特許第6604773号(P6604773)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6604773
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】建物の建具枠取付構造
(51)【国際特許分類】
   E06B 1/62 20060101AFI20191031BHJP
   E06B 1/56 20060101ALI20191031BHJP
   E04B 1/68 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   E06B1/62 Z
   E06B1/56 Z
   E04B1/68 Z
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-157984(P2015-157984)
(22)【出願日】2015年8月10日
(65)【公開番号】特開2017-36587(P2017-36587A)
(43)【公開日】2017年2月16日
【審査請求日】2018年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】一志 将人
【審査官】 秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−196620(JP,A)
【文献】 特開2012−202164(JP,A)
【文献】 特開平9−184366(JP,A)
【文献】 特開2014−196619(JP,A)
【文献】 特開2008−121381(JP,A)
【文献】 実開昭60−26586(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/56−1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物外壁に形成された出入口用の開口部に建具枠が取り付けられる建物の建具枠取付構造であって、
前記建物外壁は、外壁面材及び外壁フレームを有してなる複数の外壁部材と、前記外壁部材の屋内側に設けられる内壁部材とを備え、隣合う前記外壁部材においては前記外壁フレーム同士が連結されており、
前記開口部に隣接する前記外壁部材の前記外壁フレームには、前記建具枠の取り付け用下地となる下地フレームが固定され、その下地フレームの屋外側において前記外壁面材に横並びとなる位置に前記建具枠が設けられており、
前記下地フレームにおいて屋内側に面する屋内側面は、前記外壁フレームの屋内側面に対して壁厚み方向に同じ位置に在るのに対し、屋外側に面し前記建具枠の取付面となる屋外側面は、前記外壁フレームの屋外側面に対して屋内側にずれており、前記外壁面材と前記建具枠との間の目地にガスケットが取り付けられており、
前記建具枠は、前記外壁面材の端面に対向しその端面との間に前記目地を形成する側面部を有しており、
前記側面部が、前記建物外壁の面内方向において前記外壁面材の端面と前記外壁フレームとにそれぞれ対向するようにして、前記建具枠が前記下地フレームに対して固定されており、
前記建具枠は、前記外壁フレームと前記下地フレームとの接合の境界部付近において前記下地フレームに対する止水を行う止水部を有しており、
前記止水部は、前記側面部よりも前記外壁フレームの側に突出する突出部に設けられており、
前記建具枠において、前記側面部は前記外壁フレームに対して離間しているのに対し、前記突出部は前記外壁フレームに対して当接していることを特徴とする建物の建具枠取付構造。
【請求項2】
建物外壁に形成された出入口用の開口部に建具枠が取り付けられる建物の建具枠取付構造であって、
前記建物外壁は、外壁面材及び外壁フレームを有してなる複数の外壁部材と、前記外壁部材の屋内側に設けられる内壁部材とを備え、隣合う前記外壁部材においては前記外壁フレーム同士が連結されており、
前記開口部に隣接する前記外壁部材の前記外壁フレームには、前記建具枠の取り付け用下地となる下地フレームが固定され、その下地フレームの屋外側において前記外壁面材に横並びとなる位置に前記建具枠が設けられており、
前記下地フレームにおいて屋内側に面する屋内側面は、前記外壁フレームの屋内側面に対して壁厚み方向に同じ位置に在るのに対し、屋外側に面し前記建具枠の取付面となる屋外側面は、前記外壁フレームの屋外側面に対して屋内側にずれており、前記外壁面材と前記建具枠との間の目地にガスケットが取り付けられており、
前記建具枠は、前記外壁面材の端面に対向しその端面との間に前記目地を形成する側面部を有しており、
