特許第6604674号(P6604674)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6604674保護膜形成フィルム、保護膜形成用シート、保護膜形成用複合シートおよび検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6604674
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】保護膜形成フィルム、保護膜形成用シート、保護膜形成用複合シートおよび検査方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20191031BHJP
   C09J 7/22 20180101ALI20191031BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20191031BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20191031BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20191031BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20191031BHJP
   H01L 23/00 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   H01L21/78 M
   C09J7/22
   C09J7/30
   C09J11/04
   C09J11/06
   C09J201/00
   H01L23/00 C
【請求項の数】7
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-232846(P2018-232846)
(22)【出願日】2018年12月12日
(62)【分割の表示】特願2015-559095(P2015-559095)の分割
【原出願日】2015年1月21日
(65)【公開番号】特開2019-80066(P2019-80066A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2019年1月11日
(31)【優先権主張番号】特願2014-9243(P2014-9243)
(32)【優先日】2014年1月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】山本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】米山 裕之
【審査官】 杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−033741(JP,A)
【文献】 特開2000−314807(JP,A)
【文献】 特開2002−280329(JP,A)
【文献】 特開2004−142430(JP,A)
【文献】 特開2011−228450(JP,A)
【文献】 特開2002−226805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
C09J 7/22
C09J 7/30
C09J 11/04
C09J 11/06
C09J 201/00
H01L 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方の面側に粘着剤層が積層されてなる粘着シートと、
前記粘着シートの前記粘着剤層側に積層された保護膜形成フィルムと
を備えた保護膜形成用複合シートであって、
前記粘着剤層がエネルギー線硬化性粘着剤から構成され、
前記保護膜形成フィルムの波長1600nmの光線透過率は、72%以上であり、
前記保護膜形成フィルムの波長550nmの光線透過率は、20%以下である
ことを特徴とする保護膜形成用複合シート。
【請求項2】
前記保護膜形成フィルムは、未硬化の硬化性接着剤から構成される単層であることを特徴とする請求項1に記載の保護膜形成用複合シート。
【請求項3】
前記硬化性接着剤は、着色剤および平均粒径0.01〜3μmのフィラーを含有することを特徴とする請求項2に記載の保護膜形成用複合シート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の保護膜形成用複合シートを使用してワークに保護膜を形成することにより、保護膜付きワークを製造し、
前記保護膜付きワークまたは前記保護膜付きワークを加工して得られた加工物について、赤外線を利用し、前記保護膜を介して検査を行う
ことを特徴とする検査方法。
【請求項5】
前記ワークは半導体ウエハであり、前記加工物は半導体チップであることを特徴とする請求項4に記載の検査方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の検査方法に基づいて、良品と判断された保護膜付きワーク。
【請求項7】
請求項4または5に記載の検査方法に基づいて、良品と判断された加工物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等のワークまたは当該ワークを加工して得られる加工物(例えば半導体チップ)に保護膜を形成することのできる保護膜形成フィルムおよび保護膜形成用(複合)シート、ならびにそれらを使用して得られた保護膜付きのワークまたは加工物の検査を行う検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、フェイスダウン方式と呼ばれる実装法により半導体装置を製造することが行われている。この方法では、バンプ等の電極が形成された回路面を有する半導体チップを実装する際に、半導体チップの回路面側をリードフレーム等のチップ搭載部に接合している。したがって、回路が形成されていない半導体チップの裏面側が露出する構造となる。
【0003】
このため、半導体チップの裏面側には、半導体チップを保護するために、硬質の有機材料からなる保護膜が形成されることが多い。この保護膜は、例えば、特許文献1または2に示されるような半導体裏面用フィルムまたはダイシングテープ一体型ウエハ裏面保護フィルムを使用して形成される。
【0004】
特許文献1における半導体裏面用フィルムでは、波長532nm又は1064nmにおける光線透過率が20%以下となるようにしている。これにより、レーザー光の照射による印字加工を可能にするとともに、レーザー光による悪影響が半導体素子に及ぶことを防止している。また、特許文献2におけるウエハ裏面保護フィルムでは、可視光透過率を20%以下となるようにしている。これにより、光線の通過による半導体素子への影響を小さくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−28396号公報
【特許文献2】特開2012−235168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、半導体ウエハをダイシングして得られる半導体チップ等においては、加工時に生じた応力によって発生したクラック、回転刃などの加工ツールや半導体ウエハ等のワークにおける他の部分(半導体チップ等を含む。)との衝突等によって発生した欠けなど(本明細書において、これらを総称して「クラック等」ということもある。)を有していることがある。しかしながら、前述したような光線透過率を有する保護膜が形成されていると、半導体チップの保護膜側に発生したクラック等は、目視によって発見することができない。看過できないクラック等が発生した半導体チップは、製品歩留まりを低下させてしまう。半導体チップのサイズが小さくなると、この看過できないクラック等のサイズも小さくなる傾向がある。
【0007】
一方、半導体チップの裏面には、通常、半導体ウエハに対して施されたバックグラインド加工による研削痕が残っている。半導体チップの外観の観点から、かかる研削痕は目視によって見えないことが望ましく、上記の保護膜によって隠蔽されることが望ましい。
【0008】
本発明は、上記のような実状に鑑みてなされたものであり、ワークまたは当該ワークを加工して得られる加工物に存在するクラック等の検査が可能であり、かつワークまたは加工物に存在する研削痕が目視によって見えない保護膜を形成することのできる保護膜形成フィルムおよび保護膜形成用(複合)シート、ならびにそれらを使用して得られた保護膜付きのワークまたは加工物の検査を行う検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、波長1600nmの光線透過率が72%以上であり、波長550nmの光線透過率が20%以下であることを特徴とする保護膜形成フィルムを提供する(発明1)。
【0010】
上記発明(発明1)によれば、ワークまたは当該ワークを加工して得られる加工物に存在するクラック等の赤外線による検査が可能であり、かつワークまたは加工物に存在する研削痕が目視によって見えない保護膜を形成することができる。
【0011】
上記発明(発明1)において、前記保護膜形成フィルムは、未硬化の硬化性接着剤から構成される単層であることが好ましい(発明2)。
【0012】
上記発明(発明2)において、前記硬化性接着剤は、着色剤および平均粒径0.01〜3μmのフィラーを含有することが好ましい(発明3)。
【0013】
上記発明(発明1〜3)において、前記保護膜形成フィルムの厚さは3〜15μmであってもよい(発明4)。
【0014】
第2に本発明は、前記保護膜形成フィルム(発明1〜4)と、前記保護膜形成フィルムの一方の面または両面に積層された剥離シートとを備えたことを特徴とする保護膜形成用シートを提供する(発明5)。
【0015】
