特許第6604860号(P6604860)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社共立電照の特許一覧

<>
  • 特許6604860-LED照明器具 図000002
  • 特許6604860-LED照明器具 図000003
  • 特許6604860-LED照明器具 図000004
  • 特許6604860-LED照明器具 図000005
  • 特許6604860-LED照明器具 図000006
  • 特許6604860-LED照明器具 図000007
  • 特許6604860-LED照明器具 図000008
  • 特許6604860-LED照明器具 図000009
  • 特許6604860-LED照明器具 図000010
  • 特許6604860-LED照明器具 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6604860
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】LED照明器具
(51)【国際特許分類】
   F21V 29/70 20150101AFI20191031BHJP
   F21V 29/503 20150101ALI20191031BHJP
   F21V 19/00 20060101ALI20191031BHJP
   F21V 29/507 20150101ALI20191031BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20191031BHJP
【FI】
   F21V29/70
   F21V29/503
   F21V19/00 150
   F21V19/00 170
   F21V29/507
   F21Y115:10
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-10359(P2016-10359)
(22)【出願日】2016年1月22日
(65)【公開番号】特開2017-130400(P2017-130400A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2018年8月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】509311252
【氏名又は名称】株式会社共立電照
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【弁理士】
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】船ヶ山 保幸
【審査官】 田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−209053(JP,A)
【文献】 特開2012−227017(JP,A)
【文献】 特開2010−262796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 29/70
F21V 19/00
F21V 29/503
F21V 29/507
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のLEDが搭載されたLED回路基板と、
該LED回路基板が着接された第1の放熱体と、
熱伝導性を有する上側カバーと、
光照射窓部を有し、前記第1の放熱体が内設された下側カバ−と、
一部が前記上側カバーの内面に着接され、他部が前記第1の放熱体に着接された第2の放熱体と、
前記上側カバーと前記下側カバーとを回動自在に支持するヒンジ部と、
を備えていることを特徴とするLED照明器具。
【請求項2】
前記LED回路基板には、前記LED照明器具に使用される前記複数のLEDの全てが搭載されていることを特徴とする請求項1に記載のLED照明器具。
【請求項3】
前記第1の放熱体は、上面と下面を備え、該下面に前記LED回路基板が着接され、
前記第2の放熱体は、上面と下面を備え、該上面が前記上側カバーの内面に着接され、前記下面が前記第1の放熱体の上面に着接されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のLED照明器具。
【請求項4】
前記第1の放熱体及び前記第2の放熱体は、熱伝導性を有する金属素材を用いて形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のLED照明器具。
【請求項5】
前記LED回路基板で発生した熱は、前記上側カバーと前記下側カバーで構成される内部空間に放熱されるとともに、前記第1の放熱体、前記第2の放熱体、及び、前記上側カバーを介して外部空間に放熱されることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載のLED照明器具。
