特許第6604508号(P6604508)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6604508
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】自動車用負圧ポンプの制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/00 20060101AFI20191031BHJP
   B60T 17/02 20060101ALI20191031BHJP
   F04B 49/06 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   B60T17/00 C
   B60T17/02
   F04B49/06 341J
【請求項の数】2
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-227609(P2015-227609)
(22)【出願日】2015年11月20日
(65)【公開番号】特開2017-94843(P2017-94843A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(72)【発明者】
【氏名】松本 祥弘
(72)【発明者】
【氏名】樋渡 康治
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 慶則
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/059383(WO,A1)
【文献】 特開平09−177678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 17/00
B60T 17/02
F04B 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のバキュームブースタ内に負圧を発生させるように構成される負圧ポンプを制御する自動車用負圧ポンプの制御方法であって、前記自動車が低地に位置する際に前記負圧ポンプを制御する低地用制御パターンと、前記自動車が低地よりも高い標高の高地に位置する際に前記低地用制御パターンとは異なる手法にて前記負圧ポンプを制御する高地用制御パターンとを切り替えるパターン切替ステップを含む自動車用負圧ポンプの制御方法において、
前記低地用及び高地用制御パターンにて前記負圧ポンプを起動又は停止させる際の負圧の値としてそれぞれ設定される低地用及び高地用負圧閾値を、前記自動車の走行速度に応じて変化させる閾値変更ステップをさらに含み、
前記パターン切替ステップにて、前記低地用制御パターンから前記高地用制御パターンに切り替える際の大気圧の値である第1の大気圧閾値と、前記高地用制御パターンから前記低地用制御パターンに切り替える際の大気圧の値であると共に前記第1の大気圧閾値よりも大きくなっている第2の大気圧閾値とを異なるように設定し、
前記閾値変更ステップにて、第1の低地用負圧閾値と、第2の低地用負圧閾値と、第3の低地用負圧閾値とに変更可能とし、前記高地用負圧閾値を、第1の高地用負圧閾値と、第2の高地用負圧閾値とに変更可能とし、前記第1の低地用負圧閾値を前記第1の高地用負圧閾値と等しくし、前記第2の低地用負圧閾値を前記第2の高地用負圧閾値以上とし、かつ前記第3の低地用負圧閾値を前記第2の高地用負圧閾値よりも大きくする自動車用負圧ポンプの制御方法。
【請求項2】
前記第1の低地用負圧閾値が、前記走行速度が低地用低速領域にある際の前記低地用負圧閾値であり、
前記第2の低地用負圧閾値が、前記走行速度が前記低地用低速領域よりも大きな速度の低地用中速領域にある際の前記低地用負圧閾値であり、かつ前記第1の低地用負圧閾値よりも大きく設定された前記低地用負圧閾値であり、
前記第3の低地用負圧閾値が、前記走行速度が前記低地用中速領域よりも大きな速度の低地用高速領域にある際の前記低地用負圧閾値であり、かつ前記第2の低地用負圧閾値よりも大きく設定された前記低地用負圧閾値であり、
前記第1の高地用負圧閾値が、前記走行速度が高地用低速領域にある際の前記高地用負圧閾値であり、
前記第2の高地用負圧閾値が、前記走行速度が前記高地用低速領域よりも大きな速度の中高速領域にある際の前記高地用負圧閾値であり、かつ前記第1の高地用負圧閾値よりも大きく設定された前記高地用負圧閾値である、請求項に記載の自動車用負圧ポンプの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のバキュームブースタ内に負圧を発生させるように構成される負圧ポンプを制御する自動車用負圧ポンプの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自動車においては、ブレーキをアシストするためのバキュームブースタ(又はブレーキブースタ)内に負圧を発生させることが求められる場合があり、ディーゼルエンジン自動車、ガソリン直噴エンジン自動車、ハイブリッド自動車、アイドリングストップ自動車等のようにエンジンを有する自動車においては、このような負圧を発生させるために、エンジンの吸気経路に発生する吸気負圧を利用している。しかしながら、ハイブリッド自動車、アイドリングストップ自動車等のように運転途中にエンジンを停止することのある自動車においては、エンジンの吸気負圧を利用できない状況が生ずる。そのため、かかる状況においてもバキュームブースタ内にて負圧を得るべく、負圧ポンプが別途設けられている。さらに、電気自動車、燃料電池自動車等のようにエンジンを有さない自動車においてもまた、バキュームブースタ内にて負圧を得るべく、負圧ポンプが設けられている。
【0003】
負圧ポンプの制御においては、ブレーキをアシストするために必要な負圧を得ることができるように、バキュームブースタ内の負圧が所定の起動閾値以下になった場合に負圧ポンプを起動し、かつバキュームブースタ内の負圧が所定の停止閾値以上になった場合に負圧ポンプを停止することが行われている。このような負圧ポンプの制御方法に関する一例として、大気圧の変化に応じて起動閾値及び停止閾値を変更することが提案されている。(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照。)
【0004】
