特許第6604858号(P6604858)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6604858
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20191031BHJP
【FI】
   B41J2/01 121
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-9740(P2016-9740)
(22)【出願日】2016年1月21日
(65)【公開番号】特開2017-128060(P2017-128060A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2018年7月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】木村 俊広
【審査官】 中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−217544(JP,A)
【文献】 特開2014−108566(JP,A)
【文献】 特開2014−201028(JP,A)
【文献】 特開2003−326697(JP,A)
【文献】 特開2005−271314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体にインクを吐出するヘッドと、
所定の搬送方向に、上記ヘッドと上記被記録媒体とを相対的に移動させ、上記ヘッドによるインク吐出領域に対する被記録媒体の位置を変える搬送部と、
上記被記録媒体を載置する載置台と、
内部に上記インク吐出領域を内包する筐体と、
気体送吸引機構と、を備え、
上記気体送吸引機構は、
上記インク吐出領域、又は、当該インク吐出領域よりも上記搬送方向の下流側の上記載置台に向けて送風する送風部と、
上記ヘッドよりも上記搬送方向の上流側から、上記筐体の内部の気体を吸引する吸引部と、
上記吸引部と上記送風部との間で気体を移動させるために上記筐体の外壁に設けられる気体流通路と、
少なくとも一つのファンと、を備え、
上記一つのファンが、上記吸引部からの気体の吸引及び上記送風部からの気体の送風のいずれも行なうものであり、
上記吸引部において上記筐体の外側へ開口する吸引部接続口と上記気体流通路とを接続させる吸引部接続部、及び上記気体流通路を含む気体送吸引ユニットが設けられていることを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項2】
記気体送吸引ユニットは、
上記送風部において上記筐体の外側へ開口する送風部接続口と上記気体流通路とを接続させる送風部接続部を更に含み、
上記筐体の内側及び外側を循環する上記気体の循環経路において、少なくとも上記筐体の外側の循環経路である、請求項1に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項3】
上記気体送吸引ユニットを複数備え、
複数の上記気体送吸引ユニットは上記搬送方向に交わる方向であって上記被記録媒体の幅方向に沿って配設されていることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項4】
上記送風部は、上記搬送方向に交わる方向であって上記被記録媒体の幅方向に沿って複数配設された送風口を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項5】
上記吸引部は、上記搬送方向に交わる方向であって上記被記録媒体の幅方向に延伸した吸引口を有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項6】
上記送風部は、上記吸引部の鉛直方向上側に位置するものであり、
上記気体流通路の一部は、鉛直方向下から上に気体を流通させる上昇流通部であり、
上記吸引部と上記上昇流通部との間における気体の流れる方向は、上記搬送方向の下流から上流に向かう方向であり、上記上昇流通部と上記送風部との間における気体の流れる方向は上記搬送方向の上流から下流に向かう方向である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項7】
上記搬送方向の上流に被記録媒体を保持し、上記載置台に供給する、被記録媒体供給部を備え、
上記上昇流通部は、上記被記録媒体供給部より鉛直方向上側に位置するものであり、上記上昇流通部は鉛直方向に延伸していることを特徴とする請求項6に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項8】
上記ファンは、気体の流通経路上において、上記吸引部より上記送風部に近い位置に設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項9】
上記吸引部接続部は、フィルターを挟んだ状態で上記吸引部接続口に接続することで、上記気体送吸引ユニットに対する上記フィルターの位置が定められる、請求項1又は2に記載のインクジェット印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インクが着弾した後の被記録媒体に対する、インクミストによる汚染を防止するためのインクジェット装置が記載されている。
【0003】
特許文献2には、インクミスト対策とインク乾燥対策とを行なうために、吸気口及び排気口を有する吸引乾燥装置が、プリンタヘッドと一緒に印刷媒体に対して相対移動するインクジェットプリンタが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−119218号公報(2013年6月17日公開)
