特許第6604517号(P6604517)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6604517
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/00 20060101AFI20191031BHJP
【FI】
   G03G15/00 303
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-66885(P2016-66885)
(22)【出願日】2016年3月29日
(65)【公開番号】特開2017-181695(P2017-181695A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2017年12月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114971
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】林 賢一
【審査官】 三橋 健二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−161416(JP,A)
【文献】 特開2012−008168(JP,A)
【文献】 特開2000−267369(JP,A)
【文献】 特開2006−208266(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0100356(US,A1)
【文献】 特開2016−045383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
G03G 15/01
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーパターンを担持する像担持体と、
前記トナーパターンまたは前記像担持体の地肌に照射される光を出力する発光素子、および前記トナーパターンまたは前記像担持体の地肌からの反射光を受光する受光素子を有するセンサーと、
前記発光素子に制御電圧を与えて前記発光素子の光量を制御するセンサー光量制御部と、
前記受光素子の出力に基づいてトナー濃度を特定する濃度特定部とを備え、
前記濃度特定部は、(a)前記発光素子の制御電圧に対する、前記像担持体の地肌からの反射光に対応する前記受光素子の出力電圧の一次係数を補正パラメーターとして特定し、(b)前記補正パラメーターおよび前記トナー濃度に対応する補正量を特定し、(c)前記補正量に基づいて前記トナー濃度を補正し、
前記濃度特定部は、前記発光素子の制御電圧に対する、前記像担持体の地肌からの反射光に対応する前記受光素子の出力電圧を特定し、前記制御電圧、前記出力電圧、前記発光素子の発光開始電圧、および前記受光素子の暗電位に基づいて前記一次係数を前記補正パラメーターとして特定し、前記補正パラメーターが所定値であるときのトナー濃度に対する前記補正量の特性に対してガンマ補正をした特性を基準特性とし、前記基準特性に合致するように、特定された前記トナー濃度に対応する前記補正量を特定すること、
前記濃度特定部は、所定の補正倍率データに基づいて、特定した前記補正パラメーターの値および前記トナー濃度に対応する補正倍率を前記補正量として特定し、前記トナー濃度に対して前記補正倍率を乗ずることで、前記トナー濃度を補正し、
前記補正パラメーターは、前記センサーの配置ばらつきに対して相関があること、
を特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記濃度特定部は、前記制御電圧をVcontとし、前記発光開始電圧をVsとし、前記受光素子の出力電圧としての前記像担持体の地肌からの正反射光および拡散反射光の検出電圧をRg,Dgとし、前記受光素子における正反射光受光素子および拡散光受光素子の暗電位をRd,Ddとし、前記補正パラメーターをGとしたとき、式G={(Rg−Rd)−(Dg−Dd)}/(Vcont−Vs)で前記補正パラメーターを特定することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記センサーは、面実装タイプのセンサーであって、
前記発光素子は、基板上に配置されたチップ状の発光素子であり、
前記受光素子は、前記基板上に配置されたチップ状の受光素子であること、
を特徴とする請求項1または請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記センサーは、前記反射光のうちの正反射光を受光する第1受光素子と、前記反射光のうちの拡散反射光を受光する第2受光素子とを備え、