前記側面部が、前記建物外壁の面内方向において前記外壁面材の端面と前記外壁フレームとにそれぞれ対向するようにして、前記建具枠が前記下地フレームに対して固定されており、
前記建具枠は、前記外壁フレームと前記下地フレームとの接合の境界部付近において前記下地フレームに対する止水を行う止水部を有しており、
前記止水部は、前記側面部よりも前記外壁フレームの側に突出する突出部に設けられており、
前記建具枠は、戸部材の周端面に対向する枠本体と、その枠本体を挟んで前記戸部材の反対側に設けられる目板部材とを有しており、
前記枠本体は、前記目板部材の屋内側において前記下地フレームに重なる延出部を有し、
前記枠本体に対して前記目板部材が一体化されており、前記延出部の先端部が前記突出部として、前記目板部材により形成される前記側面部よりも前記外壁フレームの側に突出していることを特徴とする建物の建具枠取付構造。
【請求項3】
前記建具枠は、戸部材の周端面に対向する枠本体と、その枠本体を挟んで前記戸部材の反対側に設けられる目板部材とを有しており、
前記枠本体は、前記目板部材の屋内側において前記下地フレームに重なる延出部を有し、
前記枠本体に対して前記目板部材が一体化されており、前記延出部の先端部が前記突出部として、前記目板部材により形成される前記側面部よりも前記外壁フレームの側に突出していることを特徴とする請求項に記載の建物の建具枠取付構造。
【請求項4】
前記外壁フレーム及び前記下地フレームはそれぞれ溝形鋼よりなり、それら各フレームのウェブ同士を接合させて一体に結合されており、
前記下地フレームとして、ウェブ幅が前記外壁フレームのウェブ幅よりも小さいものを用いていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の建物の建具枠取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の建具枠取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば建物の出入口である玄関の構造として、建物外壁に開口部を設け、その開口部に玄関用建具枠としてのドア枠と戸部材としてのドア本体とを取り付ける構成が知られている。また、建具枠の取付構造として具体的には、外壁面材を支持する外壁フレームに対して建具枠の取り付け用下地となる下地フレームを固定し、その下地フレームの屋外側に建具枠を取り付ける構成が知られている。外壁フレームに対して下地フレームを固定することで、内壁部材の取り付けのための納まりを簡易化できる。そして、外壁面材と建具枠との間に形成された目地には湿式のシール材が充填され、そのシール材により当該目地が止水されるようになっている。
【0003】
例えば特許文献1には、建物の躯体に対してドアフレームを取り付ける構成として、建物躯体に取り付けられるフレーム体と、そのフレーム体に取り付けられるドア枠体とを有する構成とし、そのドア枠体内に開閉自在なドア本体が納められる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5419790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般に、建物外壁において隣合う外壁面材同士により形成される目地では、定形シール材であるガスケットが止水手段として用いられるのに対し、ドア枠周りにおいて外壁面材との間に形成される目地では、湿式のシール材が止水手段として用いられる。これは、ドア枠周りにおいてはドア枠の形状に依存して目地空間が形成されることから、定形シール材の設置が困難になるためであると考えられる。また、ドア枠において目地空間内に突出する突出部が存在していると、その突出部により定形シール材が押しつぶされ、それに起因して定形シール材が破損することが懸念される。
【0006】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、構成の簡易化を図りつつも、建具枠周りにおける外壁面材との間の目地において高い止水性能を確保することができる建物の建具枠取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて作用、効果等を示しつつ説明する。なお以下においては、理解の容易のため、発明の実施の形態において対応する構成の符号を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0008】
第1の発明は、建物外壁(11)に形成された出入口用の開口部(12)に建具枠(14)が取り付けられる建物(10)の建具枠取付構造であって、
