(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態である紙管及び当該紙管を使用したロール状シートを詳細に説明する。但し、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0016】
(実施形態)
本実施の形態では、シートとしてトイレットペーパーを例示して、ロール状シートとしてロール状トイレットペーパーを例示して、説明することとする。
【0017】
<ロール状トイレットペーパー>
ロール状トイレットペーパー100は、例えば、
図1に示すように、紙管1と、紙管1を芯として巻回されたトイレットペーパー2と、などを備えて構成され、紙管1内にペーパーホルダーの支持部を挿入した状態で、トイレットペーパー2を引き出して使用するのが一般的である。
ロール状トイレットペーパー100の大きさは特に限定されないが、直径100〜120mm、幅100〜115mm、紙管径35〜50mmのものが一般的であり、本発明においても好適である。
【0018】
トイレットペーパー2を構成する原紙は、原料パルプを主原料とする薄葉紙用抄紙原料により製造できる。その原料パルプは、特に限定されるものではなく、トイレットペーパー2の具体的な用途に応じて適宜の原料パルプを選択し、また適宜配合して使用することができる。
【0019】
また、トイレットペーパー2のプライ数及び坪量は、その用途によって適宜調整することができるが、プライ数が1プライから3プライ、全体での紙厚100〜270μm、1プライあたりの坪量は10〜30g/m
2の範囲内にあるものを使用するのが望ましい。坪量が10g/m
2未満では、柔らかさの向上の観点からは好ましいものの、使用に耐えうる十分な強度を適正に確保することが困難となる。逆に、坪量が30g/m
2を超えると紙全体が硬くなると共に、ゴワ付き感が生じてしまい肌触りが悪くなる。なお、坪量の測定方法は、JIS P 8124(1998)による。
【0020】
また、紙厚の測定方法は、試験片をJIS P 8111(1998)の条件下で十分に調湿した後、同条件下でダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCKG型」(尾崎製作所製)を用いて測定するものとする。具体的には、プランジャーと測定台の間にゴミ、チリ等がないことを確認してプランジャーを測定台の上に下ろし、前記ダイヤルシックネスゲージのメモリを移動させてゼロ点を合わせ、次いで、プランジャーを上げて試料を試験台の上におき、プランジャーをゆっくりと下ろしその時のゲージを読み取る。この時、プランジャーをのせるだけとする。プランジャーの端子は金属製で直径10mmの円形の平面が紙平面に対し垂直に当たるようにし、この紙厚測定時の荷重は、約70gfである。なお、紙厚は、1プライの場合は1プライで測定し、複数プライの場合は複数プライで測定する。測定値は、測定を10回行って得られる平均値とする。
【0021】
<紙管>
紙管1は、例えば、
図1に示すように、略中空円筒形状をなしている。
図2は、紙管1の側面図及びX−X部断面図であって、
図2(a)の側面図に示すように、紙管1は、内側紙管原紙11(内側のため図面には付番せず。)及び外側紙管原紙12が共に螺旋状に巻かれて接着剤で貼り合わされた二層積層構造のスパイラル紙管である。
好ましくは、坪量120〜220g/m
2、紙厚150〜500μmの内側紙管原紙11及び外側紙管原紙12を螺旋状に巻いて二層積層構造にしたスパイラル紙管が紙管1の強度を確保しやすい。
例えば、
図2(a)中のJT21、JT22及びJT23に示す実線は、外側紙管原紙12を螺旋状に巻いて構成される外層OL21の図面前面側に形成される外側紙管原紙12の継ぎ目部分であり、また、JT24及びJT25に示す破線は、外側紙管原紙12を螺旋状に巻いて構成される外層OL21の図面裏面側に形成される外側紙管原紙12の継ぎ目部分である。
なお、
図2(a)中の付番していない他の破線は、内側紙管原紙11を螺旋状に巻いて構成される内層IL21に形成される内側紙管原紙11の継ぎ目部分である。
また、内層IL21及び外層OL21は紙管層LY21を構成している。
【0022】
また、
図2(b)のX−X部断面図に示すように、紙管1は、内側紙管原紙11及び外側紙管原紙12を螺旋状に巻いた中空円筒からなる紙管層LY21と、紙管層LY21の内周面に設けられ、香料が封入されたカプセルCP21と、カプセルCP21の破損を防ぐと共に、香料の付着を軽減する緩衝部材CS21と、を有している。
