特許第6604879号(P6604879)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6604879
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】ウォッシャータンク
(51)【国際特許分類】
   B60S 1/50 20060101AFI20191031BHJP
【FI】
   B60S1/50
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-54917(P2016-54917)
(22)【出願日】2016年3月18日
(65)【公開番号】特開2017-165359(P2017-165359A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2018年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148689
【氏名又は名称】株式会社村上開明堂
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英法
【審査官】 瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−185153(JP,U)
【文献】 実開平5−16524(JP,U)
【文献】 実開昭61−122954(JP,U)
【文献】 特開昭50−149023(JP,A)
【文献】 実開平6−16166(JP,U)
【文献】 実開昭56−175662(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォッシャー液を収容して前記ウォッシャー液を保温する容器と、
前記容器の内部の収容空間に前記ウォッシャー液を流入させる流入管と、
前記収容空間から前記容器の外部に前記ウォッシャー液を流出させる流出管と、
前記ウォッシャー液を加熱する加熱部と、
前記ウォッシャー液の液面に沿って配置され前記液面と共に上下移動する移動部材と、を備え、
前記流出管は、前記移動部材から下方に伸びるフレキシブルパイプを含んでおり、
前記フレキシブルパイプは、前記移動部材の下部に位置して前記ウォッシャー液を前記フレキシブルパイプに流入させる流入口を有する、
ウォッシャータンク。
【請求項2】
前記移動部材は、前記ウォッシャー液の液面で浮遊するフロートである、
請求項1に記載のウォッシャータンク。
【請求項3】
前記フレキシブルパイプは、シリコンホースである、
請求項1又は2に記載のウォッシャータンク。
【請求項4】
前記移動部材及び前記フレキシブルパイプは、鉛直方向に並ぶように配置される、
請求項1〜3のいずれか一項に記載のウォッシャータンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォッシャー液を収容するウォッシャータンクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両のフロントガラスに付着した霜を溶かす等の目的でフロントガラス等に噴射されるウォッシャー液は知られている。このウォッシャー液は、車両等に搭載されたウォッシャータンクに収容される。実開昭61−203156号公報には、自動車フロントガラス洗浄用温水器が記載されている。この自動車フロントガラス洗浄用温水器は、ウォッシャー液を収容する水槽と、水槽の内部にウォッシャー液を流入させる給水口と、水槽の内部からウォッシャー液を水槽の外部に流出させる吸水管及び送水管と、ウォッシャー液を温めるヒータとを備えている。吸水管は水槽の内部のウォッシャー液に浸漬しており、送水管は電動ポンプを介して吸水管の上側に接続されている。給水口と送水管は、水槽の上側の壁面を貫通している。
【0003】
特開2010−234871号公報には、車両用のウォッシャータンクが記載されている。このウォッシャータンクは、ウォッシャー液を収容する貯留室と、貯留室にウォッシャー液を流入させる流入管と、貯留室に空気を流出入させる筒状の通気部とを備えている。この通気部は貯留室の上側の壁面を貫通しており、通気部の上端において空気の流出入が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭61−203156号公報
