特許第6604578号(P6604578)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6604578
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】外気取入れ用換気制御装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/007 20060101AFI20191031BHJP
   F24F 11/77 20180101ALI20191031BHJP
   F24F 11/46 20180101ALI20191031BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20191031BHJP
   F24F 110/12 20180101ALN20191031BHJP
   F24F 110/20 20180101ALN20191031BHJP
   F24F 110/22 20180101ALN20191031BHJP
【FI】
   F24F7/007 B
   F24F11/77
   F24F11/46
   F24F110:10
   F24F110:12
   F24F110:20
   F24F110:22
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-145237(P2016-145237)
(22)【出願日】2016年7月25日
(65)【公開番号】特開2018-17406(P2018-17406A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2018年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】503291244
【氏名又は名称】株式会社アクシス
(72)【発明者】
【氏名】間 純一
【審査官】 河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−174825(JP,A)
【文献】 特開平09−269262(JP,A)
【文献】 特開昭62−123235(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/001607(WO,A1)
【文献】 特開平11−190549(JP,A)
【文献】 特開2013−083402(JP,A)
【文献】 特開2012−159244(JP,A)
【文献】 特開2012−032044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/007,11/00−11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
業務用建物の機械式給排気換気設備および家庭用換気扇設備のうち、主に在室者向け新鮮外気取入れ・排気に供する用途設備にあって、
冬季などの冷房需要が存在しない時期および夏期の外気の持つ比エンタルピ(熱エネルギ単位)値が対象室空気の比エンタルピ値より高く空調運転に際し冷房熱負荷となる場合には、
二酸化炭素を検知する計測器を用いずに、人の二酸化炭素排出量に見合う外気取入れ量の算定を計算処理によって得て、余分な給排気を抑えるため必要分量のみ給排気するように外気取入れ量の抑制を行い、
冷房需要期でも外気の比エンタルピ値が建物の対象室空間の比エンタルピ値より低い場合、外気の冷熱を活用し冷却分が空調負荷の軽減に繋がる効果を生むことから、
外気と室内の温湿度センサだけの最小構成計測器の検知を基に計算処理により運転判定指標を得て、換気装置自体のエネルギ消費および外気の給気排気に伴い間接的に派生する空調用運転のエネルギ消費の軽減利得を算定評価して稼働判定し、外気取入れ換気の全負荷運転を行う、
という機能を内蔵し、手動の給排気換気設備や目的の異なる自動制御で動作する給排気換気設備および家庭用換気扇設備に追加、中間挿入する換気用自動制御装置。
【請求項2】
前記計算処理は、冬期の冷房需要が存在しない時期および夏期外気の持つ比エンタルピ値が対象室空気の比エンタルピ値より高いときには、作業の種類により変化する人の二酸化炭素排出量を一般的統計から得た値で求め、日毎時毎に変化する在室人員は通例値をスケジュール設定から得てこの人数を乗じて、二酸化炭素の総発生量を求め、二酸化炭素濃度の低い外気で希釈して基準値以下となる外気取入れ量を計算のみで設定処理する、
