特許第6604880号(P6604880)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 石福金属興業株式会社の特許一覧 ▶ パナソニック株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6604880
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】オゾン生成用電極
(51)【国際特許分類】
   C25B 11/10 20060101AFI20191031BHJP
   C25B 11/03 20060101ALI20191031BHJP
   C25B 1/13 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   C25B11/10 C
   C25B11/03
   C25B1/13
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-59820(P2016-59820)
(22)【出願日】2016年3月24日
(65)【公開番号】特開2017-172001(P2017-172001A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2018年6月6日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000198709
【氏名又は名称】石福金属興業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166039
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 款
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 祐二
(72)【発明者】
【氏名】添田 博史
(72)【発明者】
【氏名】土屋 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】藤井 優子
(72)【発明者】
【氏名】清水 早織
(72)【発明者】
【氏名】黒河 圭子
(72)【発明者】
【氏名】金澤 成寿
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−097122(JP,A)
【文献】 特開2007−046129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00−15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解用電極において、
(a)チタン又はチタン合金よりなる電極基体と、
(b)該電極基体表面における、表面粗さRaが3〜4μmの凹凸部に分散担持された白金と、該白金が担持されていない該電極基体表面に形成された酸化チタンと、からなる中間層と、
(c)酸化タンタルと白金の混合物からなり、該中間層に到達するクラックを有し、表面粗さRaが2〜3μmの外層と、
を有することを特徴とするオゾン生成用電極。
【請求項2】
前記酸化タンタルと白金の混合物において、金属換算で、白金およびタンタルに対する白金の相対的割合が1〜20mol%であることを特徴とする請求項1に記載のオゾン生成用電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業用又は民生用電解プロセスに使用されるオゾン生成用電極及び当該オゾン生成用電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水にオゾンが溶解したオゾン水は例えば殺菌用に用いられるが、そのオゾン水を生成する方法として、水の電気分解により水中でオゾンを発生させる方法が知られている。従来、水電解によるオゾンの生成用陽極として、チタン基体の表面に二酸化鉛を電着した電解用電極が使用されていた。しかしながら、二酸化鉛電極は環境負荷が大きい問題があり、種々の代替電極が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、チタン基体と、20層の焼成処理により白金で構成される中間層と、酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化チタン、又は、酸化タングステンである表面層からなり、該表面層には、表面層の表面から内部に連続して延在するクラック(孔)が形成されており、孔は、表面層を貫通して中間層との界面までは到達しているものもあるが、導電性基体までは到達していない、電解用電極およびその製造方法が記載されている。
【0004】
