【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するために種々の実験と検討を行う中で、1つの面上に膜質(特性)が異なる2種類の炭素膜層を形成させて積層することにより炭素膜を形成した場合、膜質(特性)が異なる2種類の炭素膜層の層厚比を変化させることにより、積層された炭素膜の特性を制御できることに着目した。
【0011】
そして、異なる2種類の炭素膜層の層厚比を調整するという簡略な手段にも関わらず、上下面および外周摺動面のそれぞれの層厚比を互いに異ならせて積層するだけで、上下面および外周摺動面で互いに異なった膜質の炭素膜を形成することができることを見出した。
【0012】
また、炭素膜層を適切に制御して積層することにより、上下面および外周摺動面のそれぞれの層厚比を適切に調整することができ、その結果、上下面および外周摺動面のそれぞれに適応した炭素膜が形成されたピストンリングが得られることを見出した。
【0013】
本発明
に関連する第1の技術は上記の知見に基づくものであり
、
外周摺動面および上下面に炭素膜が形成されているピストンリングであって、
前記炭素膜は、膜質が異なる少なくとも2種類の炭素膜層が積層された炭素膜であり、
前記2種類の炭素膜層の層厚比が前記外周摺動面と上下面とで異なっている
ことを特徴とするピストンリングである。
【0014】
そして、本発明者は、上記した外周摺動面における各炭素膜層の層厚比と上下面における各炭素膜層の層厚比とが、互いに異なっている炭素膜を生産性良く形成する具体的な方法について検討した。
【0015】
生産性を向上させるためには、多数のピストンリングを上下面が対向するように近接してチャンバー内に配置して、各炭素膜層を成膜させることが好ましい。
【0016】
そこで、本発明者は、このような各炭素膜層の成膜に際して、炭素膜層の成膜時における付き回りの良さと悪さとに着目した。ここで言う「付き回りの良さ」とは、プラズマ密度を高くしプラズマシースを狭くすることにより、狭い隙間であっても基板上に十分に炭素膜層を形成できることを言い、例えば、原料ガスとして分解し易いガスを使用して圧力を高くすると共にバイアス電圧を低くする等の手段を採ることにより実現することができる。そして、「付き回りの悪さ」とは、上記とは逆に、プラズマ密度を低くしプラズマシースを広くすることにより、狭い隙間では基板上に十分には炭素膜層を形成できないことを言い、例えば、原料ガスとして分解し難いガスを使用して圧力を低くすると共にバイアス電圧を高くする等の手段を採ることにより実現することができる。
【0017】
具体的には、最初に付き回りの良い成膜条件で上下面および外周摺動面に第1炭素膜層を成膜すると、近接した上下面にもプラズマが十分に入り込むため、十分な厚みで上下面に第1炭素膜層を成膜することができる。
【0018】
そして、次に、付き回りの悪い成膜条件で上下面および外周摺動面に第2炭素膜層を成膜すると、近接した上下面にはプラズマが十分に入り込まないため、上下面に第2炭素膜層が成膜されにくい。このため、上下面では、第1炭素膜層に対する第2炭素膜層の層厚比が小さくなる。
【0019】
一方、外周摺動面には、付き回りの良い条件で成膜された第1炭素膜層、付き回りの悪い条件で成膜された第2炭素膜層のいずれも十分な厚みで成膜することができる。このため、外周摺動面では、第1炭素膜層に対する第2炭素膜層の層厚比が小さくならない。
【0020】
この結果、第1炭素膜層に対する第2炭素膜層の層厚比(第2炭素膜層は上層に形成される炭素膜層であるため、以下、「上層膜厚比」ともいう)を、外周摺動面の方が上下面よりも大きくなるようにすることができるため、外周摺動面では第2炭素膜層の膜質を発揮させ、上下面では第1炭素膜層の膜質を発揮させることができる。
【0021】
そして、このとき、第1炭素膜層を上下面で要求される膜質(例えば、低相手攻撃性)に適応した炭素膜層、第2炭素膜層を外周摺動面で要求される膜質(例えば、低摩擦性)に適応した炭素膜層として、上記のようにして、上層膜厚比を外周摺動面の方が上下面よりも大きくなるようにさせると、外周摺動面では第2炭素膜層の膜質、即ち、外周摺動面で要求される膜質(例えば、低摩擦性)を発揮させることができる一方、上下面では第1炭素膜層の膜質、即ち、上下面で要求される膜質(例えば、低相手攻撃性)を発揮させることができる。この結果、上下面と外周摺動面のそれぞれに最適化された膜質の炭素膜が形成されたピストンリングを生産性良く提供することができる。
