特許第6604673号(P6604673)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6604673-ハッカー 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6604673
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】ハッカー
(51)【国際特許分類】
   B66C 1/28 20060101AFI20191031BHJP
   B66C 1/10 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   B66C1/28 D
   B66C1/28 G
   B66C1/10 B
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-224999(P2018-224999)
(22)【出願日】2018年11月30日
【審査請求日】2019年5月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591106093
【氏名又は名称】関西工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091719
【弁理士】
【氏名又は名称】忰熊 嗣久
(72)【発明者】
【氏名】羽田 孟司
(72)【発明者】
【氏名】檀上 泰晴
【審査官】 加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−144983(JP,U)
【文献】 特開昭58−031883(JP,A)
【文献】 特開平04−155061(JP,A)
【文献】 特開2012−046337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00− 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のスリーブ内を摺動して左方に進退可能な第1のロッドと、第2のスリーブ内を摺動して右方に進退可能な第2のロッドとからなる左右のロッドを有し、前記左右のロッドの摺動により左右に伸縮可能なビームであって、前記左右のロッドの夫々に吊索が連結される吊り金具が設けられたビームと、
前記ロッドの夫々から下に向けて延びたアームであって、吊り荷を搭載する爪が設けられたアームとを具備し、
前記左右のロッドは、前記ビームの長さ方向に伸縮する伸縮バネを介して前記スリーブに連結されていることを特徴とするハッカー。
【請求項2】
請求項1のハッカーにおいて、
前記ロッドは中空であって、前記ロッドの中空に挿入されるとともに、前記スリーブを貫通する操作端を有する螺子軸と、前記螺子軸が挿入される中空の開口位置において前記ロッドに固定された送りナットと、前記螺子軸に備えられたバネ押さえを備え、前記伸縮バネはバネ押さえと前記スリーブの間を接続していることを特徴とするハッカー
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかのハッカーにおいて、前記ビームを前後に設け、その間を連結バーで接続したことを特徴とするハッカー
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄板等の吊り荷を吊り上げるハッカーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄板等の吊り上げ運搬や、大径短管の吊り上げに使用される吊り具としては、C字形状の吊り金具(ハッカー)が用いられる。吊り荷の両端(短管)若しくは四点(プレート材)にハッカーの爪を引っ掛け、ハッカーの上端にクレーンからの吊索を連結して吊り上げ、又は吊り降ろす。
【0003】
特許文献1によれば、鉄板を吊り上げるハッカーが知られている。このハッカーは、電磁石などの吸着体を敷き鉄板に配置して吸着させるものであるが、これにパンタグラフ式アームの補助支持機構が組合されている。補助支持機構のアームは通常は弾性体(コイルバネ)により拡開した状態であるが、吊り荷の鉄板が地面から持ち上げられたとき、アームは外方に拡開した状態から内方にすぼまり、係合部を吊り荷の縁部に自動的に引掛ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−188371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ハッカーは、その形状および吊り荷の板厚および板巾などによりハッカーと板との接触点並びに爪と吊り方向がなす角度が変化する。そのため転倒モーメントも変化し外れやすさを招くことがある。吊り荷の板厚が大きくなれば、吊り荷の側面がハッカーの爪の上側に当たり、爪に角度が付くと吊り荷との接触点は、爪の先端側に移り、ハッカーの爪に対する引っ掛かりに影響を及ぼす。
【0006】
