】重野 勝
【審査官】 東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−165604(JP,A)
【文献】 特開平07−334786(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/157304(WO,A1)
【文献】 特開2015−178702(JP,A)
【文献】 特開2017−027461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 − 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過去の交通事故発生時の車両走行状況に関わる情報を記憶する事故情報データベースと、
道路の区画毎に測定された路面性状のデータを記憶する路面性状データベースと、
車両の走行状況に関わる情報を前記車両から受信する通信装置と、
前記車両から受信した走行状況に関わる情報と、前記過去の交通事故発生時の車両走行状況に関わる情報とに基づいて事故予防に関わる第1の評価値を決定、前記車両が走行している道路の区間の路面性状のデータに基づいて事故予防に関わる第2の評価値を決定前記車両が走行している道路の区間における所定期間内の前記路面性状の測定回数から測定頻度を算出し、前記測定頻度に基づいて事故予防に関する第3の評価値を決定する評価手段と、
前記第1の評価値、前記第2の評価値、及び前記第3の評価値に基づいて、事故予防に関わる警告の要否を判定する判定手段と、
前記警告を要すると判定されたときに、前記車両に警告情報を出力することを指示する指示手段と、
を備える警告システム。
【請求項2】
請求項1に記載の警告システムであって、
前記評価手段は、前記車両が走行している道路の区間の路面性状のデータから路面の欠陥の種別と欠陥の度合いとを求め、前記欠陥の種別と前記欠陥の度合いとに基づいて前記事故予防に関する第2の評価値を決定する、警告システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の警告システムであって、
前記評価手段は、前記車両が走行している道路の区間における所定期間内の前記路面性状の変化から路面補修の進捗度合いを算出し、前記路面補修の進捗度合いに基づいて事故予防に関する第4の評価値を決定し、
前記判定手段は、前記第1の評価値、前記第2の評価値、前記第3の評価値、及び前記第4の評価値に基づいて、前記事故予防に関する警告の要否を判定する、警告システム。
【請求項4】
コンピュータに、
過去の交通事故発生時の車両走行状況に関わる情報を事故情報データベースに記憶するステップと、
道路の区画毎に測定された路面性状のデータを路面性状データベースに記憶するステップと、
車両の走行状況に関わる情報を前記車両から受信するステップと、
前記車両から受信した走行状況に関わる情報と、前記過去の交通事故発生時の車両走行状況に関わる情報とに基づいて事故予防に関わる第1の評価値を決定、前記車両が走行している道路の区間の路面性状のデータに基づいて事故予防に関わる第2の評価値を決定前記車両が走行している道路の区間における所定期間内の前記路面性状の測定回数から測定頻度を算出し、前記測定頻度に基づいて事故予防に関する第3の評価値を決定する ステップと、
前記第1の評価値、前記第2の評価値、及び前記第3の評価値に基づいて、事故予防に関わる警告の要否を判定するステップと、
前記警告を要すると判定されたときに、前記車両に警告情報を出力することを指示するステップと、
を実行させるコンピュータプログラム。
【請求項5】
コンピュータが、
過去の交通事故発生時の車両走行状況に関わる情報を事故情報データベースに記憶するステップと、
道路の区画毎に測定された路面性状のデータを路面性状データベースに記憶するステップと、
車両の走行状況に関わる情報を前記車両から受信するステップと、
前記車両から受信した走行状況に関わる情報と、前記過去の交通事故発生時の車両走行状況に関わる情報とに基づいて事故予防に関わる第1の評価値を決定、前記車両が走行している道路の区間の路面性状のデータに基づいて事故予防に関わる第2の評価値を決定前記車両が走行している道路の区間における所定期間内の前記路面性状の測定回数から測定頻度を算出し、前記測定頻度に基づいて事故予防に関する第3の評価値を決定する ステップと、
前記第1の評価値、前記第2の評価値、及び前記第3の評価値に基づいて、事故予防に関わる警告の要否を判定するステップと、
前記警告を要すると判定されたときに、前記車両に警告情報を出力することを指示するステップと、
を実行する警告方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、警告システム、コンピュータプログラム、及び警告方法に関わる。
【背景技術】
【0002】
