【文献】
Los, Georgyi V. et al.,ACS Chemical Biology,2008年,3(6),373-382
【文献】
Hong, Hao et al.,American Journal of Translational Research,2011年,3(4),392-403
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
対象とする分子を固定化又は単離する方法であって、(a)請求項1に記載の化合物を含む基質を提示する固体支持体を、(b)(i)前記基質との相互作用時に前記基質と共有結合を形成する変異体デハロゲナーゼと、(ii)前記対象とする分子に結合されるタンパク質と、を含む融合タンパク質と接触させることを含む、方法。
対象とするタンパク質を固定化する方法であって、(a)請求項1に記載の化合物を含む基質を含む固体支持体を、(b)(i)前記基質との相互作用時に前記基質と共有結合を形成する変異体デハロゲナーゼと、(ii)対象とするタンパク質との融合物と接触させることを含む、方法。
前記少なくとも1つのアミノ酸置換が、前記対応する野生型デハロゲナーゼと前記基質との間に形成される結合よりも安定した前記基質との結合を形成する前記変異体デハロゲナーゼをもたらし、前記変異体デハロゲナーゼにおける少なくとも1つのアミノ酸置換が、前記対応する野生型デハロゲナーゼと前記基質との間に形成された前記結合を切断する水分子の活性化に関連する前記対応する野生型デハロゲナーゼのアミノ酸残基での置換、または前記基質とエステル中間体を形成する前記対応する野生型デハロゲナーゼのアミノ酸残基での置換である、請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、ハロアルカン基質、およびそのような基質を機能要素(例えば、タグ、標識、表面等)に結合するためのリンカーを提供する。本明細書に記載される基質およびリンカーは、例えば、タンパク質、細胞、および分子の標識、検出、および固定化に用途を見出す。特に、本明細書に提供されるリンカーは、それらのハロアルカン基質と共有結合を形成するデハロゲナーゼ変異型の基質内に用途を見出す。
【0005】
いくつかの実施形態では、本発明は、式R−L
1−M−L
2−A−Xの化合物を提供し、式中、Rは、官能基であり、L
1は、第1のリンカー部分であり、Mは、カルバメート基であり、L
2は、第2のリンカー部分であり、Aは、アルキル基であり、Xは、ハロゲンであり、L
2−Aは、6〜18個の直鎖状に連結した原子によってMとXとを分離し、L
1は、2つ以上の直鎖状に連結した原子によってRとMとを分離する。いくつかの実施形態では、Aは、(CH
2)
6である。いくつかの実施形態では、L
2−Aは、12個の直鎖状に結合した原子によってMとXとを分離する。いくつかの実施形態では、官能基は、親和性タグ、フルオロフォア、または固体表面を含む。いくつかの実施形態では、L
2は、カルバメート基を含まない。いくつかの実施形態では、L
2は、直鎖状に結合したCH
2およびO基を含む。いくつかの実施形態では、L
2は、直鎖状に結合したCH
2およびO基からなる。いくつかの実施形態では、L
2は、((CH
2)
2O)
xを含み、式中、x=0〜5である。いくつかの実施形態では、L
2は、((CH
2)
2O)
2を含む。いくつかの実施形態では、L
1は、直鎖状に結合したCH
2およびO基を含む。いくつかの実施形態では、L
1は、カルバメートを含む。いくつかの実施形態では、L
1は、NHCOO−((CH
2)
2O)
xを含み、式中、x=1〜8である。いくつかの実施形態では、L
1は、NHCOO−((CH
2)
2O)
3を含む。いくつかの実施形態では、L
1は、NHCOO−((CH
2)
2O)
3を含み、L
2は、((CH
2)
2O)
2を含み、Aは、(CH
2)
6である。
【0006】
PBI−4980は、式R−L
1−M−L
2−A−X:
【化1】
の例示的な基質である。
【0007】
いくつかの実施形態では、本発明は、L
1−M−L
2−Aを含むリンカーによって官能基に連結されるタンパク質を含む組成物を提供し、式中、L
1は、第1のリンカー部分であり、Mは、カルバメート基であり、L
2は、第2のリンカー部分であり、Aは、アルキル基であり、L
2−Aは、8〜16個(例えば、10〜14、12)の直鎖状に結合した原子によってタンパク質からMを分離し、L
1は、2個以上の直鎖状に結合した原子によって官能基とMとを分離する。いくつかの実施形態では、タンパク質は、変異体デハロゲナーゼを含む。いくつかの実施形態では、タンパク質は、融合タンパク質の一部分である。いくつかの実施形態では、Aは、(CH
2)
6である。いくつかの実施形態では、L
2−Aは、12個の直鎖状に結合した原子によってMとXとを分離する。いくつかの実施形態では、官能基は、親和性タグ、フルオロフォア、または固体表面を含む。いくつかの実施形態では、L
2は、カルバメート基を含まない。いくつかの実施形態では、L
2は、直鎖状に結合したCH
2およびO基を含む。いくつかの実施形態では、L
2は、直鎖状に結合したCH
2およびO基からなる。いくつかの実施形態では、L
2は、((CH
2)
2O)
xを含み、式中、x=0〜5である。いくつかの実施形態では、L
2は、((CH
2)
2O)
2を含む。いくつかの実施形態では、L
1は、直鎖状に結合したCH
2およびO基を含む。いくつかの実施形態では、L
1は、カルバメートを含む。いくつかの実施形態では、L
1は、NHCOO−((CH
2)
2O)
xを含み、式中、x=1〜8である。いくつかの実施形態では、L
1は、NHCOO−((CH
2)
2O)
3を含む。いくつかの実施形態では、L
1は、NHCOO−((CH
2)
2O)
3を含み、L
2は、((CH
2)
2O)
2を含み、Aは、(CH
2)
6である。いくつかの実施形態では、L
1は、1〜15個の直鎖状に結合した原子(例えば、1〜12この原子、1〜10個の原子、2〜10個の原子、1〜9個の原子、2〜9個の原子、1〜8個の原子、2〜8個の原子、1〜7個の原子、1〜6個の原子、2〜6個の原子等)によってRとMとを分離する。
【0008】
いくつかの実施形態では、本発明は、変異体デハロゲナーゼの存在もしくは量を検出または決定するための方法を提供し、a)変異体デハロゲナーゼを、デハロゲナーゼ基質(例えば、R−L
1−M−L
2−A−X)と接触させることであって、変異体デハロゲナーゼが、対応する野生型デハロゲナーゼと比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、少なくとも1つのアミノ酸置換が、対応する野生型デハロゲナーゼと基質との間に形成される結合よりも安定した基質(例えば、R−L
1−M−L
2−A−X)との結合を形成する変異体デハロゲナーゼをもたらし、変異体デハロゲナーゼにおける少なくとも1つのアミノ酸置換が、対応する野生型デハロゲナーゼと基質との間に形成された結合を切断する水分子の活性化に関連する対応する野生型デハロゲナーゼのアミノ酸残基での置換、または基質とエステル中間体を形成する対応する野生型デハロゲナーゼのアミノ酸残基での置換である、接触させることと、b)Rの存在もしくは量を検出または決定し、それにより変異体デハロゲナーゼの存在もしくは量を検出または決定することと、を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、本発明は、対象とする化合物の標的分子を特定するための方法を提供し、a)試料(例えば、細胞または細胞溶解物)を、デハロゲナーゼ基質(例えば、R−L
1−M−L
2−A−X)と接触させることであって、官能基が対象とする化合物である、接触させることと、b)試料とデハロゲナーゼ基質の混合物を、変異体デハロゲナーゼを含む固体支持体と接触させることであって、変異体デハロゲナーゼが、対応する野生型デハロゲナーゼと比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、少なくとも1つのアミノ酸置換が、対応する野生型デハロゲナーゼと基質との間に形成された結合よりも安定した基質との結合を形成する変異体デハロゲナーゼをもたらし、変異体デハロゲナーゼにおける少なくとも1つのアミノ酸置換が、対応する野生型デハロゲナーゼと基質との間に形成された結合を切断する水分子の活性化に関連する対応する野生型デハロゲナーゼのアミノ酸残基での置換、または基質とエステル中間体を形成する対応する野生型デハロゲナーゼのアミノ酸残基での置換である、接触させることと、c)標的分子を特定することとを含む。いくつかの実施形態では、対象とする化合物は、薬物、薬物化合物、生体分子、または小分子である。いくつかの実施形態では、標的分子は、タンパク質である。いくつかの実施形態では、標的分子は、融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、標的分子のレポータータンパク質、例えば、NanoLuc(登録商標)ルシフェラーゼとの融合である。
【0010】
いくつかの実施形態では、標的分子は、当業者に既知の任意の好適な方法によって特定される。いくつかの実施形態では、標的分子の特定は、対象とする標的分子を固体支持体から溶出するステップを含む。いくつかの実施形態では、標的分子は、これらに限定されないが、官能基の溶液(例えば、薬物または薬物化合物)を添加して、標的分子と特異的に競合させる方法、L1に存在する切断可能なリンカーを切断して、標的分子を特異的に溶出させる方法、緩衝液(例えば、SDSまたは尿素を含有するもの)を使用して官能基と標的分子との間の相互作用を不安定化させて、非特異的に溶出させる方法等を含む、任意の好適な方法によって、固体支持体から溶出される。いくつかの実施形態では、標的分子の特定は、標的分子を分析するステップ(例えば、固体支持体からの溶出後)を含む。いくつかの実施形態では、標的分子は、これらに限定されないが、標的分子が検出可能なマーカーに縮合される場合(例えば、標的分子が、NanoLuc(または別のレポーター)との融合タンパク質である場合)、蛍光マーカー(例えば、NanoLuc)の検出および定量化、ウエスタンブロット、質量分析等を介した検出を含む、任意の好適な方法によって分析される。ある特定の実施形態は、任意の好適な分析方法を用いた任意の好適な溶出方法を利用し得る。
【0011】
いくつかの実施形態では、本発明は、細胞を標識するための方法を提供し、変異体デハロゲナーゼを含む細胞を、デハロゲナーゼ基質(例えば、R−L
1−M−L
2−A−X)と接触させることを含み、変異体デハロゲナーゼは、対応する野生型デハロゲナーゼと比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、少なくとも1つのアミノ酸置換は、対応する野生型デハロゲナーゼと基質との間に形成された結合よりも安定した基質との結合を形成する変異体デハロゲナーゼをもたらし、変異体デハロゲナーゼにおける少なくとも1つのアミノ酸置換は、対応する野生型デハロゲナーゼと基質との間に形成された結合を切断する水分子の活性化に関連する対応する野生型デハロゲナーゼのアミノ酸残基での置換、または基質とエステル中間体を形成する対応する野生型デハロゲナーゼのアミノ酸残基での置換であり、それにより細胞を官能基Rで標識する。
【0012】
いくつかの実施形態では、本発明は、細胞中の分子の存在または量を検出するための方法を提供し、変異体デハロゲナーゼを含む細胞を、デハロゲナーゼ基質(例えば、R−L
1−M−L
2−A−X)と接触させることであって、変異体デハロゲナーゼが、対応する野生型デハロゲナーゼと比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、少なくとも1つのアミノ酸置換が、対応する野生型デハロゲナーゼと基質との間に形成された結合よりも安定した基質(例えば、R−L
1−M−L
2−A−X)との結合を形成する変異体デハロゲナーゼをもたらす、接触させることと、b)細胞中の官能基Rの存在もしくは量を検出または決定し、それにより細胞中の分子の存在または量を検出することと、を含む。いくつかの実施形態では、対象とするタンパク質と相互作用する細胞により分子を検出する方法が提供される。そのような実施形態では、分子相互作用物質(例えば、タンパク質、小分子、核酸等)を捕捉するために、基質と共に、変異体デハロゲナーゼと対象とするタンパク質との融合が使用される。そのような試薬の使用は、変異体デハロゲナーゼに縮合されたタンパク質を有する細胞において相互作用する分子の捕捉を可能にし、それにより相互作用する分子(複数可)を特定および/または捕捉(単離)する。
【0013】
いくつかの実施形態では、本発明は、対象とする分子を単離するための方法を提供し、(a)デハロゲナーゼ基質(例えば、R−L
1−M−L
2−A−X)を提示する固体支持体を、(b)(i)基質と相互作用する時、基質(例えば、R−L
1−M−L
2−A−X)と共有結合を形成する変異体デハロゲナーゼと、(ii)対象とする分子に結合されるタンパク質とを含む融合タンパク質と接触させることを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、本発明は、対象とするタンパク質を固定化するための方法を提供し、(a)基質(例えば、R−L
1−M−L
2−A−X)を含む固体支持体を、(b)(i)基質と相互作用する時、基質(例えば、R−L
1−M−L
2−A−X)と共有結合を形成する変異体デハロゲナーゼと、(ii)対象とするタンパク質との融合物と接触させることを含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、本発明は、式R−L
1−M−L
2−A−Xの化合物を調製するための方法を提供し、式R−Yの化合物を、式Z−L
1−M−L
2−A−Xの化合物とカップリングすることを含み、式中、YおよびZは、反応してR−を−リンカー−L
1−M−L
2−A−Xに連結することができる基である。いくつかの実施形態では、R−Yは、式Rの化合物の活性化エステルであり、Zは、活性化エステルと反応してアミド結合を形成するのに好適なアミンである。いくつかの実施形態では、R−Yは、反応性アミンで官能化された式Rの化合物であり、Zは、R−YのZとの反応がアミドまたはカルバメート結合の形成をもたらすような活性化エステルまたはカルバメート基を表す。いくつかの実施形態では、Zは、p−ニトロフェニルカーボネート基である。
【0016】
いくつかの実施形態では、本発明は、変異体デハロゲナーゼ、アッセイを実行するための試薬、官能基を基質前駆体に付加するための試薬、正/負の対照、説明書、細胞(例えば、変異体デハロゲナーゼまたはその融合物を発現する)等と組み合わせて(例えば、同じ溶液中で、個別の容器だが、一緒にパッケージングされる等)、基質(R−L
1−M−L
2−A−X)または基質前駆体(例えば、Z−L
1−M−L
2−A−X、R−Y等)を含むキットを提供する。いくつかの実施形態では、基質または基質前駆体は、薬物、薬物化合物、生体分子、または小分子である官能基を含む。いくつかの実施形態では、本発明は、基質(R−L
1−M−L
2−A−X)または基質前駆体(例えば、Z−L
1−M−L
