(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るSAWセンサ1(弾性表面波センサ)の概略的な模式図である。
図1(a)は、SAWセンサ1の概略的な上面図である。また、
図1(b)はSAWセンサ1を切断面Aから見た概略的な断面図である。また、
図1(c)はSAWセンサ1を切断面Bから見た概略的な断面図である。
【0015】
SAWセンサ1は、圧電素子基板10、複数の櫛形電極11(櫛形電極11−1〜11−4)、複数の反応領域薄膜13(13−1、13−2)、凸部材20(20−1〜20−9)を含んでいる。
【0016】
圧電基板10は、弾性表面波を伝搬させることができるものであれば、特に限定されないが、例えば水晶、LiTaO
3(タンタル酸リチウム単結晶)である。
【0017】
櫛形電極11は、圧電素子基板10上に構成される電極である。櫛形電極11は、対向した一対の電極を含んで構成されている。櫛形電極11は、例えばアルミニウム等の金属薄膜をリソグラフィより櫛形状にパターン化することによって構成される。
櫛形電極11−1及び櫛形電極11−2は、送信側電極部を構成する櫛形電極である。櫛形電極11−1は、送信電極11−1a及び送信電極11−1bを有する。送信電極11−1a及び送信電極11−1bは、電気信号とSAWとの変換を行う電極である。櫛形電極11−2は、送信電極11−2a及び送信電極11−2bを有する。送信電極11−2a及び送信電極11−2bは、電気信号とSAWとの変換を行う電極である。なお、上述した電気信号とSAWとの変換は双方向で可能である。
【0018】
櫛形電極11−3及び櫛形電極11−4は、受信側電極部を構成する櫛形電極である。櫛形電極11−3は、受信電極11−3a及び受信電極11−3bを有する。受信電極11−3a及び受信電極11−3bは、SAWと電気信号との変換を行う電極である。櫛形電極11−4は、受信電極11−4a及び受信電極11−4bを有する。受信電極11−4a及び受信電極11−4bは、SAWと電気信号との変換を行う電極である。なお、上述した電気信号とSAWとの変換は双方向で可能である。
【0019】
反応領域薄膜13は、たとえば金を蒸着し、その表面に抗体を固定した薄膜である。反応領域薄膜13−1は、櫛形電極11−1と櫛形電極11−3との間に形成される。一方、反応領域薄膜13−2は、櫛形電極11−2と櫛形電極11−4との間に形成される。これら反応領域薄膜13が、検体が導入される検出領域(センサ表面となる領域)となる。
【0020】
凸部材20は、複数の反応領域薄膜13に滴下された検体の液滴を、滴下された反応領域薄膜に保持し、また、各反応領域薄膜13への検体の滴下量を一定にするために設けられた凸部である。凸部材20は、洗浄処理により疎水性を失わない物質である。洗浄処理は、SAWセンサの表面をクリーニングする処理であり、油脂等の汚染物質を除去する処理である。例えば、洗浄処理は、プラズマクリーニングである。すなわち、凸部材20は、洗浄処理を実施しても、疎水性が保持される物質である。例えば、凸部材20は金属である。金属は、金やアルミニウムが挙げられる。なお、凸部材20の各々は、隣接する反応領域薄膜13に対向する辺より長いほうが望ましい。
凸部材20−1〜20−3(総称して凸部20Aと呼ぶ)の各々は、所定の間隔毎に配置されている。凸部20Aは、反応領域薄膜13−1の外側(+Y方向側)に配置されている。
凸部材20−4〜20−6(総称して凸部20Bと呼ぶ)の各々は、所定の間隔毎に配置されている。凸部20Bは、反応領域薄膜13−1と反応領域薄膜13−2との間に配置されている。
凸部材20−7〜20−9(総称して凸部20Cと呼ぶ)の各々は、所定の間隔毎に配置されている。凸部20Cは、反応領域薄膜13−2の外側(−Y方向側)に配置されている。すなわち、凸部材20は、反応領域薄膜13−1と反応領域薄膜13−2とが対向している間、及び反応領域薄膜13−1と反応領域薄膜13−2との対向する辺の外側にそれぞれ設けられている。上記所定の間隔とは、表面張力により検体が凸部材20の各々の上面で結合しない間隔である。すなわち、上記凸部材20は、伝搬方向にストライプ状に延在している。