請求項1に記載の換気用自動制御装置。
【請求項3】
前記計算処理は、冷房需要期でも外気の比エンタルピ値が建物の対象室空間の比エンタルピ値より低い場合、外気と室内の温湿度を必要最小限の計測項目として実用的な相対湿度検知の電気式温湿度センサを用い、乾球温度と相対湿度値から蒸気表の式を用い内外の状態値を算定し、冷房環境下の快適指標となる絶対湿度差と比エンタルピ値差により運転判定を行う、
請求項1に記載の換気用自動制御装置。
【請求項4】
前記計算処理の運転の判定基準とする差幅の判定および経済性評価は、間接的に利得となる空調運転に伴う消費エネルギ量と換気設備自体の運転による消費エネルギ量の加算で行い、空調エネルギ消費量分は、冷房が行われる通常外気帯域における冷凍サイクルの生成比(成績係数:COP)を統計処理から得て、外気冷却で得た熱を除した値を運転エネルギ量と見なして計算処理する、
請求項1に記載の換気用自動制御装置。
【請求項5】
高度の異なる地域にも対応させるために、運転判定手段に露点温度値をさらに付加する、請求項3に記載の換気用自動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築設備である給排気換気設備および家庭用換気扇を運転制御する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
春夏秋冬と四季を有する日本では、夏を中心に外気の熱エネルギ(温度、湿度:比エンタルピ)値が高く、建物・住宅内では、在室・居住者を対象にした冷房運転を行うのが一般的である。
住宅では夏の外気温の高さが顕著になった場合に冷房運転がなされるが、業務用の建物では、内部熱負荷が高いため春から冬初期まで長期に亘って冷房運転が行われるのが通例である。そのため業務用建物では、外気の比エンタルピ値が冷房下の快適環境温度域より低い時期・時間帯は多く存在する。
【0003】
業務用建物の給排気換気設備の運転制御方法は、主に建物の在室者に向けての新鮮空気の取入れを目的として設置された場合とトイレ等臭気や汚染空気の排出を目的とする場合があり、概ね、手動による発停、スケジュールによる発停・部分負荷運転制御が行われる。建物内諸室(電気室等)で発生する発熱による温度上昇を緩和する目的として設置された場合には、概ね、手動による発停、スケジュール、室温検知によるによる発停・部分負荷運転制御が行われる。住宅用建物では、室内で発生するトイレや調理など臭気の排出を目的として、概ね、手動による発停が行われ、近年、新築の住宅では、法的処置として新築時の新建材から発生する有毒ガスを排気する目的で小規模の24時間換気システムが取られている。
【0004】
建物内空間に居る人の暑熱対策は、空気調和システムやエアコンの運転によって空間を冷房することによって行われる。空気調和システムにおいては、通常、対象室の在室者用として新鮮空気を取入れるため外気取入れ系統ダクトが装備されており、新鮮空気取入れの役割を持つ。新鮮空気取入れ量制御が行われる事例もあるが、その場合、通常は、冷暖房のピーク時間帯の外気温度ピーク時に対応するための外気抑制制御である。
家庭用エアコンによる冷房では、ほぼ、新鮮空気取入れ設備は設けられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−083402号
【特許文献1】特開2012−177521号
【特許文献1】特開2008−025851号
【特許文献1】特開2003−148782号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
業務用建物の給排気換気設備は多くは手動による運転であり、自動制御運転の場合も、スケジュール発停程度であり、通常は対象室に必要な外気取入れ量より過大で、過剰風量による動力消費の増加と、冷暖房空調期においては余分な外気取入れ量による余分な侵入熱が過剰な冷暖房空調用エネルギ消費を生む。人を対象とする新鮮外気取入れ量を適正制御するには、対象室内の二酸化炭素濃度を計測し発停基準を定め判定すればよい。しかし、この二酸化炭素濃度センサは高価であり、大規模で高級なシステムでないとほぼ採用されていない。
【0007】
家庭用の換気設備では、主に手動制御であり人の必要換気量を考慮した操作すら行われていない。
【0008】