2−A−X,R−Y等)を含む、反応混合物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、基質(R−L
1−M−L
2−A−X)もしくは基質前駆体(例えば、Z−L
1−M−L
2−A−X, R−Y等)および/または変異体デハロゲナーゼもしくは変異体デハロゲナーゼを含む融合物を含む細胞を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、本発明の基質(R−L
1−M−L
2−A−X)を提示する含む固体表面を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
定義
本明細書で使用される、用語「直鎖状に結合した原子」は、鎖またはポリマーの骨格原子を指し、主鎖または骨格を形成しないペンダント、側鎖、またはH原子を除く。
【0019】
本明細書で使用される、用語「融合ポリペプチド」または「融合タンパク質」は、第2のポリペプチドまたはタンパク質(例えば、変異体デハロゲナーゼ)に縮合されるポリペプチドまたは対象とするタンパク質(例えば、ルシフェラーゼ、親和性タグ、標的配列、細胞標的、分析されるタンパク質)のキメラを指す。
【0020】
本明細書で使用される、用語「野生型」は、天然に存在する供給源から単離された遺伝子または遺伝子産物の特徴を有する遺伝子または遺伝子産物を指す。野生型遺伝子は、集団において最も頻繁に見られ、よって、遺伝子の「野生型」形態と任意に称されるものである。逆に、用語「変異体」は、野生型遺伝子または遺伝子産物と比較した際、配列および/または機能特性(例えば、変更された特徴)において修飾を表す遺伝子または遺伝子産物を指す。自然に存在する変異体が単離され得ることに留意する。これらは、野生型遺伝子または遺伝子産物と比較した際、変更された特徴を有するという事実により特定される。
【0021】
本明細書で使用される、用語「固体支持体」は、基質、変異体タンパク質、薬物様分子、および他の試験成分などの試薬が結合される任意の固体または固定材料に関して使用される。固体支持体の例としては、顕微鏡スライド、マイクロタイタープレートのウェル、カバースリップ、ビーズ(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願第14/104,814号を参照)、粒子、樹脂、細胞培養フラスコ、ならびに多くの他の好適な物品が挙げられる。 ビーズ、粒子、または樹脂は、磁気性または常磁性であってよい。
【0022】
本明細書で使用される、用語「対象とする化合物」は、標的分子、例えば、タンパク質、核酸等に結合し得る薬物、薬物化合物、生体分子、小分子等に言及するために使用される。
【0023】
発明を実施するための形態
本発明は、ハロアルカン基質、およびそのような基質を機能要素(例えば、タグ、標識、表面等)に結合するためのリンカーを提供する。本明細書に記載される基質およびリンカーは、例えば、タンパク質、細胞、および分子の標識、検出、および固定化に用途を見出す。特に、本明細書に提供されるリンカーは、それらのハロアルカン基質と共有結合を形成するデハロゲナーゼ変異型の基質内に用途を見出す。
【0024】
本発明は、タンパク質(例えば、デハロゲナーゼ)または融合タンパク質(例えば、対象とするタンパク質に縮合されたデハロゲナーゼ)を、官能基(例えば、タグ、標識等)または固体表面(例えばビーズ、アレイ、スライド、チップ、チューブ等)に連結するための(例えば、共有結合ないしは別の方法で安定した結合を介して)方法、組成物、およびキットを提供する。タンパク質は、構造的に野生型(天然の)タンパク質(例えば、デハロゲナーゼ)に関連するが、タンパク質基質(例えば、ハロアルカン基質)と安定した結合(例えば、共有結合)を形成するタンパク質をもたらす、対応する野生型タンパク質(例えば、デハロゲナーゼ)と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。タンパク質(例えば、デハロゲナーゼ)と基質との間の結合(例えば、共有結合)の形成は、タンパク質およびそれに縮合するものの、基質およびそれに連結されるものへの連結をもたらす。前述の連結は、例えば、溶液もしくは懸濁液中、細胞中、固体支持体上、または溶液/表面接触面で生じる。
【0025】
基質は、典型的には、リンカー基によって1つ以上の官能基に連結される反応基である部分を含む。本明細書で使用される、「官能基」は、検出可能である、もしくは検出が可能である分子(例えば、発色団、フルオロフォア、または発光団)であるか、または第2の分子(例えば、ビオチン、ハプテン、または架橋基)に結合または付加され得るか、あるいは1つ以上のアミノ酸、例えば、抗体もしくは受容体を含むペプチドまたはポリペプチド、1つ以上のヌクレオチド、脂質二重層を含む脂質、固体支持体、例えば、沈降粒子等を含む。官能基は、検出が可能である、および別の分子に結合されるなどの2つ以上の特性を有し得る。本明細書で使用される、「反応基」は、特定の野生型または本発明の変異体デハロゲナーゼによって特異的に認識される基質の部分である。基質および野生型デハロゲナーゼにおける反応基の相互作用は、産物および野生型タンパク質の再生をもたらす。しかしながら、反応基(例えば、ハロアルカン)の変異体(例えば、デハロゲナーゼ)との相互作用は、タンパク質と反応基との間に安定した結合形成(例えば、共有結合形成)をもたらす。
【0026】
それらの基質(例えば、ハロアルカン基質)に共有結合する変異体タンパク質(例えば、変異体加水分解酵素(例えば、変異体デハロゲナーゼ)を含む系は、例えば、米国特許第7,238,842号、米国特許第7,425,436号、米国特許第7,429,472号、米国特許第7,867,726号に記載されており、それらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0027】
ある特定の実施形態では、基質は、デハロゲナーゼ、例えば、ハロアルカンデハロゲナーゼ、またはロドコッカス、スタフィロコッカス、シュードモナス、バークホルデリア、アグロバクテリウム、もしくはキサントバクターデハロゲナーゼの基質、またはセリンβ−ラクタマーゼの基質などの脂肪族もしくは芳香族ハロゲン化基質における炭素−ハロゲン結合を切断するデハロゲナーゼの基質である。いくつかの実施形態では、基質は、任意に、基質において1つ以上の官能基を反応基から物理的に分離するリンカーを含む。例えば、基質は、基質の1つ以上の官能基が基質のタンパク質(例えば、デハロゲナーゼ)と反応基(例えば、ハロアルカン)の相互作用を妨げないような、十分な長さ、構造、電荷、および疎水性のリンカーを含み得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、基質は、式(I):R−L
1−M−L
2−A−Xの化合物を含み、式中、Rは、1つ以上の官能基であり、L
1は、C、N、S、もしくはOを含む多核直鎖または分枝鎖であり、Mは、カルバメート基であり、L
2は、C、N、S、もしくはOを含む多核直鎖または分枝鎖であり、Aは、少なくとも2個の炭素(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12等)のアルカンであり、Xは、ハロゲン(例えば、Cl、F、Br、I等)であり、A−−Xは、デハロゲナーゼの基質である。
【0029】
A.反応基
基質の反応基は、変異体タンパク質(例えば、変異体デハロゲナーゼ)によって認識され、共有結合を形成する部分である。反応基は、超安定した、またはタンパク質によって通常一過的にのみ結合するであろうその基質と共有結合を形成するために変更された任意の変異体タンパク質の任意の好適な基質であってよい。特定の実施形態では、タンパク質は変異体デハロゲナーゼであり、基質の反応基はハロアルカンである。基質のハロアルカン部分は、末端ハロゲン(例えば、Cl、Br、F、I等)によってキャッピングされるアルカン(例えば、C
2−C
20)を含む。いくつかの実施形態では、ハロアルカンは、式A−Xのものであり、Xは、ハロゲン(例えば、Cl、Br、F、I等)であり、Aは、2〜20個の炭素を含むアルカンである。ある特定の実施形態では、Aは、2〜12個の炭素の直鎖セグメントを含む。ある特定の実施形態では、Aは、2〜12個の炭素の直鎖セグメントである。
【0030】
B.官能基
基質および方法に有用な官能基(R)は、基質もしくはタンパク質またはそれに結合される融合物の単離、精製、検出、局在化、固定化等に有用な分子である。官能基は、二官能性リンカーの反応置換基の1つまたはタンパク質(例えば、デハロゲナーゼ)の基質に共有結合的に連結することができ、基質の一部分として、天然に見られる基質に連結されず、変異体タンパク質(例えば、デハロゲナーゼ)と安定した複合体を形成することができる官能基として所望の特性(例えば、活性、結合等)を維持する。よって、官能基は、官能基を有する基質と変異体タンパク質(例えば、デハロゲナーゼ)との間の安定した複合体の検出、単離、固定化等を容易にする1つ以上の特性を有する。官能基は、検出が可能である、および別の分子に結合されるなどの2つ以上の官能特性を有し得る。
【0031】
官能基は、これらに限定されないが、1つ以上の小分子(例えば、薬物、薬物様分子)、生体分子、アミノ酸(例えば、天然に存在するアミノ酸または非天然アミノ酸)、抗体もしくはその断片を含むペプチドまたはポリペプチド(タンパク質)、Hisタグ、FLAGタグ、Strepタグ、酵素、補因子、補酵素、酵素のペプチドもしくはタンパク質、例えば、分枝状ペプチド基質(例えば、Z−アミノベンゾイル(Abz)−Gly−Pro−Ala−Leu−Ala−4−ニトロベンジルアミド(NBA)、自殺基質、または受容体、1つ以上のヌクレオチド(例えば、ATP、ADP、AMP、GTP、またはGDP)(その類似体を含む、例えば、オリゴヌクレオチド、遺伝子もしくはその部分に対応する2本鎖もしくは1本鎖DNA、例えば、転写因子などのタンパク質に結合することが可能なDNA、遺伝子に対応するRNA、例えば、停止コドンもしくはその部分を欠失するmRNA、RNAiもしくはそのベクターの2本鎖RNA)、糖タンパク質、多糖類、ペプチド−核酸(PNA)、脂質二重層を含む脂質を含むか、または固体支持体、例えば、磁気粒子、セファロース、もしくはセルロースビーズなどの沈降粒子、膜、ガラス(例えば、ガラススライド)、セルロース、アルギネート、プラスチックもしくは他の合成により調製されたポリマー(例えば、エッペンドルフチューブまたは多重ウェルプレートのウェル、自己組織化単層、表面プラズモン共鳴チップ、または電子伝導表面を有する固体支持体)、薬物(例えば、ドキソルビシン、5−フルオロウラシル、またはcamptosar(CPT−11;イリノテカン)などの化学療法薬)、アミノアシル化阻害剤tRNAもしくはアミノアシル化アンバー抑制因子tRNAなどのアミノアシル化tRNA、Ca
2+に結合する分子、K
+に結合する分子、Na
+に結合する分子、pH感受性である分子、放射性核種、電子不透明である分子、造影剤(例えば、バリウム、ヨウ素、または他のMRIもしくはX線造影剤)、NOの存在下で蛍光を発するか、もしくは反応酸素に感受性である分子、ナノ粒子(例えば、免疫金粒子、常磁性ナノ粒子、アップコンバーティング(upconverting)ナノ粒子、または量子ドット、酵素のナノタンパク質基質、酵素の阻害剤、可逆性または不可逆性のいずれかの阻害剤、キレート剤、架橋基(例えば、スクシンイミジルエステルもしくはアルデヒド)、グルタチオン、ビオチン、もしくは他のアビジン結合分子、アビジン、ストレプトアビジン、cAMP、ホスファチジルイノシトール、ヘム、cAMP用リガンド、金属、NTAであり、一実施形態では、1つ以上の色素、例えば、キサンテン色素、カルシウム感受性色素(例えば、1−[2−アミノ−5−(2,7−ジクロロ−6−ヒドロキシ−3−オキシ−9−キサンテニル)−フェノキシ]−2−(2’−am−イノ−5’−メチルフェノキシ)エタン−N,N,N’,N’−四酢酸(Fluo−3))、ナトリウム感受性色素(例えば、1,3−ベンゼンジカルボン酸、4,4’−[1,4,10,13−テトラオキサ−7,16−ジアザシクロオクタデカン−7,16−ジイルビス(5−メトキシ− −6,2−ベンゾフランジイル)]ビス(PBFI))、NO感受性色素(例えば、4−アミノ−5−メチルアミノ−2’,7’−ジフルオレセイン)、または他のフルオロフォア(例えば、カルボキシローダミン類似体、例えば、米国第13/682,589号を参照)を含む。いくつかの実施形態では、官能基は、ハプテンまたは免疫原性分子、例えば、その分子に特異的な抗体によって結合されるものである。いくつかの実施形態では、官能基は、放射性核種ではない。他の実施形態では、官能基は、放射性核種、例えば、
3H、
14C、
35S、125I、
131Iであり、診断方法に有用な分子を含む。
【0032】
ある特定の実施形態では、官能基は、基質および/またはタンパク質もしくはそれに結合する融合物の検出を可能にする検出可能な特性を有する。検出可能な官能基は、放射もしくは吸光度、磁性、電子スピン共鳴、電気容量、誘電定数もしくは導電率などの特徴的な電磁気スペクトル特性を有するもの、ならびに強磁性、常磁性、反磁性、発光、電気化学発光、蛍光、リン光、色、抗原性であるか、または独特な質量を有する官能基を含む。官能基は、これらに限定されないが、核酸分子(例えば、DNAもしくはRNA(例えば、オリゴヌクレオチドもしくはヌクレオチド)、タンパク質(例えば、発光タンパク質、ペプチド、造影剤(例えば、MRI造影剤)、放射性核種、親和性タグ(例えば、ビオチンもしくはストレプトアビジン)、ハプテン、アミノ酸、脂質、脂質二重層、固体支持体、フルオロフォア、発色団、レポーター分子、放射性核種、電子不透明分子、MRI造影剤(例えば、マンガン、ガドリニウム(III)、もしくは鉄酸化物粒子)等を含む。特定の官能基を検出する、または基質およびそれに結合されるものを単離する方法は、当該技術分野において既知である。
【0033】
例示的な官能基は、ハプテン(例えば、キーホールリンペットヘマシアニンなどの免疫原性を強化するために有用な分子)、切断可能な標識(例えば、光切断可能なビオチン)、および蛍光標識(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)修飾クマリンおよびスクシンイミドもしくはスルホノスクシンイミド修飾BODIPY(UVにより検出可能である、および/または可視励起蛍光検出)、ローダミン(R110、ロドール、CRG6、テキサスメチルレッド(TAMRA)、Rox5、FAM、またはフルオロセイン)、クマリン誘導体(例えば、7アミノクマリン、および7−ヒドロキシクマリン、2−アミノ−4−メトキシナフタレン、1−ヒドロキシピレン、レゾルフィン、フェナレノン、またはベンズフェナレノン(米国特許第4,812,409号))、アクリジノン(米国特許第4,810,636号)、アントラセン、ならびにαおよびβ−ナフトールの誘導体、フッ素化フルオレセインおよびロドールを含むフッ素化キサンテン誘導体(例えば、米国特許第6,162,931号)、ならびに生物発光分子(例えば、ルシフェラーゼ(例えば、エビ由来ルシフェラーゼ(例えば、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、米国出願第12/773,002号、米国出願第13/287,986号)、またはGFPもしくはGFP誘導体)を含む。対応する野生型タンパク質(例えば、デハロゲナーゼ)の基質に連結されるという理由で、変異体タンパク質(例えばデハロゲナーゼ)に連結される蛍光(または生物発光)官能基は、リアルタイムで、リン酸化のような系の変化を感知するために使用され得る。さらに、基質における金属イオンの化学センサなどの蛍光分子が基質に結合するタンパク質を標識するために採用され得る。BODIPY、ローダミン緑色、GFP、または赤外色素などの生物発光または蛍光官能基は、官能基としての用途も見出し、例えば、相互作用研究(例えば、BRET、FRET、LRET、または電気泳動を使用して)において採用され得る。
