特許第6604823号(P6604823)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6604823-距離測定装置及び距離測定システム 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6604823
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】距離測定装置及び距離測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01S 11/16 20060101AFI20191031BHJP
【FI】
   G01S11/16
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-217594(P2015-217594)
(22)【出願日】2015年11月5日
(65)【公開番号】特開2017-90118(P2017-90118A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】田崎 智
(72)【発明者】
【氏名】森山 大樹
(72)【発明者】
【氏名】細谷 浩之
(72)【発明者】
【氏名】吉住 和洋
【審査官】 藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−061952(JP,A)
【文献】 特開2006−078329(JP,A)
【文献】 特開昭50−031793(JP,A)
【文献】 特開平05−019043(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0162977(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/18− 5/30
G01S 7/52− 7/64
G01S 11/00−11/16
G01S 15/00−15/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空中に設けられ、電波を送信可能な送信アンテナと、水中を走行可能な水中航走体に設けられ、前記電波の送信と同時の第1送波タイミング、又は前記電波の送信と規定時間だけずらされた第2送波タイミングで水中音を送波可能な送波器と、を含む送信側装置と、
水中に設けられ、前記送信側装置の前記送波器から送波される水中音を受信可能な受波器と、空中に設けられ、前記送信側装置の前記送信アンテナから送信される電波を受信可能な受信アンテナと、を含む受信側装置と、
前記送信アンテナから送信された電波が前記受信アンテナで受信された時刻と、前記送波器から送波された水中音が前記受波器に受信された時刻と、前記第1又は第2送波タイミングとに基づいて、前記受信側装置から前記水中航走体までの距離を算出する距離算出手段と、を備える
ことを特徴とする距離測定装置。
【請求項2】
空中に設けられ、電波を送信可能な送信アンテナと、水中に設けられ、前記電波の送信と同時の第1送波タイミング、又は前記電波の送信と規定時間だけずらされた第2送波タイミングで水中音を送波可能な送波器と、を含む送信側装置と、
水中を走行可能な水中航走体に設けられ、前記送信側装置の前記送波器から送波される水中音を受信可能な受波器と、空中に設けられ、前記送信側装置の前記送信アンテナから送信される電波を受信可能な受信アンテナと、を含む受信側装置と、
前記送信アンテナから送信された電波が前記受信アンテナで受信された時刻と、前記送波器から送波された水中音が前記受波器に受信された時刻と、前記第1又は第2送波タイミングとに基づいて、前記送信側装置から前記水中航走体までの距離を算出する距離算出手段と、を備える
ことを特徴とする距離測定装置。
【請求項3】
前記水中航走体には、前記送波器から水中音が送波された時刻を記憶する記憶部がさらに設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の距離測定装置。
【請求項4】
水中を走行可能な複数の水中航走体と、
前記複数の水中航走体の各々に設けられ、空中に設けられ、電波を送信可能な送信アンテナと、水中を走行可能な水中航走体に設けられ、前記電波の送信と同時の第1送波タイミング、又は前記電波の送信と規定時間だけずらされた第2送波タイミングで水中音を送波可能な送波器と、を含む送信側装置と、
水中に設けられ、前記送信側装置の前記送波器から送波される水中音を受信可能な受波器と、空中に設けられ、前記送信側装置の前記送信アンテナから送信される電波を受信可能な受信アンテナと、を含む受信側装置と、