【請求項6】
前記第2の放熱体の下面には熱伝導性及び弾力性を有する放熱シートが貼着され、前記第2の放熱体の下面は、前記放熱シートを介して前記第1の放熱体の上面に着接されていることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載のLED照明器具。
【請求項7】
前記LED回路基板で発生した熱は、前記上側カバーと前記下側カバーで構成される内部空間に放熱されるとともに、前記第1の放熱体、前記放熱シート、前記第2の放熱体、及び、前記上側カバーを介して外部空間に放熱されることを特徴とする請求項6に記載のLED照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外灯あるいは屋内灯として用いられるLED照明器具の放熱技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LED(発光ダイオード)は、高発光効率、指向性、小型・軽量、長寿命、紫外線レス、その他諸々の利点を有しているので、従来から、交通信号機、携帯電子情報機器、屋内外の大型表示装置等に用いられており、近年、屋外あるいは屋内の照明器具としても広く利用されている。LEDは、従来の蛍光ランプに比べ電気エネルギーを光に変換するエネルギー変換効率が高く、また、LEDの発光する光には赤外線が殆ど含まれないので、LEDの発光部分の発熱量は少ないが、照度を高めるためにLEDに流れる電流を大きくするとLED素子内部の発熱量が大きくなり、必然的に、LEDの点灯制御を行う周辺素子や、LED及び周辺素子に電力を供給する電源部に流れる電流も大きくなり発熱量も増大する。さらに、照明器具として所定の明るさを得るためには、複数のLEDを備える必要があり、この複数のLED、周辺素子、電源部等が搭載されるLED回路基板は大電流が流れて高温になる。LEDは、温度が上昇すると出力が低下するという特性を有するので、LED回路基板の放熱対策は、重要な課題である。
【0003】
LED照明器具の放熱対策に関しては、下記特許文献1及び2に、以下のように記載されている。まず、特許文献1には、「従来多数のLEDを基板上に配設した集合型ランプとしては・・・、信号機等の視認性のみが求められるものが多く、本来の照明としては長時間点灯させるものは少なかった。また信号機の照明は一般に防水性は重視されるが、風通しが良い場所に設置され、構造上も放熱性が問題となることも少なく、基板自体の放熱には一般にヒートシンクが裏面全体又は表面に部分的に装着されることが公知である。しかしLEDの集合型ランプを本来の照明として使用する場合、1枚の基板に相当数のLEDを集合させて装着する必要があるほか、できるだけ厚み(又は奥行き)を小さくして集合型ランプ自体をプレート状に形成することが取付位置等の関係で汎用性があるため、基板の放熱性が求められる。特に屋外照明のように防水性を求められるものは放熱が難しいという問題がある」(段落「0002」、「0003」、「0005」参照。)と記載されている。
【0004】
そして、上記問題を解決するために、特許文献1に記載の「集合型LEDランプ」は、「基板(2)の表面に多数のLED(1)を突設し、該LED(1)の表面側を透光性のカバー(3)で覆い、基板(2)の背面側に放熱板(8)を装着した集合型ランプにおいて、基板(2)と放熱板(8)との間に放熱性及び防水性を備えた樹脂からなり、カバー(3)の周壁(3a)内面と基板(2)とに付着する接着機能を備えてなる放熱層(7)を介在させて基板(2)と放熱板(8)を固着した」ことを特徴としている。(「請求項1」参照。)
【0005】
また、特許文献2には、「LEDの高出力化に伴い、高出力が要求される照明器具においても、ランプ光源の代替光源としてLEDが使用され始めている。特に近年では、道路灯や街路灯として用いる照明器具でも、その光源にLEDを採用したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。ところで、LEDは温度が高くなるほど寿命が短くなるため、LEDを光源として採用する場合には、該LEDの放熱対策が重要となる。」(段落「0002」参照。)と記載されている。
【0006】
そして、上記課題を解決するために、特許文献2に記載の「LED照明器具」は、「照射開口が設けられた器具本体に、複数のLEDを前記照射開口に臨む位置に配置する光源ユニットを備えたLED照明器具であって、前記光源ユニットが一部のLEDを前記器具本体の内側面の側に配置し、前記内側面の側に配置されたLEDには前記内側面に接続される熱伝導板を接続して放熱し、他のLEDには放熱フィンを接続して放熱したこと」を特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−021156号公報