【0034】
官能基の別のクラスは、アクセプター基(「親和性」分子)を含む分子と選択的に相互作用する分子である。よって、親和性分子を含むタンパク質(例えば、デハロゲナーゼ)の基質は、親和性分子の別の分子(例えば、生物由来または非生物由来であってよいアクセプター分子)との選択的相互作用のため、そのような基質および変異体タンパク質を有する複合体の分離を容易にすることができる。例えば、親和性分子が相互作用する特定の分子(アクセプター分子と称される)は、小さい有機分子、スルフヒドリル基(−SH)などの化学基、または親和性分子の抗体もしくは他の天然に存在するリガンドなどの大きい生体分子であってよい。結合は、通常、化学的な性質であり、共有結合もしくは非共有結合の形成、またはイオンもしくは水素結合などの相互作用を伴い得る。アクセプター分子は、溶液中で遊離しているか、または固体もしくは半固体表面に結合される、ポリマーマトリックスであるか、あるいは固体もしくは半固体基質の表面上に存在し得る。相互作用は、光、温度、圧力、または触媒として作用する化学もしくは生体分子の添加などの外部作用物によっても誘発され得る。反応混合物からの複合体の検出および/または分離は、通常、結合の種類である、親和性分子とアクセプター分子との間の相互作用のため生じる。
【0035】
親和性分子の例としては、免疫原性分子(例えば、タンパク質のエピトープ、ぺプチド、炭水化物、または脂質(例えば、その分子に特異的な抗体を調製するために有用な任意の分子));ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、およびそれらの誘導体;金属結合分子;ならびにこれらの分子の断片および組み合わせなどの分子を含む。例示的な親和性分子は、His5(HHHHH)、HisX6(HHHHHH)、C−myc(EQKLISEEDL)、Flag(DYKDDDDK)、SteptTag(WSHPQFEK)、HA Tag(YPYDVPDYA)、チオレドキシン、セルロース結合ドメイン、キチン結合ドメイン、S−ペプチド、T7ペプチド、カルモジュリン結合ペプチド、C末端RNAタグ、金属結合ドメイン、金属結合反応基、アミノ酸反応基、インテイン、ビオチン、ストレプトアビジン、およびマルトース結合タンパク質を含む。例えば、ビオチンを含むタンパク質(例えば、デハロゲナーゼ)の基質を、変異体タンパク質(例えば、デハロゲナーゼ)と接触させる。共有結合は、タンパク質(例えばデハロゲナーゼ)と基質の反応基との間に形成される。変異体タンパク質と基質との間の複合体におけるビオチンの存在は、複合体のアビジン分子(例えば、表面(例えば、ビーズ、マイクロウェル、ニトロセルロース等)上にコーティングされたストレプトアビジン分子)への選択的結合を可能にする。好適な表面は、クロマトグラフィー分離用樹脂、組織培養表面もしくは結合プレートなどのプラスチック、マイクロタイター皿およびビーズ、セラミックおよびガラス、磁気粒子、ポリマー、および他のマトリックスを含む粒子を含む。いくつかの場合では、これらの材料は、光ファイバ、chemfet、およびプラズモン検出器などの生体分子感知デバイスの一部分であってよい。
【0036】
親和性分子の別の例は、ダンシルシリンである。ダンシル環と相互作用する抗体は、市販されているか(Sigma Chemical;St.Louis,Mo.)、またはAntibodies: A Laboratory Manual(Harlow and Lane,1988)などに記載される既知のプロトコルを使用して調製することができる。例えば、抗ダンシル抗体は、クロマトグラフィーカラムのパッキング材料上に固定化される。親和性カラムクロマトグラフィーのこの方法は、他の分子がカラムを通過する一方で、変異体加水分解酵素と基質との間の複合体を、固定化抗体とのその相互作用によりカラム上に保持させることにより分離を実現する。複合体は、次いで、抗体−光源相互作用を妨げることにより解放され得る。イオン交換または親和性セファロース、セファクリル、セファデックス、および他のクロマトグラフィー樹脂などの特定のクロマトグラフィーカラム材料が市販されている(Sigma Chemical;St. Louis,Mo.;Pharmacia Biotech;Piscataway,N.J.)。ダンシルリシンは、便宜上、その蛍光特性により検出され得る。
【0037】
アクセプター分子として抗体を採用する場合、分離は、免疫沈降、およびフィルタまたはビーズ、プレート、もしくは樹脂などの他の表面上への抗体の固定化などの他の生化学的分離方法を通して行うこともできる。例えば、変異体加水分解酵素と基質との複合体は、親和性分子特異的または加水分解酵素特異的抗体で磁気ビーズをコーティングすることにより単離され得る。ビーズは、しばしば、磁場を使用して混合物から分離される。
【0038】
官能分子の別のクラスは、電磁放射線を使用して検出可能な分子を含み、これらに限定されないが、キサンテンフルオロフォア、ダンシルフルオロフォア、クマリン、およびクマリン誘導体、蛍光アクリジニウム部分、ベンゾピレン系フルオロフォア、ならびに7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール、および3−N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)−2,3−ジアミノ−プロピオン酸を含む。好ましくは、蛍光分子は、天然のアミノ酸とは異なる波長の蛍光の高量子収率を有し、より好ましくは、スペクトルの可視、またはUVおよび可視部分の両方で励起され得る蛍光の高量子収率を有する。事前に選択された波長での励起時、分子は、視覚的にまたは従来の蛍光検出方法を使用するかのいずれかにより、低濃度で検出可能である。ルテニウムキレートおよびその誘導体またはニトロキシドアミノ酸およびそれらの誘導体などの電気化学発光分子は、フェムトモル範囲以下で検出可能である。
【0039】
蛍光分子に加え、分子の電磁場および放射線への相互作用および応答に基づく物理的特性を有する様々な分子は、変異体加水分解酵素と基質との間の複合体を検出するために使用され得る。これらの特性は、ラマン活性である発色団の存在の電磁場スペクトルのUV、可視、および赤外領域における吸収を含み、共鳴ラマン分光法、電子スピン共鳴活性、ならびに核磁気共鳴、および例えば、質量分析計を介した分子質量によりさらに強化され得る。
【0040】
親和性分子を有する複合体を検出および/または単離する方法は、ゲル濾過、拘束圧力または高圧液体クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、ならびにイオン交換クロマトグラフィーを含む、クロマトグラフィー技法を含む。タンパク質分離の他の方法は、変異体加水分解酵素と基質との間の複合体の検出および後続の単離、例えば、電気泳動、等電焦点、および質量分析にも有用である。
【0041】
ある特定の実施形態では、官能基は、細胞浸透性(例えば、基質単独の文脈において)である。いくつかの実施形態では、細胞外的に付加された官能基は、細胞に侵入するために(例えば、拡散、エンドサイトーシス、能動輸送、受動輸送等を介して)細胞膜を通過することができる。
【0042】
C.リンカー
いくつかの実施形態では、本発明の基質は、官能基と反応基との間にリンカーまたは複数のリンカー(例えば、L
1−M−L
2)を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、タンパク質(例えば、デハロゲナーゼ)が基質の反応部分と相互作用する(例えば共有結合)のに十分な距離を提供する。本明細書で使用される、リンカーは、単一共有結合ではない。リンカーは、その標的タンパク質(例えば、デハロゲナーゼ)によって結合され得る基質を提供する。いくつかの実施形態では、リンカーは、約5オングストローム〜約1000オングストローム以下の長さにより官能基(R)と反応基(A−X)とを分離する。他の好適なリンカーは、約5オングストローム〜約100オングストロームによりRと反応基とを分離するリンカー、ならびに約5オングストローム〜約50オングストローム、約5オングストローム〜約25オングストローム、約5オングストローム〜約500オングストローム、または約30オングストローム〜約100オングストロームによりRと基質とを分離するリンカーを含む。
【0043】
特定の実施形態では、リンカーは、カルバメート基を含む。例えば、基質は、R−L
1−M−L
2−A−Xを含み得、式中、Rは、官能基であり、L
1は、第1のリンカー部分であり、Mは、カルバメート基(例えば、OCONH、NHCOO等)であり、L
2は、第2のリンカー部分であり、Aは、アルキル基であり、Xは、ハロゲンである。いくつかの実施形態では、カルバメートは、窒素端が反応基に向かって配向されるように配向される。いくつかの実施形態では、カルバメートは、酸素端が反応基に向かって配向されるように配向される。いくつかの実施形態では、リンカーは、単一のカルバメート基を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、2つ以上のカルバメート基(例えば、2、3、4、5、6、7、8等)を含む。複数のカルバメートが存在するいくつかの実施形態では、Mは、反応基(例えばA−X)に最も近いカルバメートであり、他のカルバメート基は、L
1の一部分である。いくつかの実施形態では、L
1および/またはL
2のうちの1つまたは両方は、独立して、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等)を含む。他の実施形態では、L
1および/またはL
2のうちの1つまたは両方は、独立して、−((CH
2)
2O)
p−または−(O(CH
2)
2)p−基を含み、式中、p=1〜10である。いくつかの実施形態では、L
1および/またはL
2のうちの1つまたは両方は、基質(例えば、R−L
1−M−A−XまたはR−M−L
2−A−X)から不在である。
【0044】
ある特定の実施形態では、L
1は、切断可能なリンカー部分である。いくつかの実施形態では、L
1は、切断可能、化学的に切断可能、光切断可能などの酵素である。本発明の実施形態において使用するのに好適な切断可能リンカーは、例えば、Bielski and Witczak.Chem.Rev.2013,113,2205‐2243(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるものを含む。しかしながら、本発明は、そのような切断可能なリンカーに限定されない。いくつかの実施形態では、L
1の切断は、官能基(例えば、フルオロフォア、固体表面等)からの変異体タンパク質(例えば、変異体デハロゲナーゼ)の解放をもたらす。他の実施形態では、L1の切断は、表面に結合される変異体タンパク質(デハロゲナーゼ)からのRおよびRに結合される任意の標的分子の解放をもたらす。
【0045】
いくつかの実施形態では、リンカーは、基質とタンパク質(例えば、デハロゲナーゼ)との間の相互作用を最適化する距離で、X(ハロゲン)とM(カルバメート)とを分離するように構成される。ある特定の実施形態では、XおよびMは、6〜18個の直鎖状に結合した原子(例えば、(CH2)
6O(CH
2)
2O(CH
2)
2、(CH
2)
6-18等)によって分離される。いくつかの実施形態では、AおよびL
2は、6〜18個の直鎖状に結合した原子(例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18個)を含む。いくつかの実施形態では、AおよびL
2は、9〜15個の直鎖状に結合した原子(例えば、9、10、11、12、13、14、15個)を含む。いくつかの実施形態では、AおよびL
2は、12個の直鎖状に結合したC、N、および/またはO原子(例えば、(CH
2)
6O(CH
2)
2O(CH
2)
2、(CH
2)
6(CH
2)
3O(CH
2)
2、(CH
2)
6O(CH
2)
2(CH
2)
3等)を含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、リンカーは、官能基とタンパク質(例えば、デハロゲナーゼ)との間の相互作用を減少させる距離で、R(官能基)とM(Xに最も近いリンカーカルバメート)とを分離するように構成される。いくつかの実施形態では、L
1は、2個以上の直鎖状に結合したC、S、N、および/またはO原子を含む。いくつかの実施形態では、L
1は、1つ以上のカルバメート基を含む。いくつかの実施形態では、L
1は、1つ以上のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等)を含む。いくつかの実施形態では、L
1は、1つ以上のO(CH
2)
2または(CH
2)O基を含む。いくつかの実施形態では、L
1は、1〜10個の直鎖状に結合した原子(例えば、1〜9、2〜9、1〜8、2〜8、1〜7、2〜7、1〜6、2〜6等)を含む。いくつかの実施形態では、L
1は、1〜10個の長さの直鎖状に結合した原子(例えば、1〜9、2〜9、1〜8、2〜8、1〜7、2〜7、1〜6、2〜6等)である。
【0047】
ある特定の実施形態では、リンカーは、反応基から官能基を分離するカルバメート含有鎖である。いくつかの実施形態では、カルバメート基に近接する反応基は、12個の直鎖状に結合した原子(例えば、C、N、O、S等)によってハロゲン(X)から分離される。いくつかの実施形態では、カルバメート基に近接する反応基は、合計10〜14個の直鎖状に結合した原子(例えば、12個の原子)のCH
2およびO基の組み合わせによってハロゲン(X)から分離される。いくつかの実施形態では、カルバメート基に近接する反応基は、2〜24個の直鎖状に結合した原子(例えば、C、N、O、S等)によって官能基(R)から分離される。いくつかの実施形態では、カルバメート基に近接する反応基は、合計2〜24個の直鎖状に結合した原子(例えば、12個の原子)のNH、NHCOO、CO、CH
2、およびO基の組み合わせによって官能基(R)から分離される。
【0048】
いくつかの実施形態では、リンカーは、少なくとも2個の直鎖状に結合したC、N、O、またはS原子(例えば、2〜50個の原子、2〜40個の原子、2〜30個の原子、2〜20個の原子、2〜10個の原子等)によって官能基から分離され、8〜16個の直鎖状に結合したC、N、O、またはS原子(例えば、10〜14個の原子、11〜13個の原子、12個の原子)によってハロゲン(X)から分離されるカルバメートを含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、上記の基準を満たし、−O−、−S−、−CH=CH−、=C=、炭素−炭素3重結合、C=O、NH、SH、OH、CN等から選択される1つ以上の骨格基を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、任意の適切な有機官能基を含む、1つ以上の置換基、ペンダント、側鎖等を含む。
