特許第6604946号(P6604946)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6604946カプセルを含むフィルターを持つ喫煙物品
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  • 特許6604946-カプセルを含むフィルターを持つ喫煙物品 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6604946
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】カプセルを含むフィルターを持つ喫煙物品
(51)【国際特許分類】
   A24D 3/04 20060101AFI20191031BHJP
   A24D 3/06 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   A24D3/04
   A24D3/06
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-534234(P2016-534234)
(86)(22)【出願日】2014年12月18日
(65)【公表番号】特表2017-503477(P2017-503477A)
(43)【公表日】2017年2月2日
(86)【国際出願番号】EP2014078454
(87)【国際公開番号】WO2015091792
(87)【国際公開日】20150625
【審査請求日】2017年12月4日
(31)【優先権主張番号】13198919.6
(32)【優先日】2013年12月20日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ジョーディル イヴ
(72)【発明者】
【氏名】キュルスタイナー チャールズ
【審査官】 岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−526266(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/187245(WO,A1)
【文献】 特開2001−152025(JP,A)
【文献】 特開平11−147708(JP,A)
【文献】 特表2010−505423(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/011312(WO,A1)
【文献】 特表2005−525795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24D 3/04
A24D 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
喫煙物品であって、
エアロゾル発生基体と、
粒子状材料で少なくとも部分的に充填されたくぼみを備え、前記粒子状材料によって少なくとも部分的に囲まれた液体風味剤の壊れやすいカプセルを含むマウスピースであって、前記粒子状材料が少なくとも一つの吸収材材料を含み、前記マウスピース内の前記カプセルを壊して前記液体風味剤を放出するために必要な力が前記カプセルの固有破裂強度の3倍未満である、前記マウスピースと、
を備え、
前記粒子状材料の硬度が、ASTM D3802に従って実施されるボールペン硬度試験で測定された時に少なくとも90%であり、前記少なくとも一つの吸収材材料が総空孔容積を持ち、前記吸収材材料の前記総空孔容積の少なくとも30パーセントが約2nm〜約50nmの範囲の空孔サイズによって提供される、喫煙物品。
【請求項2】
前記壊れやすいカプセルが少なくとも10ニュートンの固有破裂強度を持つ、請求項1に記載の喫煙物品。
【請求項3】
前記壊れやすいカプセルが少なくとも25ニュートンの固有破裂強度を持つ、請求項1または2に記載の喫煙物品。
【請求項4】
前記マウスピース内の前記カプセルを壊して前記液体風味剤を放出するために必要な力が50ニュートン未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の喫煙物品。
【請求項5】
前記粒子状材料が、前記粒子の少なくとも95%が12〜20メッシュに収まるようなメッシュサイズを持つ、請求項1〜4のいずれか1項に記載の喫煙物品。