特許文献2には、チタン基体と、その表面に白金と酸化チタンとの合計量に対し、白金が0.5〜30モル%含有する耐食中間層と、耐食中間層の表面に酸化スズまたは酸化イリジウムを主成分とする触媒層を有する電解用電極とその製造方法が記載されている。
【0005】
特許文献3には、チタン基体と、基体表面に形成された、チタンとタンタルの複合酸化物である導電性酸化タンタル含有下地層と、さらに、酸化タンタルの含有量が70モル%以上であり更に白金族金属(白金族金属は、白金及び/又はイリジウムである。)を有する触媒被覆層を含んで成ることを特徴とする電解的水処理用電極が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-046129
【特許文献2】特開2012-188716
【特許文献3】特開2006-322026
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、中間層として電極基体上に均一な白金層を全面にわたって形成し、その上に表面層を形成しているため、中間層と表面層との間で剥離が発生しやすく、寿命が短いという問題が発生していた。
【0008】
また、特許文献1では、クラックがチタン基体に到達しないように、チタン基体の全面を白金からなる中間層で覆っているが、該白金からなる中間層は20層の焼成処理により0.1μmの厚さに作成されている。そのような20層の焼成処理はコスト高になり実用的でない。
【0009】
本発明の目的は、製造コストの削減を可能にし、中間層と外層との剥離がしにくい、オゾン発生効率の高い状態を長時間維持できる電極およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、クラックを有する酸化タンタルを含む外層(表面層)と白金からなる中間層において、中間層の白金に達するクラックを通して滲入した水が酸化されるという機構により、外層のクラックと連接する中間層の僅かな面積上で電子の授受が行われるため、その部分の白金の電流密度が上昇し、電位が高い状態が保たれることで高いオゾン発生効率が維持されること、外層が中間層から剥離するとクラックの狭間が大きくなり、電位が高い状態が保てなくなりオゾン発生効が低下すること、を推定し、鋭意検討を重ねた結果、中間層として、電極基体表面の凹凸部に分散担持された白金と、該白金が担持されていない該電極基体表面に形成された酸化チタンとからなる中間層を形成するとともに、外層を酸化タンタルと白金の混合物からなるものとすると、剥離がしにくく、オゾン発生効率の高い状態を長時間維持できる電極が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
中間層を、基体上に全面にわたり均一に形成した白金層とし、その上に酸化タンタルと白金の混合物からなる外層を形成すると、白金と酸化タンタルを含む外層との界面があるだけで、酸化チタンと酸化タンタルを含む外層との界面は存在しない。一方、本発明の電極構成は、電極基体表面の凹凸部に分散担持された白金と、白金が担持されていない電極基体表面に形成された酸化チタンとからなる中間層が形成され、その上に酸化タンタルと白金の混合物とからなる外層が形成されているので、酸化チタン・酸化タンタルを含む外層との界面が存在する。中間層の酸化チタンは中間層の白金に比べて外層の酸化タンタルとの密着強度が強いことから、本発明の電極においては、中間層と外層との強い密着強度が得られる。
【0011】
すなわち、上記目的は、チタン又はチタン基合金よりなる電極基体を具備し、該電極基体表面の凹凸部に分散担持された白金と、該白金が担持されていない該電極基体表面に形成された酸化チタンからなる中間層と、酸化タンタルと白金の混合物からなり、該中間層に到達するクラックを有し、表面粗さRaが2〜5μmの外層と、を有するオゾン生成用電極によって達成される。
【0012】
酸化タンタルと白金の混合物である外層には中間層である分散担持された白金に達するクラックが存在しており、該クラックを通して滲入した水が中間層の該白金サイトにて酸化されオゾンが生成されるのであるが、その生成されたオゾンを効率よく外層の外に排出させるため、電極表面を粗面化して表面粗さRaを2〜5μmとすることで電極表面近傍で水の乱流を起こし、高いオゾン発生効率を維持することができる。
【0013】
上記オゾン生成用電極における、前記酸化タンタルと白金の混合物において、金属換算で、白金およびタンタルに対する白金の相対的割合が1〜20mol%であることが好ましい。
【0014】
また上記目的は、
少なくとも白金が分散担持される面が酸化膜除去されるとともに粗面化されて表面に凹凸を有するチタン又はチタン合金よりなる電極基体表面に、
