(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
[A.検査方法]
本発明は、非偏光部を有する偏光子を検査する方法に関する。本発明の検査方法は、非偏光部を有する偏光子の一方の側から光を照射し、該偏光子からの反射光を撮像する撮像工程と、得られた画像に基づいて該偏光子の非偏光部を検査する検査工程と、を含む。以下、本発明の検査方法について説明する。
【0009】
A−1.非偏光部を有する偏光子
図1は、本発明の検査方法に好適に用いられ得る偏光子の概略平面図である。偏光子100は長尺状であり得る。本明細書において「長尺状」とは、幅に対して長さが十分に長い細長形状を意味し、例えば、幅に対して長さが10倍以上、好ましくは20倍以上の細長形状を含む。長尺状偏光子は、長尺方向および/または幅方向に所定の間隔で(すなわち、所定のパターンで)で配置された非偏光部を有し得る。非偏光部の配置パターンは、目的に応じて適切に設定され得る。代表的には、上記非偏光部は、偏光子を所定サイズの画像表示装置に取り付けるために所定サイズに裁断(例えば、長尺方向および/または幅方向への切断、打ち抜き)した際に、該画像表示装置のカメラ部に対応する位置に配置され得る。1つの実施形態においては、非偏光部は長尺方向および幅方向のいずれにおいても実質的に等間隔で配置される。なお、「長尺方向および幅方向のいずれにおいても実質的に等間隔」とは、長尺方向の間隔が等間隔であり、かつ、幅方向の間隔が等間隔であることを意味し、長尺方向の間隔と幅方向の間隔とが等しい必要はない。別の実施形態においては、非偏光部は、長尺方向に実質的に等間隔で配置され、かつ、幅方向に異なる間隔で配置されてもよい。幅方向において非偏光部が異なる間隔で配置される場合、隣接する非偏光部の間隔はすべて異なっていてもよく、一部(特定の隣接する非偏光部の間隔)のみが異なっていてもよい。
【0010】
本発明の検査方法には、所定サイズの画像表示装置に取り付けるために所定サイズに裁断された偏光子(
図1中、点線で囲まれた部分に対応する)もまた、好適に用いられ得る。該所定サイズに裁断された偏光子(偏光子片)は、画像表示装置に取り付けられた際に、該画像表示装置のカメラ部に対応する位置に非偏光部を有する。該偏光子片が有する非偏光部の数は、1つであってもよく、複数であってもよい。なお、上記偏光子片とは、長尺状の偏光子を裁断して得られた偏光子を意味する。本明細書においては、文脈上、長尺状の偏光子を裁断して得られた偏光子を偏光子片と称する場合がある。
【0011】
非偏光部の透過率(例えば、23℃における波長550nmの光で測定した透過率)は、好ましくは50%以上であり、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは75%以上であり、特に好ましくは90%以上である。このような透過率であれば、非偏光部としての所望の透明性を確保することができる。その結果、非偏光部が画像表示装置のカメラ部に対応するよう偏光子を配置した場合に、カメラの撮影性能に対する悪影響を防止することができる。
【0012】
非偏光部10は、上記のような所定パターンでの配置が可能であり、および、上記所望の光学特性が得られる限りにおいて、任意の適切な形態であり得る。1つの実施形態においては、非偏光部は、部分的に脱色された脱色部である。具体的には、偏光子の所定の部分を脱色することにより形成された脱色部である。脱色部は、例えば、レーザー照射または化学処理(例えば、酸処理、アルカリ処理またはその組み合わせ)により形成され得る。別の実施形態においては、非偏光部は貫通孔(代表的には、偏光子を厚み方向に貫通する貫通孔)である。貫通孔は、例えば、機械的打ち抜き(例えば、パンチング、トムソン刃打抜き、プロッター、ウォータージェット)または偏光子の所定部分の除去(例えば、レーザーアブレーションまたは化学的溶解)により形成され得る。
【0013】
非偏光部10の平面視形状は、偏光子が用いられる画像表示装置のカメラ性能に悪影響を与えない限りにおいて、任意の適切な形状が採用され得る。具体例としては、円形、楕円形、正方形、矩形、ひし形が挙げられる。後述のB項で説明する表面保護フィルムの貫通孔の形状を適切に設定することにより、所望の平面視形状を有する非偏光部を形成することができる。
【0014】
偏光子100は、代表的には、二色性物質を含む樹脂フィルム20で構成される。樹脂フィルム20は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA系樹脂」と称する)フィルムである。
【0015】
上記二色性物質としては、例えば、ヨウ素、有機染料等が挙げられる。これらは、単独で、または、二種以上組み合わせて用いられ得る。好ましくは、ヨウ素が用いられる。例えば化学処理による脱色により非偏光部を形成する場合に、樹脂フィルム(偏光子)に含まれるヨウ素錯体が適切に還元されるので、カメラ部に使用するのに適切な特性を有する非偏光部を形成することができるからである。
【0016】
非偏光部は、好ましくは脱色部であり、より好ましくは二色性物質の含有量が相対的に低い低濃度部(具体的には、他の部位よりも二色性物質の含有量が低い低濃度部)とされている。このような構成によれば、機械的に(例えば、トムソン刃打抜き、プロッター、ウォータージェット等を用いて機械的に抜き落とす方法により)、非偏光部が形成されている場合に比べて、クラック、デラミ(層間剥離)、糊はみ出し等の品質上の問題が回避される。また、低濃度部は二色性物質自体の含有量が低いので、レーザー光等により二色性物質を分解して非偏光部が形成されている場合に比べて、非偏光部の透明性が良好に維持される。
【0017】