【特許文献2】特開2010−234871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ウォッシャータンクに収容されたウォッシャー液は、霜を溶かす等の目的で用いられるため、ウォッシャータンクでは、ウォッシャー液を温度が高い状態で流出させることが求められる。しかしながら、前述した自動車フロントガラス洗浄用温水器では、給水管と送水管とが水槽の上側の壁面を貫通している。また、前述のウォッシャータンクでは、通気部が貯留室の上側の壁面を貫通している。上記のように給水管、送水管又は通気部等が上側の壁面を貫通している場合には、給水管、送水管又は通気部等からウォッシャー液の熱が上方に逃げてしまうので、ウォッシャー液の温度が低下するという問題が生じうる。
【0006】
本発明は、容器外に流出するウォッシャー液の温度低下を抑制することができるウォッシャータンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るウォッシャータンクは、ウォッシャー液を収容してウォッシャー液を保温する容器と、容器の内部の収容空間にウォッシャー液を流入させる流入管と、収容空間から容器の外部にウォッシャー液を流出させる流出管と、ウォッシャー液を加熱する加熱部と、ウォッシャー液の液面に沿って配置され液面と共に上下移動する移動部材と、を備え、流出管は、移動部材から下方に伸びるフレキシブルパイプを含んでおり、フレキシブルパイプは、移動部材の下部に位置してウォッシャー液をフレキシブルパイプに流入させる流入口を有する。
【0008】
このウォッシャータンクは、ウォッシャー液を収容する容器と、容器内部の収容空間のウォッシャー液を加熱する加熱部とを備え、加熱部で加熱されたウォッシャー液は、容器の内部の収容空間内で上昇する。こうして、加熱されて高温とされたウォッシャー液は、容器の内部の収容空間内で上昇し、ウォッシャー液の液面付近に位置することとなる。また、このウォッシャータンクは、ウォッシャー液の液面に沿って配置されると共に当該液面に沿って上下移動する移動部材を備え、流出管は、移動部材から下方に伸びるフレキシブルパイプを含んでおり、フレキシブルパイプの流入口は移動部材の下部に設けられる。よって、液面に沿って配置された移動部材の下部にフレキシブルパイプの流入口が設けられるので、フレキシブルパイプには液面付近に位置する高温のウォッシャー液が流入する。このように加熱されて高温とされたウォッシャー液をフレキシブルパイプに流入させることができるので、流出管から高温のウォッシャー液を流出させることができる。従って、容器外に流出するウォッシャー液の温度低下を抑制することができる。
【0009】
また、移動部材は、ウォッシャー液の液面で浮遊するフロートであってもよい。このように移動部材をフロートとすることにより、移動部材の構成を簡易にすることができる。
【0010】
また、フレキシブルパイプは、シリコンホースであってもよい。このようにフレキシブルパイプとしてシリコンホースを用いることにより、ウォッシャー液に含まれる薬品等に対するフレキシブルパイプの耐性を高めることができ、ウォッシャー液に含まれる薬品等によってフレキシブルパイプが変質することを抑制できる。また、フレキシブルパイプがシリコンホースである場合には、寒冷地で用いた場合でもフレキシブルパイプとしての屈曲性を失わないという利点もある。
【0011】
また、移動部材及びフレキシブルパイプは、鉛直方向に並ぶように配置されてもよい。このように、液面に位置する移動部材とフレキシブルパイプとを鉛直方向に並べることにより、振動等によって移動部材が液面上で転覆することを一層確実に抑制できる。従って、ウォッシャータンクが振動しても、移動部材及びフレキシブルパイプの位置を安定させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、容器外に流出するウォッシャー液の温度低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係るウォッシャータンクを示す縦断面図である。
図2図1のウォッシャータンクに第2容器が取り付けられた状態を示す縦断面図である。
図3】第1実施形態に係るフロート及びフレキシブルパイプを示す縦断面図である。
図4】(a)は、第2実施形態に係るフロート及びフレキシブルパイプを示す平面図である。(b)は、(a)のフロート及びフレキシブルパイプを示す縦断面図である。
図5】第3実施形態に係るフロート及びフレキシブルパイプを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るウォッシャータンクの実施形態について図面を参照しながら説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