白金化合物の溶液を塗布し、乾燥させた後、大気中で熱分解させることにより、該電極基体表面の凹凸部に白金を分散担持させ、白金が担持されていない部分の電極基体表面のチタンを酸化チタンに変え、
その後外層を形成することを特徴とするオゾン生成用電極の製造方法によって達成される。
【0015】
上記オゾン生成用電極の製造方法では、白金化合物の熱分解後、基体を冷却して常温に戻し、その後、該基体を温度300〜500℃にて30分〜1時間大気中で熱処理を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に従うと、製造コストの削減を可能にし、中間層と外層との剥離がしにくい、オゾン発生効率の高い状態を長時間維持できる電極およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のオゾン生成用電極及びその製造方法について説明する。
【0018】
本発明において使用される電極基体の材質としては、チタン又はチタン基合金が挙げられる。チタン基合金としては、チタンを主体とする耐食性のある導電性の合金が使用され、例えばTi−Ta−Nb、Ti−Pd、Ti−Zr、Ti−W、Ti−Al等の組合せからなる、通常電極材料として使用されているTi基合金が挙げられる。これらの電極材料は板状、有孔板状、棒状、網板状等の所望形状に加工して電極基体として用いることができる。
【0019】
上記の如き電極基体には、予め前処理をするのが望ましい。電極基体の前処理方法としては、研削材を吹き付けて機械的に粗面化するブラスト処理方法や、シュウ酸など酸溶液の流動浴又は静止浴に浸漬させて、電極基体の表面を溶解させる化学的エッチング法などがある。
【0020】
そのような前処理の好適具体例としては以下に述べるものが挙げられる。先ず、前述したチタン又はチタン基合金よりなる電極基体(以下、チタン基体という)表面を、例えばアルコール等で洗浄した後、200g/Lの熱シュウ酸水溶液中により所定の表面粗さRaとなるまでエッチング処理をする。該エッチング処理により、チタン基体表面の酸化膜が除去されるとともに、所定の表面粗さRaに粗面化される。また、チタン基体表面には、ごく薄い水素化チタンの皮膜が形成される。チタン基体の表面粗さRaは、2〜5μmが、好ましい。なお、表面粗さRa(算術平均粗さ)は、JIS B0601−2013に従い、水素化チタンの皮膜形成後に測定した。
【0021】
以上により、少なくとも白金が分散担持される面が酸化膜除去されるとともに粗面化されて表面に凹凸を有するチタン又はチタン合金よりなる電極基体が得られる。
【0022】
チタン基体の表面粗さRaが5μmを超えるとチタン基体の形状維持が困難になるとともに、流動浴等への浸漬時間が多大となり、製造コストの増大を招来する。
【0023】
なお、電極基体の前処理方法としては、研削材を吹き付けて機械的に粗面化するブラスト処理方法を選択する場合、該処理後、酸化皮膜を除去するために、酸処理することが好ましい。
【0024】
次いで、チタン基体上に中間層を形成する。たとえば、電極基体に白金化合物の溶液を塗布し、乾燥させた後、大気中で熱分解させることにより、該電極基体表面の凹凸部に白金を分散担持させ、白金が担持されていない部分の電極基体表面のチタンを酸化チタンに変える。
【0025】
先ず、チタン基体表面の凹凸部に白金を分散担持する。チタン基体表面の凹凸部への白金の分散担持は、熱分解法、電気メッキ法などの方法で作成することができるが、熱分解法による形成がより望ましい。熱分解法の具体例としては、白金化合物である塩化白金酸を溶媒に溶解し溶液状でチタン基体上に塗布し、乾燥し、大気中で所定条件の焼成(例えば500℃、10分間)を行う。そして、この塗布−乾燥−焼成工程をたとえば2回繰り返すことによりチタン基体上に白金が分散担持される。その際の担持量は、0.01〜0.07g/dmとする。好ましくは、0.02〜0.06g/dmとする。(0.06g/dm=0.3μm相当)
【0026】
上記所定条件の焼成により、白金の下の水素化チタンの皮膜の層を熱分解して水素化チタンを実質的にチタン金属に戻すとともに、白金が担持されていない部分の電極基体表面のチタンは低酸化状態の酸化チタンに変えられる。
【0027】
さらに、白金を担持していない部分の酸化チタン層を厚くするため、または、酸化チタン層を安定化するため、熱処理を追加してもよい。すなわち、白金化合物の熱分解(大気中で所定条件の焼成)後、基体を冷却して常温に戻し、その後、基体を温度300〜500℃にて30分〜1時間大気中で熱処理を行ってもよい。
具体的には、この塗布−乾燥−焼成工程をたとえば2回繰り返した後、基体を冷却して常温に戻す。その後、基体を300〜500℃、好ましくは350〜450℃にて、30分〜1時間大気中で熱処理を行う。熱処理による安定化としては、酸化チタンの被膜によって白金が担持されていない部分が完全に覆われる効果が考えられる。