【請求項6】
前記粒子状材料の数平均粒子サイズが、前記壊れやすいカプセルの最大直径の半分未満である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の喫煙物品。
【請求項7】
前記少なくとも一つの吸収材材料のBET表面積が1500平方メートル/グラム未満である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の喫煙物品。
【請求項8】
前記粒子状材料が少なくとも0.3グラム/立方センチメートルのかさ密度を持つ、請求項1〜7のいずれか1項に記載の喫煙物品。
【請求項9】
前記マウスピースの長軸方向での前記くぼみの長さが、前記壊れやすいカプセルの前記最大直径よりも少なくとも約1.5mm大きい、請求項1〜8のいずれか1項に記載の喫煙物品。
【請求項10】
前記壊れやすいカプセルが前記液体風味剤をカプセル化する外側シェルを備え、前記外側シェルが少なくとも30ミクロンの厚さを持つ、請求項1〜9のいずれか1項に記載の喫煙物品。
【請求項11】
前記マウスピースが口側の端フィルターセグメントおよびロッド端フィルターセグメントを備え、前記くぼみが前記口側の端フィルターセグメントと前記ロッド端フィルターセグメントの間に画定される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の喫煙物品。
【請求項12】
喫煙物品のためのフィルターであって、前記フィルターが粒子状材料で少なくとも部分的に充填されたくぼみを備え、前記粒子状材料によって少なくとも部分的に囲まれた液体風味剤の壊れやすいカプセルを含み、前記粒子状材料が少なくとも一つの吸収材材料を含み、前記フィルター内の前記カプセルを壊して前記液体風味剤を放出するために必要な力が前記カプセルの固有破裂強度の3倍未満であり、
前記粒子状材料の硬度が、ASTM D3802に従って実施されるボールペン硬度試験で測定された時に少なくとも90%であり、前記少なくとも一つの吸収材材料が総空孔容積を持ち、前記吸収材材料の前記総空孔容積の少なくとも30パーセントが約2nm〜約50nmの範囲の空孔サイズによって提供される、フィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、くぼみにカプセルを含むフィルターに関連し、このようなカプセルをくぼみに組み込んだマウスピースを持つ喫煙物品に関連する。
【背景技術】
【0002】
フィルター紙巻たばこは一般的に、紙ラッパーで囲まれたたばこカットフィラーのロッドと、包まれたたばこロッドと端と端を接して整列され、チッピングペーパーによってたばこロッドに取り付けられた円筒形フィルターとを備える。従来的なフィルター紙巻たばこでは、フィルターは、多孔性のプラグラップ内に包装された酢酸セルローストウのプラグから構成しうる。主流煙の粒子状およびガス状構成要素を除去するために濾過材料の二つ以上のセグメントを備える複数構成要素フィルターを持つフィルター紙巻たばこも知られている。
【0003】
たばこなどのエアロゾル形成基体が燃焼式ではなく加熱式である数多くの喫煙物品も、当技術で提案されてきた。加熱式喫煙物品では、エアロゾルはエアロゾル形成基体の加熱によって生成される。公知の加熱式喫煙物品には、例えば、エアロゾルが電気的加熱によるか、または可燃性燃料要素または熱源からエアロゾル形成基体への熱の移動によって生成される喫煙物品が含まれる。喫煙中、揮発性化合物は、熱源からの熱伝達によってエアロゾル形成基体から放出され、喫煙物品を通して引き込まれた空気中に混入される。放出された化合物が冷めるにつれて凝結してエアロゾルを形成し、これが消費者によって吸い込まれる。また、ニコチン含有エアロゾルがたばこ材料、たばこ抽出物、またはその他のニコチン源から、燃焼することなく、また一部の場合には加熱することなく、例えば化学反応によって生成される、喫煙物品も公知である。
【0004】
喫煙中に消費者に追加的な風味を提供するために、風味剤添加物を喫煙物品に組み込むことは周知である。風味剤は、喫煙物品内のたばこ材料の加熱または燃焼によって発生するたばこの風味を向上させるために、またはミントまたはメントールなどの追加的な非たばこ風味を提供するために使用しうる。