また、負圧ポンプの制御方法に関する別の一例として、自動車が低地に位置する際に、大気圧とバキュームブースタ内の絶対圧との差である負圧を所定の範囲内に維持するように制御する低地用制御パターンと、自動車が低地よりも高い標高の高地に位置する際に、バキュームブースタ内の絶対圧を所定の範囲内に維持するように制御する高地用制御パターンとを、所定の大気圧により定められた切替閾値を基準に切り替えることが提案されている。(例えば、特許文献3を参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−58457号公報
【特許文献2】特表2014−522768号公報
【特許文献3】特開平9−177678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、自動車周囲の大気圧の減少、自動車の走行速度の変化等によってバキュームブースタ内の負圧が減少する場合、バキュームブースタ内の負圧が十分に確保できないおそれがある。このようにバキュームブースタ内の必要な負圧が確保できないことによって、上述のような負圧ポンプの制御方法に関する一例では、負圧ポンプが稼働し続けるおそれがあり、その結果、負圧ポンプの稼働時間が長くなるおそれがある。この場合、負圧ポンプの寿命が短くなり、かつ負圧ポンプの故障が発生し易くなる。さらに、負圧ポンプの作動音が頻繁に発生することも好ましくない。すなわち、負圧ポンプの制御方法に関する一例においては、負圧ポンプを的確かつ効率的に制御できないという問題がある。
【0007】
また、上述のような負圧ポンプの制御方法に関する別の一例では、自動車周囲の大気圧が切替閾値近辺で推移する場合に、大気圧が切替閾値よりも小さくなることによって低地用制御パターンから高地用制御パターンに切り替わることと、大気圧が切替閾値以上になることによって高地用制御パターンから低地用制御パターンに切り替わることとが頻繁に発生するおそれがあり、負圧ポンプの制御が不安定になるおそれがある。すなわち、負圧ポンプの制御方法に関する別の一例においては、負圧ポンプを的確かつ効率的に制御できないという問題がある。
【0008】
本発明は上記課題を解決すべく成されたものであり、本発明の目的は、負圧ポンプを安定的、的確、かつ効率的に制御することができる自動車用負圧ポンプの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
課題を解決するために、本発明の一態様に係る自動車用負圧ポンプの制御方法は、自動車のバキュームブースタ内に負圧を発生させるように構成される負圧ポンプを制御する自動車用負圧ポンプの制御方法であって、前記自動車が低地に位置する際に前記負圧ポンプを制御する低地用制御パターンと、前記自動車が低地よりも高い標高の高地に位置する際に前記低地用制御パターンとは異なる手法にて前記負圧ポンプを制御する高地用制御パターンとを切り替えるパターン切替ステップを含む自動車用負圧ポンプの制御方法において、前記低地用及び高地用制御パターンにて前記負圧ポンプを起動又は停止させる際の負圧の値としてそれぞれ設定される低地用及び高地用負圧閾値を、前記自動車の走行速度に応じて変化させる閾値変更ステップをさらに含み、前記パターン切替ステップにて、前記低地用制御パターンから前記高地用制御パターンに切り替える際の大気圧の値である第1の大気圧閾値と、前記高地用制御パターンから前記低地用制御パターンに切り替える際の大気圧の値であると共に前記第1の大気圧閾値よりも大きくなっている第2の大気圧閾値とを異なるように設定し、前記閾値変更ステップにて、第1の低地用負圧閾値と、第2の低地用負圧閾値と、第3の低地用負圧閾値とに変更可能とし、前記高地用負圧閾値を、第1の高地用負圧閾値と、第2の高地用負圧閾値とに変更可能とし、前記第1の低地用負圧閾値を前記第1の高地用負圧閾値と等しくし、前記第2の低地用負圧閾値を前記第2の高地用負圧閾値以上とし、かつ前記第3の低地用負圧閾値を前記第2の高地用負圧閾値よりも大きくするまた、前記第1の低地用負圧閾値が、前記走行速度が低地用低速領域にある際の前記低地用負圧閾値であり、前記第2の低地用負圧閾値が、前記走行速度が前記低地用低速領域よりも大きな速度の低地用中速領域にある際の前記低地用負圧閾値であり、かつ前記第1の低地用負圧閾値よりも大きく設定された前記低地用負圧閾値であり、前記第3の低地用負圧閾値が、前記走行速度が前記低地用中速領域よりも大きな速度の低地用高速領域にある際の前記低地用負圧閾値であり、かつ前記第2の低地用負圧閾値よりも大きく設定された前記低地用負圧閾値であり、前記第1の高地用負圧閾値が、前記走行速度が高地用低速領域にある際の前記高地用負圧閾値であり、前記第2の高地用負圧閾値が、前記走行速度が前記高地用低速領域よりも大きな速度の中高速領域にある際の前記高地用負圧閾値であり、かつ前記第1の高地用負圧閾値よりも大きく設定された前記高地用負圧閾値であると好ましい。このような制御によって、大気圧が第1又は第2の大気圧閾値近辺にて推移する場合であっても、低地用制御パターンと高地用制御パターンとが頻繁に切り替わることを防止できる。その結果、負圧ポンプを安定的、的確、かつ効率的に制御することができる。さらに、このような制御によって、自動車が位置する場所の標高及び自動車の走行速度に応じてさらに的確な負圧を得ることができる。また、自動車の走行速度の変化に応じてバキュームブースタ内の負圧を変化させるので、走行速度の変化に起因してバキュームブースタ内の負圧が減少することを防止できて、ブレーキをアシストするために必要な負圧をバキュームブースタ内にて確保できないことに起因して負圧ポンプが稼働し続けることを防止できる。その結果、負圧ポンプの起動回数を減少させ、かつ負圧ポンプの駆動時間を短くすることができるので、負圧ポンプの寿命を長くし、かつ負圧ポンプからの作動音の発生を減らすように、負圧ポンプを効率的に制御することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様に係る自動車用負圧ポンプの制御方法によれば、負圧ポンプを安定的、的確、かつ効率的に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る負圧ポンプの制御方法を実施可能な制御システムを概略的に示すブロック図である。
図2】本発明の第1実施形態における低地用制御パターンと高地用制御パターンとの切替を説明するためのフローチャートを示す図である。
図3】本発明の第1実施形態の低地用制御パターンを説明するためのフローチャートを示す図である。
図4】本発明の第1実施形態にて低地用制御パターンから高地用制御パターンに切り替える場合における標高とバキュームブースタ内の絶対圧及び負圧と大気圧との関係に関するグラフを示す図である。