第3に本発明は、基材の一方の面側に粘着剤層が積層されてなる粘着シートと、前記粘着シートの前記粘着剤層側に積層された保護膜形成フィルムとを備えた保護膜形成用複合シートであって、前記保護膜形成フィルムの波長1600nmの光線透過率は、72%以上であり、前記保護膜形成フィルムの波長550nmの光線透過率が20%以下であることを特徴とする保護膜形成用複合シートを提供する(発明6)。
【0016】
上記発明(発明5,6)によれば、ワークまたは当該ワークを加工して得られる加工物に存在するクラック等の赤外線による検査が可能であり、かつワークまたは加工物に存在する研削痕が目視によって見えない保護膜を形成することができる。
【0017】
上記発明(発明6)において、前記保護膜形成フィルムは、未硬化の硬化性接着剤から構成される単層であることが好ましい(発明7)。
【0018】
上記発明(発明7)において、前記硬化性接着剤は、着色剤および平均粒径0.01〜3μmのフィラーを含有することが好ましい(発明8)。
【0019】
第4に本発明は、前記保護膜形成フィルム(発明1〜4)、前記保護膜形成用シート(発明5)または前記保護膜形成用複合シート(発明6〜8)を使用してワークに保護膜を形成することにより、保護膜付きワークを製造し、前記保護膜付きワークまたは前記保護膜付きワークを加工して得られた加工物について、赤外線を利用し、前記保護膜を介して検査を行うことを特徴とする検査方法を提供する(発明9)。
【0020】
上記発明(発明9)において、前記ワークは半導体ウエハであり、前記加工物は半導体チップであることが好ましい(発明10)。
【0021】
第5に本発明は、前記検査方法(発明9,10)に基づいて、良品と判断された保護膜付きワークを提供する(発明11)。
【0022】
第6に本発明は、前記検査方法(発明9,10)に基づいて、良品と判断された加工物提供する(発明12)。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る保護膜形成フィルムおよび保護膜形成用(複合)シートによれば、ワークまたは当該ワークを加工して得られる加工物に存在するクラック等の赤外線による検査が可能であり、かつワークまたは加工物に存在する研削痕が目視によって見えない保護膜を形成することができる。また、本発明に係る検査方法によれば、赤外線を利用することにより、ワークまたは加工物に存在するクラック等の検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用シートの断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートの断面図である。
図3】本発明の他の実施形態に係る保護膜形成用複合シートの断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートの使用例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔保護膜形成フィルム〕
本実施形態に係る保護膜形成フィルムは、ワークまたは当該ワークを加工して得られる加工物に保護膜を形成するためのものである。この保護膜は、保護膜形成フィルム、好ましくは硬化した保護膜形成フィルムから構成される。ワークとしては、例えば半導体ウエハ等が挙げられ、当該ワークを加工して得られる加工物としては、例えば半導体チップが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、ワークが半導体ウエハの場合、保護膜は、半導体ウエハの裏面側(バンプ等の電極が形成されていない側)に形成される。
【0026】
1.物性
本実施形態に係る保護膜形成フィルムは、波長1600nmの光線透過率が72%以上であり、波長550nmの光線透過率が20%以下であるものである。なお、本明細書における光線透過率は、積分球を使用せずに測定した値とし、測定器具としては分光光度計を使用する。
【0027】
半導体ウエハをダイシングして得られる半導体チップ等においては、加工時に生じた応力によってクラック等が発生していることがある。上記のように波長1600nmの光線透過率が72%以上であると、赤外線の透過性が特に良好になり、保護膜形成フィルム(または当該保護膜形成フィルムによって形成された保護膜)側から赤外線を取得する赤外線検査を行うことができる。これにより、保護膜形成フィルム(保護膜)を介して半導体チップ等の加工物におけるクラック等を発見することができ、製品歩留まりを向上させることができる。
【0028】
上記赤外線透過性の観点から、保護膜形成フィルムの波長1600nmの光線透過率は、77%以上であることが好ましく、特に82%以上であることが好ましい。上記赤外線透過性の観点からは、波長1600nmの光線透過率の上限は限定されず、通常100%である。ただし、保護膜を形成した加工物(半導体チップ等)の使用時には、保護膜形成フィルムの波長1600nmの光線透過率を90%以下とすることにより、外部からの赤外線の影響を受けやすい加工物の誤作動を防ぐことができる。
【0029】
一方、例えば半導体チップの裏面には、通常、半導体ウエハに対して施されたバックグラインド加工による研削痕が残っている。波長550nmの光線透過率が上記のように20%以下であると、保護膜形成フィルムは、可視光線を透過し難いものとなる。したがって、上記の研削痕は、保護膜形成フィルム(保護膜)によって隠蔽され、目視によって殆ど見えなくなる。これにより、半導体チップ等の加工物の外観が優れたものとなる。
【0030】
上記研削痕隠蔽性の観点から、保護膜形成フィルムの波長550nmの光線透過率は、15%以下であることが好ましく、特に10%以下であることが好ましい。保護膜形成フィルムの波長550nmの光線透過率が10%以下であれば、保護膜形成フィルムが薄く、厚さが15μm以下であり、特に研削痕が見えやすくなる場合であっても、研削痕の隠蔽が容易である。なお、上記研削痕隠蔽性の観点からは、波長550nmの光線透過率の下限は限定されない。ただし、波長550nmの光線透過率を過度に低下させると、上記の波長1600nmの光線透過率を72%以上とすることが困難となる場合もあるため、通常、波長550nmの光線透過率は0.1%程度が下限とされ、0.5%程度とすることが好ましい。
【0031】
ここで、本実施形態に係る保護膜形成フィルムは、単層からなるものであってもよいし、複数層からなるものであってもよいが、光線透過率の制御の容易性および製造コストの面から単層からなることが好ましい。保護膜形成フィルムが複数層からなる場合には、光線透過率の制御の容易性の面から、当該複数層全体として上記の光線透過率を満たすことが好ましい。
【0032】
2.材料
保護膜形成フィルムは、未硬化の硬化性接着剤からなることが好ましい。この場合、保護膜形成フィルムに半導体ウエハ等のワークを重ね合わせた後、保護膜形成フィルムを硬化させることにより、保護膜をワークに強固に接着することができ、耐久性を有する保護膜をチップ等に形成することができる。
【0033】
なお、保護膜形成フィルムが未硬化の硬化性接着剤からなる場合、当該保護膜形成フィルムの光線透過率は、硬化前であっても硬化後であっても殆ど変化しない。したがって、硬化前の保護膜形成フィルムの波長1600nmの光線透過率が72%以上、波長550nmの光線透過率が20%以下であれば、硬化後の保護膜形成フィルム(保護膜)の波長1600nmの光線透過率も72%以上、波長550nmの光線透過率も20%以下となる。
【0034】
保護膜形成フィルムは、常温で粘着性を有するか、加熱により粘着性を発揮することが好ましい。これにより、上記のように保護膜形成フィルムに半導体ウエハ等のワークを重ね合わせるときに両者を貼合させることができる。したがって、保護膜形成フィルムを硬化させる前に位置決めを確実に行うことができる。
【0035】
上記のような特性を有する保護膜形成フィルムを構成する硬化性接着剤は、硬化性成分とバインダーポリマー成分とを含有することが好ましい。硬化性成分としては、熱硬化性成分、エネルギー線硬化性成分、またはこれらの混合物を用いることができるが、熱硬化性成分を用いることが特に好ましい。保護膜形成フィルムは、前述した光線透過率を有することで、紫外線硬化に不適なものとなり、熱硬化性であることが望ましいからである。
【0036】
熱硬化性成分としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂等およびこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびこれらの混合物が好ましく用いられる。
【0037】
エポキシ樹脂は、加熱を受けると三次元網状化し、強固な被膜を形成する性質を有する。このようなエポキシ樹脂としては、従来より公知の種々のエポキシ樹脂が用いられるが、通常は、分子量300〜2000程度のものが好ましく、特に分子量300〜500のものが好ましい。さらには、分子量330〜400の常態で液状のエポキシ樹脂と、分子量400〜2500、特に500〜2000の常温で固体のエポキシ樹脂とをブレンドした形で用いることが好ましい。また、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、50〜5000g/eqであることが好ましい。
【0038】