前記建物外壁は、外壁面材(22)及び外壁フレーム(23)を有してなる複数の外壁部材(21)と、前記外壁部材の屋内側に設けられる内壁部材(24)とを備え、隣合う前記外壁部材においては前記外壁フレーム同士が連結されており、
前記開口部に隣接する前記外壁部材の前記外壁フレームには、前記建具枠の取り付け用下地となる下地フレーム(31)が固定され、その下地フレームの屋外側において前記外壁面材に横並びとなる位置に前記建具枠が設けられており、
前記下地フレームにおいて屋内側に面する屋内側面は、前記外壁フレームの屋内側面に対して壁厚み方向に同じ位置に在るのに対し、屋外側に面し前記建具枠の取付面となる屋外側面は、前記外壁フレームの屋外側面に対して屋内側にずれており、前記外壁面材と前記建具枠との間の目地にガスケット(27)が取り付けられていることを特徴とする。
【0009】
建物外壁の開口部に建具枠が取り付けられる場合、構成の簡素化を図る上では、隣合う外壁部材で外壁フレーム同士が固定されるのと同様に、外壁フレームと下地フレームとが固定される構成であることが望ましい。この場合、下地フレームの屋内側面と外壁フレームの屋内側面とが壁厚み方向に同じ位置に在ることで、外壁部材の屋内側エリアから建具枠の屋内側エリアまでにおいてフレームの同一面を基準にして内壁部材を設けることができ、開口部付近の内壁部材の取り付けが容易となる。
【0010】
また、建具枠周りの止水構造に関しては、外壁部材の外壁面材と建具枠とが横並びとなり、それら両者の間に形成される目地にガスケット(定形止水部材)が設けられる。この場合、建具枠の形状や位置に依存して、ガスケットに対して偏った押しつけが生じ、ガスケットに破損等の不都合が生じることが懸念される。
【0011】
この点、本発明では、下地フレームにおいて屋外側に面し建具枠の取付面となる屋外側面が、外壁フレームの屋外側面に対して屋内側にずれているため、建具枠において形状等の影響を受けにくい部位で目地が形成されることになる。そのため、ガスケットに対する偏った押しつけ等が生じることが抑制でき、外壁面材と建具枠との間の目地において適切にガスケットを取り付けることができる。以上により、構成の簡易化を図りつつも、建具枠周りにおける外壁面材との間の目地において高い止水性能を確保することができる。
【0012】
第2の発明は、前記建具枠は、前記外壁面材の端面に対向しその端面との間に前記目地を形成する側面部を有しており、前記側面部が、前記建物外壁の面内方向において前記外壁面材の端面と前記外壁フレームとにそれぞれ対向するようにして、前記建具枠が前記下地フレームに対して固定されていることを特徴とする。
【0013】
上記構成では、建具枠の側面部が、建物外壁の面内方向において外壁面材の端面だけでなく外壁フレームにも対向している。こうした構成を採用することで、建具枠の側面部において隅角部でなく平坦な中間部分により目地が形成される。したがって、外壁面材の端面と建具枠の側面部との二面によりガスケットが適正な接触状態で挟持され、やはり外壁面材と建具枠との間の目地において適切にガスケットを取り付けることができる。
【0014】
第3の発明は、前記建具枠は、前記外壁フレームと前記下地フレームとの接合の境界部付近において前記下地フレームに対する止水を行う止水部(49)を有しており、前記止水部は、前記側面部よりも前記外壁フレームの側に突出する突出部(41c)に設けられていることを特徴とする。
【0015】
上記構成では、建具枠に、外壁フレームと下地フレームとの接合の境界部付近において下地フレームに対する止水を行う止水部が設けられているため、建具枠と下地フレームとの間からの雨水等の浸入を抑制できる。この場合、外壁面材と建具枠との間の目地のガスケットを一次シール、建具枠において下地フレームに対する止水部を二次シールとすることで、建具枠周りにおいて適切な止水構造を実現できる。
【0016】
ここで、建具枠において側面部よりも外壁フレームの側に突出する突出部に止水部が設けられている構成であると、外壁フレームと下地フレームとの接合の境界部付近を止水部により止水する上で好ましい構成となる。またこの場合、建具枠の止水部が目地側に突出して設けられる構成では、突出部分(止水部)と目地内のガスケットとの干渉が懸念されるが、上記のとおり下地フレームの屋外側面が外壁フレームの屋外側面に対して屋内側にずれているため、突出部分(止水部)とガスケットとが干渉せず、干渉に起因するガスケットの破損等を抑制できる。
【0017】
第4の発明は、前記建具枠において、前記側面部は前記外壁フレームに対して離間しているのに対し、前記突出部は前記外壁フレームに対して当接していることを特徴とする。
【0018】
