特許第6604815号(P6604815)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6604815
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】排ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/94 20060101AFI20191031BHJP
   B01J 23/63 20060101ALI20191031BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20191031BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20191031BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20191031BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   B01D53/94 222
   B01J23/63 AZAB
   B01J37/08
   B01J37/02 301C
   F01N3/10 A
   F01N3/08 A
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-211242(P2015-211242)
(22)【出願日】2015年10月27日
(65)【公開番号】特開2017-80673(P2017-80673A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年6月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】洞口 恵次
(72)【発明者】
【氏名】辻 誠
(72)【発明者】
【氏名】今井 啓人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 康吉
(72)【発明者】
【氏名】吉田 浩人
(72)【発明者】
【氏名】信川 健
【審査官】 小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−052627(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/065421(WO,A1)
【文献】 特開2011−005443(JP,A)
【文献】 特開2002−204958(JP,A)
【文献】 特開平04−027430(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0180464(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/86、53/94
B01J 21/00−38/74
F01N 3/08、3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体粒子にRhとBaを担持してなるRh−Ba担持触媒と、担体粒子にPt及び/又はPdとBaを担持してなるPt/Pd−Ba担持触媒とを含む触媒層を基材上に有する、排ガス浄化装置であって、以下の条件(a)を満たし、かつ、(b)及び(c)のうちの少なくとも一つを満たす、排ガス浄化装置:
(a)前記触媒層において、EPMA測定によって算出されるRh−Ba分散度が、0.001超1.000未満;
(b)前記Rh−Ba担持触媒における前記担体粒子の重量に対するBaの担持量が、0.01質量%超10.00質量%未満であり、かつ前記Pt/Pd−Ba担持触媒における前記担体粒子の重量に対するBaの担持量が、10.00質量%以上20.00質量%以下;
(c)前記Rh−Ba担持触媒における前記担体粒子の重量に対するBaの担持量が、前記Pt/Pd−Ba担持触媒における前記担体粒子の重量に対するBaの担持量の0.005倍超0.800倍未満。
【請求項2】
前記触媒層が、前記(b)を少なくとも満たす、請求項1に記載の排ガス浄化装置。
【請求項3】
前記触媒層が、前記(c)を少なくとも満たす、請求項1又は2に記載の排ガス浄化装置。
【請求項4】
前記担体粒子が、アルミナを含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置。
【請求項5】
前記触媒層が、セリア−ジルコニア複合酸化物をさらに含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置。
【請求項6】
前記触媒層が二層以上からなり、そのうちの少なくとも一層が前記Rh−Ba担持触媒及び前記Pt/Pd−Ba担持触媒を含み、他の層が前記Pt/Pd−Ba担持触媒を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置。
【請求項7】
担体粒子にRhとBaを担持してなるRh−Ba担持触媒、並びに担体粒子にPt及び/又はPdとBaを担持してなるPt/Pd−Ba担持触媒を含む触媒層と、バインダーと、水とを含み、pHが4〜8であるスラリーを調製すること、及び
前記スラリーを基材に含浸させ乾燥後に焼成して、前記基材上にスラリー成分を担持すること、を含む排ガス浄化装置の製造方法であって、