上記低濃度部の二色性物質の含有量は、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、さらに好ましくは0.2重量%以下である。低濃度部の二色性物質の含有量がこのような範囲であれば、低濃度部に所望の透明性を十分に付与することができる。例えば、画像表示装置のカメラ部に低濃度部を対応させた場合に、明るさおよび色味の両方の観点から非常に優れた撮影性能を実現することができる。一方、低濃度部の二色性物質の含有量の下限値は、通常、検出限界値以下である。なお、二色性物質としてヨウ素を用いる場合、ヨウ素含有量は、例えば、蛍光X線分析で測定したX線強度から、予め標準試料を用いて作成した検量線により求められる。
【0018】
他の部位における二色性物質の含有量と低濃度部における二色性物質の含有量との差は、好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上である。含有量の差がこのような範囲であれば、所望の透明性を有する低濃度部を形成することができる。
【0019】
上記低濃度部は、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の含有量が3.6重量%以下であることが好ましく、より好ましくは2.5重量%以下であり、さらに好ましくは1.0重量%以下であり、特に好ましくは0.5重量%以下である。低濃度部におけるアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の含有量がこのような範囲であれば、後述する塩基性溶液との接触により形成された低濃度部の形状を良好に維持することができる(すなわち、優れた寸法安定性を有する低濃度部を実現することができる)。当該含有量は、例えば、蛍光X線分析により測定したX線強度から予め標準試料を用いて作成した検量線により求めることができる。このような含有量は、後述する塩基性溶液との接触において、接触部におけるアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を低減させることにより実現され得る。
【0020】
上記PVA系樹脂フィルムを形成するPVA系樹脂としては、任意の適切な樹脂が用いられ得る。例えば、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体が挙げられる。ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルをケン化することにより得られる。エチレン−ビニルアルコール共重合体は、エチレン−酢酸ビニル共重合体をケン化することにより得られる。PVA系樹脂のケン化度は、通常85モル%〜100モル%であり、好ましくは95.0モル%〜99.95モル%、さらに好ましくは99.0モル%〜99.93モル%である。ケン化度は、JIS K 6726−1994に準じて求めることができる。このようなケン化度のPVA系樹脂を用いることによって、耐久性に優れた偏光子を得ることができる。ケン化度が高すぎる場合には、ゲル化してしまうおそれがある。
【0021】
PVA系樹脂の平均重合度は、目的に応じて適切に選択され得る。平均重合度は、通常1000〜10000であり、好ましくは1200〜4500、さらに好ましくは1500〜4300である。なお、平均重合度は、JIS K 6726−1994に準じて求めることができる。
【0022】
偏光子(非偏光部を除く)は、好ましくは、波長380nm〜780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子(非偏光部を除く)の単体透過率(Ts)は、好ましくは39%以上、より好ましくは39.5%以上、さらに好ましくは40%以上、特に好ましくは40.5%以上である。なお、単体透過率の理論上の上限は50%であり、実用的な上限は46%である。また、単体透過率(Ts)は、JIS Z8701の2度視野(C光源)により測定して視感度補正を行なったY値であり、例えば、顕微分光システム(ラムダビジョン製、LVmicro)を用いて測定することができる。偏光子の偏光度(非偏光部を除く)は、好ましくは99.9%以上、より好ましくは99.93%以上、さらに好ましくは99.95%以上である。
【0023】
偏光子(樹脂フィルム)の厚みは、任意の適切な値に設定され得る。厚みは、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下、さらに好ましくは20μm以下、特に好ましくは10μm以下である。一方で、厚みは、好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上である。このような厚みであれば、優れた耐久性と光学特性とを有する偏光子が得られ得る。偏光子(樹脂フィルム)の厚みが薄いほど、非偏光部が良好に形成され得る。例えば、化学処理による脱色(詳細についてはB項で記載する)により非偏光部を形成する場合に、脱色液と樹脂フィルム(偏光子)との接触時間を短くすることができる。具体的には、より短時間で、より透過率の高い非偏光部を形成することができる。
【0024】