建具枠においてその側面部が外壁フレームに対して離間しているため、外壁面材と建具枠の側面部との間に目地を形成する上で、所望とする目地寸法の確保が容易となる。また、突出部が外壁フレームに対して当接しているため、止水部の位置が極力、外壁フレームの側に寄り、外壁フレームと下地フレームとの境界部における止水性能を確保する上で有利となる。
【0019】
第5の発明は、前記建具枠は、戸部材(15)の周端面に対向する枠本体(41)と、その枠本体を挟んで前記戸部材の反対側に設けられる目板部材(42,43)とを有しており、前記枠本体は、前記目板部材の屋内側において前記下地フレームに重なる延出部(41c)を有し、前記枠本体に対して前記目板部材が一体化されており、前記延出部の先端部が前記突出部として、前記目板部材により形成される前記側面部よりも前記外壁フレームの側に突出していることを特徴とする。
【0020】
上記構成では、建具枠が、建具の周端面に対向する枠本体と、その枠本体を挟んで戸部材の反対側に設けられる目板部材とを含む構成となっており、さらに枠本体が延出部を有している。この場合、延出部が、目板部材の屋内側において下地フレームに重なるようにして延びているため、下地フレームに対する延出部の固定(ひいては止水部の固定)を容易に実施できる。また、枠本体に対して目板部材が一体化された状態で、延出部の先端部が突出部となり、目板部材の側面部よりも外壁フレームの側に突出するため、外壁フレームと下地フレームとの接合の境界部付近において好適な止水を実現できる。
【0021】
第6の発明は、前記外壁フレーム及び前記下地フレームはそれぞれ溝形鋼よりなり、それら各フレームのウェブ同士を接合させて一体に結合されており、前記下地フレームとして、ウェブ幅が前記外壁フレームのウェブ幅よりも小さいものを用いていることを特徴とする。
【0022】
上記構成では、下地フレームのウェブ幅が外壁フレームのウェブ幅よりも小さいため、下地フレームの屋内側面が、外壁フレームの屋内側面に対して壁厚み方向に同じ位置に在り、かつ、下地フレームの屋外側面が、外壁フレームの屋外側面に対して屋内側にずれているといった構成を簡易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】玄関ドア周辺の構成を示す横断面図。
図2】外壁の基本構造を示す横断面図。
図3】外壁の開口部付近の構成を示す横断面図。
図4】ドア枠を分解して示す横断面図。
図5】(a)は外壁の開口部付近における比較例の構成を示す横断面図、(b)はドア枠周りの目地の構成を示す横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、建物としてユニット式建物について具体化しており、そのユニット式建物は、梁及び柱よりなる複数の建物ユニットを互いに連結することで構成されている。図1は、玄関ドア周辺の構成を示す横断面図である。
【0025】
図1に示すように、住宅等の建物10は、屋内と屋外とを仕切る外壁11を備えている。外壁11には、玄関を形成するための開口部12が設けられている。開口部12の周縁部には、建具枠としてのドア枠14が取り付けられており、ドア枠14の内側が人の出入りを可能とする玄関口となっている。ドア枠14は門形状をなしており、左右一対の縦枠部とその上端部を繋ぐ上枠部とを備えて構成されている。ドア枠14には、戸部材としてのドア本体15が開閉可能な状態で配設されている。
【0026】
外壁11は、複数の外壁部材とその屋内側の内壁部材とを用いて構成されており、図2に外壁11の基本構造を示す。図2に示すように、外壁11は、外壁部材としての外壁パネル21と、その屋内側の内壁部材としての内壁パネル24とを有している。
【0027】
外壁パネル21は、窯業系サイディングボード等よりなる外壁面材22と、その背面側に設けられ、軽量形鋼(溝形鋼)よりなる複数のフレーム材にて形成された外壁フレーム23とを有している。周知構成のため、図示による説明は割愛するが、外壁フレーム23は、外壁面材22の幅方向両端部に沿って設けられる縦フレーム部と、外壁面材22の上下方向両端部に沿って設けられる横フレーム部と、それら各フレーム部の内側に所定間隔で設けられる中間フレーム部とを有しており、これらが格子状に連結されている。図2においては、外壁フレーム23の断面として縦フレーム部が示されている。
【0028】
隣合う外壁パネル21は、各外壁パネル21の外壁フレーム23同士が接合され、ボルト等の締結具(図示略)を用いて互いに締結されている。外壁パネル21は、外壁フレーム23の上端部及び下端部が建物ユニットの天井大梁及び床大梁にそれぞれ連結されることで、建物ユニットに対して固定されている。隣合う外壁パネル21において各外壁面材22の間には目地が形成されており、その目地には定形止水部材としてのガスケット27が取り付けられている。