図5】本発明の第1実施形態にて高地用制御パターンから低地用制御パターンに切り替える場合における標高とバキュームブースタ内の絶対圧及び負圧と大気圧との関係に関するグラフを示す図である。
図6】本発明の第1実施形態の高地用制御パターンを説明するためのフローチャートを示す図である。
図7】本発明の第2実施形態の低地用制御パターンにおける自動車の走行速度と起動負圧閾値と停止負圧閾値との関係に関するグラフを示す図である。
図8】本発明の第2実施形態の低地用制御パターンにおける起動及び停止負圧閾値の変更を説明するためのフローチャートを示す図である。
図9】本発明の第2実施形態の高地用制御パターンにおける自動車の走行速度と起動負圧閾値と停止負圧閾値との関係に関するグラフを示す図である。
図10】本発明の第2実施形態の高地用制御パターンにおける起動及び停止負圧閾値の変更を説明するためのフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る負圧ポンプの制御方法について説明する。
【0015】
[制御システムについて]
最初に、本実施形態に係る負圧ポンプの制御方法を実施可能な制御システムについて説明する。なお、本実施形態では、一例として、制御システムは、エンジンを有するハイブリッド自動車に用いられるように構成されるものとする。図1に示すように、制御システム1は、自動車のブレーキをアシスト可能に構成されるバキュームブースタ2と、自動車のエンジン3とを含んでいる。かかる制御システム1はまた、自動車周囲の大気圧とバキュームブースタ2内の絶対圧との差である負圧(以下、「ブースタ負圧」という)をバキュームブースタ2内に発生可能に構成される電動負圧ポンプ(以下、単に「負圧ポンプ」という)4を備えている。
【0016】
バキュームブースタ2は、第1のバキュームライン5によってエンジン3と接続され、かつ第2のバキュームライン6によって負圧ポンプ4と接続されている。ブースタ負圧は、エンジン3の吸気経路にて発生する吸気負圧、及び負圧ポンプ4により発生する負圧の少なくとも一方を用いて得られるようになっている。
【0017】
さらに、制御システム1は、ハイブリッド自動車の駆動力の分配等を制御可能に構成されるハイブリッドシステムコントローラ7と、自動車の横滑りを防止するための制御を可能とするように構成されるESP(Electronic Stability Program)モジュール8と、エンジン3を制御可能に構成されるエンジンコントローラ9とを含んでいる。かかる制御システム1はまた、負圧ポンプ4の駆動源として用いられる電源10と、バキュームブースタ2内の絶対圧(以下、「ブースタ絶対圧」という)を測定可能に構成されると共にバキュームブースタ2に取り付けられる絶対圧センサ11と、大気圧を測定可能に構成される大気圧センサ12と、自動車の走行速度を測定可能とする車速センサ13とを備えている。なお、本実施形態では、一例として、大気圧センサ12はエンジン3に取り付けられるものとする。
【0018】
電源10は、第1のハードワイヤ14によって負圧ポンプ4と電気的に接続されている。ハイブリッドシステムコントローラ7から延びる第2のハードワイヤ15は、リレーユニット16を介して、負圧ポンプ4及び電源10を接続する第1のハードワイヤ14と電気的に接続されている。ハイブリッドシステムコントローラ7は、リレーユニット16と協働して、負圧ポンプ4及び電源10の電気的な接続を維持した状態と、かかる電気的な接続を遮断した状態とを切り替え可能とするように構成されている。さらに、絶対圧センサ11が、第3のハードワイヤ17によってESPモジュール8と電気的に接続されている。大気圧センサ12は、第4のハードワイヤ18によってエンジンコントローラ9と電気的に接続されている。車速センサ13は、第5のハードワイヤ19によってESPモジュール8と電気的に接続されている。
【0019】
ハイブリッドシステムコントローラ7及びESPモジュール8は、第1のデータ転送ユニット20を用いて、それらの間でデータ転送を可能とするように互いに接続されている。ESPモジュール8及びエンジンコントローラ9もまた、第2のデータ転送ユニット21を用いて、それらの間でデータ転送を可能とするように互いに接続されている。なお、第1及び第2のデータ転送ユニット20,21の少なくとも一方が、CAN(Controller Area Network)となっていると好ましい。
【0020】
しかしながら、本発明の制御システムはこれに限定されず、制御システムは、ハイブリッド自動車以外のエンジン付き自動車、例えば、アイドリングストップ自動車等に用いられるように構成するか、又はエンジンを有さない自動車、例えば、電気自動車、燃料電池自動車等に用いられるように構成することができる。特に、エンジンを有さない自動車に用いられる場合においては、制御システムが、エンジン及びエンジンコントローラの代わりに、モータ及び該モータを制御するように構成されたモータコントローラを有し、この場合、ブースタ負圧は、エンジンを有する自動車のようにエンジンの吸気経路にて発生する吸気負圧を用いることなく、負圧ポンプにより発生する負圧を用いて制御されることとなる。かかる制御システムはまた、ハイブリッドシステムコントローラの代わりに、負圧ポンプ及び電源の電気的な接続を維持した状態と、かかる電気的な接続を遮断した状態とを切り替え可能とするように構成されたコントローラを別途有することができる。さらに、制御システムがアイドリングストップ自動車に用いられる場合には、制御システムは、ハイブリッドシステムコントローラの代わりに、アイドリング時にエンジンを停止可能とする機能を制御するように構成されたコントローラを有するとよい。
【0021】
[制御方法について]
次に、本実施形態に係る負圧ポンプ4の制御方法について説明する。負圧ポンプ4の制御方法においては、上述の制御システム1を用いて負圧ポンプ4を制御する。図2に示すように、かかる負圧ポンプ4の制御方法においては、自動車が低地に位置する際に負圧ポンプ4を制御する低地用制御パターンと、自動車が低地よりも高い標高の高地に位置する際に低地用制御パターンとは異なる手法にて負圧ポンプ4を制御する高地用制御パターンとを切り替え可能としている。低地用制御パターンでは、ブースタ負圧を所望の範囲内に維持するように負圧ポンプ4を制御し、かつ高地用制御パターンでは、ブースタ絶対圧を所望の範囲内に維持するように負圧ポンプ4を制御する。このような低地用及び高地用制御パターンの詳細については後述する。
【0022】
[低地用及び高地用制御パターンの切替について]
