(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基材の法線方向から前記基材を見た場合に、前記基材に定まる上下左右の4方向のうちの少なくとも2方向における前記アンテナ層の外側に、前記メッシュ層が位置している、請求項1乃至3のいずれかに記載のアンテナ。
前記メッシュ層は、前記アンテナ層において最外周に位置する複数の前記アンテナ導線の端部を直線で結んで画成される輪郭線に対して隙間をあけて位置している、請求項7に記載のアンテナ。
前記アンテナ層の最外周にその端部が位置する前記アンテナ導線の前記メッシュ層側への延長線上に前記メッシュ導線が延びるように、前記メッシュ層が配置されている、請求項7乃至9のいずれかに記載のアンテナ。
前記アンテナ層における前記アンテナ開口領域の面積の平均値m及び前記アンテナ開口領域の面積の標準偏差σが次の式を満たす、請求項7乃至9のいずれに記載のアンテナ。
3≦3σ/m×100≦20
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0026】
本明細書において、「層」、「シート」や「フィルム」などの用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「層」は、シートやフィルムと呼ばれ得るような部材も含む概念である。更に、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」や「直交」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。また、本実施の形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0027】
(アンテナの概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるアンテナ1の平面図であり、
図2は、
図1のIIで示す領域の拡大図であり、
図3は、
図2のIII−III線に沿う断面図であり、
図4は、
図2のIV−IV線に沿う断面図である。
図1乃至
図4に示すように、本実施の形態にかかるアンテナ1は、いわゆる透明アンテナであり、シート状に形成され且つ透明な基材2と、基材2に設けられ、遮光性及び導電性を有する網目状の一対のアンテナ層10と、基材2に設けられ、少なくとも遮光性を有する網目状のメッシュ層100と、を備えている。
【0028】
図示のアンテナ1は、一例として、電波送信用の半波長ダイポールアンテナとして構成されている。基材2には、一対のアンテナ層10の各々の外周部分の一部に電気的に接続され且つアンテナ層10から外側に延びる取出し電極部11が設けられている。各アンテナ層10は、対応する取出し電極部11及び外部配線を介して共通の給電部12に電気的に接続されている。
【0029】
給電部12は、送信すべき信号を交流電流(電圧)として供給する交流電源に相当し、発振回路、変調回路、増幅回路等を含む。アンテナ1が受信用の半波長ダイポールアンテナとして構成される場合には、給電部12の代わりに同調回路、増幅回路、周波数変換回路、復調(検波)回路等を含む受信回路が接続される。
【0030】
半波長ダイポールアンテナでは、送信又は受信する電波の周波数が2.45GHzの場合、波長は約122.4mmとなる。この場合、
図1に示すアンテナ層10の長さ(L1+L2)は、波長の1/2倍となるので、約61.2mmとなり、片方のアンテナ層10の長さは約30.6mmとなる。なお、アンテナ層10の図中Eで示す幅の寸法は、特に限定されないが、例えば、5〜50mm程度であってもよい。
【0031】
(層構成)
図3及び
図4を参照し、本実施の形態では、基材2が互いに対向する第1面2a及び第2面2bを有する単層の部材で構成され、基材2の第1面2a上に、透明接着剤層3を介して、アンテナ層10、取出し電極部11及びメッシュ層100が設けられている。本実施の形態においては、アンテナ層10が、金属材料からなる本体層21と、本体層21に対して基材2側とは逆側に積層された窒化銅からなる低反射層22と、を含んでいる。同様に、メッシュ層100が、金属材料からなる本体層121と、本体層121に対して基材2側とは逆側に積層された窒化銅からなる低反射層122と、を含んでいる。
【0032】
また本実施の形態では、アンテナ層10において、基材2側の面(透明接着剤層3側の面)が光散乱性の低い平滑面10aとなっており、基材2側とは逆側の面が非平滑面10bとなっている。同様に、メッシュ層100において、基材2側の面(透明接着剤層3側の面)が光散乱性の低い平滑面100aとなっており、基材2側とは逆側の面が非平滑面10bとなっている。ここで、本実施の形態でいう平滑面とは、「鏡面」を意味し、非平滑面は、「粗面」を意味する。金属箔メーカにおいては、金属箔の外表面(表裏面)のうち、表面の凹凸の程度を増大せしめる物理的、或いは化学的処理を施して、相対的に凹凸の程度が増大した側の面を「粗面」と(その他、「粗化面」、或いは「マット面」とも)呼称する。一方、そうでない側の面を「鏡面」と(その他、「平滑面」、「光沢面」、或いは「ミラー面」とも)呼称する。本実施の形態でいう「粗面」、「鏡面」は、上述のように金属箔メーカがいう「粗面」、「鏡面」と同一の用語として規定される。
【0033】
また
図3及び
図4に示す例では、アンテナ層10及びメッシュ層100が外部に露出しているが、アンテナ層10及びメッシュ層100は、必要に応じて透明の樹脂層で覆われてもよい。このような樹脂層は、例えば、基材2上のアンテナ層10及びメッシュ層100による凹凸表面に対して、樹脂を含む液状組成物を塗布等で施すことで形成できる。液状組成物としては、透明な樹脂を含むものであれば特に限定はなく、公知の樹脂を適宜採用すればよい。
【0034】
なお本実施の形態においては、基材2が単層であるが、基材2は、複数の層を含む多層構造であってもよい。またアンテナ層10及びメッシュ層100は多層構造であるが、単層構造であってもよい。また後述するように低反射層22,122は、反射率を低下させるために設けられるが、低反射層22,122に代えて黒化層が用いられてもよい。またアンテナ層10及びメッシュ層100の基材2側の面が、平滑面となっており、逆側の面が非平滑面となっているが、両側の面が平滑面となっていてもよいし、両側の面が非平滑面となっていてもよい。以下、アンテナ1の各構成要素を詳述する。
【0035】
(基材)
基材2としては、例えば、樹脂等の有機材料、又は硝子等の無機材料からなるシート或いは板が用いられる。アンテナ1において視界の確保が強く望まれる場合、基材2の透明性は高いほどよい。この場合、基材2は、可視光域380〜780nmにおける光線透過率が70%以上、より好ましくは80%以上となる光透過性を有することが望ましい。なお、光線透過率の測定は、分光光度計(例えば、(株)島津製作所製 UV−3100PC)を用い、室温、大気中で測定した値を用いることができる。また、基材2のJIS K7105−1981に準拠したヘイズ値は、10%以下であることが好ましく、更に2.0%以下であることが好ましく、特に1.0%以下であることが好ましい。
【0036】
基材2の材料として用いる樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、テレフタル酸−イソフタル酸−エチレングリコール共重合体、テレフタル酸−シクロヘキサンジメタノール−エチレングリコール共重合体などのポリエステル系樹脂、ナイロン6などのポリアミド系樹脂、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、シクロオレフィン重合体などのポリオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体などのスチレン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、イミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0037】
なお、これらの樹脂は、単独、又は複数種類の混合樹脂(ポリマーアロイを含む)として用いられてもよい。基材2が樹脂フィルムの場合、1軸延伸や2軸延伸した延伸フィルムが機械的強度の点でより好ましい。また、これら樹脂中には、必要に応じて適宜、充填剤、可塑剤、帯電防止剤などの添加剤が加えられてもよい。また、基材2を構成する硝子としては、ソーダ硝子、カリ硝子、硼珪酸硝子、石英硝子等が挙げられる。通常、硝子の場合は、厚みの有る板状で用いられる。
【0038】
基材2の厚さは、特に制限はないが、通常は12〜5000μm、好ましくはフィルムの場合は50〜500μm、より好ましくは50〜200μm、板の場合は500〜3000μmである。このような厚み範囲ならば、機械的強度が十分で、反り、弛み、破断などを防ぎ、連続帯状で供給して加工することが容易である。なお、基材2としては、特に、可撓性の有る樹脂フィルム或は板からなるものが、製造加工適性が良好で、重量、価格も低減できる点で好ましい。また、樹脂フィルム等からなる基材2においては、適宜その表面に、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理、プライマー処理、予熱処理、除塵埃処理、蒸着処理、アルカリ処理、などの公知の易接着処理を行ってもよい。なお、基材2は、不透明であってもよい。