このようなエポキシ樹脂としては、具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールF、レゾルシノール、フェニルノボラック、クレゾールノボラック等のフェノール類のグリシジルエーテル;ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類のグリシジルエーテル;フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等のカルボン酸のグリシジルエーテル;アニリンイソシアヌレート等の窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換したグリシジル型もしくはアルキルグリシジル型のエポキシ樹脂;ビニルシクロヘキサンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−ジシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシ)シクロヘキシル−5,5−スピロ(3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン等のように、分子内の炭素−炭素二重結合を例えば酸化することによりエポキシが導入された、いわゆる脂環型エポキシドを挙げることができる。その他、ビフェニル骨格、ジシクロヘキサジエン骨格、ナフタレン骨格等を有するエポキシ樹脂を用いることもできる。
【0039】
これらの中でも、ビスフェノール系グリシジル型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂およびフェノールノボラック型エポキシ樹脂が好ましく用いられる。これらエポキシ樹脂は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
エポキシ樹脂を用いる場合には、助剤として、熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤を併用することが好ましい。熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤とは、室温ではエポキシ樹脂と反応せず、ある温度以上の加熱により活性化し、エポキシ樹脂と反応するタイプの硬化剤である。熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤の活性化方法には、加熱による化学反応で活性種(アニオン、カチオン)を生成する方法;室温付近ではエポキシ樹脂中に安定に分散しており高温でエポキシ樹脂と相溶・溶解し、硬化反応を開始する方法;モレキュラーシーブ封入タイプの硬化剤で高温で溶出して硬化反応を開始する方法;マイクロカプセルによる方法等が存在する。
【0041】
熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤の具体例としては、各種オニウム塩や、二塩基酸ジヒドラジド化合物、ジシアンジアミド、アミンアダクト硬化剤、イミダゾール化合物等の高融点活性水素化合物等を挙げることができる。これら熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。上記のような熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤は、エポキシ樹脂100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部、特に好ましくは0.2〜10重量部、さらに好ましくは0.3〜5重量部の割合で用いられる。
【0042】
フェノール系樹脂としては、アルキルフェノール、多価フェノール、ナフトール等のフェノール類とアルデヒド類との縮合物などが特に制限されることなく用いられる。具体的には、フェノールノボラック樹脂、o−クレゾールノボラック樹脂、p−クレゾールノボラック樹脂、t−ブチルフェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンクレゾール樹脂、ポリパラビニルフェノール樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、あるいはこれらの変性物等が用いられる。
【0043】
これらのフェノール系樹脂に含まれるフェノール性水酸基は、上記エポキシ樹脂のエポキシ基と加熱により容易に付加反応して、耐衝撃性の高い硬化物を形成することができる。このため、エポキシ樹脂とフェノール系樹脂とを併用してもよい。
【0044】
バインダーポリマー成分は、保護膜形成フィルムに適度なタックを与え、保護膜形成用複合シート3の操作性を向上することができる。バインダーポリマーの重量平均分子量は、通常は2万〜200万、好ましくは5万〜150万、特に好ましくは10万〜100万の範囲にある。分子量が低過ぎると、保護膜形成フィルムのフィルム形成が不十分となり、高過ぎると他の成分との相溶性が悪くなり、結果として均一なフィルム形成が妨げられる。このようなバインダーポリマーとしては、例えば、アクリル系ポリマー、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系ポリマー等が用いられ、特にアクリル系ポリマーが好ましく用いられる。
【0045】
アクリル系ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと(メタ)アクリル酸誘導体から導かれる構成単位とからなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体が挙げられる。ここで(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、好ましくはアルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル等が用いられる。また、(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等を挙げることができる。
【0046】
上記の中でもメタクリル酸グリシジル等を構成単位として用いてアクリル系ポリマーにグリシジル基を導入すると、前述した熱硬化性成分としてのエポキシ樹脂との相溶性が向上し、保護膜形成フィルムの硬化後のガラス転移温度(Tg)が高くなり、耐熱性が向上する。また、上記の中でもアクリル酸ヒドロキシエチル等を構成単位として用いてアクリル系ポリマーに水酸基を導入すると、ワークへの密着性や粘着物性をコントロールすることができる。
【0047】
バインダーポリマーとしてアクリル系ポリマーを使用した場合における当該ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは10万以上であり、特に好ましくは15万〜100万である。アクリル系ポリマーのガラス転移温度は通常40℃以下、好ましくは−70〜20℃程度である。
【0048】
熱硬化性成分とバインダーポリマー成分との配合比率は、バインダーポリマー成分100重量部に対して、熱硬化性成分を、好ましくは50〜1500重量部、特に好ましくは70〜1000重量部、さらに好ましくは80〜800重量部配合することが好ましい。このような割合で熱硬化性成分とバインダーポリマー成分とを配合すると、硬化前には適度なタックを示し、貼付作業を安定して行うことができ、また硬化後には、被膜強度に優れた保護膜が得られる。
【0049】
保護膜形成フィルムは、着色剤および/またはフィラーを含有することが好ましく、特に着色剤およびフィラーの両者を含有することが好ましい。これにより、波長1600nmおよび波長550nmの光線透過率を前述した範囲に制御することが容易となる。また、保護膜形成フィルムがフィラーを含有すると、硬化後の保護膜の硬度を高く維持することができるとともに、耐湿性を向上させることができる。さらには、硬化後の保護膜の熱膨張係数を半導体ウエハの熱膨張係数に近づけることができ、これによって加工途中の半導体ウエハの反りを低減することができる。
【0050】
着色剤としては、例えば、無機系顔料、有機系顔料、有機系染料など公知のものを使用することができる。中でも、550nmの光線の吸収が大きく、1600nmの光線の吸収が小さい保護膜形成フィルムが得られやすく、光線透過率の制御性を高めることが容易である観点から、着色剤は有機系の着色剤を含有することが好ましい。また、550nmおよび1600nmの光線透過率のいずれもが大きい着色剤を用いて、550nmの光線透過率が低く、1600nmの光線透過率が高い保護膜形成フィルムを得た場合、各光線透過率の上限又は下限との差(いわゆるマージン)が小さくなる傾向がある。保護膜形成フィルムには厚さのばらつきによる光線透過率の変動が存在するために、マージンが小さい保護膜形成フィルムでは局所的に各光線透過率のいずれかが上限又は下限を逸脱する可能性が高まる。有機系の着色剤であれば、550nmおよび1600nmの光線透過率のいずれも、マージンを大きくすることが容易であるため、局所的な光線透過率の逸脱の可能性を低減することができる。特に、保護膜形成フィルムが薄く、厚さが15μm以下である場合には、550nmの光線透過率を低く調整するために保護膜形成フィルムにおける着色剤の配合量が多くすることにより、1600nmの光線透過率の制御が困難になる場合があり、また、厚さのばらつきによる光線透過率の変動も大きいため、有機系の着色剤を用いることが好ましい。着色剤の化学的安定性(具体的には、溶出しにくさ、色移りの生じにくさ、経時変化の少なさが例示される。)を高める観点から、着色剤は顔料からなることが好ましい。したがって、本実施形態に係る保護膜形成フィルムが含有する着色剤は、有機系顔料からなることが好ましい。
【0051】
有機系の着色剤である有機系顔料および有機系染料としては、例えば、アミニウム系色
素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、
アズレニウム系色素、ポリメチン系色素、ナフトキノン系色素、ピリリウム系色素、フタ
ロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ナフトラクタム系色素、アゾ系色素、縮合