以下の条件(a)を満たし、かつ、(b)及び(c)のうちの少なくとも一つを満たす、排ガス浄化装置の製造方法:
(a)前記触媒層において、EPMA測定によって算出されるRh−Ba分散度が、0.001超1.000未満;
(b)前記Rh−Ba担持触媒における前記担体粒子の重量に対するBaの担持量が、0.01質量%超10.00質量%未満であり、かつ前記Pt/Pd−Ba担持触媒における前記担体粒子の重量に対するBaの担持量が、10.00質量%以上20.00質量%以下;
(c)前記Rh−Ba担持触媒における前記担体粒子の重量に対するBaの担持量が、前記Pt/Pd−Ba担持触媒における前記担体粒子の重量に対するBaの担持量の0.005倍超0.800倍未満。
【請求項8】
前記触媒層が、前記(b)を少なくとも満たす、請求項に記載の排ガス浄化装置の製造方法。
【請求項9】
前記触媒層が、前記(c)を少なくとも満たす、請求項7又は8に記載の排ガス浄化装置の製造方法。
【請求項10】
前記Rh−Ba担持触媒及び前記Pt/Pd−Ba担持触媒の調製において、Ba塩として酢酸バリウムを用いる、請求項のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置の製造方法。
【請求項11】
以下の一連の工程を以下に記載の順に行うことによって、前記Rh−Ba担持触媒を調製することを含む、請求項10に記載の排ガス浄化装置の製造方法:
(1)水に前記担体粒子を分散させて分散液1を調製すること、
(2)前記分散液1に、Rh塩を含む水溶液を添加した後、混合及び乾燥して、Rh担持触媒を得ること、
(3)前記Rh担持触媒を水に分散させて分散液2を得ること、
(4)前記分散液2に、酢酸バリウムを含む水溶液を添加した後、混合及び焼成して、前記Rh−Ba担持触媒を得ること。
【請求項12】
以下の一連の工程を以下に記載の順に行うことによって、前記Pt/Pd−Ba担持触媒を調製することを含む、請求項10又は11に記載の排ガス浄化装置の製造方法:
(1)水に前記担体粒子を分散させて分散液3を調製すること、
(2)前記分散液3に、Pt及び/又はPdの塩を含む水溶液を添加した後、混合及び乾燥して、Pt/Pd担持触媒を得ること、
(3)前記Pt/Pd担持触媒を水に分散させて分散液4を得ること、
(4)前記分散液4に、酢酸バリウムを含む水溶液を添加した後、混合及び焼成して、前記Pt/Pd−Ba担持触媒を得ること。
【請求項13】
前記触媒層が、セリア−ジルコニア複合酸化物をさらに含む、請求項〜12のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置の製造方法。
【請求項14】
前記バインダーが、ベーマイトゾルを含む、請求項〜13のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界的に排ガス規制が強化されており、HC、CO、NOの中でも特にNOについての規制を強化する動きが存在している。排ガス用浄化触媒において、NO吸蔵能を向上させるために、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類元素等であるNO吸蔵材を、貴金属等と共に担体粒子に担持させたNO吸蔵還元型触媒が利用されている。
【0003】
NO吸蔵還元型触媒は、白金族金属、例えば白金(Pt)、パラジウム(Pd)及びロジウム(Rh)と並んで、NO吸蔵材としてのアルカリ金属、アルカリ土類金属等を担体粒子に担持させたものが知られている。このうち、Pt及びPdは主として、リーン雰囲気において、CO及びHCの酸化浄化、及びNOのNOへの酸化に寄与し、そしてRhは主として、リッチ雰囲気下において、NOの還元浄化に寄与する。一方でアルカリ土類金属であるBaは、リーン雰囲気下ではPt及びPdにより酸化されて生成したNOを一時的に吸蔵し、そしてストイキ〜リッチ雰囲気下では吸蔵していたNOを放出する。放出されたNOは、Rhの作用により排ガス中に含まれる還元性成分と反応して浄化される。
【0004】
これに関して、特許文献1では、同一担体粒子上にPt及びRhを担持した後にBaをさらに担持して、同一担体粒子上にPtとRh及びBaを共存させたNO吸蔵型還元触媒を開示している。
【0005】
特許文献2及び3において、RhとBaが同一担体粒子上に存在する場合、Baの効果によりRhの酸素被毒が促進され、NO浄化性能が低下することが開示されている。これに関して、特許文献2及び3では、このような見知に基づいてRhとBaとを互いに分離した状態でそれぞれ別の担体粒子上に担持することで、NOの浄化性能を向上させることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3997783号公報
【特許文献2】特開2002−326033号公報
【特許文献3】特開平09−215922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、NOの浄化性能を向上させることが可能な、排ガス浄化装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、以下の手段により、上記課題を解決することができることを見出した。
