特許第6604795号(P6604795)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6604795
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】離型剤塗布装置
(51)【国際特許分類】
   B22C 23/02 20060101AFI20191031BHJP
   B22D 17/32 20060101ALI20191031BHJP
   B22C 9/06 20060101ALI20191031BHJP
   B29C 33/58 20060101ALI20191031BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20191031BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20191031BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   B22C23/02 E
   B22D17/32 Z
   B22C9/06 D
   B29C33/58
   B05C5/00 101
   B05C11/10
   B05C11/00
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-188260(P2015-188260)
(22)【出願日】2015年9月25日
(65)【公開番号】特開2017-60974(P2017-60974A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2018年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】樋口 悠介
【審査官】 祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−031425(JP,A)
【文献】 特開2013−212526(JP,A)
【文献】 特開2003−144877(JP,A)
【文献】 特開2011−079017(JP,A)
【文献】 特開2005−271536(JP,A)
【文献】 特開平07−223061(JP,A)
【文献】 特開平06−126383(JP,A)
【文献】 特開平09−182947(JP,A)
【文献】 特開2011−067837(JP,A)
【文献】 特開平06−315749(JP,A)
【文献】 特開2007−222890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型の成形面に離型剤を塗布する離型剤塗布装置において、
前記金型の成形面を複数の領域に分割した各セクション毎に温度を計測する金型温度計測部と、
前記金型温度計測部で計測したセクション毎の温度に応じて離型剤の濃度をセクション毎に設定する離型剤濃度設定部と、
前記離型剤濃度設定部でセクション毎に設定された濃度となるように離型剤の濃度を調整する離型剤濃度調整部と、
前記離型剤濃度調整部でセクション毎に調整された濃度の離型剤を、各セクションの位置にスプレーユニットを移動させて噴霧させる離型剤塗布制御部と
を備えることを特徴とする離型剤塗布装置。
【請求項2】
金型の成形面に離型剤を塗布する離型剤塗布装置において、
前記金型の成形面を複数の領域に分割した各セクション毎に温度を計測する金型温度計測部と、
前記金型温度計測部で計測したセクション毎の温度に応じて離型剤の濃度をセクション毎に設定する離型剤濃度設定部と、
前記離型剤濃度設定部でセクション毎に設定された濃度の離型剤を、各セクションの位置にスプレーユニットを移動させて噴霧させる離型剤塗布制御部と
を備え、
前記離型剤濃度設定部は、前記金型温度計測部で計測したセクションの温度が基準温度より高いときには離型剤の濃度を標準濃度よりも高濃度に設定し、基準温度より低いときには離型剤の濃度を標準濃度よりも低濃度に設定する
ことを特徴とする離型剤塗布装置。
【請求項3】
前記離型剤濃度調整部は、規定濃度の離型剤と、前記規定濃度の離型剤を希釈する希釈液とを、それぞれの流量が前記離型剤濃度設定部で設定された濃度となるように調整することを特徴とする請求項1記載の離型剤塗布装置。
【請求項4】