アゾ系色素、インジゴ系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、ジオキサジン系色素、
キナクリドン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、ピロール系色素、
チオインジゴ系色素、金属錯体系色素(金属錯塩染料)、ジチオール金属錯体系色素、イ
ンドールフェノール系色素、トリアリルメタン系色素、アントラキノン系色素、ジオキサ
ジン系色素、ナフトール系色素、アゾメチン系色素、ベンズイミダゾロン系色素、ピラン
スロン系色素およびスレン系色素等が挙げられる。
【0052】
有機系の着色剤は、1種類の材料から構成されていてもよいし、複数種類の材料から構成されていてもよい。保護膜形成フィルムの光線透過率のスペクトルのプロファイルの制御性を高める観点、具体的には、波長550nmの光線透過率を20%以下とするとともに波長1600nmの光線透過率を72%以上とすることを容易とする観点から、本実施形態に係る保護膜形成フィルムが含有する着色剤は複数種類の材料から構成されていることが好ましい。
【0053】
例えば、黄色系の顔料であるイソインドリノン系色素、青色系の顔料であるフタロシアニン系色素、および赤色系の顔料であるジケトピロロピロールを適切な比率で配合すれば、波長550nmの光線透過率を20%以下とするとともに波長1600nmの光線透過率を72%以上とすることを容易に実現可能である。
【0054】
無機系顔料としては、例えば、カーボンブラック、コバルト系色素、鉄系色素、クロム系色素、チタン系色素、バナジウム系色素、ジルコニウム系色素、モリブデン系色素、ルテニウム系色素、白金系色素、ITO(インジウムスズオキサイド)系色素、ATO(アンチモンスズオキサイド)系色素等が挙げられる。
【0055】
本実施形態に係る保護膜形成フィルム中における着色剤は、有機系の着色剤および無機系の着色剤から構成されていてもよい。
【0056】
保護膜形成フィルム中における着色剤(特にカーボンブラック)の配合量は、保護膜形成フィルムの厚さによっても異なるが、例えば保護膜形成フィルムの厚さが25μmの場合は、0.05〜1質量%であることが好ましく、特に0.075〜0.75質量%であることが好ましく、さらには0.1〜0.5質量%であることが好ましい。着色剤の配合量が0.05質量%以上であると、半導体チップ等における研削痕が目視で見えないように、波長550nmの光線透過率を20%以下に制御し易い。一方、着色剤の配合量が1質量%を超えると、赤外線が保護膜形成フィルム(保護膜)を透過せず、赤外線検査ができないことがある。なお、保護膜形成フィルムの厚さが薄くなると、光線透過率が高くなる傾向があり、保護膜形成フィルムの厚さが厚くなると、光線透過率が低くなる傾向があるため、保護膜形成フィルムの厚さに応じて、着色剤の配合量を適宜調整することが望ましい。具体的には、保護膜形成フィルムの厚さと着色剤の配合量とが反比例の関係になるように調整することが望ましい。
【0057】
着色剤(特にカーボンブラック)の平均粒径は、1〜500nmであることが好ましく、特に3〜100nmであることが好ましく、さらには5〜50nmであることが好ましい。着色剤の平均粒径が上記の範囲内にあると、波長550nmの光線透過率および波長1600nmの光線透過率を前述した範囲に制御し易い。なお、本明細書における着色剤の平均粒径は、粒度分布測定装置(日機装社製,ナノトラックWave−UT151)を使用して、動的光散乱法により測定した値とする。
【0058】
フィラーとしては、結晶シリカ、溶融シリカ、合成シリカ等のシリカや、アルミナ、ガラスバルーン等の無機フィラーが挙げられる。中でもシリカが好ましく、合成シリカがより好ましく、特に半導体装置の誤作動の要因となるα線の線源を極力除去したタイプの合成シリカが最適である。フィラーの形状としては、球形、針状、不定形等が挙げられるが、球形であることが好ましく、特に真球形であることが好ましい。フィラーが球形または真球形であると、光線の乱反射が生じ難く、前述した赤外線検査を良好に行うことができる。
【0059】
また、保護膜形成フィルムに添加するフィラーとしては、上記無機フィラーの他にも、機能性のフィラーが配合されていてもよい。機能性のフィラーとしては、例えば、ダイボンド後の導電性の付与を目的とした、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、ステンレス、カーボン、セラミック、またはニッケル、アルミニウム等を銀で被覆した導電性フィラーや、熱伝導性の付与を目的とした、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、ステンレス、シリコン、ゲルマニウム等の金属材料やそれらの合金等の熱伝導性フィラーなどが挙げられる。
【0060】
フィラー(特にシリカフィラー)の平均粒径は、0.01〜10μmであることが好ましく、0.01〜3μmであることがより好ましく、特に0.03〜2μmであることが好ましく、さらには0.05〜1μmであることが好ましい。フィラーの平均粒径が0.01μm以上であると、半導体チップ等における研削痕が目視で見えないように、波長550nmの光線透過率を20%以下に制御し易い。一方、フィラーの平均粒径が10μmを超えると、保護膜形成フィルムの表面状態が悪くなるおそれがある。また、フィラーの平均粒径が3μmを超えると、赤外線の乱反射により、赤外線検査し難い場合がある。なお、本明細書におけるフィラーの1μm未満の平均粒径は、粒度分布測定装置(日機装社製,ナノトラックWave−UT151)を使用して、動的光散乱法により測定した値とする。また、フィラーの1μm以上の平均粒径は、粒度分布測定装置(日機装社製,マイクロトラックMT3000II)を使用して、レーザー回折・散乱法により測定した値とする。
【0061】
保護膜形成フィルム中におけるフィラー(特にシリカフィラー)の配合量は、10〜80質量%であることが好ましく、特に20〜70質量%であることが好ましく、さらには30〜65質量%であることが好ましい。フィラーの配合量がこのような範囲にあると、半導体チップ等における研削痕が目視で見えないように、波長550nmの光線透過率を20%以下に制御し易い。また、保護膜形成フィルム(保護膜)の赤外線領域の光線透過率を維持して、赤外線検査を行うことが容易となる。
【0062】
保護膜形成フィルムは、カップリング剤を含有してもよい。カップリング剤を含有することにより、保護膜形成フィルムの硬化後において、保護膜の耐熱性を損なわずに、保護膜とワークとの接着性・密着性を向上させることができるとともに、耐水性(耐湿熱性)を向上させることができる。カップリング剤としては、その汎用性とコストメリットなどからシランカップリング剤が好ましい。
【0063】
シランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシランなどが挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上混合して使用することができる。
【0064】
保護膜形成フィルムは、硬化前の凝集力を調節するために、有機多価イソシアナート化合物、有機多価イミン化合物、有機金属キレート化合物等の架橋剤を含有してもよい。また、保護膜形成フィルムは、静電気を抑制し、チップの信頼性を向上させるために、帯電防止剤を含有してもよい。さらに、保護膜形成フィルムは、保護膜の難燃性能を高め、パッケージとしての信頼性を向上させるために、リン酸化合物、ブロム化合物、リン系化合物等の難燃剤を含有してもよい。
【0065】
保護膜形成フィルムの厚さは、保護膜としての機能を効果的に発揮させるために、3〜300μmであることが好ましく、特に5〜200μmであることが好ましく、さらには7〜100μmであることが好ましい。また、保護膜形成フィルムに薄膜化が要求される場合、保護膜形成フィルムの厚さは、3〜15μmであることが好ましく、特に5〜13μmであることが好ましく、さらには7〜11μmであることが好ましい。本実施形態に係る保護膜形成フィルムは、赤外線の光線透過率は高く維持しつつ、可視光の光線透過率を低くしたものであり、上記のように薄膜化した場合でも、かかる効果を発揮することができるものである。
【0066】
〔保護膜形成用シート〕
図1は本発明の一実施形態に係る保護膜形成用シートの断面図である。図1に示すように、本実施形態に係る保護膜形成用シート2は、保護膜形成フィルム1と、保護膜形成フィルム1の一方の面(図1では下側の面)に積層された剥離シート21とを備えて構成される。ただし、剥離シート21は、保護膜形成用シート2の使用時に剥離されるものである。
【0067】
剥離シート21は、保護膜形成用シート2が使用されるまでの間、保護膜形成フィルム1を保護するものであり、必ずしもなくてもよい。剥離シート21の構成は任意であり、フィルム自体が保護膜形成フィルム1に対し剥離性を有するプラスチックフィルム、およびプラスチックフィルムを剥離剤等により剥離処理したものが例示される。プラスチックフィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、およびポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。剥離剤としては、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系等を用いることができるが、これらの中で、安価で安定した性能が得られるシリコーン系が好ましい。剥離シート21の厚さについては特に制限はないが、通常20〜250μm程度である。
【0068】