低地用及び高地用制御パターンの切替について、初期状態で自動車が低地に位置する場合を用いて説明する。図2に示すように、最初に自動車が低地に位置した状態にて、ハイブリッドシステムコントローラ7を用いて負圧ポンプ4を低地用制御パターンにて制御する(ステップSTP1)。大気圧センサ12を用いて自動車周囲の大気圧を測定し、大気圧の測定値Aを大気圧センサ12からエンジンコントローラ9に送り、さらに、大気圧の測定値Aをエンジンコントローラ9からESPモジュール8に送り、必要に応じて、大気圧の測定値AをESPモジュール8からハイブリッドシステムコントローラ7に送る。ハイブリッドシステムコントローラ7及びESPモジュール8の少なくとも一方を用いて、大気圧の測定値Aが低地用制御パターンから高地用制御パターンに切り替える際の基準となる第1の大気圧閾値b1以下であるか否かを判定する(ステップSTP2)。なお、第1の大気圧閾値b1は、自動車が位置する場所の標高Hが第1の標高閾値i1である場合の大気圧の値A’に相当する。あくまでも一例であるが、第1の大気圧閾値b1は約85kPaであると好ましい。
【0023】
大気圧の測定値Aが第1の大気圧閾値b1よりも大きい場合(すなわち、標高Hが第1の標高閾値i1よりも小さい場合)(NO)、負圧ポンプ4を引き続き低地用制御パターンにて制御する(ステップSTP1)。その一方で、大気圧の測定値Aが第1の大気圧閾値b1以下である場合(すなわち、標高Hが第1の標高閾値i1以上である場合)(YES)、ハイブリッドシステムコントローラ7及びESPモジュール8の少なくとも一方を用いて、負圧ポンプ4の制御を低地用制御パターンから高地用制御パターンに切り替えると共に、負圧ポンプ4を高地用制御パターンにて制御する(ステップSTP3)。再び、大気圧センサ12を用いて自動車周囲の大気圧を測定し、大気圧の測定値Aを大気圧センサ12からエンジンコントローラ9に送り、さらに、大気圧の測定値Aをエンジンコントローラ9からESPモジュール8に送り、必要に応じて、大気圧の測定値AをESPモジュール8からハイブリッドシステムコントローラ7に送る。ハイブリッドシステムコントローラ7及びESPモジュール8の少なくとも一方を用いて、大気圧の測定値Aが高地用制御パターンから低地用制御パターンに切り替える際の基準となる第2の大気圧閾値b2以上であるか否かを判定する(ステップSTP4)。なお、第2の大気圧閾値b2は、自動車が位置する場所の標高Hが第2の標高閾値i2である場合の大気圧の値A’に相当する。また、第2の大気圧閾値b2は第1の大気圧閾値b1よりも大きいと好ましい。あくまでも一例であるが、第2の大気圧閾値b2は約90kPaであると好ましい。このような第1及び第2の大気圧閾値b1,b2の差は約5kPaであるとより好ましい。
【0024】
大気圧の測定値Aが第2の大気圧閾値b2よりも小さい場合(すなわち、標高Hが第2の標高閾値i2よりも大きい場合)(NO)、負圧ポンプ4を引き続き高地用制御パターンにて制御する(ステップSTP3)。その一方で、大気圧の測定値Aが第2の大気圧閾値b2以上の場合(すなわち、標高Hが第2の標高閾値i2以下である場合)(YES)、ハイブリッドシステムコントローラ7及びESPモジュール8の少なくとも一方を用いて、負圧ポンプ4の制御を高地用制御パターンから低地用制御パターンに切り替えると共に、負圧ポンプ4を低地用制御パターンにて制御する(ステップSTP1)。
【0025】
[低地用制御パターンについて]
低地用制御パターンの詳細について、初期状態で負圧ポンプ4が停止している場合を用いて説明する。図3に示すように、最初に負圧ポンプ4は停止した状態となっている(ステップSTP11)。大気圧センサ12を用いて自動車周囲の大気圧を測定し、大気圧の測定値Aを大気圧センサ12からエンジンコントローラ9に送り、さらに、大気圧の測定値Aをエンジンコントローラ9からESPモジュール8に送る。また、絶対圧センサ11を用いてブースタ絶対圧を測定し、ブースタ絶対圧の測定値DをESPモジュール8に送る。ESPモジュール8を用いて、これら大気圧の測定値A及びブースタ絶対圧の測定値Dに基づいてブースタ負圧の算出値Pを算出する。必要に応じて、ブースタ負圧の算出値PをESPモジュール8からハイブリッドシステムコントローラ7に送る。ハイブリッドシステムコントローラ7及びESPモジュール8の少なくとも一方を用いて、ブースタ負圧の算出値Pが起動負圧閾値q以下であるか否かを判定する(ステップSTP12)。
【0026】
ブースタ負圧の算出値Pが起動負圧閾値qよりも大きい場合(NO)、負圧ポンプ4を停止した状態にて維持する(ステップSTP11)。その一方で、ブースタ負圧の算出値Pが起動負圧閾値q以下である場合(YES)、ハイブリッドシステムコントローラ7及びリレーユニット16を用いて負圧ポンプ4と電源10とを電気的に接続することによって、負圧ポンプ4を起動する(ステップSTP13)。再び、大気圧センサ12を用いて自動車周囲の大気圧を測定し、大気圧の測定値Aを大気圧センサ12からエンジンコントローラ9に送り、さらに、大気圧の測定値Aをエンジンコントローラ9からESPモジュール8に送る。また、絶対圧センサ11を用いてブースタ絶対圧を測定し、ブースタ絶対圧の測定値DをESPモジュール8に送る。ESPモジュール8を用いて、これら大気圧の測定値A及びブースタ絶対圧の測定値Dに基づいてブースタ負圧の算出値Pを算出する。必要に応じて、ブースタ負圧の算出値PをESPモジュール8からハイブリッドシステムコントローラ7に送る。ハイブリッドシステムコントローラ7及びESPモジュール8の少なくとも一方を用いて、ブースタ負圧の算出値Pが停止負圧閾値r以上であるか否かを判定する(ステップSTP14)。
【0027】
ブースタ負圧の算出値Pが停止負圧閾値rよりも小さい場合(NO)、負圧ポンプ4を起動した状態にて維持する(ステップSTP13)。その一方で、ブースタ負圧の算出値Pが停止負圧閾値r以上である場合(YES)、ハイブリッドシステムコントローラ7及びリレーユニット16を用いて負圧ポンプ4と電源10との電気的接続を遮断することによって、負圧ポンプ4を停止する(ステップSTP11)。
【0028】
なお、停止負圧閾値rは起動負圧閾値qよりも大きくなっている。あくまでも一例であるが、起動負圧閾値qは約47kPa以上かつ約67kPa以下であると好ましく、停止負圧閾値rは約60kPa以上かつ約74kPa以下であると好ましい。このような起動及び停止負圧閾値q,rの差は約7kPa以上かつ約13kPa以下であるとより好ましい。
【0029】