【特許文献2】特開2010−58441号公報(2010年3月18日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のインクジェット装置では、送風用のファンと吸引用のファンとをそれぞれ設ける必要がある。そのため、装置が大型になりやすく、部品点数も多い。
【0006】
特許文献2のインクジェットプリンタでは、吸引乾燥装置がキャリッジに搭載され、プリンタヘッドと一緒に印刷媒体に対して相対移動しながら、印刷媒体の乾燥及び冷却が行われる。そのため、印刷媒体上を均一に乾燥及び冷却させることが容易では無い。仮に、均一に乾燥及び冷却できれば、より画質を向上させることができる。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、より均一に記録媒体の乾燥を行ない、また、インクミストを回収して、装置周辺へのインクミストの拡散を抑制することができ、且つ、これらを少ない部品点数で実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明に係るインクジェット印刷装置は、被記録媒体にインクを吐出するヘッドと、所定の搬送方向に、上記ヘッドと上記被記録媒体とを相対的に移動させ、上記ヘッドによるインク吐出領域に対する被記録媒体の位置を変える搬送部と、上記被記録媒体を載置する載置台と、気体送吸引機構と、を備え、上記気体送吸引機構は、上記ヘッドによるインク吐出領域、又は、当該インク吐出領域よりも上記搬送方向の下流側の上記載置台に向けて送風する送風部と、上記ヘッドよりも、上記搬送方向の上流側から気体を吸引する吸引部と、上記吸引部と上記送風部との間で気体を移動させる気体流通路と、少なくとも一つのファンと、を備え、上記一つのファンが、上記吸引部からの気体の吸引及び上記送風部からの気体の送風のいずれも行なうものである。
【0009】
インク吐出領域又はその下流に対して送風することで、着弾したインクを迅速に乾燥させることができ、滲みを抑制できる。また、インク吐出領域より上流から吸引することでインクミストの広がりによる汚染、及び、着弾したインクの上にインクミストが付着することによる汚染を抑制できる。インク吐出領域よりも上流から気体を吸引することで、インク吐出領域又はその下流に向けて送風された気体の流れに及ぼす気体の吸引の影響を低減することができ、インクの乾燥のための送風への影響を抑えつつ、インクミストの回収を行うことができる。その結果、被記録媒体上をより均一に乾燥させることができる。また、吸引と送風とを共通のファンで行なうことができるので部品数を削減できる。
【0010】
本発明に係るインクジェット印刷装置では、上記気体送吸引機構は、気体送吸引ユニットを含み、上記気体送吸引ユニットは、少なくとも一つの送風部、又は、当該送風部に接続される少なくとも一つの送風部接続部と、少なくとも一つの吸引部、又は、当該吸引部に接続される少なくとも一つの吸引部接続部とが、少なくとも一つの上記気体流通路とで接続されて形成されている。
【0011】
気体送吸引ユニットは本発明の効果を得るために必要な機能の少なくとも一部をまとめたものであり、インクジェット印刷装置が大型化する場合は、気体送吸引ユニットを増やせばよい。よって、装置の大型化により容易に適用することができる。
【0012】
本発明に係るインクジェット印刷装置では、上記気体送吸引ユニットを複数備え、複数の上記気体送吸引ユニットは上記搬送方向に交わる方向であって上記被記録媒体の幅方向に沿って配設されていることがより好ましい。
【0013】
複数の気体送吸引ユニットを被記録媒体の幅方向に沿って、複数設けていることで、幅方向に均一に送風及び吸引をすることができる。よって、幅が大きい被記録媒体を想定した大型の装置に適用しても、均一に冷却及び乾燥をさせることができる。また、従来のように、送風のファン及び吸引のファンをそれぞれ必要とする構成に比べて、気体送吸引ユニットの数だけファンの数を削減することができるので、部品点数を大幅に削減できる。
【0014】
本発明に係るインクジェット印刷装置では、上記送風部は、上記搬送方向に交わる方向であって上記被記録媒体の幅方向に沿って複数配設された送風口を有していることがより好ましい。
【0015】
複数の送風口が被記録媒体の幅方向に沿って、複数設けられていることで、幅方向に均一に送風することができる。また、1つのファンからの気体を複数の送風口から送風することができるので、ファンの数を大幅に削減できる。その結果、部品点数を大幅に削減できる。
【0016】
本発明に係るインクジェット印刷装置では、上記吸引部は、上記搬送方向に交わる方向であって上記被記録媒体の幅方向に延伸した吸引口を有していることがより好ましい。
【0017】
吸引口が被記録媒体の幅方向に延伸していることで、インクミストによる汚染を広範囲において防ぐことができる。また、1つのファンにより広範囲の気体を吸引することができるので、ファンの数を大幅に削減できる。その結果、部品点数を大幅に削減できる。また、被記録媒体の幅方向に沿って複数設けられた送風口から、インク吐出領域又はその下流に送られた気体を、幅方向に延伸した吸引口から吸引することによって、定められた位置から一様に吸引することが可能となり、インクの乾燥のための送風に及ぼす気体の吸引の影響が低減し、より均一に乾燥させることができる。
【0018】
本発明に係るインクジェット印刷装置では、上記送風部は、上記吸引部の鉛直方向上側に位置するものであり、上記気体流通路の一部は、鉛直方向下から上に気体を流通させる上昇流通部であり、上記吸引部と上記上昇流通部との間における気体の流れる方向は、上記搬送方向の下流から上流に向かう方向であり、上記上昇流通部と上記送風部との間における気体の流れる方向は上記搬送方向の上流から下流に向かう方向であることがより好ましい。
【0019】
吸引部から送風部への気体の搬送を簡易な構成で行なうことができ、かつ、気体の流通経路を短く構成することができる。よって、装置全体を小型化することができる。
【0020】