【0022】
具体的に、上下面で要求される低相手攻撃性を発揮させることができる炭素膜層としては、金属などと反応し難く、鉄(Fe)やAlと凝着し難い、炭素(C)と水素(H)の含有比率の合計が80at%以上で殆どがCとHのみからなる炭素膜層を好ましく挙げることができ、90at%以上であればより好ましい。なお、この炭素膜層において、耐久性を確保するためには、第1炭素膜層のナノインデンテーション硬度として15GPa以上であることが好ましく、20GPa以上であることがより好ましい。
【0023】
また、下記の式で表されるラマン係数(ラマン評価係数)が36.3以下の炭素膜においては、摺動相手であるスリーブがAl合金製の場合に、現在広く用いられているCrNコートのピストンよりも摩擦係数が低くなる。このため、外周摺動面で要求される低摩擦性を発揮させることができる第2炭素膜層はラマン係数が36.3以下の炭素膜であることが好ましい。なお、この炭素膜層においても、CとHの含有比率の合計は80at%以上であることが好ましく、90at%以上であればより好ましい。
ラマン係数=10
6÷(ピーク位置×1.08+半値幅)−510
ピーク位置:Gピークの頂点の波長(cm
−1)
半値幅 :Gピークの半値幅(cm
−1)
【0024】
そして、このような第1炭素膜層と第2炭素膜層とを、上記のように、上層膜厚比が外周摺動面で上下面よりも大きくなるように積層させることにより、外周摺動面における炭素膜を低摩擦性が優れた炭素膜、上下面における炭素層を低相手攻撃性が優れた炭素膜に形成させることができる。
【0025】
また、第1炭素膜層と第2炭素膜層の双方が、CとHの含有比率の合計が80at%以上の炭素膜層であると、上下面で凝着が発生してピストンリング溝の摩耗を招くことを抑制するだけでなく、外周摺動面においても、Al合金製のスリーブ(シリンダー)との凝着の発生を抑制することができる。
【0026】
本発明に関連する第2〜第4の技術は上記の知見に基づくものあり、
本発明に関連する第2の技術は
前記炭素膜が、ピストンリング本体側に形成される第1炭素膜層と、表面側に形成される第2炭素膜層とが積層されることにより形成されており、
前記上下面における前記第2炭素膜層の層厚が、前記外周摺動面における前記第2炭素膜層の層厚より薄く、
前記第1炭素膜層の層厚に対する前記第2炭素膜層の層厚の比率が、前記外周摺動面の方が前記上下面よりも大きい
ことを特徴とする
第1の技術に記載のピストンリングである。
【0027】
そして、
本発明に関する第3の技術は、
前記上下面において、前記第1炭素膜層の層厚が、前記第2炭素膜層の層厚より厚いことを特徴とする
第2の技術に記載のピストンリングである。
【0028】
また、
本発明に関する第4の技術は、
前記第2炭素膜層が、ラマンスペクトルに基づいて下記の式より求められるラマン係数が36.3以下の炭素膜層であることを特徴とする
第2の技術または
第3の技術に記載のピストンリングである。
ラマン係数=10
6÷(ピーク位置×1.08+半値幅)−510
ピーク位置:Gピークの頂点の波長(cm
−1)
半値幅 :Gピークの半値幅(cm
−1)
【0029】
次に、
本発明に関する第5の技術は、
少なくとも前記第1炭素膜層がプラズマCVDを用いて形成された炭素膜層であることを特徴とする
第2の技術ないし
第4の技術のいずれ
かに記載のピストンリングである。
【0030】
プラズマCVDはガスを原料とする成膜法であるため、生成されたプラズマは狭い隙間にも入り込むことができ、付き回りを良くすることができ、第1炭素膜層の成膜方法として好ましい。
【0031】
そして、複数のピストンリングを上下面を対向させて小さな間隔でセットした場合でも、上下面により確実に第1炭素膜層を形成することができ、また、上下面で第1炭素膜層の層厚を第2炭素膜層の層厚より厚くすると共に、外周摺動面における上層膜厚比が上下面における上層膜厚比よりも大きくなるように容易に制御することができる。
【0032】
また、ガスを原料とすることにより、容易に、CとHの含有比率の合計が80at%以上の第1炭素膜層を形成させることができる。
【0033】
本発明に関する第6の技術は、
チャンバー内に互いの上下面が平行になるように配置された2本以上のピストンリングに対して、
