(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
釣竿の先端に装着した仕掛けを遠隔の着水地点に投げ入れるためにキャスティングが行われる。ベイトキャスティングリールを用いてキャスティングを行う場合には、キャスティング開始時にスプールを親指で押さえて当該スプールの回転を規制しておき、キャスティング開始後の所定のタイミングで当該スプールから親指を離すリリース動作を行って当該スプールが自由回転できるようにする。スピニングリールを用いる際にも同様のリリース動作が必要となる。
【0003】
キャスティングにおいては、リリース動作を行う時点での仕掛けの速度及び移動方向に応じて当該仕掛けの着水地点が変動する。したがって、仕掛けを所望の着水地点へ着水させるためには、キャスティング開始後の適切なタイミングでリリース動作を行う必要がある。リリース動作を行うリリースタイミングが早すぎたり遅すぎたりすると、仕掛けは、スイング軌道に応じて目標から大幅にずれた方向に飛んでしまう。例えば、オーバーヘッドキャスティングにおいてリリースタイミングが早すぎると真上に近い方向に仕掛けが飛んでしまう。その結果、仕掛けは、目標の着水地点よりも手前で着水してしまう。一方、オーバーヘッドキャスティングにおいてリリースタイミングが遅すぎると、仕掛けはリリース直後に目標よりも手前で着水してしまう。
【0004】
このように、キャスティングを適切に行うためには釣り人に一定の習熟が求められるため、キャスティングに熟練していない釣り人を支援する装置が提案されている。例えば、特開2009−159847号公報には、キャスティング時にベイトキャスティングリールのスプールを自動的に制動することにより、キャスティング時のバックラッシュを防止する装置が開示されている。キャスティング時にスプールに対して自動的に制動力を作用させる装置は、特開2001−095443号公報、及び特開2004−208630号公報にも開示されている。
【0005】
特開2014−082938号公報には、仕掛けが着水状態であると判断したときに当該仕掛けが着水状態にあることを報知することにより、釣り人が仕掛けの着水を容易に認識できるようにした装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、キャスティングにおいては、適切なリリースタイミングでリリース動作を行うことが必要となるが、この適切なリリースタイミングの判断はキャスティングの中でも特に習熟を要するものである。しかしながら、従来のキャスティングを支援するための装置は、スプールを自動的に制動するものや着水タイミングを知らせるものに限られている。適切なリリースタイミングの決定を支援するための装置はこれまで知られていない。
【0008】
本発明の目的の一つは、キャスティングにおいて適切なリリースタイミングの決定を支援するキャスティング支援装置を提供することである。本発明の他の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態に係るキャスティング支援装置は、報知を行う報知部と、キャスティングされる魚釣用仕掛けの移動方向に基づいて当該仕掛けをリリースするリリースタイミングが到来したことを決定するタイミング決定部と、前記タイミング決定部により前記リリースタイミングが到来したと判定されたときに前記報知部に報知を行わせる報知制御部と、を備える。
【0010】
当該実施形態によれば、釣り人がキャスティングを行って仕掛けを投擲したときに、当該仕掛けの移動方向に基づいてリリースタイミングが決定される。そして、この決定されたリリースタイミングで報知部により報知がなされる。よって、釣り人は、この報知部からの報知により適切なリリースタイミングを把握することができる。釣り人は、報知されたリリースタイミングにリリース動作を行うことにより、仕掛けを所望の着水地点に着水させやすくなる。
【0011】
本発明の一実施形態において、タイミング決定部は、少なくとも1つのセンサーを含むセンサーユニットによって検出された物理量を表すセンサー信号に基づいて前記仕掛けの移動方向を得るように構成される。このセンサーユニットは、例えば、前記仕掛けに備えられた少なくとも1つのセンサーを備える。この仕掛けに備えられる少なくとも1つのセンサーは、例えばモーションセンサである。このモーションセンサは、前記仕掛けの速度、加速度、角速度、角加速度、及び姿勢角の少なくとも1つを表すセンサ信号を出力することができる。
【0012】