上記脱色液(例えば、塩基性溶液)を接触させた部分の厚みは、他の部位よりも薄くなり得る。この傾向は、脱色により得られる非偏光部の透過率を高くするほど、強くなり得る。樹脂フィルムを薄くすることにより、非偏光部の高い透過率(好ましくは、90%以上)を達成しながら、上記非偏光部と他の部位との段差を、小さくすることができる。こうして、段差により発生するおそれがある不具合を防止し得る。不具合としては、例えば、長尺状の偏光子をロール状に巻回した際に非偏光部と他の部位との段差が、重ね合わせた部分に巻き痕として転写される、保護フィルム等の他の構成部材との貼り合せの際に、非偏光部と他の部位との段差により気泡が発生する、最終製品において当該段差が視認されるなどが考えられる。このような不具合を防止することは、長尺状の偏光子を裁断して得られる最終的に使用される偏光子の品質のばらつきの抑制にも寄与し得ると考えられる。このような効果は、例えば、非偏光部の透過率が90%以上の場合および/または二色性物質の含有量が0.2重量%以下の場合に顕著となり得ると考えられる。なお、非偏光部の透過率が90%以上と高いことも、最終的に使用される偏光子の品質のばらつきを抑制することに寄与し得る。具体的には、脱色液の接触により非偏光部を形成する場合、脱色度合いが弱いと得られる非偏光部の透過率にばらつきが生じやすいが、透過率90%以上および/または二色性物質の含有量が0.2重量%以下とすることで(脱色度合いを強くすることで)、脱色状態を安定して制御することができる。
【0025】
1つの実施形態においては、非偏光部は他の部位よりも薄い薄肉部とされている。例えば、偏光子の一方面側の表面が凹んだ凹部が形成されて薄肉部とされている。この場合、非偏光部と他の部位との段差(凹部の深さ)は、例えば0.02μm以上である。一方で、段差は、好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。後述する脱色により非偏光部を形成する場合(例えば、非偏光部の透過率が90%以上の場合および/または二色性物質の含有量が0.2重量%以下の場合)にはこのような段差が形成される場合があるところ、段差の上限がこのような範囲であればロール形成による巻き痕等の段差による不具合が良好に抑制されると考えられる。その結果、長尺状の偏光子を裁断して得られる最終的に使用される偏光子の品質のばらつきを顕著に抑えることができる。なお、本明細書において「段差(凹部の深さ)」は、凹部の最も深い部分の深さをいう。
【0026】
上記一方面側の表面が凹んだ凹部は、例えば、偏光子の一方面側のみから脱色液を作用させることにより形成される。脱色処理後に形成される凹部の深さを上記範囲とすることで、後述の脱色後の処理を均一に施し得る。また、一方面側のみに凹部が形成され得ることで、ロール形成による巻き痕等の段差による不具合の発生を防止し、最終的に使用される偏光子の品質のばらつきを抑制し得ると考えられる。
【0027】
長尺状の偏光子において、その吸収軸は、目的に応じて任意の適切な方向に設定され得る。吸収軸の方向は、例えば、長尺方向であってもよく幅方向であってもよい。長尺方向に吸収軸を有する偏光子は、製造効率に優れるという利点がある。幅方向に吸収軸を有する偏光子は、例えば長尺方向に遅相軸を有する位相差フィルムといわゆるロールトゥロールで積層できるという利点がある。1つの実施形態においては、吸収軸は長尺方向または幅方向に実質的に平行であり、かつ、偏光子の両端部は長尺方向に平行にスリット加工されている。このような構成であれば、偏光子の端面を基準にして裁断作業を行うことにより、非偏光部を有しかつ適切な方向に吸収軸を有する複数の偏光子を容易に製造することができる。
【0028】
撮像工程に供される偏光子は、少なくともその一方の側に保護層が形成されていてもよい。具体的には、該偏光子の一方の側または両側に任意の適切な保護層(樹脂フィルム)が積層されていてもよい。該樹脂フィルムの具体例としては、B項で説明する偏光子の作製や非偏光部の形成において使用される樹脂基材、表面保護フィルム;偏光子を保護して共に偏光板を構成する保護フィルム、位相差フィルム、セパレーター;等が挙げられる。1つの実施形態において、撮像工程に供される偏光子は、少なくともその一方の側に保護フィルムが積層されて偏光板とされていてもよい。なお、本明細書において単に保護フィルムというときは、偏光子保護フィルムを意味し、B項で説明する表面保護フィルム(作業時に偏光子を一時的に保護するフィルム)とは異なるものである。
【0029】
A−2.撮像
撮像工程においては、上記非偏光部を有する偏光子(樹脂フィルムが積層されている場合には、偏光子と樹脂フィルムとの積層体)の一方の側から光を照射し、該偏光子からの反射光を撮像する。換言すれば、偏光子(偏光子と樹脂フィルムとの積層体)の一方の側から光を照射し、該偏光子(偏光子と樹脂フィルムとの積層体)の光の照射面を撮像する。このように、反射照明を採用することにより、撮像手段と照明手段とを該偏光子の一方の側に配置できることから、製造ラインの省スペース化に寄与し得る。また、反射照明を採用することにより、所定サイズに裁断後の偏光子片を搬送ライン上で好適に撮像することができる。
【0030】
図2は、本発明の第1の実施形態における撮像工程を説明する概略図である。第1の実施形態においては、搬送ライン600によって非偏光部を有する偏光子100(図示例においては、偏光子100と、その一方の側に積層された保護フィルム110と、他方の側に積層された保護フィルム120とから構成される偏光板300)が検査装置400aに搬入され、偏光子100(偏光板300)の一方の側に斜光照明部410から光が照射され、該偏光子100(偏光板300)からの反射光を撮像部430が撮像する。
【0031】
斜光照明部410は、偏光子100に対して斜め方向から光を照射する。非偏光部を有する偏光子に照射された光は、その多くが偏光子表面で反射される。その一方で、照射された光の一部は、偏光子を透過し、搬送ライン600や拡散板470等によって該偏光子の裏面側で反射され得る。そのため、非偏光部においてはその他の部分よりも多くの反射光が得られ得る。よって、偏光子の光の照射面を撮像することにより、非偏光部の像を得ることができ、非偏光部の形状および/または特性(例えば、透過率)を好適に評価することができる。なお、図示例とは異なり、偏光子の両側にそれぞれ異なる樹脂フィルムが積層されている場合、偏光子のいずれの面に光を照射してもよい。
【0032】