【0028】
チタン基体表面(白金を担持していない部分)に露出した酸化チタン層の厚さは、一般に0.01〜0.10μm、好ましくは0.02〜0.06μmの範囲内にあるのが好適であり、また酸化チタンの組成はTiOxとしてxが一般に1<x≦2、特に1.9<x≦2の範囲にあるのが望ましい。
【0029】
このようにして、電極基体表面の凹凸部に分散担持された白金と、白金が担持されていない電極基体表面に形成された酸化チタンと、からなる中間層が形成される。このような中間層の上に酸化タンタルを含む外層を形成すると、白金と酸化タンタルを含む外層との界面が存在するのに加え、酸化チタンと酸化タンタルを含む外層との界面も存在する。ここで、酸化チタンは、白金に比べて外層の酸化タンタルとの密着強度が強いことから、本願発明では、中間層を基体上に全面にわたり均一に形成した白金層とした場合に比べて、中間層と外層との強い密着強度が得られる。
【0030】
次に、白金が分散担持された中間層の表面を酸化タンタルと白金の混合物である外層で被覆する。該混合物を形成するために使用される白金化合物、タンタル化合物としては、塩化白金酸、タンタルエトキシド等が挙げられる。白金化合物、タンタル化合物は溶媒に溶解して、溶液状でチタン基体上の中間層上に塗布される。そして、その塗布、所定条件の乾燥、所定条件の焼成のサイクルを複数回繰り返すことにより外層が形成される。形成される外層の表面粗さRaは、2〜5μmが好ましい。外層の表面粗さRaが2μmを下回るとオゾン発生効率が低下してしまう。一方、チタン基体の製造コスト増大の観点より、外層の表面粗さRaが5μmを超えるものは製造し難い。なお、外層の表面粗さRa(算術平均粗さ)は、JIS B0601−2013に従って測定した。
【0031】
該中間層の白金と外層との強い密着強度を得るため、金属換算で、白金およびタンタルに対する白金の相対的割合を1〜20mol%、好ましくは5〜15mol%とする。白金およびタンタルに対する白金の相対的割合が1mol%を下回ると、中間層の白金と外層との密着強度が低くなる。
【0032】
一方、白金およびタンタルに対する白金の相対的割合が20mol%を超えると、オゾン発生効率が低下する。すなわち、Taを含む外層には中間層の白金に達するクラックが存在しており、該クラックを通して滲入した水が中間層の該白金サイトにて酸化されオゾンが生成されるのであるが、クラック部分という狭い場所に電界が集中するため電位の高い状態が保たれている。外層の白金の相対的割合が過多になると、中間層の白金サイトだけではなく、外層に存在する白金サイトにおいても酸化反応が生じてしまうことにより、中間層の該白金サイトにおける電流密度が低下し、オゾン生成に必要な電位を維持できないためと考えられる。
【実施例】
【0033】
次に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、該実施例は本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0034】
実施例1、2、比較例1
JIS1種相当のチタン板素材(0.5mm×100mm×150mm)をアルコールで洗浄後、90℃の200g/Lシュウ酸水溶液中で表1に示す時間処理し、所定の表面粗さRaを有するチタン基体を作製した。
【0035】
次いで、塩化白金酸を混合アルコール(2エトキシエタノールとイソプロピルアルコールを重量比で1:4に調整)へ溶解し、白金濃度50g/Lに調整して白金塗布液とした。この白金塗布液をピペットで0.30ml秤量し、それを該チタン基体に塗布した後、室温で10分間乾燥し、さらに200℃の大気中で10分間乾燥させた後、500℃の大気中で10分間焼成した。この塗布−乾燥−焼成工程を2回繰返した。このようにして、電極基体表面の凹凸部に分散担持された白金と、白金が担持されていない部分の該電極基体表面に形成された酸化チタンと、からなる中間層を形成した。
【0036】
【表1】
【0037】
次いで、白金濃度3.6g/Lに調整した塩化白金酸の混合アルコール(2エトキシエタノールとイソプロピルアルコールを重量比で1:4に調整)溶液と、タンタル濃度27g/Lに調整したタンタルエトキシド混合アルコール(2エトキシエタノールとイソプロピルアルコールを重量比で1:4に調整)溶液とを白金−タンタルの金属換算の組成比が10:90となるように秤量し、タンタル塗布液を作製した。
【0038】
このタンタル塗布液をピペットで0.34ml秤量し、それを該中間層上に塗布した後、室温で10分間乾燥し、さらに200℃の大気中で10分間乾燥させた後、600℃の大気中で10分間焼成した。この塗布−乾燥−焼成工程を25回繰返し、該中間層上に酸化タンタルと白金の混合物からなる外層を形成した。外層には、焼成工程にて該中間層に到達するクラックが形成される。このようにして、実施例電極1〜2及び比較例電極1を作製した。