プラズマCVDを用いて、前記第2炭素膜層の上下面における層厚に対する外周摺動面における層厚の比率である第2外周層厚比が、前記第1炭素膜層の上下面における層厚に対する外周摺動面における層厚の比率である第1外周層厚比よりも大きくなる条件で、
前記第1炭素膜層および前記第2炭素膜層が形成されている
ことを特徴とする
第5の技術に記載のピストンリングである。
【0034】
プラズマCVDを用いて、上記の条件で一貫成膜することにより、上下面と外周摺動面のそれぞれに要求される膜質に適応した異なる膜質の炭素膜が形成されたピストンリングを、高い生産性で提供することができる。
【0035】
本発明に関する第7の技術は、
前記第1炭素膜層および前記第2炭素膜層が、
前記2本以上のピストンリングの上下面または内周面の一部が保持具に保持された状態で配置されて形成されている
ことを特徴とする
第6の技術に記載のピストンリングである。
【0036】
2本以上のピストンリングを円筒状の保持具のように、ピストンリング内周面全体を保持具に接触させた場合、ピストンリングの輪の内側にプラズマが発生しなくなるため、第1炭素膜層の形成に際して、付き回りが悪化する。一方、ピストンリングの上下面または内周面全体を保持具に接触させるのではなく、その一部のみを保持具で保持させた場合、ピストンリングの輪の内側にもプラズマを発生させることができるため、前記した付き回りの悪化を改善することができる。
【0037】
本発明に関する第8の技術は、
前記第1炭素膜層および第2炭素膜層のうち、少なくとも第2炭素膜層が自己放電型以外のプラズマCVD装置を用いて形成されていることを特徴とする
第6の技術または
第7の技術に記載のピストンリングである。
【0038】
プラズマCVDを用いることにより、前記したように、第1炭素膜層および第2炭素膜層を一貫成膜することができるが、自己放電型のプラズマCVD装置の場合、第1炭素膜層を成膜した後、第2炭素膜層を成膜しようとすると、既に成膜されている第1炭素膜層が絶縁体であるため、第2炭素膜層を成膜するためにプラズマを発生することが困難になり、プラズマ状態が大きく変化して、処理条件を自由に選択することが難しくなる恐れがある。
【0039】
これに対して、少なくとも第2炭素膜層の形成に、他にプラズマ源を持つコーティング装置を用いた場合には、第1炭素膜層と第2炭素膜層の処理条件を比較的自由に選択することができ好ましい。
【0040】
本発明に関する第9の技術は、
コーティング装置として、PIG放電プラズマCVD装置が用いられていることを特徴とする
第8の技術に記載のピストンリングである。
【0041】
PIG(Penning Ionization Gauge)放電プラズマCVDは、狭ピッチ間で優先的に強い放電状態を実現させ、均一な高密度のプラズマを発生させることができるため、第1炭素膜層の形成に際して、より一層付き回りよく炭素膜層を形成することができる。
【0042】
本発明に関する第10の技術は、
前記第2炭素膜層が、スパッタリングまたはイオンプレーティングのいずれかのPVDを用いて、前記ピストンリング本体をプラズマ発生源からのイオン流に対して前記外周摺動面が垂直、前記上下面が平行であるように配置された状態で形成されていることを特徴とする
第4の技術または
第5の技術に記載のピストンリングである。
【0043】
PVDは付き回りが悪い成膜法であり、ピストンリング本体をプラズマ発生源からのイオン流に対して外周摺動面が垂直、上下面が平行であるように配置された状態で、ガスを原料とするプラズマCVDにより良い付き回りで形成された第1炭素膜層の上に第2炭素膜層を成膜させることにより、外周摺動面では厚く、上下面では薄く第2炭素膜層を形成させることができる。
【0044】
本発明に関する第11の技術は、
前記炭素膜の形成に先立って、前記ピストンリング表面に、スパッタリングを用いてチタンまたはクロムからなる金属層が形成されていることを特徴とする
第1の技術ないし
第10の技術のいずれ
かに記載のピストンリングである。
【0045】
チタン(Ti)やクロム(Cr)からなる金属層は、炭素膜に比べて鉄材との密着性に優れているため、第1炭素膜層の形成に先立って、これらの金属層が設けられることにより、第1炭素膜層の密着性を十分に確保することができる。
【0046】
本発明に関する第12の技術は、