【0039】
(透明接着剤層)
透明接着剤層3は、アンテナ層10及びメッシュ層100と基材2とを接着することが可能で本実施の形態では十分な透明性を有する層であれば、その種類等は特に限定されるものではない。しかしながら、本実施の形態では、アンテナ層10及びメッシュ層100が、金属箔と基材2とを透明接着剤層3を介して貼り合わせた後、金属箔をエッチングによりパターン状とすることから、透明接着剤層3が耐エッチング性を有することが好ましい。具体的には、ポリウレタンエステル樹脂、2液硬化型ウレタン樹脂等のポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。また、透明接着剤層3は、紫外線硬化型であってもよく、熱硬化型であってもよい。特に、基材2との密着性等の観点から、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、特に2液硬化型ウレタン樹脂が好ましい。
【0040】
また透明接着剤層3の膜厚は、0.5μm〜50μmの範囲内、特に1μm〜20μmの範囲内であることが好ましい。これにより、基材2とアンテナ層10及びメッシュ層100とを強固に接着することができ、また、アンテナ層10及びメッシュ層100を形成するエッチングの際に基材2が酸化鉄等のエッチング液の影響を受けること等を防ぐことができるからである。また、透明接着剤層3の屈折率は、基材2との屈折率差による界面反射低減の観点から1.41〜1.59の範囲内であることが好ましく、更に1.48〜1.52の範囲内であることが好ましい。
【0041】
(アンテナ層)
次にアンテナ層10について説明する。
図2を参照し、アンテナ層10は、基材2の第1面2aに網目状に配置される複数のアンテナ導線44を含み、これら複数のアンテナ導線44によって複数のアンテナ開口領域46を画成している。本実施の形態において、アンテナ導線44は、アンテナ層10内に多数点在する分岐点47における2つの分岐点47の間を延びてアンテナ開口領域46を画成する線状の部分を意味している。
【0042】
本実施の形態におけるアンテナ層10は、一定の四角形形状のアンテナ開口領域46が、隙間なく敷き詰められた網目パターン形状となっている。詳しくは、アンテナ開口領域46は、互いに交差する第1方向d1及び第2方向d2にそれぞれ一定ピッチで配列されている。すなわち、アンテナ開口領域46は、各々が第1方向D1に直線状に延び且つ第1方向d1に直交する方向に一定ピッチP1で配列された複数のアンテナ導線44と、各々が第2方向D2に直線状に延び且つ第2方向d2に直交する方向に一定ピッチP1と同一の一定ピッチP2で配列された複数のアンテナ導線44と、によって画成されている。結果として、図示のアンテナ層10に含まれるアンテナ開口領域46は、全て同一の四角形形状、とりわけ菱形形状に形成されている。なお、上述の網目パターン形状とは、本実施の形態において、開口領域の形状、ピッチ、大きさ等で定まる図柄を意味している。
【0043】
図1に示すように、本実施の形態では、一対のアンテナ層10の各々が、輪郭線FL1によって示されるように外観形状が矩形状に形成され、互いに対向するように配置されている。ここで、輪郭線FL1は、
図1及び
図2に示すように、アンテナ層10において最外周に位置する複数のアンテナ導線44の端部を直線で結んで画成される線を意味し、より詳しくは最外周に位置する複数のアンテナ導線44の端部における隣接した端部同士を順次直線で結んで画成される線を意味している。本実施の形態では、アンテナ層10が矩形状であるが、このような形状は、所望の電波を送信又は受信することが可能であれば、特に限られるものではなく、例えば、L字状や、蛇行形状で形成されてもよい。
【0044】
また上述したように、本実施の形態におけるアンテナ層10(アンテナ導線44)は、本体層21と、窒化銅からなる低反射層22と、を有しており、低反射層22は窒化銅であるため、主成分として銅を含むが、本体層21も、銅を主成分として含んでいる。したがって、アンテナ層10は、全体的に主成分として銅を含むことになる。しかしながら、アンテナ導線44の材質は、銅に限られることなく、例えば金や、銀や、アルミニウム等から形成されてもよい。
【0045】
アンテナ層10の厚みは、材質に応じて、高導電性、加工適性、機械的強度等の点から適宜選択されればよく、具体的に、主成分が銅である場合に、厚みは、0.1μm以上20μm以下が好ましく、0.5μm以上5μm以下であることがより好ましい。またアンテナ層10の厚みは、1μm以上3μm以下であることが更に好ましい。なお、厚みが薄いと導電性、機械的強度が低下し、厚みが厚いと加工適性が低下する。
【0046】
また本実施の形態では、アンテナ層10が、四角形形状のアンテナ開口領域46が規則的に配列される網目パターン形状で形成されるが、アンテナ層10の網目パターン形状は、ハニカムパターン形状、正方格子形状、長方形格子形状、三角格子形状、ボロノイメッシュのような、異形状の開口領域が不規則に画成されるパターン形状等であってもよい。
【0047】
(メッシュ層)
次にメッシュ層100について説明する。
図2を参照し、メッシュ層100は、アンテナ層10と同様に、基材2の第1面2aに網目状に配置される複数のメッシュ導線144を含み、これら複数のメッシュ導線144によって複数のメッシュ開口領域146を画成している。メッシュ導線144は、メッシュ層100内に多数点在する分岐点147における2つの分岐点147の間を延びてメッシュ開口領域146を画成する線状の部分を意味している。
【0048】
図1及び
図2の平面図に示すように、本実施の形態におけるメッシュ層100は、基材2の法線方向から基材2を平面視で見た場合に、アンテナ層10に対して隙間Gをあけてアンテナ層10の外側に位置している。また本実施の形態におけるメッシュ層100は、
図2に示すように、アンテナ層10と同一の網目パターン形状で形成されており、一定の四角形形状のメッシュ開口領域146が、隙間なく敷き詰められた網目パターン形状となっている。したがって、メッシュ開口領域146は、互いに交差する第1方向d1及び第2方向d2にそれぞれ一定ピッチで配列されている。すなわち、メッシュ開口領域146は、各々が第1方向D1に直線状に延び且つ第1方向d1に直交する方向に一定ピッチP1で配列された複数のメッシュ導線144と、各々が第2方向D2に直線状に延び且つ第2方向d2に直交する方向に一定ピッチP1と同一の一定ピッチP2で配列された複数のメッシュ導線144と、によって画成されている。結果として、図示のメッシュ層100に含まれるメッシュ開口領域146も、全て同一の四角形形状、とりわけ菱形形状に形成されている。
【0049】
上述したように、本実施の形態におけるメッシュ層100(メッシュ導線144)も、本体層121と、窒化銅からなる低反射層122と、を有しており、低反射層122は窒化銅であるため、主成分として銅を含むが、本体層121も、銅を主成分として含んでいる。したがって、メッシュ層100は、全体的に主成分として銅を含むことになる。なお、メッシュ導線144の材質は、銅に限られることなく、例えば金や、銀や、アルミニウム等から形成されてもよい。またメッシュ層100は、アンテナ層10とは異なる材料から形成されてもよく、例えば絶縁性を有する物質でもよく、樹脂等から形成されてもよい。
【0050】
本実施の形態におけるメッシュ層100は、導電することによりアンテナ又はデフロスタ等において所望の機能を実行するものではないが、アンテナ又はデフロスタ等において所望の機能を実行可能となるように構成されてもいてもよい。メッシュ層100の厚みは、材質に応じて、加工適性、機械的強度、デフロスタ又はアンテナにおいて機能する場合には高導電性等の点から適宜選択されればよいが、光の透過率のばらつきを抑制して不可視性を高めるためには、アンテナ層10と同じ厚みであることが好ましい。したがって、メッシュ層100の厚みは、0.1μm以上20μm以下が好ましく、0.5μm以上5μm以下であることがより好ましい。またメッシュ層100の厚みは、1μm以上3μm以下であることが更に好ましい。
【0051】
また本実施の形態では、メッシュ層100が、四角形形状のメッシュ開口領域146が規則的に配列される網目パターン形状で形成されるが、メッシュ層100の網目パターン形状は、ハニカムパターン形状、正方格子形状、長方形格子形状、三角格子形状、ボロノイメッシュのような、異形状の開口領域が不規則に画成されるパターン形状等であってもよい。ただし、両者の間における透過率の差を抑制するために、メッシュ層100は、アンテナ層10と同一の網目パターン形状で形成されることが好ましい。
【0052】
(アンテナ層及びメッシュ層の位置関係)