【0021】
なお、上述した凸部20Aと凸部20Bと凸部20Cの各々の凸部材20の数は、本実施形態では3本としているが、これは一例であって、3本に限定されない。例えば、凸部20Aと凸部20Bと凸部20Cの各々の凸部材の数が4本以上の複数本でもよいし、少なくてもよい。また、凸部20Aと凸部20Bと凸部20Cの各々の凸部材の数は、それぞれ異なってもよい。
【0022】
図2は、反応領域薄膜13へ検体を滴下したときの一例を示す図である。
図2(a)は、従来のSAWセンサの反応領域薄膜13へ検体を滴下したときの例を示す図である。
図2(b)は、従来のSAWセンサの反応領域薄膜13へ検体を滴下したときの他の例を示す図である。
図2(c)は、本実施形態のSAWセンサ1の反応領域薄膜13へ検体を滴下したときの例を示す図である。
【0023】
従来のSAWセンサには、
図2(a)に示すように、複数の反応領域薄膜13に滴下された検体の液滴を、滴下された反応領域薄膜に保持するために、樹脂で形成された凸部材200−1、凸部材200−2及び凸部材200−3を用いた方法がある。
凸部材200−1は、反応領域薄膜13−1の外側(+Y方向側)に配置されている。凸部材200−2は、反応領域薄膜13−1と反応領域薄膜13−2との間に配置されている。凸部材200−3は、反応領域薄膜13−2の外側(−Y方向側)に配置されている。例えば、測定者は検体Aをマイクロピペット等で反応領域薄膜13−1に滴下する。また、例えば、測定者は検体Aとは異なる検体Bをマイクロピペット等で反応領域薄膜13−2に滴下する。すると、検体A、Bの液面は、毛細管現象により上昇し、凸部材200−2の上面で結合する。これより、従来のSAWセンサは、反応領域薄膜13毎に検体を一定に保つことができない。
【0024】
また、従来のSAWセンサには、
図2(b)に示すように、複数の反応領域薄膜13に滴下された検体の液滴を、滴下された反応領域薄膜に保持するために、樹脂で形成された凸部材200−1〜200−9を用いた方法がある。
凸部材200−1〜200−3は、反応領域薄膜13−1の外側(+Y方向側)に配置されている。凸部材200−4〜200−6は、反応領域薄膜13−1と反応領域薄膜13−2との間に配置されている。凸部材200−7〜200−9は、反応領域薄膜13−2の外側(−Y方向側)に配置されている。すなわち、反応領域薄膜13−1と反応領域薄膜13−2との間及び反応領域薄膜13−1と反応領域薄膜13−2との外側に樹脂で形成された複数の凸部材が設けられている。例えば、測定者は検体Aをマイクロピペット等で反応領域薄膜13−1に滴下する。また、例えば、測定者は検体Aとは異なる検体Bをマイクロピペット等で反応領域薄膜13−2に滴下する。すると、
図2(a)に示したSAWセンサよりも反応領域薄膜13毎に検体を保持することができる。しかしながら、検体A、Bの液面は、毛細管現象により上昇し、凸部材200−4〜200−6の上面で結合する。これより、従来のSAWセンサは、反応領域薄膜13毎に検体を一定に保つことができない。
【0025】
この問題を解決するために、すなわち、検体が凸部材20の上部にはい上がるのを防止するために、凸部材200−1〜200−9を凸部材の表面を疎水性膜等で被覆する方法がある。ただし、検体を滴下する前にSAWセンサの表面を洗浄処理する。したがって、SAWセンサを洗浄処理すると、凸部材200−1〜200−9は、樹脂で形成されているため、疎水性を失い、親水性になってしまう。そのため、検体と凸部材とが結びやすくなり、上記問題を解決することができない場合がある。
【0026】
しかしながら、
図2(c)に示すとおり、上述した第1実施形態では、反応領域薄膜13−1と反応領域薄膜13−2との間、及び反応領域薄膜13−1と反応領域薄膜13−2との外側に、複数の凸部材20を配置する。上述したように、SAWセンサ1の凸部材20は、洗浄処理、例えばプラズマクリーニングを行っても疎水性が保持される物質であるため、毛細管現象が起こる可能性は低く検体A、Bが凸部材20−4又は凸部材20−6の上面で結合することはない。よって、SAWセンサ1は、