【特許文献2】特開2010−262796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の「集合型LEDランプ」では、「基板2」は、「カバー3」及び「放熱層7」により防水性が高められているが、「放熱層7」の背面に押接状態で接着固定された「アルミ押出成形材等よりなるヒートシンク(放熱板)8」は、外気中に露出している(段落「0015」〜「0019」、図1図4参照。)。したがって、この「集合型LEDランプ」を、例えば、交通信号機として用いると、「ヒートシンク(放熱板)8」が直接外気(風、雨、雪等)に晒されることになるので、腐食等による劣化が懸念される。仮に、「ヒートシンク(放熱板)8」を、密生性・防水性のあるカバーで覆ってしまうと、「ヒートシンク(放熱板)8」で放熱された熱が、カバー内に籠もってしまい、放熱効率が劣化する虞がある。
【0009】
これに対し、特許文献2に記載の「LED照明器具1」は、「器具本体5」内に「光源ユニット13」が収納されているので、この「光源ユニット13」に設けられた「熱伝導板45」や「放熱フィン43」その他の金属部品については、上記の特許文献1の放熱部分が露出するという問題は解消されているものと推量される。
【0010】
ここで、さらに検討してみると、特許文献2には「LED照明器具1は、・・・。このように1又は複数のLED30を坦持した複数のLED坦持板41を枠状フレーム板40に組み付けて光源ユニット13を構成した・・・。さて、光源ユニット13にLED坦持板41を組み付ける際には、少なくとも幾つかが器具本体5の内側面6の側に組み付けられている。そして、光源ユニット13が備える各LED30のうち、内側面6の側に該内側面6に沿って配置されたLED30(符号30Aを付して区別する)に対しては、図2に示すように、該LED30Aを坦持したLED坦持板41の裏面に、高熱伝導性を有する例えば銅板から成り比較的厚みのある(例えば1mm)熱伝導板45が接続され、この熱伝導板45を介して器具本体5の内側面6へLED30Aの熱が伝導されて放熱される。また、これらLED30Aよりも内側に配置された残りのLED30(符号30Bを付して区別する)については、該LED30Bを坦持したLED坦持板41の裏面に放熱フィン43が接続され、この放熱フィン43により器具本体5の内部に放熱することとしている」(段落「0010」〜「0013」、図1図3参照。)と記載されている。
【0011】
また、特許文献2には、上記のように構成した理由、及び、その効果として、以下のように記載されている。「このように、光源ユニット13が放熱フィン43の他に、LED30Aの熱を器具本体5の内側面6に伝導する熱伝導板45を備え、これら両方によって、各LED30A、30Bの放熱が行われるため、放熱フィン43だけの放熱では放熱能力が不足する既存の器具本体5を流用した場合でも、光源ユニット13が備えるLED30のうち、一部のLED30Aの発熱を器具本体5の内側面6に逃がすことができ、各LED30を良好に放熱させることができる。これにより、既存の器具本体5では熱的問題により内蔵できなかった個数或いは出力のLED30を内蔵させることができる。特に、屋外で使用される道路灯などの灯具においては、器具本体5が密閉構造とされるため、熱が籠もり易く、放熱フィン43だけでは十分な放熱性が得られないものの、本実施形態によれば、器具本体5からも放熱されるため、十分な放熱性を実現することができる。また、全部のLED30を器具本体5に熱伝導板45を介して接続して熱伝導により放熱する構成も考え得るものの、このような構成においては、器具本体5が熱的に飽和し易くなり、LED30の放熱効果が得られ難くなるものの、本実施形態では、器具本体5に熱伝導により放熱するLED30Aを一部に制限しているため、そのような問題が生じることがない」(段落「0014」、「0015」、図1図3参照。)。
【0012】
しかしながら、特許文献2に記載の「LED照明器具1」では、複数の「LED坦持板41」のうち、一部の「LED坦持板41」は、「熱伝導板45」を介して「器具本体5」の「内側面6」に放熱するように構成されているが、他の「LED坦持板41」は、裏面に接続された「放熱フィン43」によって、「器具本体5」の内部に放熱する構成となっている。つまり、特許文献2記載の「LED照明器具1」においては、「熱伝導板」による放熱と、「放熱フィン」による放熱の両方の放熱手段による放熱を用いて異なる構造の放熱手段を設計しなければならず、設計に手間が掛かり、構造も図1図4に示すように複雑である。
【0013】
また、「LED30B」が搭載された「LED坦持板41」は、「放熱フィン43」のみよって放熱され、この放熱は、特許文献2にも記載されているように「器具本体5」の内部に籠もってしまうので、この「器具本体5」の内部に籠もった熱を逃がすための更なる改善が必要である。
【0014】