前記送信アンテナから送信された電波が前記受信アンテナで受信された時刻と、前記送波器から送波された水中音が前記受波器に受信された時刻と、前記第1又は第2送波タイミングとに基づいて、前記受信側装置から前記水中航走体までの距離を算出する距離算出手段と、を備え、
前記複数の送波器の各々から送波される水中音は、互いに異なる周波数に設定され、
前記距離算出手段は、前記受波器によって受信された水中音の周波数に基づいて、前記複数の水中航走体の中から、前記受信された水中音の周波数を送波する送波器が設けられている水中航走体を識別するように構成されている
ことを特徴とする距離測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水中航走体の距離を測定する距離測定装置及び距離測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海上の2点間の距離を測定する方法として、水中音と空気音を利用したものや、GPS(Global Positioning System)を利用したものが知られている。水中音と空気音を利用したものは、特許文献1に記載されているように、水中音発生装置による水中音と、スピーカによる空気音を同時に鳴らし、計測点側で水中音と空気音を同時計測して得られた伝搬時間差から距離を求めるものである。
【0003】
一方、GPSは、人工衛星を利用して自分が地球上のどこにいるかを正確に割り出すシステムであり、送波側と受波側でGPSを搭載して、夫々のGPSデータから距離を算出して求めるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平2−122376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の距離測定装置は、測定位置が測定点から遠くに離れた遠距離位置では、スピーカからの空気音の音量を増大する必要が生じるが、測定場合によっては、空気音が騒音になる虞が生じる。また、空気音を発生するスピーカやパワーアンプ等の関連機材が大掛かりとなり、重量及びコストの増大を招く。
【0006】
GPSの場合、水中で航走する水中航走体では、GPSは電波を利用するが、電波は水中では弱くなって受信が困難になる虞がある。また、水中航走体には一般的に送波器や受波器が標準で搭載されている。これらの機器を距離計測の為に使用する事ができれば、新規に送波器や受波器を搭載する必要が無くなり、計測コストを低減することができる。このため、水中航走体に搭載された送波器及び受波器を有効活用したいという要望がある。
【0007】
本発明の少なくとも一つの実施形態は、このような従来技術の状況の基になされた発明であって、その目的とするところは、水中航走体に標準的に装備されている送波器や受波器を活用することで、騒音問題や重量及びコストの増大を招くことなく、水中航走体の距離を正確に測定可能な距離測定装置及び距離測定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の少なくとも一つの実施形態にかかる距離測定装置は、
空中に設けられ、電波を送信可能な送信アンテナと、水中を走行可能な水中航走体に設けられ、前記電波の送信と同時の第1送波タイミング、又は前記電波の送信と規定時間だけずらされた第2送波タイミングで水中音を送波可能な送波器と、を含む送信側装置と、
水中に設けられ、前記送信側装置の前記送波器から送波される水中音を受信可能な受波器と、空中に設けられ、前記送信側装置の前記送信アンテナから送信される電波を受信可能な受信アンテナと、を含む受信側装置と、
前記送信アンテナから送信された電波が前記受信アンテナで受信された時刻と、前記送波器から送波された水中音が前記受波器に受信された時刻と、前記第1又は第2送波タイミングとに基づいて、前記受信側装置から前記水中航走体までの距離を算出する距離算出手段と、を備えるように構成される。
【0009】
上記(1)に記載の距離測定装置は、空中に設けられ、電波を送信可能な送信アンテナと、水中を走行可能な水中航走体に設けられ、電波の送信と同時の第1送波タイミング、又は電波の送信と規定時間だけずらされた第2送波タイミングで水中音を送波可能な送波器と、を含む送信側装置と、水中に設けられ、送信側装置の送波器から送波される水中音を受信可能な受波器と、空中に設けられ、送信側装置の送信アンテナから送信される電波を受信可能な受信アンテナと、を含む受信側装置と、送信アンテナから送信された電波が受信アンテナで受信された時刻と、送波器から送波された水中音が受波器に受信された時刻と、第1又は第2送波タイミングとに基づいて、受信側装置から水中航走体までの距離を算出する距離算出手段と、を備える。