道路交通の発達した社会において、交通事故死亡者数の削減は、大きな課題となっており、日本では、インフラ協調による「安全運転支援システム」の実現を目標に掲げている。米国においても、交通事故死亡者数を削減するための具体的施策として、VII(Vehicle Infrastructure Integration)と呼ばれるプロジェクトが立ち上げられている。インフラ協調による「安全運転支援システム」とは、道路に設置された通信機器やセンサなどのインフラ設備と車両とが連携して交通事故を未然に防ぐシステムである。このような事情を背景に、特開2008−165604号公報は、交通事故を予防するための警告を運転者に行う警告システムについて言及している。この警告システムは、車両の走行状況(車両の位置、速度、日時、及び気象)が、過去の交通事故発生時の事故状況(事故発生位置、事故車両の速度、事故発生日時、及び事故時の気象)に類似しているときに、事故再発の可能性が高いものと判定して、運転者に警告を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−165604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、交通事故が起きる原因は、様々であり、車両の走行状況のみならず、道路の管理状態も交通事故を引き起こす要因の一つであるものと考えられる。例えば、平成18年度の道路管理瑕疵実態調査によると、道路管理瑕疵事案における事故原因の1位は、穴及び段差に起因する事故であった。続いて、事故原因の2位は、蓋不全に起因する事故であり、事故原因の3位は、落石に起因する事故であった。このように、道路の実際の管理状態が交通事故の潜在的なリスクに影響を与えているにも関わらず、道路の実際の管理状態に基づいて交通事故を予防するための警告を行う配慮が十分になされていなかった。
【0005】
そこで、本発明は、道路の実際の管理状態に基づいて交通事故を予防するための警告を行う警告システムを提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本発明に関わる警告システムは、(i)過去の交通事故発生時の車両走行状況に関わる情報を記憶する事故情報データベースと、(ii)道路の区画毎に測定された路面性状のデータを記憶する路面性状データベースと、(iii)車両の走行状況に関わる情報を車両から受信する通信装置と、(iv)車両から受信した走行状況に関わる情報と、過去の交通事故発生時の車両走行状況に関わる情報とに基づいて事故予防に関わる第1の評価値を決定するとともに、車両が走行している道路の区間の路面性状のデータに基づいて事故予防に関わる第2の評価値を決定する評価手段と、(v)第1の評価値及び第2の評価値に基づいて、事故予防に関わる警告の要否を判定する判定手段と、(vi)警告を要すると判定されたときに、車両に警告情報を出力することを指示する指示手段とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明に関わる警告システムによれば、道路の実際の管理状態に基づいて交通事故を予防するための警告を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に関わる警告システムの構成図である。
図2】本発明の実施形態に関わる事故情報データベースの説明図である。
図3】本発明の実施形態に関わる路面性状データベースの説明図である。
図4】本発明の実施形態に関わる評価テーブルの説明図である。
図5】本発明の実施形態に関わる評価テーブルの説明図である。
図6】本発明の実施形態に関わる評価テーブルの説明図である。
図7】本発明の実施形態に関わる評価テーブルの説明図である。
図8】本発明の実施形態に関わる警告方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、各図を参照しながら本発明の実施形態について説明する。ここで、同一符号は同一の構成要素を示すものとし、重複する説明は省略する。
図1は、本発明の実施形態に関わる警告システム10の構成図である。警告システム10は、車両27の走行状況に応じて、事故予防に関わる警告の要否を判定し、警告が必要なときに、事故予防に関わる警告情報を出力することを車両27の車載装置20に指示するコンピュータである。警告システム10は、通信ネットワーク70を通じて、車両27の車載装置20、路面性状測定車両37の車載装置30、中継装置40、交通事故情報提供システム50、及び気象情報提供システム60に接続している。
【0010】
警告システム10は、そのハードウェア資源として、プロセッサ11、記憶装置12及び通信装置13を備える。
【0011】
プロセッサ11は、算術演算、論理演算、ビット演算などを処理する算術論理演算ユニット及び各種レジスタ(データレジスタ、命令レジスタ、汎用レジスタなど)を備えるCPU(Central Processing Unit)である。プロセッサ11は、記憶装置12に格納されているコンピュータプログラム100を解釈及び実行することにより、警告システム10の各種動作(例えば、後述する評価処理、判定処理、及び指示処理など)を制御する。