[1]担体粒子にRhとBaを担持してなるRh−Ba担持触媒と、担体粒子にPt及び/又はPdとBaを担持してなるPt/Pd−Ba担持触媒とを含む触媒層を基材上に有する、排ガス浄化装置であって、以下の条件(a)〜(c)の少なくとも一つを満たす、排ガス浄化装置:
(a)前記触媒層において、EPMA測定によって算出されるRh−Ba分散度が、0.001超1.000未満;
(b)前記Rh−Ba担持触媒における前記担体粒子の重量に対するBaの担持量が、0.01質量%超10.00質量%未満であり、かつ前記Pt/Pd−Ba担持触媒における前記担体粒子の重量に対するBaの担持量が、10.00質量%以上20.00質量%以下;
(c)前記Rh−Ba担持触媒における前記担体粒子の重量に対するBaの担持量が、前記Pt/Pd−Ba担持触媒における前記担体粒子の重量に対するBaの担持量の0.005倍超0.800倍未満。
[2]前記触媒層が、前記(a)を少なくとも満たす、[1]に記載の排ガス浄化装置。
[3]前記触媒層が、前記(b)を少なくとも満たす、[1]に記載の排ガス浄化装置。
[4]前記触媒層が、前記(c)を少なくとも満たす、[1]に記載の排ガス浄化装置。
[5]前記担体粒子が、アルミナを含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の排ガス浄化装置。
[6]前記触媒層が、セリア−ジルコニア複合酸化物をさらに含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の排ガス浄化装置。
[7]前記触媒層が二層以上からなり、そのうちの少なくとも一層が前記Rh−Ba担持触媒及び前記Pt/Pd−Ba担持触媒を含み、他の層が前記Pt/Pd−Ba担持触媒を含む、[1]〜[6]のいずれかに記載の排ガス浄化装置。
[8]担体粒子にRhとBaを担持してなるRh−Ba担持触媒、並びに担体粒子にPt及び/又はPdとBaを担持してなるPt/Pd−Ba担持触媒を含む触媒層と、バインダーと、水とを含み、pHが4〜8であるスラリーを調製すること、及び
前記スラリーを基材に含浸させ乾燥後に焼成して、前記基材上にスラリー成分を担持すること、を含む排ガス浄化装置の製造方法であって、
以下の条件(a)〜(c)の少なくとも一つを満たす、排ガス浄化装置の製造方法:
(a)前記触媒層において、EPMA測定によって算出されるRh−Ba分散度が、0.001超1.000未満;
(b)前記Rh−Ba担持触媒における前記担体粒子の重量に対するBaの担持量が、0.01質量%超10.00質量%未満であり、かつ前記Pt/Pd−Ba担持触媒における前記担体粒子の重量に対するBaの担持量が、10.00質量%以上20.00質量%以下;
(c)前記Rh−Ba担持触媒における前記担体粒子の重量に対するBaの担持量が、前記Pt/Pd−Ba担持触媒における前記担体粒子の重量に対するBaの担持量の0.005倍超0.800倍未満。
[9]前記触媒層が、前記(a)を少なくとも満たす、[8]に記載の排ガス浄化装置の製造方法。
[10]前記触媒層が、前記(b)を少なくとも満たす、[8]に記載の排ガス浄化装置の製造方法。
[11]前記触媒層が、前記(c)を少なくとも満たす、[8]に記載の排ガス浄化装置の製造方法。
[12]前記Rh−Ba担持触媒及び前記Pt/Pd−Ba担持触媒の調製において、Ba塩として酢酸バリウムを用いる、[8]〜[11]のいずれかに記載の排ガス浄化装置の製造方法。
[13]前記触媒層が、セリア−ジルコニア複合酸化物をさらに含む、[8]〜[12]のいずれかに記載の排ガス浄化装置の製造方法。
[14]前記バインダーが、ベーマイトゾルを含む、[8]〜[13]のいずれかに記載の排ガス浄化装置の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、NOの浄化性能を向上させることが可能な、排ガス浄化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の排ガス浄化装置の概念図である。
図2】本発明の排ガス浄化装置によるNO浄化機構の概念図である。
図3】FE−EPMA測定結果の一例である。
図4】Rh−Ba分散度の説明図である。
図5】触媒層が1層の場合におけるNO浄化率の結果を示す図である。
図6】触媒層が2層の場合におけるNO浄化率の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
《排ガス浄化装置》
本発明の排ガス浄化装置は、担体粒子にRhとBaを担持してなるRh−Ba担持触媒と、担体粒子にPt及び/又はPdとBaを担持してなるPt/Pd−Ba担持触媒とを含む触媒層を基材上に有し、かつ以下の条件(a)〜(c)の少なくとも一つを満たす排ガス浄化装置である。
(a)触媒層において、EPMA測定によって算出されるRh−Ba分散度が、0.001超1.000未満;
(b)Rh−Ba担持触媒における担体粒子の重量に対するBaの担持量が、0.01質量%超10.00質量%未満であり、かつPt/Pd−Ba担持触媒における担体粒子の重量に対するBaの担持量が、10.00質量%以上20.00質量%以下;
(c)Rh−Ba担持触媒における担体粒子の重量に対するBaの担持量が、Pt/Pd−Ba担持触媒における担体粒子の重量に対するBaの担持量の0.005倍超0.800倍未満。
【0012】