(第1実施形態)
図1に示されるように、本実施形態に係るウォッシャータンク1は、例えば自動車のウォッシャー液の供給システムに適用される。ウォッシャータンク1は、ウォッシャー液Wを貯留する。この供給システムは、ウォッシャータンク1の出口側に設けられたウォッシャー液ポンプ2と、ウォッシャー液ポンプ2から伸びる管路3と、管路3のウォッシャー液ポンプ2との反対側に接続されて自動車のフロントウインドウガラスに対向して配置されたウォッシャー液ノズルとを備える。ウォッシャー液ポンプ2は、例えば自動車のドライバ等の操作によって作動し、この操作によってウォッシャー液ノズルにウォッシャー液Wを流し込む。
【0016】
ウォッシャータンク1は、例えば縦長の直方体状に形成された第1容器11を備えており、この第1容器11の内部の収容空間Sにウォッシャー液Wが収容される。第1容器11は、上面部11Aと、4つの側面部11Bと、下面部11Cとを有する。上面部11A、4つの側面部11B及び下面部11Cは、共に平板状とされている。
【0017】
上面部11A、側面部11B及び下面部11Cのそれぞれは、第1容器11の内側に位置する樹脂層11aと、樹脂層11aを外側から覆う発泡断熱層11bとを含んでいる。樹脂層11aの材料は、例えばPP(PolyPropylene)である。発泡断熱層11bとしては、発泡スチロールの成形品が用いられる。このように、第1容器11が樹脂層11a及び発泡断熱層11bによって構成されることにより、収容空間Sのウォッシャー液Wに対する保温性能が高められている。
【0018】
収容空間Sには、収容空間Sを上下に仕切るデフレクタ12が設けられる。デフレクタ12は、ウォッシャー液Wの導流板として機能する。デフレクタ12は、収容空間Sにおいて第1容器11の内壁面に接触するように支持されている。デフレクタ12は、例えばEPDM(Ethylene Propylene Diene Monomer)等のゴム材料で構成されている。
【0019】
また、デフレクタ12は、後述する空気抜きパイプ13を挿通させた状態で保持するパイプ保持孔12aと、ウォッシャー液Wを上下に通す孔部12bとを有しており、パイプ保持孔12a及び孔部12bは共に上下に貫通する。平面視におけるパイプ保持孔12a及び孔部12bの位置は適宜変更可能である。デフレクタ12は、例えば、第1容器11の下端からデフレクタ12までの距離(デフレクタ12の高さ)が第1容器11全体の高さの1/4程度となる位置に配置される。しかしながら、デフレクタ12の配置位置は適宜変更可能である。
【0020】
デフレクタ12によって仕切られた収容空間Sの下側には、収容空間Sにウォッシャー液Wを流入させる流入管14と、収容空間Sからウォッシャー液Wを第1容器11の外部に流出させる流出管15と、ウォッシャー液Wを温めるヒータ16(加熱部)とが配置されている。
【0021】
ヒータ16としては種々の液体加熱用ヒータを用いることができ、ヒータ16の種類、形状及び配置態様については特に限定されない。また、ヒータ16からは、ヒータ16に電力を供給する配線17が伸びており、この配線17と流入管14と流出管15とは、下面部11Cを貫通している。一方、上面部11A及び側面部11Bは、貫通された部位を有しない。
【0022】
流入管14、流出管15及びヒータ16は、共に第1容器11の下部11Dに配置されている。ここで、本明細書において「第1容器の下部」とは、第1容器の下面部、及び第1容器の側面部の下側部分(側面部の上下方向の中央位置より下側の部分)を含んでいる。本実施形態において、第1容器11の下部11Dはデフレクタ12の下側部分を示しており、この下部11Dに流入管14、流出管15及びヒータ16が配置されている。
【0023】
流入管14及び流出管15は、第1容器11の下面部11Cから上方に突出している。また、流入管14の内部には空気抜きパイプ13が収容されている。空気抜きパイプ13、流入管14及び流出管15は、例えばEPDM製である。空気抜きパイプ13は、流入管14からウォッシャー液Wが収容空間Sに流入したときに、収容空間Sの上側の空気層Aから空気Kを逃がすことにより、ウォッシャー液Wのスムーズな流入を可能としている。空気抜きパイプ13は、空気層Aから下方に伸びると共に、デフレクタ12を上下に貫通して、第1容器11の下面部11Cから第1容器11の外部に引き出されている。また、空気抜きパイプ13は、流入管14の内部に収容された状態で第1容器11の外部に引き出されている。
【0024】