光の照射角度θは、好ましくは50°〜80°、より好ましくは70°〜80°である。当該照射角度で光を照射することにより、非偏光部とその他の部分とのコントラスト比を大きくすることができる。
【0033】
斜光照明部410は、任意の適切な光源を用いて構成され得る。光源は、白色光源であってもよく、単色光源であってもよい。光源の具体例としては、蛍光灯、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、LED等が挙げられる。
【0034】
斜光照明部410の形状は、任意の適切な形状であり得る。例えば、面状、線状、リング状等であり得る。偏光子表面を均一に照射でき、かつ、影ができにくいという利点を有することから、好ましくは、斜光照明部は、リング形状である。代替的に、斜光照明部は、各々異なる方向に配置された複数の面状または線状光源によって構成されていてもよい(例えば、斜光照明部は、0°、90°、180°、270°の方位角に配置された4つの線状光源から構成され得る)。
【0035】
撮像部430は、代表的には、レンズおよびイメージセンサを用いて構成されたカメラである。イメージセンサとしては、CCD型イメージセンサおよびCMOS型イメージセンサのいずれを用いてもよい。
【0036】
イメージセンサの画素数は、好ましくは2000dpi以上、より好ましくは4000dpi〜6000dpiである。また、このような画素数を有するイメージセンサを用いることにより、高画質な像を撮像することができるので、優れた精度で検査することができる。
【0037】
撮像部430は、偏光子100(偏光板300)からの反射光を撮像する。得られた画像は、電気信号として、撮像部430と接続された画像処理部440に送られる。
【0038】
任意に、偏光子100(偏光板300)の光が照射されない側に拡散板470が設置され得る。拡散板470を設置することにより、非偏光部とその他の部分とのコントラスト比を大きくすることができる。図示例とは異なり、拡散板470は、偏光子100(偏光板300)と搬送ライン600との間に設けられてもよい。
【0039】
図3は、本発明の第2の実施形態における撮像工程を説明する概略図である。第2の実施形態においては、搬送ライン600によって検査装置400bに搬入された偏光子100(図示例においては、偏光板300)の一方の側に同軸落射照明部420から光が照射され、該偏光子100(偏光板300)からの反射光を撮像部430が撮像する。
【0040】
同軸落射照明部420は、撮像部430の光軸と照射光の光軸とが同軸または平行となるように、偏光子100(偏光板300)に対して垂直に光を照射する。同軸落射照明によって偏光子100(偏光板300)に光を照射することにより、上記と同様に非偏光部の方がその他の部分よりも正反射光を多く生じる。よって、該正反射光を撮像することにより、コントラスト比の高い像が得られる。また、正反射と拡散反射との混在に起因する像の不鮮明化や照明の映り込みが防止されるので、鮮明な像が得られ得る。また、上記のとおり、非偏光部と他の部位との段差に起因して偏光子と保護フィルム等の構成部材との間に気泡が生じ得るところ、同軸落射照明によって偏光子と他の構成部材との積層体に光を照射し、その反射光を撮像することにより、該気泡の有無を好適に確認することができる。
【0041】
同軸落射照明部420は、光源、ハーフミラーまたはビームスプリッター、光学レンズ(テレセントリックレンズ)等を用いて構成され得る。同軸落射照明部はまた、光学レンズを用いることなく、ハーフミラーまたはビームスプリッターを用いて照射光の光軸をカメラのレンズの光軸と平行にする疑似同軸落射照明部であってもよい。同軸落射照明部または疑似同軸落射照明部の構成は当業者に周知であるので、その詳細な説明は省略する。
【0042】
上記光源の具体例、撮像部430および拡散板(図示せず)の構成は、検査装置400aに関して説明したとおりである。
【0043】
第2の実施形態は、同軸落射照明によって光を照射すること以外は、第1の実施形態と同様に行われ得る。
【0044】
図4は、本発明の第3の実施形態における撮像工程を説明する概略図である。第3の実施形態において、非偏光部を有する偏光子の撮像は、検査装置400cを用いて行われる。検査装置400cは、非偏光部を有する偏光子100(図示例においては、偏光板300)の一方の側に配置され、該偏光子100に光を照射する、第1の照明部410および第2の照明部420と、第1の照明部410または第2の照明部420から出射され、偏光子100からの反射光を撮像する撮像部430と、該撮像部と接続され、該撮像部によって撮像した画像を解析処理する画像処理部440と、第1の照明部410による光照射と第2の照明部420による光照射とを切換える照明切換部450と、第2の照明部420から出射された光および偏光子100からの反射光の光軸の角度を制御する光軸制御部460を備える。
【0045】
第1の照明部410は、斜光照明部であり、上記検査装置400aにおける斜光照明部410と同様の構成であり得る。
図5Aに示すように、第1の照明部410は、検査装置400aにおける斜光照明部410と同様に、偏光子100(偏光板300)に対して斜め方向から光を照射する。
【0046】
第2の照明部420は、同軸落射照明部であり、上記検査装置400bにおける同軸落射照明部420と同様の構成であり得る。
図5Bに示すように、第2の照明部420は、検査装置400bにおける同軸落射照明部420と同様に、撮像部430の光軸と照射光の光軸とが同軸または平行となるように、偏光子100(偏光板300)に対して垂直に光を照射する。
【0047】