本発明に係るインクジェット印刷装置では、上記搬送方向の上流に被記録媒体を保持し、上記載置台に供給する、被記録媒体供給部を備え、上記上昇流通部は、上記被記録媒体供給部より鉛直方向上側に位置するものであり、上記上昇流通部は鉛直方向に延伸していることがより好ましい。
【0021】
上昇流通部をインクジェット印刷装置本体の側面(背面)に沿わせて設置することができる。そのため、被記録媒体供給部に被記録媒体をセッティングする作業が行われるときに、上昇流通部が作業者に干渉することを低減できる。よって、容易に被記録媒体をセッティングできる。
【0022】
本発明に係るインクジェット印刷装置では、上記ファンは、気体の流通経路上において、上記吸引部より、上記送風部に近い位置に設けられていることがより好ましい。
【0023】
気体の流通経路上において、ファンから吸引部又は吸引部接続口までの距離を長くすることで、ヘッドから飛翔するインクの被記録媒体への着弾に影響を与えない程度の吸引力とすることができる。一方、気体の流通経路上において、ファンから送風部までの距離が短いことで単位時間当たりの送風量を増やすことができる。これにより、送風による乾燥効率を高めることができ、且つ、吸引がヘッドから飛翔するインクに対する影響を少なくして着弾精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、より均一に記録媒体の乾燥を行ない、また、インクミストを回収して、装置周辺へのインクミストの拡散を抑制することができ、且つ、これらを少ない部品点数で実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】一実施形態に係るインクジェット印刷装置の概略構造を示す縦断面図である。
図2】一実施形態に係るインクジェット印刷装置に設けられた気体送吸引ユニットの分解斜視図である。
図3】一実施形態に係るインクジェット印刷装置の概略を示す全体斜視図である。
図4】一実施形態に係るインクジェット印刷装置の概略を示す全体斜視図である。
図5】インクジェット印刷装置における送風部の一実施形態を示す概略図である。
図6】インクジェット印刷装置における吸引部の一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0027】
〔インクジェット印刷装置の構成〕
図1は、インクジェット印刷装置1の概略構造を示す縦断面図である。
【0028】
図1に示すように、インクジェット印刷装置1は、筐体2と、キャリッジ4と、ガイド機構5と、プラテン(載置台)6と、駆動ローラ(搬送部)7と、メディア供給部(被記録媒体供給部)12と、従動ローラ13と、メディア回収部14と、気体送吸引機構とを備えている。キャリッジ4は、ヘッド41を収容している。気体送吸引機構は、ファン31、送風部32、吸引部33、及び気体流通路34から構成される気体送吸引ユニット30を含んでいる。
【0029】
駆動ローラ7は、所定の搬送方向に、ヘッド41とメディア(被記録媒体)21とを相対的に移動させ、ヘッド41によるインク吐出領域Rに対するメディア21の位置を変える。例えば、ヘッド41がシリアル型である場合、搬送方向は、ヘッド41が走査する方向(主走査方向)であるY方向に交差する方向である副走査方向(T方向)であり、この搬送方向にメディア21を搬送する。駆動ローラ7は、Y方向に延在しており、回転可能にプラテン6の支持体に支持されている。駆動ローラ7は、後述するプレプラテン6aとメインプラテン6bとの間に配置されており、メディア21を搬送方向Tに移動させるように駆動モータ(図示せず)によって回転駆動される。
【0030】
駆動ローラ7が駆動することにより、メディア供給部12に巻きつけられたメディア21が移動する。なお、本発明におけるインクジェット印刷装置が備える駆動部はメディアを駆動させる構成に限られるものではなく、メディアとヘッドとの相対位置を移動させるものであればよい。例えば、メディアの位置を固定して、ヘッド等を動かしてもよく、両方を駆動させてもよい。
【0031】
従動ローラ13は、駆動ローラ7と共にメディア21を挟み、駆動ローラ7によるメディア21の搬送を補助するためのものである。従動ローラ13は、主走査方向であるY方向に複数延設されており、回転可能に支持されている。駆動ローラ7を駆動することにより、従動ローラ13は従動回転し、メディア21は移動する。従動ローラ13は、メディア21を介して駆動ローラ7と対面しており、駆動ローラ7の駆動に応じて従動回転する。
【0032】
メディア供給部12はメディア21を巻きつけておくためのローラであり、駆動ローラ7が駆動することによって、巻きつけられたメディア21が移動する。
【0033】
プラテン6は、メディア21を載置する。プラテン6は、プレプラテン6a、メインプラテン6b、及び、ポストプラテン6cから構成されている。プレプラテン6aは、メディア21のうち、ヘッド41による印刷中の部分を、ヘッド41とは反対側から支持する。プレプラテン6aは、メディア21の搬送方向の上流側に配置されている。ポストプラテン6cは、搬送方向におけるメインプラテン6bの下流側に配置されており、メディア21を支持する。プレプラテン6a、メインプラテン6b、及び、ポストプラテン6cには、それぞれ、加熱手段が設けられていてもよい。プレプラテン6a、メインプラテン6b、及び、ポストプラテン6cは、Y方向に延在している。
【0034】
また、プラテン6は、メディア21の印刷位置を規定するとともに、メディア21とヘッド41との間の間隔(ヘッドギャップ)を所定の距離に維持するように、メディア21を吸着や押圧などにより保持するための機構を有している。このため、プラテン6は、主走査方向に移動するキャリッジ4と対向するように長方形に形成されている。また、プラテン6の上端面とキャリッジ4の底面との間の間隔は、上記のヘッドギャップを確保できる所定の距離に設定されている。
【0035】