本発明の一実施形態において、センサーユニットは、仕掛けが取り付けられた釣り糸に作用する張力を検出する張力センサーを備えることができる。この場合、タイミング決定部は、前記張力センサーからの前記釣り糸に作用する張力を表す張力信号に基づいて前記仕掛けの移動方向を検出するように構成される。当該タイミング決定部は、前記張力センサーによって検出された張力信号に加えて、必要に応じて、釣竿の軸方向の長さ、釣竿の穂先から仕掛けまでの釣糸の長さ(たらし長)、当該仕掛けの質量、及び釣竿の特性を示す釣竿特性情報に基づいて当該仕掛けの移動方向を検出することができる。この釣竿特性情報には、当該釣竿の長さ(竿長)、質量マトリクスM(x)、剛性マトリクスK(x)、及び減衰マトリクスC(x)のうちの少なくとも1つが含まれる。
【0013】
本発明の一実施形態において、タイミング決定部は、前記仕掛けの移動方向の鉛直方向に対する角度が所定角度に達したと判定された場合に前記リリースタイミングが到来したと判定するように構成される。この所定角度は例えば45度に設定される。この所定角度は、釣り人のスイングの癖やリリース動作の癖などに応じて、適宜設定され得る。
【0014】
本発明の一実施形態において、タイミング決定部は、前記仕掛けの移動方向の鉛直方向に対する角度が所定角度内にあると判定され、かつ、前記仕掛けの速度が極大値を示したことが検出された場合に、前記リリースタイミングが到来したと判定するように構成される。一般に、リリース時の仕掛けの移動速度が速いほど仕掛けを遠くへ飛ばすことができる。上記実施形態では、仕掛けの速度が極大値を示したことが検出された場合にリリースタイミングが到来したと判定することにより、仕掛けの移動速度の極大値において釣り人に対して報知を行うことができる。これにより、釣り人は、報知部の報知のタイミングで仕掛けをリリースすることにより、仕掛けを遠くへ飛ばすことができる。
【0015】
本発明の一実施形態において、タイミング決定部は、仕掛けの移動方向が目標方向に対し所定角度内にあると判定された場合に前記リリースタイミングが到来したと判定するように構成される。これらの実施形態によれば、仕掛けの移動方向の鉛直方向に対する角度だけではなく、目標方向に対してなす角度にも基づいてリリースタイミングが判定される。よって、釣竿を鉛直面に対して傾いた軌道でスイングするいわゆるサイドハンドキャストを行う場合でも、目標方向へ仕掛けを投擲するための適切なリリースタイミングを釣り人に報知することができる。
【0016】
本発明の一実施形態において、報知部は、音、光、及び振動の少なくとも1つによって、前記リリースタイミングを前記釣り人に報知するように構成される。
【0017】
本発明の一実施形態に係るキャスティング支援装置は、キャスティングされる魚釣用仕掛けの移動方向に基づいて当該仕掛けをリリースするリリースタイミングが到来したことを決定するタイミング決定部と、前記魚釣用リールを制御するリール制御部と、を備える。当該魚釣用リールは、ハンドルと、釣り糸を巻回するスプールと、前記ハンドルと前記スプールとの間で回転を伝達するオン状態とこの回転の伝達が遮断されるオフ状態とを切り替え可能なクラッチ機構とを有する。当該リール制御部は、当該タイミング決定部により前記リリースタイミングが到来したと判定されたときに当該クラッチ機構をオフ状態へ切り替えるように構成される。
【0018】
当該実施形態によれば、釣り人が仕掛けをキャスティングしたときに、当該仕掛けの移動方向に基づいてリリースタイミングが決定される。そして、この決定されたリリースタイミングでクラッチ機構がオフ状態へ切り替えられる。よって、クラッチ機構をオフ状態へ手動で切り替えなくともキャスティングを行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の実施形態によれば、適切なリリースタイミングの決定を支援するキャスティング支援装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の様々な実施形態を添付図面を参照して説明する。なお、各図面において共通の構成要素には共通の参照符号が付されている。また、各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0022】
図1ないし
図3を主に参照して、本発明の一実施形態に係るキャスティング支援装置について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るキャスティング支援装置50が設けられた釣竿1の側面図であり、