【0029】
また、内壁パネル24は、石膏ボード等よりなる内壁面材25と、その背面側(屋外側)の内壁フレーム26とを有している。内壁フレーム26は、木製の角材からなる複数のフレーム材が矩形枠状に連結されることにより構成されている。図2においては、内壁フレーム26の断面として縦フレーム部が示されている。
【0030】
そして、外壁パネル21に対する内壁パネル24の取り付けの構成として、外壁フレーム23の屋内側面、詳しくは隣合う外壁パネル21の外壁フレーム23同士の接合部の屋内側面には複数の木レンガ28が固定されるとともに、その木レンガ28に対して内壁フレーム26が固定されている。なお、木レンガ28は、略直方体形状の木材からなる外壁下地材である。
【0031】
その他、内壁面材25の背面側には、内壁フレーム26の枠内部に組み込まれるようにして、グラスウール等よりなる壁内断熱材29が取り付けられている。
【0032】
次に、外壁11の開口部付近における納まりを説明する。図3は、外壁11の開口部付近の構成を示す横断面図である。図3では、図の左部分に図2で説明した外壁パネル21と内壁パネル24とが示されており、その右側にドア枠14とその周辺構成とが示されている。
【0033】
外壁11において最も開口部寄りの外壁フレーム23、すなわち開口部12に隣接する外壁パネル21の外壁フレーム23には、ドア枠14の取り付け用下地となる下地フレーム31が連結されている。下地フレーム31は、外壁フレーム23と同様に軽量形鋼(溝形鋼)よりなり、外壁フレーム23同士の連結構造と同様に、下地フレーム31及び外壁フレーム23のウェブ同士が接合された状態で、これら両フレーム23,31がボルト等の締結具32を用いて互いに締結されている。
【0034】
下地フレーム31の溝部内には、この下地フレーム31に対してドア枠14を固定するための支持金具33が固定されている。支持金具33は、下地フレーム31に対して溶接等により固定されており、下地フレーム31を構成する溝形鋼の開口部側に、ドア枠支持のための支持面を形成するものとなっている。
【0035】
外壁フレーム23と下地フレーム31とは屋内側面が面一になっている。つまり、外壁フレーム23と下地フレーム31とは、屋内側フランジが壁厚み方向で同一位置にて横並びとなっている。そして、その屋内側面には、外壁フレーム23同士の接合部と同様に、複数の木レンガ34が固定されている。また、その木レンガ34に対して、内壁パネル24の延長部分24aが固定されている。つまり、外壁開口部の周縁部には、外壁パネル21よりなる外壁端部よりも横方向に延長されて内壁パネル24が設けられており、木レンガ34に対して延長部分24aが固定されている。
【0036】
下地フレーム31としては、外壁フレーム23に比べてウェブ幅が小さい溝形鋼が用いられている。これにより、下地フレーム31の屋内側面は、外壁フレーム23の屋内側面に対して壁厚み方向に同じ位置に在るのに対し、下地フレーム31の屋外側面は、外壁フレーム23の屋外側面に対して屋内側にずれる構成となっている。
【0037】
内壁パネル24の開口側端部には、玄関口を囲んで設けられる化粧枠35が設けられている。また、木レンガ34と化粧枠35との間には、ドア枠周辺の断熱性を確保するための断熱材36が設けられている。
【0038】
ドア枠14は、下地フレーム31の屋外側において外壁面材22に横並びとなる位置に設けられており、以下、そのドア枠14の構成について説明する。なお、図4は、ドア枠14を分解して示す横断面図である。ここでは図3及び図4を参照しつつドア枠14の構成を説明する。
【0039】
ドア枠14は、大別して縦枠本体41と縦枠目板42と目板受け43とを有しており、これら各部材が互いに結合された一体物が屋外側から下地フレーム31に取り付けられている。縦枠本体41は、ドア本体15の隣位置においてこのドア本体15の周囲端面に対向するように設けられている。縦枠目板42は、縦枠本体41と外壁面材22との間において屋外側の仕上げ面を形成すべく設けられている。目板受け43は、縦枠本体41に対して縦枠目板42を一体化した状態で、その縦枠目板42を支持すべく設けられている。縦枠本体41、縦枠目板42及び目板受け43は、いずれも上下方向に延びる長尺状をなし、アルミニウム等の金属材料により形成されている。ただし、これら各部材が、金属材料以外に、合成樹脂材料により形成されていてもよい。なお、縦枠目板42と目板受け43とが目板部材に相当する。
【0040】