【0049】
D.基質
上述のように、基質は、リンカー(例えば、カルバメート含有リンカー)によって結合される官能基および反応基を含む。いくつかの実施形態では、リンカーのカルバメートは、2つ以上の直鎖状に結合した原子によって官能基から分離される。いくつかの実施形態では、反応基に最も近く位置するリンカーのカルバメートは、8〜16個の直鎖状に結合した原子(例えば、10〜14個の原子、11〜13個の原子、12個の原子)によって反応基から分離される。
【0050】
いくつかの実施形態では、基質は、細胞の原形質膜に浸透性である。ある特定の実施形態では、リンカー部分(L
1およびL
2)間のカルバメート(M)の存在は、基質の他の部分に対する変更(例えば、L
1、L2、または基質全体の伸長)にも関わらず、予想外の細胞浸透度を提供する。いくつかの実施形態では、カルバメート(例えば、位置Mで)を含む基質は、カルバメート(例えば、アミドリンカー)を欠失する基質が細胞透過性である長さで細胞透過性を維持する(例えば、実施例3〜4を参照)。いくつかの実施形態では、細胞培地に添加される、または細胞に施される場合、基質は、効率的に細胞に侵入する。特定の実施形態では、基質は、変異体タンパク質(例えばデハロゲナーゼ)の不在下で、細胞内に迅速かつ効率的に充填され、細胞から除去される。変異体タンパク質(例えばデハロゲナーゼ)の存在下で、基質の少なくとも一部分は、細胞内に結合され、除去されるのを防止する。よって、基質の結合部分は、マーカーとして、または変異体タンパク質(例えばデハロゲナーゼ)もしくはその融合物を捕捉するための機構として機能することができる。他の実施形態では(例えば、官能基が固体表面である場合)、基質は、細胞の原形質膜に透過性ではない。いくつかの実施形態では、基質は、細胞透過性官能基(例えば、固体表面ではない)を含む。
【0051】
ある特定の実施形態では、基質(例えば、大量の官能基(例えば、変異体タンパク質(またはそのチャネル)の活性部位内に収まることができない官能基を含む)は、官能基を変異体タンパク質の外面に残留させる一方で、反応基が変異体タンパク質(例えば、変異体デハロゲナーゼ)の活性部位にアクセスできる十分な長さのものでなければならない。多くの基質による長さの追加(例えば、最適な点を超えて)は、結合親和性または細胞透過性の減少をもたらす。いくつかの実施形態では、カルバメート(例えば、位置Mで)を含む基質は、カルバメートを欠失する基質(例えば、アミドリンカーを含む基質)が減少した性能を呈する長さで、高結合親和性(例えば、変異体タンパク質(例えば、変異体デハロゲナーゼ)に関して)、結合速度論、および/または細胞透過性を維持する(例えば実施例3〜4を参照)。
【0052】
ある特定の実施形態では、基質は、2つ以上の官能基を含む。いくつかの実施形態では、官能基のうちの1つは酵素である。他の実施形態では、官能基のうちの1つは、酵素の基質である。例えば、官能基の1つはルシフェリンであり、他はプロテアーゼ認識部位(例えば、切断される部位を含むプロテアーゼによる認識に十分な配列を含むもの)である、官能基の1つは、親和性タグ(例えば、ビオチン)であり、他はフルオロフォアである、または官能基の1つはプロテアーゼ認識部位であり、他はフルオロフォアであってよい。基質は、本明細書に記載される、または当該技術分野において理解される官能基のうちの2つ以上の任意の組み合わせを含み得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載される基質の組成物ならびに合成および/または生成のための方法を提供する。本発明は、1つ以上の官能基を含むように修飾されるデハロゲナーゼの基質を調製するための方法をさらに提供する。
【0054】
E.変異体デハロゲナーゼ
例えば、米国特許第7,238,842号、米国特許第7,425,436号、米国特許第7,429,472号、米国特許第7,867,726号(それらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)により詳細に記載される変異体タンパク質、加水分解酵素、および/またはデハロゲナーゼは、対応する野生型タンパク質、加水分解酵素、またはデハロゲナーゼと比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。変異体タンパク質(例えば、変異体デハロゲナーゼ)は、組換え技法(例えば、部位特異的突然変異誘発または再帰的突然変異誘発)を介して調製されるものに限定されず、変異体タンパク質(例えば、変異体デハロゲナーゼ)に、1つ以上の官能基を含む基質などの基質と安定した結合(例えば、共有結合)を形成することを可能にする1つ以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、変異体タンパク質は、変異体加水分解酵素である。ある特定の実施形態では、変異体タンパク質は、変異体デハロゲナーゼである。少なくとも1つのアミノ酸置換は、対応する野生型タンパク質と基質との間に形成される結合よりも安定した基質との結合(例えば、共有結合)を形成する変異体タンパク質をもたらす。変異体タンパク質における少なくとも1つのアミノ酸置換は、対応する野生型タンパク質と基質との間に形成される結合を切断する水分子の活性化に関連する対応する野生型タンパク質におけるアミノ酸残基での置換、または基質とエステル中間体を形成する対応する野生型タンパク質におけるアミノ酸残基での置換である。いくつかの実施形態では、変異体タンパク質は、対応する野生型タンパク質と比較して少なくとも2つのアミノ酸置換を含み、1つの置換は、野生型タンパク質において、水分子の活性化に関連する残基、または野生型タンパク質において、加水分解酵素の基質の求核攻撃によりエステル中間体を形成する残基に存在し、別の置換は、野生型タンパク質において、加水分解酵素基質の結合部位(複数可)の、もしくはその近くにある残基に存在するが、対応する野生型タンパク質において、水分子の活性化に関連する、または基質とエステル中間体を形成する残基に存在しない。一実施形態では、第2の置換は、野生型タンパク質において、タンパク質の触媒ポケット内への基質侵入のための部位(複数可)を並べる残基に存在する。追加の置換(複数可)は、好ましくは、対応する野生型タンパク質の基質に結合するそれらの変異体の安定した共有結合形成の速度を増加する。タンパク質、加水分解酵素、およびデハロゲナーゼの配列および変異の詳細は、例えば、米国特許第7,238,842号、米国特許第7,425,436号、米国特許第7,429,472号、米国特許第7,867,726号に記載されており、それらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0055】
F.融合物
様々な実施形態では、本発明は、変異体タンパク質(例えば、変異体デハロゲナーゼ)および対象とするタンパク質もしくはペプチドのアミノ酸配列(例えば、薬物標的、マーカータンパク質(例えば、選択可能マーカータンパク質、親和性タグ(例えば、ポリヒスチジン配列)))、対象とする酵素(例えば、ルシフェラーゼ、RNasin、RNase、および/またはGFP)、核酸結合タンパク質、細胞外基質タンパク質、分泌されたタンパク質、Fcなどの抗体もしくはその一部分、生物発光タンパク質、受容体リガンド、調節タンパク質、血清タンパク質、免疫原性タンパク質、蛍光タンパク質、反応性システインを有するタンパク質、受容体タンパク質(例えば、NMDA受容体、チャネルタンパク質(例えば、HERGチャネルタンパク質を含むナトリウム、カリウム、またはカルシウム感受性チャネルタンパク質などのイオンチャネルタンパク質))、膜タンパク質、細胞質ゾルタンパク質、核タンパク質、構造タンパク質、リンタンパク質、キナーゼ、シグナル伝達タンパク質、代謝タンパク質、ミトコンドリアタンパク質、受容体関連タンパク質、蛍光タンパク質、酵素基質(例えば、プロテアーゼ基質)、転写因子、タンパク質不安定化配列、または輸送タンパク質(例えば、EAAT1−4グルタメート輸送体)、ならびに標的シグナル(例えば、変異体加水分解酵素を特定の位置に指向する、ミトコンドリア局在化配列、核局在化シグナル、またはミスチル化配列などの色素体標的シグナル)を含む融合タンパク質を提供する。
【0056】
ある特定の実施形態では、融合タンパク質は、変異体タンパク質(例えば、変異体デハロゲナーゼ)および対象とするまたは化学合成から形成された少なくとも1つのタンパク質をコードする組換えDNAから発現される。対象とするタンパク質は、変異体加水分解酵素のN末端またはC末端に縮合され得る。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、N末端に対象とするタンパク質、および変異体タンパク質(例えば、変異体デハロゲナーゼ)のC末端に別のタンパク質、例えば、異なるタンパク質を含む。例えば、対象とするタンパク質は、蛍光タンパク質または抗体であってよい。任意に、融合におけるタンパク質は、コネクタ配列(例えば、13〜17のアミノ酸残基を有するものなどの、少なくとも2つのアミノ酸残基を有するもの)によって分離される。融合タンパク質におけるコネクタ配列の存在は、各それぞれのタンパク質の機能に対して融合物におけるいずれのタンパク質の機能を実質的に変更しない。よって、変異体デハロゲナーゼおよびルシフェラーゼ(例えば、レニラ(Renilla)ルシフェラーゼ、エビ由来ルシフェラーゼ(例えば、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、米国出願第12/773,002号、米国出願第13/287,986号)を参照)の融合物に関して、コネクタ配列の存在は、変異体デハロゲナーゼと基質との間に形成された結合の安定性、したがって、またはルシフェラーゼの活性を実質的に変更しない。融合物におけるタンパク質の任意の特定の組み合わせに関して、多種多様のコネクタ配列が採用され得る。いくつかの実施形態では、コネクタ配列は、酵素によって認識される配列(例えば、切断可能な配列(例えば、酵素切断可能、化学的に切断可能、光切断可能等))である。
【0057】
G.キット
本発明は、本明細書に記載される基質(例えば、基質と共有結合を形成する変異体タンパク質との組み合わせで)を含む組成物およびキットも提供する。いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載される基質を含み、官能基は、対象とする化合物(例えば、薬物、薬物化合物、生体分子、または小分子)であり、固体支持体は変異体デハロゲナーゼを含む。いくつかの実施形態では、キットは、本発明の基質を含む固体支持体を含み、固体支持体は、変異体タンパク質またはその融合物を含み、キットは、本発明の基質を含むか、またはキットは、デハロゲナーゼもしくはその融合物をコードするベクターを含む。いくつかの実施形態では、キットは、アッセイを行うための試薬、官能基をリンカー/反応基上に付加するための試薬、正および/または負の対照、説明書等をさらに含む。
【0058】
H.用途
基質および変異体タンパク質(例えば、デハロゲナーゼ)は、インビトロおよび/またはインビボの対象とする分子、生細胞撮像を含む標識細胞、もしくは標識タンパク質を単離、検出、特定、撮像、表示、または局在化するのに有用である。例えば、固体支持体(例えば、微小球、膜、ポリマープレート、ビーズ(例えば、ガラス、磁気ポリマー等)、ガラススライド等)に結合される基質、または固体支持体に結合される変異体タンパク質(例えば、デハロゲナーゼ)は、タンパク質アレイ、細胞アレイ、小胞/小器官アレイ、遺伝子アレイ、および/または細胞膜アレイを生成するために使用され得る。よって、いくつかの実施形態では、方法は、対象とする分子を単離または特定するために提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、本明細書に記載される基質を有する試料(例えば、細胞または細胞溶解物)を含み、官能基は、対象とする化合物(例えば、薬物、薬物化合物、生体分子、または小分子)であり、固体支持体は、変異体デハロゲナーゼを含む。その後、基質に結合される対象とする分子が特定される。いくつかの実施形態では、本方法は、変異体タンパク質(例えば、デハロゲナーゼ)、ならびに対象とする分子および本明細書に記載される1つ以上の基質を含む固体支持体に結合されるタンパク質のうちの少なくとも1つを含む、1つ以上の融合タンパク質を含む試料を接触させることを含む。例えば、本方法は、変異体タンパク質に縮合されるタンパク質に結合されるDNAを単離するために採用され得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、変異体タンパク質(例えば、変異体デハロゲナーゼ)もしくはその融合物の存在または量を検出もしくは決定するための方法が提供される。本方法は、変異体タンパク質(例えば、変異体デハロゲナーゼ)を1つ以上の官能基を含む基質と接触させることを含む。試料、細胞等との相互作用時、変異体タンパク質および基質は、共有結合を形成する。未結合の基質は除去され得る。官能基の存在または量が検出または決定され、それにより変異体タンパク質(例えば、変異体デハロゲナーゼ)の存在もしくは量を検出または決定する。いくつかの実施形態では、変異体タンパク質は、細胞の表面に、またはその上に存在する。他の実施形態では、変異体タンパク質は、細胞溶解物に存在する。
【0060】
分子を単離する、または細胞中のある特定の分子の存在もしくは量、位置(例えば、細胞内、細胞下、もしくは細胞外の位置)、または移動を検出もしくは決定するために、変異体タンパク質(例えば、変異体デハロゲナーゼ)および基質を使用する方法も提供する。一実施形態では、試料中の対象とする分子を単離するための方法が提供される。本方法は、試料を、変異体タンパク質(例えば、変異体デハロゲナーゼ)と、1つ以上の官能基を含む変異体タンパク質(例えば、変異体デハロゲナーゼ)の基質を有する対象とする分子に結合するタンパク質とを含む融合タンパク質と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの官能基は、固体支持体、または固体支持体に結合する分子である。いくつかの実施形態では、試料は無傷細胞を含む一方、他の実施形態では、試料は細胞溶解物または細胞下画分である。次いで、対象とする分子が単離される。
【0061】
いくつかの実施形態では、本発明は、対象とするタンパク質を単離する方法を含む。本方法は、変異体タンパク質(例えば、変異体デハロゲナーゼ)と、対象とするタンパク質とを含む融合タンパク質を、少なくとも1つの官能基を含む基質と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの官能基は、固体支持体、または固体支持体に結合する分子である。次いで、対象とするタンパク質が単離される。
【0062】