図2(b)のSAWセンサと比較して、検体A、Bがそれぞれの反応領域薄膜13以外の領域に広がることを防ぎ、一定に保つことができる。すなわち、SAWセンサ1は、反応領域薄膜毎に検体を保持し、反応領域薄膜毎の滴下された検体の量を一定にすることができる。これにより、滴下された複数の検体を分離することができ、かつ複数の異なる検査を実現することができる。
【0027】
(第2実施形態)
以下、図面を参照して第2実施形態について説明する。
図3は、本実施形態に係るSAWセンサ1aの概略的な模式図である。
図3(a)は、SAWセンサ1aの概略的な上面図であり、
図3(b)はSAWセンサ1aを切断面Aから見た概略的な断面図である。また、
図3(c)はSAWセンサ1aを切断面Bから見た概略的な断面図である。なお、
図3において
図1に示したものと同一の構成には同一の符号を付け説明を省略する。
【0028】
SAWセンサ1aは、圧電素子基板10、複数の櫛形電極11(櫛形電極11−1〜11−4)、複数の反応領域薄膜13(13−1、13−2)、凸部材20a(20a−1〜20a−9)及び複数の台部14(14−1〜14−3)を含んでいる。
【0029】
凸部材20aは、複数の反応領域薄膜13に滴下された検体の液滴を、滴下された反応領域薄膜に保持し、また、各反応領域薄膜13への検体の滴下量を一定にするために設けられた凸部である。凸部材20aは、洗浄処理して疎水性を失わない物質である。すなわち、凸部材20aは、洗浄処理を実施しても、疎水性を保持される物質である。例えば、凸部材20aは金属である。なお、凸部材20aの各々は、隣接する反応領域薄膜13に対向する辺より長いほうが望ましい。
凸部材20a−1〜20a−3(総称して凸部20Aaと呼ぶ)の各々は、台部14−1の上面に設置され、所定の間隔毎に配置されている。台部14−1の上面に設置された凸部20Aaは、反応領域薄膜13−1の外側(+Y方向側)に配置されている。
【0030】
凸部材20a−4〜20a−6(総称して凸部20Baと呼ぶ)の各々は、台部14−2の上面に設置され、所定の間隔毎に配置されている。台部14−2の上面に設置された凸部20Baは、反応領域薄膜13−1と反応領域薄膜13−2との間に配置されている。
凸部材20a−7〜20a−9(総称して凸部20Caと呼ぶ)の各々は、台部14−3の上面に設置され、所定の間隔毎に配置されている。台部14−3の上面に設置された凸部20Caは、反応領域薄膜13−2の外側(−Y方向側)に配置されている。すなわち、凸部材20aは、台部14の上面に設置され、反応領域薄膜13−1と反応領域薄膜13−2とが対向している間、及び反応領域薄膜13−1と反応領域薄膜13−2との対向する辺の外側にそれぞれ設けられている。上記所定の間隔とは、表面張力により検体が凸部材20の各々の上面で結合しない間隔である。すなわち、上記凸部材20aは、伝搬方向にストライプ状に延在している。
【0031】
なお、上述した凸部20Aaと凸部20Baと凸部20Caの各々の凸部材20aの数は、本実施形態では3本としているが、これは一例であって、3本に限定されない。例えば、凸部20Aaと凸部20Baと凸部20Caの各々の凸部材の数が4本以上の複数本でもよいし、少なくてもよい。また、凸部20Aaと凸部20Baと凸部20Caの各々の凸部材の数は、それぞれ異なってもよい。
【0032】
台部14(14−1〜14−3)は、樹脂で形成されている。台部14の上面には、凸部材20aが設置されている。台部14は、ワイヤーボンディングなどの保護で使用されるエポキシ樹脂や、ダイボンディングなどでパッケージと圧電基板を接着する目的で利用される樹脂(主にエポキシ樹脂)等であってもよい。台部14の反応領域薄膜13に対向する辺の長さは、上面に設置される凸部材の反応領域薄膜13に対向する辺の長さと同等又はそれ以上である。
【0033】