【0005】
喫煙物品に使用される風味剤添加物(メントールなど)は一般的に、適切な液体媒体を使用して、喫煙物品のフィルターまたはたばこロッドに組み込まれる液体風味剤の形態である。多くの場合、液体風味剤は揮発性があり、従って、保存中に喫煙物品から移動または蒸発する傾向がある。従って、喫煙中に主流煙に風味をつけるために利用可能な風味剤の量が減少する。
【0006】
例えば、カプセルまたはマイクロカプセルの形態での風味剤の封入によって、保存中の喫煙物品からの揮発性風味剤の損失を減少させることが以前に提案されている。カプセルに封入された風味剤は、例えば粉砕または構造を溶かすことによって封入構造を破壊することにより、喫煙物品の喫煙前または喫煙中に放出しうる。このようなカプセルが粉砕されて風味剤が放出される場合、カプセルは特定の力で破壊され、その力で風味剤のすべてを放出する。
【0007】
カプセルを組み込んでいる多くの喫煙物品では、カプセルは、酢酸セルローストウなど、繊維質の濾過材料のセグメント内に提供される。この配置では、カプセルを壊すために消費者が加える必要のある力はカプセルの粉砕力よりも一般的に高いが、カプセルの粉砕力はカプセルがフィルターの外にある時にカプセルを壊すために必要な力である。消費者による風味剤の放出を促進するために、比較的低い粉砕力のカプセルを使用することが望ましい。しかし、簡単に壊れやすいカプセルの使用は、カプセルが、カプセルを組み込んだ喫煙物品の製造中に受ける力に耐えられない可能性があるので製造の視点から望ましくない場合がある。
【0008】
従って、カプセルが消費者によってより簡単に破砕されうる一方、喫煙物品の製造および通常の取り扱い中にカプセルを誤って壊すリスクを最小化するような、風味剤の壊れやすいカプセルを組み込んだ新しいフィルターの配置を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0009】
本発明の第一の態様によると、エアロゾル発生基体およびマウスピースを持つ喫煙物品が提供されている。マウスピースは、粒子状材料で少なくとも部分的に充填されたくぼみを含み、マウスピース内のカプセルを壊して液体風味剤を放出するために必要な力がカプセルの固有破裂強度の3倍未満になるように、粒子状材料によって少なくとも部分的に囲まれた液体風味剤の少なくとも一つの壊れやすいカプセルを含む。
【0010】
本発明の第二の態様によると、喫煙物品のためのフィルターが提供されており、フィルターは、粒子状材料で少なくとも部分的に充填されたくぼみを備え、マウスピース内のカプセルを壊して液体風味剤を放出するために必要な力がカプセルの固有破裂強度の3倍未満となるように、粒子状材料によって少なくとも部分的に囲まれた液体風味剤の少なくとも一つの壊れやすいカプセルを含む。カプセルの固有破裂強度とは、粒子状材料に接触しておらず、喫煙物品の外側にある時のカプセルの破裂強度である。
【0011】
カプセルの周りに粒子状材料を提供することで、カプセルがフィルターの外側にある時と比べて(またはカプセルが酢酸セルローストウに埋め込まれている時と比べて)カプセルを壊すのに必要な力を小さくすることにより、消費者はカプセルをより簡単に破裂できる。この配置により、カプセルを壊すために必要な力を低いレベルに保ちながら比較的高い固有破裂強度のカプセルを使用することが可能になる。従ってカプセルは、消費者によって簡単に壊されうるが、製造中の力に効果的に耐えるには十分強いものとなる。従って、粒子状材料の包含により、カプセルがトウに提供される時よりも高い固有破裂強度を持つカプセルを使用することが可能になる。下記に詳述されるように、粒子状材料およびカプセルの特性は、カプセルの破砕における粒子状材料の効果を目的に合わせるように、またはカプセルが破砕された段階での粒子状材料とカプセルの風味剤との相互作用の仕方に影響するように、またはその両方を目的に選択されうる。
【0012】
マウスピースのカプセルを壊すために必要な力は、約50ニュートン未満が好ましく、約40ニュートン未満がより好ましく、約30ニュートン未満がさらにより好ましい。マウスピースのカプセルを壊すために必要な力は、少なくとも約15ニュートンが好ましく、少なくとも約20ニュートンがより好ましい。一部の好ましい実施形態では、マウスピースのカプセルを壊すために必要な力は、約15ニュートン〜約50ニュートンであり、約20ニュートン〜約50ニュートンが好ましく、約25ニュートン〜約40ニュートンがより好ましい。