【0012】
記憶装置12は、例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、メモリカード、光ディスクドライブ、半導体メモリなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。半導体メモリは、揮発性メモリでもよく、或いは不揮発性メモリでもよい。
【0013】
通信装置13は、警告システム10と、車載装置20,30、中継装置40、交通事故情報提供システム50、及び気象情報提供システム60との間の通信を制御する。通信ネットワーク70は、例えば、有線ネットワーク(例えば、近距離通信網、広域通信網、又は付加価値通信網等)と無線ネットワーク(移動通信網、衛星通信網、ブルートゥース、WiFi(Wireless Fidelity)、HSDPA(High Speed Downlink Packet Access)等)とが混在する通信網である。
【0014】
記憶装置12は、コンピュータプログラム100、事故情報データベース200、路面性状データベース300、及び評価テーブル410,420,430,440を格納している。
【0015】
コンピュータプログラム100は、警告システム10の動作を制御するためのプログラムであり、メインプログラムの中で呼び出されて実行される複数のソフトウェアモジュールを備える。このようなソフトウェアモジュールは、それぞれ特定の処理(例えば、評価処理、判定処理、及び指示処理など)を実行するためにモジュール化されたサブプログラムである。ソフトウェアモジュールは、例えば、プロシージャ、サブルーチン、メソッド、関数、又はデータ構造などを用いて作成される。モジュール化されたサブプログラムとして、コンピュータプログラム100は、評価モジュール110、判定モジュール120、及び指示モジュール130を備える。評価モジュール110、判定モジュール120、及び指示モジュール130の詳細については後述する。
【0016】
事故情報データベース200は、過去の交通事故発生時の車両走行状況に関わる情報を記憶する。事故情報データベース200は、例えば、図2に示すように、「事故類型」、「事故発生地点の位置情報」、「事故車両の速度情報」、「事故発生日時」、及び「事故時の気象情報」を対応付けて記憶している。これらの情報は、過去の交通事故発生時の車両走行状況を特定する情報の一例であり、一部の情報を追加、削除又は変更してもよい。警告システム10は、「事故類型」、「事故発生地点の位置情報」、「事故車両の速度情報」、及び「事故発生日時」の情報を交通事故情報提供システム50から受信するとともに、「事故時の気象情報」を気象情報提供システム60から受信し、これらの情報を対応付けて事故情報データベース200に格納する。なお、「事故類型」とは、例えば、追突事故や横転事故などのように事故内容を類型化したものを意味する。
【0017】
路面性状データベース300は、道路の区画毎に測定された路面性状のデータを記憶する。道路の管理状態は、道路の部分毎に異なるため、路面性状の測定の便宜上、道路は予め複数の区画に予め分割されている。路面性状データベース300は、例えば、図3に示すように、「区画ID」、「測定位置情報」、「測定日時情報」、及び「路面性状の測定データ」を対応付けて記憶している。警告システム10は、「区画ID」、「測定位置情報」、「測定日時情報」、及び「路面性状の測定データ」を路面性状測定車両37の車載装置30から受信し、これらの情報を対応付けて路面性状データベース300に格納する。なお、「区画ID」は、区画を一意に識別する情報である。「測定位置情報」は、路面性状測定位置の位置情報(例えば、道路の各区画を代表する地点の位置情報)である。「測定日時情報」は、道路の各区間において路面性状の測定が行われる日時情報である。「路面性状の測定データ」は、路面の凹凸変位を示す路面プロファイルの測定データであり、この路面プロファイルから、路面のひび割れ、轍掘れ、及び平坦性を測定し、道路欠陥の種別や欠陥の度合いを判定することができる。
【0018】
車載装置30は、道路を走行しながら路面性状を非接触式で測定する路面性状測定車両37に搭載される車載コンピュータである。車載装置30は、道路の区画毎に路面性状を測定し、測定された路面性状のデータを、通信ネットワーク70を通じて、警告システム10に送信する。車載装置30は、そのハードウェア資源として、プロセッサ31、記憶装置32、通信装置33、位置情報取得装置34、時刻情報取得装置35、及び路面性状測定装置36を備える。プロセッサ31、記憶装置32、及び通信装置33のハードウェア構成は、プロセッサ21、記憶装置22、及び通信装置23のハードウェア構成と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0019】
