特許第6604558号(P6604558)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6604558-管接続構造の製造方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6604558
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】管接続構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 13/14 20060101AFI20191031BHJP
   F16J 15/14 20060101ALI20191031BHJP
   F16L 13/12 20060101ALI20191031BHJP
   F16L 21/00 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   F16L13/14
   F16J15/14 C
   F16L13/12
   F16L21/00 E
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-26012(P2018-26012)
(22)【出願日】2018年2月16日
(65)【公開番号】特開2019-143660(P2019-143660A)
(43)【公開日】2019年8月29日
【審査請求日】2018年2月20日
【審判番号】不服2018-11944(P2018-11944/J1)
【審判請求日】2018年9月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516388355
【氏名又は名称】大基産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107906
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 克彦
(72)【発明者】
【氏名】輸本 東宜
(72)【発明者】
【氏名】輸本 東伯
【合議体】
【審判長】 松下 聡
【審判官】 山崎 勝司
【審判官】 槙原 進
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−250663(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0014121(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L13/14
F16L21/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部を拡径してなるソケット部(21)を有し、ソケット部(21)の側面にシール部材導入口(23)が設けられた継手管(20)と、先端部の途中に外方に膨出してなる環状の膨出部(11)を有する接続管(10)と、を準備し、
ソケット部(21)の先端部が膨出部(11)を跨ぎ、かつ接続管(10)の先端面がソケット部(21)の内奥部の壁部(22)に突き当たるように、接続管(10)をソケット部(21)に挿入する工程と、
膨出部(11)を跨いだソケット部(21)の先端部を接続管(10)の外周部に圧着する工程と、
シール部材導入口(23)を通して、ソケット部(21)と接続管(10)との間の隙間に液状又はゲル状のシール部材(30)を導入する工程と、
ソケット部(21)と接続管(10)との間の隙間に導入されたシール部材(30)を硬化させ、前記隙間に筒状のシール部材(30)を形成する工程と、を備えることを特徴とする管接続構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気や空気などの気体、水や油などの流体、粉体、粒体を輸送する管の接続構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、継手管を介して接続管を相互に接続する管接続構造が知られている。
特許文献1には、継手管のソケット部に接続管を挿入して、締め付け接続するプレス式管継手として、ソケット部の受口内面に環状溝を設け、この環状溝内にシール部材としてOリングを装着し、ソケット部の一部を接続管に圧着すると共に環状溝の部分も加圧してOリングを接続管の外周面に食い込み状態に圧着したものが記載されている。
【0003】
特許文献2には、継手管のソケット部に接続管を挿入し、ソケット部と接続管の隙間にゴム等の弾性素材でなる円筒状のシール部材を設けたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−226582号公報
【特許文献2】特開平3−092691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の管接続構造を検討すると、接続管(管継手)の回転や、接続管(管継手)の抜け出しを確実に防止して、シーリング性能をさらに向上させることが望まれる。
【0006】
特許文献1の管接続構造は、シール部材としてOリングを用いているので、シール部材と接続管の接触面積は限定的であり、またソケット部と接続管との接続はプレスによる圧着に依存しているため、例えば、接続管(管継手)内の流体等の圧力、管接続構造本体の経時劣化、振動等の影響により、接続管(管継手)の抜け出し、回転等の変形が起こるおそれがある。
【0007】
また、特許文献2に記載の管接続構造は、ソケット部と接続管の隙間に筒状のシール部材を設けているので、シール部材の接触面積を大きくできるが、接続管が抜け出るのを規制する構造にはなっていない。また、シーリング特性を向上させるために、シール部材の接着性をさらに高める必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題に鑑み、本発明による管接続構造の製造方法は、先端部を拡径してなるソケット部(21)を有し、ソケット部(21)の側面にシール部材導入口(23)が設けられた継手管(20)と、先端部の途中に外方に膨出してなる環状の膨出部(11)を有する接続管(10)と、を準備し、ソケット部(21)の先端部が膨出部(11)を跨ぎ、かつ接続管(10)の先端面がソケット部(21)の内奥部の壁部(22)に突き当たるように、接続管(10)をソケット部(21)に挿入する工程と、膨出部(11)を跨いだソケット部(21)の先端部を接続管(10)の外周部に圧着する工程と、シール部材導入口(23)を通して、ソケット部(21)と接続管(10)との間の隙間に液状又はゲル状のシール部材(30)を導入する工程と、ソケット部(21)と接続管(10)との間の隙間に導入されたシール部材(30)を硬化させ、前記隙間に筒状のシール部材(30)を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、ソケット部(21)と接続管(10)との間の隙間に筒状のシール部材(30)を設けたので、シール部材(30)の管軸方向の寸法を大きくすることにより、シール部材(30)の接触面積を大きくすることができる。