例えば、図1(a)に示されるように、本発明の排ガス浄化装置は、担体粒子(13)にRh(12)とBa(11)を担持してなるRh−Ba担持触媒と、担体粒子(13)にPt及び/又はPd(10)とBa(11)を担持してなるPt/Pd−Ba担持触媒とを含む触媒層を基材上に有する、排ガス浄化装置である。
【0013】
特許文献2及び3では、図1(b)に示されるように、Rh(12)とBa(11)とを積極的に分離させた場合にNOの浄化性能を向上させることが可能とされている。しかし、本発明者らは、RhとBaとが完全に分離している場合には、図2(b)に示されるように、Ba(11)上で吸蔵されたNOが、Rh(12)へと移動する過程が律速となり、NO浄化性能がかえって低下してしまうと推定した。
【0014】
そこで、このような見地から、本発明者らは、図2(a)に示されるように、Rh(12)をBa(11)と完全に分離させることなく、一定程度分離させるとともに、Pt又はPd(10)を積極的にBa(11)と共存させた。これにより、Pt又はPd(10)はNOをNOへと酸化して、近接したBa(11)上にNOを貯蔵することができる。そしてRhの近傍のBa上にもNOが貯蔵されるため、吸蔵されたNOのRh(12)への移動をスムーズにし、NO浄化性能を向上させることができる、本発明の排ガス浄化装置を見出した。
【0015】
〈触媒層〉
排ガス浄化装置の触媒層は、担体粒子にRhとBaを担持してなるRh−Ba担持触媒と、担体粒子にPt及び/又はPdとBaを担持してなるPt/Pd−Ba担持触媒とを含む。RhとBaとを完全に分離させることなく、一定程度分離させる観点から、この触媒層において、EPMA測定によって算出されるRh−Ba分散度は、0.001超、0.01以上又は0.05以上であってよく、1.000未満、0.900以下又は0.600以下であってよい。
【0016】
Rh−Ba分散度が上記範囲内である場合、RhとBaが一定程度分離されるため、Baの効果によるRhの酸素被毒が抑制され、そして、Ba上で吸蔵されたNOがRhへとスムーズに移動するため、NO浄化性能を向上させることができる点で好ましい。
【0017】
同様の観点から、Rh−Ba担持触媒における担体粒子の重量に対するBaの担持量は、0.01質量%超、0.10質量%以上又は0.50質量%以上であってよく、10.00質量%未満、9.30質量%以下又は6.50質量%以下であってよい。そしてPt/Pd−Ba担持触媒における担体粒子の重量に対するBaの担持量が、10.00質量%以上、15.00質量%以上又は20.00質量%以上であってよく、20.00質量%以下、25.00質量%以下又は30.00質量%以下であってよい。
【0018】
Rh−Ba担持触媒における担体粒子の重量に対するBaの担持量が上記範囲内である場合、RhとBaが一定程度分離されるため、Baの効果によるRhの酸素被毒が抑制され、そして、Ba上で吸蔵されたNOがRhへとスムーズに移動するため、NO浄化性能を向上させることができる点で好ましい。
【0019】
さらにPt/Pd−Ba担持触媒における担体粒子の重量に対するBaの担持量が上記範囲内である場合、Pt又はPdがNOをNOへと酸化して、近接したBa上にNOを十分に貯蔵することができる点で好ましい。
【0020】
そして、同様の観点から、Rh−Ba担持触媒における担体粒子の重量に対するBaの担持量が、Pt/Pd−Ba担持触媒における担体粒子の重量に対するBaの担持量の0.005倍超、0.006倍以上、0.02倍以上又は0.05倍以上であってよく、0.800倍未満、0.770倍以下、0.700倍以下又は0.500倍以下であってよい。
【0021】
上記範囲内である場合、RhをBaと完全に分離させることなく、一定程度分離させるとともに、Pt又はPdを積極的にBaと共存させることができる点で好ましい。これにより、Pt又はPdはNOをNOへと酸化して、近接したBa上にNOを貯蔵することができる。そしてRhの近傍のBa上にもNOが貯蔵されるため、貯蔵されたNOのRhへの移動をスムーズにし、NO浄化性能を向上させることができる。
【0022】
(Rh−Ba分散度)
本発明において、Rh−Ba分散度は、FE−EPMA(電界放出型電子線マイクロアナライザー)測定装置(JXA−8530F、日本電子株式会社製)を用いて測定することができる。具体的には、FE−EPMA測定装置で観察したときに、触媒層の単位面積あたりのBa濃度(Baave)及びRh担持粒子が存在する領域についての単位面積あたりのBa濃度(BaRh)を算出し、Rh−Ba分散度(BaRh/Baave)を求めることができる。上記算出は、装置に付帯する画像処理ソフト(JEOL Electron Probe Micro Analyzer ver.1.7.0.5)を使用して行うことができる。図3に示されるように、画像処理ソフトを用いて選択した範囲内(図3の線内)での色相の強度値と面積から容易に濃度を定量化することができる。
【0023】
具体的には、Rh−Ba分散度(BaRh/Baave)は、Fe−EPMA測定を用いて以下の手順で求めることができる。図3(a)に示されるように、触媒層のBa分布測定結果から、単位面積あたりのBa濃度(Baave)を算出する。続いて図3(b)に示されるように、触媒層のRh分布測定結果からRh担持粒子を検出し、図3(c)に示されるように、Rh担持粒子とBaとの重なりから、Rh担持粒子が存在する領域についての単位面積あたりのBa濃度(BaRh)を算出する。得られたBaave及びBaRhからRh−Ba分散度(BaRh/Baave)を求める。