空気調和装置・エアコン運転による冷暖房は、蒸気圧縮式(電動)冷凍機や吸収冷凍機で冷温熱を生成し行うため、比較的多大なエネルギ消費を要し、エネルギ種である電力消費・ガスの燃焼は、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素の発生、高コストのエネルギ経費を伴う。この空調エネルギ消費には、新鮮外気量の多少が空調用熱負荷として左右する。
夏季においては、日射と共に外気の比エンタルピ値が高くなり、その環境下にある建物・住宅等では、在室・居住者を快適な環境に置くために冷房装置を設置しこれの運転により対処する。建物内はほぼ密閉空間となり在室・居住者の呼吸や炊事の燃焼作用により空気が汚染するため、新鮮外気を給気する処置をとる。しかし、外気は上記理由により冷房運転の熱負荷となり極力抑制した量を取入れるのが通常の方法である。空調制御において、外気の冷熱を積極的に活用する例は少なくかつ複雑となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
業務用建物における給排気換気設備および家庭用換気扇設備のうち、主に在室者向け新鮮外気取入れに供する機器設備の自動制御装置に関する。
【0010】
四季の様々な状態にある外気の取入れ量をその条件に合う制御を行うことで、関係するエネルギ消費を最小限に抑えることを実現する。関係するエネルギ消費とは、換気装置自体の電力消費に伴うエネルギ消費の他、その運転によって間接的に抑制できる冷暖房空調用運転エネルギ消費を指す。
外気の比エンタルピ(熱エネルギ単位)値は、季節、時間帯、天候により変化し、また、高湿度時など取入れに不向きな状態もあり、常時、外気の状態値を確認し、取入れに適した状態値にある場合に判定して取入れることが望ましい。
【0011】
冬季などの冷房需要が存在しない時期、および夏期、外気の持つ比エンタルピ値が対象室空気の比エンタルピ値より高いときには、余分な給排気を抑えるため必要分量のみ給排気するように外気取入れ排気量の抑制制御を行う。
給排気換気設備の設置目的が新鮮外気量取入れの場合、人の健康的環境を維持するためには空気汚染の指標である二酸化炭素濃度の計測が必要となるが、これを省略し統計値・実態値を活用した計算処理によって必要量を求める。
新鮮外気の所要量計算法には、作業の種類により変化する人の二酸化炭素排出量を一般的統計から得た値で用い、日毎時毎に変化する在室人員は通例値をスケジュール設定で得て、この人数を乗じて二酸化炭素の総発生量を求め、二酸化炭素濃度の低い外気で希釈して基準値以下となる外気取入れ量を計算にて求める。他に、対象室の容積と換気回数設定値から所要換気量を計算する換気回数法による方法の、状況に応じ2つの方法から選択する。
計算で得た風量と設備の換気能力を照合して能力が勝る場合には、所定換気量値に近づくよう時間都度発停(ON/OFF)または部分制御運転を行う。
【0012】
冷房需要期でも、外気の比エンタルピ値が建物の対象室空間の比エンタルピ値より低い場合、外気の冷熱を活用することで冷却分が空調負荷の軽減に繋がる効果を生むため、積極的に設備の換気能力全量の換気運転を行う。
外気の比エンタルピ値は夏季を頂点として冬季へ下降し、建物内が冷房需要時でも室内の比エンタルピ値より低い状態が多く存在する。夏季冷房期において、建物が受ける日射等による躯体の蓄熱、照明や人体発熱の内部発熱により建物内空間の比エンタルピ値(温度、湿度)が高くなるためである。
夏季冷房期の昼間、在室者が室内にいて冷房運転が行われている時間帯では、取入れられる外気と室内快適状態域の比エンタルピ値の差が、そのまま冷房運転にて処理すべき熱負荷の軽減分となる。また、夜間の業務時間帯以外での外気取入れ運転分においては、建物躯体や在室機器・什器を冷却蓄熱し、翌日の業務時間において冷却蓄熱分を放熱することで翌日の冷房運転の処理熱負荷を軽減する。
【0013】
外気と冷房対象室内の空気の状態値(温度、湿度)を計測し、比エンタルピ値を計算にて求め、その差が、冷房熱負荷軽減分に相当する冷房機駆動エネルギ消費値分と換気機器自体の運転に要する消費エネルギ値を加算した値を上回りかつ経済性に勝る状態を、運転の起動停止の判断域と定め、換気機器の発停または部分負荷増減制御を行う。
運転判定基準とする有効差幅の判定および経済性評価には、間接的に利得となる空調運転に伴う消費エネルギ量と換気設備の運転による消費エネルギ量で行い、空調エネルギ消費分は、冷房が行われる通常外気帯域における冷凍サイクルの生成比(成績係数:COP)を統計処理から得て、外気冷却で得た熱を生成比で除した値を運転エネルギ利得量と見なす。