また、ソケット部(21)の先端部は膨出部(11)を跨いで接続管(10)の外周部に圧着されているので、アンカー効果により、接続管(10)(継手管(20))が管軸方向に抜け出るのを防止することができる。また、本発明によれば、シール部材導入口(23)を通して、ソケット部(21)と接続管(10)との間の隙間に液状又はゲル状のシール部材(30)を導入し、ソケット部(21)と接続管(10)との間の隙間に導入されたシール部材(30)を硬化させているので、シール部材(30)のシーリング性能と接着性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、接続管(管継手)の回転や、接続管(管継手)の抜け出しを確実に防止して、シーリング性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態における管接続構造の平面図及び正面図である。
図2図1のX−X線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態における管接続構造を図1及び図2に基づいて説明する。図1は管接続構造100を示す図で、図1(a)は、管接続構造100の平面図、図1(b)は、その正面図である。図2は、図1のX−X線における断面図である。
【0015】
配管接続構造100は、2本の接続管10,10を、継手管20を介して接続するものである。継手管20は先端部を拡径してなるソケット部21を有している。接続管10は、ソケット部21に挿入される。接続管10は先端部の途中に外方に膨出してなる環状の膨出部11を有している。この膨出部11は接続管10を部分的に拡径して形成される。
【0016】
ソケット部21の先端部は膨出部11を跨いで接続管10の外周部にプレス工具を用いて圧着されている。詳しくは、ソケット部21の先端部は膨出部11の外周面に圧着されると共に、膨出部11を跨いでさらに接続管10に沿って延びており、膨出部11が形成されていない接続管10の滑らかな外周部に圧着されている。
【0017】
接続管10の先端面はソケット部21の内奥部の壁部22に突き当てられている。この壁部22は、ソケット部21の拡径により形成されるものであり、ソケット部21とソケット部21に隣接する拡径されていない継手管20の部分とを接続する。壁部22は、図面ではソケット部21の管軸方向に対して斜めに設けられているが、管軸方向に対して直角に設けられていてもよい。
【0018】
そして、ソケット部21と接続管10との間の隙間に筒状のシール部材30が導入されている。ソケット部21の側面には、シール部材30をソケット部21と接続管10との間の隙間に導入するためのシール部材導入口23が設けられている。シール部材30は、高気密性、高接着性等を実現するために、ゴム等の弾力性があるパッキン材、またはコーキング材、接着剤等、シリコーン系等の液状またはゲル状のシーリング材で構成される。
【0019】
この配管接続構造100によれば、ソケット部21と接続管10との間の隙間に筒状のシール部材30を設けたので、シール部材30の管軸方向の寸法の自由度があり、この寸法を大きくすることにより、シール部材30の接触面積を大きくすることができる。
【0020】
また、ソケット部21の先端部は膨出部11を跨いで接続管10の外周部に圧着されているので、アンカー効果により、接続管10(継手管20)が管軸方向に抜け出るのを防止することができる。そして、これらの構成の相乗効果として、接続管10(管継手20)の回転、接続管10(継手管20)の抜け出しを確実に防止して、シーリング性能を向上させることができる。
【0021】
次に、配管接続構造100の製造方法を説明する。先ず、接続管10をソケット部21に挿入する。この時、ソケット部21の先端部が膨出部11を跨ぎ、かつ接続部10の先端面がソケット部21の内奥部の壁部22に突き当たるよう接続管10の挿入を行う。
【0022】
次に、膨出部11を跨いだソケット部21の先端部を接続管10の外周部にプレス工具を用いて圧着する。
【0023】
次に、シール部材導入口23を通して、ソケット部21と接続管10との間の隙間に液状又はゲル状のシール部材30を導入し、その後、ソケット部21と接続管10との間の隙間に導入されたシール部材30を乾燥、加熱、化学反応等により硬化させる。シール部材導入口23を通して液状又はゲル状のシール部材30を導入、充填することで、前記隙間に筒状のシール部材30を容易に形成することができる。また、シール部材導入口23を介して、シール部材30の硬化を促進することができる。
【0024】
この場合、シール部材導入口23を複数個設けることにより、シール部材30の導入時間を短縮することができる。また、ソケット部21の側面にシール部材排出口を設け、シール部材導入口23から導入されたシール部材30を前記隙間にある気体、流体等などと一緒に排出できるように構成することで、前記隙間に残留物を生じさせることなく、シール部材30を充填することができる。シール部材排出口を複数個設けることで、シール部材30の充填時間を短縮することができる。
【0025】
また、シール部材30は液状又はゲル状の状態で導入され、その後、硬化されることから、最初から固形状のシール部材を設置するものに比べて、ソケット部21と接続管10との高い接着性、密着性を得ることができる。
【0026】
上述した実施形態においては、ソケット形の配管接続構造を例に挙げて説明したが、本発明は、これに限らず、T形、L形、Y形、ストレーナー形、プラグ形等の種々の管接続構造に適用することができる。さらに、本発明は、蒸気や空気などの気体、水や油などの流体、粉体、粒体を輸送する管の接続構造に広く適用することができるものである。
【符号の説明】
【0027】
10 接続管
11 膨出部
20 継手管
21 ソケット部
22 壁部
23 シール部材導入口
30 シール部材
図1
図2