図4は、反応領域薄膜13へ検体を滴下したときの一例を示す図である。上述した第2実施形態では、反応領域薄膜13−1と反応領域薄膜13−2との間、及び反応領域薄膜13−1と反応領域薄膜13−2との外側に、台部14と、その台部14の上面に設置された複数の凸部材20aを配置する。SAWセンサ1aの凸部材20aは、疎水性の物質であり、かつ洗浄処理して疎水性を失わない、例えば、金属で形成されている。したがって、毛細管現象が起こる可能性は低く検体A、Bが凸部材20a−4又は凸部材20a−6の上面で結合することはない。よって、SAWセンサ1は、
図2(b)のSAWセンサと比較して、検体A、Bがそれぞれの反応領域薄膜13以外の領域に広がることを防ぎ、一定に保つことができる。すなわち、SAWセンサ1aは、反応領域薄膜毎に検体を保持し、反応領域薄膜毎の滴下された検体の量を一定にすることができる。これにより、滴下された複数の検体を分離することができ、かつ複数の異なる検査を実現することができる。
【0034】
(第3実施形態)
図5は、第3実施形態に係るSAWセンサ1bの概略的な模式図である。
図5(a)は、SAWセンサ1bの概略的な上面図であり、
図5(b)はSAWセンサ1bを切断面Aから見た概略的な断面図である。また、
図5(c)はSAWセンサ1bを切断面Bから見た概略的な断面図である。
【0035】
SAWセンサ1bは、圧電素子基板10、複数の櫛形電極11(櫛形電極11−1〜11−4)、複数の反応領域薄膜13(13−1、13−2)、複数の凸部材20a(20a−1〜20a−9)及び台部14bを含んでいる。
【0036】
凸部20Aaの各々は、台部14bの上面に設置され、所定の間隔毎に配置されている。凸部20Aaは、反応領域薄膜13−1の外側(+Y方向側)に配置されている。
【0037】
凸部20Baの各々は、台部14bの上面に設置され、所定の間隔毎に配置されている。
凸部20Baの各々は、反応領域薄膜13−1と反応領域薄膜13−2との間に配置されている。
凸部20Caの各々は、台部14bの上面に設置され、所定の間隔毎に配置されている。凸部20Caは、反応領域薄膜13−2の外側(−Y方向側)に配置されている。すなわち、凸部材20aは、台部14bの上面に設置され、反応領域薄膜13−1と反応領域薄膜13−2とが対向している間、及び反応領域薄膜13−1と反応領域薄膜13−2との対向する辺の外側にそれぞれ設けられている。上記所定の間隔とは、表面張力により検体が凸部材20の各々の上面で結合しない間隔である。すなわち、上記凸部材20aは、伝搬方向にストライプ状に延在している。
【0038】
なお、上述した凸部20Aaと凸部20Baと凸部20Caの各々の凸部材20aの数は、本実施形態では3本としているが、これは一例であって、3本に限定されない。例えば、凸部20Aaと凸部20Baと凸部20Caの各々の凸部材の数が4つ以上の複数本でもよいし、少なくてもよい。また、凸部20Aaと凸部20Baと凸部20Caの各々の凸部材の数は、それぞれ異なってもよい。
【0039】
台部14bは、樹脂で形成されている。台部14bは、櫛形電極11が検体と接触することを防ぐ封止壁である。台部14bの上面には、凸部材20aが設置されている。台部14bは、ワイヤーボンディングなどの保護で使用されるエポキシ樹脂や、ダイボンディングなどでパッケージと圧電基板を接着する目的で利用される樹脂(主にエポキシ樹脂)等であってもよい。
【0040】
(第4実施形態)
図6は、第4実施形態に係るSAWセンサ1−1の概略的な模式図である。
図6(a)は、SAWセンサ1−1の概略的な上面図であり、
図6(b)はSAWセンサ1−1を切断面Aから見た概略的な断面図である。また、
図6(c)はSAWセンサ1−1を切断面Bから見た概略的な断面図である。なお、
図6において
図1に示したものと同一の構成には同一の符号を付け説明を省略する。
【0041】