上記のような剥離シート21は、保護膜形成フィルム1の他方の面(図1では上側の面)にも積層されてもよい。この場合は、一方の剥離シート21の剥離力を大きくして重剥離型剥離シートとし、他方の剥離シート21の剥離力を小さくして軽剥離型剥離シートとすることが好ましい。
【0069】
本実施形態に係る保護膜形成用シート2を製造するには、剥離シート21の剥離面(剥離性を有する面;通常は剥離処理が施された面であるが、これに限定されない)に、保護膜形成フィルム1を形成する。具体的には、保護膜形成フィルム1を構成する硬化性接着剤と、所望によりさらに溶媒とを含有する保護膜形成フィルム用の塗布剤を調製し、ロールコーター、ナイフコーター、ロールナイフコーター、エアナイフコーター、ダイコーター、バーコーター、グラビアコーター、カーテンコーター等の塗工機によって剥離シート21の剥離面に塗布して乾燥させて、保護膜形成フィルム1を形成する。
【0070】
本実施形態に係る保護膜形成用シート2を用いて、一例としてワークとしての半導体ウエハから保護膜付きチップを製造する方法を以下に説明する。最初に、表面に回路が形成され、バックグラインド加工された半導体ウエハの裏面に、保護膜形成用シート2の保護膜形成フィルム1を貼付する。このとき、所望により保護膜形成フィルム1を加熱して、粘着性を発揮させてもよい。
【0071】
次いで、保護膜形成フィルム1から剥離シート21を剥離する。その後、保護膜形成フィルム1を硬化させて保護膜を形成し、保護膜付き半導体ウエハを得る。保護膜形成フィルム1が熱硬化性接着剤の場合には、保護膜形成フィルム1を所定温度で適切な時間加熱すればよい。なお、保護膜形成フィルム1の硬化は、ダイシング工程後に行ってもよい。
【0072】
上記のようにして保護膜付き半導体ウエハが得られたら、所望により、その保護膜に対してレーザー光を照射し、レーザー印字を行う。なお、このレーザー印字は、保護膜形成フィルム1の硬化前に行ってもよい。
【0073】
次いで、所望のダイシングシートを使用し、常法に従って保護膜付き半導体ウエハをダイシングし、保護膜を有するチップ(保護膜付きチップ)を得る。その後は、所望によりダイシングシートを平面方向にエキスパンドし、ダイシングシートから保護膜付きチップをピックアップする。
【0074】
上記のようにして得られた保護膜付きチップは、バックグラインド加工による研削痕が保護膜によって隠蔽されて目視で見えないため、外観に優れる。また、当該保護膜付きチップおよび保護膜付き半導体ウエハは、保護膜を介して赤外線検査を行うことができるため、赤外線検査によりクラック等を発見することができ、製品歩留まりを向上させることができる。
【0075】
なお、赤外線検査は、赤外線を利用して行う検査であり、保護膜付き半導体ウエハ等の保護膜付きワークまたは保護膜付きチップ等の加工物からの赤外線を、保護膜を介して取得することにより行うことができる。取得する赤外線の波長は、通常800〜2800nmであり、好ましくは1100〜2100nmである。赤外線検査の装置としては、公知の装置、例えば赤外線カメラや赤外線顕微鏡等を有するものを使用することができる。
【0076】
〔保護膜形成用複合シート〕
図2は本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートの断面図である。図2に示すように、本実施形態に係る保護膜形成用複合シート3は、基材41の一方の面に粘着剤層42が積層されてなる粘着シート4と、粘着シート4の粘着剤層42側に積層された保護膜形成フィルム1と、保護膜形成フィルム1における粘着シート4とは反対側の周縁部に積層された治具用粘着剤層5とを備えて構成される。治具用粘着剤層5は、保護膜形成用複合シート3をリングフレーム等の治具に接着するための層である。
【0077】
本実施形態に係る保護膜形成用複合シート3は、ワークを加工するときに、当該ワークに貼付されて当該ワークを保持するとともに、当該ワークまたは当該ワークを加工して得られる加工物に保護膜を形成するために用いられる。この保護膜は、保護膜形成フィルム1、好ましくは硬化した保護膜形成フィルム1から構成される。
【0078】
本実施形態に係る保護膜形成用複合シート3は、一例として、ワークとしての半導体ウエハのダイシング加工時に半導体ウエハを保持するとともに、ダイシングによって得られる半導体チップに保護膜を形成するために用いられるが、これに限定されるものではない。この場合における保護膜形成用複合シート3の粘着シート4は、通常、ダイシングシートと称される。
【0079】
1.粘着シート
本実施形態に係る保護膜形成用複合シート3の粘着シート4は、基材41と、基材41の一方の面に積層された粘着剤層42とを備えて構成される。
【0080】
1−1.基材
粘着シート4の基材41は、ワークの加工、例えば半導体ウエハのダイシングおよびエキスパンディングに適するものであれば、その構成材料は特に限定されず、通常は樹脂系の材料を主材とするフィルム(以下「樹脂フィルム」という。)から構成される。
【0081】
樹脂フィルムの具体例として、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、高密度ポリエチレン(HDPE)フィルム等のポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、エチレン−ノルボルネン共重合体フィルム、ノルボルネン樹脂フィルム等のポリオレフィン系フィルム;エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム等のエチレン系共重合フィルム;ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム等のポリ塩化ビニル系フィルム;ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系フィルム;ポリウレタンフィルム;ポリイミドフィルム;ポリスチレンフィルム;ポリカーボネートフィルム;フッ素樹脂フィルムなどが挙げられる。またこれらの架橋フィルム、アイオノマーフィルムのような変性フィルムも用いられる。上記の基材41はこれらの1種からなるフィルムでもよいし、さらにこれらを2種類以上組み合わせた積層フィルムであってもよい。なお、本明細書における「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸およびメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語についても同様である。
【0082】
上記の中でも、環境安全性、コスト等の観点から、ポリオレフィン系フィルムが好ましく、その中でも耐熱性に優れるポリプロピレンフィルムが好ましい。ポリプロピレンフィルムであれば、粘着シート4のエキスパンド適性やチップのピックアップ適性を損なうことなく、基材41に耐熱性を付与することができる。基材41がかかる耐熱性を有することにより、保護膜形成用複合シート3をワークに貼付した状態で保護膜形成フィルム1を熱硬化させた場合にも、粘着シート4の弛みの発生を抑制することができる。
【0083】
上記樹脂フィルムは、その表面に積層される粘着剤層42との密着性を向上させる目的で、所望により片面または両面に、酸化法や凹凸化法などによる表面処理、あるいはプライマー処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸化処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン、紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶射処理法などが挙げられる。
【0084】
基材41は、上記樹脂フィルム中に、着色剤、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、フィラー等の各種添加剤を含有してもよい。
【0085】
基材41の厚さは、保護膜形成用複合シート3が使用される各工程において適切に機能できる限り、特に限定されない。好ましくは20〜450μm、より好ましくは25〜400μm、特に好ましくは50〜350μmの範囲である。
【0086】
本実施形態における粘着シート4の基材41の破断伸度は、23℃、相対湿度50%のときに測定した値として100%以上であることが好ましく、特に200〜1000%であることが好ましい。ここで、破断伸度はJIS K7161:1994(ISO 527−1 1993)に準拠した引張り試験における、試験片破壊時の試験片の長さの元の長さに対する伸び率である。上記の破断伸度が100%以上である基材41は、エキスパンド工程の際に破断し難く、ワークを切断して形成したチップを離間し易いものとなる。
【0087】
また、本実施形態における粘着シート4の基材41の25%ひずみ時引張応力は5〜15N/10mmであることが好ましく、最大引張応力は15〜50MPaであることが好ましい。ここで25%ひずみ時引張応力および最大引張応力はJIS K7161:1994に準拠した試験により測定される。25%ひずみ時引張応力が5N/10mm以上、最大引張応力が15MPa以上であると、ダイシングシート1にワークを貼着した後、リングフレームなどの枠体に固定した際、基材2に弛みが発生することが抑制され、搬送エラーが生じることを防止することができる。一方、25%ひずみ時引張応力が15N/10mm以下、最大引張応力が50MPa以下であると、エキスパンド工程時にリングフレームからダイシングシート1自体が剥がれたりすることが抑制される。なお、上記の破断伸度、25%ひずみ時引張応力、最大引張応力は基材41における原反の長尺方向について測定した値を指す。
【0088】
1−2.粘着剤層