【0013】
別の方法としてまたは追加的に、カプセルは少なくとも10ニュートンの固有破裂強度を持つことができ、少なくとも約20ニュートンが好ましく、少なくとも約25ニュートンがより好ましい。本発明の一部の実施形態では、カプセルは、例えば固有破裂強度が少なくとも約30ニュートンの、より高い破裂強度のカプセルでありうる。
【0014】
別の方法としてまたは追加的に、カプセルは少なくとも40ニュートン未満の固有破裂強度を持つことが好ましく、約30ニュートン未満がより好ましい。カプセルの固有破裂強度は、約10ニュートン〜約40ニュートンが好ましく、約10ニュートン〜約30ニュートンがより好ましく、約15ニュートン〜約30ニュートンが最も好ましい。
【0015】
一部の実施形態では、カプセルの固有破裂強度は約10ニュートン〜約40ニュートンであり、マウスピースのカプセルを壊すために必要な力は約15ニュートン〜約50ニュートンであり、マウスピースのカプセルを壊すために必要な力は、カプセルの固有破裂強度の約3倍未満であり、カプセルの固有破裂強度の約2倍未満がより好ましい。
【0016】
粒子状材料は、カプセルの最大直径より小さな平均粒子サイズを持つことが好ましい。この平均粒子サイズは、カプセルの最大直径の少なくとも約2分の1であることが特に好ましく、平均粒子サイズはカプセルの最大直径の少なくとも約3分の1であることがさらにより好ましい。このような小さめの粒子サイズは、カプセルの表面と任意の一つの粒子の間の接触面積を減少させることを助け、従って、その粒子からカプセルに加えられる力が、カプセルの粒子状領域に直接集中するようになる。これによって、消費者が粉砕力をフィルターまたはマウスピースに加える時、必要となる力がより低くカプセルを破壊する可能性が高くなりうる。
【0017】
粒子状材料の粒子は少なくとも約10メッシュのメッシュサイズを持つことが好ましい。このようなメッシュサイズ未満では、カプセルの表面と任意の一つの粒子の間の接触面積が望ましくないほど高くなり、その粒子からカプセルに加えられる力がカプセルの表面上に広がり過ぎる可能性がある。これによって、消費者の指からカプセルへの力の伝達の有効性が低くなる可能性がある。
【0018】
粒子状材料の粒子は約30メッシュ以下の数の平均メッシュサイズを持つことが好ましい。平均粒子サイズが約30メッシュよりも上の場合、粒子状材料は微粉末に匹敵しうる。このような配置では、カプセルがくぼみの周りでより自由に動くため力を加えるのが簡単でない。さらに、平均粒子サイズが約30メッシュよりも上の場合、くぼみ内には煙が移動するための自由空間がほとんどない。これは、望ましくないほど高い引き出し抵抗(RTD)を提供するくぼみセグメントを生じうる。
【0019】
従って、好ましい実施形態では、粒子状材料の粒子の少なくとも95%が、約10〜約30メッシュのメッシュサイズを持ち、約12〜約20メッシュがより好ましい。このようなメッシュサイズの範囲よりも上では、粒子状材料は、消費者からの粉砕力をカプセルに伝達する有効性が低くなる。このようなメッシュサイズの範囲よりも下では、粒子状材料はむしろ粉末のようにふるまう傾向がある。
【0020】
粒子状材料の粒子は任意の適切な形状を持ちうる。しかし、粒子状材料の粒子は、不規則または非球形の形状を持つことが好ましい。つまり、粒子状材料の複数の粒子の球形度の値は約0.8未満であることが好ましく、約0.6未満であることがより好ましく、約0.6未満が最も好ましい。球形度は、物体がどれだけ球状(または非球形)であるかの尺度である。定義上、物体の球形度(Ψ)は、所定の物体と同じ堆積を持つ球形の表面積のその物体の表面積に対する比率であり、以下の方程式によって表される:
【数1】
【0021】
従って、完全な球形の球形度の値は1である。
【0022】
不規則または非球形の形状を持つことによって、カプセルの表面と任意の一つの粒子の接触面積を最小化でき、従って、その粒子からカプセルに加えられる力が、カプセルの粒子状領域に直接集中できるようになる。これによって、消費者が粉砕力をフィルターまたはマウスピースに加える時、カプセルを破壊する可能性が高くなりうる。
【0023】