ここで、電波の伝搬速度(約30万km/s)は水中音の伝搬速度(約1500m/s)と比較して、非常に速いので、電波の到達時間(無線受波時間)を略ゼロとみなすことができる。このため、送信アンテナから電波が送信されたと同時の第1送波タイミングで送波器から水中音が送波された場合、水中音が送波された時刻を、受信アンテナが電波を受信した時刻することができる。従って、距離算出手段は、送信アンテナから送信された電波が受信アンテナで受信された時に、送波器から水中音が送波されたとみなして水中音到達時間の測定を開始し、受波器で水中音を受信すると、水中音到達時間を算出する。このため、水中音到達時間を正確に測定することができ、送信側装置から水中航走体までの距離を正確に算出することができる。
【0010】
また、送信アンテナからの電波の送信と規定時間だけずらされた第2送波タイミングで送波器から水中音が送波された場合、水中音が送波された時刻を、受信アンテナが電波を受信した時刻に対して規定時間だけずらした時刻とすることができる。従って、距離算出手段は、送信アンテナから送信された電波が受信アンテナで受信された時刻に対して規定時間だけずらした時刻を、送波器から水中音が送波された時刻とみなして、水中音到達時間の測定を開始し、受波器で水中音を受信すると、水中音到達時間を算出する。このため、水中音到達時間を正確に測定することができる。また、空中には電波を送信するための送信アンテナが配設されるので、騒音が生じることはない。さらに、電波の送信アンテナを使用する場合には、パワーアンプ等の機材が不要であり、重量及びコストの増大を抑えることができる。よって、騒音問題や重量及びコストの増大を招くことなく、水中航走体の距離を正確に測定可能な距離測定装置を実現できる。
【0011】
(2)本発明の少なくとも一つの実施形態にかかる距離測定装置は、
空中に設けられ、電波を送信可能な送信アンテナと、水中に設けられ、前記電波の送信と同時の第1送波タイミング、又は前記電波の送信と規定時間だけずらされた第2送波タイミングで水中音を送波可能な送波器と、を含む送信側装置と、
水中を走行可能な水中航走体に設けられ、前記送信側装置の前記送波器から送波される水中音を受信可能な受波器と、空中に設けられ、前記送信側装置の前記送信アンテナから送信される電波を受信可能な受信アンテナと、を含む受信側装置と、
前記送信アンテナから送信された電波が前記受信アンテナで受信された時刻と、前記送波器から送波された水中音が前記受波器に受信された時刻と、前記第1又は第2送波タイミングとに基づいて、前記送信側装置から前記水中航走体までの距離を算出する距離算出手段と、を備えるように構成される。
【0012】
上記(2)に記載の実施形態によれば、空中に設けられ、電波を送信可能な送信アンテナと、水中に設けられ、電波の送信と同時の第1送波タイミング、又は電波の送信と規定時間だけずらされた第2送波タイミングで水中音を送波可能な送波器と、を含む送信側装置と、水中を走行可能な水中航走体に設けられ、送信側装置の送波器から送波される水中音を受信可能な受波器と、空中に設けられ、送信側装置の送信アンテナから送信される電波を受信可能な受信アンテナと、を含む受信側装置と、送信アンテナから送信された電波が受信アンテナで受信された時刻と、送波器から送波された水中音が受波器に受信された時刻と、第1又は第2送波タイミングとに基づいて、送信側装置から水中航走体までの距離を算出する距離算出手段と、を備える。ここで、電波の伝搬速度(約30万km/s)は水中音の伝搬速度(約1500m/s)と比較して、非常速いので、電波の到達時間(無線受波時間)を略ゼロとみなすことができる。このため、送信アンテナから電波が送信されたと同時の第1送波タイミングに送波器から水中音が送波された場合、水中音が送波された時刻を、受信アンテナが電波を受信した時刻することができる。従って、距離算出手段は、送信アンテナから送信された電波が受信アンテナで受信された時に、送波器から水中音が送波されたとみなして水中音到達時間の測定を開始し、受波器で水中音を受信すると、水中音到達時間を算出する。このため、水中音到達時間を正確に測定することができ、送信側装置から水中航走体までの距離を正確に算出することができる。
【0013】