本発明は前記のような問題点を解消することを目的とし、吊り荷の板厚や板巾に対応して安定的に吊り上げることができるハッカーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明のハッカーは、第1のスリーブ内を摺動して左方に進退可能な第1のロッドと、第2のスリーブ内を摺動して右方に進退可能な第2のロッドとからなる左右のロッドを有し、前記左右のロッドの摺動により左右に伸縮可能なビームであって、前記左右のロッドの夫々に吊索が連結される吊り金具が設けられたビームと、
前記ロッドの夫々から下に向けて延びたアームであって、吊り荷を搭載する爪が設けられたアームとを具備し、
前記左右のロッドは、前記ビームの長さ方向に伸縮する伸縮バネを介して前記スリーブに連結されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のハッカーによれば、ビームを水平に吊り下げることにより、どのようなつり荷の板厚および板巾に対しても爪と吊り荷の接触角度を一定にすることができる。また、ビームは、その長さ方向に伸縮可能であるため、爪の間隔が調整でき、吊り荷の板巾の多様性に対応する。螺子軸とスリーブは、螺子軸方向に伸縮する伸縮バネにより連結されており、伸縮バネはビームが吊索により吊り下げられたときに圧縮され、アーム同士の間隔を狭めることができる
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施例によるハッカーを示す図であり、図1Aは平面図、図1Bは一部側面図、図1Cは正面図である。
図2】ハッカーの内部構造を示す図であり、図2Aは切断図、図2Bは分解図である
図3】ハッカーの動作を示す図であり、図3Aは吊り下げ前の状態を示す図、図3Bは吊り下げ後の状態を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
一般的にハッカーは、C字形状の吊り金具であり、個々の金具がチェーン、ワイヤ等の吊索により吊り下げられるものである。本発明のハッカーにおいては、等長の吊索を使用して左右二箇所で水平にビームを吊り下げることとする。短管吊り下げの場合(二点吊り)にはビームの両端部に夫々アームを鉛直方向に設置し、アームに吊り荷を搭載する爪を設ける。プレート材を吊り下げる四点吊りに対しては、2つのビームを連結バーで接続する。ビーム側に爪と角度が設けられているので、どのようなつり荷の板厚および板巾に対しても爪と吊り荷の接触角度を一定にすることができる。
【0011】
ビームは、ビームの長さ方向に伸縮可能であるため、爪の間隔が調整でき、吊り荷の板巾の多様性に対応する。ビームはスリーブとスリーブ内を摺動するロッドを有しており、螺子軸はスリーブ内におけるロッドの位置を決定する。螺子軸はスリーブ若しくはロッドのいずれかに、螺子軸方向に伸縮する伸縮バネを介して連結されている。伸縮バネは、ビームが吊索により吊り下げられたときに圧縮され、アーム同士の間隔を狭める。
【0012】
以下、実施例のハッカーを図面に基いて説明する。図1は、プレート材の吊り下げに用いる四点吊りのハッカー1を示している。図1Aにおいて、四点吊りの場合にはハッカー1は前後2つのビーム2を左右2つの連結バー3で接続され平面視において枡形になっている(二点吊りの場合には、1つのビーム2による直線状である)。各ビームの両端部には、下に向けて垂直に延びた一対のアーム7が固定されている。各ビーム2は、2つの伸縮部材10、20を連結して構成されている。伸縮部材10、20は、夫々スリーブ12、22とスリーブ12、22内をビーム2の長さ方向イに摺動するロッド11、21を有している。隣合う伸縮部材10、20のスリーブ12、22は、環状部材9により互いに一体状に固定されている。
【0013】
ロッド11、21には、吊索に連結する吊り金具13、23が設けられている。また、ロッド11、21の側面には、吊り荷を押さえるプッシャー5が設けられている。また、アーム7は、ロッド11、21の端部に固定されている。アーム7の底部には、吊り荷が搭載される搭載面4aを有する爪4が設けられており、アーム7の頭部に設けられたレバー6により爪4の向きを水平面内で回転可能である。異なるビーム2の2つのレバー6は、操作管8を介して連動して動作させることができる。
【0014】
図2は、図1Cに表れた正面の伸縮部材10及びアーム7について一部切断をして内部構成を示している。図2Aはスリーブ12とロッド11の内部構成を示し、図2Bはスリーブ12とロッド11が分離されている様子を示す。以降、伸縮部材を代表して、伸縮部材10について説明する。
【0015】