流出管15からのウォッシャー液Wの流出は、収容空間Sのウォッシャー液Wの体積が収容空間Sの容積の90%以下となるように制御される。これにより収容空間Sの上側に空気層Aが形成される。従って、万が一収容空間Sのウォッシャー液Wが凍結して膨張したとしても、第1容器11の破損は確実に防止される。
【0025】
第1容器11の下面部11Cには、第1容器11を保温する保温台18が固定されている。保温台18は、例えば、平板状に形成されており、保温台18の材料はPP等の樹脂材料である。保温台18の厚さは下面部11Cの厚さよりも厚くなっている。保温台18には、前述の流入管14、配線17及び流出管15が上下に貫通している。
【0026】
図2に示されるように、保温台18には、更に、第1容器11を外側から包囲して第1容器11からの熱を遮断する第2容器21が固定される。第2容器21は、例えば寒冷地でウォッシャータンク1が使用されるときに追加して取り付けられる容器であり、ウォッシャー液Wの更なる保温が必要な場合に後付け可能とされている。
【0027】
第2容器21は、例えば有底筒状に形成されており、上面部22と側面部23とを有する。上面部22及び側面部23は例えば平板状に形成される。側面部23は、丸みを帯びた外縁部24から下方に延びており、側面部23の下端は、フランジ部23aにボルトが挿入され当該ボルトが保温台18に締め付けられることによって、保温台18に固定される。
【0028】
第2容器21は、魔法瓶と同様の2重構造を有しており、第1容器11を保温するための断熱構造を有する。第2容器21は、内壁25と、外壁26と、内壁25及び外壁26の間に形成された真空層27と、真空層27に配置された銅箔28とを備えている。内壁25は、例えば、ステンレス等の金属、又は金属メッキが施されたガラスによって構成されており、外壁26はステンレス等の金属によって構成されている。
【0029】
内壁25と外壁26との間に形成された真空層27に銅箔28が配置されることによって、第1容器11からの熱の輻射が抑えられ、第1容器11及びウォッシャー液Wの保温性が高められている。なお、銅箔28は、真空層27ではなく、内壁25の内側面、又は外壁26の外側面に貼り付けられてもよい。また、銅箔28に代えて、例えば銀メッキによって構成されたシート状部材が配置されてもよい。
【0030】
また、ウォッシャータンク1は、ウォッシャー液Wの液面Hで浮遊するフロート31と、流出管15の一部を構成するフレキシブルパイプ32とを備えている。フロート31は、液面Hに沿って配置された移動部材であり、液面Hと共に上下移動する。フレキシブルパイプ32は、フロート31の下部に、ウォッシャー液Wをフレキシブルパイプ32に流入させる流入口32aを有する。
【0031】
図3に示されるように、フロート31は、ウォッシャー液Wの液面Hに浮遊する材料で構成されている。例えば、フロート31はPPの中空成形によって形成されている。フロート31の形状は様々なものとすることができるが、例えばフロート31の縦断面は長円形状とされている。フロート31は、下方に向けられる第1開口31aと側方に向けられる第2開口31bとを有し、第1開口31a及び第2開口31bにフレキシブルパイプ32が通される。
【0032】
フレキシブルパイプ32は、屈曲性を有する材料によって構成されており、本実施形態では、フレキシブルパイプ32はシリコンホースである。本明細書において「フレキシブルパイプ」とは、シリコンホース等、材料そのものが屈曲性を有するパイプと、材料そのものが屈曲性を有しなくても全体として柔軟に変形するパイプ(例えば、後述するフレキシブルパイプ52)とが含まれる。
【0033】
フレキシブルパイプ32は、その一端に折り曲げ部32bを有し、折り曲げ部32bは例えば直角に曲げられている。フレキシブルパイプ32は、フロート31の第2開口31bに挿通されると共に、折り曲げ部32bがフロート31の第1開口31aに通されることによって、流入口32aが下方に向けられた状態でフロート31に固定されている。
【0034】
次に、本実施形態に係るウォッシャータンク1の作用効果について説明する。
【0035】
図1に示されるように、ウォッシャータンク1は、ウォッシャー液Wを収容する第1容器11と、第1容器11内部の収容空間Sのウォッシャー液Wを加熱するヒータ16とを備え、ヒータ16で加熱されたウォッシャー液Wは、第1容器11の内部の収容空間Sで上昇する。こうして加熱されて高温とされたウォッシャー液Wは、第1容器11の内部の収容空間Sで上昇し、ウォッシャー液Wの液面H付近に位置することとなる。
【0036】