【0039】
比較例2
JIS1種相当のチタン板素材(0.5mm×100mm×150mm)をアルコール洗浄後、20℃の8重量%フッ化水素酸水溶液中で2分間、そして120℃の60重量%硫酸水溶液中で3分間処理した。次いで、チタン基体を硫酸水溶液から取り出し、冷水を噴霧し急冷した。さらに、20℃の0.3重量%フッ化水素酸水溶液中に2分間浸漬した後水洗し、表2に示す表面粗さRaのチタン基体を作成した。
【0040】
該チタン基体の水洗後、Pt(NH(NOを硫酸溶液に溶解して白金含有量5g/L、pH≒2、50℃に調整した状態の白金めっき浴中で電気めっきを行い、表2に示す担持量の白金を、分散担持された中間層として形成させた。その後、400℃の大気中で1時間熱処理し、白金の下の水素化チタンの皮膜の層を熱分解して水素化チタンを実質的にチタン金属に戻すとともに、白金が担持されていない部分の電極基体表面のチタンは低酸化状態の酸化チタンに変化させた。
【0041】
【表2】
【0042】
次いで、実施例電極1〜2及び比較例電極1と同様に酸化タンタルと白金の混合物からなる外層を形成し、比較例電極2を作製した。
【0043】
比較例3
JIS1種相当のチタン板素材(0.5mm×100mm×150mm)をアルコールで洗浄後、90℃の200g/Lシュウ酸水溶液中で表3に示す時間処理し、表3に示す表面粗さRaを有するチタン基体を作製した。
【0044】
【表3】
【0045】
次に白金からなる中間層を形成した。ここで、実施例の中間層は、電極基体表面の凹凸部に分散担持された白金と、その白金が担持されていない電極基体表面に形成された酸化チタンと、からなる中間層であるのに対し、比較例3の中間層は、チタンからなる電極基体上に均一な白金層を全面にわたって形成した。
具体的には、実施例1、2と同じ白金塗布液をピペットで0.08ml秤量し、それを該チタン基体に滴下し、スキ−ジで白金塗布液をチタン基体表面に塗り広げた後、該基体表面上でスキージ移動して一部塗布液を除去しつつ均一塗布した。その後、室温で10分間乾燥し、500℃の大気中で10分間焼成した。この塗布−乾燥−焼成工程を膜厚が0.1μmになるまで繰返し、該チタン基体上に均一な白金層を全面にわたって形成した。白金密度から換算するとその担持量は0.02g/dmに相当する。
【0046】
次に、外層を形成する。まず、白金濃度33.7g/Lに調整した塩化白金酸の混合アルコール(2エトキシエタノールとイソプロピルアルコールを重量比で1:4に調整)溶液と、タンタル濃度253g/Lに調整したタンタルエトキシド混合アルコール(2エトキシエタノールとイソプロピルアルコールを重量比で1:4に調整)溶液とを白金−タンタルの金属換算の組成比が10:90となるように秤量し、タンタル塗布液を作製した。
【0047】
次に、タンタル塗布液をピペットで0.26ml秤量し、それを該白金層上に滴下し、スキ−ジでタンタル塗布液を該白金層上に塗り広げた後、0.13mlをスキージで除去した後、室温で10分間乾燥し、さらに200℃の大気中で10分間乾燥させた後、600℃の大気中で10分間焼成した。この塗布−乾燥−焼成工程を25回繰返し、該白金層上に酸化タンタルと白金の混合物からなる外層を形成した。外層には、焼成工程にて該中間層に到達するクラックが形成される。このようにして、比較例電極3を作製した。
【0048】
作製した実施例1〜2並びに比較例1〜3の電極を陽極に用いて、以下の様に、オゾン生成特性を評価した。電解液には、1L中に2.5ミリモルのMgSO、2.5ミリモルのNaHCO3、2.5ミリモルのCaCl、0.25ミリモルのKHCOの水溶液150mlを用いた。電極間距離10mm、電流密度2A/dm2の定電流制御にて電解時間60秒間電解し、電解した電解液を10ml採取した。次いで、採取した電解液をオゾン試薬(AccuVac、0〜0.75mg/L)で着色し、分光光度計(島津製作所製 UV−1200)にてオゾン生成量を求めた。
【0049】
作製した実施例1〜2及び比較例3の電極を陽極に用いて、次の条件下で電解した。
<電解条件> 電界液:水道水500ml、定電流制御・連続電界、電流密度:2A/dm 、電極間距離:1mm
【0050】
作成した電極の諸特性を表4に示す。ここで、オゾン生成量が0.05mg/Lになった時の電解時間を寿命と定義する。
【0051】
【表4】
【0052】
実施例電極1、2は、電極寿命がそれぞれ、1250時間、1225時間であった。比較例電極1、2は、外層の表面粗さRaが2μmを下回っているため、オゾン生成量が低かった(0.05mg/L)。比較例電極3では、オゾン生成量は実施例電極と同程度であったが、寿命が短く、900時間であった。