ロッド11は、その四側面をスリーブ12に囲まれて、その中を方向イに摺動することにより、伸縮部材10全体が撓まないように構成されている。ロッド11は中空11aであり、その中に方向イの螺子軸14が挿入されている。ロッド11の中空11aの開口位置には、送りナット15が固定されている。スリーブ12の上側一部分が、ロッド11に固定された吊り金具13をスリーブ12の外側に出すために、切り欠き12bが設けられている。螺子軸14は、バネ押さえ16を介して、方向イに伸縮する伸縮バネ19を介してスリーブ12に連結している。実施例においては、伸縮バネ19の両端は、バネ押さえ16とスリーブ12の間に接続されている。螺子軸14の操作端18は、スリーブ12の側壁12aを貫通して外側に突出している。シース17は、伸縮バネ19の周囲を包んで伸縮バネ19を維持している。操作端18を回転させると、その場で螺子軸14が回転して方向イのスリーブ12との相対位置関係は変わらない。螺子軸14は、スリーブ12との間を伸縮バネ19で接続されているため、伸縮バネ19が圧縮を受けると、スリーブ12の側壁12aを通して操作端18がさらに突出する(図面右側)。圧縮がなくなれば、元に戻る。尚、アーム7は筒状であり、レバー6と爪4とを接続する回転軸7aを内部に備えている。
【0016】
図3において、本実施例のハッカー1の動作を説明する。玉掛け作業をする前に、螺子軸14によりアーム7の間隔を調整しておく。吊り荷Wの巾より若干大きく、また爪4の搭載面4aに吊り荷Wが掛かるようにしておく。このときの状態はアーム7同士の間隔が開いた状態である。クレーンから吊索sによりハッカー1を吊り下げ、吊り荷Wの中心線上に位置するように配置する。爪4を吊り荷の下に配置する。このとき、レバー6を用いて爪4を互いに外側に向くようにしておけば、ハッカー1をクレーンにより降ろす過程で爪4は邪魔にならない。
【0017】
爪4を吊り荷Wの下に配置し、吊り上げを開始する。吊り荷Wの荷重により伸縮バネ19が圧縮されてアーム7同士の間隔が狭まり、爪4は吊り荷Wの下にさらに入り込む。吊り荷Wの巾と、伸縮バネ19の長さを調整しておけば、左右方向からも吊り荷Wの側壁Wsにアーム7が当接して、機械的に支持され安定する。さらに、プッシャー5により、吊り荷Wを上から押さえるように設定しておけば、吊り荷Wはさらに安定する。この状態でクレーンを操作して吊り荷Wを移動する。
【0018】
一方、吊り荷Wを降ろす際には、吊り荷Wが地面に到達すると、吊り荷重が開放されるため、それまで圧縮されていた伸縮バネ19の復元力により伸縮部材10、20が伸張する。これによりアーム7の間隔が広がる。その後、レバー6により爪4の角度を変えるなどして、ハッカー1を移動させる。
【0019】
本実施例のハッカー1によれば、水平に吊り下げられたビーム2の両端部に夫々アーム7を垂直方向に設置し、アーム7に吊り荷Wを搭載する爪4を設けているので、どのような吊り荷Wの板厚および板巾に対しても爪4と吊り荷Wの接触角度を一定にすることができる。また、ビーム2は、少なくとも方向イに伸縮可能であるため、爪4の間隔が調整でき、吊り荷Wの板巾の多様性に対応する。螺子軸14とスリーブ12は、方向イに伸縮する伸縮バネ19により連結されており、伸縮バネ19はハッカー1が吊索sにより吊り下げられたときに圧縮され、アーム7同士の間隔を狭めることができる。隣接する2つの伸縮部材10、20でビーム2を構成しているため、スリーブ12、22とロッド11、21の重なる面積が多くして、撓みを少なくすることができる。
【0020】
上記実施例においては、2つのビーム2を連結バー3で結合した4点吊りのものを示したが、短管吊りに対しては1つのビーム2のみの2点吊りのハッカーに構成できる。また、上記実施例においては、ロッド11、21側にアーム7を取り付けていたが、スリーブ12、22側にアーム7を取り付けても良い。上記実施例においては、伸縮バネ19は螺子軸14とスリーブ12の間に設けていたが、螺子軸14とロッド11の間(具体的には、送りナット15とロッド11との間)に設けても良い。また、スリーブ12とロッド11の重なる面積を多くして撓みを少なくするために、隣接する2つの伸縮部材10、20でビーム2を構成していたが、ロッド/スリーブ/ロッド若しくは、スリーブ/ロッド/スリーブの順に直列に配置しても良い。
【符号の説明】
【0021】
1 ハッカー
2 ビーム
3 連結バー
4 爪
4a 搭載面
5 プッシャー
6 レバー
7 アーム
7a 回転軸
8 操作管
9 環状部材
10、20 伸縮部材
11、21 ロッド
12、22 スリーブ
13、23 吊り金具
14 螺子軸
15 送りナット
17 シース
18 操作端
19 伸縮バネ

【要約】
【課題】
吊り荷の板厚や板巾に対応して安定的に吊り上げることができるハッカーを提供すること。
【解決手段】
ハッカー1は、左右二箇所で吊り下げられ、その長さ方向に伸縮可能なビーム2と、ビーム2の両端部に下に向けて夫々設けられ、夫々に吊り荷を搭載する爪4が設けられた一対のアーム7とを有している。ビーム2は、スリーブ12と、スリーブ12内を摺動するロッド11と、スリーブ12内におけるロッド11の位置を決定する螺子軸14と、スリーブ12若しくはロッド11のいずれかがビーム2の長さ方向に伸縮する伸縮バネ19を介して螺子軸14に連結されている。
【選択図】 図1
図1
図2
図3