このヘッドギャップが小さいほどメディア21へのインク滴の着弾性が良くなるため、着弾せずに飛散する微小なインク滴(インクミスト)の発生が少なくなる。しかしながら、メディア21が紙や布である場合、表面に凹凸があることから、着弾の均一性を確保するには、ヘッドギャップがある程度の大きさ(距離)でなければならない。このため、インクミストが発生しやすくなる。
【0036】
ヘッド41は、メディア21のインク吐出領域Rにインクを吐出するインク吐出部材である。このヘッド41は、キャリッジ4に設けられており、インク吐出面をプラテン6の側に向けるように配置されている。ヘッド41は、主走査方向であるY方向に移動することによって、メディア21に対して、Y方向にインクを吐出して印刷するシリアル型のヘッドであるが、本発明におけるヘッドはこれに限定されない。本発明におけるヘッドは、メディアの幅方向に沿って複数のインク吐出面を有し、メディアの上方において定位置に固定されたライン型のヘッドであってもよい。
【0037】
ヘッド41によって印刷がなされたメディア21は、ローラを備えたメディア回収部14によって巻き取られる。
【0038】
筐体2は、インクジェット印刷装置1の外形を形成する外装部材である。筐体2内には、キャリッジ4、ガイド機構5、送風部32、吸引部33などの各種の部品が収納されている。なお、本発明における筐体はヘッドを収納するものであればよい。
【0039】
キャリッジ4は、ヘッド41や電子部品(図示せず)などを走査可能に収容する収容部材である。このキャリッジ4は、ヘッド41をメディア21に対してY方向に往復移動させるように、図示しない駆動モータや駆動モータの駆動力を伝達する駆動機構などによって駆動される。
【0040】
ガイド機構5は、キャリッジ4の移動方向を規定する機構であり、メディア21の搬送方向に交わる主走査方向であってメディア21の面方向に平行な方向に、キャリッジ4を走査させるように配置されている。キャリッジ4(ヘッド41)は、メディア21に対して走査するときに、ガイド機構5に沿って移動する。
【0041】
気体送吸引機構は、筐体2の内部の気体を主に吸引し、吸引した気体をさらに筐体2内に送風することによって、筐体2の内外で気体を循環させる機構である。筐体2の内外で気体を循環させることにより、例えば、メディア21上のインク吐出領域Rに送風してインクを乾燥させることと、気体を吸引することによりメディア21上に飛散するインクミストを回収することとを、1つの気体送吸引機構により好適に行うことができる。
【0042】
ファン31は、外気を筐体2の内部に取り込むため、及び、筐体2内の気体を外部に取り出すためのファンである。ファン31は、筐体2において、メディア21の搬送方向上流側の側壁部の上部側に設けられた開口部(図示せず)に取り付けられている。本発明におけるファンは、羽根車の回転運動により気体にエネルギーを与える送風機であればよい。
【0043】
インクジェット印刷装置1は、ファンを少なくとも1つ備えていればよく、1つのファンが、後述する送風部32からの気体の送風、及び、吸引部33からの気体の吸引のいずれも行なう。従来のインクジェット装置においては、送風のためのファンと吸引のためのファンとで少なくとも2つのファンが必要であったが、本発明に係るインクジェット印刷装置は、ファンを1つ備えていれば、1つのファンで送風及び吸引を共に行なうことができるため、従来のインクジェット装置と比較して部品点数を削減することができる。もちろん、所望の送風及び吸引の出力に応じてファンの数を増やしてもよい。
【0044】
また、ファン31は、気体の流通経路上において、後述する吸引部33より送風部32に近い位置に設けられている。ファン31から吸引部33又は吸引部接続口33bまでの距離を長くすることで、吸引力を弱めることができる。一方、ファン31から送風部32までの距離が短いことで単位時間当たりの送風量を増やすことができる。これにより、送風による乾燥効率を高めることができ、且つ、吸引がヘッド41から飛翔するインクに対する影響を少なくして着弾精度を高めることができる。
【0045】
送風部32は、ファン31からの気体を、ヘッド41によるインク吐出領域R、又は、インク吐出領域Rよりもメディア21の搬送方向の下流側のプラテン6に向けて送風する。このように、インク吐出領域R又はその下流側のプラテン6に対して送風することで、メディア21に着弾したインクを迅速に乾燥させることができ、滲みを抑制できる。すなわち、送風部32は、ヘッド41側からみて、インクが着弾したメディア21、又は、駆動ローラ7によって移動した後のメディア21に気体(空気)を送るように構成されている。送風部32は、ファン31からの気体をインク吐出領域Rの概ね上方、すなわちキャリッジ4の概ね上方まで送風する送風経路を形成するダクトにより構成されている。
【0046】
なお、本実施形態において、ヘッド41はシリアル型のヘッドであるため、上述したように、キャリッジ4の概ね上方に送風することで、メディア21に着弾したインクをより迅速に乾燥させることができる。一方、ライン型のヘッドのように固定されたヘッドの場合には、キャリッジ4の上方に送風を行わず、インク吐出領域Rよりも下流側に向けて送風を行うことで、効果的に乾燥させることができる。
【0047】
送風部32は、キャリッジ4の上方において、キャリッジ4に対向する面が開口した送風口32aと、ファン31からの気体を送風部32内に取り込むことが可能なように設けられた送風部接続口32bとを有している。送風部接続口32bは、ファン31が設けられた筐体2の開口部に連結されている。
【0048】
吸引部33は、ヘッド41よりも、メディア21の搬送方向の上流側から気体を吸引する。すなわち、吸引部33は、インクが着弾する前のメディア21側から気体を吸引するように構成されている。換言すれば、ヘッド41に対してメディア21の搬送方向における上流側に向かって空気が吸引される。このように、ヘッド41より上流、すなわち、インク吐出領域Rよりも上流から吸引することでインクミストの広がりによる汚染、及び、着弾したインクの上にインクミストが付着することによる汚染を抑制することができる。