【0014】
外気の温湿度センサと室内環境用の温湿度センサが内外の状態値評価に必須な計測器であり、実用的な相対湿度検知の電気式を用いる。そのため、乾球温度値と相対湿度値から湿り空気の蒸気表の式を用い飽和空気の水蒸気分圧、現状態の水蒸気分圧など空気の状態値を順次求め、乾き空気・水蒸気の定圧比熱より内外の絶対湿度および比エンタルピ値を算定する。
運転判定は、温度には規定されず、冷房環境下の快適指標となる絶対湿度差と比エンタルピ値差によって行う。
【0015】
室利用状況に合わせるため、室稼働状況およびファン運用スケジュール情報を組み入れたカレンダ・スケジューラ機能を持たせ制御動作の基底とする。
補償動作として、内外の露点温度を空気の状態値算定の収束計算により得て、相対湿度と共に運転判定に付加し、外気の湿度が過分に高く水滴侵入の事態を抑制する制御を加える。露点温度を付加することで標準大気圧以外の高度に位置する施設に対応させる。さらに、外気温が過分に低い場合には、冷気侵入の抑制制御を加える。
【0016】
最低限のセンサを用いた計測により計算処理を行いて、導き出す絶対湿度と比エンタルピ値および一般的統計値・実態値を利用した計算処理によって導き出す所要な外気取入れ量と、施設されている機械換気設備能力を照合しながら換気量を求め、手動の機械式給排気換気設備の発停装置部分に追加的に中間挿入し、発停または部分負荷運転を行う自動制御装置である。
【0017】
外気冷却モードでは、温度を規定しない給排気換気設備に対応する制御であり、空気状態の適用範囲が広く、冷房空調を行わない施設や非空調空間にも適用が可能である。
【発明の効果】
【0018】
給排気換気設備の設計時に行う換気能力の設定は、通常、最大容量を求めて行われるので、そのままの手動運転では常に過剰な換気量となる。一般に常在人員は設計人員より少なくかつ室内人員は変動し減員時には室内汚染度以上の換気が行われており、冷暖房の空調が行われている場合には、必要以上の冷温熱(外気処理熱分)が生成され排気される。過剰な外気量の取入れは、冬季の暖房需要時には、過剰外気分が暖房用熱負荷の増加を来たし、夏季の冷房需要時で外気の比エンタルピ(熱エネルギ単位)値が室内より高い場合には、過剰外気分が冷房用熱負荷の増加を来たす。これらの支障を、高価なセンサを用いず統計値や実態通例値の補完により計算処理にて判断させる制御で解決する。
【0019】
冷房需要時であるが外気の比エンタルピ値が室内より低い場合には、これを室内に取り込めばその熱量分の冷却熱量が冷房負荷量から軽減されるので、積極的に外気取入れを行って外気冷却が望ましく、冷房を行わない施設や時期でも有効である。手動式や家庭での窓の開け閉めで可能ではあるが、自動化が明らかに効果的である。これを実用的な最低限のセンサを用いた制御装置で可能となる。
【0020】
外気取入れ用換気制御は、外気が冷暖房需要の熱負荷となるときには抑制し、外気が自然の冷却エネルギとなる場合には積極的に取入れる制御で、自然エネルギ利用・省エネルギ・地球温暖化防止対策の有効な自動制御法である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は本発明の1実施の形態の構成を示す説明図である。(実施例1)
図2図2は外気取入れ量制御の判定と処理方法を示した説明図である。
図3図3は年間24時間スケジューラの一部例である。
図4図4は標準大気圧における湿り空気の状態線図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
業務用建物設備では、給排気換気設備の発停装置の操作部である電磁開閉器・電磁接触器の発停用操作コイル部のスイッチとして使用する。換気扇等家庭用小型では、電源のコンセント、プラグ間に本制御装置を挿入しスイッチとして使用する。本制御装置は、演算を行うマイコン(CPU演算)ユニット、計測値を受け取る計測マイコンボード、継電器を励磁させる指示マイコンボードおよび継電器を持ち、外部に外気環境へ置く外気用温湿度センサと室内環境に置く室内用温湿度センサをケーブル接続し、接点出力によるスイッチの用をなす。家庭用換気扇向けには、この接点出力の先に電磁接触器を置き、2次入力側を換気扇電源用コンセントに接続し、2次出力側を換気扇に接続する。
マイコン(CPU演算)ユニットは、論理部分をソフトウェアとして取り出し外部のパソコンでの処理とすることも可能で、この場合、計測マイコンボード、指示マイコンボードへはシリアル通信可能なUSBケーブルで行う。