以下では、アンテナ層10及びメッシュ層100の位置関係につい詳述する。上述したように、メッシュ層100は、基材2の法線方向から基材2を見た場合に、アンテナ層10に対して隙間Gをあけてアンテナ層10の外側に位置しており、図示の例では輪郭が矩形状に形成されている。
【0053】
詳しくは、本実施の形態におけるメッシュ層100は、
図2に示すように、一対のアンテナ層10の各々における取出し電極部11の接続位置を除く外周部分の全域を取り囲むように位置し、且つ、アンテナ層10の外観形状を規定する上述した輪郭線FL1に対して隙間Gをあけて位置している。ここで、隙間Gは、輪郭線FL1に直交する方向での隙間を意味する。また、図示の例において、メッシュ層100とアンテナ層10とは、互いに平行となっている。
【0054】
また本実施の形態においては、
図2に示すように、アンテナ層10の最外周にその端部が位置するアンテナ導線44のメッシュ層100側への延長線ELを延ばした場合に、この延長線EL上にメッシュ導線144が延びるように、メッシュ層100が配置されている。このような配置によれば、アンテナ層10とメッシュ層100との境目周辺の光の透過率のばらつきを抑制することが可能となる。
【0055】
メッシュ状のアンテナ層を備えるアンテナが実際の製品に適用される場合、アンテナ層は、例えばフロントガラスの一部や携帯電話機のディスプレイの一部に局所的に設置されるような設置態様が想定される。本件発明者は、このようなアンテナ特有の設置態様を前提とする鋭意の研究において、アンテナ層がその局所的な設置態様に起因して視認され易くなるという問題が生じることを知見した。そして、この問題を解決するべく、アンテナ層がアンテナにおける所期の機能を果たしつつ、アンテナ層が局所的に設置されているように見えない状態とすることに着想して、アンテナ層10とは異なるメッシュ層100をアンテナ層10の外側に隙間Gをあけて近接して位置するように配置する構成に至った。このような構成によれば、メッシュ層100をアンテナ層10の外側に設けるのみで、アンテナ層10が局所的に設置されているように見えなくなってアンテナ層10が目立たなくなることで、アンテナ層10の不可視性を簡易に高めることができる。
【0056】
メッシュ層100とアンテナ層10との間の隙間Gは、10μm以上300μm以下であることが好ましい。隙間Gが過度に狭くなると、アンテナ層10がメッシュ層100と通電しアンテナにおける適切な性能を充足できなくなるリスクがあり、隙間Gが過度に大きくなると、アンテナ層10の存在が目立つリスクがある。本件発明者は、鋭意の検討によって、不可視性の確保及びアンテナ層10の適切な性能の確保を両立させる値として、上述の範囲が好ましいことを確認している。
【0057】
また本実施の形態では、基材2の法線方向から基材2を見た場合に、例えば図面の上下左右に対応して基材2に定まる上下左右の4方向のうちの4方向全てにおけるアンテナ層10の外側にメッシュ層100が位置している。本発明は、このような態様に限られるものではないが、例えば、上述の上下左右の4方向のうちの少なくとも2方向におけるアンテナ層10の外側に、メッシュ層100が位置していることが好ましい。これは十分にアンテナ層10を目立たなくすることができるからである。
【0058】
(アンテナ層及びメッシュ層における本体層及び低反射層)
上述のように、本実施の形態においては、メッシュ層100によってアンテナ層10の不可視性を高めているが、本実施の形態では、これに加えて、不可視性をさらに高めるとともに視界における視認性を高めるための工夫が上述の本体層21,121及び低反射層22,122になされている。以下では、本体層21,121及び低反射層22,122について説明する。本例では、アンテナ層10及びメッシュ層100において、本体層21及び本体層121の構成が同様となっており、低反射層22及び低反射層122の構成が同様となっている。したがって、以下では、本体層21及び本体層121についてまとめて説明し、低反射層22及び低反射層122についてまとめて説明する。
【0059】
具体的には、まず、本体層21,121が、導電性を主に確保するための層であり、その厚みが例えば20μm以下になるよう、より詳しくは0.5μm〜5μmの範囲内になるよう構成されている。これによって、アンテナ導線44又はメッシュ導線144全体の厚みが大きくなることを抑制することができ、アンテナ導線44又はメッシュ導線144の側面において外光や映像光(ディスプレイ設置時における)が反射されてしまうことを抑制できる。これにより、不可視性の向上及び視認性の向上が図られている。
【0060】
上述のように本体層21,121の厚みを小さくすることは、不可視性の向上及び視認性の向上の効果を得られる一方で、アンテナ導線44又はメッシュ導線144の電気抵抗値が大きくなってしまうことを導き得る。特にアンテナ導線44では、その抵抗が過剰に大きいことは望ましくない。そこで、本実施の形態においては、本体層21,121を構成する材料として、その比抵抗が所望の値以下である金属材料が用いられており、例えばその比抵抗が4.0×10
−6(Ωm)以下である金属材料が用いられている。これによって、特に、アンテナ導線44の電気抵抗値を十分に低くすることができる。例えば、本体層21,121のシート抵抗値を0.3Ω/□以下にすることができる。本体層21,121を構成するための、その比抵抗が4.0×10
−6(Ωm)以下である金属材料としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム等の金属を90重量%以上含む材料(金属単体、金属合金等)を用いることができる。本実施の形態においては、99重量%の銅を含む材料が本体層21,121として用いられている。なお、本実施の形態では、本体層21,121は基材2に透明接着剤層3を介して積層された銅箔(銅薄膜)から構成されている。
【0061】
一方で、銅などの金属材料は、高い導電性を有するが、金属光沢を示す。このため、未処理の金属材料がアンテナ導線44又はメッシュ導線144として用いられると、視認性が、アンテナ導線44又はメッシュ導線144の金属光沢によって妨げられることになる。特に銅は、銅に特有の赤味を帯びた色を示すため、銀などのその他の金属材料に比べて目立ち易く、このため視認性がより妨げられることになる。
【0062】
このような銅特有の金属光沢を和らげるため、例えば、導線に酸化処理を施して導線の表面に酸化銅からなる黒化処理層を形成し、これによって導線の表面を黒色化(黒化)する技術が知られている。しかしながら、黒化処理によって形成される黒化処理層にはある程度の厚みが必要である。具体的には、タッチパネル技術に関連する文献ではあるが、例えば特開2012−79238号公報においては、黒化処理層の好ましい厚みとして0.2μm以上2μm以下という範囲が示されている。また、導線の厚みとして、主に2μmという値が採用されている。このように黒化処理層が形成された導線においては、導線の表面だけでなく導線の側面においても、無視できない程度の反射が生じたり、または導線の側面によって表示装置からの映像光が妨げられてしまったりすることが考えられる。
【0063】
そこで、本件発明者は、本実施の形態では、本体層21,121を黒化処理するのではなく、本体層21,121の面上に、本体層21,121に比べて金属光沢が抑制された薄い低反射層22,122を設けている。これにより、アンテナ導線44又はメッシュ導線144の金属光沢を軽減することを図っている。この低反射層22,122は、具体的には、表面から5nm以上の深さに酸素原子を含む窒化銅からなる層である。低反射層22,122の膜厚は、10nm〜60nmの範囲内であり、例えば40nmである。低反射層22,122の反射Y値(視感反射率とも称する)は、30%以下であり、好ましくは27%以下である。ここで、反射Y値は、JIS Z8722−1982の規定による値であり、波長550nm近辺の光に対する反射率を意味する。
【0064】
一般に、窒化銅からなる層の表面が大気に曝される場合、窒化銅からなる層の表面は大気中の酸素と反応する(自然酸化する)ことで酸素原子を含み得る。しかしながら、本件発明者らの知見によれば、窒化銅からなる層のうち自然酸化し得る窒化銅は、表面から0.1nm程度までの深さにある窒化銅である。従って、窒化銅からなる層が表面から5nm以上の深さに酸素原子を含む場合、その酸素原子は、表面が自然酸化したことに由来する酸素原子では無く、例えば成膜時等において窒化銅からなる層に意図的に添加された酸素原子であると考えることができる。すなわち、表面から5nm以上の深さに酸素原子を含む窒化銅からなる層とは、酸素原子の添加方法は特に限定されないが、意図的に酸素原子が添加された窒化銅からなる層を意味する。なお、「表面から5nm以上の深さに酸素原子を含む窒化銅からなる層」という表現は、表面から5nm以上の深さに酸素原子を含むとともに表面から5nm未満の深さにも酸素原子を含む窒化銅からなる層を当然含む。
【0065】