他の実施形態では、本発明は、対象とするタンパク質の、対象とするタンパク質と相互作用すると思われる分子との相互作用を変更する作用物質を特定する方法を含む。本方法は、少なくとも1つの作用物質を、対象とするタンパク質と相互作用すると思われる分子と接触させることを含み、融合タンパク質は、変異体タンパク質(例えば、変異体デハロゲナーゼ)および対象とするタンパク質ならびに1つ以上の官能基を含む基質を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの官能基は、固体支持体、または固体支持体に結合する分子である。次いで、作用物質が対象とするタンパク質と、対象とするタンパク質と相互作用すると思われる分子との間の相互作用を変更するか否かが決定される。
【0063】
さらに、固体支持体に結合される基質、または固体支持体に結合される変異体デハロゲナーゼは、タンパク質アレイ、細胞アレイ、小胞/小器官アレイ、および細胞膜アレイを生成するために使用され得る。
【0064】
ある特定の実施形態では、細胞中のタンパク質の発現、位置、および/または移動(追跡)を監視する、ならびに細胞内の微小環境の変化を監視する方法が提供される。
【0065】
細胞を単離、選別、または精製するために、変異体タンパク質(例えば、変異体デハロゲナーゼ)は、細胞の外面上に発現され得る(例えば、原形質膜タンパク質との融合を介して)。小器官を単離、精製、または分離するために、変異体タンパク質(例えば、変異体デハロゲナーゼ)は、対象とする小器官の細胞質ゾル表面上に発現される。別の実施形態では、異なる細胞を成長させるための最適なプラットホームを作製するために、変異体タンパク質(例えば、変異体デハロゲナーゼ)は、細胞外マトリックス成分または外膜タンパク質と縮合され、組織工学のために、3次元細胞培養物またはプラットホームに係留される。例として、一次ニューロンまたは胚性幹細胞は、支持細胞層を形成するために、プラットホーム上で成長させることができる。
【0066】
他の用途は、細胞を検出または標識することを含む。よって、変異体タンパク質(例えば、変異体デハロゲナーゼ)および対応する基質の使用は、例えば、動物内への移植もしくは注入後にインビトロまたはインビボの細胞移動(例えば、血管新生/化学走化性アッセイ、移植したニューロンの移動、動物内に移植された/注入された正常、悪性、もしくは組換え修飾された細胞等)を検出するための細胞の検出、および生細胞撮像、続いて免疫細胞化学を可能にする。他の実施形態では、本発明は、新しく合成されたタンパク質を標識するための方法を提供する。例えば、変異体タンパク質(例えば、変異体デハロゲナーゼ)またはその融合物を発現するベクターを含む細胞を、官能基を欠く基質と接触させる。次いで、細胞を、作用物質(例えば、遺伝子発現の誘発因子)、および1つ以上の官能基を含む変異体タンパク質(例えば、変異体デハロゲナーゼ)の基質と接触させる。次いで、変異体タンパク質(例えば、変異体デハロゲナーゼ)もしくはその融合物の存在、量、または位置が検出または決定される。変異体タンパク質(例えば、変異体デハロゲナーゼ)またはその融合物の存在、量、または位置は、新しく合成された変異体加水分解酵素またはその融合物による。別の方法としては、変異体タンパク質(例えば、変異体デハロゲナーゼ)またはその融合物を発現するベクターを含む細胞を、官能基(例えば、緑色フルオロフォア、NANOLUC)を有するタンパク質(例えば、変異体デハロゲナーゼ)の基質と接触させ、次いで、作用物質、および異なる官能基(例えば、別のフルオロフォア)を有する基質と接触させる。一実施形態では、変異体タンパク質(例えば、変異体デハロゲナーゼ)は、膜局在化シグナルに縮合され、そのため、膜における、またはその付近の事象を監視するために採用され得る。
【0067】
いくつかの実施形態では、基質および変異体タンパク質は、相互作用する生理活性作用物質または薬物(例えば、ペプチド、小分子等)の細胞標的の捕捉および/または特定に用途を見出す。そのような捕捉および特定の方法は、例えば、米国特許第61/736,426号および米国特許第61/736,429号に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0068】
本明細書に記載される基質および変異体タンパク質(例えば、デハロゲナーゼ)は、上記の用途に限定されない。基質および変異体タンパク質(例えば、デハロゲナーゼ)は、例えば、米国特許公開第20120330001号、第20120258470号、第20120252048号、第20120220013号、第20120214677号、第20110207195号、第20110207195号、第20110201024号、第20110053162号、第20110039257号、第20110039257号、第20110039257号、第20100273186号、第20090275051号、第20090263843号、第20090098627号、第20090098627号、第20090017482号、第20080274488号、第20080268482号、第2008−145882号、第20080090291号、第20080070299号、第20080026407号、第20070224620号、第20070212762号、第20060127988号、第20050164321号、第20050130205号、および第20040146987号に記載される方法および用途にも用途を見出し、それらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0069】
実験
実施例1
デキサメタゾンカダベリン中間体
デキサメタゾン酸(10mg、26umol、Toronto Research Chemicals)、および2mLのDMF中の(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP、15mg、29umol)の溶液に、N−Bocカダベリン(106mg、520umol)を添加した。反応物を16時間攪拌し、次いで、1NのHClを添加してクエンチし、0.1%の水性ギ酸中10−>50%のMeCNで溶出する分取HPLCにより生成物を単離し、そのまま続けて行われた所望のデキサメタゾンN−Bocカダベリン付加物を得た。
【0070】
デキサメタゾンN−Boc−カダベリン付加物(24mg、38umol)を、室温で、ジオキサン(0.5mL)中4MのHClで処理した。反応の完了時、次いで、CH
2Cl
2とNaHCO
3(0.05M aq)の間で分配した。層を分離し、有機層を乾燥させ、濃縮し、さらに精製することなく使用された所望のデキサメタゾンカダベリン中間体(12mg)を得た。
PBI−4980:デキサメタゾンカルバメートクロロアルカン
【化2】
【0071】
デキサメタゾンカダベリン付加物(10mg、21umol)を、2−(2−(2−(((4−ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)エトキシ)エトキシ)エチル(2−(2−((6−クロロヘキシル)オキシ)エトキシ)エチルカルバメート(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Hong et al.,W.Am J Transl Res 2011,3,392)(25mg、44umol)、および2mLのDMF中のトリエチルアミンと混合した。2時間後、1NのHClを添加して反応をクエンチし、0.1%の水性ギ酸中10−>50%のMeCNで溶出する分取HPLCにより生成物を単離し、19mgの黄色の固体を得た。M+H(C
44H
72ClFN
3O
12)の計算値:889、実測値889。
【0072】
実施例2
実験は、カルバメートクロロアルカン薬物共役体を使用して、細胞からHALOTAGタンパク質ビーズ上への標的タンパク質のプルダウンの効率を示すために(
図9の概略図を参照)、本発明の実施形態の開発中に行われた。この実施例では、生細胞からNanoLuc−p38α融合タンパク質をプルダウンするために、BIRB−カルバメートクロロアルカン共役体(PBI−4834、
図1を参照)を利用した。
【0073】
HEK293を平板培養し、PEIを使用して、96ウェルプレートのウェル中で、NANOLUC−p38融合物をコードするプラスミドDNAをトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞は、10μMのPBI−4834の最終濃度でインキュベートされ、一方、対照細胞は、共役された薬物で処理されなかった。2時間の平衡結合後、培地を除去し、細胞をPBSで直ちに洗浄し、10分間、洗剤ベースの溶解緩衝液に溶解した。次いで、細胞溶解物を、0.5μlの沈降常磁性HALOTAGタンパク質ビーズ(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願第14/104,814号を参照)(Promega Corp.から購入した)を含む96ウェルプレートのウェルに移し、振盪しながら15〜45分間インキュベートした。結合後、未結合の画分を除去し、HALOTAGタンパク質常磁性ビーズを洗浄した。次いで、150uMの非共役BIRB796を添加し、60分間、非共役BIRB796と競合させることにより、捕捉したNANOLUC−p38α融合物をビーズから特異的に解放した。解放されたNANOLUC−p38α融合タンパク質(+PBI−4834)および対照(−PBI4834)は、NANOGLOルシフェラーゼ試薬(Promega Corp.)を使用して検出された。
【0074】
HALOTAGタンパク質ビーズ上の捕捉15分以内に達成された背景に対する高シグナルは、カルバメートリンカー薬物共役体を介した捕捉方法の効率を示す(
図1)。
【0075】
実施例3
以下の実施例は、細胞透過性、HaloTag(登録商標)タンパク質に対する結合親和性、およびクロロアルカン修飾薬物を介した細胞からHaloTag(登録商標)ビーズ上への標的プルダウンに関するカルバメートクロロアルカンリンカーの利点を示す。この実施例では、メトトレキサート−クロロアルカン共役体PBI−5015(カルバメートクロロアルカンリンカー)、PBI−4848(O2クロロアルカンリンカー)、PBI−4849(O4クロロアルカンリンカー)、およびPBI−4850(O6クロロアルカンリンカー)(
図2を参照)が、細胞および溶解物におけるHaloTag(登録商標)タンパク質に対するそれらの結合効率に関して試験された。
【0076】
a)溶解物におけるHaloTag(登録商標)タンパク質に対する結合効率は、1μMの最終濃度に、メトトレキサート−クロロアルカン共役体を、HaloTag(登録商標)タンパク質を発現する細胞からの溶解物に添加することにより測定された。結合の0〜60分後、1μMの蛍光HaloTag(登録商標)リガンドにより反応を追跡した。未結合のHaloTag(登録商標)タンパク質は、蛍光HaloTag(登録商標)リガンドへの結合を通して検出され、その後に、SDS−PAGEゲルの分析、および蛍光ゲルスキャナの検出が続いた。
【0077】
図3Aの結果は、O2リンカー(PBI−4848)およびカルバメートリンカー(PBI−5015)が、他の2つのリンカーと比較して、HaloTag(登録商標)タンパク質に対して迅速な標識速度論を提供したことを示す。O4およびO6リンカーの減少した結合効率は、それらの長さに起因し得る。しかしながら、プルダウン用途に重要であり得るカルバメートリンカーの長さは、HaloTagに対する結合効率に影響しなかった。
【0078】
b)細胞におけるHaloTag(登録商標)タンパク質に対する結合効率は、10μMの最終濃度に、メトトレキサート−クロロアルカン共役体を、HaloTag(登録商標)タンパク質を発現する細胞に添加することにより測定された。結合0〜120分後、5μMの蛍光HaloTag(登録商標)リガンドにより反応を追跡した。未結合のHaloTag(登録商標)タンパク質は、蛍光HaloTag(登録商標)リガンドへの結合を通して検出され、その後に、細胞溶解、SDS−PAGEゲルの分析、および蛍光ゲルスキャナの検出が続いた。
【0079】
図3Bの結果は、O2リンカー(PBI−4848)が、最高の細胞透過性/HaloTag(登録商標)タンパク質に対する結合効率を有し、その後にカルバメートリンカー(PBI−5015)が続くことを示す。他の2つのリンカーO4およびO6は、著しく低い透過性/HaloTag(登録商標)タンパク質に対する結合効率を有した。これらの結果は、カルバメートリンカーはO4およびO6よりも非常に長いが、尚も良好な細胞透過性およびHaloTagに対する結合効率を提供することを示す。
【0080】
c)上記の結果に基づき、最高の細胞透過性、およびHaloTag(登録商標)タンパク質に対する結合効率を提供したメトトレキサート−クロロアルカン共役体PBI−5015(カルバメートクロロアルカンリンカー)およびPBI−4848(O2クロロアルカンリンカー)は、生細胞からNanoLuc−DHFR融合タンパク質を特異的にプルダウンするそれらの能力に関して試験された。
【0081】
HEK293細胞を平板培養し、PEIを使用して、96ウェルプレートのウェル中で、NANOLUC−DHFR融合物をコードするプラスミドDNAをトランスフェクトした。DNAを、プロモーターを含まないキャリアDNAプラスミド(pCI)を用いて、1:50でウェル当り80ngの総DNAの最終濃度に希釈した。トランスフェクションの24時間後、さらに24時間、細胞を血清欠乏させ、次いで、系列希釈された10uMのPBI−4848またはPBI−5015で処理された一方、対照細胞は、共役された薬物で処理されなかった。2時間の平衡結合後、培地を除去し、細胞をPBSで直ちに洗浄し、10分間、洗剤ベースの溶解緩衝液に溶解した。次いで、細胞溶解物を、0.5μlの沈降常磁性HALOTAGタンパク質ビーズを含む96ウェルプレートのウェルに移し、振盪しながら45分間インキュベートした。結合後、未結合の画分を除去し、HALOTAGタンパク質常磁性ビーズを洗浄し、150μMの非共役メトトレキサートを添加し、60分間、非共役メトトレキサートと競合させることにより、捕捉したNANOLUC:DHFRをビーズから特異的に解放した。解放されたNANOLUC:DHFR(+PBI−5015または+PBI−4848)および対照試料は、NANOGLOルシフェラーゼ検出試薬によって検出された。PBI−4848およびPBI−5015の両方が、HALOTAGタンパク質に対して類似する結合効率を有し、PBI−4848は高い細胞透過性を有するが、PBI−5015のみがNluc:DHFR融合物を効率的にプルダウンし、よって、プルダウン用途においてカルバメートリンカーの利点を示す(
図4)。
【0082】
実施例4
以下の実施例は、細胞透過性、HaloTag(登録商標)タンパク質に対する結合親和性、標的に対する結合親和性、およびクロロアルカン修飾薬物を介した細胞からHaloTag(登録商標)ビーズ上への標的プルダウンに関するカルバメートクロロアルカンリンカーの利点を示す。この実施例では、デキサメタゾン−クロロアルカン共役体PBI−4980(カルバメートクロロアルカンリンカー)、PBI−4027(O2クロロアルカンリンカー)、PBI−4026(O4クロロアルカンリンカー)、およびPBI−4025(O6クロロアルカンリンカー)(