【0024】
本発明におけるRh−Ba分散度(BaRh/Baave)について、さらに以下に詳述する。例えば、Rh−Ba分散度が0とは、図4(a)に示されるように、Rh担持粒子上にBaが担持されていない場合であり、RhとBaが完全に分離した状態を示している。また、Rh−Ba分散度が1とは、図4(b)に示されるように、Rh担持粒子上、並びにPt及び/又はPd担持粒子上にBaが均等に担持されている場合であり、RhとBaが分離されていない状態を示している。したがって、Rh−Ba分散度が小さいほど、BaはRh担持粒子上に担持されておらず、RhとBaとが分離された状態を示している。
【0025】
(担体粒子)
担体粒子としては、上記金属粒子が、長期にわたって安定的に担持できる担体粒子であれば特に限定されない。このような担体粒子としては、高比表面積の酸化物、非酸化物等の材料で構成された粒子を挙げることができる。
【0026】
このような担体粒子の材料としては、アルミナ、セリア、ジルコニア、シリカ、チタニア、及びそれらの固溶体(例えばセリア−ジルコニア複合酸化物(CZ))、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。これらの材料には、さらに酸化バリウム、酸化ランタン、酸化イットリウム等が含まれていてもよい(例えば、ジルコニウム−セリウム−イットリウム酸化物(ZCY))。排ガス浄化装置の熱安定性を高めるという観点からは、耐熱性の高いアルミナ、ジルコニア等のセラミックスを担体粒子として用いることが好ましい。
【0027】
アルミナ系材料としては、γ−アルミナの他、シリカ−アルミナ系、及びβ−アルミナ等のアルミナ系の多孔質担体粒子を用いることができる。また非酸化物として、窒化ケイ素、窒化アルミ、炭化ケイ素、窒化チタン等も長期にわたり安定であるので、担体粒子として好ましく用いることが可能である。
【0028】
担体粒子は、RhとBaを担持する担体粒子と、Pt及び/又はPdとBaを担持する担体粒子とが異なる組成又は材料であってもよく、実質的に同一の組成又は材料であってもよい。
【0029】
担体粒子の比表面積は、担持性、耐熱性、構造安定性等の観点から、例えば30m/g以上、50m/g以上、100m/g以上、150m/g以上又は200m/g以上であってもよく、2000m/g以下、1000m/g以下、800m/g以下、500m/g以下、又は400m/g以下であってもよい。
【0030】
(助触媒)
触媒層は、更なるNO浄化性能の向上を図るため、Rh−Ba担持触媒及びPt/Pd−Ba担持触媒とは異なる組成を有する助触媒成分を1種以上含んでいてもよい。例えば、助触媒成分としては、酸素吸蔵放出成分(例えばセリア、セリア−ジルコニア複合酸化物(CZ))、ジルコニア、ゼオライト等が挙げられる。
【0031】
(層構成)
その他、触媒層の層構成は、一層でもよいが、二層以上とすることができる。触媒層が二層以上からなる場合、そのうちの少なくとも一層がRh−Ba担持触媒及びPt/Pd−Ba担持触媒を含み、他の層がPt/Pd−Ba担持触媒を含む層であればよい。触媒層の層構成が二層の場合、上層がPt/Pd−Ba担持触媒を含む層であって、下層がRh−Ba担持触媒及びPt/Pd−Ba担持触媒を含む層であると効果的であるが、本発明の目的を損なわない限り、上層がRh−Ba担持触媒及びPt/Pd−Ba担持触媒を含む層であって、下層がPt/Pd−Ba担持触媒を含む層であってもよい。
【0032】
〈基材〉
基材としては、特に限定されずに一般に排ガス浄化装置において用いられる任意の材料を使用することができる。具体的には、基材としては、多数のセルを有するハニカム形状の材料を使用することができ、例えば、コージェライト(2MgO・2Al・5SiO)、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素等の耐熱性を有するセラミックス材料や、ステンレス鋼等の金属箔からなるメタル材料を使用することができる。
【0033】
以下に本発明の排ガス浄化装置の製造方法について述べる。本発明の排ガス浄化装置、及び本発明の排ガス浄化装置の製造方法における実施態様については、相互に参照することによって本発明が理解される。
【0034】
《排ガス浄化装置の製造方法》
本発明の排ガス浄化装置の製造方法は、担体粒子にRhとBaを担持してなるRh−Ba担持触媒、並びに担体粒子にPt及び/又はPdとBaを担持してなるPt/Pd−Ba担持触媒を含む触媒層と、バインダーと、水とを含み、pHが4〜8であるスラリーを調製すること、及びそのスラリーを基材に含浸させ乾燥後に焼成して、基材上にスラリー成分を担持すること、を含む。
【0035】
この方法は、以下の条件(a)〜(c)の少なくとも一つを満たす:
(a)触媒層において、EPMA測定によって算出されるRh−Ba分散度が、0.001超1.000未満;
(b)Rh−Ba担持触媒における担体粒子の重量に対するBaの担持量が、0.01質量%超10.00質量%未満であり、かつPt/Pd−Ba担持触媒における担体粒子の重量に対するBaの担持量が、10.00質量%以上20.00質量%以下;