第1の照明部410および第2の照明部は、照明切換部450に接続されており、該照明切換部450によって切換え可能とされている。検査目的に応じて斜光照明と同軸落射照明とを切換えることにより、各検査項目についてより高い精度で評価することができる。具体的には、斜光照明と同軸落射照明とを検査目的に応じて使い分けることにより、非偏光部の形状および/または特性(例えば、透過率)評価と、非偏光部周辺部における欠陥(例えば、気泡)検査とを好適に両立することができる。照明切換部450は、例えば、画像処理部440に接続されており、画像処理部440からの信号に従って該照明の切換えを行う。あるいは、予め定められた設定に従って該照明の切換えを行う。
【0048】
撮像部430および拡散板(図示せず)の構成は、検査装置400aと同様である。
【0049】
光軸制御部460は、第2の照明部420から出射された光および偏光子100からの反射光の光軸の角度を制御する。光軸制御部460を設けることにより、省スペース化が可能となる。光軸制御部は、所望の光路を形成するようにミラー、プリズム等を用いて構成される。十分なスペースがある場合等には、光軸制御部は省略されてもよい。
【0050】
図示例では、裁断された枚葉の偏光子片を搬送ラインで搬送しながら撮像を行っているが、図示例とは異なり、長尺状の偏光子を長尺方向に搬送しながら撮像を行ってもよい。撮像工程においては、撮像部を固定して撮像を行ってもよく、偏光子の搬送速度に併せて長尺方向に移動させながら撮像を行ってもよい。また、撮像部を幅方向に移動させながら撮像を行うこともできる。
【0051】
偏光子が、長尺状であり、長尺方向および/または幅方向に所定の間隔で配置された非偏光部を有する場合、全ての非偏光部の画像を得てもよく、一部の非偏光部の画像のみを得てもよい。例えば、任意にまたは特定の規則性に従って選択した非偏光部の画像のみを得てもよい。
【0052】
A−3.検査
検査工程においては、撮像工程で得られた画像に基づいて非偏光部を検査する。具体的には、画像処理部440を用いて撮像部430から電気信号として送られた画像データの解析を行い、非偏光部の形状、特性等を検査する。検査項目の具体例としては、非偏光部の形状精度(円形の場合は、真円度等)、輪郭の粗さ、輪郭の急峻度、透過率等が挙げられる。画像処理部440は、好ましくは所定の基準を満たさない非偏光部を形成不良として検出し得る。
【0053】
上記画像データの解析は、例えば、輝度情報に基づいて行われ得る。具体的には、斜光照明で得られる画像データ(反射光像データ)においては、非偏光部の輝度が相対的に高くなり、その他の部分の輝度が低くなることから、得られた画像データ中のコントラスト比に閾値を設け、該閾値よりも高いコントラスト比を有する高輝度部を非偏光部と特定することができる。同軸落射照明で得られる画像データ(反射光像データ)においても、非偏光部の輝度が相対的に高くなり、その他の部分の輝度が低くなることから、得られた画像データ中のコントラスト比に閾値を設け、該閾値よりも高いコントラスト比を有する高輝度部を非偏光部と特定することができる。また、特定された非偏光部の輪郭を180等分して中心から各輪郭部までの距離を求め、得られた180個の距離データ中の最大値から最小値を引いた値を真円度の評価基準とすることができる。例えば、得られた値が所定の値以下である場合に、該非偏光部の真円度を良と評価することができる。さらにまた、非偏光部の輪郭を180等分して基準となる近似楕円を求め、180等分した各領域において近似楕円から実際の輪郭までの距離の最大値を輪郭の粗さの評価基準とすることができる。例えば、得られた最大値が所定の値以下である場合に、該非偏光部の輪郭の粗さを良と評価することができる。さらにまた、非偏光部およびその他の部分(非偏光部の周辺部分)の平均輝度を求め、非偏光部の平均輝度を0%、その他の部分の平均輝度を100%とし、10%と20%の輝度で黒と白に2値化した際の非偏光部中心から180等分した各輪郭までの距離の最大値を輪郭の急峻度の評価基準とすることができる。例えば、得られた最大値が所定の値以下である場合に、該非偏光部の輪郭の急峻度を良と評価することができる。
【0054】
非偏光部の透過率は、例えば、非偏光部の平均輝度値、最大輝度値および最小輝度値を求め、最大輝度値を平均輝度値で割った数値または最小輝度値を平均輝度値で割った数値に基づいて評価することができる。具体的には、非偏光部に偏光機能が残存しており、透過率が低い場合に、得られる値も低くなる。
【0055】
検査装置400(実質的には、画像処理部440)は、必要に応じて、マーキング装置500に接続され得る。検査装置400(実質的には、画像処理部440)が非偏光部の形成不良を検出すると、不良検出信号をマーキング装置500に送信する。長尺状の偏光子を検査する場合、マーキング装置500は、該信号に基づいて、形成不良の非偏光部を含む偏光子片として裁断される領域にマーキングを行う。マーキングされた領域は、裁断後に不良偏光子片として容易に排除され得る。一方、裁断された枚葉の偏光子片(枚葉偏光板)を検査する場合、マーキング装置500は、該信号に基づいて、形成不良の非偏光部を含む偏光子片にマーキングを行う。マーキングとしては、マーカーペンを用いたマーキングやレーザーマーキングが挙げられる。
【0056】
[B.偏光板の製造方法]
本発明の非偏光部を有する偏光子の製造方法は、偏光子に非偏光部を形成すること、および、上記検査方法により非偏光部を有する偏光子を検査することを含む。
【0057】
B−1.非偏光部の形成工程
偏光子は、代表的には、上記樹脂フィルム(代表的には、PVA系樹脂フィルム)に膨潤処理、延伸処理、上記二色性物質による染色処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等の各種処理を施すことにより得られる。各種処理を施す際、樹脂フィルムは、基材上に形成された樹脂層であってもよい。この場合、偏光子は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光子とすること;により作製され得る。得られた樹脂基材/偏光子の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光子の保護層としてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体の偏光子表面に保護フィルムを貼り合わせ、次いで、樹脂基材を剥離して偏光子/保護フィルムの積層体としてもよい。