図2は、当該キャスティング支援装置50の機能を説明するブロック図であり、
図3は、当該キャスティング支援装置50の制御部51の機能を説明するブロック図である。図示の実施形態においては、釣竿1にリールRが取り付けられており、キャスティング支援装置50はこのリールRに設けられている。つまり、キャスティング支援装置50は、リールRを介して釣竿1に設けられている。
【0023】
釣竿1は、単一の竿体又は複数の竿体から構成される。釣竿1を構成する竿体はそれぞれ、炭素繊維に合成樹脂を含浸したプリプレグシートを用いて形成され得る。この各竿体は、穂先方向に先細りとなるテーパー形状を有するように形成されてもよい。
【0024】
釣竿1の竿体の外周面には、リールRから繰り出される釣糸Lを釣竿1の穂先まで案内する複数の釣糸ガイド10が設けられている。
【0025】
魚釣用リールRは、釣竿1の竿体に外装されたリールシートに装着される。本発明においては、例えば、スピニングリール、両軸受型リール、及び片軸受型リール等の様々な魚釣用リールを魚釣用リールRとして用いることができる。
【0026】
釣糸Lの穂先から延びた先端には、仕掛け20が取り付けられている。仕掛け20は、例えば、ルアー、錘、カゴ、及びこれら以外の釣用の仕掛けとして用いられる様々な物品である。仕掛け20は、キャスティングによって投擲される。
【0027】
本発明の一実施形態において、仕掛け20には、当該仕掛け20の加速度、角速度、姿勢角、及び角加速度の少なくとも一つを検知するためにモーションセンサ31が取り付けられる。このモーションセンサ31は、仕掛け20の任意の場所に取り付けることができる。モーションセンサ31は、例えば、3軸の角速度センサ、3軸の加速度センサ、及び地磁気センサのうちの1つ又はこれらを組み合わせたものである。モーションセンサ31は、例えば、仕掛け20の3軸の角速度、3軸の並進加速度、重力方向(鉛直方向)に対する傾き、及び方位を検出できる。モーションセンサ31としては、様々な市販のモーションセンサを用いることができる。
【0028】
リールRは、公知の一般的な魚釣用リールと同様に、ハンドルと、釣り糸を巻回するスプールと、を備える。釣り人がハンドルを回転操作すると、このハンドルの回転が釣糸Lを巻き取るための回転体へ伝達される。この回転体が回転することにより、スプールに釣糸Lが巻回される。リールRがベイトキャスティングリールの場合には、ハンドルの回転に応じて回転する回転体はスプールである。リールRがスピニングリールの場合には、ハンドルの回転に応じて回転する回転体はロータである。
【0029】
リールRは、ハンドルと釣糸を巻き取るためにハンドルの回転に応じて回転する回転体(ベイトキャスティングリールの場合にはスプールであり、スピニングリールの場合にはロータである。)との間での回転の伝達をオン・オフするクラッチ機構42を備える。つまり、クラッチ機構42は、ハンドルと回転体との間で回転を伝達するオン状態と、この回転の伝達が遮断されるオフ状態と、を切り替え可能に構成される。クラッチ機構42には、原動機からの機械的な出力を利用してクラッチ機構42のON状態とOFF状態との切り換えを行うクラッチ駆動機構42aが備えられる。このクラッチ駆動機構42aは、例えば、サーボモータ等の各種モータ、又は、ソレノイドアクチュエータ等の各種アクチュエータを利用して、クラッチ機構42をON状態とOFF状態との間で切り換えるように構成される。このようなモータやアクチュエータの機械的出力を利用してクラッチ機構を切り換える機構は公知となっている。例えば、特開平6−335341号公報には、スプールを駆動するためのモータ(図示の実施形態の駆動モータ8に相当)を利用してクラッチ機構の切り換えを行う装置が開示されている。
【0030】
本発明の一実施形態において、リールRにはモーションセンサ32が取り付けられる。このモーションセンサ32は、リールRの加速度、角速度、姿勢角、及び角加速度の少なくとも一つを検知することができるように構成される。一実施形態において、モーションセンサ32は、3軸の角速度センサ、3軸の加速度センサ、及び地磁気センサのうちの1つ又はこれらを組み合わせたものである。モーションセンサ32は、例えば、リールRの3軸の角速度、3軸の並進加速度、重力方向(鉛直方向)に対する傾き、及び方位を検出できる。モーションセンサ32としては、様々な市販のモーションセンサを用いることができる。キャスティング時に、リールRは釣竿1に固定されている。また、釣竿1のリールRが取り付けられる位置又はそれよりも根元側は、キャスティング時にもほとんど弾性変形しない。よって、モーションセンサ32の検出値からは、釣竿1の弾性変形しない部分(リールRが取り付けられるリール取付位置を含む釣竿1の根元側の部分)の動き(角速度、並進加速度等)を得ることができる。