このような窒化銅を用いて構成される低反射層22,122においては、その金属光沢が、本体層21,121における金属光沢に比べて軽減されており、特に、銅に特有の赤味を帯びた色が軽減されている。また、このような窒化銅を用いて構成される低反射層22,122は、表面から5nm以上の深さに酸素原子を含まない窒化銅からなる層に比べて、反射Y値が顕著に低減されている。このため、本実施の形態においては、アンテナ導線44又はメッシュ導線144からの反射光によって不可視性及び視認性が低下することを抑制することが可能となる。
【0066】
また低反射層22,122は、本体層21,121に比べて小さな厚みを有しており、具体的には、低反射層22,122の厚みは、10nm〜60nmの範囲内になっているため、導線全体の厚みが大きくなることが抑制されている。このことにより、アンテナ導線44又はメッシュ導線144の側面において外光等が反射されてしまうことを抑制している。
【0067】
また、低反射層22,122の厚みを10nm〜60nmの範囲内に設定することによっても、アンテナ導線44又はメッシュ導線144における光の反射率を低くすることができる。この理由としては、限定はされないが例えば、低反射層22,122において生じる薄膜干渉を挙げることができる。薄膜干渉とは、低反射層22,122の一方の面で反射された光と、低反射層22,122の他方の面で反射された光とが干渉するという現象である。低反射層22,122の厚みを上述の10〜60nmの範囲内に設定することにより、反射光を弱めるように薄膜干渉が生じ、これによって、アンテナ導線44又はメッシュ導線144における光の反射率が低減されることが考えられ得る。
【0068】
上述のような薄い低反射層22,122を形成するための方法が特に限られることはなく、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法、イオンプレーティング法、電子ビーム法などの公知の薄膜形成法を用いることができる。例えばスパッタリング法が用いられる場合、所定の分圧に制御された窒素ガスおよび酸素ガスが存在する環境下で、銅からなるターゲットに放電電力を印加することによって、表面から5nm以上の深さに酸素原子を含む窒化銅からなる層を得ることができる。
【0069】
なお、本実施の形態では、本体層21,121に低反射層22,122が積層されるが、低反射層22,122は、本体層21,121の基材2側の面、又は基材2側の面及びその逆側の面に積層されてもよい。また低反射層22,122に代えて黒化層が用いられてもよい。また、例えば本体層21に低反射層22が設けられるが、本体層121には低反射層122が設けられない態様等が採用されてもよい。
【0070】
(アンテナ層及びメッシュ層の表面特性)
また本実施の形態では、アンテナ1におけるヘイズを低減させるための工夫もなされている。以下では、本実施の形態におけるアンテナ層10及びメッシュ層100の表面特性について説明する。本実施の形態においては、アンテナ1におけるヘイズを低減させるために、アンテナ層10及びメッシュ層100の基材2側の面に工夫がなされている。本例では、アンテナ層10及びメッシュ層100の表面特性が同様となっている。したがって、以下では、アンテナ層10及びメッシュ層100についてまとめて説明する。
【0071】
具体的に本実施の形態では、アンテナ層10及びメッシュ層100の透明接着剤層3側の平滑面10a,100aのJIS Z 8722に準拠して測定した全光線反射率(R
SCI)に対する拡散光線反射率(R
SCE)の比(R
SCE/R
SCI)が0.4以下となっている。
【0072】
上述したように本実施の形態では、本体層21,121が基材2に透明接着剤層3を介して積層された銅箔(銅薄膜)から構成されている。この場合、基材2上に設けられたアンテナ層10及びメッシュ層100の開口領域46,146、即ち、透明接着剤層3の露出面には、銅箔の基材2側に向き合わせた面(光散乱性の低い平滑面)の微細な凹凸形状が転写される。そのため、アンテナ層10及びメッシュ層100の開口領域46,146から露出した該透明接着剤層3の表面のJIS Z 8722に準拠して測定した全光線反射率(R
SCI)に対する拡散光線反射率(R
SCE)の比(R
SCE/R
SCI)と、アンテナ層10及びメッシュ層100の各導線44,144、即ち、アンテナ層10及びメッシュ層100の透明接着剤層3と接する面(光散乱性の低い平滑面)のJIS Z 8722に準拠して測定した全光線反射率(R
SCI)に対する拡散光線反射率(R
SCE)の比(R
SCE/R
SCI)とは、同等の値になると考えられる。
【0073】
したがって、本実施の形態において、アンテナ層10及びメッシュ層100の開口領域46,146から露出した透明接着剤層3の表面における光線反射率比(R
SCE/R
SCI)の数値は、直接測定することが困難な為(該露出接着剤層を大部分の光が透過する為)、透明アンテナの形態、即ち;
基材2/透明接着剤層3/アンテナ層10及びメッシュ層100
の積層体において、基材2側から測定用の光を入射し、介在する基材2および透明接着剤層3を経由し、そしてアンテナ層10及びメッシュ層100の表面で反射した光によって、(R
SCE/R
SCI)の数値を測定し、間接的に評価している。
【0074】
本件発明者らの実験の結果では、基材2の一方の面に、透明接着剤層3を介して貼り合わせる銅箔の面が滑らかで、この表面が転写された開口領域46,146に露出する透明接着剤層3の表面は光の透過が平行光線透過光主体となる場合、得られるアンテナ1のヘイズを低減させることができることが確認された。
【0075】
また、本件発明者は、金属箔では、その面が粗面と鏡面で外観上区別できるが、JIS B0601算術平均粗さRaで表わす数値には差がないことを知見した。ここで、JIS B0601の算術平均粗さRaとは、粗さ曲線から、その平均線の方向に基準長さLだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計し、平均した値のことである。また、実験において、ある金属箔の粗面のRaは、これとは異なる金属箔の粗面のRaよりも大きいにもかかわらず、これらの金属箔からアンテナを作製した場合に、Raの大きい金属箔の方が、エッチング処理後のヘイズ値は小さくなっていることも知見した。さらに、ある金属箔において、鏡面のRaは粗面のRaより小さいが、微小範囲で測定した自乗平均粗さRqは、鏡面の方が粗面よりも大きくなっていることも知見した。
【0076】
上記の結果から、本件発明者は、算術平均粗さRaと、金属箔表面の外観、及びエッチング処理後の開口領域46,146の透明接着剤層3の表面に転写されるヘイズ値の間に相関関係はみられないと知見した。従来、鏡面性の指標として使ってきた十点平均粗さ(JIS B0601(1994年度版)で規定)と接着剤層表面に転写されるヘイズとの相関についても、同様であり、相関性は明確ではない。また、金属箔表面の凹凸形状を表す平均粗さは、測定する方法によって変化する。このことから、同じ算術平均粗さRaにおいて、凹凸の頻度が多く、凹凸の間隔が密である表面形状では、エッチング処理後のヘイズ値は大きくなり、一方、凹凸の頻度が少なく、凹凸の間隔が疎であって、平らな部分が多い表面形状では、エッチング処理後のヘイズ値は小さくなると考えられる。
【0077】
即ち、従来、十点平均粗さRzと相関してエッチング処理後のヘイズが低下するとされてきたのは、金属箔表面の粗面微細凹凸形状、凸部の密度等の条件が、ある特定の範囲に限定された場合のことであり、金属箔の製法、表面の粗面微細凹凸形状や凸部の密度等が各種変化する場合の一般について、広汎に適用可能な設計基準ではないと結論される。
【0078】
本発明者らは、上記検討の結果、透明接着剤層3側に貼り合わせる銅箔の面を、光散乱性の低い鏡面にすることにより、相関性良くエッチング処理後のヘイズが低減されることを見出した。具体的には、基材2の一方の面に、透明接着剤層3を介して貼り合せる銅箔の面が、JIS Z8722に準拠して測定した全光線反射率(R
SCI)に対する拡散光線反射率(R
SCE)の比(R
SCE/R
SCI)が0.4以下の範囲である場合、その表面の算術平均粗さRaの値に関わらず、エッチング処理後のアンテナ層10及びメッシュ層100の開口領域46,146を透過する光のヘイズを低減させることができることを見出した。したがって、上述のように、アンテナ層10及びメッシュ層100の接着剤層3側の平滑面10a,100aのJIS Z 8722に準拠して測定した全光線反射率(R
SCI)に対する拡散光線反射率(R
SCE)の比(R
SCE/R
SCI)が0.4以下であることが規定されている。なお、この比(R
SCE/R
SCI)は、0.3以下であることがより好ましい。
【0079】
全光線反射率(R
SCI)に対する拡散光線反射率(R
SCE)の比(R
SCE/R
SCI)は、金属箔(銅箔)の表面形状が光を散乱しやすいかどうかを表す指標であり、金属箔(銅箔)表面の形状が、透明接着剤層3に転写される場合、得られるアンテナの透過光のヘイズに直接影響する値である。本実施の形態においては、アンテナ層10及びメッシュ層100の基材2側の面を、光散乱性の低い平滑面10a,100aとすることにより(かかる銅箔のかかる面を選択したことにより)、アンテナ層10及びメッシュ層100の開口領域46,146における透明接着剤層3の表面の全光線反射率(R