そこで、本発明は、複数のLEDが搭載されたLED回路基板の発熱を効率よく外部へ放熱することができるLED照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するため、請求項1の発明では、LED照明器具であって、複数のLEDが搭載されたLED回路基板と、該LED回路基板が着接された第1の放熱体と、熱伝導性を有する上側カバーと、光照射窓部を有し、前記第1の放熱体が内設された下側カバ−と、一部が前記上側カバーの内面に着接され、他部が前記第1の放熱体に着接された第2の放熱体と、前記上側カバーと前記下側カバーとを回動自在に支持するヒンジ部と、を備えていることを特徴とする。
【0016】
また、請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記LED回路基板には、前記LED照明器具に使用される前記複数のLEDの全てが搭載されていることを特徴とする。
【0017】
また、請求項3の発明では、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記第1の放熱体は、上面と下面を備え、該下面に前記LED回路基板が着接され、前記第2の放熱体は、上面と下面を備え、該上面が前記上側カバーの内面に着接され、前記下面が前記第1の放熱体の上面に着接されていることを特徴とする。
【0018】
また、請求項4の発明では、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記第1の放熱体及び前記第2の放熱体は、熱伝導性を有する金属素材等を用いて形成されていることを特徴とする。
【0020】
また、請求項の発明では、請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の発明において、前記LED回路基板で発生した熱は、前記上側カバーと前記下側カバーで構成される内部空間に放熱されるとともに、前記第1の放熱体、前記第2の放熱体、及び、前記上側カバーを介して外部空間に放熱されることを特徴とする。
【0021】
また、請求項の発明では、請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の発明において、前記第2の放熱体の下面には熱伝導性及び弾力を有する放熱シートが貼着され、前記第2の放熱体の下面は、前記放熱シートを介して前記第1の放熱体の上面に着接されていることを特徴とする。
【0022】
また、請求項の発明では、請求項に記載の発明において、前記LED回路基板で発生した熱は、前記上側カバーと前記下側カバーで構成される内部空間に放熱されるとともに、前記第1の放熱体、前記放熱シート、前記第2の放熱体、及び、前記上側カバーを介して外部空間に放熱されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明のLED照明器具によれば、複数のLEDが搭載されたLED回路基板と、該LED回路基板が着接された第1の放熱体と、熱伝導性を有する上側カバーと、光照射窓部を有し、前記第1の放熱体が内設された下側カバ−と、一部が前記上側カバーの内面に着接され、他部が前記第1の放熱体に着接された第2の放熱体と、を備えている構成にしたので、前記LED回路基板で発生した熱は、前記上側カバーと前記下側カバーとの内部空間に放熱されるとともに、第1の放熱体、第2の放熱体、及び、上側カバーを介して外部空間(外気中)に放熱されるので、従来技術に比べ、顕著な放熱効果を奏することができる。
【0025】
また、本発明のLED照明器具によれば、上側カバー及び下側カバーを閉蓋した状態の構成において、前記放熱体は、前記LED回路基板とともにLED照明器具内に密閉・防水状態に収納されるので、直接外気に晒される虞はない。
【0026】
また、本発明のLED照明器具によれば、第2の放熱体の下面に弾力性及び高い熱伝導性を有する放熱シートを用いたので、上側カバー及び下側カバーを閉蓋した状態の構成において、第1の放熱体と第2の放熱体とが、より密着されるので、放熱効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態におけるLED照明器具において、第1の放熱体及び第2の放熱体の着装状態を説明する斜視図である。
図2】本発明の実施形態におけるLED照明器具において、第1の放熱体及び第2の放熱体の着装状態を説明する右側面図である。
図3】本発明の実施形態におけるLED照明器具において、第1の放熱体及び第2の放熱体の着装状態を説明する正面図である。
図4】本発明の実施形態におけるLED照明器具において、第1の放熱体の第2の放熱体への着装状態を説明する斜視図である。
図5】本発明の実施形態におけるLED照明器具において、第1の放熱体の第2の放熱体への着装状態を説明する右側面図である。
図6】本発明の実施形態におけるLED照明器具において、第1の放熱体の第2の放熱体への着装状態を説明する正面図である。
図7】本発明の実施形態におけるLED照明器具において、LEDのLED回路基板への着装状態を説明する底面図である。