【0031】
モーションセンサ32に代えて、又は、モーションセンサ32に加えて、釣竿1の弾性変形しない部分(例えば、釣竿1のリールRの取付位置付近又はそれよりも根元側の部分)に別のモーションセンサを設けてもよい。この釣竿1に設けられるモーションセンサは、モーションセンサ32と同様に構成され、例えば、釣竿1のリールRの取付位置付近又はそれよりも根元側の部分の3軸の角速度、3軸の並進加速度、重力方向(鉛直方向)に対する傾き、及び方位を検出できる。
【0032】
本発明の一実施形態において、リールRには、釣糸Lに作用する張力を検出する張力センサ33が設けられる。釣糸Lに作用する張力の検出機構は公知である。張力センサ33として、様々な公知の張力検出機構を用いることができる。従来の釣糸Lに作用する張力を検出するための機構は、例えば、特開平8−103195号公報及び特開平11−42030号公報に記載されており、これらの公報に記載された機構を本開示における張力センサ33として用いることができる。
【0033】
本発明の一実施形態に係るキャスティング支援装置50は、上述した又はそれら以外の各種センサからの検出信号に基づいて仕掛け20の移動方向を算出し、この仕掛け20の移動方向に基づいて当該仕掛け20をリリースするリリースタイミングが到来したことを決定するように構成される。また、本発明の一実施形態に係るキャスティング支援装置50は、釣り人にリリースタイミングが到来したことを報知するように構成される。
図2に示すように、キャスティング支援装置50は、リリースタイミングが到来したことの決定などの各種処理を行う制御部51と、報知を行う報知部56と、操作ボタン57と、を備える。報知部56は、後述するように、リリースタイミングが到来したと判定されたときに、音、光、及び振動の少なくとも1つを発するように構成される。報知部56は、例えば、音を発する各種のブザーである。釣り人は、報知部56が発した音、光、及び振動の少なくとも1つを感知することによりリリースタイミングが到来したことを知ることができる。操作ボタン57は、釣り人の操作に応じて操作信号を出力するように構成される。操作ボタン57の詳細については後述する。
【0034】
制御部51は、各種演算を行うCPU52、各種プログラムや設定情報を記憶するROM53、各種データを一時的に記憶するRAM54を備える。制御部51の各作動要素は、図示のように、互いに信号を送受信できるようにI/Oポート55を介して互いに電気的に接続されている。制御部51は、ROM53に格納されている所定のプログラムをCPU52の機能により実行し、これに応じて生成される制御信号をI/Oポート55を介して各作動要素(報知部56等)に供給することで各作動要素を制御する。
【0035】
I/Oポート55には、上述したモーションセンサ31,32、及び張力センサ33も接続されている。モーションセンサ31は、仕掛け20の加速度、角速度、姿勢角、及び角加速度の少なくとも一つを検出し、その検出された仕掛け20の加速度、角速度、姿勢角、及び角加速度の少なくとも1つを示す検出信号を制御部51に送信する。モーションセンサ32は、リールRの加速度、角速度、姿勢角、及び角加速度の少なくとも一つを検出し、その検出されたリールRの加速度、角速度、姿勢角、及び角加速度の少なくとも1つを示す検出信号を制御部51に送信する。張力センサ33は、釣糸Lの張力を検出し、その検出した張力を示す検出信号を制御部51に送信する。モーションセンサ31はリールRから遠隔に(上述した実施形態では仕掛け20に)設けられるため、モーションセンサ31の検出信号はキャスティング支援装置50に対して無線送信されてもよい。この場合、モーションセンサ31は、不図示の無線通信インタフェースを介してI/Oポート55に接続される。
【0036】
次に、キャスティング支援装置50の機能について説明する。本発明の一実施形態に係るキャスティング支援装置50は、CPU52により様々なコンピュータ読み取り可能な命令セットを実行することにより、
図3に示したタイミング決定部101、報知制御部102、及びリール制御部103のそれぞれの機能及びこれら以外の機能を実現することができる。