前記濃度特定部は、(a)前記発光素子の制御電圧に対する、前記像担持体の地肌からの反射光に対応する前記第1受光素子の出力電圧、または前記第1受光素子と前記第2受光素子との差の一次係数を補正パラメーターとして特定し、(b)前記補正パラメーターおよび前記トナー濃度に対応する補正量を特定し、(c)前記補正量に基づいて前記トナー濃度を補正すること、
を特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
反射型光学センサーによる像担持体上のトナー濃度の測定方法として、反射型光学センサーの出力電圧の変化からトナー濃度を示す指標(後述の被覆率など)を計算する方法がある。
【0003】
そのような反射型光学センサーには、正反射拡散反射分離方式と、偏光分離方式とがある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
正反射拡散反射分離方式では、反射型光学センサーは、正反射光と拡散反射光をそれぞれ受光する2つの受光素子を備える。つまり、入射光−反射光の光軸上に、正反射受光素子が設けられ、その光軸上以外に拡散反射光受光素子が設けられる。そして、それらの受光素子の出力が、トナー濃度の検出に使用される。
【0005】
偏光分離方式では、カラートナーの偏光特性を利用し、ビームスプリッターを設けて特定の偏光を入射し、反射光をビームスプリッターで分離し、P偏光とS偏光を2つの受光素子で受光する。そして、それらの受光素子の出力が、トナー濃度の検出に使用される。
【0006】
トナー濃度の検出は、像担持体の地肌部(トナーが付着していない地肌の部分)からのセンサー出力と、トナー部(トナーが付着している部分)からのセンサー出力の比率に基づいて行われる。この比率を用いると、光学センサーの発光部のヘッド部の汚れ、光学センサーの光源としてのLED(Light Emitting Diode)の光量変化などの影響を無視できるという利点がある。
【0007】
ブラックトナーへの入射光がすべてトナーに吸収されカラートナーへの入射光が完全乱反射されるとすると、トナー種別(ブラックトナーおよびカラートナー)に拘わらず、トナーによる像担持体の被覆率Mは、以下の式で表される。
【0008】
M=1−{(R−Rd)−(D−Dd)}/{(Rg−Rd)−(Dg−Dd)}
【0009】
ここで、Rdは、正反射光受光素子の暗電位であり、Ddは、拡散光受光素子の暗電位であり、Rgは、像担持体の地肌部からの正反射光の検出電圧であり、Dgは、像担持体の地肌部からの拡散反射光の検出電圧であり、Rは、トナー部からの正反射光の検出電圧であり、Dは、トナー部からの拡散反射光の検出電圧である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−201521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の反射型光学センサーには、砲弾型のLEDおよびPD(Photo Diode)を有するタイプと、チップ状のLEDおよびPDが基板に面実装されている面実装タイプのセンサーとがある。面実装タイプのセンサーでは、チップ状のLEDおよびPDが、集光機能を有していないため、チップ状のLEDおよびPDとは別に、集光レンズが設けられている。
【0012】
面実装タイプのセンサーの場合、光学センサーと像担持体との設置位置の相対的な距離および角度のばらつきの他、集光レンズが別途設けられているため、センサー基板におけるLEDチップおよびPDチップの実装位置のばらつきが生じるがある。
【0013】
図8は、標準状態(ばらつき無し)およびチップ位置ずれが生じている状態でのトナー濃度に対するセンサー受光電圧の特性を示す図である。図8は、高光沢度(光沢度60程度)の転写ベルトの場合についての特性を示している。
【0014】
これらのばらつきに起因して、図8に示すように、反射光の受光量が変化するが、特に、像担持体からの正反射光の受光量が大きく変化する。したがって、これらのばらつきに応じて、実際のトナー濃度と、受光量から計算される測定トナー濃度(上述の被覆率など)との関係が変動してしまい、測定トナー濃度が正確に得られない可能性がある。