【0049】
また、吸引部33では、送風部32から送風された気体を、インク吐出領域Rよりも搬送方向の上流から吸引することで、インク吐出領域R又はその下流に向けて送風された気体の流れに及ぼす吸引の影響を低減することができ、インクの乾燥のための送風への影響を抑えつつ、インクミストの回収を行うことができる。その結果、メディア21上をより均一に乾燥させることができる。また、吸引と送風とを共通のファン31で行なうことができるので部品数を削減できる。
【0050】
吸引部33は、ヘッド41から吐出されたインクによって生じるインクミストを含む気体を筐体2の外部に排出するための排出経路を形成するダクトにより構成されている。吸引部33は、吸引口33aと、吸引口33aより大きく形成された吸引部接続口33bとを有している。吸引口33aは、ヘッド41よりも、メディア21の搬送方向の上流側に設けられている。吸引部接続口33bは、後述する気体流通路34の吸引部接続部34bに接続されるように配置されている。
【0051】
吸引部33は、吸引口33aにおける高さ方向の幅が、吸引部接続口33bにおける高さ方向の幅よりも小さく形成することで、吸引口33aにおける気体の流速を高め、インクミストを効率的に回収するように構成してもよい。ただし、吸引口33aにおける気体の流速が早くなり過ぎると、ヘッド41よりも、メディア21の搬送方向の下流側に飛散するインクミストも多く吸引されるようになる。このとき、回収されるインクミストによりインク着弾領域が汚染される可能性がある。また、吸引される気体が、ヘッド41から飛翔するインクに影響し、着弾精度が低下する恐れもある。したがって、吸引部33は、吸引口33aにおける気体の流速は高め過ぎないように構成し、メディア21の搬送方向の上流側に飛散するインクミストを主に吸引することが好ましい。
【0052】
気体流通路34は、吸引部33と送風部32との間で気体を移動させる流路である。すなわち、気体流通路34は、吸引部33において吸引された気体を送風部32まで移動させるための移動経路を形成するダクトにより構成されている。気体流通路34は、送風部32の送風部接続口32bに気体の移動が可能なように接続される送風部接続部34aと、吸引部33の吸引部接続口33bに気体の移動が可能なように接続される吸引部接続部34bとを有している。
【0053】
気体送吸引ユニット30は、気体流通路34、送風部接続部34a、及び吸引部接続部34bにより構成され、着脱可能に筐体2の外壁に設けられていてもよい。これにより、気体送吸引ユニット30を構成する各部材の交換及びメンテナンスが容易である。この場合、気体送吸引ユニット30は、送風部接続部34aを送風部32の送風部接続口32bに取り付け、吸引部接続部34bを吸引部33の吸引部接続口33bに取り付けることで、筐体2に取り付けることができる。また、気体送吸引ユニット30は、送風部接続口32bから送風部接続部34aを取り外し、吸引部接続口33bから吸引部接続部34bを取り外すことで、筐体2から取り外すことができる。
【0054】
なお、吸引部33は、気体流通路34、送風部接続部34a、及び吸引部接続部34bと同様に、着脱可能に筐体2内設けられていてもよい。この場合、吸引部33、気体流通路34、送風部接続部34a、及び吸引部接続部34bにより気体送吸引ユニット30が構成される。この気体送吸引ユニット30が、送風部接続部34aを介して送風部32とファン31とに接続されることにより、吸引部33と吸引部接続部34bとが送風部32とファン31とに接続された状態となる。これにより、筐体2に対して気体送吸引ユニット30を容易に着脱することができる。この場合、気体送吸引ユニット30の吸引部33を、筐体2に設けられた開口部から、吸引部接続部34bが筐体2の外壁に当接するまで挿入することで、気体送吸引ユニット30を筐体2に取り付けてもよい。
【0055】
このように、気体送吸引ユニット30は本発明の効果を得るために必要な機能の少なくとも一部をまとめたものであり、インクジェット印刷装置が大型化する場合は、後述するように気体送吸引ユニット30を増やせばよい。よって、装置の大型化により容易に適用することができる。
【0056】
なお、本実施形態ではファン31及び送風部32は筐体2に固定されたものとしたが、ファン31及び送風部32を含めた一体型の気体送吸引ユニット30として、筐体2に着脱を行う構成としてもよい。
【0057】
送風部32は、プラテン6のうち、メインプラテン6bを略水平に設置するとき、吸引部33の鉛直方向上側に位置する。そして、吸引部33と送風部32との間の気体の移動経路である気体流通路34は、鉛直方向に延伸している。気体流通路34は、その一部が、吸引部33から送風部32に、すなわち、下から上に気体を流通させる上昇流通部である。
【0058】
吸引部33は、ヘッド41よりも、メディア21の搬送方向の上流側に設けられた33aから、筐体2において、メディア21の搬送方向上流側の側壁部に取り付けられた吸引部接続口33bまで延伸している。したがって、吸引部33と上昇流通部(気体流通路34)との間における気体の流れる方向は、メディア21の搬送方向の下流から上流に向かう方向である。また、送風部32は、キャリッジ4の上方に設けられた送風口32aから、筐体2において、メディア21の搬送方向上流側の側壁部に取り付けられた送風部接続口32bまで延伸している。したがって、上昇流通部(気体流通路34)と送風部32との間における気体の流れる方向は、メディア21の搬送方向上流から下流に向かう方向である。
【0059】
このように、筐体2内の気体は、吸引部33から気体流通路34までは略水平方向に流れ、気体流通路34内を鉛直上方向に流れ、気体流通路34から送風部32まで略水平方向に流れる。したがって、吸引部33から送風部32への気体の搬送を簡易な構成で行うことができ、かつ、気体の流通経路を短く構成することができる。また、筐体2の外側に設けられる気体流通路34を、筐体2の外壁に沿って鉛直方向に設けることができるので、装置の省スペース化を実現することもできる。