路面性状測定装置36は、道路の区画毎に路面性状を測定する。路面性状測定装置36は、例えば、レーザ光を使用して路面性状を測定するレーザプロファイラでもよく、或いは、車両走行時の振動から路面性状を測定する加速度センサでもよい。特に、ひび割れを測定するための路面性状測定装置36として、例えば、ストリークカメラ及びハロゲンランプを備えるひび割れ測定装置を用いてもよい。また、轍掘れを測定するための路面性状測定装置36として、例えば、レーザスリット投光器及びラインセンサカメラを備える轍掘れ測定装置を用いてもよい。また、路面の平坦性(路面の横断凹凸)を測定するための路面性状測定装置36として、例えば、非接触レーザ変位計を備える平坦性測定装置を用いてもよい。
【0020】
位置情報取得装置34は、路面性状測定位置の位置情報を取得する。位置情報取得装置34は、例えば、GPS(Global Positioning System)装置であり、この場合、路面性状測定位置の位置情報は、経緯度情報である。時刻情報取得装置35は、道路の各区間において路面性状の測定が行われる日時情報を取得する。
【0021】
警告システム10の通信装置13は、各種データ(例えば、「区画ID」、「測定位置情報」、「測定日時情報」、及び「路面性状の測定データ」)を車載装置30から直接的に受信してもよく、或いは、中継装置40を中継して車載装置30から間接的に受信してもよい。中継装置40は、車載装置30から警告システム10への各種データの転送を中継する。中継装置40は、そのハードウェア資源として、プロセッサ41、記憶装置42、及び通信装置43を備える。プロセッサ41、記憶装置42、及び通信装置43のハードウェア構成は、プロセッサ21、記憶装置22、及び通信装置23のハードウェア構成と同様であるため、その詳細な説明を省略する。通信装置43は、車載装置30から上述の各種データを受信し、これを記憶装置42に一時的に保存する。プロセッサ41は、記憶装置42に一時的に保存されている各種データを所定のタイミングで記憶装置42から読み出し、これを、通信装置43を通じて警告システム10に送信する。但し、中継装置40は、警告システム10に必須ではないため、省略してもよい。
【0022】
車載装置20は、車両27に搭載される車載コンピュータである。車載装置20は、例えば、目的地への経路を案内するナビゲーション装置でもよく、或いは、車両27の運転者が所持する携帯端末(例えば、スマートフォンと呼ばれる多機能携帯電話)でもよい。車両27は、例えば、自家用又は業務用の一般車両である。車載装置20は、車両27の走行状況に関わる情報(例えば、車両27の位置情報及び速度情報)を、通信ネットワーク70を通じて、警告システム10に送信する。車載装置20は、そのハードウェア資源として、プロセッサ21、記憶装置22、通信装置23、位置情報取得装置24、時刻情報取得装置25、及び警告装置26を備える。プロセッサ21、記憶装置22、通信装置23、位置情報取得装置24、及び時刻情報取得装置25のハードウェア構成は、プロセッサ31、記憶装置32、通信装置33、位置情報取得装置34、及び時刻情報取得装置35のハードウェア構成と同様であるため、その詳細な説明を省略する。警告装置26は、警告システム10からの指示に応答して、警告情報を出力する。警告情報は、例えば、車両27の運転者に注意を喚起する音声情報又は画像情報である。警告装置26は、警告情報としての音声情報(例えば、警告音)を出力するスピーカでもよく、或いは警告情報としての画像情報(例えば、警告メッセージ)を出力するディスプレイでもよい。なお、車両27の速度は、車両27の単位時間あたりの位置の変化から求めることができるため、車載装置20は、必ずしも車両27の速度情報を警告システム10に送信する必要はなく、車両27の位置情報とともに時刻情報を警告システム10に送信してもよい。車両27の位置情報は、位置情報取得装置24により求めることができる。時刻情報は、時刻情報取得装置25により求めることができる。
【0023】
評価モジュール110は、車両27の走行状況に関わる情報と、事故情報データベース200に格納されている情報と、路面性状データベース300に格納されている情報とを用いて、事故予防に関わる評価値を決定する。事故予防に関わる評価値は4種類存在する。一つは、車両27の走行状況に関わる情報と、過去の交通事故発生時の車両走行状況に関わる情報とに基づいて決定される第1の評価値である。もう一つは、車両27が走行している道路の区間の路面性状のデータに基づいて決定される第2の評価値である。もう一つは、車両27が走行している道路の区間における路面性状の測定頻度に基づいて決定される第3の評価値を決定である。残りの一つは、車両27が走行している道路の区間における路面補修の進捗度合いに基づいて決定される第4の評価値である。本明細書において、特に断りがない限り、「評価値」という用語は、「第1の評価値」、「第2の評価値」、「第3の評価値」、及び「第4の評価値」を総称するものとする。本実施形態では、事故予防に関わる警告の必要性が高い程、評価値は、高くなるものとして説明する。