【0015】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、センサーの配置ばらつきに起因する誤差を抑制するように測定トナー濃度を適切に補正する画像形成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る画像形成装置は、トナーパターンを担持する像担持体と、前記トナーパターンまたは前記像担持体の地肌に照射される光を出力する発光素子、および前記トナーパターンまたは前記像担持体の地肌からの反射光を受光する受光素子を有するセンサーと、前記発光素子に制御電圧を与えて前記発光素子の光量を制御するセンサー光量制御部と、前記受光素子の出力に基づいてトナー濃度を特定する濃度特定部とを備える。そして、前記濃度特定部は、(a)前記発光素子の制御電圧に対する、前記像担持体の地肌からの反射光に対応する前記受光素子の出力電圧の一次係数を補正パラメーターとして特定し、(b)前記補正パラメーターおよび前記トナー濃度に対応する補正量を特定し、(c)前記補正量に基づいて前記トナー濃度を補正する。さらに、前記濃度特定部は、前記発光素子の制御電圧に対する、前記像担持体の地肌からの反射光に対応する前記受光素子の出力電圧を特定し、前記制御電圧、前記出力電圧、前記発光素子の発光開始電圧、および前記受光素子の暗電位に基づいて前記一次係数を前記補正パラメーターとして特定し、前記補正パラメーターが所定値であるときのトナー濃度に対する前記補正量の特性に対してガンマ補正をした特性を基準特性とし、前記基準特性に合致するように、特定された前記トナー濃度に対応する前記補正量を特定する。さらに、前記濃度特定部は、所定の補正倍率データに基づいて、特定した前記補正パラメーターの値および前記トナー濃度に対応する補正倍率を前記補正量として特定し、前記トナー濃度に対して前記補正倍率を乗ずることで、前記トナー濃度を補正し、また、前記補正パラメーターは、前記センサーの配置ばらつきに対して相関がある。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、センサーの配置ばらつきに起因する誤差を抑制するように測定トナー濃度を適切に補正する画像形成装置を得ることができる。
【0018】
本発明の上記又は他の目的、特徴および優位性は、添付の図面とともに以下の詳細な説明から更に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の機械的な内部構成の一部を示す側面図である。
図2図2は、図1におけるセンサー8の構成例を示す図である。
図3図3は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の電気的な構成の一部を示すブロック図である。
図4図4は、標準状態(ばらつき無し)およびチップ位置ずれが生じている状態でのセンサーにおける発光素子の制御電圧に対するセンサー受光電圧の特性を示す図である。
図5図5は、標準状態(ばらつき無し)およびチップ位置ずれが生じている状態でのセンサーにおける発光素子の制御電圧に対するセンサー受光電圧(正反射光の受光電圧と拡散反射光の受光電圧との差分)の特性を示す図である。
図6図6は、補正パラメーターGの複数の状態についての、実際のトナー濃度と被覆率(トナー濃度)Mとの関係を示す図である。
図7図7は、補正パラメーターGの複数の状態についての、被覆率(トナー濃度)Mと補正倍率(補正量)との関係を示す図である。
図8図8は、標準状態(ばらつき無し)およびチップ位置ずれが生じている状態でのトナー濃度に対するセンサー受光電圧の特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の機械的な内部構成の一部を示す側面図である。図1に示す画像形成装置は、プリンター、ファクシミリ装置、複写機、複合機などといった、電子写真方式の印刷機能を有する装置である。
【0022】
この実施の形態の画像形成装置は、タンデム方式のカラー現像装置を有する。このカラー現像装置は、感光体ドラム1a〜1d、露光装置2a〜2dおよび各色の現像装置3a〜3dを有する。感光体ドラム1a〜1dは、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの4色の感光体である。露光装置2a〜2dは、感光体ドラム1a〜1dへレーザー光を照射して静電潜像を形成する装置である。露光装置2a〜2dは、レーザー光の光源であるレーザーダイオード、そのレーザー光を感光体ドラム1a〜1dへ導く光学素子(レンズ、ミラー、ポリゴンミラーなど)を有する。
【0023】
さらに、感光体ドラム1a〜1dの周囲には、帯電装置、クリーニング装置、除電器などが配置されている。帯電装置は、スコロトロン方式などで、感光体ドラム1a〜1dを帯電させる。また、クリーニング装置は、1次転写後に、感光体ドラム1a〜1d上の残留トナーを除去し、除電器は、1次転写後に、感光体ドラム1a〜1dを除電する。
【0024】