【0023】
カプセルCP21は、ゼラチン等で構成され、内部に香料を内包する。また、使用開始時に使用者がカプセルCP21を潰すことにより、内包されていた香料の揮発を開始する。また、カプセルCP21は使用時に潰しやすいように直径が4mm以上であることが好ましい。カプセルCP21の皮膜は3μm〜50μmが好ましい。また、より良い条件では5μm〜20μmである。厚さが50μmを超える場合は外力で潰れにくいものの、使用者がカプセルCP21を潰し難くなる。一方で3μm未満では、特に外側紙管原紙にカプセルCP21が付与された場合、予期せぬ外力で潰れてしまう可能性がある。
香料カプセルの製造方法は特に限定されないが、例えば滴下法を用いればシームレスな被膜を有する香料カプセルを製造できるので好ましい。この方法は二重ノズルを用い、内側ノズルから香料含有溶液を、外側ノズルから液状の被膜物質を同時に吐出させることにより行うことができる。
カプセル内には、香料の他に、溶媒、色素、乳化剤等の他の添加剤を含有しても良い。香料含有溶液の溶媒として、例えば中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)を用いることができる。
被膜には、例えば、でんぷん、デキストリン、多糖類、寒天、ジュランガム、ゼラチン、カラギーナン、各種天然ゲル化剤、グリセリン、各種ワックス、ソルビトール、塩化カルシウム等と用いることができ、さらに香料や着色料を含むこともできる。
【0024】
緩衝部材CS21は、不織布等で構成され、カプセルCP21を覆うことにより、使用時まで予期せぬ外力でカプセルCP21が潰れることを防止すると共に、カプセルCP21を潰して使用する際に、カプセルCP21から染み出した香料がトイレットペーパー2に過剰に付着せず、或いは、ペーパーホルダーの支持部に香料が付着するのを軽減する。また、緩衝部材CS21としては、不織布の他には、ポリウレタン等の合成樹脂からなるスポンジ系でもよい。
紙管1内側に緩衝部材CS21を付与する場合、緩衝部材CS21の厚さは、50μm〜2000μmが好ましい。また、より良い条件では200μm〜600μmである。
厚さが50μm未満では、予期せぬ外力で潰れたり、使用者が潰す時に痛みが発生し、逆に、厚さが2000μmを超える場合では、特に紙管1外側に緩衝部材CS21を付与する場合、粒径によっては使用者がカプセルの場所が分かりにくかったり、内側に付与する場合ホルダーに掛けた時、ロールが円滑に回転しにくい。
一方、厚さが200μm〜700μmの範囲ではカプセルの場所もわかりやすく、押し潰しても痛くない。外力で潰れにくい。また、緩衝部材CS21である不織布の幅は20mm以上が望ましい。
紙管1内側に緩衝部材CS21を付与した場合、20mmよりも幅が短いと、ロールが円滑に回転しにくい。
紙管1外側であっても、幅が短いと紙管1成形後に紙管搬送用コンベアやペーパーを巻付ける時等、他の設備との接触により緩衝部がレホがれる可能性がある。
製造方法は限定されないが、例えば下記の方法でカプセルを不織布に貼り合わせ、その後紙管を成形することができる。すなわち、不織布全面に酢酸ビニル系等の接着剤を塗布後、流れ方向に対して、一定間隔でカプセルを接着部に付与し、その後紙管内側原紙又は外側原紙と貼り合わせる。
【0025】
また、カプセルCP21に内包される香料は、特に限定されるものではないが、例えば、リュウゼン香、安息香、海狸香、霊猫香、丁字油、ガルバナム、ジャスミンアブソリュート、ラブタナム、マテ茶、メリロット、ミモザ、ムスクトンキン、ミルラ、オークモス又はモスドシェーヌ、乳香、ビャクシ香、オリス、バチュリ、ローズマリー油、白檀油、ベチバー油、バイオレットリーフアブソリュートなどの天然香料、高級アルコール、アルデヒド、ベンズアルデヒド、安息香酸、ケイ皮酸、ケイ皮アルデヒド、ケイ皮アルコール、クマリン、エステル、インドール、ケトン、サリチル酸と関連化合物、テルペノイド、バニリンなどの各種の合成香料、或いはこれらの2つ以上の混合物を上げることができる。
【0026】
ちなみに、
図2(b)においては、各層(内層、外層)の構成を見やすくするため、緩衝部材CS21の厚さを誇張して表現しているが、実際には、内側紙管原紙11及び外側紙管原紙12と比較して、緩衝部材CS21の厚さは薄く、緩衝部材CS21は、内側紙管原紙11の内周面に塗布された酢酸ビニル系等の接着剤によって、貼り合わされることになる。
【0027】
ここで、紙管1の形成方法について
図3及び
図4を用いて説明する。
図3は、本発明の紙管1の断面図(a)及び、その一部の拡大図(b)であり、