SCI)に対する拡散光線反射率(R
SCE)の比(R
SCE/R
SCI)を上記特定の範囲とすることができ、透明接着剤層3の表面が透過光を散乱しにくい形状となるため、ヘイズを低減することができる。なお、アンテナ層10及びメッシュ層100を形成する銅箔に接触する圧延ロール表面の研磨度を上げることにより、上記特定の反射特性が得られる。
【0080】
本実施の形態における銅箔表面のJIS Z8722−1982に準拠して測定した全光線反射率(R
SCI)は、JIS Z8722−1982に準拠して、分光測色計(例えば、コニカミノルタセンシング株式会社製、CM−3600d)を反射モードに設定し、光源は標準の光D65、視野2°、測定径4mmφ以上として、検出器を、反射光のうち拡散反射光と鏡面反射光の両方を総合した全反射光の(積分)強度を測定するようなSCI(Specular Component Include)モードに設定して、Y値(3刺激値XYZのY)を測定したものである。また、銅箔表面のJIS Z8722−1982に準拠して測定した拡散光線反射率(R
SCE)は、同様に分光測色計を用いて、光源、視野、及び測定径は上記と同じにして、検出器を、反射光のうち拡散反射光のみの(積分)強度を測定するようなSCE(Specular Component Exclude)モードに設定して、Y値(3刺激値XYZのY)を測定したものである。ここで、3刺激値XYZとは、JIS Z8722−1982で規定され、理想的な環境に置かれた試料を標準光源で照明し、該試料での反射光の分光分析結果を演算することにより決定される値のことである。
【0081】
なお、上述したように、ヘイズ低減の程度は、JIS B0601に定める算術平均粗さRaへの依存(相関)性は低い。しかしながら、Raの値が大きくなりすぎると、一般に表面凹凸が増えることには間違えない為、やはり透明接着剤層3の露出面のヘイズは増加する傾向(弱い相関)はある。その点も考慮すると、特定の光線反射率比(R
SCE/R
SCI)の数値を設定することは前提の上で、Raも可能な範囲で小さいものを選定する方が好ましいと言える。通常は、Raは0.2μm以下、更に好ましくは0.15μm以下に設定される。
【0082】
(用途)
次に本実施の形態にかかるアンテナ1の用途について説明する。アンテナ1の用途としては、まず、携帯電話機用アンテナが挙げられる。この場合、例えば、
図5に示すように、携帯電話機300の筺体301の一部にアンテナ1が貼着されてもよい。そしてアンテナ1は、電話・インターネット通信機能における電波の送受信や、テレビやラジオの放送、GPS(Global Positioning System(全地球測位システム)の略称)衛星等の電波を受信するように構成されていてもよい。図示の携帯電話機300は2つ折りタイプのものであり、折り畳んだ状態で外側となる面に表示画面(サブウインドウ)302を備えている。そして、表示画面302の表示範囲全体にアンテナ1が貼着されている。アンテナ1の給電用電極(図示せず)は、表示画面302の外枠に設けられた出入力端子を介して携帯電話機300内の送受信部に接続されている。なお、アンテナ1は表示画面302の一部に部分的に貼着されてもよい。
【0083】
またアンテナ1は、カーナビゲーション用アンテナでもよい。この場合、例えば、
図6に示すように、自動車のフロントガラス311にアンテナ1が貼着されてもよい。そしてアンテナ1は、カーナビゲーション機器312のテレビチューナーに接続されて、GPS衛星の電波を送受信するように構成されていてもよい。
【0084】
またアンテナ1は、セキュリティシステム用アンテナでもよい。この場合、
図7に示すように、建築物313の窓ガラス314にアンテナ1が貼着されてもよい。そしてアンテナ1は、窓ガラス314が破損した際に信号を受信装置に発信し、これにより異常を検知するように構成されていてもよい。
【0085】
またアンテナ1は、製品管理用アンテナでもよい。この場合、
図8に示すように、ICチップ316とアンテナ1を含むRFID(radio frequency identification)タグ315において、アンテナ1がリーダライタから呼び出し電波を受信するとICチップ316のメモリに記憶している情報をアンテナ1がリーダライタに送信するように構成されてもよい。これにより、製品の入出庫、在庫、販売管理等の情報処置が行われてもよい。
またアンテナ1は、ETC(Electoronic Toll Collection System(電子料金収受システム)の略称)の電波を受信するように構成されていても良い。
【0086】
(アンテナの製造方法)
次にアンテナ1の製造方法について説明する。本実施の形態における製造方法では、まず、JIS Z 8722に準拠して測定した全光線反射率(R
SCI)に対する拡散光線反射率(R
SCE)の比(R
SCE/R
SCI)が0.4以下の面を有する銅箔を用意する工程が、行われる。ここで用いる銅箔は、上記特定の反射特性を有する面(光散乱性の低い平滑面)を有する。
【0087】
次いで、基材2の一方の面である第1面2aに、透明接着剤層3を介して、前記銅箔を、そのR
SCE/R
SCIが0.4以下の面を基材2と向き合わせて積層する工程が、行われる。この工程においては、先ず基材2が用意され、この基材2の第1面2aに、透明接着剤をコーティングして、透明接着剤層3が形成される。透明接着剤層3の層形成法としては、公知の層形成法、例えば、ロールコート、コンマコート、グラビアコート、ダイコート等の塗工法、或いは、任意形状での部分形成が容易なスクリーン印刷、グラビア印刷等の印刷法を適宜採用することができる。次に、基材2の透明接着剤層3の表面に、前記銅箔を光散乱性の低い平滑面側を向けて積層する。
【0088】
次いで、透明接着剤層3上の銅箔上に、完成後に低反射層22,122となる窒化銅の層が積層される。この窒化銅の層を形成するための方法としては、上述のように、スパッタリング法などの薄膜形成法を用いることができる。
【0089】
次いで、銅箔及び窒化銅の層を所定のパターン形状にエッチングして、アンテナ層10及びメッシュ層100を形成する工程が行われる。この工程においては、まず、基材2上に積層された銅箔及び窒化銅の層へ、レジスト層をアンテナ層10及びメッシュ層100に対応する所定の網目パターン形状で設け、レジスト層で覆われていない部分の銅箔及び窒化銅の層をエッチング(腐蝕)により除去した後に、レジスト層を除去するエッチング加工法で、アンテナ層10及びメッシュ層100が形成される。エッチング加工法の中でも、所謂フォトリソグラフィー法を採用する事が、微細加工精度の点から好ましい。
【0090】
本実施の形態では、以下のようにフォトリソグラフィー法が行われる。すなわち、まず、基材2の窒化銅の層上に感光性レジスト層が所定のパターンで形成される。感光性レジスト層は、特定波長域の光、例えば紫外線に対する感光性を有している。感光性レジスト層のタイプは特に限られることはない。例えば光溶解型の感光性レジスト層が用いられてもよく、若しくは光硬化型の感光性レジスト層が用いられてもよい。ここでは、光溶解型の感光性レジスト層が用いられる例について説明する。
【0091】
感光性レジスト層は、アンテナ層10及びメッシュ層100のパターンに対応したパターンで形成されている。感光性レジスト層は、例えば、はじめに、窒化銅の層の表面上にコーターを用いて感光性レジスト材料を全面にコーティングし、次に、感光性レジスト材料を所定のパターンで露光して現像することによって、所定のパターン形状の感光性レジスト層が形成される。
【0092】
次に、感光性レジスト層をマスクとして銅箔及び窒化銅がエッチングされる。なお上述のように、銅箔及び窒化銅のいずれも、銅を含むよう構成されている。このため、銅を溶解させることができるエッチング液を用いて、銅箔及び窒化銅を同時にエッチングすることができる。エッチング液としては、例えば塩化第2鉄水溶液が用いられる。
【0093】
次に、エッチングにより形成された本体層21,121及び低反射層22,122上に残っている感光性レジスト層に対して、これを溶解除去する薬液によって洗浄して脱膜処理が行われる。これによって、感光性レジスト層を除去することができる。このようにして、本体層21,121及び低反射層22,122を有するアンテナ層10及びメッシュ層100が得られる。
【0094】
(効果)
以上に説明した本実施の形態にかかるアンテナ1は、シート状に形成される基材2と、基材2に設けられ、遮光性及び導電性を有する網目状のアンテナ層10と、基材2に設けられ、遮光性を有する網目状のメッシュ層100と、を備え、基材2の法線方向から基材2を見た場合に、メッシュ層100は、アンテナ層10に対して隙間Gをあけてアンテナ層10の外側に位置している。これにより、メッシュ層100をアンテナ層10の外側に設けるのみで、アンテナ層10が局所的に設置されているように見えなくなってアンテナ層10が目立たなくなる。これにより、アンテナ層10の不可視性を簡易に高めることができる。
【0095】