図5を参照)は、細胞および溶解物におけるHaloTag(登録商標)タンパク質に対するそれらの結合効率、ならびに標的グルココルチコイド受容体に対するそれらの結合効率に関して試験された。
【0083】
a)溶解物におけるHaloTag(登録商標)タンパク質に対する結合効率は、1μMの最終濃度に、デキサメタゾン−クロロアルカン共役体を、HaloTag(登録商標)タンパク質を発現する細胞からの溶解物に添加することにより測定された。結合の0〜60分後、1μMの蛍光HaloTag(登録商標)リガンドにより反応を追跡した。未結合のHaloTag(登録商標)タンパク質は、蛍光HaloTagリガンドへの結合を通して検出され、その後に、SDS−PAGEゲルの分析、および蛍光ゲルスキャナの検出が続いた。
【0084】
図6Aの結果は、カルバメートリンカー(PBI−4980)が、他の3つのリンカーと比較して、HaloTag(登録商標)タンパク質に対して迅速な結合速度論を提供したことを示し、HaloTagに対する急速な結合に関してその利点を示す。
【0085】
b)細胞におけるHaloTag(登録商標)タンパク質に対する結合効率は、10μMの最終濃度に、デキサメタゾン−クロロアルカン共役体を、HaloTag(登録商標)タンパク質を発現する細胞に添加することにより測定された。結合0〜60分後、5μMの蛍光HaloTagリガンドにより反応を追跡した。未結合のHaloTag(登録商標)タンパク質は、蛍光HaloTag(登録商標)リガンドへの結合を通して検出され、その後に、細胞溶解、SDS−PAGEゲルの分析、および蛍光ゲルスキャナの検出が続いた。
【0086】
図6Bの結果は、カルバメートリンカー(PBI−4980)が、最高の細胞透過性/HaloTag(登録商標)に対する結合効率を有し、その後に、O2リンカー(PBI−4027)およびO4リンカーならびにO6リンカーが続き、これは、非常に低い透過性/HaloTag(登録商標)タンパク質に対する結合効率を有したことを示す。この結果は、カルバメートリンカーはO4およびO6よりも非常に長いが、尚も最高の細胞透過性、およびHaloTagに対する結合効率を提供することを示す。
【0087】
c)標的グルココルチコイド受容体(GR)に対する結合効率は、製造者によって推奨されるように、グルココルチコイド受容体競合アッセイ(Life Technology)を使用して行われた。
【0088】
図7の結果は、より長いリンカーO6(PBI−4025)およびカルバメートリンカーがグルココルチコイド受容体に対して最高の親和性を有したことを示す。
【0089】
d)上記の結果に基づき、グルココルチコイド受容体に対して最高の結合効率をもたらしたO6(PBI−4025)およびカルバメート(PBI−4980)の2つのリンカーは、生細胞からNanoLuc:GRを特異的にプルダウンするその能力に関して比較された。HEK293細胞を平板培養し、PEIを使用して、96ウェルプレートのウェル中で、NanoLuc:GR融合物をコードするプラスミドDNAをトランスフェクトした。DNAを、プロモーターを含まないキャリアDNAプラスミド(pCI neoI)を用いて、1:50でウェル当り80ngの総DNAの最終濃度に希釈した。トランスフェクションの24時間後、さらに24時間、細胞を血清欠乏させ、次いで、10μMのPBI−4980またはPBI−4025の最終濃度でインキュベートし、一方、対照細胞は、共役された薬物で処理されなかった。2時間の平衡結合後、培地を除去し、細胞をPBSで直ちに洗浄し、10分間、洗剤ベースの溶解緩衝液に溶解した。次いで、細胞溶解物を、0.5μlの沈降常磁性HaloTag(登録商標)タンパク質ビーズを含む96ウェルプレートのウェルに移し、振盪しながら45分間インキュベートした。結合後、未結合の画分を除去し、HaloTag(登録商標)タンパク質常磁性ビーズを3×洗浄し、60分間、150μMの非共役デキサメタゾンと競合させることにより、捕捉したNanoLuc融合物をビーズから特異的に解放した。解放されたNanoLuc:GR(+PBI−4980または+PBI−4025)および対照試料は、NanoGlo(登録商標)アッセイ試薬(Promega Corp)を使用することにより検出された。
【0090】
図8の結果は、両リンカーは類似する長さを有し、PBI−4025はグルココルチコイド受容体に対して高い親和性を有するが、PBI−4980(カルバメート)を介したNluc:GR融合物プルダウンの効率は、PBI−4025を介するより非常に高いことを示し、よって、プルダウン用途におけるカルバメートリンカーの利点を示す。この効率的なプルダウンは、おそらく、HaloTag(登録商標)タンパク質に対するカルバメートリンカーの高結合効率による。
【0091】
実施例5
PBI−4848メトトレキサート−O2クロロアルカン
【化3】
【0092】
50mgのメトトレキサート水和物を、3mLのDMF中で攪拌し、EDAC(63mg、330umol)およびトリエチルアミン(77uL、550umol)で処理した。10分後、2−(2−((6−クロロヘキシル)オキシ)エトキシ)エチルアミン塩酸塩(Promega 21.5mg、83umol)を添加した。3時間後、分取HPLC(0.1%の水性ギ酸中2−>50%のMeCN)により、生成物を単離した。適切な画分を濃縮し、凍結乾燥し、オレンジ色の固体を得た。M+Hの計算値:660.3、実測値660.7。
【0093】
PBI−4849メトトレキサート−O4クロロアルカン
【化4】
【0094】
18−クロロ−3,6,9,12−テトラオキサオクタデカン−1−アミン塩酸塩(Promega)を使用して、PBI−4848に類似する様式でPBI4849を合成し、黄色の固体を得た。M+Hの計算値:749.3、実測値748.9。
【0095】
PBI−4850メトトレキサート−O6クロロアルカン
【化5】
【0096】
24−クロロ−3,6,9,12,15,18−ヘキサオキサオクタデカン−1−アミン塩酸塩(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Benink et al.;BioTechniques 2009,47,769)を使用して、PBI−4848に類似する様式でPBI−4850を合成し、黄色の固体を得た。M+Hの計算値:837.4、実測値837.4。
【0097】
メトトレキサートペンチルアミン中間体
メトトレキサート水和物(50mg、110umol)、EDAC(63mg、330umol)、および2mLのDMF中のトリエチルアミン(77uL、550umol)の混合物に、N−Bocカダベリン(22mg、110umol)を添加した。反応を90分間攪拌し、次いで、2mLの1NのHClでクエンチし、水で希釈し、分取HPLC(0.1%の水性ギ酸中20−>50%のMeCN)にかけた。適切な画分を濃縮し、凍結乾燥し、所望の生成物を得た。M+Hの計算値:639.3、実測値639.5。
【0098】
メトトレキサートN−Boc−カダベリン付加物(24mg、38umol)を、室温で、ジオキサン(0.5mL)中4MのHClで処理した。反応の完了時、減圧下で溶媒を除去し、得られた残留物をジエチルエーテルと共に攪拌し、黄色の沈殿物を形成し、これは遠心分離により単離された。塩酸塩はさらに特徴付けされることなく使用された。
【0099】
PBI−5015メトトレキサートカルバメートクロロアルカン
【化6】
【0100】
メトトレキサート水和物ペンチルアミンHCl塩(8mg、14umol)を、2−(2−(2−(((4−ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)エトキシ)エトキシ)エチル(2−(2−((6−クロロヘキシル)オキシ)エトキシ)エチルカルバメート(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Hong et al.Am J Transl Res 2011,3,392)(12mg、21umol)および2mLのDMF中のトリエチルアミンと混合した。2時間後、1NのHClを添加して反応をクエンチし、0.1%の水性ギ酸中10−>50%のMeCNで溶出する分取HPLCにより生成物を単離した。濃縮後、得られた黄色の固体をDCMに取り込み、飽和NaHCO
3で洗浄した。有機層を蒸発させ、1.9mgの黄色の固体を得た。M+Hの計算値:964.5、実測値964.5。
【0102】
PBI−4025:デキサメタゾン酸(35mg、9.26x10
-5mol)およびPyBOP(53mg、0.1mmol)を1mlの乾燥DMFに溶解した。1
Mの1−アミノ−N−(2−(2−((6−クロロヘキシル)オキシ)エトキシ)エチル)−3,6,9,12−テトラオキサペンタデカン−15−アミド(140δl、0.14mmol)のHCl塩の溶液を、反応混合物に添加し、続いて、5当量のジイソプロピルエチルアミンDIPEA(62δl、0.37mmol)を添加した。反応を3時間攪拌し、この際、揮発性試薬を真空下で蒸発させた。溶離剤としてジクロロメタンおよびメタノールを使用して、残留物をカラムクロマトグラフィーにかけた。白色の固体を単離した(53mg、69%)。C
42H
69ClFN
2O
11+(M
+H
+)のMS(ESI)m/z計算値:831.5、(実測値)831.3。
【化8】
【0103】
PBI−4026:デキサメタゾン酸(16mg、4.23x10
-5mol)およびPyBOP(24mg、4.65x10
-5mol)を1mlの乾燥DMFに溶解した。0.44Mの24−クロロ−3,6,9,12,15,18−ヘキサオキサテトラコサン−1−アミン(144δl、6.35x10
-5mol)のHCl塩の溶液を、反応混合物に添加し、続いて、4当量のDIPEA(24δl、0.17mmol)を添加した。反応を3時間攪拌し、この際、揮発性試薬を真空下で蒸発させた。溶離剤としてジクロロメタンおよびメタノールを使用して、残留物をカラムクロマトグラフィーにかけた。白色の固体を単離した(32mg、定量的)。C
39H
64ClFNO
10+(M
+H
+)のMS(ESI)m/z計算値:760.4、(実測値)760.3。
【化9】
【0104】
PBI 4027:デキサメタゾン酸(25mg、6.5x10
-5mol)、PyBOP(37mg、7.15x10
-5mol)、および18−クロロ−3,6,9,12−テトラオキサオクタデカン−1−塩化アミニウム(34mg、9.76x10
-5mol)を、1mlの乾燥DMFに溶解した。次いで、4当量のDIPEA(45δl、0.26mmol)を添加した。反応を3時間攪拌し、この際、揮発性試薬を真空下で蒸発させた。溶離剤としてジクロロメタンおよびメタノールを使用して、残留物をカラムクロマトグラフィーにかけた。白色の固体を単離した(44mg、定量的)。C
35H
56ClFNO
8+(M
+H
+)のMS(ESI)m/z計算値:672.4、(実測値)672.4。
【0105】
実施例7
BIRB
*O2クロロアルカン(PBI−4832)
【化10】
【0106】
1−(1−(4−((2−アミノアセトアミド)メチル)フェニル)−3−tert−ブチル−1H−ピラゾール−5−イル)−3−フェニル尿素(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Tecle et al,Chem Biol Drug Des 2009,74,547−559)(15mg、28umol)を、HaloTag(登録商標)スクシンイミジルエステル(O2)リガンド(Promega,12mg、28umol)および2mLのDMF中のジイソプロピルエチルアミン(0.01mL、0.06mmol)と混合した。1時間後、1%のTFAを添加して反応をクエンチし、0.1%の水性トリフルオロ酢酸中5−>100%のMeCNで溶出する分取HPLCにより生成物を単離し、12mgの白色の固体を得た。M+の計算値:726、実測値726。
【0107】
実施例8
ダサチニブペンチルアミン
ダサチニブ(50mg、102umol)を、p−ニトロフェニルクロロホルメート(28mg、139umol、1.36equiv)および1.8mLのDMF:THF(2:1)中20uLのTEAと混合した。反応を一晩攪拌し、次いで、カダベリン(209mg、2mmol、20equiv)を添加した。2時間攪拌した後、反応をAcOHで中和し、0.1%の水性TFA中20−>60%のMeCNの勾配を使用して、分取HPLCにより所望の生成物を単離した。適切な画分を濃縮し、凍結乾燥し、所望の生成物を得た。
【0108】
ダサチニブビス−カルバメート
【化11】
【0109】
ダサチニブペンチルアミントリフルオロ酢酸塩(43mg、59umol)およびDMF中のトリエチルアミン(12mg、118umol)の攪拌の溶液に、2−(2−(2−(((4−ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)エトキシ)エトキシ)エチル(2−(2−((6−クロロヘキシル)オキシ)エトキシ)エチルカルバメート(37mg、65umol)のDMF溶液を添加した。反応を室温で75分間攪拌し、TFAで中和し、0.1%の水性TFA中25−>100%のMeCNの溶出勾配の分取HPLCにかけた。濃縮および凍結乾燥により、フィルムとして所望の生成物を得た(39mg)。
【0110】
ダサチニブモノカルバメート
【化12】
【0111】
ダサチニブ(15mg、31umol)を、p−ニトロフェニルクロロホルメート(8.4mg、42umol、1.36equiv)および1.8mLのDMF:THF(2:1)中10uLのTEAと混合した。反応を一晩攪拌し、次いで、DMF中の溶液として2−(2−((6−クロロヘキシル)オキシ)エトキシ)エタン−1−アミン塩酸塩(32mg、4equiv)を添加した。追加のTEAも添加し、再度、反応を一晩攪拌した。分取HPLC(0.1%の水性TFA中20−>60%のMeCN)により、無色の残留物として所望の生成物を得た(6.7mg、30%収率)。
【0112】
実施例9
Boc保護SAHAアミン
7−トリチルオキシカルバモイルヘプタン酸(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Schaefer et al.Bioorg Med Chem Lett 2008,16,2011−2033)(200mg、463umol)を、4−[(N−Boc)アミノメチル]アニリン(113mg、510umol)、HBTU(352mg、927umol)、および3mLのDMF中のトリエチルアミン(194uL、1.4mmol)と混合した。反応を一晩攪拌し、次いで、セライト上に吸着させた。ヘプタン中0−>100%のEtOAcの勾配で溶出するカラムクロマトグラフィーにより生成物を得た。M+Hの計算値:635.3、実測値635.9。
【0113】
SAHAアミン
スベロイル(4−[(N−Boc)アミノメチル]アニリド)ヒドロキサム酸(286mg、450mmol)を、0.25mLのTISに添加された2mLのDCMに溶解した。次いで、トリフルオロ酢酸(0.9mL)を添加し、反応を30分間攪拌した。減圧下で溶媒を除去し、粗反応生成物を、分取HPLCにより精製するか、またはさらに精製することなく使用した。
【0114】
PBI−5040 SAHA−カルバメート
【化13】
【0115】