更に、前記離型剤濃度設定部で設定された濃度となるように離型剤の濃度を調整する離型剤濃度調整部を備え、
前記離型剤濃度調整部は、規定濃度の離型剤と、前記規定濃度の離型剤を希釈する希釈液とを、それぞれの流量が前記離型剤濃度設定部で設定された濃度となるように調整することを特徴とする請求項2に記載の離型剤塗布装置。
【請求項5】
前記金型温度計測部は、前記金型の成形面の撮像画像に基づいて分割した各セクション毎に表面温度を計測することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の離型剤塗布装置。
【請求項6】
前記金型温度計測部は、赤外線カメラで各セクション毎の平均温度を計測するとともに成形面の形状データを取得し、
前記離型剤塗布制御部は、前記形状データに基づいて前記スプレーユニットの該当セクションへの移動速度又は接近位置を制御することを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の離型剤塗布装置。
【請求項7】
前記離型剤塗布制御部は、離型剤の塗布後に、基準温度より高い温度のセクションがある場合には標準濃度より高濃度の離型剤を再塗布し、基準温度より低い温度のセクションがある場合には標準濃度より低濃度の離型剤を再塗布することを特徴とする請求項1から請求項6の何れか一項に記載の離型剤塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型の成形面に離型剤を塗布する離型剤塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、アルミニウム合金等を鋳造するダイカスト鋳造機においては、金型の成形面に離型剤を塗布して、金型を冷却するとともに皮膜を形成するようにしている。これにより、溶融金属の焼付きやカジリを抑制することができ、また、成形品の離型抵抗を低減することができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、成形面の温度が予め設定された目標温度まで昇温した定常状態であるか、又は、目標温度まで昇温していない初期状態であるかを判断し、初期状態である場合には、外冷特性が低い油系離型剤を成形面に塗布し、定常状態である場合には、外冷特性が高い水溶性離型剤を成形面に塗布する離型剤塗布装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−79017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されるような従来の離型剤塗布装置では、成形面の温度に応じて、濃度一定の離型剤を成型面に塗布するようしている。しかしながら、成形面には、キャビティの形状やサイズ等によって部分的に温度の高い箇所と低い箇所が存在する。このため、温度が高い部分に低濃度の水溶性離型剤が塗布されると、ライデンフロスト現象が発生して離型膜が金型表面に生成され難くなり、焼付き・カジリに繋がる虞がある。逆に、温度が低い部分に高濃度の水溶性離型剤が塗布された場合には、金型に油分が過剰に付着し、製品品質の悪化を招いてしまう。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、金型成形面の複数の領域毎に、温度に応じた適正濃度の離型剤を塗布し、金型の焼付きやカジリを抑制するとともに、過剰な油分による製品品質の悪化を防止することのできる離型剤塗布装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様による離型剤塗布装置は、金型の成形面に離型剤を塗布する離型剤塗布装置において、前記金型の成形面を複数の領域に分割した各セクション毎に温度を計測する金型温度計測部と、前記金型温度計測部で計測したセクション毎の温度に応じて離型剤の濃度をセクション毎に設定する離型剤濃度設定部と、前記離型剤濃度設定部でセクション毎に設定された濃度となるように離型剤の濃度を調整する離型剤濃度調整部と、 前記離型剤濃度調整部でセクション毎に調整された濃度の離型剤を、各セクションの位置にスプレーユニットを移動させて噴霧させる離型剤塗布制御部とを備える。