【0060】
インクジェット印刷装置1において、メディア供給部12は、メディア21の搬送方向の上流においてメディア21を保持し、メディア21をプラテン6に供給する。そして、プラテン6のうちメインプラテン6bを略水平に設置するとき、気体流通路34は、メディア供給部12より鉛直方向上側に位置している。ここで、気体流通路34は、鉛直方向に延伸しているので、気体流通路34を筐体2の側壁部(背面)に沿わせて設置することができる。そのため、メディア供給部12にメディア21をセッティングする作業が行われるときに、気体流通路34が作業者に干渉することを低減できる。よって、容易にメディア21をセッティングできる。
【0061】
ここで、気体送吸引ユニット30を筐体2に取り付ける構成について、図2を参照して説明する。図2は、一実施形態に係るインクジェット印刷装置に設けられた気体送吸引ユニットの分解斜視図である。気体送吸引ユニット30は、吸引部33、気体流通路34、送風部接続部34a、及び吸引部接続部34bと、これらを筐体2に取り付けるための、筐体接続部40、第1フィルター取付部42、フィルター43、第2フィルター取付部44、取付部45、及びカバー部49とを備えている。
【0062】
筐体接続部40は、筐体2に直接取り付けられることにより、気体送吸引ユニット30を筐体2に取り付ける。筐体接続部40は、筐体2において、吸引部33を設けるための開口部の上方に取り付けられる。吸引部33は、気体を筐体2の外部に排出するためダクト部分を筐体2の開口部から筐体2内に挿入した状態で筐体接続部40に固定される。吸引部33は、吸引部接続部34b側に吸引部接続部34bに固定される凸部を有している。
【0063】
吸引部33に設けられた凸部は、取付部45に設けられた凹部に嵌め込むことにより、吸引部33と取付部45との間にフィルター43を挟み込む。フィルター43は、吸引部33側の第1フィルター取付部42と取付部45側の第2フィルター取付部44との間に挟まれた状態で、吸引部33と取付部45との間に固定される。そして、フィルター43を挟んだ状態で吸引部33の凸部を吸引部接続部34bに設けられた凹部に嵌め込むことにより、吸引部接続部34bを覆うようにフィルターを固定する。
【0064】
フィルター43は、吸引部接続部34bよりも筐体2側で、吸引部33から流入する気体と共に送られるインクミストを回収する。フィルター43によりインクミストを回収することで、インクミストにより汚染されていない気体を、気体流通路34を介して送風部接続部34aに送り、送風部32から再び筐体2内に送風することができる。
【0065】
また、フィルター43は、吸引部33、第1フィルター取付部42、第2フィルター取付部44、及び取付部45により、筐体2と吸引部接続部34bとの間に挟まれているのみであるため、これらの部材を取り外すことにより容易に取り外すことができる。そのため、フィルター43の交換が容易である。
【0066】
気体流通路34は、気体を流通可能なように、内部が空洞の箱形状である。また気体流通路34は、送風部接続部34a及び吸引部接続部34bを嵌めこむための開口部をそれぞれ有している。気体流通路34と、送風部接続部34a及び吸引部接続部34bとを接続している部分は、スポンジ等により密閉し、気体が漏れないように構成してもよい。気体流通路34は、板金などの金属材料により形成されたものでもよいし、樹脂製のフィルムにより形成されたものでもよい。樹脂製のフィルムにより形成した気体流通路34は軽いため、装置を軽量化できるため好ましい。また、樹脂製のフィルムにより形成した気体流通路34は、より気密性が高いため好ましい。
【0067】
カバー部49は、送風部接続部34aとファン31とを接続した部分を覆うように設けられている。なお、気体流通路34は着脱できるように構成されており、吸引部33による吸引を停止させたい場合は、気体流通路34を取り外すことで、送風部32の送風のみを実施することが可能となる。
【0068】
気体送吸引ユニット30は、インクジェット印刷装置に少なくとも1つ設けられていればよいが、図3及び4に示すように、複数設けられていることによって、より効率よく気体を循環させることができる。図3は、一実施形態に係るインクジェット印刷装置の概略を示す全体斜視図であり、インクジェット印刷装置の前面を示している。図4は、一実施形態に係るインクジェット印刷装置の概略を示す全体斜視図であり、インクジェット印刷装置の後面を示している。
【0069】
インクジェット印刷装置1は、床に設置される脚11と、脚11に支持されている本体20とを備えている。本体20は、図1に示すヘッド41に供給するインクを貯留する複数のインクタンク24を備えている。
【0070】
図3及び4に示すように、インクジェット印刷装置1が複数の気体送吸引ユニット30を備える場合、複数の気体送吸引ユニット30は、メディア21の搬送方向に交わる方向であって、メディア21の幅方向に沿って配設されている。すなわち、図1におけるY方向に沿って複数の気体送吸引ユニット30が配列されている。
【0071】
複数の気体送吸引ユニット30をメディア21の幅方向に沿って、複数設けていることで、幅方向に均一に送風及び吸引をすることができる。よって、幅が大きいメディア21を想定した大型の装置に適用しても、均一に冷却及び乾燥をさせることができる。また、従来のように、送風のファン及び吸引のファンをそれぞれ必要とする構成に比べて、気体送吸引ユニット30の数だけファンの数を削減することができるので、部品点数を大幅に削減できる。なお、本発明に係るインクジェット印刷装置は、送風部32及び吸引部33のうち、一方は単数、他方のみを複数備えていてもよい。
【0072】