縦枠本体41のより詳細な構成を説明する。縦枠本体41において、ドア本体15の周囲端面に対向する部位は、中空柱状をなし横断面が略長方形状である対向部41aとなっている。この場合、対向部41aにおいて屋内側の側面には、断面L字状のブラケット44がボルト等の締結具45により固定されているとともに、そのブラケット44が、下地フレーム31に一体に設けられた支持金具33に対してビス等の固定具46により固定されている。
【0041】
また、縦枠本体41は、対向部41a以外に、その対向部41aから屋内側に延びる屋内側延出部41bと、外壁パネル21側に延びる外壁側延出部41cとを有している。屋内側延出部41bは、ドア本体15の屋内側に設けられるドア用ウエザストリップ47を支持する部位である。
【0042】
外壁側延出部41cは目板受け43が結合される部位である。また、外壁側延出部41cは、目板受け43の屋内側において下地フレーム31の屋外側フランジに重なるようにして延びる部位であり、言い換えれば、目板受け43と下地フレーム31との間においてこれら両者に重なる部位である。外壁側延出部41cに対して目板受け43が結合された状態では、外壁側延出部41cの側に設けられた被係合部41dに、目板受け43の側に設けられた係合部43aが係合し、これにより両部材の結合状態が保持されるようになっている。また、外壁側延出部41cに対して目板受け43が結合された状態ではそれらが壁厚み方向に重なり合い、その状態で、外壁側延出部41cと目板受け43とが下地フレーム31に対してビス48により固定されている。
【0043】
また、外壁側延出部41cの先端部には、屋内側、すなわち下地フレーム31に対向する側に収容部41eが形成されており、その収容部41eに長尺板状のガスケット49が収容されている。この場合、下地フレーム31に対して縦枠本体41が取り付けられた状態では、ガスケット49により、下地フレーム31の屋外側フランジ面に対するシール(止水)が施されるようになっている。
【0044】
縦枠本体41に対して目板受け43を一体化した状態では、外壁側延出部41cの先端部が目板受け43の端面(側面部に相当)よりも突出し、その先端部が外壁フレーム23のウェブ外面に当接している。これにより、ドア枠14においてより外壁パネル21側、すなわち外壁フレーム23と下地フレーム31との接合の境界部付近での止水が可能となっている。この場合、外壁面材22とドア枠14との間の目地のガスケット27を一次シール、外壁側延出部41cのガスケット49を二次シールとすることで、ドア枠14周りにおいて止水強化が図られている。
【0045】
なお、外壁フレーム23の屋外側フランジから下地フレーム31の屋外側フランジにかけては連続的に止水シート50が貼着されている。この場合、外壁フレーム23の屋外側フランジの側では、外壁フレーム23と外壁面材22との間に止水シート50が挟まれ、下地フレーム31の屋外側フランジの側では、下地フレーム31と外壁側延出部41cとの間に止水シート50が挟まれている。
【0046】
そして、目板受け43に対して縦枠目板42が取り付けられている。この場合、目板受け43に対して縦枠目板42が結合された状態では、目板受け43の側に設けられた被係合部43bに、縦枠目板42の側に設けられた係合部42aが係合し、これにより両部材の結合状態が保持されるようになっている。また、目板受け43に対して縦枠目板42が結合された状態では、縦枠本体41の側に設けられた突起部41fに、縦枠目板42の側に設けられた引っ掛け部42bが引っ掛けられ、これにより縦枠本体41に対する縦枠目板42の一体化が図られている。縦枠目板42と目板受け43とが一体化された状態では、これら各部材の外壁パネル21側の側面(図の左側面)により略面一の平坦面が形成されている。
【0047】
また、外壁11にドア枠14を取り付けた状態では、そのドア枠14の周りの目地の止水、すなわち外壁面材22の玄関側端面とドア枠14の側面との間の目地の止水を図る必要があり、本実施形態では、当該目地において、外壁面材22同士の目地と同様に、ガスケット27を用いた止水構造を用いることとしている。つまり、一般には、玄関ドア周りの目地においては、外壁面材22同士の目地とは異なり、コーキング材等を用いた湿式シールが設けられることがあるが、本実施形態では、この湿式シールに代えて乾式シールによる止水を行うこととしている。なお、外壁面材22同士の目地に設けられるガスケット27と、ドア枠14周りの目地に設けられるガスケット27とは断面形状を含めて同じ部材であってもよいし、異なる部材であってもよい。
【0048】