【0037】
タイミング決定部101は、キャスティングされる仕掛け20の移動方向に基づいて当該仕掛け20をリリースするリリースタイミングが到来したことを決定する。例えば、リリースタイミングは、仕掛け20の移動方向(
図4に矢印で示されている方向)の鉛直方向Vに対する角度θに基づいて決定される。
【0038】
一実施形態において、仕掛け20の移動方向の鉛直方向に対する角度θは、当該仕掛け20に設けられたモーションセンサ31の検出信号に基づいて公知の方法で算出され得る。具体的には、モーションセンサ31から出力される仕掛け20の3軸の加速度に基づいて3軸の速度を算出するとともにモーションセンサ31の傾きを算出することにより、仕掛け20の移動方向の鉛直方向に対する角度θを求めることができる。
【0039】
他の実施形態において、仕掛け20の移動方向の鉛直方向に対する角度θは、モーションセンサ32の検出値、張力センサ33の検出値、及び釣竿1の特性を示す釣竿特性値、釣竿1の穂先から仕掛け20までの釣糸Lの長さ(たらし長)、及び仕掛け20の質量の少なくとも1つに基づいて算出することができる。例えば、角度θは以下のようにして算出される。(1)モーションセンサ32の検出信号に基づいて釣竿1の弾性変形しない部分の速度を算出する。(2)張力センサ33によって検出された釣糸Lの張力に基づいて釣竿1の弾性変形しない部分に対する穂先の変位及び速度を算出する。釣竿1の穂先の変位は、例えば、釣竿1の釣竿特性値(釣竿1の軸方向長さ、質量マトリクスM(x)、剛性マトリクスK(x)、及び減衰マトリクスC(x))及び張力センサ33によって検出された釣糸Lの張力に基づいて有限要素法により算出することができる。そして、この穂先の変位を時間微分することにより穂先の速度を算出することができる。釣竿の特性を示す釣竿特性値は、釣竿1に表示されていることが多い。よって、キャスティング支援装置50を釣竿1に取り付ける際に、当該釣竿1の釣竿特性値をキャスティング支援装置50に入力することができる。(3)釣竿1の穂先に対する仕掛け20の変位及び速度を、釣竿1の軸方向の長さ、釣竿1の穂先から仕掛け20までの釣糸Lの長さ(たらし長)、仕掛け20の質量、及び張力センサ33によって検出された釣糸Lの張力を用いて、例えばルンゲ=クッタ法により計算する。以上のようにして算出された釣竿1の弾性変形しない部分の速度、当該釣竿1の弾性変形しない部分に対する穂先の速度、及び当該穂先に対する仕掛け20の速度を合成することにより、仕掛け20の3軸の速度を求めることができる。この仕掛け20の3軸の速度に基づいて、当該仕掛け20の移動方向の鉛直方向に対する角度θを求めることができる。
【0040】
上述した仕掛け20の移動方向を算出する処理はあくまでも例示に過ぎず、本発明に適用可能な仕掛け20の移動方向の算出方法は、本明細書で明示的に説明されたものに限られない。本発明の趣旨に反しない限り、当業者に明らかな任意の方法で仕掛け20の移動方向を算出することができる。
【0041】
一実施形態において、タイミング決定部101は、仕掛け20の移動方向と鉛直方向との角度θが予め定められたリリース角度に達した場合にリリースタイミングが到来したと判定するように構成される。いわゆるオーバーヘッドキャスティングを行う場合、
図5に示すように、仕掛け20の移動方向の鉛直方向に対する角度θはキャスティング開始から単調増加する。
図5は、キャスティング時における時間と仕掛けの移動方向との関係を表すグラフであり、横軸はキャスティング開始からの経過時間を示し、縦軸は仕掛け20の鉛直方向に対する角度θを表す。オーバーヘッドキャスティングは、釣竿を鉛直面に沿ってスイングすることで仕掛けを投擲するキャスティングの一態様である。
【0042】
仕掛け20の移動方向の鉛直方向に対する角度θについて、
図6を参照してさらに説明する。
図6は、オーバーヘッドキャスティングを行う場合の釣竿の軌道及び釣竿1に伴って移動する仕掛け20の軌道を模式的に示す図である。
図6(a)〜
図6(g)は、キャスティング開始から仕掛け20をリリースするまでの釣竿1の姿勢を時系列に示している。
図6(a)がキャスティング開始時における釣竿1の姿勢を示し、
図6(g)が仕掛け20をリリースした時点における釣竿1の姿勢を示している。
図6(a)に示すように、キャスティング開始時には、釣竿1はその軸方向前方が概ね9時の方向を向く姿勢で釣り人に保持される。よって、キャスティング開始直後には、仕掛け20は釣竿1の移動に応じて鉛直方向上方に移動する。このとき仕掛け20は、概ね鉛直方向に沿って移動するので、仕掛け20の移動方向の鉛直方向に対する角度θは小さな値をとる。