上記第1実施形態のSAWセンサ1が送信用の櫛形電極と受信用の櫛形電極とを個別に設けるトランスバーサル型と呼ばれるSAWセンサであるのに対して、第4実施形態のSAWセンサ1−1は、反射型と呼ばれる構造を有している。すなわち、第4実施形態のSAWセンサ1−1は、一方の櫛形電極を無くして代わりに検出領域を挟んで櫛形電極に対向する位置に反射器30−1及び反射器30−2を設けている。この構成では、1個の櫛形電極を例えば時分割で切り替えることで送信用と受信用とで共用することができる。なお、第4実施形態のSAWセンサ1−1は、第1実施形態のSAWセンサ1と同様に、2チャンネルのセンサである。
【0042】
なお、
図6において、反射器30−1は櫛形電極11−1から送信されたSAWを反射する。この反射器30−1は、櫛形電極11−1と反応領域薄膜13−1を挟んで対向する位置に配置され、例えば、櫛形電極11−1と同様の電極材を使用するSAWの1波長の1/4の線幅を持ち2分の1波長の間隔で複数整列させた構造を有している。また、反射器30−2は櫛形電極11−2から送信されたSAWを反射する。この反射器30−2は、櫛形電極11−2と反応領域薄膜13−2を挟んで対向する位置に配置され、例えば、反射器30−1と同様の構造を有している。
図6に示した構成例では、反射器30−1及び反射器30−2は、圧電素子基板10上に露出した形で形成されている。なお、
図6に示した例ではSAWを反射する構造物を、電極を用いて電気的に反射する反射器を用いて構成しているが、SAWの反射は機械的反射とすることもできる。例えば、圧電素子基板10の端面より弾性表面波を反射することも可能である。すなわち、SAWを反射する手法は、反射器を設置する以外のものであってもよい。
【0043】
上述した第4実施形態によれば、SAWセンサ1−1は、第1実施形態と同様に、複数の凸部材20を圧電素子基板10上に配置したので、検体A、Bがそれぞれの反応領域薄膜13以外の領域に広がることを防ぎ、一定に保つことができる。すなわち、SAWセンサ1−1は、反応領域薄膜毎に検体を保持し、反応領域薄膜毎の滴下された検体の量を一定にすることができる。これにより、滴下された複数の検体を分離することができ、かつ複数の異なる検査を実現することができる。
【0044】
(第5実施形態)
図7は、第5実施形態に係るSAWセンサ1a−1の概略的な模式図である。
図7(a)は、SAWセンサ1a−1の概略的な上面図であり、
図7(b)はSAWセンサ1a−1を切断面Aから見た概略的な断面図である。また、
図7(c)はSAWセンサ1a−1を切断面Bから見た概略的な断面図である。なお、
図7において、
図2に示したものと同一の構成には同一の符号を付け説明を省略する。
【0045】
上記第2実施形態のSAWセンサ1aが送信用の櫛形電極と受信用の櫛形電極とを個別に設けるトランスバーサル型と呼ばれるSAWセンサであるのに対して、第5実施形態のSAWセンサ1a−1は、反射型と呼ばれる構造を有している。すなわち、第5実施形態のSAWセンサ1a−1は、一方の櫛形電極を無くして代わりに検出領域を挟んで櫛形電極に対向する位置に反射器30−1及び反射器30−2を設けている。この構成では、1個の櫛形電極を例えば時分割で切り替えることで送信用と受信用とで共用することができる。なお、第5実施形態のSAWセンサ1a−1は、第2実施形態のSAWセンサ1aと同様に、2チャンネルのセンサである。
【0046】
上述した第5実施形態では、反応領域薄膜13−1と反応領域薄膜13−2との間、及び反応領域薄膜13−1と反応領域薄膜13−2との外側に、台部14と、その台部14の上面に設置された複数の凸部材20aを配置したので、第2実施形態と同様に、検体A、Bがそれぞれの反応領域薄膜13以外の領域に広がることを防ぎ、それぞれの量を一定に保つことができる。すなわち、SAWセンサ1a−1は、反応領域薄膜毎に検体を保持し、反応領域薄膜毎の滴下された検体の量を一定にすることができる。これにより、滴下された複数の検体を分離することができ、かつ複数の異なる検査を実現することができる。
【0047】
(第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態のSAWセンサの駆動回路)
次に、