【0024】
図4に示すように、評価テーブル410は、車両27の走行状況と過去の交通事故発生時の車両走行状況との間の類似度と、第1の評価値とを予め対応付けている。図4に示す例では、類似度を「高」、「中」、及び「低」の三段階とし、それぞれに対応する第1の評価値をx1,y1,及びz1している。車両27の走行状況と過去の交通事故発生時の車両走行状況との間の類似度が高い程、事故予防に関わる警告の必要性が高くなるため、x1>y1>z1とする。評価モジュール110は、車載装置20から受信した車両27の位置情報と、事故情報データベース200に格納されている事故発生地点の位置情報とを比較し、車両27の位置が事故発生地点から一定の範囲内にあるか否かを判定する。そして、車両27の位置が事故発生地点から一定の範囲内にあるときに、評価モジュール110は、車両27の速度情報と事故車両の速度情報とを比較し、両者の速度差を求める。評価モジュール110は、速度差に対応する類似度を、評価テーブル410の「高」、「中」、及び「低」の中から選択し、選択した類似度に対応する第1の評価値を決定する。評価モジュール110は、車両27の速度情報と事故車両の速度情報との間の比較に加えて、車両27が走行している時点の日時又は気象と、過去の事故発生時の日時又は気象とをそれぞれ比較し、これらの比較結果を加味して、車両27の走行状況と過去の交通事故発生時の車両走行状況との間の類似度を判定してもよい。車両27が走行している時点の気象情報は、気象情報提供システム60から取得できる。なお、類似度と第1の評価値との対応関係を4段階以上に分けて設定してもよい。
【0025】
図5に示すように、評価テーブル420は、道路の欠陥の種類毎に欠陥の度合いと第2の評価値とを予め対応付けている。道路の欠陥の種類として、例えば、轍掘れ、段差、ひび割れ、ポットホールなどがある。図5に示す例では、欠陥の度合いを「高」、「中」、及び「低」の三段階とし、それぞれの第2の評価値をx2,y2,及びz2としている。道路の欠陥の度合いが高い程、事故予防に関わる警告の必要性が高くなるため、x2>y2>z2とする。評価モジュール110は、車載装置20から受信した車両27の位置情報に基づいて、車両27が走行している道路の区間に対応する路面性状のデータを路面性状データベース300から読み取る。評価モジュール110は、読み取った路面性状のデータから路面の欠陥の種別と欠陥の度合いとを求め、評価テーブル420を参照して、欠陥の種別と欠陥の度合いに対応する第2の評価値を決定する。なお、欠陥の度合いと第2の評価値との対応関係を4段階以上に分けて設定してもよい。
【0026】
図6に示すように、評価テーブル430は、路面性状測定の測定頻度と第3の評価値とを予め対応付けている。図6に示す例では、測定頻度がN1,N2,N3であるときの第3の評価値を、それぞれ、x3,y3,z3としている。路面性状の測定頻度が多い程、道路がよく整備されている(それ故、道路の管理状態に起因する交通事故の潜在的なリスクは、比較的低い)ものと推定できるため、N1<N2<N3、且つ、x3>y3>z3とする。評価モジュール110は、車載装置20から受信した車両27の位置情報に基づいて、車両27が走行している道路の区間における所定期間内の路面性状の測定回数を、路面性状データベース300に蓄積されている同一区画の過去の測定回数から算出する。評価モジュール110は、測定回数から測定頻度を算出し、評価テーブル430を参照して、測定頻度に対応する第3の評価値を決定する。なお、測定頻度と第3の評価値との対応関係を4段階以上に分けて設定してもよい。
【0027】
図7に示すように、評価テーブル440は、路面補修の進捗度合いと第4の評価値とを予め対応付けている。図7に示す例では、路面補修の進捗度合いがM1,M2,M3であるときの第4の評価値を、それぞれ、x4,y4,z4としている。路面補修の進捗度合いが速い程、道路がよく整備されている(それ故、道路の管理状態に起因する交通事故の潜在的なリスクは、比較的低い)ものと推定できるため、M1<M2<M3、且つ、x4>y4>z4とする。評価モジュール110は、車載装置20から受信した車両27の位置情報に基づいて、路面性状データベース300に蓄積されている同一区画の過去の欠陥の度合いを検索する。そして、評価モジュール110は、過去の欠陥の度合いと評価値を決定する時点の欠陥の度合いとの差から、車両27が走行している道路の区間における所定期間内の路面性状の変化を求め、この路面性状の変化から路面補修の進捗度合いを算出する。評価モジュール110は、評価テーブル440を参照して、路面補修の進捗度合いに対応する第4の評価値を決定する。なお、路面補修の進捗度合いと第4の評価値との対応関係を4段階以上に分けて設定してもよい。
【0028】
警告システム10のハードウェア資源と評価モジュール110との協働により、事故予防に関わる評価値を決定する評価手段としての機能が実現される。