粒子状材料のボールパン硬度は少なくとも約80%であることが好ましく、少なくとも約90%であることがより好ましい。このような硬度を持つ粒子状材料では、(酢酸セルローストウの場合のように)消費者からの力が周辺材料によって吸収または分散されずにカプセルに直接伝達されるため、カプセルを壊すために必要な力を減少させるのを助けることができる。
【0024】
粒子状材料は少なくとも約0.3g/cm3のかさ密度を持つことが好ましい。粒子状材料は少なくとも約0.9g/cm3未満のかさ密度を持つことがより好ましい。一部の好ましい実施形態では、粒子状材料は約0.4〜約0.7g/cm3のかさ密度を持ち、約0.45〜約0.55g/cm3がさらにより好ましい。このようなかさ密度は、標準的な酢酸セルローストウに一般的に関連付けられるかさ密度(0.15g/cm3)よりも顕著に高く、消費者の指からの粉砕力をカプセルに直接伝達する有効性がより高い材料を提供する。
【0025】
粒子状材料は、任意の適切な単一材料または複数材料から形成されうる。一部の好ましい実施形態では、粒子状材料は吸収材材料を含む。「吸収材」という用語は、1つ以上の煙成分を捕捉または転換する材料を指す。適切な吸収材材料の例には、活性炭、被覆炭素、活性アルミニウム、酸化アルミニウム、ゼオライト、海泡石、分子ふるいおよびシリカゲルが含まれる。特に好ましい吸収材材料は活性炭およびゼオライトであるが、それは、粉砕力を消費者の指からカプセルに効果的に伝達するために望ましい硬度、形状およびサイズ特性をこれらの材料が一般的に持つためである。
【0026】
粒子状材料が吸収材材料を含む場合、吸収材材料の特性は、カプセルの粉砕における吸収材材料の効果を最大化するように、および/またはカプセルが一旦粉砕されたら、吸収材材料のカプセルの風味剤との相互作用の仕方に影響するように調節されうる。例えば、吸収材の空隙率は、粒子状の吸収材材料による風味剤の収着を目的に合わせるために選択されうる。特に、一部の実施形態では、吸収材に一時的に閉じ込められているカプセルから放出されるがその後喫煙サイクルの後の段階で吸収材から放出される風味剤をもたらしうる適切な空孔サイズ分布を持つ吸収材を選択することが望ましい場合がある。理論に拘束されることを望むものではないが、これは、喫煙物品の喫煙の持続時間全体にわたる風味剤のより漸進的な放出をもたらす可能性があると考えられる。
【0027】
従って、吸収材材料の総空孔容積の少なくとも約30%が、約2nm〜約50nmの範囲の空孔サイズによって提供されることが好ましく、約10nm〜約50nmの範囲がより好ましい。一部の実施形態では、吸収材材料の総空孔容積の約50%以上が、約2nm〜約50nmの範囲の空孔サイズによって提供されることが好ましく、約10nm〜約50nmの範囲がより好ましい。理論に拘束されることを望むものではないが、このような空孔サイズ分布は、喫煙物品の喫煙の持続時間全体にわたる風味剤のより漸進的な放出をもたらす可能性があると考えられる。別の方法としてまたは追加的に、吸収材材料は、1グラムあたり約1500平方メートル未満のBET表面積を持つことが好ましく、約1000平方メール未満がより好ましく、約350平方メートルがさらにより好ましい。吸収材材料は1グラムあたり少なくとも約200平方メートルのBET表面積を持つことが好ましい。
【0028】
別の方法としてまたは追加的に、粒子状材料は、一般的には吸収材と呼ばれない材料である非吸収材材料を含みうる。例えば、粒子状材料は、沈降炭酸カルシウム、または、凝集されたミント顆粒またはレモンマートル顆粒などの凝集された植物粒子を含みうる。このような粒子は一般的に不規則な形状を持ち、従って消費者の指からの粉砕力をカプセルに伝達するのに特に有効であり、非吸収特性は、カプセルから放出された大量の材料を粒子状材料が吸収するのを防止する。
【0029】
マウスピースの長軸方向でのくぼみの長さは、カプセルの最大寸法よりも少なくとも約1.5mm大きいことが好ましく、少なくとも2mm大きいことがより好ましい。マウスピースの長軸方向でのくぼみの長さは、カプセルの最大寸法よりも約12mm未満大きいことが好ましく、約7mm未満大きいことがより好ましい。このようなくぼみのサイズは、カプセルが粒子状材料によって完全かつより均一に囲まれることを可能にする。これによって、消費者が指をフィルターまたはマウスピースのどこに配置するかにかかわらず、カプセルの周りに力がより均一に分配され、粉砕力がカプセルに効果的に伝達されるように確実にすることができる。