図8を参照して、第1実施形態のSAWセンサ1の各1チャネル分のセンサの駆動及び検出のための回路(以下、「駆動回路」という。)の構成例について説明する。なお、第2実施形態及び第3実施形態のSAWセンサの駆動回路は、第1実施形態のSAWセンサの駆動回路と同様であるため、説明を省略する。
【0048】
図8は、駆動回路100の構成例を説明するためのブロック図である。駆動回路100は、発振器101、分配器102、弾性波検出器103、処理部104を有する。
【0049】
発振器101は、高周波発振信号を生成する。分配器102は、高周波発振信号を櫛形電極11−1(又は11−2)に供給するとともに、弾性波検出器103に供給する。
弾性波検出器103は、分配器102で分配された高周波発振信号と、櫛形電極11−3(又は11−4)により受信された弾性表面波に基づく信号との振幅比、位相差すなわち伝搬遅延差を検出し、検出した振幅比、位相差すなわち伝搬遅延差に基づく信号を処理部104に出力する。
処理部104は、弾性波検出器103から供給される信号に基づき、被測定物の物理的特性を求める。なお、物理的特性とは、例えば、被測定物の粘度、密度等である。処理部104は、例えば、反応領域薄膜13に何も滴下されていない状態で、供給された信号の振幅変化、位相変化を求める。反応領域薄膜13に何も滴下しない場合、被測定物は空気である。次に、反応領域薄膜13に被測定物が滴下されている状態で、供給された信号の振幅変化、位相変化を求める。処理部104は、この2つの測定データを算出することで、滴下された被測定物の粘度や密度等を求める。
【0050】
(第4実施形態及び第5実施形態のSAWセンサの駆動回路)
次に、
図9を参照して、第4実施形態のSAWセンサの駆動回路の構成例について説明する。なお、第5実施形態のSAWセンサの駆動回路は、第4実施形態のSAWセンサの駆動回路と同様であるため、説明を省略する。
【0051】
図9は、駆動回路200の構成例を説明するためのブロック図である。駆動回路200は、発振器101、分配器102、弾性波検出器103、処理部104A、スイッチ105を有する。
【0052】
処理部104Aは、弾性波検出器103から供給される信号に基づき、被測定物の物理的特性を求める。また、処理部104Aは、所定のタイミングで、スイッチ105の端子1と端子3との接続、または端子2と端子3との接続を切り替える。なお、物理的特性とは、例えば、被測定物の粘度、密度等である。処理部104Aは、例えば、反応領域薄膜13に何も滴下されていない状態で、供給された信号の振幅変化、位相変化を求める。反応領域薄膜13に何も滴下しない場合、被測定物は空気である。次に、反応領域薄膜13に被測定物が滴下されている状態で、供給された信号の振幅変化、位相変化を求める。処理部104Aは、この2つの測定データを算出することで、滴下された被測定物の粘度や密度等を算出する。
【0053】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。すなわち、上記実施形態は全て本発明の実施形態を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様および変更態様で実施することができる。
【0054】
上述した実施形態において、凸部は、伝搬方向にストライプ状に延在している場合について説明したがこれに限定されない。
図10は、上述した実施形態の凸部の変形例を示す図である。
図10(a)は、凸部の形状が水玉模様である場合を示す。
図10(b)は、凸部の形状が市松模様である場合を示す。
図10(c)は、凸部の形状が波線模様である場合を示す。
図10に示すように、上述した実施形態の凸部の形状を、水玉模様、市松模様又は波線模様としても、凸部の形状をストライプ状とした場合と同様の効果を得ることができる。なお、凸部は、
図10に示す変形例の他に、例えばマーブルパタ−ン、ブロック状パタ−ンなど、種々のパタ−ンに自由に成形できる。
また、上述した実施形態において、凸部材の各々の構造は、四角形としたがこれに限定されない。例えば、凸部材の上面が所定の深さの溝を1つ以上有していてもよい。その場合、凸部は、1つの凸部材で構成されてもよい。