【0023】
図1は、本発明装置の1実施例として、外気取入れ用換気制御装置の構成図で、対象の換気設備が家庭用の換気扇への時間都度ON/OFF制御式の適用例である。
9は、電気式温湿度センサで外気の温湿度の計測を担当する。10は、同様の電気式温湿度センサで対象室内の温湿度の計測を担当する。それぞれケーブルで2の計測マイコンボードに接続されている。2の計測マイコンボードは外気と室内の温湿度の計測結果を1のマイコン(CPU演算)ユニットへ一定の時間間隔で出力し、1のマイコン(CPU演算)ユニットは、主演算処理ボードであり、図2の外気取入れ制御の判定と処理を行う。処理結果の換気運転の指令を3の指示マイコンボードへファン指令を出力する。3の指示マイコンボードでは、ON指令の場合、5の継電器を励磁する動作を行う。6の電磁接触器では、5の継電器の励磁動作による励磁信号により励磁し2次側を通電動作する。12オスプラグは換気扇の電源用コンセントに接続され、13メスプラグは換気扇に接続されている。6の通電動作により12オスプラグと13メスプラグ間が同通し換気扇が起動する。4は表示装置で、各計測値や演算処理の状態値、判定結果などを表示する。7は記録装置で、外部へ記録データを取り出す場合に用いる。8は電源装置、11は本装置の電源用プラグである。
【0024】
図2は、本発明装置の1実施例の判定・制御方法を示す論理図である。
人を対象とした給排気換気制御は、給気設備においては、直接の外気の取入れ量制御であり与圧による排気量制御でもある。排気設備においては、直接の排気制御であり陰圧による外気取入れ制御でもある。よって、どちらか一方の設備に対する制御でも目的とする外気の取入れ量制御は果たされる。
【0025】
図2の説明を行う。S01では、予め設定された年間24時間スケジューラから1時間単位等の運転季節モード(夏、冬、手動)と条件が成立した場合の稼働時間帯か否かを読みとる。図3は、年間24時間スケジューラ例の1部を示す。S02では、常時(例:1分単位)計測している外気と対象室内の温度、湿度をメモリに取り込み、S03で、温度、湿度により確定する絶対湿度と比エンタルピ(熱エネルギ単位)および露点温度を空気の状態式から求める。温度、湿度のセンサには安価で実用的な電気式を用いるため、湿度検知は相対湿度となり、検知温度の飽和空気の水蒸気分圧を、これと等価である同温度の水の飽和水蒸気圧をウェクスラー・ハイランドの式を用いて求め、検知状態空気の水蒸気分圧を相対湿度から得て、乾き空気・水蒸気の定圧比熱より、絶対湿度を求める。実施例では、空気の全圧は標準大気圧を用いている。乾球温度と絶対湿度および乾き空気と水蒸気の定圧比熱を用いて比エンタルピ値を算定する。露点温度は、対象温度の水蒸気分圧が飽和空気の水蒸気分圧になる乾球温度を繰り返しの収束計算にて得る。
【0026】
S04では、外気取入れ運転の判断指標に、比エンタルピか温度差を選択する。日本の気候下では、冷房時暖房時ともに比エンタルピを用いる方が有効である。S05では、運転のモード設定の対象を、二酸化炭素濃度か外気冷却かそれとも両者共かを選択する。モード選択が二酸化炭素濃度の場合、そのまま二酸化炭素濃度モードに入るが、両者共の場合には、S06において、S04で選択した指標の差の設定値で運転の是非を判断する。S05で外気冷却モードの場合も、S07において同様の判断を行う。
この指標の差の設定値は、間接的に利得となる空調運転に伴う消費エネルギ量と換気設備の運転による消費エネルギ量で行い、空調エネルギ消費分は、冷房が行われる通常外気帯域における冷凍サイクルの生成比(成績係数:COP)を統計処理から得て、外気冷却で得た熱を生成比で除した値を運転エネルギ利得量と見なして求める。
【0027】
S05で二酸化炭素濃度モードの場合と、S05で二酸化炭素濃度+外気冷却モードであってS06で設定差がない場合には、S08にて、換気量の計算方法を選択する。人呼気計算法の場合は、S09にて、作業種により異なる二酸化炭素排出量と、人員配置の常態を予め設定し入力された値を図3の24時間年間スケジュール・ファイルから読みとり対象室の人員数として使用し、乗じて二酸化炭素排出総量を求める。S10により、対象室の二酸化炭素排出総量を外気の低い二酸化炭素濃度で希釈し二酸化炭素濃度基準値にまで薄めるための外気取入れ(換気)量を求める。S08で簡略的な換気回数計算法が選ばれた場合は、S11にて、対象室の延べ床面積と平均天井高から室容積を得て、この空間が取入れ外気にて時間当たり何回入れ替わるかを設定した回数で計算し、外気取入れ換気量を求める。