図4は、本発明の紙管1の形成方法を示す説明図(斜視図)である。
【0028】
図3(a)に示すように、紙管層LY21の内周面には緩衝部材CS21が接着剤により接着され、緩衝部材CS21と紙管層LY21の内周面との間にカプセルCP21が挟持される。
【0029】
そして、
図4に示すように、内側紙管原紙11等を、螺旋状に巻いて行くことにより、長尺の中空円筒が構成され、構成された長尺の中空円筒を所定の長さに適宜切断することにより、紙管1が形成される。
【0030】
このように形成された紙管1を使用したロール状シート100は、カプセルCP21に香料が内包されており、カプセルCP21を潰すまで香料の揮発を防ぎ、消費者の意思により香料の揮発を開始できる。
【実施例1】
【0031】
ここで、表1は、下記に示す条件において、実施例1〜4及び比較例1〜3をポリエチレンフィルムに密閉した上で、保管期間内の製品劣化を想定して、室温50度、湿度50%の条件で、0時間静置後、12時間静置後、24時間静置後、36時間静置後、48時間静置後における芳香の強さの関係を示す試験結果である。
なお、実施例1〜4では、カプセルを上記所定の時間静置後に潰して、芳香の強さを評価している。
【0032】
比較例1はロールの芯際に、トイレットペーパーと芯の隙間にマイクロピペットを用いて香料120μL付与する。(無香タイプのエリエールシャワートイレットを使用)
比較例2はロールの芯際に、トイレットペーパーと芯の隙間にマイクロピペットを用いて香料240μL付与する。(無香タイプのエリエールシャワートイレットを使用)
比較例3はロールの芯際に、トイレットペーパーと芯の隙間にマイクロピペットを用いて香料360μL付与する。(無香タイプのエリエールシャワートイレットを使用)
また、実施例1〜4は比較例1等と同じロールに対して、紙管1内側に紙管原紙の螺旋状に沿って、一定間隔でカプセルを付与した不織布を貼り付け。(パルプ原料由来の不織布幅35mm 厚み160μm)
不織布全面に酢酸ビニル樹脂系エマルジョン形接着剤を塗布し、カプセルを長手方向に均等に付与。カプセル付与後、不織布を紙管内側へ螺旋方向に貼り付ける。
また。実施例1〜4、比較例1〜3ともに1ロールを厚さ25μmのPEフィルムに内包し、開け口をヒートシールし密閉(各時間条件で静置)する。
実施例1〜4に関しては、フィルムから開封し、カプセルを全て破壊した後芳香性を確認。
【0033】
(実施条件)
実施例1:紙管の外周面に緩衝部材とカプセルを有する。
カプセル個数:4個
カプセル粒径:4mm〜6mm
カプセル被膜:8μm〜10μm
カプセル1個内の香料量:40μL〜70μL
実施例2:紙管の外周面に緩衝部材とカプセルを有する。
カプセル個数:3個
カプセル粒径:4mm〜6mm
カプセル被膜:8μm〜10μm
カプセル1個内の香料量:40μL〜70μL
実施例3:紙管の外周面に緩衝部材とカプセルを有する。
カプセル個数:2個
カプセル粒径:4mm〜6mm
カプセル被膜:8μm〜10μm
カプセル1個内の香料量:40μL〜70μL
実施例4:紙管の外周面に緩衝部材とカプセルを有する。
カプセル個数:1個
カプセル粒径:4mm〜6mm
カプセル被膜:8μm〜10μm
カプセル1個内の香料量:40μL〜70μL
比較例1:紙管に香料120μLを包含させる。
比較例2:紙管に香料240μLを包含させる。
比較例3:紙管に香料360μLを包含させる。
(なお、ロール状トイレットペーパー100の巻き硬さは1.2kgf)
【0034】
【表1】
【0035】
表1において、検証者は12人で、5段階で評価し、12人の検証者の平均値を記載している(評価基準…5:ロールからしっかり香りを感じた。4:香りを感じた。3:やや香りを感じた。2:わずかだが香りを感じた。1:全く香りを感じなかった)。
【0036】
表1から明らかなように、比較例1では、室温50度、湿度50%の条件で、12時間静置後程度で、平均値が2.7となっているのに対して、実施例1では、室温50度、湿度50%の条件で、24時間静置後であっても、平均値が4.3であり、48時間静置後であっても、平均値が4.0であって、使用開始までの香料の揮発を防ぎ、消費者の意思により香料の揮発を開始できる。
【0037】
また、香料が封入されたカプセルを紙管層と緩衝部材との間に挟持させることにより、予期せぬ外力でカプセルが潰れることによる香料の揮発を防ぎ、消費者の意思により香料の揮発を開始できる。
【0038】