(c)Rh−Ba担持触媒における担体粒子の重量に対するBaの担持量が、Pt/Pd−Ba担持触媒における担体粒子の重量に対するBaの担持量の0.005倍超、0.800倍未満。
【0036】
(Rh−Ba担持触媒の調製方法)
Rh−Ba担持触媒は、例えば以下の工程によって得ることができる。水に担体粒子を分散させ分散液1を調製する。この分散液1にRh塩を含む水溶液をさらに添加し、十分に混合、乾燥することによって、担体粒子にRhが担持されたRh担持粒子を得る。続いて、このRh担持粒子を再度水に分散させ分散液2を調製する。この分散液2にBa塩を含む水溶液をさらに添加し、十分に混合、乾燥、その後焼成することによって、担体粒子にRhとBaが担持されたRh−Ba担持触媒を得ることができる。ここで用いることができるRh塩としては、硝酸ロジウム、塩化ロジウム、水酸化ロジウムなどの水に可溶な塩が挙げられる。
【0037】
(Pt/Pd−Ba担持触媒の調製方法)
Pt/Pd−Ba担持触媒は、例えば以下の工程によって得ることができる。水に担体粒子を分散させ分散液3を調製する。この分散液3にPt及び/又はPdの塩を含む水溶液をさらに添加し、十分に混合、乾燥することによって、担体粒子にPt及び/又はPdが担持されたPt/Pd担持粒子を得る。続いて、このPt/Pd担持粒子を再度水に分散させ分散液4を調製する。この分散液4にBa塩を含む水溶液をさらに添加し、十分に混合、乾燥、その後焼成することによって、担体粒子にPt及び/又はPdとBaが担持されたPt/Pd−Ba担持触媒を得ることができる。ここで用いることができるPt及び/又はPdの塩としては、硝酸白金、塩化白金、硝酸パラジウム、塩化パラジウムなどの水に可溶な塩が挙げられる。
【0038】
上記Rh−Ba担持触媒及びPt/Pd−Ba担持触媒の調製方法において、乾燥温度は、例えば70℃以上、80℃以上、又は90℃以上であってよく、150℃以下、120℃以下、110℃以下、又は100℃以下であってよい。
【0039】
上記Rh−Ba担持触媒及びPt/Pd−Ba担持触媒の調製方法において、焼成温度は、例えば300℃以上、400℃以上、又は500℃以上であってもよく、1500℃以下、1300℃以下、又は1100℃以下であってもよい。焼成時間は、1時間以上、2時間以上、又は4時間以上であってもよく、10時間以下、又は8時間以下であってもよい。
【0040】
Rh−Ba担持触媒及びPt/Pd−Ba担持触媒の調製において、用いることができるBa塩として、例えば酢酸バリウム、塩化バリウム、硝酸バリウム、水酸化バリウムなどの水に可溶な塩が挙げられる。その中でも水への可溶性に優れた酢酸バリウムや塩化バリウムを用いることが特に好ましい。一方で、硫酸バリウム、炭酸バリウムなどの難溶性の塩は、担体粒子に担持することができないため好ましくない。
【0041】
本発明では、Rh−Ba担持触媒及びPt/Pd−Ba担持触媒を別々に調製することによって、RhとBaとの一定程度の分離を実現できるとともに、Pt又はPdにおいては積極的にBaと共存させることができる。
【0042】
(スラリーの調整)
本発明の排ガス浄化装置の製造方法は、Rh−Ba担持触媒、及びPt/Pd−Ba担持触媒を含む触媒層と、バインダーと、水とを含み、pHが4〜8であるスラリーを調製する工程を含む。
【0043】
スラリーのpHは、4以上、5以上、6以上又は7以上であってよく、8以下、7以下、6以下又は5以下であってよい。上記範囲内である場合、スラリーに含有するRh−Ba担持触媒、及びPt/Pd−Ba担持触媒が溶出するのを防ぐことができるとともに、スラリーが凝集するのを抑制することができ、そして本発明の排ガス浄化装置を適切に製造することができる点で好ましい。
【0044】
必要に応じてpH調製のため、酸又はアルカリを配合することができる。用いることができる酸としては、無機酸、有機酸のいずれでもよく、無機酸としては塩酸、硫酸、硝酸等を使用することができる。また用いることができるアルカリとしては、無機塩基、有機塩基のいずれでもよく、無機塩基としては水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム等を使用することができる。
【0045】
その他、粘性の調製やスラリー分散性向上のための界面活性剤、分散用樹脂等をさらに含むことができる。
【0046】
バインダーは、担体粒子同士の結合及び担体粒子と貴金属との結合をより強固にして排ガス浄化装置の耐久性を向上させる役割を担っている。バインダーとしては、例えば、ベーマイトゾル、チタニアゾル又はシリカゾル、並びにそれらの組み合わせを使用することができる。
【0047】
本発明の排ガス浄化装置の製造方法は、スラリーを基材に含浸させ乾燥後に焼成して、基材上にスラリー成分を担持する工程を含む。乾燥温度、焼成温度及び焼成時間は、Rh−Ba担持触媒及びPt/Pd−Ba担持触媒の調製における条件と同様にして行うことができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲は限定されるものではない。
【0049】
《排ガス浄化装置の調製》
[実施例1]
(Pt−Ba担持アルミナの調製)