以下、ドア枠14周りの止水構造について詳しく説明する。なおここでは、止水構造の比較例として図5の構成を先に説明し、その後に本実施形態の構成を説明する。図5において(a)は外壁11の開口部付近における比較例の構成を示す横断面図、(b)はドア枠周りの目地の構成を示す横断面図である。
【0049】
図5(a)では、図3の構成と比較して下地フレーム31の構成が相違しており、図3の構成では、下地フレーム31として、外壁フレーム23よりも小さいサイズの溝形鋼(すなわちウェブ幅の小さい溝形鋼)が用いられているのに対し、図5(a)の構成では、下地フレーム31Aとして、外壁フレーム23と同じサイズの溝形鋼が用いられている。この場合、外壁フレーム23と下地フレーム31Aとは、屋外側フランジが壁厚み方向で同一位置にて横並びとなっており、その状態で、外壁面材22の玄関側端面とドア枠14の側面との間の目地にガスケット27Aが設けられている。
【0050】
ここで、外壁面材22の玄関側端面とドア枠14の側面との間には、ドア枠14の形状に依存して目地空間(すなわちガスケット27Aの収容空間)が形成されるようになっており、図5の構成では、上述したとおり外壁側延出部41cの先端部が目板受け43の端面よりも突出していることから、外壁側延出部41cの先端部により目地空間の一部が狭められている(図5(b)参照)。つまり、外壁面材22の玄関側端面とドア枠14の側面との間には、所定の幅寸法(例えば10mm)の目地が形成されているが、外壁側延出部41cの先端部のはみ出しにより局部的に目地幅が狭くなっている。
【0051】
したがって、図5の構成では、外壁面材22の玄関側端面とドア枠14の側面との間の目地空間にガスケット27Aを収容した状態で、そのガスケット27Aの一部が外壁側延出部41cの先端部により押しつぶされる。つまり、ガスケット27と外壁側延出部41cとの干渉が生じている。これにより、ガスケット27Aに破損が生じ、止水性能が低下することが懸念される。
【0052】
これに対して本実施形態の構成では、図3に示すように、下地フレーム31として、外壁フレーム23よりも小さいサイズの溝形鋼(すなわちウェブ幅の小さい溝形鋼)が用いられているため、外壁側延出部41cの先端部がはみ出していてもその構成に関係なくガスケット27が好適に設けられている。
【0053】
つまり、図3の構成では、外壁フレーム23の屋外側フランジに対して、下地フレーム31の屋外側フランジが屋内側にずれており、これにより、外壁フレーム23のウェブに対してドア枠14(詳しくは目板受け43)が対向する構成となっている。そしてその状態で、外壁面材22の玄関側端面とドア枠14の側面との間の目地にガスケット27が設けられている。この場合、ガスケット27の収容部分には外壁側延出部41cの先端部が存在しなくなり、ガスケット27と外壁側延出部41cとの干渉が回避されている。
【0054】
外壁フレーム23のウェブ幅と下地フレーム31のウェブ幅との差、すなわち外壁フレーム23に対する下地フレーム31の屋外側のセットバック量は、例えば5〜20mmであるとよい。外壁フレーム23と下地フレーム31とのウェブ幅の差に応じて、外壁面材22に対するドア枠14の屋外突出量が変わる。この場合、下地フレーム31のウェブ幅を外壁フレーム23のウェブ幅よりも小さくした分、ドア枠14の屋外突出量が減じられている。
【0055】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0056】
外壁11におけるドア枠14の取付構造において、下地フレーム31の屋内側面と外壁フレーム23の屋内側面とが壁厚み方向に同じ位置に在ることで、外壁パネル21の屋内側エリアからドア枠14の屋内側エリアまでにおいて各フレーム23,31の同一面を基準にして内壁パネル24を設けることができ、開口部付近の内壁パネル24の取り付けが容易となる。
【0057】
また、ドア枠14周りの止水構造に関しては、下地フレーム31の屋外側面が、外壁フレーム23の屋外側面に対して屋内側にずれているため、ドア枠14において形状等の影響を受けにくい部位で目地が形成されることになる。そのため、ガスケット27に対する偏った押しつけ等が生じることが抑制でき、外壁面材22とドア枠14との間の目地において適切にガスケット27を取り付けることができる。以上により、構成の簡易化を図りつつも、ドア枠14周りにおける外壁面材22との間の目地において高い止水性能を確保することができる。
【0058】
また、下地フレーム31の屋外側面が、外壁フレーム23の屋外側面に対して屋内側にずれているため、下地フレーム31に対してドア枠14を取り付けた状態で、ドア枠14の屋外突出量が減じられる。したがって、例えばユニット製造工場において建物ユニットにドア枠14を先付けする場合において、建物ユニットの輸送時におけるドア枠14の損傷を抑制できる等の効果が得られる。