前記炭素膜の形成に先立って、シラン系ガスを含有する混合ガスを用いたCVDで形成された珪素を含有する炭素層が形成されていることを特徴とする
第1の技術ないし
第10の技術のいずれ
かに記載のピストンリングである。
【0047】
第1炭素膜層は、鉄(Fe)やアルミニウム(Al)などと凝着しにくくする必要があるため、ピストンリング表面との密着性も確保しにくいが、第1炭素膜層の形成に先立って、シラン系ガスを含有する混合ガスを用いたCVDで珪素を含有する炭素膜をピストンリング表面との密着性が良い条件で作製しておくことにより、十分な密着性を確保することができる。
【0048】
また、珪素を含有する炭素膜層がCVDにより形成されているため、上下面においても密着性の確保が可能となる。
【0049】
本発明に関する第13の技術は、
前記炭素膜の形成に先立って、前記ピストンリング表面に、スパッタリングを用いてチタンまたはクロムからなる金属層、シラン系ガスを含有する混合ガスを用いたCVDで形成された珪素を含有する炭素膜層の順に形成されていることを特徴とする
第1の技術ないし
第10の技術のいずれ
かに記載のピストンリングである。
【0050】
炭素膜よりもピストンリング表面との密着性の良い層を、スパッタリングによる金属層、CVDによる珪素を含有する炭素膜層の順に形成することにより、摺動面では金属層および珪素を含有する炭素膜層により十分な密着性が得られ、上下面では珪素を含有する炭素膜層により十分な密着性を得ることができる。
【0051】
本発明に関する第14の技術は、
前記ピストンリングの前記外周摺動面および上下面の少なくともいずれか一方と摺動する相手材の材質が、アルミ合金であることを特徴とする
第1の技術ないし
第13の技術のいずれ
かに記載のピストンリングである。
【0052】
本発明に係るピストンリングは、低相手攻撃性に優れた第1炭素膜層と低摩擦性に優れた第2炭素膜層とが積層された炭素膜が、その膜厚比を変えて、外周摺動面と上下面とに形成されている。
【0053】
このため、摺動する相手材が、摩耗し易くピストンリングに付着しやすいアルミ(Al)合金が相手材であっても、ピストンリングのガタツキなどにより発生する焼き付きの発生が抑制される。
【0054】
本発明に関する第15の技術は、
硫化ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデンを含有する潤滑油が用いられている環境下で用いられることを特徴とする
第14の技術に記載のピストンリングである。
【0055】
Al合金との摺動の場合、Mo−DTCを含有する潤滑油中でも異常摩耗が起きないため、本発明の効果が一層顕著に発揮される。
【0056】
本発明に関する第16の技術は、
第1の技術ないし
第15の技術のいずれ
かに記載のピストンリングが用いられていることを特徴とするエンジンである。
【0057】
上記のような本発明に係るピストンリングが用いられていることにより、ピストンリングとピストンやスリーブなどとの摺動部分において、例えば、低相手攻撃性、低摩擦性を発揮させることができ、高出力、高回転化や軽量化にとって好適な高性能のエンジンを提供することができる。
【0058】
本発明は、上記した第1〜第16の技術に基づく発明であり、請求項1に記載の発明は、
外周摺動面および上下面に炭素膜が形成されているピストンリングであって、
前記炭素膜は、膜質が異なる少なくとも2種類の炭素膜層が積層された炭素膜であり、
前記2種類の炭素膜層の層厚比が前記外周摺動面と上下面とで異なっており、
前記炭素膜が、ピストンリング本体側に形成される第1炭素膜層と、表面側に形成される第2炭素膜層とが積層されることにより形成されており、
前記第2炭素膜層が、ラマンスペクトルに基づいて下記の式よりもとめられるラマン係数が36.3以下である
ことを特徴とするピストンリングである。
ラマン係数=106÷(ピーク位置×1.08+半値幅)−510
ピーク位置:Gピークの頂点の波長(cm−1)
半値幅 :Gピークの半値幅(cm−1)
【0059】
そして、請求項2に記載の発明は、
前記上下面における前記第2炭素膜層の層厚が、前記外周摺動面における前記第2炭素膜層の層厚より薄く、
前記第1炭素膜層の層厚に対する前記第2炭素膜層の層厚の比率が、前記外周摺動面の方が前記上下面よりも大きい
ことを特徴とする請求項1に記載のピストンリングである。
【0060】