また、送信アンテナからの電波の送信と規定時間だけずらされた第2送波タイミングで送波器から水中音が送波された場合、水中音が送波された時刻を、受信アンテナが電波を受信した時刻に対して規定時間だけずらした時刻とする。従って、距離算出手段は、送信アンテナから送信された電波が受信アンテナで受信された時刻に対して規定時間だけずらした時刻が、送波器から水中音が送波された時刻とみなして、水中音到達時間の測定を開始し、受波器で水中音を受信すると、水中音到達時間を算出する。このため、水中音到達時間を正確に測定することができる。また、空中には電波を送信するための送信アンテナが配設されるので、騒音が生じることはない。さらに、電波の送信アンテナを使用する場合には、パワーアンプ等の機材が不要であり、重量及びコストの増大を抑えることができる。よって、騒音問題や重量及びコストの増大を招くことなく、水中航走体の距離を正確に測定可能な距離測定装置を実現できる。
【0014】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の距離測定装置において、
前記水中航走体には、前記水中アンテナから水中音が送波された時刻を記憶する記憶部がさらに設けられているように構成される。
【0015】
上記(3)に記載の実施形態によれば、水中航走体には、水中アンテナから水中音が送波された時刻を記憶する記憶部がさらに設けられている。このため、距離算出手段で、水中航走体の距離を算出する際に、送波器から送波された時刻を、記憶部に記憶された対応する時刻と比較することができる。従って、意図したタイミングで水中音が送波されているか確認することができ、算出される水中航走体の距離の精度を確認することができる。
【0016】
(4)本発明の少なくとも一つの実施形態にかかる距離測定システムは、
水中を走行可能な複数の水中航走体と、
前記複数の水中航走体の各々に設けられ、空中に設けられ、電波を送信可能な送信アンテナと、水中を走行可能な水中航走体に設けられ、前記電波の送信と同時の第1送波タイミング、又は前記電波の送信と規定時間だけずらされた第2送波タイミングで水中音を送波可能な送波器と、を含む送信側装置と、
水中に設けられ、前記送信側装置の前記送波器から送波される水中音を受信可能な受波器と、空中に設けられ、前記送信側装置の前記送信アンテナから送信される電波を受信可能な受信アンテナと、を含む受信側装置と、
前記送信アンテナから送信された電波が前記受信アンテナで受信された時刻と、前記送波器から送波された水中音が前記受波器に受信された時刻と、前記第1又は第2送波タイミングとに基づいて、前記受信側装置から前記水中航走体までの距離を算出する距離算出手段と、を備え、
前記複数の送波器の各々から送波される水中音は、互いに異なる周波数に設定され、
前記距離算出部は、前記受波器によって受信された水中音の周波数に基づいて、前記複数の水中航走体の中から、前記受信された水中音の周波数を送波する送波器が設けられている水中航走体を識別するように構成される。
【0017】
上記(4)に記載の距離測定システムは、水中を走行可能な複数の水中航走体と、複数の水中航走体の各々に設けられ、空中に設けられ、電波を送信可能な送信アンテナと、水中を走行可能な水中航走体に設けられ、電波の送信と同時の第1送波タイミング、又は電波の送信と規定時間だけずらされた第2送波タイミングで水中音を送波可能な送波器と、を含む送信側装置と、水中に設けられ、送信側装置の送波器から送波される水中音を受信可能な受波器と、空中に設けられ、送信側装置の送信アンテナから送信される電波を受信可能な受信アンテナと、を含む受信側装置と、送信アンテナから送信された電波が受信アンテナで受信された時刻と、送波器から送波された水中音が受波器に受信された時刻と、第1又は第2送波タイミングとに基づいて、受信側装置から水中航走体までの距離を算出する距離算出手段と、を備える。そして、複数の送波器の各々から送波される水中音は、互いに異なる周波数に設定され、距離算出部は、受波器によって受信された水中音の周波数に基づいて、複数の水中航走体の中から、受信された水中音の周波数を送波する送波器が設けられている水中航走体を識別するように構成される。このため、距離算出手段は、複数の水中航走体の夫々に対応する距離を正確に測定可することができる。よって、騒音問題や重量及びコストの増大を招くことなく、複数の水中航走体の夫々の距離を正確に測定可能な距離測定システムを実現できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態によれば、水中航走体に標準的に装備されている送波器や受波器を活用することで、騒音問題や重量及びコストの増大を招くことなく、水中航走体の距離を正確に測定可能な距離測定装置及び距離測定システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態にかかる距離測定装置のブロック図である。
図2】水中航走体に設けられた送波器から送波される水中音と、空中に設けられた送信アンテナから送信される電波を同時に送波可能な音源装置の側面図である。
図3】本発明の一実施形態にかかる距離測定装置の作用説明図である。