本実施形態に係る保護膜形成用複合シート3の粘着シート4が備える粘着剤層42は、非エネルギー線硬化性粘着剤から構成されてもよいし、エネルギー線硬化性粘着剤から構成されてもよい。非エネルギー線硬化性粘着剤としては、所望の粘着力および再剥離性を有するものが好ましく、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等を使用することができる。これらの中でも、保護膜形成フィルム1との密着性が高く、ダイシング工程等にてワークまたは加工物の脱落を効果的に抑制することのできるアクリル系粘着剤が好ましい。
【0089】
一方、エネルギー線硬化性粘着剤は、エネルギー線照射により粘着力が低下するため、ワークまたは加工物と粘着シート4とを分離させたいときに、エネルギー線照射することにより、容易に分離させることができる。
【0090】
粘着剤層42がエネルギー線硬化性粘着剤からなる場合、保護膜形成用複合シート3における粘着剤層42は硬化していることが好ましい。エネルギー線硬化性粘着剤を硬化した材料は、通常、弾性率が高く、かつ表面の平滑性が高いため、かかる材料からなる硬化部分に接触している保護膜形成フィルム3を硬化させて保護膜を形成すると、保護膜の当該硬化部分と接触している表面は、平滑性(グロス)が高くなり、チップの保護膜として美観に優れたものとなる。また、表面平滑性の高い保護膜にレーザー印字が施されると、その印字の視認性が向上する。
【0091】
粘着剤層42を構成するエネルギー線硬化性粘着剤は、エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とするものであってもよいし、エネルギー線硬化性を有しないポリマーとエネルギー線硬化性の多官能モノマーおよび/またはオリゴマーとの混合物を主成分とするものであってもよい。
【0092】
エネルギー線硬化性粘着剤が、エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とする場合について、以下説明する。
【0093】
エネルギー線硬化性を有するポリマーは、側鎖にエネルギー線硬化性を有する官能基(エネルギー線硬化性基)が導入された(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)(以下「エネルギー線硬化型重合体(A)」という場合がある。)であることが好ましい。このエネルギー線硬化型重合体(A)は、官能基含有モノマー単位を有する(メタ)アクリル系共重合体(a1)と、その官能基に結合する置換基を有する不飽和基含有化合物(a2)とを反応させて得られるものであることが好ましい。
【0094】
アクリル系共重合体(a1)は、官能基含有モノマーから導かれる構成単位と、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体から導かれる構成単位とからなる。
【0095】
アクリル系共重合体(a1)の構成単位としての官能基含有モノマーは、重合性の二重結合と、ヒドロキシル基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基とを分子内に有するモノマーであることが好ましい。
【0096】
上記官能基含有モノマーのさらに具体的な例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0097】
アクリル系共重合体(a1)を構成する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、アルキル基の炭素数が1〜20であるアルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートが用いられる。これらの中でも、特に好ましくはアルキル基の炭素数が1〜18であるアルキル(メタ)アクリレート、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が用いられる。
【0098】
アクリル系共重合体(a1)は、上記官能基含有モノマーから導かれる構成単位を通常3〜100質量%、好ましくは5〜40質量%の割合で含有し、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体から導かれる構成単位を通常0〜97質量%、好ましくは60〜95質量%の割合で含有してなる。
【0099】
アクリル系共重合体(a1)は、上記のような官能基含有モノマーと、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体とを常法で共重合することにより得られるが、これらモノマーの他にもジメチルアクリルアミド、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、スチレン等が共重合されてもよい。
【0100】
上記官能基含有モノマー単位を有するアクリル系共重合体(a1)を、その官能基に結合する置換基を有する不飽和基含有化合物(a2)と反応させることにより、エネルギー線硬化型重合体(A)が得られる。
【0101】
不飽和基含有化合物(a2)が有する置換基は、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基含有モノマー単位の官能基の種類に応じて、適宜選択することができる。例えば、官能基がヒドロキシル基、アミノ基または置換アミノ基の場合、置換基としてはイソシアネート基またはエポキシ基が好ましく、官能基がエポキシ基の場合、置換基としてはアミノ基、カルボキシル基またはアジリジニル基が好ましい。
【0102】
また不飽和基含有化合物(a2)には、エネルギー線重合性の炭素−炭素二重結合が、1分子毎に1〜5個、好ましくは1〜2個含まれている。このような不飽和基含有化合物(a2)の具体例としては、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、2−(1−アジリジニル)エチル(メタ)アクリレート、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等が挙げられる。
【0103】
不飽和基含有化合物(a2)は、上記アクリル系共重合体(a1)の官能基含有モノマー100当量当たり、通常10〜100当量、好ましくは20〜95当量の割合で用いられる。
【0104】
アクリル系共重合体(a1)と不飽和基含有化合物(a2)との反応においては、官能基と置換基との組合せに応じて、反応の温度、圧力、溶媒、時間、触媒の有無、触媒の種類を適宜選択することができる。これにより、アクリル系共重合体(a1)中に存在する官能基と、不飽和基含有化合物(a2)中の置換基とが反応し、不飽和基がアクリル系共重合体(a1)中の側鎖に導入され、エネルギー線硬化型重合体(A)が得られる。
【0105】
このようにして得られるエネルギー線硬化型重合体(A)の重量平均分子量は、1万以上であるのが好ましく、特に15万〜150万であるのが好ましく、さらに20万〜100万であるのが好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定したポリスチレン換算の値である。
【0106】
エネルギー線硬化性粘着剤が、エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とする場合であっても、エネルギー線硬化性粘着剤は、エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)をさらに含有してもよい。
【0107】
エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)としては、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル等を使用することができる。
【0108】
かかるエネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の単官能性アクリル酸エステル類、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等の多官能性アクリル酸エステル類、ポリエステルオリゴ(メタ)アクリレート、ポリウレタンオリゴ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0109】
エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)を配合する場合、エネルギー線硬化性粘着剤中におけるエネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)の含有量は、5〜80質量%であることが好ましく、特に20〜60質量%であることが好ましい。
【0110】
ここで、エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させるためのエネルギー線として紫外線を用いる場合には、光重合開始剤(C)を添加することが好ましく、この光重合開始剤(C)の使用により、重合硬化時間および光線照射量を少なくすることができる。
【0111】
光重合開始剤(C)としては、具体的には、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4−ジエチルチオキサンソン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノン、(2,4,6−トリメチルベンジルジフェニル)フォスフィンオキサイド、2−ベンゾチアゾール−N,N−ジエチルジチオカルバメート、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−プロペニル)フェニル]プロパノン}、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0112】