1滴のTEAを含む1mLのDMF中でスベロイル[4−(アミノメチル)アニリド]ヒドロキサム酸TFA塩(9mg、22umol)を攪拌した。次いで、0.5mLのDMF中の13mgの2−(2−(2−(((4−ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)エトキシ)エトキシ)エチル(2−(2−((6−クロロヘキシル)オキシ)エトキシ)エチルカルバメート(23umol)を添加した。90分後、H
2Oを添加して反応をクエンチし、少量のTFAで酸性化し、0.1%の水性TFA中5−>60%のMeCNで溶出する分取HPLCにより所望の生成物を単離した。M+Hの計算値:719.4、実測値719。
【0116】
Schaefer,S.;Saunders,L.;Eliseeva,E.;Velena,A.;Jung,M.;Schwienhorst,A.;Strasser A.;Dickmanns,A.;Fiener,R.;Schlimme,S.;Sippl,W.;Verdin,E.;および参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Jung,M.Bioorg Med Chem Lett 2008,16,2011−2033。
【0117】
実施例10
PBI−5231 SAHAアミド
【化14】
【0118】
THF(10mL)中の4−(アミノメチル)アニリン(1.1g、9mmol)の溶液に、THF(10mL)中の無水コハク酸(0.9g、9mmol)の溶液をゆっくり(5分かけて)添加した。追加完了時、真空下で溶媒を除去し、シリカゲルクロマトグラフィー(0→20%のMeOH/DCM)により反応混合物を精製し、白色の固体として0.16g(8%収率)の酸SL_1305_63を得た。
1H NMR(300 MHz,CDCl
3)δ 13.03-10.42(m,1H),8.11(s,1H),6.87(d,J=8.1,2H),6.47(d,J=8.1,2H),4.92(s,2H),4.04(d,J=5.4,2H),2.40(d,J=6.0,2H),2.32(d,J=6.3,2H);C
11H
15N
2O
3+[M+H]
+のHRMS(SI)計算値223.11、実測値223.20。
【0119】
MeOH−THF(250mL,3:2)中のSL_1305_63(160mg、0.72mmol)の溶液に、TMS−ジアゾメタン(1mL、ヘキサン中1Mの溶液)を添加した。添加完了後、得られた黄色の溶液を22℃で0.5時間放置した。シリカゲルクロマトグラフィー(0→10%のMeOH/DCM)により反応混合物を精製し、透明な油状物として139mg(82%収率)のエステルSL_1305_69を得た。
1H NMR(300 MHz,CDCl
3)δ 7.07(d,J=8.6,2H),6.65(d,J=8.6,2H),5.76(br.s,1H),4.30(d,J=5.1,2H),3.68(s,3H),2.79-2.57(m,2H),2.57-2.35(m,2H)。
【0120】
DMF(5mL)中のSL_1305−69(139mg、589μmol)の溶液に、HATU(270mg、711μmol)、DMF(5mL)中のNEt
3(400μL、2.86mmol)、続いて、DMF(5mL)中の8−オキソ−8−((トリチルオキシ)アミノ)オクタン酸(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、J.Med.Chem.2002,45,3296−3309)(255mg、592μmol)の溶液を添加した。透明な黄色の反応物を、22℃で17時間攪拌し、この時点で、LCMS分析は開始材料の完全な消費を示した。反応を真空中で濃縮し、残留物を100mLのDCMに溶解し、水(100mL)で洗浄した。水層をDCM(2×50mL)で抽出し、有機相を混合し、Na
2SO
4で乾燥させ、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(0→10%のMeOH/DCM)により精製し、淡褐色の油状物として260mg(65%収率)のアニリドSL_1305−73を得た。C
39H
44N
3O
6+[M+H]
+のHRMS(SI)計算値650.32、実測値650.25。
【0121】
MeOH(15mL)中のSL_1305−73(260mg、400μmol)の溶液に、H
2O(1.5mL)中のKOH(112mg、2.00mmol)を添加した。得られた溶液を、マイクロ波で、30分間65℃で加熱し、この時点で、LCMS分析は、開始材料の完全な消費を示した。反応物を水性クエン酸(30%、50mL)で洗浄し、水層をDCM(3×50mL)で抽出した。有機層を混合し、Na
2SO
4で乾燥させ、濃縮し、白色の固体として250mg(98%収率)のSL_1305_75を得、これは、さらに精製することなく次のステップに使用された。C
38H
42N
3O
6+[M+H]
+のHRMS(SI)計算値636.31、実測値636.16。
【0122】
DMF(0.7mL)中のSL_1305_75(6.7mg、10μmol)の溶液に、DMF(0.6mL)中のHATU(8.0mg、21μmol)、続いて、Et
3N(7μL、50μmol)を添加した。得られた溶液を、DMF(0.5mL)中のクロロアルカン(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、BioTechniques 2009,47,769−774)(4.2、11μmol)溶液と混合し、22℃で2時間攪拌した。反応物を真空中で濃縮し、残留物を分取HPLC(45分かけて3→95%のMeCN/(H
2O、0.1%のTFA))により精製し、白色の固体として3mg(30%収率)のSL_1305_79を得た。C
56H
78ClN
4O
11+[M+H]
+のHRMS(SI)計算値1017.54、実測値1017.51。
【0123】
DCM(5mL)中のSL_1305_79(1.5mg、1.5μmol)の溶液に、1滴のトリイソプロピルシラン(TiPS)、続いて、トリフルオロ酢酸(TFA、1mL)を添加した。得られた溶液を22℃で5分間放置し、この時点で、LCMS分析は、開始材料の完全な消費を示した。反応混合物を濃縮し、分取HPLC(45分かけて3→95%のMeCN/(H
2O、0.1%のTFA))により精製し、白色の固体として1mg(87%収率)のPBI−5231を得た。C
37H
64ClN
4O
11+[M+H]
+のHRMS(SI)計算値775.43、実測値775.47。
参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、J.Med.Chem.2002,45,3296−3309。
参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、BioTechniques 2009,47,769−774。
【0124】
実施例11
以下の実施例は、細胞透過性、HaloTagに対する結合速度論、およびクロロアルカン修飾薬物を介した細胞からHaloTag(登録商標)ビーズ上への標的プルダウンに関するカルバメート−クロロアルカンリンカーの利点を示す。この実施例では、修飾されたBIRB796−クロロアルカン共役体PBI−4834(カルバメート−クロロアルカンリンカー)およびPBI−4832(O2クロロアルカンリンカー)は、細胞および溶解物においてHaloTagに対するそれらの結合速度論に関して試験された。
【0125】
a)細胞溶解物におけるHaloTag(登録商標)タンパク質に対する結合速度論は、1μMの最終濃度で、修飾されたBIRB796−クロロアルカン共役体を、HaloTag(登録商標)タンパク質を発現する細胞からの溶解物に添加することにより測定された。結合の0〜60分後、反応を1μM蛍光HaloTag(登録商標)リガンド(Promega Corporation)により追跡した。未結合のHaloTag(登録商標)タンパク質は、蛍光HaloTag(登録商標)リガンドへの結合を通して検出され、その後に、SDS−PAGEゲルの分析、および蛍光ゲルスキャナの検出が続いた。
【0126】
図10Aの結果は、02リンカー(PBI−4832)およびカルバメートリンカー(PBI−4834)の両方がHaloTag(登録商標)タンパク質に対して迅速な結合速度論を提供したことを示す。加えて、プルダウン用途に重要であり得るカルバメートリンカーの長さは、HaloTag(登録商標)タンパク質に対する結合速度論に影響を及ぼさなかった。
【0127】
b)細胞におけるHaloTag(登録商標)タンパク質に対する結合速度論は、10μMの最終濃度で、修飾されたBIRB796−クロロアルカン共役体を、HaloTag(登録商標)タンパク質を発現する細胞に添加することにより測定された。結合の0〜60分後、5μMの蛍光HaloTag(登録商標)リガンドにより反応を追跡した。未結合のHaloTag(登録商標)タンパク質は、蛍光HaloTag(登録商標)リガンドへの結合を通して検出され、その後に、細胞溶解、SDS−PAGEの分析、および蛍光ゲルスキャナの検出が続いた。
【0128】
図10Bの結果は、カルバメートリンカー(PBI−4834)が最高の細胞透過性/HaloTag(登録商標)タンパク質に対する結合速度論を有したことを示す。これらの結果は、カルバメートリンカーは非常に長いが、尚も良好な細胞透過性、およびHaloTagに対する結合速度論を提供することを示す。
【0129】
c)O2(PBI−4832)およびカルバメート(PBI−4834)の2つのリンカーは、生細胞からNluc:p38αを特異的にプルダウンするそれらの能力に関しても比較された。NanoLuc−p38α融合物をコードするプラスミドDNAを使用して、HEK293細胞をトランスフェクトした(96ウェル形式でトランスフェクション)。DNAを、プロモーターを含まないキャリアDNAプラスミド(PCI neo)を用いて、1:10でウェル当り80ngの総DNAの最終濃度に希釈した。トランスフェクションの24時間後、細胞は、10μMのPBI−4832またはPBI−4834の最終濃度でインキュベートされ、一方、対照細胞は、共役された薬物で処理されなかった。2時間の平衡結合後、培地を除去し、細胞をPBSで直ちに洗浄し、10分間、細胞を洗剤ベースの溶解緩衝液に溶解した。次いで、細胞溶解物を、0.5μlの沈降常磁性HaloTag(登録商標)タンパク質ビーズ(Promega Corporation)を含む96ウェルプレートに移し、振盪しながら15分間インキュベートした。結合後、未結合の画分を除去し、HaloTag(登録商標)タンパク質常磁性ビーズを3×洗浄し、15分間、150μMの非共役BIRB796と競合させることにより、捕捉したNanoLuc−p38α融合物をビーズから特異的に解放した。実験の解放されたNanoLuc−p38α融合物(+PBI−4834または+PBI−4832)および対照試料は、NanoGlo(登録商標)試薬(Promega Corporation)により検出された。
【0130】
図10Cの結果は、PBI−4834のみがNluc:p38 p38α融合物を効率的にプルダウンしたことを示し、よって、プルダウン用途におけるカルバメートリンカーの利点を示す。
【0131】
実施例12
以下の実験は、細胞透過性、およびHaloTag(登録商標)タンパク質に対する結合速度論に関するカルバメートクロロアルカンリンカーの利点を示す。
【0132】
この実施例では、SAHAクロロアルカン共役体PBI−5040(カルバメートクロロアルカンリンカー)およびPBI−5231(O6クロロアルカンリンカー)は、細胞および溶解物においてHaloTag(登録商標)タンパク質に対するそれらの結合速度論に関して試験された。
【0133】
a)細胞溶解物におけるHaloTag(登録商標)タンパク質に対する結合速度論は、1μMの最終濃度で、SAHA−クロロアルカン共役体を、HaloTag(登録商標)タンパク質を発現する細胞からの溶解物に添加することにより測定された。結合の0〜60分後、反応を1μM蛍光HaloTag(登録商標)リガンドにより追跡した。未結合のHaloTag(登録商標)タンパク質は、蛍光HaloTag(登録商標)リガンドへの結合を通して検出され、その後に、SDS−PAGEゲルの分析、および蛍光ゲルスキャナの検出が続いた。
【0134】
図11Aの結果は、カルバメートリンカー(PBI−5040)がHaloTag(登録商標)タンパク質に対して非常に迅速な結合速度論を提供したことを示す。
【0135】
b)細胞におけるHaloTag(登録商標)タンパク質に対する結合速度論は、SAHA−クロロアルカン共役体を、細胞質または核に局在化されるHaloTag(登録商標)タンパク質を発現する細胞(10μMの最終濃度)に添加することにより測定された。結合の0〜180分後、反応は、5μMの蛍光HaloTag(登録商標)リガンドにより追跡された。未結合のHaloTag(登録商標)タンパク質は、蛍光HaloTag(登録商標)リガンドへの結合を通して検出され、その後に、細胞溶解、SDS−PAGEの分析、および蛍光ゲルスキャナの検出が続いた。
【0136】
図11Bの結果は、カルバメートリンカー(PBI−5040)が非常に迅速な細胞透過性/HaloTag(登録商標)タンパク質に対する結合速度論を有したことを示す。これらの結果は、カルバメートリンカーおよびO6リンカーは類似する長さであるが、カルバメートリンカーは良好な細胞透過性、およびHaloTagに対する結合速度論を提供したことを示す。
【0137】
実施例13
以下の実施例は、細胞透過性、HaloTag(登録商標)タンパク質に対する結合速度論、およびクロロアルカン修飾薬物を介した細胞からHaloTag(登録商標)タンパク質ビーズ上への標的プルダウンに関するクロロアルカンリンカーにおけるカルバメート基の利点を示す。この実施例では、ダサチニブクロロアルカン共役体PBI−5270(ビスカルバメートクロロアルカンリンカー)およびPBI−5590(モノカルバメートクロロアルカンリンカー)は、細胞および溶解物においてHaloTag(登録商標)タンパク質に対するそれらの結合速度論に関して試験された。
【0138】
a)細胞溶解物におけるHaloTag(登録商標)タンパク質に対する結合速度論は、ダサチニブ−クロロアルカン共役体を、HaloTag(登録商標)タンパク質を発現する細胞からの溶解物(1μMの最終濃度)に添加することにより測定された。結合の0〜60分後、反応は、1μMの蛍光HaloTag(登録商標)リガンドにより追跡された。未結合のHaloTag(登録商標)タンパク質は、蛍光HaloTag(登録商標)リガンドへの結合を通して検出され、その後に、SDS−PAGEゲルの分析、および蛍光ゲルスキャナの検出が続いた。
【0139】
図12Aの結果は、モノカルバメートリンカー(PBI−5590)がHaloTagタンパク質に対して迅速な結合速度論を提供したことを示す。
【0140】
b)細胞におけるHaloTag(登録商標)タンパク質に対する結合速度論は、ダサチニブ−クロロアルカン共役体(10μMの最終濃度)を、細胞質または核に局在化されるHaloTag(登録商標)タンパク質を発現する細胞に添加することにより測定された。結合の0〜90分後、反応は、5μMの蛍光HaloTag(登録商標)リガンドにより追跡された。未結合のHaloTag(登録商標)タンパク質は、蛍光HaloTag(登録商標)リガンドへの結合を通して検出され、その後に、細胞溶解、SDS−PAGEの分析、および蛍光ゲルスキャナの検出が続いた。