図8】本発明の実施形態におけるLED照明器具にいて、第1の放熱体の上側カバーへの着装状態を示す斜視図である。
図9】本発明の実施形態におけるLED照明器具において、第1の放熱体の上側カバーへの着装状態、及び、第2の放熱体の下側カバーへの着装状態を示す斜視図である。
図10】本発明の実施形態におけるLED照明器具の放熱試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、好適な実施形態を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、下記の実施形態は本発明を具現化した例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0029】
(実施形態)
本発明の実施形態におけるLED照明器具について、図1図10を参照しながら説明する。
【0030】
LED照明器具1は、特許文献2に記載の「LED照明器具1」と同様に、道路脇に立設された支柱の上端に固定されて道路面を照射する道路灯として用いられる。また、街路灯、庭園灯、看板灯等の屋外照明や、建物の屋内壁照明等としても広く利用される。
【0031】
図1図2に示すように、LED照明器具1は、主に、上側カバー2、下側カバー3、ヒンジ部4、複数のLED30を搭載したLED回路基板5、熱伝導性を有しLED回路基板5が着接された第1の放熱体6、熱伝導性を有し上側カバー2に着接された第2の放熱体7から構成されている。
【0032】
上側カバー2は、熱伝導性を有する金属素材(例えば、アルミニウム。)で形成され、周縁内部には、防水用に、樹脂(例えば、合成ゴム。)製のパッキンが設けられ、上側カバー2と下側カバー3を閉蓋したときに、密閉性及び防水性が高められている。LED照明器具1の後端部には、上側カバー2と下側カバー3とを回動自在に支持するヒンジ部4が設けられ、上側カバー2と下側カバー3の開閉は、このヒンジ部4に支持されて行われる。下側カバー3は、上側カバー2と同一素材で形成され、第1の放熱体6が内設されている。
【0033】
第1の放熱体6は、上下面6a,6b、左右側面を6c,6d有し、前後側が開口された熱伝導性の高い金属素材(例えば、アルミニウム。)の箱体で形成されている。第1の放熱体6の下面6bには、照明器具1に用いる全ての照明用のLED30が搭載されたLED回路基板5が、固定手段5aによって第1の放熱体6の下面6bに着接されている(特に、図7参照。)。本実施例では、LED回路基板5は複数設けられ、それぞれのLED回路基板5に、複数のLED30が搭載されているが、全てのLED30が一枚のLED回路基板5に搭載されるように構成してもよい。LED30は、いわゆる、表面実装型LEDであり、レンズ部が道路等の照射面である下方を向き、アノード/カソード部がLED回路基板5に着接されている。第1の放熱体6の前部及び後部には、下側カバー3に第1の放熱体6を固定するための固定部材6e,6fが取り付けられている。LED回路基板5には、LED30に電力を供給するための電源コード9が、開口された支柱固定部10を介して接続されている。
【0034】
下側カバー3底面の第1の放熱体6の下面6bに対応する位置は開口され、強化ガラス、または、強化プラスチック等の透明性または透光性を有する素材で形成された照射窓部11が設けられている。光照射窓部11は、LED30から発光された光が、例えば、道路面を照射するように、構成されている。
【0035】
第2の放熱体7は、上下面7a,7b、前後面7c,7dを有し、左右面側が開口された熱伝導性の高い金属素材(例えば、アルミニウム。)の箱体で形成されている。前面7c、後面7dには、第2の放熱体7を上側カバー2の内壁面2aに固定するための固定片7e,7fが設けられ、固定片7e,7fが、それぞれ、螺子、ボルト等の螺設手段7g,7hによって、上側カバ-2の内壁面2aに螺着されることによって、第2の放熱体の上面7aが上側カバー2の内壁面2aに着接される(特に、図2図3参照。)。
【0036】
第2の放熱体7の下面7bには、弾力及び高い熱伝導性を有する放熱シート8が貼着されている。放熱シート8は、例えば、シリコン系素材、アクリル系(非シリコン系)素材で形成される。これにより、上側カバー2と下側カバー3を閉蓋したときに、第2の放熱体7の下面7bと第1の放熱体6の上面6aとの密着性が向上する。なお、第2の放熱体7の下面7bと第1の放熱体6の上面6aとを直接接触させて密着性があり、十分な放熱効率が得られるときは、放熱シート8を設けなくてもよい。
【0037】