また、低地用制御パターンから高地用制御パターンへの切替時に関する図4においては、横軸は自動車が位置する場所の標高H(m)を示し、左側の縦軸はブースタ絶対圧の値D’(Pa)を示し、右側の縦軸は大気圧の値A’(Pa)を表す。かかる図4について、起動負圧閾値qは、標高Hが第1の標高閾値i1よりも小さい領域にて、一点鎖線Lにより示した大気圧と実線M1により示した負圧ポンプ4起動時のブースタ絶対圧との差となっており、かつ停止負圧閾値rは、標高Hが第1の標高閾値i1よりも小さい領域にて、一点鎖線Lにより示した大気圧と二点鎖線N1により示した負圧ポンプ4停止時のブースタ絶対圧との差となっている。
【0030】
高地用制御パターンから低地用制御パターンへの切替時に関する図5においては、横軸は自動車が位置する場所の標高H(m)を示し、左側の縦軸はブースタ絶対圧の値D’(Pa)を示し、右側の縦軸は大気圧の値A’(Pa)を表す。かかる図5について、起動負圧閾値qは、標高Hが第2の標高閾値i2以下である領域にて、一点鎖線Lにより示した大気圧と実線M2により示した負圧ポンプ4起動時のブースタ絶対圧との差となっており、かつ停止負圧閾値rは、標高Hが第2の標高閾値i2以下である領域にて、一点鎖線Lにより示した大気圧と二点鎖線N2により示した負圧ポンプ4停止時のブースタ絶対圧との差となっている。
【0031】
[高地用制御パターンについて]
高地用制御パターンの詳細について、初期状態で負圧ポンプ4が停止している場合を用いて説明する。図6に示すように、最初に負圧ポンプ4は停止した状態となっている(ステップSTP21)。絶対圧センサ11を用いてブースタ絶対圧を測定し、ブースタ絶対圧の測定値DをESPモジュール8に送る。必要に応じて、ブースタ絶対圧の測定値DをESPモジュール8からハイブリッドシステムコントローラ7に送る。ハイブリッドシステムコントローラ7及びESPモジュール8の少なくとも一方を用いて、ブースタ絶対圧の測定値Dが起動絶対圧閾値e以上であるか否かを判定する(ステップSTP22)。
【0032】
ブースタ絶対圧の測定値Dが起動絶対圧閾値eよりも小さい場合(NO)、負圧ポンプ4を停止した状態にて維持する(ステップSTP21)。その一方で、ブースタ負圧の算出値Pが起動絶対圧閾値e以上である場合(YES)、ハイブリッドシステムコントローラ7及びリレーユニット16を用いて負圧ポンプ4と電源10との電気的に接続することによって、負圧ポンプ4を起動する(ステップSTP23)。再び絶対圧センサ11を用いてブースタ絶対圧を測定し、ブースタ絶対圧の測定値DをESPモジュール8に送る。必要に応じて、ブースタ絶対圧の測定値DをESPモジュール8からハイブリッドシステムコントローラ7に送る。ハイブリッドシステムコントローラ7及びESPモジュール8の少なくとも一方を用いて、ブースタ絶対圧の測定値Dが停止絶対圧閾値f以下であるか否かを判定する(ステップSTP24)。
【0033】
ブースタ絶対圧の測定値Dが停止絶対圧閾値fよりも大きい場合(NO)、負圧ポンプ4を起動した状態にて維持する(ステップSTP23)。その一方で、ブースタ絶対圧の測定値Dが停止絶対圧閾値f以下である場合(YES)、ハイブリッドシステムコントローラ7及びリレーユニット16を用いて負圧ポンプ4と電源10との電気的接続を遮断することによって、負圧ポンプ4を停止する(ステップSTP21)。
【0034】
なお、停止絶対圧閾値fは起動絶対圧閾値eよりも大きくなっている。あくまでも一例であるが、起動絶対圧閾値eは約40kPa以上かつ約53kPa以下であると好ましく、停止絶対圧閾値fは約37kPa以上かつ約40kPa以下であると好ましい。このような起動及び停止絶対圧閾値e,fの差は約3kPa以上かつ約13kPa以下であるとより好ましい。
【0035】
低地用制御パターンから高地用制御パターンへの切替時に関する図4においては、起動絶対圧閾値eは、標高Hが第1の標高閾値i1以上の領域にて、実線M1により示した負圧ポンプ4起動時のブースタ絶対圧となっており、かつ停止負圧閾値rは、標高Hが第1の標高閾値i1以上の領域にて、二点鎖線N1により示した負圧ポンプ4停止時のブースタ絶対圧となっている。
【0036】
高地用制御パターンから低地用制御パターンへの切替時に関する図5においては、起動絶対圧閾値eは、標高Hが第2の標高閾値i2よりも大きい領域にて、実線M2により示した負圧ポンプ4起動時のブースタ絶対圧となっており、かつ停止負圧閾値rは、標高Hが第2の標高閾値i2よりも大きい領域にて、二点鎖線N2により示した負圧ポンプ4停止時のブースタ絶対圧となっている。
【0037】
しかしながら、本発明の低地用及び高地用制御パターンはこれに限定されず、第2の大気圧閾値b2は第1の大気圧閾値b1よりも小さくなっていてもよい。この場合、低地用制御パターンから高地用制御パターンに切り替える場合における標高と大気圧並びにブースタ負圧及びブースタ絶対圧との関係を図5に示すようなものとすることができ、かつ高地用制御パターンから低地用制御パターンに切り替える場合における標高と大気圧並びにブースタ負圧及びブースタ絶対圧との関係を図4に示すようなものとすることができる。仮に、これらの関係を図に表した場合においては、第1の大気圧閾値b1と第2の大気圧閾値b2とは入れ替わって示されることとなる。
【0038】
[作用及び効果について]
以上、本実施形態に係る負圧ポンプ4の制御方法によれば、大気圧が第1又は第2の大気圧閾値b1,b2近辺にて推移する場合であっても、低地用制御パターンと高地用制御パターンとが頻繁に切り替わることを防止できる。その結果、負圧ポンプ4を安定的、的確、かつ効率的に制御することができる。
【0039】
また、本実施形態に係る負圧ポンプ4の制御方法によれば、負圧ポンプ4がブースタ絶対圧に基づいて制御されるので、特に、自動車が低い大気圧となる高地に位置することによって自動車周囲の大気圧が減少する場合であっても、ブレーキをアシストするために必要なブレーキ負圧を確保できないことに起因して負圧ポンプ4が稼働し続けることを防止できる。その結果、負圧ポンプ4の起動回数を減少させ、かつ負圧ポンプ4の駆動時間を短くすることができるので、負圧ポンプ4の寿命を長くし、かつ負圧ポンプ4からの作動音の発生を減らすように、負圧ポンプ4を効率的に制御することができる。
【0040】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る負圧ポンプの制御方法について説明する。本実施形態に係る負圧ポンプの制御方法を実施可能とする制御システムは、第1実施形態と同様とする。本実施形態に係る負圧ポンプの制御方法においては、第1実施形態と同様に、低地用制御パターンと高地用制御パターンとを切り替えるようになっている。