【0030】
くぼみは、消費者の指からの粉砕力がカプセルにより効果的に伝達されるように、少なくとも部分的に粒子状材料で充填される。これによって、フィルターのカプセルを壊すために必要な力がカプセルの固有破裂強度の3倍未満となる。この有効性を高めるために、粒子状材料は、カプセルによってすでに占有されていないくぼみの空間の少なくとも60%を占めることが好ましい。粒子状材料が、カプセルによってすでに占有されていないくぼみの空間の少なくとも80%を占めることがより好ましく、粒子状材料が、カプセルによってすでに占有されていないくぼみの空間の少なくとも90%を占めることがさらにより好ましい。このような充填率の高さにより、消費者がフィルターまたはマウスピースのどこに指先を置くかにかかわらず、粉砕力がカプセルに効果的に伝達されることを確実にできる。
【0031】
カプセルは、液体、最も好ましくは液体風味剤をカプセル化する外側シェルを含むことが好ましい。カプセルが製造中の力に耐えられるだけの十分高い固有破裂強度を提供するために、外側シェルの厚さは少なくとも30ミクロンが好ましく、少なくとも50ミクロンがより好ましい。シェルは、ゲランガム、寒天、カラギーナン、プルランガムまたは加工デンプン、単独またはそれらの混合物としてまたはゼラチンとの組み合わせから選択される親水コロイドなど、任意の適切な材料で形成されうる。
【0032】
カプセルは物理的な様々な形成物で形成されうるが、これには単一部分から成るカプセル、複数部分から成るカプセル、単一壁から成るカプセル、複数壁から成るカプセル、大型カプセル、および小型カプセルなどが含まれるが、これに限定されない。
【0033】
カプセルは、球状、楕円形または円筒形など、任意の適切な形状を持ちうる。しかし、カプセルは球状であることが好ましい。これは、球形度の値が少なくとも約0.9であるカプセルを含みうるが、球形度の値はおよそ1であることが好ましい。球形度は、物体がどれだけ球状であるかの尺度である。定義上、物体の球形度(Ψ)は、所定の物体と同じ堆積を持つ球形の表面積のその物体の表面積に対する比率であり、以下の方程式によって表される:
【数2】
【0034】
従って、完全な球形の球形度の値は1である。一般的に球状のカプセルは、一般的に球状の外側シェルを備えることが好ましい。
【0035】
カプセルの液体風味剤は任意の適切な風味剤を含みうる。適切な風味剤には、天然または合成のメントール、ハッカ、スペアミント、コーヒー、お茶、スパイス(シナモン、クローブおよびショウガなど)、ココア、バニラ、果実風味、チョコレート、ユーカリ、ゼラニウム、オイゲノール、リュウゼツラン、ビャクシン、アネトール、リナロオールおよびそれらの任意の組み合わせを含む。特に好ましい風味剤はメントールである。
【0036】
カプセルの直径は約2mm〜約7mmであることが好ましく、約3mm〜約5mmであることがさらに好ましい。一部の好ましい実施形態で、カプセルの直径は約3.5mmである。
【0037】
カプセルは任意の適切な固有破裂強度を持ちうる。例えば、カプセルは約10ニュートン〜約25ニュートンの固有破裂強度を持ちうる。このようなカプセルは、カプセルを組み込んだ喫煙物品の製造中に受ける力に通常耐えるだけの十分高い固有破裂強度を持つことが知られている。しかし、一部の実施形態では、さらに高い固有破裂強度を持つカプセルを使用することが好ましい。特に、少なくとも約25ニュートンの固有破裂強度を持つカプセルを使用することが好ましく、少なくとも約30ニュートンがより好ましい。このようなカプセルは喫煙物品フィルターに一般的に使用されるものよりもさらに堅牢であり、従って喫煙物品の製造中の破損にさらに耐えることができる。このような「高破裂強度カプセル」は、フィルターまたはマウスピース中にある時に消費者が壊すには硬すぎるため、一般的には適切だと考えられていなかった。それにもかかわらず、本発明の配置はこのようなカプセルの使用を可能にする。例えば、一部の実施形態では、少なくとも約25ニュートン、より好ましくは少なくとも約30ニュートンの固有破裂強度を持つカプセルは、マウスピース内のカプセルを壊すために必要な力が約50ニュートン未満であるフィルターに使用できる。