本発明の第2の態様による離型剤塗布装置は、金型の成形面に離型剤を塗布する離型剤塗布装置において、前記金型の成形面を複数の領域に分割した各セクション毎に温度を計測する金型温度計測部と、前記金型温度計測部で計測したセクション毎の温度に応じて離型剤の濃度をセクション毎に設定する離型剤濃度設定部と、前記離型剤濃度設定部でセクション毎に設定された濃度の離型剤を、各セクションの位置にスプレーユニットを移動させて噴霧させる離型剤塗布制御部とを備え、前記離型剤濃度設定部は、前記金型温度計測部で計測したセクションの温度が基準温度より高いときには離型剤の濃度を標準濃度よりも高濃度に設定し、基準温度より低いときには離型剤の濃度を標準濃度よりも低濃度に設定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、金型成形面の温度が異なる領域毎に、温度に応じた適正濃度の離型剤を塗布することができ、金型の焼付きやカジリを抑制するとともに、過剰な油分による製品品質の悪化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】離型剤塗布装置の概略構成図
図2】スプレーユニットの内部構成を示す説明図
図3】金型温度と離型剤濃度との関係を示す説明図
図4】離型剤塗布制御のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1において、符号1は、ダイカストマシン等の金型2の固定型2a及び可動型2bの各成形面に向かって離型剤を噴射する離型剤塗布装置であり、金型の製品成形面温度に適した濃度の離型剤を噴霧する。この離型剤塗布装置1は、アーム先端に各成形面の表面温度を測定する温度測定ユニット4と成形面に向かって離型剤を噴射するスプレーユニット5とを装着したロボットアーム3と、ロボットアーム3を制御し、成形面の温度分布に基づいてスプレーユニット5を制御する制御装置50とを備えている。
【0011】
温度測定ユニット4は、例えば、物体から放射される赤外線(放射エネルギー)によって物体の温度を測定する放射温度計や、赤外線域の撮像感度を有する量子型赤外線撮像素子を用いた赤外線カメラ等を用いて構成される。この温度測定ユニット4は、ロボットアーム3のアーム先端に方向転換可能に取り付けられ、固定型2a及び可動型2bの成形面を複数の領域に分割した各セクション毎の温度分布を測定する。
【0012】
尚、温度測定ユニット4は、固定型2a及び可動型2bに対応した位置に複数設置するようにしても良い。
【0013】
スプレーユニット5は、固定型2a及び可動型2bの成形面に離型剤を局所的に噴射するノズル6を備え、小型で濃度変更の応答性が高いユニットとして形成されている。具体的には、図2に示すように、スプレーユニット5には、外部から設定量の規定濃度の離型剤と希釈用の希釈液とが供給され、規定濃度の離型剤と希釈液とを混合する混合器7が内蔵されている。離型剤は、例えば、シリコーンにワックスを加えて界面活性剤で水に希釈したものを用い、本実施の形態においては、スプレーユニット5に供給する規定濃度の離型剤として離型剤原液を用い、希釈液として水を供給する。
【0014】
従来、離型剤は、外部の希釈装置で設定濃度に希釈されてスプレーユニットに供給されるのが一般的であり、本実施の形態のように、セクションによって離型剤の濃度が異なる場合、単一の希釈装置では、濃度変更に迅速に対応することは困難である。これに対して、本実施の形態のスプレーユニット5には、設定量の離型剤原液と希釈液とが供給され、内部の混合器7で離型剤原液と希釈液とが混合されて設定濃度となる。そして、外部から供給される空気の圧力により、設定濃度の離型剤がノズル6から噴霧される。これにより、ユニットを小型化しながら、離型剤の濃度が変更された場合にも応答性良く噴霧することが可能となる。
【0015】
尚、後述するように、スプレーユニット5には、離型剤の原液に代えて、後述する標準濃度の離型剤を供給するようにしても良く、標準濃度の離型剤に所定量の希釈液(希釈水)を加えてミキシングすることで設定濃度にすることも可能である。
【0016】
スプレーユニット5から噴霧される離型剤の濃度は、制御装置50により、金型成形面のセクション毎に、そのセクションの温度に応じた濃度で個々に制御される。このため、制御装置50は、離型剤塗布制御に係る機能部として、金型温度計測部51、離型剤濃度設定部52、離型剤濃度調整部53、離型剤塗布制御部54を備えている。
【0017】