【0041】
これに対して、本実施形態の低地用及び高地用制御パターンは第1実施形態の低地用及び高地用制御パターンとは異なっており、これらの両方が、ブースタ負圧を所望の範囲内に維持するように負圧ポンプ4を制御するようになっている。すなわち、本実施形態の低地用及び高地用制御パターンの両方において、第1実施形態の低地用制御パターンと同様に、ブースタ負圧の算出値Pを算出し、かつブースタ負圧の算出値Pに基づいて、ブースタ負圧を所望の範囲内に維持するように負圧ポンプ4の起動及び停止を制御する。
【0042】
[低地用制御パターンについて]
このような低地用制御パターンの詳細について説明する。低地用制御パターンにおいては、ハイブリッドシステムコントーラ7は、ブースタ負圧の算出値Pが自動車の走行速度に応じて変更可能な起動負圧閾値s以下である場合に負圧ポンプ4を起動し、かつブースタ負圧の算出値Pが自動車の走行速度に応じて変更可能な停止負圧閾値t以上である場合に負圧ポンプ4を停止する。
【0043】
[低地用制御パターンにおける起動及び停止負圧閾値の変更について]
低地用制御パターンにおける起動及び停止負圧閾値s,tの変更について、図7を参照して説明する。なお、図7においては、横軸は自動車の走行速度の値W’(km/h)を示し、左側の縦軸は起動負圧閾値s(Pa)を示し、右側の縦軸は停止負圧閾値t(Pa)を示す。さらに、図7においては、走行速度の変化に応じて設定された第1〜第3の起動負圧閾値s1,s2,s3をX印により示し、かつ走行速度の変化に応じて設定された第1〜第3の停止負圧閾値t1,t2,t3を丸印により示す。かかる図7に示すように、起動負圧閾値sは、走行速度が起動低速領域にある際の第1の起動負圧閾値s1と、走行速度が起動中速領域にある際の第2の起動負圧閾値s2と、走行速度が起動高速領域にある際の第3の起動負圧閾値s3とに変更されるようになっている。起動低速領域は、走行速度の値W’が第1の起動車速閾値x1よりも小さい範囲にて設定され、中速領域は、走行速度の値W’が第1の起動車速閾値x1以上であると共に第2の起動車速閾値x2よりも小さい範囲にて設定され、高速領域は、走行速度の値W’が第2の起動車速閾値x2以上である範囲に設定される。第2の起動車速閾値x2は第1の起動車速閾値x1よりも大きくなっている。
【0044】
第2の起動負圧閾値s2は第1の起動負圧閾値s1よりも大きく設定され、かつ第3の起動負圧閾値s3は第2の起動停止負圧閾値s2よりも大きく設定される。あくまでも一例であるが、第1の起動負圧閾値s1は約47kPaであると好ましく、第2の起動負圧閾値s2は約60kPaであると好ましく、第3の起動負圧閾値s3は約67kPaであると好ましい。このような第1及び第2の起動負圧閾値s1,s2の差は約13kPaであるとより好ましく、第2及び第3の起動負圧閾値s2,s3の差は約7kPaであるとより好ましい。第1の起動車速閾値x1は約20km/h以上かつ約30km/h以下であると好ましく、かつ第2の起動車速閾値x2は約60km/h以上かつ約70km/h以下であると好ましい。
【0045】
その一方で、停止負圧閾値tは、走行速度が停止低速領域にある際の第1の停止負圧閾値t1と、走行速度が停止中速領域にある際の第2の停止負圧閾値t2と、走行速度が停止高速領域にある際の第3の停止負圧閾値t3とに変更されるようになっている。停止低速領域は、走行速度の値W’が第1の停止車速閾値y1よりも小さい範囲にて設定され、中速領域は、走行速度の値W’が第1の停止車速閾値y1以上であると共に第2の停止車速閾値y2よりも小さい範囲にて設定され、高速領域は、走行速度の値W’が第2の停止車速閾値y2以上である範囲に設定される。第2の停止車速閾値y2は第1の停止車速閾値y1よりも大きくなっている。
【0046】
第2の停止負圧閾値t2は第1の停止負圧閾値t1よりも大きく設定され、かつ第3の停止負圧閾値t3は第2の停止負圧閾値t2よりも大きく設定される。あくまでも一例であるが、第1の停止負圧閾値t1は約60kPaであると好ましく、第2の停止負圧閾値t2は約67kPaであると好ましく、第3の停止負圧閾値t3は約74kPaであると好ましい。このような第1及び第2の停止負圧閾値t1,t2の差は約7kPaであるとより好ましく、第2及び第3の停止負圧閾値t2,t3の差は約7kPaであるとより好ましい。第1の停止車速閾値y1は約10km/h以上かつ約20km/h以下であると好ましく、かつ第2の停止車速閾値y2は約40km/h以上かつ約50km/h以下であると好ましい。
【0047】
ここで、起動及び停止負圧閾値s,tの変更の制御フローについて、初期状態で自動車が停止している場合を用いて説明する。図8に示すように、自動車が走行を開始する(ステップSTP31)。走行速度が起動又は停止低速領域にあり、起動又は停止負圧閾値s,tが第1の起動又は停止負圧閾値s1,t1となる(ステップSTP32)。ハイブリッドシステムコントローラ7が、その内部に設けられるインバータ(図示せず)の電流値、電圧値等に基づいて走行速度の測定値Wを推測するか、又は車速センサ13を用いて走行速度を測定し、走行速度の測定値WをESPモジュール8に送り、必要に応じて、走行速度の測定値WをESPモジュール8からハイブリッドシステムコントローラ7に送る。ハイブリッドシステムコントローラ7及びESPモジュール8の少なくとも一方を用いて、走行速度の測定値Wが第1の起動又は停止車速閾値x1,y1以上であるか否かを判定する(ステップSTP33)。
【0048】
走行速度の測定値Wが第1の起動又は停止車速閾値x1,y1よりも小さい場合(NO)、走行速度が起動又は停止低速領域にあり、起動又は停止負圧閾値s,tを第1の起動又は停止負圧閾値s1,t1とした状態に維持する(ステップSTP32)。その一方で、走行速度の測定値Wが第1の起動又は停止車速閾値x1,y1以上である場合(YES)、走行速度が起動又は停止中速領域にあり、起動又は停止負圧閾値s,tを第1の起動又は停止負圧閾値s1,t1から第2の起動又は停止負圧閾値s2,t2に変更する(ステップSTP34)。再び、ハイブリッドシステムコントローラ7が、その内部に設けられるインバータ(図示せず)の電流値、電圧値等に基づいて走行速度の測定値Wを推測するか、又は車速センサ13を用いて走行速度を測定し、走行速度の測定値WをESPモジュール8に送り、必要に応じて、走行速度の測定値WをESPモジュール8からハイブリッドシステムコントローラ7に送る。ハイブリッドシステムコントローラ7及びESPモジュール8の少なくとも一方を用いて、走行速度の測定値Wが第1の起動又は停止車速閾値x1,y1以上であるか否かを判定する(ステップSTP35)。