【0058】
非偏光部は、偏光子の所定の位置に形成される。偏光子が基材上に形成された樹脂層から形成されたものである場合には、代表的には、樹脂基材/偏光子の積層体または偏光子/保護フィルムの積層体が、非偏光部の形成に供される。偏光子が単一の樹脂フィルムである場合には、代表的には、偏光子単独または保護フィルム/偏光子の積層体が、非偏光部の形成に供される。以下、非偏光部の形成を具体的に説明する。代表例として、保護フィルム/偏光子の積層体において化学処理による脱色(以下、化学的脱色処理とも称する)により偏光子に非偏光部を形成する場合の一例を説明する。その他の構成の偏光子(例えば、単一の樹脂フィルムである偏光子)についても同様の手順が適用可能であることは当業者に明らかである。なお、化学的脱色処理による非偏光部の形成は、必ずしも偏光子の作製の完了後に行われる必要はない。具体的には、偏光子とするための各種処理(膨潤処理、延伸処理、染色処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等)の中から少なくとも延伸処理および染色処理が施されて、偏光子として使用し得る状態にされている樹脂フィルム(例えば、波長380nm〜780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示し、A項に記載の単体透過率および/または偏光度を有する樹脂フィルム)を化学処理による脱色による非偏光部の形成に供し、その後、必要に応じて、残りの処理を行ってもよい。
【0059】
化学的脱色処理においては、
図6に示すように、上記積層体の偏光子側の面に、所定のパターンで配置された貫通孔を有する表面保護フィルムをロールトゥロールにより貼り合わせる。本明細書において「ロールトゥロール」とは、ロール状のフィルムを搬送しながら互いの長尺方向を揃えて貼り合わせることをいう。貫通孔を有する表面保護フィルムは、任意の適切な粘着剤を介して偏光子に剥離可能に貼り合わせられる。貫通孔を有する表面保護フィルムを用いることにより、脱色液への浸漬による脱色処理が可能となるので、非常に高い製造効率で非偏光部を形成することができる。なお、便宜上、貫通孔を有する表面保護フィルムを第1の表面保護フィルムと称する場合がある。
【0060】
上記のとおり、第1の表面保護フィルムは、所定のパターンで配置された貫通孔を有する。貫通孔が設けられる位置は、偏光子の非偏光部が形成される位置に対応する。貫通孔は、任意の適切な形状を有し得る。貫通孔の形状は形成される非偏光部の平面視形状に対応する。貫通孔は、例えば、機械的打ち抜き(例えば、パンチング、トムソン刃打抜き、プロッター、ウォータージェット)またはフィルムの所定部分の除去(例えば、レーザーアブレーションまたは化学的溶解)により形成され得る。
【0061】
上記第1の表面保護フィルムの形成材料としては、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等のエステル系樹脂、ノルボルネン系樹脂等のシクロオレフィン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、これらの共重合体樹脂等が挙げられる。好ましくは、エステル系樹脂(特に、ポリエチレンテレフタレート系樹脂)である。弾性率が十分に高く、例えば、搬送および/または貼り合わせ時に張力をかけても貫通孔の変形が生じにくいからである。第1の表面保護フィルムの厚みは、代表的には20μm〜250μmであり、好ましくは30μm〜150μmである。
【0062】
好ましくは、上記積層体の保護フィルム側の面に、第2の表面保護フィルムをロールトゥロールにより貼り合わせる。第2の表面保護フィルムは、任意の適切な粘着剤を介して保護フィルムに剥離可能に貼り合わせられる。第2の表面保護フィルムを用いることにより、浸漬による脱色処理において上記積層体(偏光子/保護フィルム)が適切に保護され得る。第2の表面保護フィルムは、貫通孔が設けられていないこと以外は第1の表面保護フィルムと同様のフィルムが用いられ得る。
【0063】
次に、
図7Aおよび7Bに示すように、貫通孔152を有する第1の表面保護フィルム150/偏光子100/保護フィルム120/第2の表面保護フィルム160の積層体200を化学的脱色処理に供する。化学的脱色処理は、代表的には、積層体200を脱色液としての塩基性溶液と接触させることを含む。二色性物質としてヨウ素を用いる場合、樹脂フィルムの所望の部位に塩基性溶液を接触させることで、接触部のヨウ素含有量を容易に低減させることができる。
【0064】
積層体と塩基性溶液との接触は、任意の適切な手段により行われ得る。代表例としては、積層体の塩基性溶液への浸漬、あるいは、塩基性溶液の積層体への塗布または噴霧が挙げられる。浸漬が好ましい。
図7Bに示すように積層体200を搬送しながら脱色処理を行うことができるので、製造効率が顕著に高いからである。
【0065】
1つの実施形態においては、上記塩基性溶液は、偏光子と接触後、任意の適切な手段により偏光子から除去される。このような実施形態によれば、例えば、偏光子の使用に伴う非偏光部の透過率の低下をより確実に防止することができる。塩基性溶液の除去方法の具体例としては、洗浄、ウエス等による拭き取り除去、吸引除去、自然乾燥、加熱乾燥、送風乾燥、減圧乾燥等が挙げられる。好ましくは、塩基性溶液は洗浄される。洗浄に用いる洗浄液としては、例えば、水(純水)、メタノール、エタノール等のアルコール、および、これらの混合溶媒等が挙げられる。好ましくは、水が用いられる。洗浄回数は特に限定されず、複数回行ってもよい。塩基性溶液を乾燥により除去する場合、その乾燥温度は、例えば20℃〜100℃である。