またメッシュ層100に、アンテナ層10と異なる機能、例えば異なる周波数の電波を送受信するアンテナとしての機能や、デフロスタにおける加熱機能等を追加することが可能となることで、機能を拡張することができる。
【0096】
また、本実施の形態では、アンテナ層10とメッシュ層100とが、同一の網目パターン形状で形成されている。これにより、アンテナ層10とメッシュ層100との間における透過率の差を抑制できるため、不可視性を効果的に高めることができる。またアンテナ層10とメッシュ層100とが、同一面上に設けられている。このため、製造が容易となり、製造効率を向上できる。
【0097】
また、基材2には、アンテナ層10の外周部分の一部に電気的に接続され且つアンテナ層10から外側に延びる取出し電極部11が設けられ、メッシュ層100は、アンテナ層10における取出し電極部11の接続位置を除く外周部分の全域を取り囲むように、位置している。これにより、アンテナ層10が確実に目立たなくなるため、不可視性を確実に高めることができる。
【0098】
また、アンテナ層10の最外周にその端部が位置するアンテナ導線44のメッシュ層100側への延長線EL上にメッシュ導線144が延びるように、メッシュ層100が配置されている。これにより、アンテナ層10とメッシュ層100との境目周辺の光の透過率のばらつきを抑制できるため、不可視性を効果的に高めることができる。また、メッシュ層100とアンテナ層10との間の隙間Gが、10μm以上300μm以下であれば、不可視性の確保及びアンテナ層10の適切な機能を両立させることできる。
【0099】
また本実施の形態においては、アンテナ層10及びメッシュ層100が、銅を主成分とする本体層21,121と、本体層21,121に対して基材2とは逆側に積層された、表面から5nm以上の深さに酸素原子を含む窒化銅からなる低反射層22,122と、を含み、低反射層22,122の膜厚は、10nm〜60nmであり、低反射層22,122の反射Y値は、30%以下である。
【0100】
これにより、銅の金属光沢に起因して、赤味を帯びた光が観察者に到達してしまうことを、低反射層22,122によって抑制することができる。また、低反射層22,122の膜厚が10nm〜60nmであり、低反射層22,122の反射Y値が30%以下、好ましくは27%以下であるため、アンテナ導線44又はメッシュ導線144からの反射光によって視認性が低下することを抑制することができる。さらに、本体層21,121及び低反射層22,122のいずれもが銅を含むため、銅を選択的に溶かすことができるエッチング液を用いることにより、アンテナ層10及びメッシュ層100を同時に形成することができる。このため、アンテナ層10及びメッシュ層100を作製するために必要になる工数を小さくすることができる。
【0101】
また、アンテナ層10及びメッシュ層100は、主成分として銅を含み、透明接着剤層3を介して基材2の一方の面に設けられ、アンテナ層10及びメッシュ層100の透明接着剤層3側表面のJIS Z 8722に準拠して測定した全光線反射率(R
SCI)に対する拡散光線反射率(R
SCE)の比(R
SCE/R
SCI)が0.4以下である。これにより、透明接着剤層3の表面が透過光を散乱しにくい形状となるため、ヘイズを低減することができる。
【0102】
上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、必要に応じて図面を参照しながら、変形例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。また、上述した実施の形態において得られる作用効果が変形例においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
【0103】
(変形例1)
図9は、変形例1にかかるアンテナの平面図であり、
図10は、
図9のX−X線に沿う断面図である。この変形例1では、
図9及び
図10に示すように、アンテナ層10が、基材2の第1面2aに設けられ、メッシュ層100は、基材2の第2面2bに設けられている。アンテナ層10とメッシュ層100との間には、上述の実施の形態と同様に、隙間Gが設けられている。このような構成によっても、アンテナ層10の不可視性を簡易に高めることができる。
【0104】
(変形例2)
図11は、変形例2にかかるアンテナの平面図である。この変形例2では、
図11に示すように、アンテナ層10とメッシュ層100とが、異なる網目パターン形状で形成されている。とりわけ、図示の例では、アンテナ層10の網目パターン形状とメッシュ層100の網目パターン形状とが、相似であるが、開口領域の大きさ及びピッチが互いに異なる。具体的には、四角形形状のメッシュ開口領域146の一辺の長さが、アンテナ開口領域46の一辺の長さの2倍で、且つメッシュ開口領域146の第1方向d1及び第2方向d2における一定ピッチは、アンテナ開口領域46の一定ピッチの2倍となっている。
【0105】
一方で、この変形例2においては、上述の実施の形態と同様に、アンテナ層10の最外周にその端部が位置するアンテナ導線44のメッシュ層100側への延長線ELを延ばした場合に、この延長線EL上にメッシュ導線144が延びるように、メッシュ層100が配置されている。このような構成によっても、アンテナ層10の不可視性を簡易に高めることができる。
【0106】
(変形例3)
図12は、変形例3にかかるアンテナの平面図であり、
図13は、
図12のXIII−XIII線に沿う断面図である。この変形例3では、
図12及び
図13に示すように、基材2の第2面2bに第2メッシュ層200が設けられており、第2メッシュ層200は、基材2の法線方向で見た場合に、アンテナ層10とメッシュ層100との間に設けられる隙間Gに位置している。
【0107】
第2メッシュ層200は、基材2の第2面2bに網目状に配置される複数の第2メッシュ導線244を含み、これら複数の第2メッシュ導線244によって複数の第2アンテナ開口領域246を画成している。第2メッシュ導線244は、2つの分岐点247の間を延びる線状の部分である。図示の例では、アンテナ層10、メッシュ層100及び第2メッシュ層200が、同一の網目パターン形状で形成されている。また変形例3においても、アンテナ層10の最外周にその端部が位置するアンテナ導線44のメッシュ層100側への延長線EL(太い二点鎖線を参照)を延ばした場合に、この延長線EL上にメッシュ導線144が延びるように、メッシュ層100が配置されている。一方で、第2メッシュ層200は、基材2の法線方向から見た場合に、第2メッシュ導線244が延長線ELと重なるように、配置されている。
【0108】
このような構成によれば、アンテナ層10が確実に目立たなくなるので、アンテナ層10の不可視性を効果的に高めることができる。
【0109】
(変形例4)
図14は、変形例4にかかるアンテナのアンテナ層10の平面図であり、
図15は、
図14の拡大図であり、
図16は、一般的な画像表示機構320を示す図である。
図14及び
図15に示すように、この変形例4では、アンテナ層10において、アンテナ開口領域46は、その配列の周期性を大きく乱さずにその形状を変化させて、開口面積をばらつかせるようになっている。図示省略するが、メッシュ層100も同様となっている。変形例4は、この点において、上述の実施の形態と異なっている。
【0110】
図16に示す画像表示機構320の表示領域には、画像を形成するための画素Pが規則的に配列されている。アンテナ1は、このような画像表示機構320を覆うフィルム上等への設置も想定される。一般的な画像表示機構320では、画像表示機構320の設置状態における水平方向(
図16における方向d
x)及び水平方向に直交する方向d
y(例えば鉛直方向)の両方に、一定のピッチで画素Pが配列されている。なお、
図16に示された例のように、一般的に、各画素Pは、複数のサブ画素RP,GP,BPを含んでいる。画素配列を有する画像表示機構320にアンテナ1が重なると、アンテナ1のアンテナ層10及びメッシュ層100の開口領域46,146が規則的に配列されている場合、画素Pの規則的(周期的)パターンとアンテナ層10及びメッシュ層100の開口領域46,146の配列パターンとに起因した縞状の模様、すなわちモアレが視認される可能性がある。
【0111】
一般的に、網目状のパターンを有する部材では、メッシュのパターンを不規則化することが、即ちパターン配列の周期性を崩すことがモアレの不可視化に有効であると考えられてきた。しかしながら、本件発明者らの研究によれば、アンテナ層10及びメッシュ層100のパターンをモアレを十分に目立たなくさせる程度に非周期化する、すなわち、開口領域46,146を不規則的に配列すると、モアレを目立たなくすることができるが、其の代わりに今度は、開口領域46,146の密度バラツキに起因した濃淡のむらが目立って来ることが知見された。即ち、モアレ低減と濃淡むら低減とは相反して両立し無いことが判明した。これまで、このようなモアレ又は濃淡むらの不可視化対策が種々研究されてきたが、何れもモアレ及び濃淡むらの双方を効果的に目立たなくさせるには至っていなかった。