金型温度計測部51は、金型成形面を複数の領域に分割して各セクション毎の表面温度を計測して温度分布を取得する。本実施の形態においては、温度測定ユニット4に赤外線カメラを用い、光学的に取得した画像データに基づいて一定領域を複数のセクションに分割し、各セクション毎に、金型成形面から放射される熱線(赤外線)から成形面の平均温度を計測し、また成形面のキャビティの凹状態等の形状データを取得する。
【0018】
離型剤濃度設定部52は、金型温度計測部51で計測した金型成形面のセクション毎の温度(表面温度)に基づいて、最適な離型剤濃度をセクション毎に設定する。具体的には、離型剤に応じた金型の推奨温度、すなわち、離型剤の性状、成形品のサイズや形状、材質、金型の湯回り等に基づいて、標準の離型剤濃度で適正な離型膜を形成して焼き付きやカジリを防止することのできる適正な温度を基準温度とする。そして、セクションの温度が基準温度よりも高い高温時には、離型剤濃度を標準濃度よりも濃く設定し、基準温度よりも低い低温時には、離型剤濃度を標準濃度よりも薄く設定する。
【0019】
図3は、金型温度と離型剤濃度との関係を例示しており、この例では、基準温度To及び標準濃度Noを中心として、金型温度に対して離型剤濃度が比例的に変化する特性を有している。図3の関係をマップ化して金型温度から離型剤の濃度を設定するようにしても良いが、通常、マップの温度及び濃度の各軸はあまり細かくする必要はないため、マップを用いることなく、基準温度Toの上下でそれぞれ高濃度及び低濃度の1段階〜数段階の濃度を設定しておき、条件に応じて選択するようにしても良い。
【0020】
離型剤濃度調整部53は、離型剤濃度設定部52で設定された離型剤濃度となるよう、離型剤及び希釈液の量を調整する。本実施の形態においては、設定濃度となる離型剤原液と希釈水との比率を算出し、算出した比率の流量の離型剤原液及び希釈水を、図示しない定量ポンプ等を介してスプレーユニット5に供給する。この離型剤原液及び希釈水の流量は、ロボットアーム3を介したスプレーユニット5のセクション間の移動及びセクション毎の濃度に対応して連続的に調整される。
【0021】
尚、離型剤の原液を、金型の基準温度に対応する標準濃度の離型剤としても良く、設定濃度となる標準濃度の離型剤と希釈液との比率を算出してスプレーユニット5に供給するようにしても良い。
【0022】
離型剤塗布制御部54は、モータ等を介してロボットアーム3を駆動制御するロボット制御部60に指示してスプレーユニット5の位置を制御する。また、離型剤塗布制御部54は、定量ポンプやバルブ類(開閉弁、圧力調整弁等)等からなる流量調整部70を介して、セクション毎に濃度調整された離型剤の金型成形面への塗布を制御する。
【0023】
具体的には、金型成形面の撮像画像から区画した各セクション位置まで、スプレーユニット5をロボットアーム3を介して移動させ、離型剤濃度調整部53で調整された流量の離型剤原液及び希釈水をスプレーユニット5に送出する。そして、スプレーユニット5の混合器7でセクション毎の金型温度に応じた濃度に混合された離型剤をノズル6から噴霧させ、成形面に塗布する。
【0024】
更に、離型剤塗布制御部54は、各セクションに離型剤を塗布後、金型温度計測部51に離型剤塗布の温度分布の再計測を指示する。そして、基準温度以上のセクションには、高濃度の離型剤を再塗布し、基準温度未満のセクションには、低濃度の離型剤を再塗布する。このとき、金型成形面の形状、離型剤の噴霧方向や噴霧速度、成形面に対するスプレーユニット5の位置関係等を考慮して、離型剤の濃度を補正する。
【0025】
この離型剤の再塗布により、未だ基準温度以上の状態にあるセクションの温度を下げて、金型温度、離型膜を適正に維持して成型時の焼付きやカジリ等を防止することができる。また、前回、基準温度以上の高温のセクションでは、塗布した高濃度の離型剤の水分が熱によって蒸発することで金型温度が下がるものの、先に塗布した離型剤がより高濃度の状態になる場合がある。このような場合においても、今回、水分量の多い低濃度の離型剤を塗布することにより、高濃度離型剤の残留による過剰な油分の付着を低減することができ、成形品の品質悪化を防止することができる。
【0026】
以上の機能部による制御装置50の離型剤塗布制御は、図4のフローチャートに示すプログラム処理で実行される。次に、この離型剤塗布制御のプログラム処理について説明する。
【0027】