また、送風部32は、図5に示すように、1つのファン31からの気体を複数の送風口32aから送風するように、搬送方向に交わる方向であってメディア21の幅方向に沿って複数配設された送風口32aを備えていてもよい。これにより、メディア21の幅方向に均一に送風することができる。また、1つのファンからの気体を複数の送風口32aからメディア21の幅方向に拡幅させながら送風することができるので、1つのファンでより広範囲に送風が可能であり、ファンの数を大幅に削減できる。その結果、部品点数を大幅に削減できる。そして、図3及び4に示すように気体送吸引ユニット30をメディア21の幅方向に沿って複数配設し、かつ、図5に示すように送風部32が1つのファン31に対して送風口32aを複数有することで、幅が大きいメディア21を想定した大型の装置に適用しても、より均一に冷却及び乾燥をさせることができる。
【0073】
さらに、吸引部33は、図6に示すように、搬送方向に交わる方向であってメディア21の幅方向に延伸した吸引口33aを有していてもよい。これによりメディア21の幅方向に広範囲の気体を吸引することができる。そして、このような吸引部33を有する気体送吸引ユニット30をメディア21の幅方向に沿って複数配設することで、幅が大きいメディアを想定した大型の装置に適用しても、インクミストによる汚染を広範囲において抑制ことができる。また、1つのファンにより、メディア21の幅方向に拡幅された吸引口33aから気体を吸引することができるので、ファンの数を削減できる。その結果、部品点数を削減できる。さらに、メディア21の幅方向に沿って複数設けられた送風口32aから送られた気体を、幅方向に延伸した吸引口33aから吸引することによって、定められた位置から一様に吸引することが可能となり、インクの乾燥のための送風に及ぼす気体の吸引の影響が低減し、より均一に乾燥させることができる。
【0074】
〔インクジェット印刷装置における気体の送風及び吸引〕
続いて、上記のように構成されるインクジェット印刷装置1におけるインクミストの排出について、図1を参照して説明する。
【0075】
印刷時には、ファン31が回転している。この状態では、ファン31から筐体2内に取り込まれた外気が、送風口32aから送風され、矢印A方向に流れ、ヘッド41のインク吐出領域R、又はインク吐出領域Rよりもメディア21の搬送方向の下流側に向かう。このとき、シリアル型のヘッドであるヘッド41が走査しており、ヘッド41からインク吐出領域Rへのインクの吐出時を除くキャリッジ4の直下には、送風口32aから送風された気体が直接送られる。また、送風口32aからの送風は矢印A方向に流れるため、インク吐出領域Rの下流に向かった気体は、メディア21に当たり、矢印G方向に流れる。一方、インク吐出領域Rよりも搬送方向の上流側の気体は、吸引口33aからの吸引によって矢印B方向に流れる。
【0076】
印刷時に、ヘッド41から吐出されメディア21に着弾しなかった一部の微小なインク滴が、インクミストとしてヘッド41とプラテン6との間に発生する。矢印B方向に流れる気体は、このインクミストを吸引部33側に運ぶ。吸引部33の吸引口33a付近に達したインクミストは、ファン31によって吸引部33内に矢印C方向に吸い込まれた後、吸引部接続部34bから気体流通路34に流入する。筐体2と吸引部接続部34bとの間には、フィルターが設けられているので、気体流通路34に流入する気体からインクミストが取り除かれる。インクミストが取り除かれた気体は、さらに、矢印D方向に気体流通路34内を移動し、矢印E方向に流れる。矢印E方向に流れる気体は、送風部接続部34aからファン31を通り、送風部32内を矢印F方向に流れることで、筐体2内に取り込まれ、送風口32aから再び送風される。
【0077】
以上のように、インクジェット印刷装置1は、気体送吸引機構を備えることにより、筐体2内で、矢印A方向、矢印B方向及び矢印C方向の気体の流れが生じ、筐体2外で、矢印D方向及び矢印E方向の気体の流れが生じ、筐体2外から内へ気体が循環することで、矢印F方向及び矢印A方向へと気体の流れが生じる。これにより、着弾したインクを迅速に乾燥させることができ、滲みを抑制できる。また、インク吐出領域より上流から吸引することでインクミストの広がりによる汚染、及び、着弾したインクの上にインクミストが付着することによる汚染を抑制できる。
【0078】
そして、送風された気体を、インク吐出領域Rよりも上流から吸引することで、インク吐出領域R又はその下流に向けて送風された気体の流れ(矢印G方向)に及ぼす気体の吸引の影響を低減することができるので、インクの乾燥のための送風への影響を抑えつつ、インクミストの回収を行うことができる。その結果、メディア21上をより均一に乾燥させることができる。また、吸引と送風とを共通のファンで行なうことができるので部品数を削減できる。
【0079】
〔付記事項〕
インクジェット印刷装置1は、メディア21にインクを吐出するヘッド41と、所定の搬送方向に、ヘッド41とメディア21とを相対的に移動させ、ヘッド41によるインク吐出領域Rに対するメディア21の位置を変える駆動ローラ7と、メディア21を載置するプラテン6と、気体送吸引機構と、を備え、気体送吸引機構は、ヘッド41によるインク吐出領域R、又は、インク吐出領域Rよりも搬送方向の下流側のプラテン6に向けて送風する送風部32と、ヘッド41よりも、搬送方向の上流側から気体を吸引する吸引部33と、吸引部33と送風部32との間で気体を移動させる気体流通路34と、少なくとも一つのファン31と、を備え、一つのファン31が、吸引部33からの気体の吸引及び送風部32からの気体の送風のいずれも行なうものである。
【0080】
インク吐出領域R又はその下流に対して送風することで、着弾したインクを迅速に乾燥させることができ、滲みを抑制できる。インク吐出領域Rより上流から吸引することでインクミストの広がりによる汚染、及び、着弾したインクの上にインクミストが付着することによる汚染を抑制できる。インク吐出領域よりも上流から気体を吸引することで、インク吐出領域又はその下流に向けて送風された気体の流れに及ぼす気体の吸引の影響を低減することができる。その結果、メディア21被記録媒体上をより均一に乾燥させることができる。また、吸引と送風とを共通のファン31で行なうことができるので部品数を削減できる。