現像装置3a〜3dには、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの4色のトナーが充填されたトナーコンテナーを装着されている。現像装置3a〜3dと感光体ドラム1a〜1dとの間に、現像バイアスがそれぞれ印加され、現像装置3a〜3dは、そのトナーコンテナーから供給されるトナーを感光体ドラム1a〜1d上の静電潜像に付着させてトナー画像を形成する。例えば、トナーは、キャリアとともに現像剤を構成し、さらに、酸化チタンなどの外添剤が付加されている。
【0025】
感光体ドラム1a、露光装置2aおよび現像装置3aにより、マゼンタの現像が行われ、感光体ドラム1b、露光装置2bおよび現像装置3bにより、シアンの現像が行われ、感光体ドラム1c、露光装置2cおよび現像装置3cにより、イエローの現像が行われ、感光体ドラム1d、露光装置2dおよび現像装置3dにより、ブラックの現像が行われる。
【0026】
中間転写ベルト4は、感光体ドラム1a〜1dに接触し、感光体ドラム1a〜1d上のトナー画像を1次転写される無終端(つまり、環状)の中間転写体であり像担持体である。中間転写ベルト4は、駆動ローラー5に張架され、駆動ローラー5からの駆動力によって、感光体ドラム1dとの接触位置から感光体ドラム1aとの接触位置への方向へ周回していく。
【0027】
この実施の形態では、中間転写ベルト4は、例えば、ポリアミド、ポリイミドなどの基材に表面コーティングを施した樹脂ベルトである。
【0028】
転写ローラー6は、搬送されてくる用紙を中間転写ベルト4に接触させ、中間転写ベルト4上のトナー画像を用紙に2次転写する。なお、トナー画像を転写された用紙は、定着器9へ搬送され、トナー画像が用紙へ定着される。
【0029】
ローラー7は、クリーニングブラシを有し、クリーニングブラシを中間転写ベルト4に接触させ、用紙へのトナー画像の転写後に中間転写ベルト4に残ったトナーを除去する。なお、クリーニングブラシを有するローラー7の代わりに、クリーニングブレードを使用してもよい。
【0030】
センサー8は、トナー濃度を検出するために、中間転写ベルト4に光線を照射し、その反射光を検出する。トナー濃度調整の際、センサー8は、中間転写ベルト4上に形成されたテストトナーパターンが通過する所定の領域に光線を照射し光線の反射光を検出し、その光量に応じた電気信号を出力する。
【0031】
図2は、図1におけるセンサー8の構成例を示す図である。
【0032】
図2示すセンサー8は、基板8aとセンサーカバー8bとを備えており、基板8aにセンサーカバー8bが装着される。基板8a上には、チップ状の発光素子11および受光素子12,13が表面実装されており、センサーカバー8bには、3つの孔が形成されており、この孔に合わせて、集光レンズ14,15,16が、発光素子11および受光素子12,13に対応して配置されている。
【0033】
発光素子11は、集光レンズ14を介して、光を中間転写ベルト4の地肌、または中間転写ベルト4上のトナーパターンに照射する。受光素子12は、発光素子11により照射された光に対する、中間転写ベルト4の地肌、または中間転写ベルト4からの反射光のうちの拡散反射光を受光する。受光素子13は、発光素子11により照射された光に対する、中間転写ベルト4の地肌、または中間転写ベルト4からの反射光のうちの正反射光を受光する。
【0034】
例えば、発光素子11は、LEDであり、受光素子12,13は、PDである。
【0035】
図3は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の電気的な構成の一部を示すブロック図である。図3において、プリントエンジン31は、上述のローラーなどを駆動する図示せぬ駆動源、1次転写バイアスを印加するバイアス回路、現像装置3a〜3d、露光装置2a〜2dなどを制御して、トナー画像の現像、転写および定着、並びに給紙、印刷および排紙を実行させる。1次転写バイアスは、感光体ドラム1a〜1dと中間転写ベルト4との間にそれぞれ印加される。プリントエンジン31は、制御プログラムで動作するコンピューター、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などを含む処理回路である。
【0036】
また、プリントエンジン31は、センサー8を制御して、定期的にあるいは所定のタイミングで、濃度階調や最大濃度などの調整(キャリブレーション)を行う。なお、プリントエンジン31と光源11との間には、必要に応じてD/A(Digital to Analog)変換器、増幅器などが設けられる。受光素子12,13とプリントエンジン31との間には、必要に応じて増幅器、A/D(Analog to Digital)変換器などが設けられる。