【0112】
一方、本件発明者らは、開口領域46,146の開口面積、言い換えると、開口領域46,146を画成する複数の導線44,144に囲まれた当該複数の導線44,144の内側の領域の面積のばらつきに着目して、鋭意研究を重ねた。その結果として、本件発明者らは、開口領域46,146の開口面積のばらつきに制約を課すことにより、モアレを極めて効果的に目立たなくさせることが可能となること、同時に、濃淡むらを極めて効果的に目立たなくさせることの両方が可能となることを知見した。このような作用効果は、モアレの不可視化として単にパターンの不規則化を実施し、その一方で、濃淡むらの不可視化として単にパターンの規則化を実施し、結果として、モアレ及び濃淡むらの双方を不可視化することができていなかった従来の技術水準からして、予測される範囲を超えた顕著な効果であると言える。以下、モアレ及び濃淡むらの双方の不可視化の観点から、アンテナ層10及びメッシュ層100における、開口領域46,146の開口面積の好ましい分布について説明する。
【0113】
まず、アンテナ層10における開口領域46の開口面積の平均値m及び開口領域46の面積の標準偏差σが、次の式(a)を満たすことが好ましい。
3≦(((m+1.5σ)−(m−1.5σ))/m)×100≦20 ・・・(a)
【0114】
なお、式(a)は、3≦3σ/m×100≦20とも記載できる。この式(a)が満たされる場合、対象となる一つのアンテナ層10に起因してモアレ及び濃淡むらが視認されてしまうことを効果的に防止することができた。同様に、メッシュ層100に関しても、開口領域146の開口面積の平均値m及び開口領域146の面積の標準偏差σとしたとき、上述の式(a)を満たすことが好ましい。
【0115】
ここで標準正規分布のグラフ確率変数XがN(m,σ
2)に従う時、平均値mからのずれが±1.5×σ以下の範囲にXが含まれる確率は86.64%となる。したがって、式(a)における「m+1.5σ」は、仮に対象となる一つのアンテナ層10及びメッシュ層100に含まれる開口領域46,146の開口面積の分布が正規分布に従うとの仮定において、一つのアンテナ層10及びメッシュ層100に含まれるすべての開口領域46,146の全開口面積値のうち平均を中心とした86.64%内となる開口面積値の中での最大値を意味することになる。同様に、式(a)における「m−1.5σ」は、仮に対象となる一つのアンテナ層10及びメッシュ層100に含まれる開口領域46,146の開口面積の分布が正規分布に従うとの仮定において、一つのアンテナ層10及びメッシュ層100に含まれるすべての開口領域46,146の全開口面積値のうち平均を中心とした86.64%内となる開口面積値の中での最小値を意味することになる。
【0116】
本件発明者が、鋭意研究を重ねたところ、式(a)が満たされる場合、つまり、「m+1.5σ」と「m−1.5σ」の差である「3σ」の平均値(m)に対する割合が、百分率で3%以上20%以下となる場合に、画像表示機構320との組み合わせにおける通常の使用で問題とならない程度にまでモアレ及び濃淡むらの双方を効果的に目立たなくさせることができた。また、次の式(b)が満たされる場合には、通常の観察において、モアレ及び濃淡むらの双方を感じることが無い程度にまで目立たなくさせることができた。さらに、次の式(c)が満たされる場合には、モアレ及び濃淡むらの存在を注意深く観察したとしても、モアレ及び濃淡むらの双方を視認することができない程度にまで不可視化することができた。
4≦(((m+1.5σ)−(m−1.5σ))/m)×100≦15 ・・・(b)
5≦(((m+1.5σ)−(m−1.5σ))/m)×100≦10 ・・・(c)
【0117】
さらに、本件発明者らが鋭意検討を重ねたところ、次の式(d)が満たされる場合には、通常の観察において、モアレ及び濃淡むらの双方を感じることが無い程度にまで目立たなくさせることができ、次の式(e)が満たされる場合には、モアレの濃淡むらの存在を注意深く観察したとしても、モアレ及び濃淡むらの双方を視認することができない程度にまで不可視化することができた。
4≦(((m+2σ)−(m−2σ))/m)×100≦25 ・・・(d)
5≦(((m+2σ)−(m−2σ))/m)×100≦15 ・・・(e)
【0118】
ここで標準正規分布のグラフ確率変数XがN(m,σ
2)に従う時、平均値mからのずれが±2×σ以下の範囲にXが含まれる確率は95.44%となる。すなわち、式(d)及び式(e)では、式(a)〜(c)と比較して、全開口領域46,146の開口面積値を考慮すべき開口領域46,146の割合が増加する。したがって、一つのアンテナ層10及びメッシュ層100に含まれる開口領域46,146の開口面積の全体的な分布をより高精度に制御することが可能となる。このため、「((m+2σ)−(m−2σ))/m)×100」で表される式(d)及び(e)中における割合が、それぞれ、「((m+1.5σ)−(m−1.5σ))/m)×100」で表される式(b)及び(c)中における割合よりも大きく設定されても同様の作用効果を確保することができるものと考えられる。
【0119】
なお、一つのアンテナ層10及びメッシュ層100に含まれる各開口領域46,146の開口面積は、一例として、画像処理装置によって獲得される画像データに基づき、特定され得る。例えば、先ず、アンテナ層10及びメッシュ層100をカメラ付き顕微鏡でフィルムの法線方向から拡大写真を撮影することにより、開口部領域が黒、メッシュ部分が白の画像を得る。次いで、該画像に対し、照明むらを空間周波数ハイパスフィルタで除去し、更に判別分析法(例えば、大津の2値化処理)を用いて、2値化する。其の後、2値化画像に対し、閉領域のピクセル数を計数し、其のピクセル数を実寸に変換する。尚、実寸への変換は画像解像度から算出できる。
【0120】
図14に戻り、同図には、変形例4におけるアンテナ層10の一例が示されている。アンテナ層10のパターンは、二つの交点62の間を延びて開口領域(開口部)61を画成する複数の線分63から形成されてなる変形例4にかかるアンテナ層10を生成する基となる参照メッシュパターン60(
図15参照)を基礎にして、該参照メッシュパターンの配列周期を適宜不規則化するように変形させたものとして決定されている。より具体的には、これらのアンテナ層10のパターンは、開口領域61が規則的に配列されてなる、言い換えると、開口領域61が周期性を持って配列されてなる参照メッシュパターン60を基礎として、濃淡むらを引き起こさないように開口領域61の配置位置の均一性を維持しつつ、その一方でモアレを十分に不可視化できる程度に、開口領域61の形状を変化させて当該開口領域61の開口面積をばらつかせることにより、決定されている。
【0121】
そして、変形例4においては、アンテナ層10及びメッシュ層100が、
図15に示す参照メッシュパターン60を基礎として、そのパターンを決定されている。
【0122】
以下では、変形例4におけるアンテナ層10及びメッシュ層100のパターンの決定方法の一例について説明する。以下に説明する方法では、二つの交点62の間を延びて開口領域61を画成する複数の線分63から形成された参照メッシュパターン60を決定する工程と、参照メッシュパターン60の交点62に基づいてアンテナ層10及びメッシュ層100における分岐点47,147の位置を決定する工程と、決定された分岐点47,147及び参照メッシュパターン60の線分63に基づき、アンテナ導線44及びメッシュ導線144の位置を決定する工程と、を有している。以下、各工程について順に説明していく。
【0123】
まず、参照メッシュパターン60を決定する工程において、アンテナ層10及びメッシュ層100の基礎となる規則的なパターン、すなわち、参照メッシュパターン60を決定する。ここで決定される参照メッシュパターン60は、二つの交点62の間を延びて開口領域61を画成する複数の線分63から形成されている。この参照メッシュパターン60において、一定形状の開口領域61が交差する実施の形態で説明した方向と同様の第1方向d1及び第2方向d2に規則的に配列されている。なお、参照メッシュパターン60に複数種類の開口領域61が含まれ、各種の開口領域61が交差する二以上の方向に規則的に配列されるようにしてもよい。
【0124】
図15に示すように、図示された参照メッシュパターン60では、一定の四角形形状の開口領域61が、隙間なく敷き詰められたパターンとなっている。開口領域61は、互いに交差する第1方向d1及び第2方向d2にそれぞれ一定ピッチで配列されている。とりわけ、図示された参照メッシュパターン60は、各々が第1方向d1に直線状に延び且つ第1方向d1に直交する方向に一定ピッチP1で配列された複数の第1の直線60a群と、各々が第2方向d2に直線状に延び且つ第2方向d2に直交する方向に前記一定ピッチP1と同一の一定ピッチP2で配列された第2の直線60b群と、によって画成されている。結果として、参照メッシュパターン60に含まれる開口領域61は、すべて同一の四角形形状、とりわけ菱形形状に形成されている。
【0125】