水にアルミナを分散させ、その後、アルミナに対するPtの担持量が1.0質量%となるように硝酸白金溶液を加えた。混合物を乾燥して、Pt担持アルミナ粉末を調製した。水に得られたPt担持アルミナ粉末を分散させ、その後、アルミナに対するBaの担持量が13.4質量%となるように酢酸バリウムを加えた。混合物を乾燥して、Pt−Ba担持アルミナ粉末を調製した。その後、得られたPt−Ba担持アルミナ粉末を400℃〜600℃で焼成し、Pt−Ba担持アルミナを得た。担持されたBaは炭酸バリウムとして存在していることをXRD測定によって確認した。
【0050】
(Pd担持アルミナの調製)
水にアルミナを分散させ、その後、アルミナに対するPdの担持量が3.0質量%となるように硝酸パラジウム溶液を加えた。混合物を乾燥して、Pd担持アルミナを得た。
【0051】
(Rh−Ba担持アルミナの調製)
水にアルミナを分散させ、その後、アルミナに対するRhの担持量が1.0質量%となるように硝酸ロジウム溶液を加えた。混合物を乾燥して、Rh担持アルミナ粉末を調製した。水に得られたRh担持アルミナ粉末を分散させ、その後、アルミナに対するBaの担持量が0.1質量%となるように酢酸バリウムを加えた。混合物を乾燥して、Rh−Ba担持アルミナ粉末を調製した。その後、得られたRh−Ba担持アルミナ粉末を400℃〜600℃で焼成し、Rh−Ba担持アルミナを得た。担持されたBaは炭酸バリウムとして存在していることをXRD測定によって確認した。
【0052】
(排ガス浄化装置の調製)
水に上記で調製した、Pt−Ba担持アルミナ、Pd担持アルミナ、Rh−Ba担持アルミナ、セリア−ジルコニア複合酸化物(CZ材料)、及びベーマイトゾルを混合して、湿式で粉砕してスラリーを調製した。スラリーのpHは5であった。得られたスラリーをコージェライト製ハニカム基材1Lあたり290g塗布後、乾燥、続いて焼成を行うことにより、実施例1の排ガス浄化装置を得た。
【0053】
[実施例2〜5、及び比較例1〜4]
実施例1のPt−Ba担持アルミナの調製におけるアルミナに対するBaの担持量、及び実施例1のRh−Ba担持アルミナの調製におけるアルミナに対するBaの担持量を下記の表1に記載のように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で実施例2〜5及び比較例1〜4の排ガス浄化装置を得た。
【0054】
[実施例6]
(Pt−Ba担持アルミナ1の調製)
実施例1のPt−Ba担持アルミナの調製において、アルミナに対するPtの担持量が0.5質量%となるように硝酸白金溶液を加えたこと、及びアルミナに対するBaの担持量が13.0質量%となるように酢酸バリウムを加えたこと以外は、実施例1のPt−Ba担持アルミナの調製と同様の方法でPt−Ba担持アルミナ1を得た。
【0055】
(Pd担持アルミナの調製)
実施例1のPd担持アルミナの調製と同様の方法でPd担持アルミナを得た。
【0056】
(Rh−Ba担持アルミナの調製)
実施例1のRh−Ba担持アルミナの調製において、アルミナに対するBaの担持量が6.0質量%となるように酢酸バリウムを加えたこと以外は、実施例1のRh−Ba担持アルミナの調製と同様の方法でRh−Ba担持アルミナを得た。
【0057】
(スラリー1の調整)
水に上記で調製した、Pt−Ba担持アルミナ1、Pd担持アルミナ、Rh−Ba担持アルミナ、セリア−ジルコニア複合酸化物(CZ材料)及びベーマイトゾルを混合して、湿式で粉砕してスラリー1を調製した。スラリーのpHは5であった。
【0058】
(Pt−Ba担持アルミナ2の調製)
実施例1のPt−Ba担持アルミナの調製において、アルミナに対するPtの担持量が2.0質量%となるように硝酸白金溶液を加えたこと、及びアルミナに対するBaの担持量が8.5質量%となるように酢酸バリウムを加えたこと以外は、実施例1のPt−Ba担持アルミナの調製と同様の方法でPt−Ba担持アルミナ2を得た。
【0059】
(スラリー2の調整)
水に上記で調製した、Pt−Ba担持アルミナ2、セリア−ジルコニア複合酸化物(CZ材料)及びベーマイトゾルを混合して、湿式で粉砕してスラリー2を調製した。スラリーのpHは5であった。
【0060】
(排ガス浄化装置の調製)
得られたスラリー1及びスラリー2をこの順に、コージェライト基材1Lあたり290g塗布後、乾燥、続いて焼成を行うことにより、実施例6の排ガス浄化装置を得た。
【0061】
[実施例7及び比較例5]
実施例6のPt−Ba担持アルミナ1の調製におけるアルミナに対するBaの担持量、及び実施例6のRh−Ba担持アルミナの調製におけるアルミナに対するBaの担持量を下記の表1に記載のように変更したこと以外は、実施例6と同様の方法で、実施例7及び比較例5の排ガス浄化装置を得た。
【0062】
[比較例6]
実施例1の排ガス浄化装置の調製において、ベーマイトゾルの代わりに硝酸アルミニウムを使用したこと;及びスラリーのpHが3であったこと以外は、実施例1と同様の方法で比較例6の排ガス浄化装置を得た。
【0063】
[比較例7]
実施例1のPt−Ba担持アルミナの調製において、アルミナに対するBaの担持量が13.0質量%となるように硫酸バリウムを加えたこと;及び実施例1のRh−Ba担持アルミナの調製において、アルミナに対するBaの担持量が3.3質量%となるように硫酸バリウムを加えたこと以外は、実施例1と同様の方法で比較例7の排ガス浄化装置を得た。なお、Pt−Ba担持アルミナ及びRh−Ba担持アルミナにおけるBaは、硫酸バリウムとして存在していることをXRD測定によって確認した。