図4に示す離型剤塗布制御においては、先ず最初のステップS1において、ロボットアーム3を介したスプレーユニット5の初期位置の確定、制御用メモリ値のクリア等のイニシャライズを行い、ステップS2で離型剤塗布の作業開始を判断する。例えば、金型温度が安定するまで待機し、その間、離型剤の塗布作業開始の前処理として、金型成形面の撮像画像から成形面を複数のセクションに分割する処理を行い、塗布作業を開始可能なタイミングに達した否かを判断する。
【0028】
ステップS2で作業開始のタイミングに達していない場合、ステップS3でスプレーユニット5を一定時間待機させる。その後、作業開始のタイミングに達すると、ステップS4へ進んでセクション毎の温度(表面温度)Tgを取得し、ステップS5で、セクション毎に温度Tgと基準温度Toとを比較する。
【0029】
その結果、セクションの温度Tgが基準温度Toよりも高温(To≦Tg)である場合には、ステップS5からステップS6に進み、該当するセクションに、標準濃度よりも高濃度の離型剤を塗布する。すなわち、ロボットアーム3を駆動してスプレーユニット5を該当するセクションの位置に移動させ、標準濃度よりも高濃度となるように離型剤原液及び希釈液の流量を調整してスプレーユニット5から噴霧する。
【0030】
一方、セクションの温度Tgが基準温度To以下(To≧Tg)である場合には、ステップS5からステップS7へ進み、該当するセクションに、標準濃度又は標準濃度よりも低濃度の離型剤を塗布する。すなわち、ロボットアーム3を駆動してスプレーユニット5を該当するセクションの位置に移動させ、標準濃度又は標準濃度よりも低濃度となるように離型剤原液及び希釈液の流量を調整してスプレーユニット5から噴霧する。
【0031】
その後、ステップS8で離型剤の塗布が全セクションについて終了したか否かを調べ、塗布が済んでいないセクションがある場合には、ステップS8からステップS5へ戻る。全セクションの離経剤の塗布が終了した場合、ステップS8からステップS9へ進み、金型の表面温度を再計測してセクション毎の温度Tgを再取得し、ステップS10で、再度、所定のセクションの温度Tgを基準温度Toと比較する。
【0032】
そして、セクションの温度Tgが基準温度Toより高温(To<Tg)である場合、ステップS10からステップS11へ進み、該当するセクションに対する離型剤濃度を高濃度側で補正する。例えば、セクション温度に応じた高濃度側の離型剤濃度を、成形面の形状や噴霧角度、噴霧速度、噴霧時間等に基づいて補正する。
【0033】
一方、セクションの温度Tgが基準温度To以下(To>Tg)である場合には、ステップS12で、該当するセクションに対する離型剤濃度を低濃度側で補正する。例えば、セクション温度に応じた低濃度側の離型剤濃度を、成形面の形状や噴霧角度、噴霧速度、噴霧時間等に基づいて補正する。
【0034】
そして、ステップS11或いはステップS12からステップS13へ進み、補正した濃度の離型剤をスプレーユニット5から噴霧して、該当するセクションに再塗布する。その後、ステップS14で再塗布の対象となるセクションの処理が完了したか否かを調べ、再塗布が完了していない場合は、ステップS9へ戻って離型剤の再塗布を継続し、再塗布が完了した場合、ステップS14から本処理を抜ける。
【0035】
このように本実施の形態においては、金型成形面を複数のセクションに分割し、基準温度より高温のセクションには高濃度の離型剤を塗布し、低温のセクションには低濃度の離型剤を塗布するようしている。これにより、金型を適正に冷却し、且つ金型表面に適正な離型膜を形成することができ、金型の焼付きやカジリを防止しつつ、過剰な油分の付着を防止することができ、製品の湯回り不良、鋳巣欠陥の低減を図ることができる。
【0036】
また、離型剤の濃度調整を、離型剤を噴霧するスプレーユニット5の直前で行うため、スプレーユニット5を小型化しながら、セクション毎の温度に応じた離型剤濃度を応答性良く変更することでき、作業効率を向上することが可能となる。
【符号の説明】
【0037】
1 離型剤塗布装置
2 金型
2a 固定型
2b 可動型
3 ロボットアーム
4 温度測定ユニット
5 スプレーユニット
6 ノズル
7 混合器
50 制御装置
51 金型温度計測部
52 離型剤濃度設定部
53 離型剤濃度調整部
54 離型剤塗布制御部
60 ロボット制御部
70 流量制御部
Tg セクション毎の温度
To 基準温度
図1
図2
図3
図4