【0049】
走行速度の測定値Wが第1の起動又は停止車速閾値x1,y1よりも小さい場合(NO)、走行速度が起動又は停止低速領域にあり、起動又は停止負圧閾値s,tを第2の起動又は停止負圧閾値s2,t2から第1の起動又は停止負圧閾値s1,t1に変更する(ステップSTP32)。その一方で、走行速度の測定値Wが第1の起動又は停止車速閾値x1,y1以上である場合(YES)、ハイブリッドシステムコントローラ7及びESPモジュール8の少なくとも一方を用いて、走行速度の測定値Wが第2の起動又は停止車速閾値x2,y2以上であるか否かを判定する(ステップSTP36)。
【0050】
走行速度の測定値Wが第2の起動又は停止車速閾値x2,y2よりも小さい場合(NO)、走行速度が起動又は停止中速領域にあり、起動又は停止負圧閾値s,tを第2の起動又は停止負圧閾値s2,t2とした状態に維持する(ステップSTP34)。その一方で、走行速度の測定値Wが第2の起動又は停止車速閾値x2,y2以上である場合(YES)、走行速度が起動又は停止高速領域にあり、起動又は停止負圧閾値s,tを第2の起動又は停止負圧閾値s2,t2から第3の起動又は停止負圧閾値s3,t3に変更する(ステップSTP37)。さらに、ハイブリッドシステムコントローラ7及びESPモジュール8の少なくとも一方を用いて、走行速度の測定値Wが第2の起動又は停止車速閾値x2,y2以上であるか否かを判定する(ステップSTP38)。
【0051】
走行速度の測定値Wが第2の起動又は停止車速閾値x2,y2よりも小さい場合(NO)、走行速度が起動又は停止中速領域にあり、起動又は停止負圧閾値s,tを第3の起動又は停止負圧閾値s3,t3から第2の起動又は停止負圧閾値s2,t2に変更する(ステップSTP34)。その一方で、走行速度の測定値Wが第2の起動又は停止車速閾値x2,y2以上である場合(YES)、走行速度が起動又は停止高速領域にあり、起動又は停止負圧閾値s,tを第3の起動又は停止負圧閾値s3,t3とした状態に維持する(ステップSTP37)。
【0052】
しかしながら、本発明における起動及び停止負圧閾値s,tの変更の制御フローはこれに限定されず、走行速度が起動又は停止中速領域にある際に、以下のステップが実施されてもよい。ハイブリッドシステムコントローラ7及びESPモジュール8の少なくとも一方を用いて、走行速度の測定値Wが第2の起動又は停止車速閾値x2,y2以上であるか否かを判定する。走行速度の測定値Wが第2の起動又は停止車速閾値x2,y2以上である場合(YES)、走行速度が起動又は停止高速領域にあり、起動又は停止負圧閾値s,tを第2の起動又は停止負圧閾値s2,t2から第3の起動又は停止負圧閾値s3,t3に変更する。その一方で、走行速度の測定値Wが第2の起動又は停止車速閾値x2,y2よりも小さい場合(NO)、ハイブリッドシステムコントローラ7及びESPモジュール8の少なくとも一方を用いて、走行速度の測定値Wが第1の起動又は停止車速閾値x1,y1以上であるか否かを判定する。
【0053】
走行速度の測定値Wが第1の起動又は停止車速閾値x1,y1よりも小さい場合(NO)、走行速度が起動又は停止低速領域にあり、起動又は停止負圧閾値s,tを第2の起動又は停止負圧閾値s2,t2から第1の起動又は停止負圧閾値s1,t1に変更する。その一方で、走行速度の測定値Wが第1の起動又は停止車速閾値x1,y1以上である場合(YES)、走行速度が起動又は停止高速領域にあり、起動又は停止負圧閾値s,tを第2の起動又は停止負圧閾値s2,t2から第3の起動又は停止負圧閾値s3,t3に変更する。
【0054】
[高地用制御パターンについて]
高地用制御パターンの詳細について説明する。高地用制御パターンにおいては、ハイブリッドシステムコントーラ7は、ブースタ負圧の算出値Pが自動車の走行速度の測定値Wに応じて変更可能な起動負圧閾値u以下である場合に負圧ポンプ4を起動し、かつブースタ負圧の算出値Pが自動車の走行速度の測定値Wに応じて変更可能な停止負圧閾値v以上である場合に負圧ポンプ4を停止する。
【0055】
[高地用制御パターンにおける起動及び停止負圧閾値の変更について]
高地用制御パターンにおける起動及び停止負圧閾値u,vの変更について、図9を参照して説明する。なお、図9においては、横軸は自動車の走行速度の測定値W(km/h)を示し、左側の縦軸は起動負圧閾値u(Pa)を示し、右側の縦軸は停止負圧閾値v(Pa)を示す。さらに、図9においては、走行速度の変化に応じて設定された第1及び第2の起動負圧閾値u1,u2をX印により示し、かつ走行速度の変化に応じて設定された第1及び第2の停止負圧閾値v1,v2を丸印により示す。かかる図9に示すように、起動負圧閾値uは、走行速度の測定値Wが起動低速領域にある際の第1の起動負圧閾値u1と、走行速度の測定値Wが起動中高速領域にある際の第2の起動負圧閾値u2とに変更されるようになっている。起動低速領域は、走行速度の値W’が起動車速閾値zよりも小さい範囲にて設定され、起動中高速領域は、走行速度の値W’が起動車速閾値z以上である範囲にて設定される。
【0056】
第2の起動負圧閾値u2は第1の起動負圧閾値u1よりも大きく設定される。あくまでも一例であるが、第1の起動負圧閾値u1は約47kPaであると好ましく、第2の起動負圧閾値u2は約60kPaであると好ましい。このような第1及び第2の起動負圧閾値u1,u2の差は約17kPaであるとより好ましい。起動車速閾値zは約10km/h以上かつ約50km/h以下であると好ましい。
【0057】
その一方で、停止負圧閾値vは、走行速度の測定値Wが停止低速領域にある際の第1の停止負圧閾値v1と、走行速度の測定値Wが停止中高速領域にある際の第2の停止負圧閾値v2とに変更されるようになっている。停止低速領域は、走行速度の値W’が停止車速閾値σよりも小さい範囲にて設定され、停止中高速領域は、走行速度の値W’が停止車速閾値σ以上である範囲にて設定される。
【0058】
第2の停止負圧閾値v2は第1の停止負圧閾値v1よりも大きく設定される。あくまでも一例であるが、第1の停止負圧閾値v1は約60kPaであると好ましく、第2の停止負圧閾値v2は約63kPaであると好ましい。このような第1及び第2の停止負圧閾値v1,v2の差は約3kPaであるとより好ましい。停止車速閾値σは約10km/h以上かつ約50km/h以下であると好ましい。
【0059】