【0037】
プリントエンジン31は、パターン形成部41、センサー光量制御部42、および濃度特定部43を備える。
【0038】
パターン形成部41は、キャリブレーションにおいて、露光装置2a〜2d、現像装置3a〜3dなどを制御して、各トナー色のトナーパターンを中間転写ベルト4上に形成させる。
【0039】
センサー光量制御部42は、光源11に制御電圧を与えて光源11の発光量を制御する。センサー8は、中間転写ベルト4上のトナーパターンに光を入射させ反射光を受光する。
【0040】
濃度特定部43は、センサー8の受光素子12,13の出力に基づいてトナー濃度を特定する。
【0041】
具体的には、濃度特定部43は、(a)発光素子11の制御電圧に対する、中間転写ベルト4の地肌からの反射光に対応する受光素子13の出力電圧(または、受光素子13の出力電圧と受光素子12の出力電圧との差)の一次係数(傾き)を補正パラメーターGとして特定し、(b)補正パラメーターGおよびトナー濃度に対応する補正量を特定し、(c)補正量に基づいてトナー濃度を補正する。なお、トナー濃度(補正前)は、例えば、次式に従って、上述の被覆率Mとして計算される。
【0042】
M=1−{(R−Rd)−(D−Dd)}/{(Rg−Rd)−(Dg−Dd)}
【0043】
例えば、濃度特定部43は、発光素子11の制御電圧Vcontを変動させ、発光素子11の複数の制御電圧V1,V2に対する、中間転写ベルト4の地肌からの反射光に対応する受光素子13の複数の出力電圧Rg1,Rg2を特定し、その複数の制御電圧V1,V2およびその複数の出力電圧Rg1,Rg2に基づいて上述の一次係数を補正パラメーターGとして、例えば次式のように特定する。
【0044】
G=(V1−V2)/(Rg1−Rg2)
【0045】
あるいは、濃度特定部43は、受光素子13の出力電圧が所定基準値となるように発光素子11の制御電圧Vcontを制御し、その発光素子11の制御電圧Vcontに対する、中間転写ベルト4の地肌からの反射光に対応する受光素子13の出力電圧を特定し、その制御電圧、その出力電圧、発光素子11の発光開始電圧Vs、および受光素子13の暗電位に基づいて上述の一次係数を補正パラメーターGとして、例えば次式のように特定するようにしてもよい。
【0046】
G={(Rg−Rd)−(Dg−Dd)}/(Vcont−Vs)
【0047】
図4は、標準状態(ばらつき無し)およびチップ位置ずれが生じている状態でのセンサーにおける発光素子の制御電圧に対するセンサー受光電圧の特性を示す図である。図5は、標準状態(ばらつき無し)およびチップ位置ずれが生じている状態でのセンサーにおける発光素子の制御電圧に対するセンサー受光電圧(正反射光の受光電圧と拡散反射光の受光電圧との差分)の特性を示す図である。
【0048】
図4および図5に示すように、発光素子の制御電圧に対してセンサー受光電圧は線形性を有し、センサー8の配置ばらつき(センサーの配置位置または配置角度のばらつき、センサー内の発光素子および受光素子の配置位置のばらつきなど)の度合いに応じて、図4および図5に示す特性(一次式)の傾き(つまり、上述の一次係数)が変化する。
【0049】
なお、図4に示すように、発光素子の発光開始電圧Vsは、ゼロではなく、素子の特性上、ここでは0.7ボルト程度である。
【0050】
このため、濃度特定部43は、このようにセンサー8の配置ばらつきと相関を有する上述の補正パラメーターGによって、センサー8の配置ばらつきに起因する測定トナー濃度(被覆率)の変動を抑制するように、測定トナー濃度(被覆率)を補正する。
【0051】
図6は、補正パラメーターGの複数の状態についての、実際のトナー濃度と被覆率(トナー濃度)Mとの関係を示す図である。
【0052】
上述したように、センサー8に配置ばらつきがあると、補正パラメーターGにばらつきが生じ、実際のトナー濃度が同一であっても、トナー濃度の測定値(被覆率M)は、例えば図6に示すように変動する。
【0053】
そこで、濃度特定部43は、補正パラメーターGがある特定の値であるときのトナー濃度の測定値(被覆率M)の特性を基準特性として、基準制御電圧Vcontの測定値に応じて、トナー濃度の測定値(被覆率M)の特性を基準特性へ補正することで、中間転写ベルト4の光沢度変化に対応する補正を、トナー濃度の測定値(被覆率M)に対して行う。
【0054】
図7は、補正パラメーターGの複数の状態についての、被覆率(トナー濃度)Mと補正倍率(補正量)との関係を示す図である。
【0055】