図4】本発明の他の実施形態にかかる距離測定装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0021】
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
【0022】
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
【0023】
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
【0024】
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0025】
また、以下の説明において、同じ構成には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する場合がある。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態にかかる距離測定装置のブロック図であり、図2は、水中航走体に設けられた送波器から送波される水中音と、空中に設けられた送信アンテナから送信される電波を同時に送波可能な音源装置の側面図であり、図3は、本発明の一実施形態にかかる距離測定装置の作用説明図である。
【0027】
本発明の一実施形態にかかる距離測定装置は、特に限定されないが、例えば海中を航走可能な水中航走体に適用される。
【0028】
本実施形態の距離測定装置1、図1に示したように、空中に設けられ、電波を送信可能な送信アンテナ13と、水中を走行可能な水中航走体Sに設けられ、電波の送信と同時の第1送波タイミング、又は電波の送信と規定時間だけずらされた第2送波タイミングで水中音を送波可能な送波器11と、を含む送信側装置10と、水中に設けられ、送信側装置10の送波器11から送波される水中音を受信可能な受波器43と、空中に設けられ、送信側装置10の送信アンテナ13から送信される電波を受信可能な受信アンテナ41と、を含む受信側装置40と、送信アンテナ13から送信された電波が受信アンテナ41で受信された時刻と、送波器11から送波された水中音が受波器43に受信された時刻と、第1又は第2送波タイミングとに基づいて、受信側装置40から水中航走体Sまでの距離を算出する距離算出回路51と、を備える。
【0029】
図示した実施形態では、送信側装置10の送信アンテナ13と送波器11は、制御装置19、信号発生器21、水中音送波タイミング調整器22と、送信機23を介して電気的に接続されている。送波器11は水中航走体Sに設けられている。送信アンテナ13は電波を発信する無線機アンテナである。送信機23は、無線通信で信号を高周波電流に変えて送信アンテナに送り出す装置である。信号発生器21は、送波器11から水中音を発生させるための信号を出力する装置である。水中音送波タイミング調整器22は、送信アンテナ13から送信される電波の送信と同時の第1送波タイミング、又は電波の送信と規定時間だけずらされた第2送波タイミングで水中音を送波器11で送波させるように、信号発生器21を設定する。制御装置19は、水中航走体Sの駆動を制御する装置である。
【0030】
一方、受信側装置40は、空中に設けられる受信アンテナと水中に設けられる受波器とを備える。受信アンテナ41には、受信機47、波形整形回路49、距離算出回路51、分析装置53が電気的に接続されている。受波器43は、増幅器55を介して波形整形回路49に電気的に接続されている。受信機47は、受信アンテナ41で受信した信号を受け取って復調して情報を復元する装置である。波形整形回路49は、受信機47で復元した信号を演算しやすいような波形(例えば、パルス波形)に変換する回路である。距離算出回路51は、受信アンテナ41で受信した信号と受波器43で受信した信号から水中航走体Sの距離を算出する回路である。
【0031】
ここで、送信アンテナ13は、図2に示すように、水中航走体Sが水中航走する水の水面Wa上を浮遊可能な水面浮遊構造体上に設けられる。図示した実施形態では、送信アンテナ13は、海水Wに浮遊可能な浮標60の上部に起立して設置されている。そして、浮標60には、ケーブルKを介して水中航走体Sが電気的に接続されている。このため、水中航走体SはケーブルKの延びる範囲内で移動可能である。そして、浮標60内には、制御装置19、信号発生器21、送信機23が設けられる。
【0032】