また、ウォッシャータンク1は、ウォッシャー液Wの液面Hに沿って配置されると共に液面Hに沿って上下移動するフロート31を備え、流出管15は、フロート31から下方に伸びるフレキシブルパイプ32を含んでおり、フレキシブルパイプ32の流入口32aはフロート31の下部に設けられる。よって、液面Hに沿って配置されたフロート31の下部にフレキシブルパイプ32の流入口32aが設けられるので、フレキシブルパイプ32には、液面H付近に位置する高温のウォッシャー液Wが流入する。このように加熱されて高温とされたウォッシャー液Wをフレキシブルパイプ32に流入させることができるので、流出管15から高温のウォッシャー液Wを流出させることができる。従って、容器外に流出するウォッシャー液Wの温度低下を抑制することができる。
【0037】
また、ウォッシャータンク1では、液面Hに沿って上下移動する移動部材としてフロート31を用いているので、移動部材の構成を簡易にすることができる。
【0038】
また、フレキシブルパイプ32はシリコンホースである。このようにフレキシブルパイプ32としてシリコンホースを用いることにより、ウォッシャー液Wに含まれる薬品等に対するフレキシブルパイプ32の耐性を高めることができ、ウォッシャー液Wに含まれる薬品等によってフレキシブルパイプ32が変質することを抑制できる。また、フレキシブルパイプ32がシリコンホースである場合には、寒冷地で用いた場合であってもフレキシブルパイプ32としての屈曲性を失わないという利点もある。
【0039】
更に、フロート31は、PPによって構成されている。フロート31がPPによって構成されることにより、ウォッシャー液Wに含まれる薬品等に対するフロート31の耐性を高めることができると共にフロート31を軽くすることができる。また、フロート31がシリコンによって構成される場合も、ウォッシャー液Wに含まれる薬品等に対する耐性を高めると共に軽量化を実現できる。但し、フロート31がPP製である場合には、フロート31がシリコン製である場合よりもコストを抑えられるという利点がある。
【0040】
また、第1容器11内部の収容空間Sにウォッシャー液Wを流入させる流入管14と、収容空間S内のウォッシャー液Wを第1容器11の外部に流出させる流出管15と、ヒータ16とは、第1容器11の下部11Dに配置されている。よって、高温のウォッシャー液Wが収容空間Sの上側に貯められるので、流入管14、流出管15及びヒータ16を第1容器11の下部11Dに配置することにより、ウォッシャー液Wからの熱を第1容器11の外部に逃げにくくすることができる。
【0041】
このため、収容空間Sの上側で高温のウォッシャー液Wを保持することができ、ウォッシャー液Wの熱を収容空間Sの上側から逃げにくくすることができるので、収容空間S内のウォッシャー液Wの温度低下を抑制できる。従って、第1容器11の外部に流出するウォッシャー液Wの温度低下を抑制することができる。
【0042】
更に、本実施形態では、デフレクタ12によって、流入管14及び流出管15が設けられる下側の部分と、貫通された部分を有しない上側の部分とが仕切られている。よって、上側の部分のウォッシャー液Wを一層確実に保温させることができると共に、下側の部分にウォッシャー液Wの熱を逃げにくくすることができる。従って、収容空間Sのウォッシャー液Wの温度低下を一層確実に抑制できる。
【0043】
また、本実施形態では、流入管14及び流出管15が第1容器11の下面部11Cに配置されている。更に、第1容器11の上面部11A及び側面部11Bは、貫通されている部位を有しない。従って、ウォッシャー液Wからの熱の逃げをより確実に抑制することができ、ウォッシャー液Wに対する保温効果を高めることができる。
【0044】
また、ウォッシャータンク1は、第1容器11を外側から包囲して第1容器11からの熱を遮断する第2容器21を更に備える。よって、第2容器21が第1容器11からの熱を遮断することにより、第1容器11から熱を逃げにくくすることができるので、ウォッシャー液Wの保温効果を一層高めることができる。
【0045】
従って、第2容器21を更に備えることにより、このウォッシャータンク1を寒冷地で使用した場合であっても、高温のウォッシャー液Wを収容空間Sの上側に貯めることができ、ウォッシャー液Wの熱を外部に逃げにくくすることができる。よって、寒冷地で用いた場合でも、収容空間S内に高温のウォッシャー液Wを貯めることができるので、容器外に流出するウォッシャー液Wの温度低下を一層確実に抑制できる。
【0046】