【0029】
判定モジュール120は、評価値(例えば、(i)第1の評価値及び第2の評価値の組み合わせ、(ii)第1の評価値、第2の評価値、及び第3の評価値の組み合わせ、(iii)第1の評価値、第2の評価値、及び第4の評価値の組み合わせ、又は(iv)第1の評価値、第2の評価値、第3、及び第4の評価値の組み合わせ)に基づいて、事故予防に関わる警告の要否を判定する。判定モジュール120は、例えば、第1の評価値、第2の評価値、第3の評価値、及び第4の評価値のそれぞれに重み係数を乗じてこれらの合計値が閾値を超えるか否かに応じて事故予防に関わる警告の要否を判定してもよい。或いは、判定モジュール120は、第2の評価値、第3の評価値、及び第4の評価値のそれぞれに重み係数を乗じてこれらの合計値を割り増し係数とし、第1の評価値に(1+割増係数)を乗じて得られる値が閾値を超えるか否かに応じて事故予防に関わる警告の要否を判定してもよい。警告システム10のハードウェア資源と判定モジュール120との協働により、事故予防に関わる警告の要否を判定する判定手段としての機能が実現される。
【0030】
判定モジュール120によって、警告を要すると判定されたときに、指示モジュール130は、通信ネットワーク70を通じて、車両27に警告情報を出力することを指示する。警告システム10のハードウェア資源と指示モジュール130との協働により、車両27に警告情報を出力することを指示する指示手段としての機能が実現される。
【0031】
なお、上述の説明では、道路の欠陥の種別と欠陥の度合いとから、第2の評価値を決定する例を示したが、ひび割れ、轍掘れ、平坦性の3要素を組み合わせて道路の損傷度を評価する評価指数と、第2の評価値とを予め対応付けてもよい。このような評価指数として、維持管理指数や供用性指数などが知られている。
【0032】
次に、図8を参照しながら、本実施形態に関わる警告方法の処理の流れについて説明する。まず、車載装置20は、車両27の走行状況に関わる情報を警告システム10に送信する(ステップ801)。次いで、警告システム10の通信装置13は、車両27の走行状況に関わる情報を受信する(ステップ802)。次いで、警告システム10の評価モジュール110は、車両27の走行状況に関わる情報と、事故情報データベース200に格納されている情報と、路面性状データベース300に格納されている情報とを用いて、事故予防に関わる評価値を決定する(ステップ803)。次いで、警告システム10の判定モジュール120は、事故予防に関わる警告の要否を判定する(ステップ804)。警告を要すると判定されたときに、警告システム10の指示モジュール130は、車両27に警告情報を出力することを指示する(ステップ805)。
【0033】
本実施形態によれば、車両27の走行状況と過去の交通事故発生時の車両走行状況とを比較するだけでなく、車両27が走行している道路の区間の路面性状のデータをも考慮することにより、交通事故を予防するための警告要否の判定精度を高めることができる。車両27の走行状況と過去の交通事故発生時の車両走行状況との比較を、例えば、車両27の位置情報及び速度情報と、事故発生地点の位置情報及び事故車両の速度情報との比較により行うことにより、事故再発の可能性が高い場合に、警告を行うことができる。また、車両27が走行している道路の区間の路面性状のデータから路面の欠陥の種別と欠陥の度合いとを求めることにより、欠陥の種別と欠陥の度合いとを考慮して、交通事故を予防するための警告を行うことができる。また、車両27が走行している道路の区間における所定期間内の路面性状の測定回数から測定頻度を算出することにより、測定頻度を考慮して、交通事故を予防するための警告を行うことができる。また、車両27が走行している道路の区間における所定期間内の路面性状の変化から路面補修の進捗度合いを算出することにより、路面補修の進捗度合いを考慮して、交通事故を予防するための警告を行うことができる。
【0034】
なお、以上説明した各実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るととともに、本発明にはその等価物も含まれる。即ち、各実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。また、各実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0035】
10…警告システム 11…プロセッサ 12…記憶装置 13…通信装置 100…コンピュータプログラム 110…評価モジュール 120…判定モジュール 130…指示モジュール 200…事故情報データベース 300…路面性状データベース 410…評価テーブル 420…評価テーブル 430…評価テーブル 440…評価テーブル 20…車載装置 27…車両 30…車載装置 37…路面性状測定車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8