このように構成され距離測定装置1は、図3の(1)に示すように、一定のパルス幅の信号が制御装置19で作られ、信号発生器21及び送信機23を介して送信アンテナ13から電波(図3の(4)参照)が送波され、また送波器11から水中音が電波と同期して送波される(図3の(2)参照)。なお、送波器11から送波される水中音のタイミングは、水中音送波タイミング調整器22で予め設定される。本実施形態では、電波の送信と同時の第1送波タイミングに設定されている。図3の(3)に示す波形は、信号発生器21からの図3の(1)に示すタイミング信号を受けて発信された波形である。
【0033】
なお、電波の送信と規定時間だけずらされた第2送波タイミングで水中音を送波させる場合には、ずらされた第2送波タイミングが電波の送信時より速いときには、受信アンテナ41で受信された電波の到達時刻よりも規定時間分だけ速くするように受信側装置40(例えば、波形整形回路49)で到達時間を変更する。一方、ずらされた第2送波タイミングが電波の送信時より遅いときは、受信アンテナ41で受信された電波の到達時刻よりも規定時間分だけ遅くするように受信側装置40(例えば、波形整形回路49)で到達時間を変更する。
【0034】
送信アンテナ13から電波が送波され、また送波器11から水中音が送波されると、電波及び水中音は伝播し、水中音は受信側装置40側の受波器43にt1の時刻で到達して検出される。なお、電波の伝播速度は、前述したように水中音と比較して非常に速いので、電波の受信側装置40の受信アンテナ41への到達時刻t2は略ゼロとみなすことができる。
【0035】
受波器43で受信された水中音の信号(図3の(6)参照)は増幅器55で増幅され、波形整形回路49でパルス波形に整形される(図3の(8)参照)。受信アンテナ41で受信された電波の信号(図3の(5)参照)は、受信機47を介して波形整形回路49でパルス波形に整形される(図3の(7)参照)。この場合、水中音と電波の伝播速度は違うので、ΔT(=t1−t2)という時間差が生じるが、前述したようにt2は略ゼロとみなされるので、ΔTはt1とみなすことができる。
【0036】
この時間差Δtを示す信号は距離算出回路51に入力される。距離算出回路51では、次式(1)によって距離を算出する。ここで、距離は、受信側の予め設定した測定点(例えば、受波器43の設置位置)と水中航走体Sとの間の距離をいう。
【0037】
距離=水中の音速×電波時間差・・・・(1)
距離算出回路51で算出された距離は、分析装置53に入力されて所定のデータ処理が行われる。
【0038】
このように、送信アンテナ13から送信される電波は、水中音と比較して非常速いので、送信アンテナ13から送信された電波が受信アンテナ41で受信された時刻における電波の到達時間(無線受波時間)を略ゼロとみなすことができる。従って、無線受波時間と水中音受波時間との差(伝搬時間差)を、水中音受波時間とみなすことができる。このため、水中航走体Sと送信アンテナ13の相対位置がずれた場合でも、水中音受波時間を検出することで、水中航走体Sの距離を精度良く演算することができる。また、空中には電波を送信するための送信アンテナ13が配設されるので、騒音が生じることはない。また、電波の送信アンテナ13を使用する場合には、パワーアンプ等の機材が不要であり、重量及びコストの増大を抑えることができる。
【0039】
また、水中航走体Sは、海水Wに浮遊可能な水面浮遊構造体(浮標60)に対して移動自在に設けられている。このため、水中航走体Sが水中を走行することにより、送信アンテナ13と送波器11との距離が変化する。このため、水中航走体Sは送信アンテナ13に拘束されることなく、自由に水中を走行することができる。また、水中航走体Sが水中で自由に走行しても、水中航走体Sに設けられた送波器11から送波される水中音の送波タイミングが、電波の送信と同時の第1送波タイミング、又は電波の送信と規定時間だけずらされた第2送波タイミングである場合、受信アンテナ41が電波を受信したときに第1送波タイミング又は第2送波タイミングで送波器11から水中音が送波されたとみなすことができる。このため、水中音が送波された時刻が明確となり、水中音到達時間を正確に測定することができる。よって、走行する水中航走体の距離変化を正確に測定することができる。
【0040】
図4は、本発明の他の実施形態にかかる距離測定装置のブロック図である。
【0041】
本発明の他の実施形態にかかる距離測定装置1'は、図4に示すように、空中に設けられ、電波を送信可能な送信アンテナ13と、水中に設けられ、電波の送信と同時の第1送波タイミング、又は電波の送信と規定時間だけずらされた第2送波タイミングで水中音を送波可能な送波器11と、を含む送信側装置10'と、水中を走行可能な水中航走体Sに設けられ、送信側装置10'の送波器11から送波される水中音を受信可能な受波器43と、空中に設けられ、送信側装置10'の送信アンテナ13から送信される電波を受信可能な受信アンテナ41と、を含む受信側装置40'と、送信アンテナ13から送信された電波が受信アンテナ41で受信された時刻と、送波器11から送波された水中音が受波器43に受信された時刻と、第1又は第2送波タイミングとに基づいて、送信側装置10'から水中航走体Sまでの距離を算出する距離算出回路51と、を備える。