そして、請求項3に記載の発明は、
前記上下面において、前記第1炭素膜層の層厚が、前記第2炭素膜層の層厚より厚いことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のピストンリングである。
【0061】
そして、請求項4に記載の発明は、
少なくとも前記第1炭素膜層がプラズマCVDを用いて形成された炭素膜層であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のピストンリングである。
【0062】
そして、請求項5に記載の発明は、
チャンバー内に互いの上下面が平行になるように配置された2本以上のピストンリングに対して、
プラズマCVDを用いて、前記第2炭素膜層の上下面における層厚に対する外周摺動面における層厚の比率である第2外周層厚比が、前記第1炭素膜層の上下面における層厚に対する外周摺動面における層厚の比率である第1外周層厚比よりも大きくなる条件で、
前記第1炭素膜層および前記第2炭素膜層が形成されている
ことを特徴とする請求項4に記載のピストンリングである。
【0063】
そして、請求項6に記載の発明は、
前記第1炭素膜層および前記第2炭素膜層が、
前記2本以上のピストンリングの上下面または内周面の一部が保持具に保持された状態で配置されて形成されている
ことを特徴とする請求項5に記載のピストンリングである。
【0064】
そして、請求項7に記載の発明は、
前記第1炭素膜層および第2炭素膜層のうち、少なくとも第2炭素膜層が自己放電型以外のプラズマCVD装置を用いて形成されていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載のピストンリングである。
【0065】
そして、請求項8に記載の発明は、
コーティング装置として、PIG放電プラズマCVD装置が用いられていることを特徴とする請求項7に記載のピストンリングである。
【0066】
そして、請求項9に記載の発明は、
前記第2炭素膜層が、スパッタリングまたはイオンプレーティングのいずれかのPVDを用いて、前記ピストンリング本体をプラズマ発生源からのイオン流に対して前記外周摺動面が垂直、前記上下面が平行であるように配置された状態で形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のピストンリングである。
【0067】
そして、請求項10に記載の発明は、
前記炭素膜の形成に先立って、前記ピストンリング表面に、スパッタリングを用いてチタンまたはクロムからなる金属層が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項
9のいずれか1項に記載のピストンリング
である。
【0068】
そして、請求項11に記載の発明は、
前記炭素膜の形成に先立って、シラン系ガスを含有する混合ガスを用いたCVDで形成された珪素を含有する炭素層が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項
9のいずれか1項に記載のピストンリング
である。
【0069】
そして、請求項12に記載の発明は、
前記炭素膜の形成に先立って、前記ピストンリング表面に、スパッタリングを用いてチタンまたはクロムからなる金属層、シラン系ガスを含有する混合ガスを用いたCVDで形成された珪素を含有する炭素膜層の順に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のピストンリングである。
【0070】
そして、請求項13に記載の発明は、
前記ピストンリングの前記外周摺動面および上下面の少なくともいずれか一方と摺動する相手材の材質が、アルミ合金であることを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載のピストンリングである。
【0071】
そして、請求項14に記載の発明は、
硫化ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデンを含有する潤滑油が用いられている環境下で用いられることを特徴とする請求項13に記載のピストンリングである。
【0072】
そして、請求項15に記載の発明は、
請求項1ないし請求項14のいずれか1項に記載のピストンリングが用いられていることを特徴とするエンジンである。