【0038】
カプセルを含むマウスピースまたは喫煙物品が本発明の範囲内にあるかどうかを決定するために、適切な数(20など)の同一にデザインされた喫煙物品またはマウスピースを取得すべきである。これらのサンプルの半数のカプセルを、カプセルの状態の変化を最小限に抑える方法で注意深く取り出す。次に、これらのカプセルの固有破裂強度を、AllurisタイプFMI−220 C2デジタル力ゲージ0−200N(ドイツのAlluris Gmbh & Co.KGから市販されている)など、当業界で周知の適切な測定装置を使用して決定すべきである。サンプルの残りの半分(すなわち、カプセルがマウスピース内にまだあるサンプル)に、カプセルを含むマウスピースまたは喫煙物品のくぼみ領域に任意の力を加える表面を適用して、同じ試験を実施する。カプセルの固有破裂強度またはマウスピース内のカプセルを壊すために必要な力は、力・圧縮曲線のピークで示される。カプセルの固有破裂強度およびマウスピース内のカプセルを壊すために必要な力に対するそれぞれの測定値を、次にサンプルセットにわたり平均化して結果を比較する。この試験は約22℃および60%の相対湿度で実施される。
【0039】
フィルターは任意の適切な構造を持ちうる。しかし、フィルターは、上流セグメントおよび下流セグメントが粒子状材料およびその間にあるカプセルを含むくぼみを画定する、「プラグ・スペース・プラグ」フィルターであることが好ましい。上流および下流のセグメントはそれぞれ、吸収材および/または風味剤材料を含みうる。
【0040】
一部の実施形態では、フィルターは、くぼみの上にある窓部を提供する透明のラッパーを含む。これによって、消費者はくぼみの粒子状材料を見ることができる。これは、液体風味剤が色またはその他の視覚的指標を持ち、カプセルが壊れたことを消費者が確証できる場合に、特に有利でありうる。
【0041】
本発明の喫煙物品およびフィルターは、既存のくぼみ充填装置に最小限の変更を必要とするだけで、既存の技術を使用して製造されうる。特に、くぼみは、3つの段階を持つように変更された既存のくぼみ充填装置で製造されうる。第一の段階で、くぼみ空間は、使用される粒子状材料の一部(例えば50%)で少なくとも部分的に充填される。第二の段階で、カプセルは、くぼみを占める粒子状材料の部分の上に配置される。第三の段階で、粒子状材料の残りの部分(例えば50%)がカプセルの上に配置され、次にフィルターがラッパーで囲まれてくぼみを形成する。
【0042】
本開示によるフィルターは、たばこロッドに取り付けられて、喫煙物品のすべてまたは少なくとも一部分を形成する。フィルターはたばこロッドと軸方向に整列されることが望ましい。多くの実施形態では、フィルターはチッピングペーパーでたばこロッドに結合される。
【0043】
一部の実施形態では、喫煙物品は、エアロゾル発生基体が円筒形のたばこロッドの形態で提供され、マウスピースがフィルターを含む、従来的な紙巻たばこである。
【0044】
本発明の一つの態様に関連して上述した特徴は、本発明の別の態様にも適用されうる。
【0045】
本発明は、粒子状材料を含むくぼみのカプセルの使用に関連して上記に説明されているが、当然のことながら、本発明は粒子状材料を含むくぼみに複数のカプセルを含む喫煙物品およびフィルターにも適用される。従って、本発明のくぼみは二つ以上のカプセルを含みうる。
【0046】
「上流」および「下流」という用語は、エアロゾル発生基体から引き出され、フィルターまたはマウスピースを通過する時の主流煙の方向に関連して説明された、喫煙物品またはフィルターの要素間の相対的位置を意味する。
【0047】
「粒子サイズ」という用語は、粒子材料内の個別の粒子の最大断面の寸法を意味する。「平均」粒子サイズは、粒子について算術平均の粒子サイズを意味する。粒子状材料のサンプルの粒子サイズ分布は、ASTM D6913−04(2009)に記述されている標準試験方法など、周知のふるい試験を使用して決定されうる。
【0048】
「破裂強度」という用語は、(喫煙物品の外側に存在する時に)カプセルが破裂する、カプセルに加えられる力を指す。破裂強度はカプセルの力・圧縮曲線のピークで示される。これは、AllurisタイプFMI−220 C2デジタル力ゲージ0−200N(ドイツのAlluris Gmbh & Co.KGから市販されている)など、当業界で周知の適切な測定装置を使用して試験されうる。