【0064】
[比較例8]
(Pt担持アルミナ粉末の調製)
水にアルミナを分散させ、その後、アルミナに対するPtの担持量が1.0質量%となるように硝酸白金溶液を加えた。混合物を乾燥して、Pt担持アルミナ粉末を調製した。
【0065】
(Pd担持アルミナ粉末の調製)
水にアルミナを分散させ、その後、アルミナに対するPdの担持量が3.0質量%となるように硝酸パラジウム溶液を加えた。混合物を乾燥して、Pd担持アルミナ粉末を調製した。
【0066】
(Rh担持アルミナ粉末の調製)
水にアルミナを分散させ、その後、アルミナに対するRhの担持量が1.0質量%となるように硝酸ロジウム溶液を加えた。混合物を乾燥して、Rh担持アルミナ粉末を調製した。
【0067】
(排ガス浄化装置の調製)
水に上記で調製した、Pt担持アルミナ粉末、Pd担持アルミナ粉末、Rh担持アルミナ粉末を混合して、それぞれの粉末においてアルミナに対するBaの担持量が10.0質量%となるように酢酸バリウムを加えた。その後セリア−ジルコニア複合酸化物(CZ材料)及びベーマイトゾルを混合して、湿式で粉砕してスラリーを調製した。得られたスラリーをコージェライト製ハニカム基材1Lあたり290g塗布後、乾燥、続いて焼成を行うことにより、比較例8の排ガス浄化装置を得た。
【0068】
《Rh−Ba分散度の測定》
実施例1〜7及び比較例1〜8の各排ガス浄化装置における触媒層のRh−Ba分散度をFE−EPMA測定により算出した。測定器は、日本電子株式会社製のJXA−8530Fを用いた。FE−EPMA測定装置で観察したときに、触媒層の単位面積あたりのBa濃度(Baave)及びRh担持粒子が存在する領域についての単位面積あたりのBa濃度(BaRh)を算出し、Rh−Ba分散度(BaRh/Baave)を求めた。上記算出は、装置に付帯する画像処理ソフト(JEOL Electron Probe Micro Analyzer ver.1.7.0.5)を使用した。図3に示されるように、画像処理ソフトを用いて選択した範囲内(図3の線内)での色相の強度値と面積から容易に濃度を定量化することができる。測定結果を表1に示す。
【0069】
《NO浄化性能評価試験》
1.5Lの実施例1〜7及び比較例1〜8の各排ガス浄化装置を2Lのガソリンエンジンの排気系に装着し、ストイキ/リッチ/リーンが交互に繰り返される条件にて、触媒床温度750℃で50時間保持する耐久試験を行った。耐久試験後の各触媒装置を上記と同じ2Lのガソリンエンジンの排気系にそれぞれ装着し、リッチ雰囲気とリーン雰囲気のサイクルでNO浄化率を測定した。測定結果を表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
実施例1〜5及び比較例1〜4の結果を図5にまとめる。表1及び図5(a)からわかるように、EPMA測定によって算出されるRh−Ba分散度が大きすぎる場合、又は小さすぎる場合に、NO浄化率が低下することがわかる。
【0072】
また、表1からわかるように、Rh−Ba担持アルミナのBa担持量が多すぎる場合、及びPt−Ba担持アルミナのBa担持量少なすぎる場合に、NO浄化率が低下することがわかる。
【0073】
さらに、表1及び図5(b)からわかるように、Rh−Ba担持触媒における担体粒子の重量に対するBaの担持量が、Pt−Ba担持触媒における担体粒子の重量に対するBaの担持量に対して大きすぎる場合、又は小さすぎる場合に、NO浄化率が低下することがわかる。
【0074】
実施例6及び7、並びに比較例5の結果を図6にまとめる。表1並びに図6(a)及び(b)からわかるように、触媒層の層構成が二層の場合であっても、一層の場合と同様な結果が得られることがわかる。
【0075】
表1からわかるように、実施例1〜5と比較して比較例6ではNO浄化率が低い。これは比較例6ではスラリーのpHが低いため、スラリーに含有するRh−Ba担持触媒及びPt−Ba担持触媒が溶出し、Baが再分散されたことが原因と考えられる。比較例6におけるRh−Ba分散度が1であることからも、Baの再分散が示唆される。
【0076】
表1からわかるように、実施例1〜5と比較して比較例7ではNO浄化率が著しく低い。実施例1〜5では、Ba塩として酢酸バリウムを用いているのに対して、比較例7では、Ba塩として難溶性の硫酸バリウムを用いている。そのため、比較例7では、Baはアルミナ上に担持されず、スラリー内に物理混合されていると考えられる。結果として比較例7では、Baの添加効果が得られずNO浄化率が著しく低いと考えられる。
【0077】
表1からわかるように、実施例1〜5と比較して比較例8ではNO浄化率が低い。実施例1〜5では、Pt−Ba担持アルミナ、Pd担持アルミナ及びRh−Ba担持アルミナを個別に調製しているのに対して、比較例8では、Pt担持アルミナ、Pd担持アルミナ及びRh担持アルミナを調製した後に、これらの混合物にBa塩を添加して、混合物全体にBaを担持している点で異なる。このため、比較例8では、RhとBaとを一定程度分離させることができないため、RhとBaの分散度が高く、NO浄化率が低いと考えられる。
【符号の説明】
【0078】
10 Pt又はPd
11 Ba
12 Rh
13 担体粒子
図1
図2
図3
図4
図5
図6