また、第2容器21は、ボルトによって保温台18に取り付けられるので、保温台18への取り付けが容易とされている。更に、第2容器21は、後付けによって取り付けられるので、寒冷地でない所では第2容器21を取り付けずに、寒冷地では第2容器21を取り付けるということが可能となる。すなわち、使用する場所に応じて第2容器21を取り付けるかどうかを選択することができる。
【0047】
また、ウォッシャータンク1は、収容空間Sの上側に形成された空気層Aから第1容器11の外部に空気Kを流出させる空気抜きパイプ13を備え、空気抜きパイプ13は、空気層Aから下方に伸びると共に、第1容器11の下部11Dから第1容器11の外部に引き出されている。従って、空気抜きパイプ13によって第1容器11の外部に空気Kを流出させることができるので、空気Kを抜きながら収容空間Sへのウォッシャー液Wの流入をスムーズに行うことができる。
【0048】
また、空気抜きパイプ13は、第1容器11の下部11Dから第1容器11の外部に引き出されているので、第1容器11の上側ではウォッシャー液Wを確実に保温させることができる。従って、ウォッシャー液Wの熱を第1容器11の外部に逃げにくくすることができるので、収容空間S内のウォッシャー液Wの温度低下を抑制できる。よって、第1容器11の外部に流出するウォッシャー液Wの温度低下を抑制することができる。
【0049】
また、空気抜きパイプ13は、流入管14の内部に収容された状態で第1容器11の外部に引き出されている。このように空気抜きパイプ13を流入管14の内部に収容することによって、空気抜きパイプ13を固定させる部品等を減らすことができ、空気抜きパイプ13の取付構造を簡易にすることができる。
【0050】
また、ウォッシャータンク1は、第1容器11の下端で第1容器11を保温する保温台18を備える。よって、流入管14、流出管15及びヒータ16が配置された第1容器11の下部11Dを保温することができ、収容空間S内のウォッシャー液Wの保温効果を高めることができる。従って、ウォッシャー液Wの温度低下をより効果的に抑制することができる。
【0051】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るウォッシャータンクについて説明する。図4(a)及び図4(b)に示されるように、第2実施形態に係るウォッシャータンクでは、フロート41及びフレキシブルパイプ42の構造が第1実施形態と異なっている。以下では、前述した内容と重複する説明を省略する。
【0052】
フロート41は、前述した第1開口31a及び第2開口31bのような開口を有しておらず、第1実施形態のフロート31よりも単純化された形状となっており、例えば厚みを有する円板状とされている。フロート41の下部には、フレキシブルパイプ42の流入口42aが配置されており、流入口42aはフレキシブルパイプ42の上端に設けられる。フレキシブルパイプ42は、例えばシリコンホースである。
【0053】
フロート41とフレキシブルパイプ42とは上下に延びる接続部材43によって接続されており、フロート41とフレキシブルパイプ42との間には隙間Cが形成されている。ウォッシャー液Wは、この隙間Cから流入口42aに入り込むことによってフレキシブルパイプ42に上から流入する。フロート41とフレキシブルパイプ42とは鉛直方向に並ぶように配置されている。また、鉛直方向から見た場合において、フレキシブルパイプ42の外縁はフロート41の外縁に含まれており、フロート41の外縁とフレキシブルパイプ42の外縁とは同心円状に設けられる。
【0054】
以上、第2実施形態に係るウォッシャータンクでは、液面Hに沿って配置されたフロート41の下部にフレキシブルパイプ42の流入口42aが設けられるので、フレキシブルパイプ42には、液面H付近に位置する高温のウォッシャー液Wが流入する。従って、第1実施形態のウォッシャータンク1と同様の効果が得られる。
【0055】
また、フロート41及びフレキシブルパイプ42は、鉛直方向に並ぶように配置されている。このように、液面Hに位置するフロート41とフレキシブルパイプ42とを鉛直方向に並べることにより、振動等によってフロート41が液面H上で転覆することを一層確実に抑制できる。従って、ウォッシャータンクが振動しても、フロート41及びフレキシブルパイプ42の位置を安定させることができる。
【0056】
(第3実施形態)
続いて、第3実施形態に係るウォッシャータンクについて図5を参照しながら説明する。図5に示されるように、第3実施形態に係るウォッシャータンクでは、フレキシブルパイプ52の構造が第1実施形態及び第2実施形態と異なっている。また、液面Hで上下移動する移動部材としては、例えば第2実施形態と同一のフロート41が用いられる。