【0049】
「カプセルの直径」という用語は、フィルターまたは喫煙物品の長軸方向に直角をなして測定した時のカプセルの最長断面寸法を指す。
【0050】
粒子状材料の硬さは、ASTM D3802に記述されたボールペン硬度の標準試験方法を使用して決定されうる。この試験は、活性炭の硬度に関して特に記述されているが、任意のその他の適切な粒子状材料にも使用されうる。
【0051】
吸収材材料のBET表面積は、ASTM D1993−03(2008)に記述された標準試験法を使用して決定されうる。
【0052】
本発明は以下の添付図面を参照しながら、例証としてのみであるがさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1図1は、記述された実施形態による喫煙物品の長軸方向の横断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1は本発明の一つの実施形態による喫煙物品100の斜視図である。喫煙物品100は、一般的に円筒形のたばこロッド101の形態のエアロゾル形成基体と、一般的に円筒形のフィルター103の形態のマウスピースを含む。たばこロッド101およびフィルター103は端と端が接した関係で軸方向に配置されており、互いに隣接することが好ましい。たばこロッド101は喫煙材料を囲む外側ラッパー105を含む。たばこは細かく切られたたばこであるか、またはたばこカットフィラーであることが好ましい。フィルター103はフィルター材料を囲むフィルターラッパー(非表示)を含む。たばこロッド101は上流の点火側の端109と下流端111を持つ。フィルター103は上流端113および下流の口側の端115を持つ。フィルター103の上流端113は、たばこロッド101の下流端111と隣接している。液体風味剤を含む壊れやすいカプセル120は、フィルター103のくぼみに配置される。くぼみは、壊れやすいカプセル120を囲む、活性炭顆粒の形態での粒子状材料125も含む。カプセルは3.5mmの直径を持ち、くぼみはフィルターの長軸方向軸に沿って5mmの長さを持つ。
【0055】
フィルター103は、フィルター103の全長およびたばこロッド101の隣接した領域を囲むチッピング材料117によって、たばこロッド101に取り付けられている。明確にするために、チッピング材料117は、図1では喫煙物品から部分的に取り外された状態で示されている。この実施形態で、チッピング材料117はフィルター穿孔123の円周列も含む。穿孔123は主流煙の換気のために提供される。
【実施例】
【0056】
2つのカプセル含有フィルターが準備され試験された。第一のフィルター(サンプルA)は標準カプセル含有フィルターで、直径3.5mmのカプセルが酢酸セルローストウの単一セグメント内に埋め込まれていた。第二のフィルター(サンプルB)は、本発明によるフィルターであった。つまり、第二のフィルターは、酢酸セルローストウの長さ11mmの上流セグメントおよび酢酸セルローストウの長さ11mmの下流セグメントがその間に幅5mmのくぼみを画定するプラグ・スペース・プラグ構造を有していた。くぼみは、70mgの活性炭粒子によって取り囲まれた直径3.5mmのカプセルを含んでいた。活性炭粒子のメッシュサイズは12〜20メッシュであった。両サンプルのフィルターは、厚さ80ミクロンのフィルターラッパーおよび厚さ40ミクロンのチッピングペーパーで囲まれていた。チッピングペーパーは、カプセルからの液体がフィルターの外部表面に移動するのを防止するため、その内部表面はニトロセルロースの層で被覆されていた。両サンプルで、直径3.5mmのカプセルの破裂強度は約15ニュートンであった。
【0057】
AllurisタイプFMI−220 C2−デジタル力ゲージ0−200N装置(ドイツのAlluris Gmbh & Co.KGから市販されている)を使用して、両方のフィルターのカプセル含有領域に漸増的に力を加え、カプセルが壊れる力を記録した。サンプルAでは、カプセルは45ニュートンの力がフィルターに加えられた後にフィルター中で壊れることが分かった。サンプルBでは、カプセルは22ニュートンの力がフィルターに加えられた後にフィルター中で壊れることが分かった。
図1