【0042】
図示した他の実施形態の距離測定装置1'は、前述した距離測定装置1と同一態様部分については同一符号を附して説明を省略する。他の実施形態の距離測定装置1'は、図1に示す送信側と受信側を反対にし、且つ水中航走体Sに受波器43を設け、制御装置19を受信側に設けて構成されている。
【0043】
このように、前述した実施形態との比較において、送信側と受信側を入れ替えても、送信アンテナ13から送信された電波が受信アンテナ41に到達するまでの電波の到達時間(無線受波時間)を略ゼロとみなすことができるので、無線受波時間と水中音受波時間との差(伝搬時間差)を、水中音受波時間とみなすことができる。従って、水中航走体Sと受信アンテナ41の相対位置がずれた場合でも、水中音受波時間を検出することで、水中航走体Sの距離を精度良く算出することができる。また、空中には電波を送信するための送信アンテナ13が配設されるので、騒音が生じることはない。また、送信アンテナ13を利用する場合には、パワーアンプ等の機材が不要となり、重量及びコストの増大を抑えることができる。
【0044】
以上、本発明の好ましい形態について説明したが、本発明は上記の形態に限定されるものではない。例えば上述した実施形態を組み合わせても良く、本発明の目的を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。
【0045】
例えば、上述した実施形態では、水中航走体が1つである場合の距離測定装置1の場合を例に説明したが、本発明の距離測定装置1はこれに限定されるものではなく、複数の水中航走体Sを接続可能な距離測定システムでもよい。本発明の距離測定システムは、例えば、水中を走行可能な複数の水中航走体Sと、複数の水中航走体Sの各々に設けられ、空中に設けられ、電波を送信可能な送信アンテナ13と、水中を走行可能な水中航走体Sに設けられ、電波の送信と同時の第1送波タイミング、又は電波の送信と規定時間だけずらされた第2送波タイミングで水中音を送波可能な送波器11と、を含む送信側装置10と、水中に設けられ、送信側装置10の送波器11から送波される水中音を受信可能な受波器43と、空中に設けられ、送信側装置10の送信アンテナ13から送信される電波を受信可能な受信アンテナ41と、を含む受信側装置40と、送信アンテナ13から送信された電波が受信アンテナ41で受信された時刻と、送波器11から送波された水中音が受波器43に受信された時刻と、第1又は第2送波タイミングとに基づいて、受信側装置40から水中航走体Sまでの距離を算出する距離算出回路51と、を備え、複数の送波器11の各々から送波される水中音は、互いに異なる周波数に設定され、距離算出回路51は、受波器43によって受信された水中音の周波数に基づいて、複数の水中航走体Sの中から、受信された水中音の周波数を送波する送波器11が設けられている水中航走体Sを識別するように構成される。
【0046】
このように構成することで、複数の水中航走体Sの夫々の距離を正確に測定可能な距離測定システムを提供することができる。また、水中航走体Sには標準的に送波器11や受波器43が搭載されているので、それら機器を距離計測の為に使用する事で、新規に送波器や受波器を搭載する必要は無くなり、計測コストを低減することができる。
【0047】
また、水中航走体Sには、図1に示すように、送波器11から水中音が送波された時刻を記憶する記憶部12がさらに設けられていてもよい。記憶部12を水中航走体Sに設けることで、距離算出回路51によって水中航走体Sの距離を算出する際に、送波器11から送波された時刻を、記憶部12に記憶された対応する時刻と比較することができる。従って、意図したタイミングで水中音が送波されているかを確認することができ、算出される水中航走体Sの距離の精度を確認することができる。
【符号の説明】
【0048】
1、1' 距離測定装置
10、10' 送信側装置
11 送波器
12 記憶部
13 送信アンテナ
19 制御装置
21 信号発生器
22 水中音送波タイミング調整器
23 送信機
40、40' 受信側装置
41 受信アンテナ
43 受波器
47 受信機
49 波形整形回路
51 距離算出回路(距離算出手段)
53 分析装置
55 増幅器
60 浮標(水面浮遊構造体)
K ケーブル
S 水中航走体
W 海水
Wa 水面
図1
図2
図3
図4