【実施例】
【0033】
次に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、該実施例は本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0034】
実施例1、2、比較例1
JIS1種相当のチタン板素材(
t0.5mm×
w100mm×
l150mm)をアルコールで洗浄後、90℃の200g/Lシュウ酸水溶液中で表1に示す時間処理し、所定の表面粗さRaを有するチタン基体を作製した。
【0035】
次いで、塩化白金酸を混合アルコール(2エトキシエタノールとイソプロピルアルコールを重量比で1:4に調整)へ溶解し、白金濃度50g/Lに調整して白金塗布液とした。この白金塗布液をピペットで0.30ml秤量し、それを該チタン基体に塗布した後、室温で10分間乾燥し、さらに200℃の大気中で10分間乾燥させた後、500℃の大気中で10分間焼成した。この塗布−乾燥−焼成工程を2回繰返した。このようにして、電極基体表面の凹凸部に分散担持された白金と、白金が担持されていない部分の該電極基体表面に形成された酸化チタンと、からなる中間層を形成した。
【0036】
【表1】
【0037】
次いで、白金濃度3.6g/Lに調整した塩化白金酸の混合アルコール(2エトキシエタノールとイソプロピルアルコールを重量比で1:4に調整)溶液と、タンタル濃度27g/Lに調整したタンタルエトキシド混合アルコール(2エトキシエタノールとイソプロピルアルコールを重量比で1:4に調整)溶液とを白金−タンタルの金属換算の組成比が10:90となるように秤量し、タンタル塗布液を作製した。
【0038】
このタンタル塗布液をピペットで0.34ml秤量し、それを該中間層上に塗布した後、室温で10分間乾燥し、さらに200℃の大気中で10分間乾燥させた後、600℃の大気中で10分間焼成した。この塗布−乾燥−焼成工程を25回繰返し、該中間層上に酸化タンタルと白金の混合物からなる外層を形成した。外層には、焼成工程にて該中間層に到達するクラックが形成される。このようにして、実施例電極1〜2及び比較例電極1を作製した。
【0039】
比較例2
JIS1種相当のチタン板素材(
t0.5mm×
w100mm×
l150mm)をアルコール洗浄後、20℃の8重量%フッ化水素酸水溶液中で2分間、そして120℃の60重量%硫酸水溶液中で3分間処理した。次いで、チタン基体を硫酸水溶液から取り出し、冷水を噴霧し急冷した。さらに、20℃の0.3重量%フッ化水素酸水溶液中に2分間浸漬した後水洗し、表2に示す表面粗さRaのチタン基体を作成した。
【0040】
該チタン基体の水洗後、Pt(NH
3)
2(NO
2)
2を硫酸溶液に溶解して白金含有量5g/L、pH≒2、50℃に調整した状態の白金めっき浴中で電気めっきを行い、表2に示す担持量の白金を、分散担持された中間層として形成させた。その後、400℃の大気中で1時間熱処理し、白金の下の水素化チタンの皮膜の層を熱分解して水素化チタンを実質的にチタン金属に戻すとともに、白金が担持されていない部分の電極基体表面のチタンは低酸化状態の酸化チタンに変化させた。
【0041】
【表2】
【0042】
次いで、実施例電極1〜2及び比較例電極1と同様に酸化タンタルと白金の混合物からなる外層を形成し、比較例電極2を作製した。
【0043】
比較例3
JIS1種相当のチタン板素材(
t0.5mm×
w100mm×
l150mm)をアルコールで洗浄後、90℃の200g/Lシュウ酸水溶液中で表3に示す時間処理し、表3に示す表面粗さRaを有するチタン基体を作製した。
【0044】
【表3】
【0045】
次に白金からなる中間層を形成した。ここで、実施例の中間層は、電極基体表面の凹凸部に分散担持された白金と、その白金が担持されていない電極基体表面に形成された酸化チタンと、からなる中間層であるのに対し、比較例3の中間層は、チタンからなる電極基体上に均一な白金層を全面にわたって形成した。
具体的には、実施例1、2と同じ白金塗布液をピペットで0.08ml秤量し、それを該チタン基体に滴下し、スキ−ジで白金塗布液をチタン基体表面に塗り広げた後、該基体表面上でスキージ移動して一部塗布液を除去しつつ均一塗布した。その後、室温で10分間乾燥し、500℃の大気中で10分間焼成した。この塗布−乾燥−焼成工程を膜厚が0.1μmになるまで繰返し、該チタン基体上に均一な白金層を全面にわたって形成した。白金密度から換算するとその担持量は0.02g/dm
2に相当する。
【0046】
次に、外層を形成する。まず、白金濃度33.7g/Lに調整した塩化白金酸の混合アルコール(2エトキシエタノールとイソプロピルアルコールを重量比で1:4に調整)溶液と、タンタル濃度253g/Lに調整したタンタルエトキシド混合アルコール(2エトキシエタノールとイソプロピルアルコールを重量比で1:4に調整)溶液とを白金−タンタルの金属換算の組成比が10:90となるように秤量し、タンタル塗布液を作製した。
【0047】
次に、タンタル塗布液をピペットで0.26ml秤量し、それを該白金層上に滴下し、スキ−ジでタンタル塗布液を該白金層上に塗り広げた後、0.13mlをスキージで除去した後、室温で10分間乾燥し、さらに200℃の大気中で10分間乾燥させた後、600℃の大気中で10分間焼成した。この塗布−乾燥−焼成工程を25回繰返し、該白金層上に酸化タンタルと白金の混合物からなる外層を形成した。外層には、焼成工程にて該中間層に到達するクラックが形成される。このようにして、比較例電極3を作製した。
【0048】
作製した実施例1〜2並びに比較例1〜3の電極を陽極に用いて、以下の様に、オゾン生成特性を評価した。電解液には、1L中に2.5ミリモルのMgSO
4、2.5ミリモルのNaHCO
3、2.5ミリモルのCaCl
2、0.25ミリモルのKHCO
3の水溶液150mlを用いた。電極間距離10mm、電流密度2A/dm
2の定電流制御にて電解時間60秒間電解し、電解した電解液を10ml採取した。次いで、採取した電解液をオゾン試薬(AccuVac、0〜0.75mg/L)で着色し、分光光度計(島津製作所製 UV−1200)にてオゾン生成量を求めた。
【0049】
作製した実施例1〜2及び比較例3の電極を陽極に用いて、次の条件下で電解した。
<電解条件> 電界液:水道水500ml、定電流制御・連続電界、電流密度:2A/dm
2 、電極間距離:1mm
【0050】
作成した電極の諸特性を表4に示す。ここで、オゾン生成量が0.05mg/Lになった時の電解時間を寿命と定義する。
【0051】
【表4】
【0052】
実施例電極1、2は、電極寿命がそれぞれ、1250時間、1225時間であった。比較例電極1、2は、外層の表面粗さRaが2μmを下回っているため、オゾン生成量が低かった(0.05mg/L)。比較例電極3では、オゾン生成量は実施例電極と同程度であったが、寿命が短く、900時間であった。