図8図9は、上側カバー2と下側カバー3とを開蓋した状態を示している。図示するように、第1の放熱体6は、下側カバー3に内設され、第2の放熱体7は、上側カバー7の内壁面2aに螺設手段7g,7hによって着接されている。第2の放熱体7の下面7bには、放熱シート8が貼着されている。LED照明器具1を組み立てるときは、まず、上側カバー2と下側カバー3とを開蓋した状態において、上側カバー2の内壁面2aに第2の放熱体7の上面7aを着接させて螺設手段7g,7hで螺着し、下側カバー3に第1の放熱体6を内設して固定片で着脱可能に固定し、支柱固定部10を挿通された電源コード9を第1の放熱体6の所定の位置に接続する。このとき、放熱シート8は、予め第2の放熱体7の下面7bに貼着されていてもよい。
【0038】
次に、第1の放熱体6が取り付けられた下側カバー3と、第2の放熱体7が取り付けられた上側カバー2を閉蓋する。このとき、上側カバー2の前端部、及び、下側カバー3の前端部に設けられたロック手段L1,L2(図9参照。)により、上側カバー2と下側カバー3とは、押圧された状態でロックされる。上述したように、上側カバー2の周縁内部には、例えば、合成ゴムで形成された樹脂製パッキンが設けられているので、密閉性及び防水性が高められる。
【0039】
ここで、第2の放熱体7は、第1の放熱体6よりも、縮小されて形成されている。この理由について、以下、説明する。本実施の形態において、上側カバー2の内壁面2aは、平坦面ではなく、断面略への字形状に形成されている(図2参照。)。したがって、第1の放熱体6の左右側面6c、6dを高くして上面6aを上側カバー2の内壁面2aに着接しようとすると、上面6aと内壁面2aとの間に非接触の隙間が発生して、放熱効率が低下する場合がある。また、内壁面2aの平坦部2bの大きさに合わせて第1の放熱体6の上面6aを形成すれば、第1の放熱体6の上面6aと内壁面2aの平坦部2bとは密着するが、第1の放熱体6の上面6aの面積が下面6bの面積より大幅に縮小されて放熱効率が低下する。このため、第1の放熱体6とは独立して第2の放熱体7を設け、第1の放熱体6の大きさを下側カバー3に内設可能で充分な放熱効率が得られる大きさに形成し、さらに、第2の放熱体7の上面7aの大きさを、螺設手段7g,7h等の取付け部分を考慮して、内壁面2aの平坦部2bの大きさに適合するように形成し、第2の放熱体7の上面7aと内壁面2aとの密着性を高めることで第2の放熱体7の放熱効率を向上させ、第1の放熱体6と第2の放熱体7とで、全体としての放熱効率を向上させるようにしたのである。
【0040】
なお、上側カバー2の内壁面2aが曲率を有する形状をなすときは、例えば、第2の放熱体7の上面7aに、あるいは、上面7aと対応する上側カバー2の内壁面2aのいずれかに、あるいは、両方に、放熱シート8と同様の、弾力及び熱伝導性を有する放熱シートを貼着したり、第2の放熱体7の上面7aに可撓性を備えて形成することで、上側カバー2の内壁面2aと第2の放熱体7の上面7aとの密着性、つまり、放熱効率を効果的に維持することができる。

【0041】
第2の放熱体7の形成は、例えば、アルミニウムのような加工性の容易な金属性の板材を所定の形状に切断・折り曲げて形成することができる。したがって、上側カバー2の種々の形状に合わせて形成することも容易である。LED照明器具は、設置環境や装飾性等に応じて、下側カバーの形状はほぼ変えずに、上側カバーの形状を変えて形成されることが多いので、このようなときは、加工性の容易な第2の放熱体7のみ設計変更すればよいので、照明器具全体としての設計工数が簡略化される。また、商品ラインアップに合わせて、予め種々の形状の第2の放熱体7を作成しておいてもよい。
【0042】
なお、上側カバー2の内壁2aが広範囲に平坦な場合は、第2の放熱体7を設けずに、第1の放熱体6の上面6aを上側カバー2の内壁面2aに直接着接させる構成にしてもよい。
【0043】
図10に、LED照明器具1の放熱試験結果を示す。本発明の実施形態のLED照明器具1は、上記のように構成したことで、環境温度(Ta)が30°Cにおいて、電源投入(図10の時間軸「0分」)後、LED回路基板5、第1の放熱体6、上側カバー2(LED照明器具1)の測定温度は、徐々に上昇し、約70分経過後に、それぞれ、76.5°C、54.6°C、35.8°Cに安定している。この結果、本発明の実施形態のLED照明器具1は、十分な放熱特性を有し、LEDの寿命劣化を防ぐことができるといえる。
【符号の説明】
【0044】
1 LED照明器具
2 上側カバー
2a 上側カバー内壁面
2b 上側カバー内壁面の平坦部
3 下側カバー
4 ヒンジ部
5 LED回路基板
5a 固定手段
6 第1の放熱体
6a 第1の放熱体の上面
6b 第1の放熱体の下面
6c 第1の放熱体の前面
6d 第1の放熱体の後面
6e,6f 第1の放熱体の固定片
7 第2の放熱体
7a 第2の放熱体の上面
7b 第2の放熱体の下面
7c 第2の放熱体の前面
7d 第2の放熱体の後面
7e,7f 第2の放熱体の固定片
7g,7h 螺設手段
8 放熱シート
9 電源コード
10 支柱固定部
11 光照射窓部
50 LED
L1,L2 ロック手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10