【0057】
フレキシブルパイプ52は、スライドパイプであり、フロート41の上下移動に伴って柔軟に伸縮する。フレキシブルパイプ52では、複数の筒状部52bが入れ子式に収容されており、複数の筒状部52bは互いに上下にスライド自在とされている。フレキシブルパイプ52の流入口52aは、フレキシブルパイプ52の上端に設けられており、この流入口52aは、フロート41の下部に配置されている。また、第2実施形態と同様、フロート41とフレキシブルパイプ52とは鉛直方向に並ぶように配置されている。
【0058】
第3実施形態に係るウォッシャータンクでは、第1実施形態及び第2実施形態と同様、フロート41の下部にフレキシブルパイプ52の流入口52aが設けられるので、フレキシブルパイプ52には、液面H付近に位置する高温のウォッシャー液Wが流入する。また、フロート41とフレキシブルパイプ52とは鉛直方向に並ぶように配置されている。従って、第1実施形態及び第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0059】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。すなわち、本発明は、各請求項の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。
【0060】
例えば、前述の実施形態では、液面Hに沿って配置される移動部材としてフロート31,41を用いる例について説明した。しかしながら、上記の移動部材としては、例えば液面Hの位置を検知して自動的に上下移動する移動部材等、フロート以外のものを用いることも可能である。また、フロート31,41の形状、大きさ及び材料は、前述の実施形態のものに限られず適宜変更可能である。
【0061】
また、前述の実施形態では、シリコンホースであるフレキシブルパイプ32,42及びスライドパイプであるフレキシブルパイプ52について説明したが、シリコンホース又はスライドパイプ以外のフレキシブルパイプを用いることも可能である。例えば、フレキシブルパイプ32,42,52に代えて、蛇腹状のフレキシブルパイプを用いてもよい。
【0062】
例えば、前述の実施形態では、上面部11A、側面部11B及び下面部11Cを備え、樹脂層11a及び発泡断熱層11bを有する第1容器11について説明した。しかしながら、第1容器11の形状及び材料については適宜変更可能である。また、第2容器21の形状及び材料、並びにデフレクタ12の形状及び材料についても適宜変更可能である。
【0063】
また、前述の実施形態では、空気抜きパイプ13が流入管14の内部に収容された状態で第1容器11の外部に引き出されている例について説明した。しかしながら、空気抜きパイプ13の配置態様については、上記の例に限られず適宜変更可能である。また、空気抜きパイプ13、流入管14及び流出管15の形状及び材料についても適宜変更可能である。更に、流入管14、流出管15及びヒータ16は、第1容器11の下部11D以外の位置に配置されていてもよい。
【0064】
また、前述の実施形態では、第1容器11の下面部11Cに第1容器11を保温する保温台18が固定されている例について説明したが、この保温台18の形状及び材料は適宜変更可能である。更に、保温台18を省略することも可能である。
【0065】
また、前述の実施形態では、ウォッシャータンク1が、ウォッシャー液ポンプ2及び管路3を備えたウォッシャー液の供給システムに配置される例について説明した。しかしながら、本発明に係るウォッシャータンクは、前述とは異なるウォッシャー液の供給システムにも適用させることができる。
【符号の説明】
【0066】
1…ウォッシャータンク、2…ウォッシャー液ポンプ、3…管路、11…第1容器、11A…上面部、11B…側面部、11C…下面部、11D…下部、11a…樹脂層、11b…発泡断熱層、12…デフレクタ、12a…パイプ保持孔、12b…孔部、13…空気抜きパイプ、14…流入管、15…流出管、16…ヒータ、17…配線、18…保温台、21…第2容器、22…上面部、23…側面部、24…外縁部、25…内壁、26…外壁、27…真空層、28…銅箔、31,41…フロート(移動部材)、31a…第1開口、31b…第2開口、32,42,52…フレキシブルパイプ、32a,42a,52a…流入口、32b…折り曲げ部、A…空気層、H…液面、K…空気、S…収容空間、W…ウォッシャー液。
図1
図2
図3
図4
図5