起動及び停止負圧閾値u,vの変更の制御フローについて、初期状態で自動車が停止している場合を用いて説明する。図10に示すように、自動車が走行を開始する(ステップSTP41)。走行速度が起動又は停止低速領域にあり、起動又は停止負圧閾値u,vが第1の起動又は停止負圧閾値u1,v1となる(ステップSTP42)。ハイブリッドシステムコントローラ7が、その内部に設けられるインバータ(図示せず)の電流値、電圧値等に基づいて走行速度の測定値Wを推測するか、又は車速センサ13を用いて走行速度を測定し、走行速度の測定値WをESPモジュール8に送り、必要に応じて、走行速度の測定値WをESPモジュール8からハイブリッドシステムコントローラ7に送る。ハイブリッドシステムコントローラ7及びESPモジュール8の少なくとも一方を用いて、走行速度の測定値Wが起動又は停止車速閾値z,σ以上であるか否かを判定する(ステップSTP43)。
【0060】
走行速度の測定値Wが起動又は停止車速閾値z,σよりも小さい場合(NO)、走行速度が起動又は停止低速領域にあり、起動又は停止負圧閾値u,vを第1の起動又は停止負圧閾値u1,v1とした状態に維持する(ステップSTP42)。その一方で、走行速度の測定値Wが起動又は停止車速閾値z,σ以上である場合(YES)、走行速度が起動又は停止中高速領域にあり、起動又は停止負圧閾値u,vを第1の起動又は停止負圧閾値u1,v1から第2の起動又は停止負圧閾値u2,v2に変更する(ステップSTP44)。再び、ハイブリッドシステムコントローラ7が、その内部に設けられるインバータ(図示せず)の電流値、電圧値等に基づいて走行速度の測定値Wを推測するか、又は車速センサ13を用いて走行速度を測定し、走行速度の測定値WをESPモジュール8に送り、必要に応じて、走行速度の測定値WをESPモジュール8からハイブリッドシステムコントローラ7に送る。ハイブリッドシステムコントローラ7及びESPモジュール8の少なくとも一方を用いて、走行速度の測定値Wが起動又は停止車速閾値z,σ以上であるか否かを判定する(ステップSTP45)。
【0061】
走行速度の測定値Wが起動又は停止車速閾値z,σよりも小さい場合(NO)、走行速度が起動又は停止低速領域にあり、起動又は停止負圧閾値u,vを第2の起動又は停止負圧閾値u2,v2から第1の起動又は停止負圧閾値u1,v1に変更する(ステップSTP42)。その一方で、走行速度の測定値Wが起動又は停止車速閾値z,σ以上である場合(YES)、走行速度が起動又は停止中高速領域にあり、起動又は停止負圧閾値u,vを第2の起動又は停止負圧閾値u2,v2とした状態に維持する(ステップSTP44)。
【0062】
[低地用及び高地用制御パターンの関係について]
図7及び図9を参照して、低地用及び高地用制御パターンの関係について説明する。低地用制御パターンの第1の起動負圧閾値s1は高地用制御パターンの第1の起動負圧閾値u1と実質的に等しくなっている。低地用制御パターンの第2の起動負圧閾値s2は高地用制御パターンの第2の起動負圧閾値u2以上となっている。低地用制御パターンの第3の起動負圧閾値s3は高地用制御パターンの第2の起動負圧閾値u2よりも大きくなっている。
【0063】
低地用制御パターンの第1の停止負圧閾値t1は高地用制御パターンの第1の停止負圧閾値v1と実質的に等しくなっている。低地用制御パターンの第2の停止負圧閾値t2は高地用制御パターンの第2の停止負圧閾値v2以上となっている。低地用制御パターンの第3の停止負圧閾値t3は高地用制御パターンの第2の停止負圧閾値v2よりも大きくなっている。
【0064】
[作用及び効果について]
以上、本実施形態に係る負圧ポンプ4の制御方法によれば、大気圧が第1又は第2の大気圧閾値b1,b2近辺にて推移する場合であっても、低地用制御パターンと高地用制御パターンとが頻繁に切り替わることを防止できる。その結果、負圧ポンプ4を安定的、的確、かつ効率的に制御することができる。
【0065】
また、本実施形態に係る負圧ポンプ4の制御方法によれば、自動車の走行速度の変化に応じてブースタ負圧を変化させるので、走行速度の変化に起因してブースタ負圧が減少することを防止できて、ブレーキをアシストするために必要なブースタ負圧が確保できないことに起因して負圧ポンプ4が稼働し続けることを防止できる。その結果、負圧ポンプ4の起動回数を減少させ、かつ負圧ポンプ4の駆動時間を短くすることができるので、負圧ポンプ4の寿命を長くし、かつ負圧ポンプ4からの作動音の発生を減らすように、負圧ポンプ4を効率的に制御することができる。
【0066】
ここまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、その技術的思想に基づいて変形及び変更可能である。
【符号の説明】
【0067】
2 バキュームブースタ
4 負圧ポンプ
A 大気圧の測定値
A’ 大気圧の値
b1 第1の大気圧閾値
b2 第2の大気圧閾値
H 標高
i1 第1の標高閾値
i2 第2の標高閾値
D ブースタ絶対圧の測定値
D’ ブースタ絶対圧の値
e 起動絶対圧閾値(高地用起動絶対圧閾値)
f 停止絶対圧閾値(低地用起動絶対圧閾値)
P ブースタ負圧の算出値
q 起動負圧閾値(低地用起動負圧閾値)
r 停止負圧閾値(低地用起動負圧閾値)
s 起動負圧閾値(低地用起動負圧閾値)
s1 第1の起動負圧閾値(第1の低地用起動負圧閾値)
s2 第2の起動負圧閾値(第2の低地用起動負圧閾値)
s3 第3の起動負圧閾値(第3の低地用起動負圧閾値)
t 停止負圧閾値(低地用停止負圧閾値)
t1 第1の停止負圧閾値(第1の低地用停止負圧閾値)
t2 第2の停止負圧閾値(第2の低地用停止負圧閾値)
t3 第3の停止負圧閾値(第3の低地用停止負圧閾値)
u 起動負圧閾値(高地用起動負圧閾値)
u1 第1の起動負圧閾値(第1の高地用起動負圧閾値)
u2 第2の起動負圧閾値(第2の高地用起動負圧閾値)
v 停止負圧閾値(高地用停止負圧閾値)
v1 第1の停止負圧閾値(第1の高地用停止負圧閾値)
v2 第2の停止負圧閾値(第2の高地用停止負圧閾値)
W 走行速度の測定値
W’ 走行速度の値
x1 第1の起動車速閾値(第1の低地用起動車速閾値)
x2 第2の起動車速閾値(第2の低地用起動車速閾値)
y1 第1の停止車速閾値(第1の低地用停止車速閾値)
y2 第2の停止車速閾値(第2の低地用停止車速閾値)
z 起動車速閾値(高地用起動車速閾値)
σ 停止車速閾値(高地用停止車速閾値)
L 一点鎖線
M1,M2 実線
N1,N2 二点鎖線
STP1〜4,11〜14,21〜24,31〜38,41〜45 ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10