また、表1から明らかなように、実施例4のようにカプセル1個に含まれる香料の量は40μL〜70μLであり、表1の比較例1の香料の量120μLより少ないにもかかわらず、48時間静置後であっても、カプセル1個の場合の平均値が3.1(表1の比較例1の平均値は1.7)であり、使用開始までの香料の揮発を防ぎ、消費者の意思により香料の揮発を開始できることがわかる。
【実施例2】
【0039】
また、表2は、下記に示す条件において、緩衝部材と紙管層の内周面との間に挟持されたカプセルの大きさと、当該カプセルを認識するための時間との関係を示す試験結果である。
【0040】
【表2】
【0041】
表2の評価1において、評価「○」は、「3人の検証者のうち3人がカプセルを見つけ易いと感じた。」、評価「×」は、「3人の検証者のうち1人以上がカプセルを見つけにくいと感じた。」、を表す。
【0042】
表2の評価2において、評価「〇」は、「3人の検証者のうち3人がペーパーホルダーからトイレットペーパーを引き出し易いと感じた。」、評価「×」は「3人の検証者のうち1人がトイレットペーパーを引き出し難いと感じた。」、を表す。
【0043】
表2の評価1から明らかなように、カプセルの直径が3mm以下では、カプセルの存在位置を認識するのに時間が必要となり、消費者の意思により香料の揮発を開始させることに若干手間取ることになる。一方、カプセルの直径が4mm以上であれば、カプセルの存在位置を容易に認識することができるので、消費者の意思により香料の揮発を容易に開始させることができる。
【0044】
また、表2の評価2から明らかなように、カプセルの直径が7mm以上の場合、ペーパーホルダーからトイレットペーパーが引き出しにくくなり、このため、カプセルの直径は、6mm以下であることが好ましい。例えば、カプセルの直径が7mm以上の場合、カプセルの部分が膨らんで、ペーパーホルダーの支持部と干渉してうまく回らなくなり、トイレットペーパーが引き出し難くなる。
【0045】
以上のように、本発明の実施形態では、ロール状シート100の芯となる紙管1において、紙管原紙により構成された中空円筒の紙管層LY21と、紙管層LY21の内周面に設けられた緩衝部材CS21と、香料が封入され緩衝部材CS21と内周面との間に挟持されるカプセルCP21とを備えることにより、カプセルCP21を潰すまで香料の揮発を防ぎ、消費者の意思により香料の揮発を開始できる。
【0046】
なお、本発明の実施形態では、内側紙管原紙11及び外側紙管原紙12が共に螺旋状に巻かれて接着剤で貼り合わされた紙管層LY21から成る二層積層構造のスパイラル紙管が例示されているが、勿論、長方形の内側紙管原紙11及び外側紙管原紙12を軸に対して垂直方向に一層だけ巻きつける二層積層構造の平巻き紙管であってもよい。
【0047】
また、本発明の実施形態では、内側紙管原紙11及び外側紙管原紙12が共に螺旋状に巻かれて接着剤で貼り合わされた紙管層LY21から成る二層積層構造のスパイラル紙管が例示されているが、勿論、一枚の紙管原紙から構成される一層構造の紙管であってもよい。
【0048】
また、本発明の実施形態では、紙管層LY21の内周面に緩衝部材CS21が設けられ、当該緩衝部材CS21と紙管層LY21の内周面との間にカプセルCP21は挟持されているが、勿論、紙管層LY21の外周面に緩衝部材CS21が設けられ、当該緩衝部材CS21と紙管層LY21の外周面との間にカプセルCP21を挟持させることも可能である。
【0049】
また、消費者がカプセルCP21を潰す際に潰し易いように、紙管層LY21の内周面であって、カプセルCP21が挟持されており、使用開始時にカプセルCP21を潰すために押圧する部分に色付け、若しくは、マーキングを施してもよい。
すなわち、利用者は、紙管層LY21の内周面であって、色付け、若しくは、マーキングの部分を押圧することにより、カプセルCP21を容易に潰すことができ、消費者の意思により香料の揮発を開始できる。
紙管1内側にカプセルCP21を付与する場合、緩衝部材CS21のカプセル付着部の反対部分、紙管1外側にカプセルCP21を付与する場合、紙管1内側のカプセル付着部の反対部分に、例えば、カプセルCP21を想起させる直径5mm程度の大きさの円形型マーキング「●」を付与する。
ちなみに、色付け、若しくは、マーキングの大きさや形状については、特に限定されるものではなく、利用者が認識可能な大きさや形状であればよい。
【0050】
また、カプセルCP21を潰す際に、ロール状トイレットペーパー100の巻き硬さが柔らか過ぎると、カプセルCP21を潰すのが難しくなる。このため、ロール状トイレットペーパー100の巻き硬さは0.40kgf以上が好ましい。