【0081】
インクジェット印刷装置1では、気体送吸引機構は、気体送吸引ユニットを含み、気体送吸引ユニットは、少なくとも一つの送風部32、又は、送風部32に接続される少なくとも一つの送風部接続部34aと、少なくとも一つの吸引部33、又は、吸引部33に接続される少なくとも一つの吸引部接続部34bとが、少なくとも一つの気体流通路34とで接続されて形成されている。
【0082】
気体送吸引ユニットは本発明の効果を得るために必要な機能の少なくとも一部をまとめたものであり、インクジェット印刷装置1が大型化する場合は、気体送吸引ユニットを増やせばよい。よって、装置の大型化により容易に適用することができる。
【0083】
インクジェット印刷装置1では、気体送吸引ユニットを複数備え、複数の気体送吸引ユニットは搬送方向に交わる方向であってメディア21の幅方向に沿って配設されている。
【0084】
複数の気体送吸引ユニットをメディア21の幅方向に沿って、複数設けていることで、幅方向に均一に送風及び吸引をすることができる。よって、幅が大きいメディア21を想定した大型の装置に適用しても、均一に冷却及び乾燥をさせることができる。また、従来のように、送風のファン及び吸引のファンをそれぞれ必要とする構成に比べて、気体送吸引ユニットの数だけファンの数を削減することができるので、部品点数を大幅に削減できる。
【0085】
インクジェット印刷装置1では、送風部32は、搬送方向に交わる方向であってメディア21の幅方向に沿って複数配設された送風口32aを有している。
【0086】
複数の送風口32aをメディア21の幅方向に沿って、複数設けていることで、幅方向に均一に送風することができる。また、1つのファン31からの気体を複数の送風口32aから送風することができるので、ファンの数を大幅に削減できる。その結果、部品点数を大幅に削減できる。
【0087】
インクジェット印刷装置1では、吸引部33は、搬送方向に交わる方向であってメディア21の幅方向に延伸した吸引口33aを有している。
【0088】
吸引口33aがメディア21の幅方向に延伸していることで、インクミストによる汚染を広範囲において防ぐことができる。また、1つのファンにより広範囲の気体を吸引することができるので、ファンの数を大幅に削減できる。その結果、部品点数を大幅に削減できる。また、メディア21の幅方向に沿って複数設けられた送風口32aから、インク吐出領域R又はその下流に送られた気体を、幅方向に延伸した吸引口33aから吸引することによって、定められた位置から一様に吸引することが可能となり、インクの乾燥のための送風に及ぼす気体の吸引の影響が低減し、より均一に乾燥させることができる。
【0089】
インクジェット印刷装置1では、送風部32は、吸引部33の鉛直方向上側に位置するものであり、気体流通路34の一部は、鉛直方向下から上に気体を流通させる上昇流通部であり、吸引部33と上昇流通部との間における気体の流れる方向は、搬送方向の下流から上流に向かう方向であり、上昇流通部と送風部32との間における気体の流れる方向は搬送方向の上流から下流に向かう方向である。
【0090】
吸引部33から送風部32への気体の搬送を簡易な構成で行なうことができる。よって、装置全体を小型化することができ、かつ、気体の流通経路を短く構成することができる。
【0091】
インクジェット印刷装置1では、搬送方向の上流にメディア21を保持し、プラテン6に供給する、メディア供給部12を備え、上昇流通部は、メディア供給部12より鉛直方向上側に位置するものであり、上昇流通部は鉛直方向に延伸している。
【0092】
上昇流通部をインクジェット印刷装置1本体の側面(背面)に沿わせて設置することができる。そのため、メディア供給部12にメディア21をセッティングする作業が行われるときに、上昇流通部が作業者に干渉することを低減できる。よって、容易にメディア21をセッティングできる。
【0093】
インクジェット印刷装置1では、ファン31は、気体の流通経路上において、吸引部33より、送風部32に近い位置に設けられている。
【0094】
気体の流通経路上において、ファン31から吸引部33又は吸引部接続口33bまでの距離を長くすることで、ヘッド41から飛翔するインクのメディア21への着弾に影響を与えない程度の吸引力とすることができる。一方、ファン31から送風部32までの距離が短いことで単位時間当たりの送風量を増やすことができる。これにより、送風による乾燥効率を高めることができ、且つ、吸引がヘッド41から飛翔するインクに対する影響を少なくして着弾精度を高めることができる。
【0095】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、インク着弾後のメディアの均一な乾燥とインクミストの拡散抑制とを、少ない部品点数で実現するので、高品位の印刷画質及び早期乾燥と共に、コスト低減及び省スペース化が求められる印刷に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0097】
1 インクジェット印刷装置
2 筐体
4 キャリッジ
5 ガイド機構
6 プラテン(載置台)
6a プレプラテン
6b メインプラテン
6c ポストプラテン
7 駆動ローラ(搬送部)
12 メディア供給部(被記録媒体供給部)
13 従動ローラ
14 メディア回収部
21 メディア(被記録媒体)
30 気体送吸引ユニット
31 ファン
32 送風部
33 吸引部
34 気体流通路
34a 送風部接続部
34b 吸引部接続部
41 ヘッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6