ところで、一般に、画像表示機構320の画素配列とアンテナ層10及びメッシュ層100との干渉によるモアレを不可視化する観点からは、画像表示機構320における画素の配列方向d
x,d
yに対し、アンテナ層10及びメッシュ層100の開口領域46,146の配列方向を傾斜させることが好ましいとされている。一方、本件発明者らが実験を繰り返したところ、
図16に示された正方格子配列された画素Pとのモアレを不可視化する上では、さらに、画素の対角線方向d
oに対しても、開口領域46,146の配列方向を傾斜させることが有効であった。これは、
図16に示すように、画素Pの対角線上となる位置に、画素Pを画成する遮光部(例えばブラックマトリクス)321の幅太部321aが並び、一定間隔で並べられた遮光部321の幅太部321aと開口領域46,146とのモアレが生じ易くなるためと考えられる。
【0126】
正方格子配列された一般的な画素Pは、基材の法線方向から視た場合、即ち平面視において正方形形状を有している。このような画素Pを用いた場合、対角線方向d
oは、画素配列方向d
x,d
yに対して45°傾斜する。そして、本件発明者が確認したところ、正方形形状の画素Pとのモアレを不可視化する上で、開口領域46,146の配列方向が、直交する画素配列方向d
x,d
yのうちの一方d
xに対してなす角度が30°以上40°以下であることが好ましく、33°以上37°以下であることより好ましく、35°であることが最も好ましかった。言い換えると、正方形形状の画素Pとのモアレを不可視化する上で、開口領域46,146の配列方向が、直交する画素の配列方向d
x,d
yのうちの他方d
yに対してなす角度が50°以上60°以下であることが好ましく、53°以上57°以下であることより好ましく、55°であることが最も好ましかった。
【0127】
一方、ここで説明するアンテナ層10及びメッシュ層100のパターン決定方法において、アンテナ層10及びメッシュ層100の開口領域46,146は、概ね、参照メッシュパターン60の開口領域61の配列方向に従うようになる。そして、参照メッシュパターン60における開口領域61の配列方向は、第1方向d1及び第2方向d2となる。したがって、参照メッシュパターン60に含まれる開口領域61の向きを決める第1方向d1及び第2方向d2は、直交する画素Pの配列方向d
x,d
yのうちの一方であるd
xに対して30°以上40°以下の角度をなすことが好ましく、33°以上37°以下の角度をなすことがより好ましく、
図15に示すように35°の角度θ
1x,θ
2xをなすことが最も好ましい。第1方向d1及び第2方向d2が互いに対してなす角度θ
xは、60°以上80°以下であることが好ましく、66°以上74°以下であることがより好ましく、
図15に示すように70°であることが最も好ましい。また、参照メッシュパターン60に含まれる開口領域61の向きを決める第1方向d1及び第2方向d2は、直交する画素の配列方向のうちの他方d
yに対して50°以上60°以下の角度をなすことが好ましく、53°以上57°以下の角度をなすことがより好ましく、
図15に示すように55°の角度θ
1y,θ
2yをなすことが最も好ましい。
【0128】
次に、参照メッシュパターン60の交点62に基づいて分岐点47,147の位置を決定する工程について説明する。この工程では、参照メッシュパターン60の一つの交点62から、一つの分岐点47の位置を決定する。具体的には、各分岐点47は、参照メッシュパターン60の対応する交点62上、或いは、当該対応する交点62上から所定長さ以下の長さだけずれた位置に、配置される。この際、各分岐点47の対応する交点62からのずれ量およびずれる方向を不規則的に決定することにより、最終的に得られるアンテナ層10及びメッシュ層100の開口領域46,146の形状が一定とはならず、モアレを効果的に目立たなくさせることができる。なお、不規則的に選択されるずれ量が0となった場合に、分岐点47,147が対応する交点62上に位置するようにしてもよい。また、各分岐点47,147の対応する交点62からのずれ量の大きさに制約を設けることにより、上述した式(a)〜(e)の条件が満たされるようになり、最終的に決定されるアンテナ層10及びメッシュ層100のパターンに濃淡むらを回避し得る程度の規則性又は均一性が確保されるようになる。
【0129】
なお、各分岐点47,147の対応する交点62からのずれ量は、導線44,144が他の導線に接触することを回避すべく、開口領域61の配列ピッチの半分未満となっていることが好ましい。一つの導線44,144が他の導線44,144と重なってしまうと、当該部分が視認されてしまい濃淡むらの原因となってしまう可能性があるからである。具体的には、導線44,144が他の導線44,144に接触することを回避すべく、各分岐点47,147の対応する交点62からのずれ量は、第1方向d1に直交する方向における第1の直線60a群の配列ピッチP1の半分未満、且つ、第2方向d2に直交する方向における第2の直線60b群の配列ピッチP2の半分未満とすることができる。
【0130】
また、各分岐点47,147について、対応する交点62からのずれ量およびずれる方向の両方をそれぞれ決定していくことに代えて、各分岐点47,147について、対応する交点62からの予め設定した二方向へのずれ量をそれぞれ決定していくようにしてもよい。一例として、画像表示機構320の画素Pの配列方向d
x,d
yへの対応する交点62からのずれ量δ
x,δ
y(
図15参照)を、分岐点47,147毎に決定していくようにしてもよい。この例において、画素Pの一方の配列方向d
xに沿った開口領域61の配列ピッチp
xの一定割合以下(例えば10%以下、好ましくは5%以下)となるようにずれ量δ
xが決定されるようにし、且つ、画素Pの他方の配列方向d
yに沿った開口領域61の配列ピッチp
yの一定割合以下(例えば14%以下、好ましくは7%以下)となるようにずれ量δ
yが決定されるようにすることで、対応する交点62からの分岐点47のずれ量に制約を課してもよい。
【0131】
次に、導線44,144の位置を決定する工程について説明する。以上のようにして、アンテナ層10及びメッシュ層100における分岐点47,147の位置が決定すると、次に、決定された分岐点47,147に基づき、導線44,144の位置を決定する。具体的には、参照メッシュパターン60の或る一つ線分63の両端に位置する二つの交点62にそれぞれ対応する二つの分岐点47,147の間を延びるように、導線44,144の位置を決定する。二つの分岐点47,147の間における導線44,144の経路は、直線であってもよいし、曲線であってもよいし、折れ線であってもよいし、直線及び曲線の組み合わせであってもよい。また、導線44,144の線幅は、上述したように0.2μm以上2μm以下とすることができるし、或いは、この範囲外の太さとしてもよい。
【0132】
このようにして、アンテナ層10及びメッシュ層100が形成される。アンテナ層10及びメッシュ層100の分岐点47,147の位置が、規則性を有した参照メッシュパターン60の交点62の位置に基づいて決定されているため、得られたアンテナ層10及びメッシュ層100において開口領域46,146が或る程度均一に分散して、濃淡むらの発生を抑制することが可能となる。ただし、分岐点47,147の位置は対応する交点62の位置から不規則的に選択された所定範囲内の量だけずれている。したがって、得られたアンテナ層10及びメッシュ層100において開口領域46,146の形状または開口面積の規則性または一定性が失われ、モアレによる不具合も回避することができる。
【0133】
以上のようにしてパターンを決定されたアンテナ層10及びメッシュ層100は、基材2上に形成された銅箔等を、フォトリソグラフィー技術を用いてパターニングすることにより、基材2上に作製され得る。
【0134】
以上のような変形例4では、アンテナ層10及びメッシュ層100に含まれた開口領域46,146の開口面積の平均値m及び開口領域46,146の面積の標準偏差σが、式(a)を満たすようになっている。この結果、対象となるアンテナ層10及びメッシュ層100に起因してモアレ及び濃淡むらが視認されてしまうことを効果的に防止することができる。
3≦(((m+1.5σ)−(m−1.5σ))/m)×100≦20 ・・・(a)
【0135】
また、アンテナ層10及びメッシュ層100に含まれた開口領域46,146の開口面積の平均値m及び開口領域46,146の面積の標準偏差σが、式(b)又は式(d)を満たすようになっている場合には、通常の観察において、モアレ及び濃淡むらの双方を感じることが無い程度にまで目立たなくさせることができ、さらに式(c)又は式(e)を満たすようになっている場合には、モアレ及び濃淡むらの存在を注意深く観察したとしても、モアレ及び濃淡むらの双方を視認することができない程度にまで不可視化することができる。
4≦(((m+1.5σ)−(m−1.5σ))/m)×100≦15 ・・・(b)
5≦(((m+1.5σ)−(m−1.5σ))/m)×100≦10 ・・・(c)
4≦(((m+2σ)−(m−2σ))/m)×100≦25 ・・・(d)
5≦(((m+2σ)−(m−2σ))/m)×100≦10 ・・・(e)