光重合開始剤(C)は、エネルギー線硬化型重合体(A)(エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)を配合する場合には、エネルギー線硬化型重合体(A)およびエネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)の合計量100質量部)100質量部に対して0.1〜10質量部、特には0.5〜6質量部の範囲の量で用いられることが好ましい。
【0113】
エネルギー線硬化性粘着剤においては、上記成分以外にも、適宜他の成分を配合してもよい。他の成分としては、例えば、エネルギー線硬化性を有しないポリマー成分またはオリゴマー成分(D)、架橋剤(E)等が挙げられる。
【0114】
エネルギー線硬化性を有しないポリマー成分またはオリゴマー成分(D)としては、例えば、ポリアクリル酸エステル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリオレフィン等が挙げられ、重量平均分子量(Mw)が3000〜250万のポリマーまたはオリゴマーが好ましい。
【0115】
架橋剤(E)としては、エネルギー線硬化型重合体(A)等が有する官能基との反応性を有する多官能性化合物を用いることができる。このような多官能性化合物の例としては、イソシアナート化合物、エポキシ化合物、アミン化合物、メラミン化合物、アジリジン化合物、ヒドラジン化合物、アルデヒド化合物、オキサゾリン化合物、金属アルコキシド化合物、金属キレート化合物、金属塩、アンモニウム塩、反応性フェノール樹脂等を挙げることができる。
【0116】
これら他の成分(D),(E)をエネルギー線硬化性粘着剤に配合することにより、硬化前における粘着性および剥離性、硬化後の強度、他の層との接着性、保存安定性などを改善し得る。これら他の成分の配合量は特に限定されず、エネルギー線硬化型重合体(A)100質量部に対して0〜40質量部の範囲で適宜決定される。
【0117】
次に、エネルギー線硬化性粘着剤が、エネルギー線硬化性を有しないポリマー成分とエネルギー線硬化性の多官能モノマーおよび/またはオリゴマーとの混合物を主成分とする場合について、以下説明する。
【0118】
エネルギー線硬化性を有しないポリマー成分としては、例えば、前述したアクリル系共重合体(a1)と同様の成分が使用できる。エネルギー線硬化性樹脂組成物中におけるエネルギー線硬化性を有しないポリマー成分の含有量は、20〜99.9質量%であることが好ましく、特に30〜80質量%であることが好ましい。
【0119】
エネルギー線硬化性の多官能モノマーおよび/またはオリゴマーとしては、前述の成分(B)と同じものが選択される。エネルギー線硬化性を有しないポリマー成分とエネルギー線硬化性の多官能モノマーおよび/またはオリゴマーとの配合比は、ポリマー成分100質量部に対して、多官能モノマーおよび/またはオリゴマー10〜150質量部であるのが好ましく、特に25〜100質量部であるのが好ましい。
【0120】
この場合においても、上記と同様に、光重合開始剤(C)や架橋剤(E)を適宜配合することができる。
【0121】
粘着剤層42の厚さは、保護膜形成用複合シート3が使用される各工程において適切に機能できる限り、特に限定されない。具体的には、1〜50μmであることが好ましく、特に2〜30μmであることが好ましく、さらには3〜20μmであることが好ましい。
【0122】
治具用粘着剤層5を構成する粘着剤としては、所望の粘着力および再剥離性を有するものが好ましく、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等を使用することができる。これらの中でも、リングフレーム等の治具との密着性が高く、ダイシング工程等にてリングフレーム等から保護膜形成用複合シート3が剥がれることを効果的に抑制することのできるアクリル系粘着剤が好ましい。なお、治具用粘着剤層5の厚さ方向の途中には、芯材としての基材が介在していてもよい。
【0123】
一方、治具用粘着剤層5の厚さは、リングフレーム等の治具に対する接着性の観点から、5〜200μmであることが好ましく、特に10〜100μmであることが好ましい。
【0124】
2.保護膜形成用複合シートの製造方法
保護膜形成用複合シート3は、好ましくは、保護膜形成フィルム1を含む第1の積層体と、粘着シート4を含む第2の積層体とを別々に作製した後、第1の積層体および第2の積層体を使用して、保護膜形成フィルム1と粘着シート4とを積層することにより製造することができるが、これに限定されるものではない。
【0125】
第1の積層体を製造するには、第1の剥離シートの剥離面に、保護膜形成フィルム1を形成する。具体的には、保護膜形成フィルム1を構成する硬化性接着剤と、所望によりさらに溶媒とを含有する保護膜形成フィルム用の塗布剤を調製し、ロールコーター、ナイフコーター、ロールナイフコーター、エアナイフコーター、ダイコーター、バーコーター、グラビアコーター、カーテンコーター等の塗工機によって第1の剥離シートの剥離面に塗布して乾燥させて、保護膜形成フィルム1を形成する。次に、保護膜形成フィルム1の露出面に第2の剥離シートの剥離面を重ねて圧着し、2枚の剥離シートに保護膜形成フィルム1が挟持されてなる積層体(第1の積層体)を得る。
【0126】
この第1の積層体においては、所望によりハーフカットを施し、保護膜形成フィルム1(および第2の剥離シート)を所望の形状、例えば円形等にしてもよい。この場合、ハーフカットにより生じた保護膜形成フィルム1および第2の剥離シートの余分な部分は、適宜除去すればよい。
【0127】
一方、第2の積層体を製造するには、第3の剥離シートの剥離面に、粘着剤層42を構成する粘着剤と、所望によりさらに溶媒とを含有する粘着剤層用の塗布剤を塗布し乾燥させて粘着剤層42を形成する。その後、粘着剤層42の露出面に基材41を圧着し、基材41および粘着剤層42からなる粘着シート4と、第3の剥離シートとからなる積層体(第2の積層体)を得る。
【0128】
ここで、粘着剤層42がエネルギー線硬化性粘着剤からなる場合には、この段階で粘着剤層42に対してエネルギー線を照射して、粘着剤層42を硬化させてもよいし、保護膜形成フィルム1と積層した後に粘着剤層42を硬化させてもよい。また、保護膜形成フィルム1と積層した後に粘着剤層42を硬化させる場合、ダイシング工程前に粘着剤層42を硬化させてもよいし、ダイシング工程後に粘着剤層42を硬化させてもよい。
【0129】
エネルギー線としては、通常、紫外線、電子線等が用いられる。エネルギー線の照射量は、エネルギー線の種類によって異なるが、例えば紫外線の場合には、光量で50〜1000mJ/cmが好ましく、特に100〜500mJ/cmが好ましい。また、電子線の場合には、10〜1000krad程度が好ましい。
【0130】
以上のようにして第1の積層体および第2の積層体が得られたら、第1の積層体における第2の剥離シートを剥離するとともに、第2の積層体における第3の剥離シートを剥離し、第1の積層体にて露出した保護膜形成フィルム1と、第2の積層体にて露出した粘着シート4の粘着剤層42とを重ね合わせて圧着する。粘着シート4は、所望によりハーフカットし、所望の形状、例えば保護膜形成フィルム1よりも大きい径を有する円形等にしてもよい。この場合、ハーフカットにより生じた粘着シート4の余分な部分は、適宜除去すればよい。
【0131】
このようにして、基材41の上に粘着剤層42が積層されてなる粘着シート4と、粘着シート4の粘着剤層42側に積層された保護膜形成フィルム1と、保護膜形成フィルム1における粘着シート4とは反対側に積層された第1の剥離シートとからなる保護膜形成用複合シート3が得られる。最後に、第1の剥離シートを剥離した後、保護膜形成フィルム1における粘着シート4とは反対側の周縁部に、治具用粘着剤層5を形成する。治具用粘着剤層5も、上記粘着剤層42と同様の方法により塗布し形成することができる。
【0132】
3.保護膜形成用複合シートの使用方法
本実施形態に係る保護膜形成用複合シート3を用いて、一例としてワークとしての半導体ウエハから保護膜付きチップを製造する方法を以下に説明する。
【0133】
図4に示すように、保護膜形成フィルム1を半導体ウエハ6に貼付するとともに、治具用粘着剤層5をリングフレーム7に貼付する。保護膜形成フィルム1を半導体ウエハ6に貼付するにあたり、所望により保護膜形成フィルム1を加熱して、粘着性を発揮させてもよい。
【0134】
その後、保護膜形成フィルム1を硬化させて保護膜を形成し、保護膜付き半導体ウエハ6を得る。保護膜形成フィルム1が熱硬化性接着剤の場合には、保護膜形成フィルム1を所定温度で適切な時間加熱すればよい。なお、保護膜形成フィルム1の硬化は、ダイシング工程後に行ってもよい。
【0135】
上記のようにして保護膜付き半導体ウエハ6が得られたら、所望により、その保護膜に対して、粘着シート4を介してレーザー光を照射し、レーザー印字を行う。なお、このレーザー印字は、保護膜形成フィルム1の硬化前に行ってもよい。
【0136】
次いで、常法に従って保護膜付き半導体ウエハ6をダイシングし、保護膜を有するチップ(保護膜付きチップ)を得る。その後は、所望により粘着シート4を平面方向にエキスパンドし、粘着シート4から保護膜付きチップをピックアップする。
【0137】
上記のようにして得られた保護膜付きチップは、バックグラインド加工による研削痕が保護膜によって隠蔽されて目視で見えないため、外観に優れる。また、当該保護膜付きチップおよび保護膜付き半導体ウエハは、保護膜を介して赤外線検査を行うことができるため、赤外線検査によりクラック等を発見することができ、製品歩留まりを向上させることができる。
【0138】
4.保護膜形成用複合シートの他の実施形態