図6(b)〜
図6(g)の区間では、釣竿1の姿勢に応じて、仕掛け20は徐々に水平方向にも移動するようになる。よって、
図6(b)〜
図6(g)の区間では、仕掛け20の移動方向の鉛直方向に対する角度θは徐々に大きくなる。このように、仕掛け20の移動方向の鉛直方向に対する角度θは、キャスティング開始からの経過時間に対して時間T1で仕掛け20がリリースされるまで単調増加する。
図5は、キャスティング開始からの時間がT1のときに、仕掛け20の移動方向の鉛直方向に対する角度θがリリース角度θ1に達することを示している。
【0043】
このリリース角度は例えば45度に設定される。空気抵抗を考慮すると、鉛直方向に対して45度よりも大きい角度のときに仕掛けをリリースした方が飛距離を大きくすることができるので、リリース角度は45度よりも大きい角度、例えば50度前後に設定されてもよい。また、仕掛けの移動方向が所定角度にあると判定されてから、リリースタイミングが釣り人に報知され、その後釣り人が実際にリリースのための動作を行うまでに時間を要することを考慮して、リリース角度は45度よりもやや小さい角度、たとえば40度前後に設定されてもよい。このリリース角度は、釣り人のキャスティング動作の癖などに応じて適宜設定され得る。
【0044】
図7を参照して、リリースタイミングが到来したことを判定する別の態様を説明する。
図7は、キャスティング時における時間と仕掛けの移動速度との関係を表すグラフであり、横軸はキャスティング開始からの経過時間を示し、縦軸は仕掛け20の速度(の絶対値)を表す。一実施形態において、タイミング決定部101は、仕掛け20の移動方向が鉛直方向に対してなす角度がリリース角度範囲内にあると判定され、かつ、仕掛け20の速度が極大値を示したことが検出された場合に、前記リリースタイミングが到来したと判定するように構成される。上述のように、仕掛け20の移動方向が鉛直方向となす角度θは、キャスティング開始から仕掛け20をリリースするまでの間において単調に増加する。
図7における時間T2は、仕掛け20の移動方向が鉛直方向となす角度θがリリース角度範囲の下限に達したときの時間であり、時間T3は当該角度θがリリース角度範囲の上限に達したときの時間である。リリース角度範囲の下限は例えば40度であり、その上限は例えば50度である。リリース角度範囲の下限及び上限も適宜変更され得る。
【0045】
仕掛け20をキャスティングしたときの速度プロファイルが
図7にVP1で示すプロファイルとなる場合には、タイミング決定部101は、時間T2においてリリース角度範囲の下限に到達した後、仕掛け20の速度が極大値となる時間T4においてリリースタイミングが到来したと判定する。タイミング決定部101は、時間T2を経過後時間T3を経過する前に、仕掛け20の速度が減少したことを検出したときに、その仕掛け20の速度が減少した時点でリリースタイミングが到来したと判定してもよい。一方、仕掛け20をキャスティングしたときの速度プロファイルが
図7にVP2で示すプロファイルとなる場合には、タイミング決定部101は、時間T2においてリリース角度範囲の下限に到達した後、時間T3においてリリース角度範囲の上限に到達するまで仕掛け20の速度が極大値を取らないため、時間T3においてリリースタイミングが到来したと判定することができる。
【0046】
タイミング決定部101によりリリースタイミングが到来したと判定されると、報知制御部102は、報知部56に報知を行わせるための制御を行う。例えば、報知制御部102は、タイミング決定部101によりリリースタイミングが到来したと判定されると、報知部56に駆動信号を送信し、報知部56に音、光、及び振動の少なくとも1つを発せしめる。釣り人は、報知部56が発した音、光、及び振動の少なくとも1つを感知することによりリリースタイミングが到来したことを知ることができる。
【0047】
リール制御部103は、タイミング決定部101によりリリースタイミングが到来したと判定されると、クラッチ機構42をOFF状態に切り換えるための制御を行う。例えば、クラッチ機構42をOFF状態に切り換えるための制御信号(OFF信号)がCPU52からクラッチ駆動機構42aに対して送信される。クラッチ駆動機構42aは、このOFF信号を受信すると、例えば電動アクチュエータを作動させてクラッチ機構42をOFF状態へ切り換える。このように、本発明の一実施形態に係るキャスティング支援装置50によれば、リリースタイミングが到来したと判定されたときに自動で(釣り人の操作を必要とせずに)クラッチ機構42をOFF状態へ切り換えることができる。よって、釣り人はキャスティングの開始前にクラッチをOFFにするための操作を行う必要がなくなる。