【0066】
好ましくは、上記塩基性溶液との接触後、塩基性溶液を接触させた接触部において、樹脂フィルムに含まれるアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を低減させる。アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を低減させることにより、寸法安定性に優れた非偏光部を得ることができる。具体的には、加湿環境下においても、塩基性溶液との接触により形成された非偏光部の形状をそのまま維持することができる。
【0067】
上記低減させる方法としては、好ましくは、塩基性溶液との接触部に酸性溶液を接触させる方法が用いられる。このような方法によれば、酸性溶液にアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を効率的に移行させて、その含有量を低減させることができる。酸性溶液との接触は、上記塩基性溶液の除去後に行ってもよいし、塩基性溶液を除去することなく行ってもよい。
【0068】
上記酸性溶液に含まれる酸性化合物としては、任意の適切な酸性化合物を用いることができる。酸性化合物としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、フッ化水素等の無機酸、ギ酸、シュウ酸、クエン酸、酢酸、安息香酸等の有機酸等が挙げられる。酸性溶液に含まれる酸性化合物は、これらの中でも、好ましくは無機酸であり、さらに好ましくは塩酸、硫酸、硝酸である。これらの酸性化合物は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
酸性溶液の溶媒としては、水、アルコールが好ましく用いられる。酸性溶液の濃度は、例えば0.01N〜5Nであり、好ましくは0.05N〜3Nであり、さらに好ましくは0.1N〜2.5Nである。酸性溶液の液温は、例えば20℃〜50℃である。酸性溶液の接触時間は、例えば5秒〜5分である。なお、酸性溶液の接触方法は、上記塩基性溶液の接触方法と同様の方法が採用され得る。また、酸性溶液は、偏光子から除去され得る。酸性溶液の除去方法は、上記塩基性溶液の除去方法と同様の方法が採用され得る。
【0070】
なお、表面保護フィルムは、例えば、塩基性溶液との接触後、任意の適切なタイミングで剥離除去される。
【0071】
ここまで化学的脱色処理について説明してきたが、上記のとおり、非偏光部は、レーザー照射または機械的打ち抜き等によっても形成され得る。
【0072】
B−2.偏光板の作製工程
本発明の偏光板の製造方法は、代表的には、非偏光部を有する偏光子を用いて最終製品としての構成を有する偏光板を作製することをさらに含む。上記のとおり、偏光子が基材上に形成された樹脂層から形成されたものである場合、非偏光部が形成された偏光子は、代表的には、その片側に樹脂基材または保護フィルムが積層されている。これらの積層体は、そのまま偏光板として用いることができる。その一方で、これらの積層体をさらに本工程に供し、樹脂基材の剥離、保護フィルム等の他の構成部材の積層等を行うことにより、最終製品としての任意の適切な構成を有する偏光板を作製することができる。非偏光部を有する偏光子が単一の樹脂フィルムからなる場合も同様に、用途等に応じて、その片側または両側に保護フィルム等の他の構成部材を順次積層することにより、最終製品としての任意の適切な構成を有する偏光板を得ることができる。
【0073】
図8は、本工程で好ましく作製され得る偏光板の概略断面図である。偏光板は、偏光子と同様に長尺状であり得る。偏光板300は、偏光子100と偏光子100の両側に配置された保護フィルム110、120とを有する。図示例では、偏光子の両側に保護フィルムが配置されているが、片側にのみ保護フィルムが配置されていてもよい。保護フィルムの形成材料としては、例えば、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等のエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、これらの共重合体樹脂等が挙げられる。目的や所望の構成に応じて、保護フィルム110、120の一方は省略してもよい。
【0074】
保護フィルムの厚みは、代表的には10μm〜100μmである。保護フィルムは、代表的には、接着層(具体的には、接着剤層、粘着剤層)を介して偏光子に積層される。接着剤層は、代表的にはPVA系接着剤や活性エネルギー線硬化型接着剤で形成される。粘着剤層は、代表的にはアクリル系粘着剤で形成される。1つの実施形態においては、保護フィルムの厚みは80μm以下である。このような厚みの保護フィルムを用いることにより、得られる偏光板の薄型化に寄与し得る。一方で、一方面側に凹部が形成された偏光子のもう一方面側に、このような厚みの保護フィルムを配置させた長尺状の偏光板をロール状に巻回した場合に、上記凹部が保護フィルムに巻き痕として転写される等の段差による不具合が発生しやすいと考えられる。このような実施形態においては、凹部の段差を小さくするメリットが顕著に得られ得る。
【0075】
実用的には、偏光板300は、最外層として粘着剤層130を有する。粘着剤層130は、代表的には画像表示装置側の最外層となる。粘着剤層130には、セパレーター132が剥離可能に仮着され、実際の使用まで粘着剤層を保護するとともに、ロール形成を可能としている。
【0076】