図3は本発明の他の実施形態に係る保護膜形成用複合シートの断面図である。図3に示すように、本実施形態に係る保護膜形成用複合シート3Aは、基材41の一方の面に粘着剤層42が積層されてなる粘着シート4と、粘着シート4の粘着剤層42側に積層された保護膜形成フィルム1とを備えて構成される。実施形態における保護膜形成フィルム1は、面方向にてワークとほぼ同じか、ワークよりも少し大きく形成されており、かつ粘着シート4よりも面方向に小さく形成されている。保護膜形成フィルム1が積層されていない部分の粘着剤層42は、リングフレーム等の治具に貼付することが可能となっている。
【0139】
本実施形態に係る保護膜形成用複合シート3Aの各部材の材料および厚さ等は、前述した保護膜形成用複合シート3の各部材の材料および厚さと同様である。ただし、粘着剤層42がエネルギー線硬化性粘着剤からなる場合、粘着剤層42における保護膜形成フィルム1と接触する部分は、エネルギー線硬化性粘着剤を硬化させ、それ以外の部分は、エネルギー線硬化性粘着剤を硬化させないことが好ましい。これにより、保護膜形成フィルム1を硬化させた保護膜の平滑性(グロス)を高くすることができるとともに、リングフレーム等の治具に対する接着力を高く維持することができる。
【0140】
なお、保護膜形成用複合シート3Aの粘着シート4の粘着剤層42における基材41とは反対側の周縁部には、前述した保護膜形成用複合シート3の治具用粘着剤層5と同様の治具用粘着剤層が別途設けられていてもよい。
【0141】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0142】
例えば、保護膜形成用複合シート3,3Aの保護膜形成フィルム1における粘着シート4とは反対側には、剥離シートが積層されてもよい。
【実施例】
【0143】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0144】
〔実施例1〕
次の各成分を表1に示す配合比(固形分換算)で混合し、固形分濃度が61質量%となるようにメチルエチルケトンで希釈して、保護膜形成フィルム用塗布剤を調製した。
(A−1)バインダーポリマー:n−ブチルアクリレート10質量部、メチルアクリレート70質量部、グリシジルメタクリレート5質量部および2−ヒドロキシエチルアクリレート15質量部を共重合してなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(重量平均分子量:80万,ガラス転移温度:−1℃)
(A−2)バインダーポリマー:メチルアクリレート85質量部および2−ヒドロキシエチルアクリレート15質量部を共重合してなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(重量平均分子量:40万,ガラス転移温度:4℃)
(B−1)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製,jER828,エポキシ当量184〜194g/eq)
(B−2)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製,jER1055,エポキシ当量800〜900g/eq)
(B−3)ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製,エピクロンHP−7200HH,エポキシ当量255〜260g/eq)
(C−1)熱活性潜在性エポキシ樹脂硬化剤:ジシアンジアミド(ADEKA社製,アデカハードナーEH−3636AS,活性水素量21g/eq)
(C−2)熱活性潜在性エポキシ樹脂硬化剤:ジシアンジアミド(三菱化学社製,DICY7,活性水素量21g/eq)
(D)硬化促進剤:2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業社製,キュアゾール2PHZ−PW)
(E−1)シリカフィラー(アドマテックス社製,SC2050MA,平均粒径0.5μm)
(E−2)シリカフィラー(アドマテックス社製,SC1050−MLQ,平均粒径0.3μm)
(F)シランカップリング剤(信越化学工業社製,KBM403)
(G)着色剤:カーボンブラック(三菱化学社製,#MA650,平均粒径28nm)
(H)有機系の着色剤:フタロシアニン系青色顔料(Pigment Blue 15:3を3倍の質量のスチレン−アクリル樹脂で固着したもの)とイソインドリノン系黄色顔料(Pigment Yellow 139を3倍の質量のスチレン−アクリル樹脂で固着したもの)およびジケトピロロピロール系赤色顔料(Pigment Red264を3倍の質量のスチレン−アクリル樹脂で固着したもの)を、38:18:44(青:黄:赤、質量比)で混合した顔料
【0145】
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる第1の剥離シート(リンテック社製:SP−PET3811,厚さ38μm)と、PETフィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる第2の剥離シート(リンテック社製:SP−PET381031,厚さ38μm)とを用意した。
【0146】
第1の剥離シートの剥離面上に、前述の保護膜形成フィルム用塗布剤をナイフコーターにて塗布した後、オーブンにて120℃で2分間乾燥させて、厚さ23μmの保護膜形成フィルムを形成した。次いで、保護膜形成フィルムに第2の剥離シートの剥離面を重ねて両者を貼り合わせ、第1の剥離シート(図1における剥離シート21)と、保護膜形成フィルム(図1における保護膜形成フィルム1)(厚さ:23μm)と、第2の剥離シートとからなる保護膜形成用シートを得た。
【0147】
〔実施例2〕
保護膜形成フィルムを構成する各成分の種類および配合量を表1に示すように変更するとともに、保護膜形成フィルムの厚さを10μmとする以外、実施例1と同様にして保護膜形成用シートを製造した。
【0148】
〔比較例1〜3〕
保護膜形成フィルムを構成する各成分の種類および配合量を表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にして保護膜形成用シートを製造した。
【0149】
〔試験例1〕<光線透過率の測定>
実施例および比較例で得られた保護膜形成用シートから第2の剥離シートを剥離し、オーブン内において、大気雰囲気下、130℃で2時間加熱し、保護膜形成フィルムを熱硬化させて保護膜とした。その後、第1の剥離シートを剥離した。
【0150】
分光光度計(SHIMADZU社製,UV−VIS−NIR SPECTROPHOTOMETER UV−3600)を用いて、上記保護膜の透過率を測定し、波長550nm(可視光線)および波長1600nm(赤外線)の光線透過率(%)を抽出した。測定には、付属の大形試料室MPC−3100を用い、内蔵の積分球を使用せずに測定を行った。結果を表1に示す。
【0151】
〔試験例2〕<研削痕隠蔽性評価>
実施例および比較例で得られた保護膜形成用シートから第2の剥離シートを剥離し、保護膜形成用フィルムを露出させた。#2000研磨したシリコンウエハ(直径200mm,厚さ350μm)の研磨面に、上記保護膜形成用フィルムを、テープマウンター(リンテック社製 Adwill RAD−3600 F/12)を用いて70℃に加熱しながら貼付し、次いで、第1の剥離シートを剥離した。その後、130℃で2時間加熱して保護膜形成用フィルムを硬化させて保護膜とし、保護膜付きシリコンウエハを得た。
【0152】
得られた保護膜付きシリコンウエハ10枚について目視で観察を行い、シリコンウエハの研磨面の研削痕が保護膜を通して見えるかどうかを確認した。全ての保護膜付きシリコンウエハにおいて研削痕が見えなかったものを研削痕隠蔽性良好(A)、1枚でも研削痕が見えたものを研削痕隠蔽性不良(B)と評価した。結果を表1に示す。
【0153】
〔試験例3〕<赤外線検査適性評価>
試験例2で得られた保護膜付きシリコンウエハの保護膜面側に、ダイシングテープ(リンテック社製,Adwill D−175)を貼付した。そして、当該保護膜付きシリコンウエハを3mm×3mmのサイズにダイシングし、ピックアップして、保護膜付きシリコンチップを得た。得られた保護膜付きシリコンチップの保護膜側を赤外線顕微鏡(オリンパス社製,BX−IR)で観察し、保護膜を通してシリコンチップの研削跡およびチッピングが観察できるかどうかを確認し、以下の基準で赤外線検査適性を評価した。結果を表1に示す。
A:研削跡が明確に観察できた。また、チップ側面からの距離が2μm以上5μm未満の大きさのチッピング(欠け)も明確に観察できた。
B:研削跡が明確に観察できた。しかしながら、チップ側面からの距離が2μm以上5μm未満の大きさのチッピングについては明確に観察できなかった。
D:研削跡が観察できず、チッピングも大きさによらず観察できなかった。
【0154】
【表1】
【0155】
表1から分かるように、波長550nmの光線透過率が20%以下であり、波長1600nmの光線透過率が72%以上である実施例の保護膜形成フィルムは、研削痕隠蔽性および赤外線検査適性の両者に優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明に係る保護膜形成フィルムおよび保護膜形成用(複合)シートは、半導体ウエハから、保護膜を有するチップを製造するのに好適に用いられる。また、本発明に係る検査方法は、保護膜を有するチップにおけるクラック等を検査するのに好適である。
【符号の説明】
【0157】
1…保護膜形成フィルム
2…保護膜形成用シート
21…剥離シート
3,3A…保護膜形成用複合シート
4…粘着シート
41…基材
42…粘着剤層
5…治具用粘着剤層
6…半導体ウエハ
7…リングフレーム
図1
図2
図3
図4