【0048】
本発明は、仕掛け20をサイドスローキャスティングにより投擲する場合にも適用できる。サイドスローキャスティングは、釣竿を水平面に沿ってスイングすることで仕掛けを投擲するキャスティングの一態様である。サイドスローキャスティングにおいて適切なリリースタイミングを決定するためには、オーバーヘッドキャスティングにおける鉛直方向のように基準方向として用いることができる方向を制御部51において設定する必要がある。この水平面内で基準となる方向の設定は、キャスティングの実行前に釣竿1の軸方向前方を目標とする着水地点の方向に向けた状態で操作ボタン57を操作することにより、モーションセンサ32(例えば、地磁気センサ)により、釣竿1が向いている方位を取得し、この取得した方位を水平面における基準方向(目標方向)として設定することができる。
【0049】
仕掛け20をサイドスローキャスティングにより投擲する実施形態において、タイミング決定部101は、仕掛け20の水平面内での移動方向の当該目標方向に対する角度φを算出し、この算出された角度φが予め定められたリリース角度に到達したときに、リリースタイミングが到来したと判定するように構成され得る。仕掛け20の移動方向の角度φは、キャスティング開始から単調減少し、仕掛け20の移動方向が目標方向と一致したときに0となる。よって、角度φについてのリリース角度は概ね0度に設定される。リリースタイミングが釣り人に報知され、その後釣り人が実際にリリースのための動作を行うまでに時間を要することを考慮して、リリース角度は0度よりもやや大きい角度、たとえば10度前後に設定されてもよい。このリリース角度も、釣り人のキャスティング動作の癖などに応じて適宜設定され得る。
【0050】
仕掛け20の水平面内での移動方向の当該目標方向に対する角度φは、上述した角度θの算出方法と同様の方法で算出可能である。タイミング決定部101は、仕掛け20の水平面内における移動方向が目標方向に対してなす角度がリリース角度範囲内にあると判定され、かつ、仕掛け20の速度が極大値を示したことが検出された場合に、前記リリースタイミングが到来したと判定するように構成されてもよい。
【0051】
キャスティング時に釣竿が通過するスイング面は、鉛直方向及び水平方向に対してそれぞれ所定の角度をなしていることがある。このような鉛直方向及び水平方向のいずれに対しても傾いた面に沿って釣竿をスイングするキャスティングは、スリークオーターキャスティングと呼ばれることがある。本発明は、仕掛け20をスリークオーターキャスティングにより投擲する場合にも適用できる。スリークオーターキャスティングにより仕掛け20が投擲される実施形態においては、タイミング決定部101は、上述したオーバーヘッドキャスティングにおける判定方法とサイドスローキャスティングにおける判定方法とを随時組み合わせて、又は、その一方を用いてリリースタイミングの到来を判定することができる。
【0052】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、形状、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、むしろ本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、形状、及び配置を有するように各構成要素を変形することができる。また、本明細書において明示的に説明した以外の構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【0053】
例えば、キャスティング支援装置50の構成要素の一部又は全部は、リールR以外に設けられても良い。例えば、報知部56は、釣竿1の竿体の外表面(例えばグリップ近辺)に設けられてもよい。特に、報知部56が振動により報知を行うアクチュエータである場合には、当該アクチュエータを釣竿1のグリップに設けることができる。釣竿1のグリップは、例えば、釣竿1を構成する竿体においてリールRの取付位置に隣接した位置に設けられる。
【0054】
例えば、仕掛け20に取り付けられるモーションセンサ31とリールRに取り付けられるモーションセンサ32は、その一方を省略することができる。