偏光板300は、目的に応じて任意の適切な光学機能層をさらに有していてもよい。光学機能層の代表例としては、位相差フィルム(光学補償フィルム)、表面処理層が挙げられる。例えば、保護フィルム120と粘着剤層130との間に位相差フィルムが配置され得る(図示せず)。位相差フィルムの光学特性(例えば、屈折率楕円体、面内位相差、厚み方向位相差)は、目的、画像表示装置の特性等に応じて適切に設定され得る。位相差フィルムが保護フィルムを兼ねてもよい。この場合、保護フィルム120は省略され得る。逆に、保護フィルム120が、光学補償機能を有していてもよい(すなわち、目的に応じた適切な屈折率楕円体、面内位相差および厚み方向位相差を有していてもよい)。
【0077】
表面処理層は、保護フィルム110の外側に配置され得る(図示せず)。表面処理層の代表例としては、ハードコート層、反射防止層、アンチグレア層が挙げられる。表面処理層を設ける代わりに、保護フィルム110の表面に同様の表面処理を施してもよい。
【0078】
上記非偏光部の形成工程を経て得られる非偏光部を有する偏光子は、代表的には長尺状であることから、上記保護フィルム、位相差フィルム等の積層は、いわゆるロールトゥロールで行われ得る。
【0079】
B−3.偏光板の裁断工程
本発明の偏光板の製造方法は、長尺状の偏光板を所望のサイズに裁断することをさらに含み得る。裁断は、切断、打ち抜き等によって行われ得る。長尺状の偏光板は、好ましくは、取り付けられる画像表示装置に対応するサイズを有するとともに、画像表示装置に取り付けられた際にそのカメラ部と対応する位置に非偏光部を有するように裁断される。
【0080】
B−4.偏光子の検査工程
A項に記載の検査方法によって非偏光部を有する偏光子を検査する工程は、非偏光部が形成された後の任意の適切な段階で行われ得る。該偏光子の検査工程は、本発明の製造方法の全工程を通して1回のみ行われてもよく、複数回行われてもよい。
【0081】
1つの実施形態において、該偏光子の検査工程は、B−2項に記載の偏光板の作製工程における任意の適切な段階または該工程の完了後に行われ得る。例えば、最終製品としての構成を有する偏光板を作製し、次いで、偏光子の検査を行ってもよい。また例えば、保護フィルム/偏光子の積層体の偏光子側に位相差フィルムおよび/または保護フィルムを積層した後に、偏光子の検査を行い、次いで、表面処理層、粘着剤層等を積層してもよい。このような段階で偏光子の検査を行うことにより、最終製品としての構成を有するとともに、形成不良の非偏光部および/または気泡を有する偏光子片(枚葉の偏光板)として裁断される領域がマーキング等により識別可能とされた長尺状の偏光板が得られ得る。当該偏光板は、その後の裁断工程において裁断され、形成不良の非偏光部を有する偏光子片(枚葉の偏光板)が容易に排除され得る。
【0082】
別の実施形態において、該偏光子の検査工程は、B−3項に記載の偏光板の裁断工程後に行われ得る。裁断により得られた偏光子片を検査に供することにより、形成不良の非偏光部および/または非偏光部周辺に気泡を有する偏光子片を容易に排除することができる。また、上記検査方法は、偏光子の光の照射面を撮像する反射照明方式を採用していることから、コンベア等の搬送ライン上に載置された偏光子片(枚葉偏光板)の検査に特に有用である。
【0083】
さらに別の実施形態において、該偏光子の検査工程は、B−1項に記載の非偏光部の形成工程における任意の適切な段階または該工程の完了後に行われ得る。非偏光部が化学的脱色処理によって形成される場合の具体例について
図7Bを参照しつつ説明すると、該検査工程は、塩基性溶液との接触処理が完了した段階(a)、塩基性溶液との接触後の洗浄が完了した段階(b)、アルカリ金属および/またはアルカリ金属塩の含有量を低減させるための処理液(
図7Bでは、酸性溶液)との接触が完了した段階(c)、および/または、該処理液との接触後の洗浄が完了した段階(d)で行われ得る。このような段階で検査工程を行い、形状および/または特性が不良と判断される非偏光部の割合が許容範囲を超えた場合には、それ以前の処理に不具合が生じていることが疑われる。よって、塩基性溶液、酸性溶液等の濃度、浸漬時間等の各種処理条件を確認、調整等することにより、不具合を早期に発見および解消し得る。その結果、非偏光部の形成工程を好適に制御し得ることから、非偏光部を有する偏光子の製造効率の向上に寄与し得る。
【0084】
B−1項に記載のとおり、非偏光部が化学的脱色処理によって形成される場合、代表的には、偏光子はその一方の側に貫通孔を有する表面保護フィルム(第1の表面保護フィルムともいう)が貼り合わせられた状態で化学的脱色処理を施され、非偏光部の形成後に(例えば、
図7Bの段階(d)で)第1の表面保護フィルムが剥離される。よって、該偏光子の検査工程に供される偏光子は、一方の側に第1の表面保護フィルム150が積層された状態(
図7A)であってもよく、該第1の表面保護フィルム150が剥離除去された状態(図示せず)であってもよい。第2の表面保護フィルムについても同様に、偏光子の検査工程に供される偏光子は、他方の側に第2の表面保護フィルム160が積層された状態(
図7A)であってもよく、該第2の表面保護フィルム160が剥離除去された状態(図示せず)であってもよい。
【0085】
[C.偏光板の用途]
B項に記載の製造方法で得られる偏光板は、画像表示装置に好適に用いられ得る。画像表示装置は、所定のサイズに裁断された上記偏光板を備える。画像表示装置としては、例えば、液晶表示装置、有機ELデバイスが挙げられる。具体的には、液晶表示装置は、液晶セルと、この液晶セルの片側もしくは両側に配置された上記偏光板とを含む液晶パネルを備える。有機ELデバイスは、視認側に上記偏光板が配置された有機ELパネルを備える。偏光板は、偏光子の非偏光部が画像表示装置のカメラ部に対応するように配置されている。