例えば図7に示すような、補正パラメーターGの値に応じて、トナー濃度の測定値(被覆率M)の特性を基準特性へ補正するための補正倍率データが図示せぬ不揮発性の記憶装置に予め格納されており、濃度特定部43は、そのような補正倍率データに基づいて、特定した補正パラメーターGの値およびトナー濃度の測定値(被覆率M)に対応する補正倍率を特定し、トナー濃度の測定値(被覆率M)に対してその補正倍率を乗ずることで、トナー濃度の測定値を補正する。
【0056】
図7に示す場合では、G=2.75の特性が基準特性とされている。
【0057】
なお、補正倍率データは、ルックアップテーブルなどのテーブルとして格納されていてもよいし、補正倍率の関数(例えば多項式関数)の関数形を示すデータおよび関数内で使用される定数(例えば多項式関数の各次数の係数)として格納されていてもよい。
【0058】
これにより、トナー濃度の測定値が、センサー8の設置状態が基準特性を示す場合のトナー濃度へ補正され、トナー濃度の測定値に対するセンサー8の設置ばらつきの影響が抑制される。
【0059】
次に、上記画像形成装置の動作について説明する。
【0060】
まず、センサー光量制御部42は、Rgの受光出力が所定値となるように、センサー8の光源11の光量を調整して基準制御電圧Vcontを特定し、その基準制御電圧Vcontで光源11を駆動する。
【0061】
濃度特定部43は、制御電圧Vcontおよび受光素子12,13の出力電圧から上述のように補正パラメーターGの値を特定し、特定した補正パラメーターGの値に対応する補正特性(被覆率Mに対する補正倍率の特性)を、補正倍率データに基づいて特定する。
【0062】
次に、濃度特定部43は、暗電位Rd,Ddを測定するとともに、センサー8で、中間転写ベルト4の所定位置の地肌部のRgおよびDgを測定する。
【0063】
地肌部のRgおよびDgの測定後、パターン形成部41は、その所定位置にトナーパターンを形成し、濃度特定部43は、センサー8で、その所定位置のトナーパターンのRおよびDを測定する。
【0064】
そして、濃度特定部43は、Rg,Dg,Rd,Dd,R,Dの測定値からトナー濃度(上述の被覆率)を計算する。
【0065】
濃度特定部43は、上述の特定した補正特性に基づいて、トナー濃度(被覆率M)に対応する補正倍率を特定する。そして、濃度特定部43は、このように特定した補正倍率を上述のトナー濃度に乗じて、補正後のトナー濃度を得る。
【0066】
以上のように、上記実施の形態によれば、光源11は、中間転写ベルト4上のトナーパターンまたは中間転写ベルト4の地肌に照射される光を出力する。受光素子12,13は、そのトナーパターンまたは中間転写ベルト4の地肌からの反射光を受光する。センサー光量制御部42は、光源11に制御電圧を与えて光源11の光量を制御する。濃度特定部43は、受光素子12,13の出力に基づいてトナー濃度を特定する。そして、濃度特定部43は、(a)発光素子11の制御電圧に対する、中間転写ベルト4の地肌からの反射光に対応する受光素子12,13の出力電圧の一次係数を補正パラメーターGとして特定し、(b)補正パラメーターGおよびトナー濃度に対応する補正量を特定し、(c)その補正量に基づいてトナー濃度を補正する。
【0067】
これにより、センサー8の配置ばらつきに対して相関がある補正パラメーターGを使用して補正量を決定しているため、センサー8の配置ばらつきに起因する誤差を抑制するように測定トナー濃度が適切に補正される。
【0068】
なお、上述の実施の形態に対する様々な変更および修正については、当業者には明らかである。そのような変更および修正は、その主題の趣旨および範囲から離れることなく、かつ、意図された利点を弱めることなく行われてもよい。つまり、そのような変更および修正が請求の範囲に含まれることを意図している。
【0069】
例えば、上記実施の形態において、補正パラメーターGのある値についての特性を基準特性として、基準特性に合わせるように補正を行っているが、その代わりに、例えばガンマ補正などでトナー濃度の測定値をさらに補正してトナー濃度の測定値と実際のトナー濃度との関係を線形に近づける場合には、この補正後のトナー濃度の階調を上述の基準特性とするようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、例えば、カラー画像形成装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0071】
4 中間転写ベルト(像担持体の一例)
8 センサー
11 光源(発光素子)
12 受光素子(第2受光素子の一例)
13 受光素子(第1受光素子の一例)
42 センサー光量制御部
43 濃度特定部
図1
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図8