【0141】
図12Bの結果は、両カルバメートリンカーが良好な細胞透過性、およびHaloTag(登録商標)タンパク質に対する結合速度論を提供したことを示し、よって、クロロアルカンリンカーにおけるカルバメート基の利点を示す。
【0142】
c)2つのカルバメートリンカーは、生細胞からABL−NanoLuc(登録商標)融合タンパク質を特異的にプルダウンするそれらの能力に関しても比較された。ABL−NanoLuc(登録商標)融合物をコードするプラスミドDNAを使用して、HEK293細胞をトランスフェクトした(トランスフェクションは96ウェル形式で行われた)。DNAを、プロモーターを含まないキャリアDNAプラスミド(pCI neoI;Promega Corporation)を用いて、1:100でウェル当り80ngの総DNAの最終濃度に希釈した。トランスフェクションの24時間後、細胞は、20μMのPBI−5270またはPBI−5590の最終濃度でインキュベートされ、一方、対照細胞は、共役された薬物で処理されなかった。2時間の平衡結合後、培地を除去し、細胞をPBSで直ちに洗浄し、10分間、細胞を洗剤ベースの溶解緩衝液に溶解した。次いで、細胞溶解物を、0.5μlの沈降常磁性HaloTag(登録商標)タンパク質ビーズを含む96ウェルプレートに移し、振盪しながら15分間インキュベートした。結合後、未結合の画分を除去し、HaloTag(登録商標)タンパク質常磁性ビーズを3×洗浄し、15分間、400μMの非共役ダサチニブと競合させることにより、捕捉したABL−NanoLuc(登録商標)融合物をビーズから特異的に解放した。実験の解放されたABL−NanoLuc(登録商標)融合物(+PBI−5270または+PBI−5590)および対照試料は、NanoGlo(登録商標)試薬により検出された。
【0143】
図12Cの結果は、PBI−5270のみがABL:NanoLuc(登録商標)を効率的にプルダウンしたことを示し、よって、リンカーの長さがプルダウンの効率に非常に重要であることを示す。モノカルバメートの迅速な結合速度論に基づき、モノカルバメートのリンカーの長さの伸長は、良好なプルダウンを提供すると予測される。
【0144】
実施例14
以下の実施例は、薬物透過性および効力に対するクロロアルカン修飾の最小限の影響を示す。
【0145】
HEK293細胞を、1×10
5細胞/mlで、96ウェルプレート内で平板培養し、24時間後、培地を無血清培地に交換した。K562細胞を、2×10
5細胞/mlで、無血清培地(96ウェルプレート)内で平板培養した。細胞をSAHAまたはPBI−5040(SAHA−クロロアルカン)の系列希釈で2時間処理し、次いで、非溶解性HDAC−Glo(商標)I/IIアッセイ(Promega Corporation).を使用して、細胞内HDAC活性に関して試験した。
【0146】
図13の結果は、SAHAおよびPBI−5040によるHDAC活性の類似する阻害を示す。クロロアルカン修飾によるSAHA効力の約2倍の減少は、細胞透過性または効力に対するクロロアルカンの最小限の影響を示す。
【0147】
実施例15
以下の実施例は、低存在量および低親和性標的を含む、細胞からの内因性標的をプルダウンするクロロアルカン共役薬物の能力を示す。
【0148】
K562細胞を、1.66×10
6細胞/mlで、150mmの皿内で平板培養した(皿当り合計5×10
7細胞)。最終濃度の20uMのSAHAクロロアルカン(PBI−5040)を、3つの皿に添加し、一方、3つの対照皿は、共役薬物で処理されなかった。2時間の平衡結合後、培地を除去し、細胞をPBSで直ちに洗浄し、10分間、潜在ベースの溶解緩衝液に溶解し、3000xgで1分間遠心分離した。次いで、透明な溶解物を75ulの沈降常磁性HaloTag(登録商標)タンパク質ビーズに添加し、振盪しながら15分間インキュベートした。結合後、未結合の画分を除去し、HaloTag(登録商標)タンパク質常磁性ビーズを3×洗浄し、60分間、400μMの非共役SAHAと競合させることにより、捕捉した標的をビーズから特異的に解放した。解放された標的は、質量スペクトル分析(
図14B)ならびに抗HDAC1抗体(ABCAM)、抗HDAC2抗体(ABCAM)、抗HDAC6抗体(Millipore)、抗HDAC3抗体(Thermo Fisher)、抗HDAC10(ABCAM)、および抗HDAC8抗体(Rockland)を用いて、ウエスタンブロット分析(
図14A)を受けた。
【0149】
図14の結果は、低親和性標的(HDAC8)および低存在量標的(HDAC3)を含む、SAHAの全ての既知の標的が細胞から特異的にプルダウンされることを示す。PBI5040の高細胞透過性は、核(HDAC1)および細胞質(HDAC6)などの異なる細胞コンパートメントからのタンパク質の効率的なプルダウンも可能にする。
【0150】
本明細書に記載される全ての刊行物および特許は、参照により本明細書に組み込まれる。記載される特徴および実施形態の様々な修正、組換え、および変形が本発明の範囲および趣旨から逸脱しないことは当業者には明らかであろう。特定の実施形態が記載されてきたが、特許請求されるように、本発明はそのような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないことを理解するべきである。実際、関連分野の当業者に明らかである記載されるモードおよび実施形態の様々な修正は、以下の特許請求の範囲内であるものとする。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕式R−L1−M−L2−A−Xの化合物であって、
式中、Rが、官能基であり、L1が、第1のリンカー部分であり、Mが、カルバメート基であり、L2が、第2のリンカー部分であり、Aが、アルキル基であり、Xが、ハロゲンであり、
L2−Aが、6〜18個の直鎖状に結合した原子によってMとXとを分離し、
L1が、2個以上の直鎖状に結合した原子によってRとMとを分離する、化合物。
〔2〕Aが、(CH2)6である、前記〔1〕に記載の化合物。
〔3〕L2−Aが、12個の直鎖状に結合した原子によってMとXとを分離する、前記〔1〕のいずれか一項に記載の化合物。
〔4〕前記官能基が、親和性タグ、フルオロフォア、または固体表面を含む、前記〔1〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔5〕前記官能基が、薬物、薬物化合物、生体分子、または小分子である、前記〔1〕のいずれか一項に記載の化合物。
〔6〕L2が、カルバメート基を含まない、前記〔1〕のいずれか一項に記載の化合物。
〔7〕L2が、直鎖状に結合したCH2およびO基を含む、前記〔1〕のいずれか一項に記載の化合物。
〔8〕L2が、直鎖状に結合したCH2およびO基からなる、前記〔7〕に記載の化合物。
〔9〕L2が、((CH2)2O)xを含み、式中、x=0〜5である、前記〔7〕に記載の化合物。
〔10〕L2が、((CH2)2O)2を含む、前記〔9〕に記載の化合物。
〔11〕L1が、直鎖状に結合したCH2およびO基を含む、前記〔1〕に記載の化合物。
〔12〕L1が、カルバメートを含む、前記〔1〕に記載の化合物。
〔13〕L1が、2〜8個の長さの直鎖状に結合した原子である、前記〔12〕に記載の化合物。
〔14〕L1が、NHCOO−((CH2)2O)xを含み、式中、x=1〜8である、前記〔12〕に記載の化合物。
〔15〕L1が、NHCOO−((CH2)2O)3を含む、前記〔14〕に記載の化合物。
〔16〕L1が、NHCOO−((CH2)2O)3を含み、L2が、((CH2)2O)2を含み、Aが(CH2)6である、前記〔1〕に記載の化合物。
〔17〕前記官能基が、親和性タグ、フルオロフォア、または固体表面を含む、前記〔16〕に記載の化合物。
〔18〕前記官能基が、薬物、薬物化合物、生体分子、または小分子である、前記〔16〕に記載の化合物。
〔19〕L1−M−L2−Aを含むリンカーによって官能基に連結されるタンパク質を含む組成物であって、
式中、L1が、第1のリンカー部分であり、Mが、カルバメート基であり、L2が、第2のリンカー部分であり、Aが、アルキル基であり、
L2−Aが、8〜16個の直鎖状に結合した原子によって前記タンパク質からMを分離し、
L1が、2個以上の直鎖状に結合した原子によって前記官能基とMとを分離する、組成物。
〔20〕前記タンパク質が、変異体デハロゲナーゼを含む、前記〔19〕に記載の組成物。
〔21〕前記タンパク質が、融合タンパク質の一部分である、前記〔19〕に記載の組成物。
〔22〕Aが、(CH2)6である、前記〔19〕に記載の組成物。
〔23〕L2−Aが、12個の直鎖状に結合した原子によって前記タンパク質からMを分離する、前記〔19〕に記載の組成物。
〔24〕前記官能基が、親和性タグ、フルオロフォア、または固体表面を含む、前記〔19〕に記載の組成物。
〔25〕前記官能基が、薬物、薬物化合物、生体分子、または小分子である、前記〔19〕に記載の化合物。
〔26〕L2が、カルバメート基を含まない、前記〔19〕に記載の組成物。
〔27〕L2が、直鎖状に結合したCH2およびO基を含む、前記〔19〕に記載の組成物。
〔28〕L2が、直鎖状に結合したCH2およびO基からなる、前記〔27〕に記載の組成物。
〔29〕L2が、((CH2)2O)xを含み、式中、x=0〜5である、前記〔27〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔30〕L2が、((CH2)2O)2を含む、前記〔29〕に記載の組成物。
〔31〕L1が、直鎖状に結合したCH2およびO基を含む、前記〔19〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔32〕L1が、カルバメートを含む、前記〔19〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔33〕L1が、NHCOO−((CH2)2O)xを含み、式中、x=1〜8である、前記〔32〕に記載の組成物。
〔34〕L1が、NHCOO−((CH2)2O)3を含む、前記〔33〕に記載の組成物。
〔35〕L1が、2〜8個の長さの直鎖状に結合した原子である、前記〔33〕に記載の組成物。
〔36〕L1が、NHCOO−((CH2)2O)3を含み、L2が、((CH2)2O)2を含み、Aが、(CH2)6である、前記〔19〕に記載の組成物。
〔37〕前記官能基が、親和性タグ、フルオロフォア、または固体表面を含む、前記〔36〕に記載の組成物。
〔38〕前記官能基が、薬物、薬物化合物、生体分子、または小分子である、前記〔32〕のいずれか一項に記載の化合物。
〔39〕対象とする標的分子を特定する方法であって、a)試料を、前記〔1〕〜〔38〕のうちのいずれか一項に記載の基質と接触させることであって、前記官能基が、前記対象とする化合物である、接触させることと、b)前記試料および基質を、変異体デハロゲナーゼを含む固体支持体と接触させることと、c)前記基質に結合された前記対象とする分子を特定することと、を含む、方法。
〔40〕前記対象とする化合物が、薬物、薬物化合物、生体分子、または小分子である、前記〔39〕に記載の方法。
〔41〕前記試料が、細胞または細胞溶解物である、前記〔39〕に記載の方法。
〔42〕前記対象とする分子が、融合タンパク質である、前記〔39〕に記載の方法。
〔43〕前記融合タンパク質が、レポータータンパク質を含む、前記〔42〕に記載の方法。
〔44〕変異体デハロゲナーゼの存在または量を検出または決定する方法であって、a)変異体デハロゲナーゼを、前記〔1〕に記載の化合物を含む基質と接触させることであって、前記変異体デハロゲナーゼが、対応する野生型デハロゲナーゼと比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、接触させることと、b)Rの存在もしくは量を検出または決定し、それにより前記変異体デハロゲナーゼの存在または量を検出または決定することと、を含む、方法。
〔45〕細胞を標識する方法であって、変異体デハロゲナーゼを含む細胞を、前記〔1〕に記載の化合物を含むデハロゲナーゼ基質と接触させることであって、前記変異体デハロゲナーゼが、対応する野生型デハロゲナーゼと比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、前記少なくとも1つのアミノ酸置換が、前記対応する野生型デハロゲナーゼと前記基質との間に形成される結合よりも安定した前記基質との結合を形成する前記変異体デハロゲナーゼをもたらし、それにより前記細胞をRで標識する、接触させることと、を含む、方法。
〔46〕細胞中の分子の存在または量を検出するための方法であって、a)変異体デハロゲナーゼを含む細胞を、前記〔1〕に記載の化合物を含む基質と接触させることであって、前記変異体デハロゲナーゼが、対応する野生型デハロゲナーゼと比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、前記少なくとも1つのアミノ酸置換が、前記対応する野生型デハロゲナーゼと前記基質との間に形成される結合よりも安定した前記基質との結合を形成する前記変異体デハロゲナーゼをもたらす、接触させることと、b)前記細胞中のRの存在または量を検出または決定することと、を含む、方法。
〔47〕対象とする分子を固定化単離する方法であって、(a)前記〔1〕に記載の化合物を含む基質を提示する固体支持体を、(b)(i)前記基質との相互作用時に前記基質と共有結合を形成する変異体デハロゲナーゼと、(ii)前記対象とする分子に結合されるタンパク質と、を含む融合タンパク質と接触させることを含む、方法。
〔48〕対象とするタンパク質を固定化する方法であって、(a)前記〔1〕に記載の基質を含む固体支持体を、(b)(i)前記基質との相互作用時に前記基質と共有結合を形成する変異体デハロゲナーゼと、(ii)対象とするタンパク質との融合物と接触させることを含む、方法。
〔49〕前記少なくとも1つのアミノ酸置換が、前記対応する野生型デハロゲナーゼと前記基質との間に形成される結合よりも安定した前記基質との結合を形成する前記変異体デハロゲナーゼをもたらし、前記変異体デハロゲナーゼにおける少なくとも1つのアミノ酸置換が、前記対応する野生型デハロゲナーゼと前記基質との間に形成された前記結合を切断する水分子の活性化に関連する前記対応する野生型デハロゲナーゼのアミノ酸残基での置換、または前記基質とエステル中間体を形成する前記対応する野生型デハロゲナーゼのアミノ酸残基での置換である、前記〔39〕〜〔48〕のいずれか一項に記載の方法。
〔50〕前記〔1〕に記載の化合物を調製するための方法であって、式R−Yの化合物を、式Z−L1−M−L2−A−Xの化合物とカップリングすることを含み、式中、YおよびZが、反応してR−を−リンカー−L1−M−L2−A−Xに連結することができる基である、方法。
〔51〕R−Yが、式Rの化合物の活性化エステルであり、Zが、前記活性化エステルと反応してアミド結合を形成するのに好適なアミンである、前記〔50〕に記載の方法。
〔52〕前記〔1〕に記載の基質を含む、細胞。