【0059】
ドア枠14を、外壁面材22の端面に対向する側の側面部(詳しくは、縦枠目板42及び目板受け43の側面部)が、外壁11の面内方向において外壁面材22の端面と外壁フレーム23とにそれぞれ対向するようにして下地フレーム31に対して固定する構成とした。これにより、ドア枠14の側面部においては隅角部でなく中間部分により目地が形成される。したがって、外壁面材22の端面とドア枠14の側面部との二面によりガスケット27が適正な接触状態で挟持され、やはり外壁面材22とドア枠14との間の目地において適切にガスケット27を取り付けることができる。
【0060】
ドア枠14に、外壁フレーム23と下地フレーム31との接合の境界部付近において下地フレーム31に対する止水を行うガスケット49を設けたため、ドア枠14と下地フレーム31との間からの雨水等の浸入を抑制できる。特に、ドア枠14において側面部よりも外壁フレーム23の側に突出する突出部にガスケット49を設けたため、外壁フレーム23と下地フレーム31との接合の境界部付近において止水の一層の適正化を図ることができる。
【0061】
ここで、ガスケット49を有する外壁側延出部41cの一部が目地側に突出する構成では、その突出部分と目地内のガスケット27との干渉が懸念されるが、上記のとおり下地フレーム31の屋外側面が外壁フレーム23の屋外側面に対して屋内側にずれているため、突出部分と目地内のガスケット27とが干渉せず、干渉に起因するガスケット27の破損等を抑制できる。
【0062】
ドア枠14において側面部が外壁フレーム23に対して離間しているため、外壁面材22とドア枠14の側面部との間に目地を形成する上で、所望とする目地寸法の確保が容易となる。また、外壁側延出部41cの先端部(突出部)が外壁フレーム23に対して当接しているため、ガスケット49の位置が極力、外壁フレーム23の側に寄り、外壁フレーム23と下地フレーム31との境界部における止水性能を確保する上で有利となる。
【0063】
ドア枠14の縦枠本体41において、外壁側延出部41cが、目板受け43の屋内側において下地フレーム31に重なるようにして延びているため、下地フレーム31に対する外壁側延出部41cの固定(ひいてはガスケット49の固定)を容易に実施できる。また、縦枠本体41に対して目板受け43が一体化された状態で、外壁側延出部41cの先端部が突出部となり、目板受け43の側面部よりも外壁フレーム23の側に突出するため、外壁フレーム23と下地フレーム31との接合の境界部付近において好適な止水を実現できる。
【0064】
下地フレーム31として、ウェブ幅が外壁フレーム23のウェブ幅よりも小さい溝形鋼を用いる構成にしたため、下地フレーム31の屋内側面が、外壁フレーム23の屋内側面に対して壁厚み方向に同じ位置に在り、かつ、下地フレーム31の屋外側面が、外壁フレーム23の屋外側面に対して屋内側にずれているといった構成を簡易に実現できる。
【0065】
[他の実施形態]
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
【0066】
・上記実施形態では、外壁面材22の端面と目板受け43の側面部との二面によりガスケット27を挟持する構成としたが、これに代えて、外壁面材22の端面と縦枠目板42の側面部との二面によりガスケット27を挟持する構成としてもよい。また、縦枠目板42と目板受け43との2部材により目板部材を構成することに代えて、目板部材を1部材により構成することも可能である。
【0067】
・上記実施形態では、戸部材として開き戸であるドアを想定したが、これ以外に戸部材として引き戸を有する構成であってもよい。この場合、引き戸を保持する建具枠の取付構造として上記構成が採用される。
【0068】
・鋼材フレームを用いた構成に代えて、木フレームを用いた構成であってもよい。この場合、外壁フレーム23及び下地フレーム31の少なくともいずれかが木製の角材により構成されているとよい。
【0069】
・上記実施形態では、玄関用の建具枠を想定したが、これ以外に、例えば勝手口用の建具枠について具体化してもよい。その他、ユニット式建物以外の建物での具体化も可能である。
【符号の説明】
【0070】
10…建物、11…外壁、12…開口部、14…ドア枠(建具枠)、15…ドア本体(戸部材)、21…外壁パネル(外壁部材)、22…外壁面材、23…外壁フレーム、24…内壁パネル(内壁部材)、27…ガスケット、31…下地フレーム、41…縦枠本体(枠本体)、42…縦枠目板(目板部材)、43…目板受け(目板部材)、49…ガスケット。
図1
図2
図3
図4
図5