【0028】
S12にて、対象室用に設備されている給排気換気設備の換気能力とS10またはS11で算出した外気取入れ換気量を比較し、不足なら、S13にて、給排気換気設備の対象時間内全負荷運転が行われるよう制御指示する。換気能力が足りている場合は、S14にて、必要な外気取入れ換気量を換気能力で除して機器の部分負荷率を求め、S15にて、その部分負荷率による給排気換気設備の対象時間内部分負荷運転が行われるよう制御指示する。
【0029】
S06およびS07において外気冷却運転の稼働判定の場合には、S16において、外気、室内の絶対湿度差を確認し、外気が高い状態で設定幅が小さい場合には運転を行い、大きい場合には換気運転を行わない。この判定は、対象室空気の快適状態域を考慮して、外気状態の比エンタルピ値が低くても空気中に含まれる水分の絶対量が多い場合に取入れることを控えるためである。図4に標準大気圧における湿り空気の状態線図を示す。外気状態Aが室内状態Bより比エンタルピ値が低くても、空気中に含まれる絶対水分量は多い状態が存在し、この場合、外気を取入れると室内は湿気が増え加湿されるのでこれを抑える判定を行う。外気冷却運転の判定では、線図上の墨入れ域にある外気を取入れる制御が行われ、空調制御のような温度による規定、制限はない。
【0030】
S17では、外気、室内の露点温度差を確認し、外気が高い状態で設定幅が小さい場合には運転を行い、大きい場合には換気運転を行わない。この判定は外気の相対湿度と共に評価するが、取入れ外気が吸入される途中の部材等で結露する支障を抑えるためで、また、高度に位置する施設にも対応するために標準大気圧以外での適用を可能とする補償制御である。他に、限界値設定として、冬季時の冷気侵入を抑える目的で外気の最低気温設定を設けている。
【0031】
S18にて、給排気換気設備の対象時間内全負荷運転が行われるよう制御指示する。S19にて、対象時間内の給排気換気運転は停止の制御指示となる。
【0032】
本処理の流れは設定時間間隔で動作し、計測間隔以上の間隔であればマイコンのCPU性能によって最小1分間隔程度まで可能である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
自動制御を行っていない手動式の機械換気設備について、手動発停を行う電磁開閉器・電磁接触器の操作コイル部のスイッチとして挿入すれば本目的の自動制御が可能となる。家庭用の換気扇類の発停動作も、実施例1のごとく、電源ケーブルをプラグ接続の途中に挿入すれば可能となる。
【0034】
単体の独立した制御装置として機器の発停のスイッチの役割を果たすので、他目的の自動制御運転を行っている機械換気設備の自動制御にも、付加する形で機能させることができる。
追加して中間挿入する方法にて既設の給排気換気設備に適応可能なので、既に多く存在する既設建物の手動式の給排気換気設備への適用が可能である。
【0035】
建物への給排気は与圧陰圧によるため、外気取入れ制御の対象は給気設備に限らず排気設備にも有効である。給排気の両設備を有する施設では、給気排気の何れか一方への適用で有効となり、給気設備がなく排気設備しかない建物でも、排気運転による減圧分につき建物各所の開口部から外気は流入するので、排気設備に本制御装置を付加することで外気取入れ量制御は可能である。
【0036】
工場等の換気設備として、在室する加熱体からの加熱による温度上昇を抑える目的の場合には、加熱体からの放熱量を外気温計測値と室温期待値の差温により必要な冷却用換気量を計算する論理を組みいれば、これに対応する自動制御装置となる。
【0037】
給排気換気設備の制御装置なので、空調設備の有無、空調時、非空調時に関わらず対応可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 マイコン(CPU演算)ユニット
2 計測マイコンボード
3 指示マイコンボード
9 外気温湿度センサ
10 室内温湿度センサ
S02 計測値取得ステップ
S03 空気の状態値計算ステップ
S05 運転設定選択ステップ
S06 判定指標の設定値評価ステップ
S07 判定指標の設定値評価ステップ
S09 人呼気量計算ステップ
S10 外気希釈計算ステップ
S16 絶対湿度の判定ステップ
S17 露点温度の判定ステップ
A 外気の空気状態例
B 室内の空気状態例


図1
図2
図3
図4